本考案は獣類を捕獲する括り罠に用いる安全装置に関する。
従来、獣類を捕獲する装置として、獣類の足をワイヤー等で括って捕獲する括り罠が一般に良く知られている。この従来の一般的な括り罠としては、例えば実用新案登録第3038510号が提案されている。この捕獲用罠は、捕獲対象の通過道又は近傍に埋め込まれる筒状の本体と、可撓性を有する長尺材により形成されると共に、前記本体に挿通され、この本体から引き出されて前記捕獲対象の通過道上に延長された一端に締付け可能な輪状絞り部を備えた捕獲用絞り材と、前記本体の頂部に捕獲用絞り材が貫通する状態で嵌装された締付体と、この締付体を前記捕獲用絞り材により導かれ前記輪状絞り部に向かう方向に付勢する部材と、前記捕獲用絞り材の輪状絞り部が囲む通過道上の領域に配置され、捕獲対象の体重により変位する重量受体と、この重量受体の下側領域に於いて前記本体により回動可能に支持されると共に、一片が前記重量受体の下面に連結され、他片が前記締付体に設けた係合溝部に係合された変位伝達部材とを具備し、前記変位伝達部材の他片により前記締付体を付勢部材の付勢力に抗して本体に拘束すると共に、前記重量受体に捕獲対象の重量が作用した時、前記他片に連動して一片を回動変位させ前記本体に対する拘束を解除して、この締付体を付勢部材の付勢力により捕獲用絞り材の輪状絞り部に圧接してこの輪状絞り部を締付け、捕獲対象の身体のいずれかの部分を搦め捕るようにしたことを特徴とするものである。
前記実用新案登録第3038510号の括り罠用仕掛け補助器具に於いては、ワイヤーの括り輪を縮径する際に、踏板と連動するロック解除手段(トリガー具等)を必要とし、罠全体の構造が複雑でコスト的にも高価となる。又、このようなトリガー具を用いると、トリガー具の作動を確実にするためには、トリガー具と連動する踏板を設置する際に、踏板の下側地中を深く掘る必要が生じるため、踏板の設置作業に手間が掛かり、特に山中で足場が悪いと、その設置作業が難しい等の問題点を有していた。
このため、従来使用しているトリガー具を必要とせず、踏板自体がトリガー具の役目を兼備し、罠全体の構造が簡単でコストも安価なものとなる共に、罠の設置作業で地中に深い穴を掘る必要がなく、山中に於ける設置作業が極めて簡単な括り罠を、本考案者が実用新案登録第3170042号で提案したところである。
この実用新案登録第3170042号で使用する括り罠のセット方法は、図2を参照して説明すれば、踏板(A)の帯板(31),(32)の外周に、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)を回し掛けて装着し、ストッパー(9)を括り輪部(6a)の方向に手で押して、コイルバネ部材(8)を、締付体(7)を介して圧縮状態にさせ、その状態でストッパー(9)の止めネジ(91)を締付けて、ストッパー(9)を括りワイヤー(6)に固定する。この時、括り輪部(6a)は帯板(31),(32)に沿って括りワイヤー(6)がセットされるため、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)の設置が簡単で確実に行える。この状態に於いて括り輪部(6a)は、コイルバネ部材(8)の弾発力と締付体(7)によって、括り輪装着帯体(3)に弾発的に装着される。これで踏板(A)に対する括りワイヤー(6)のセットは完了するのである。
しかしながら、従来の括り罠の括りワイヤー(6)のセットを自宅で行い、それを山などの現地に持ち込むと、車輌等による運搬中の振動によって括り輪部(6a)が外れ易く、且つ、罠を仕掛ける際に、コイルバネ部材(8)の弾発力が強いため、括り輪装着帯体(3)から括り輪部(6a)がずれ易くなり、この括り輪部(6a)が外れると、大怪我をする恐れがあった。このため、括り罠の括りワイヤー(6)のセットは自宅で行わず、山中などの現地で行うのが一般的である。従って、括り罠の設置には時間が掛かるため、括り罠を仕掛ける数量に限度があり、一人で多くの括り罠を仕掛けることは困難であり、且つ、括りワイヤー(6)をセットする際、粘土質の滑り易い場所や斜面などさまざまな条件下でのセット作業が行われるため、括り罠の括りワイヤー(6)のセットが安定して安全に行えない場合も生じ、更には大怪我をする恐れもあった。
本考案は括り罠の括りワイヤーのセットが自宅で容易に行えると共に運搬中の振動で括り輪部が外れる心配もなくなり、安全で且つ現地での設置が極めて簡単で短時間に行えるものとなる括り罠の安全装置を提供することを目的とする。
本考案は上記問題点を解消するために成されたもので、つまり、矩形状の踏板本体の長手方向に沿ってガイド片を設けると共に該ガイド片の両端部に、帯板が固定されるための安全セット手段を設け、該安全セット手段が、ガイド片の両端部に設けた取付部と、その取付部に取付けるセット固定具とから少なくとも構成するものと成す。また前記セット固定具として頭部付きネジを用い、そのネジ部の先端には細いピンを設けたものを用いると良い。又、その頭部にツマミ部を設けたものとするのが好ましい。
請求項1のように矩形状の踏板本体(1)の長手方向に沿ってガイド片(1a)を設けると共に該ガイド片(1a)の両端部に、帯板(31),(32)が固定されるための安全セット手段(4)を設け、該安全セット手段(4)が、ガイド片(1a)の両端部に設けた取付部(41)と、その取付部(41)に取付けるセット固定具(42)とから少なくとも構成することにより、本考案は自宅で事前に括りワイヤー(6)のセットが行え、そのまま現地へ安心して持ち込めるものとなるため、一人で多数の括り罠を効率良く設置出来るものとなると共に、安全で且つ現地に於いて安心して設置が極めて簡単で短時間に行えるものとなる。この結果、一人で多数の獣類の捕獲が可能なものとなるのである。
請求項2のようにセット固定具(42)として頭部(42a)付きネジを用い、且つ、前記セット固定具(42)のネジ部(42b)の先端に、該ネジ部(42b)の谷径よりも細いピン(42c)を設けたものとすることにより、簡単な構造であっても確実に括り輪部(6a)の外れが防止できるものとなるため、安価に製作することができ、且つ、括りワイヤー(6)のセットが簡単に行えると共に括り罠の運搬や括り罠の仕掛けが誰にでも簡単に且つ安全に行えるものとなった。
請求項3に示すようにセット固定具(42)の頭部(42a)にツマミ部(42d)を設けることにより、安全セット手段(4)のセットが誰にでも簡単に行えるものとなった。
本考案が踏板に取付けられた状態を示す斜視図である。
本考案がセットされた踏板に、括りワイヤーと保持用ワイヤーを装着した状態を示す説明図である。
本考案がセットされた踏板の設置状態を示す説明図である。
本実施形態のセット固定具を示す説明図である。
本考案の作用を示す説明図である。
本考案の実施形態を図面に基づいて説明する。(A)は踏板であり、該踏板(A)は金属製で後述する踏板本体(1),支持部材(2),括り輪装着帯体(3),設置枠(5)とから少なくとも構成されたものである。(1)は長方形状で金属板の踏板本体であり、該踏板本体(1)には、踏板本体(1)の長手方向に沿って外縁を折曲し、一方の外縁を立設したガイド片(1a)と成し、他方(手前)の外縁を下方に折曲させている。また踏板本体(1)には1個或いは2個以上の小穴(1b)を穿設させている。この小穴(1b)は踏板(A)の紛失防止用のものである。前記踏板(A)としては、実用新案登録第3170042号で用いるものを利用するのが好ましい。
(2)は踏板本体(1)の長手方向中央で上下両側(図2の図中に於いては上下)に取付けた一対の支持部材であり、該支持部材(2)は金属板を断面L字状に折曲して形成され、踏板本体(1)に対して上下移動可能に取付けられている。又、前記支持部材(2)には、全体を上下移動させる角度調節手段(21)を設けたものとしても良い。尚、本考案で言う「踏板本体(1)の長手方向中央で上下両側に取付け」とは、図1、図2に示す図中に於いて上下で且つそれぞれに取付け、且つ、その位置は長手方向の中央部に取付けることを指すものとする。(3)は支持部材(2)に両開口端側を回動自在に装着した略コの字状の金属製帯板(31),(32)の2つから成ると共にこの帯板(31),(32)の中間部が踏板本体(1)の長手方向両端から突出する括り輪装着帯体であり、該括り輪装着帯体(3)の帯板(31),(32)の中間には溝(31a),(32a)が図1に示すように形成されている。また括り輪装着帯体(3)としては、後述する括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)を掛け止めするための機能を有するものであれば、上記形状に限定されるものではない。又、前記溝(31a),(32a)の役目は、帯板(31),(32)に括りワイヤー(6)をセットする際に位置が決まり易くなると共に括りワイヤー(6)が帯板(31),(32)から直ぐに外れることなく、獣類の足を確実に括り付けることが出来るためのものである。尚、本考案で言う「帯板(31),(32)の中間部」とは、両側から折曲して略コの字状に形成された際、開口側と反対側の真直ぐな基部側を指すものとする。
(4)は踏板本体(1)の長手方向に沿って設けたガイド片(1a)の両端部に、帯板(31),(32)を固定するための安全セット手段であり、該安全セット手段(4)には、前記ガイド片(1a)の両端部に設けた板状の取付部(41)と、その取付部(41)に取付けるセット固定具(42)とがあり(図1参照)、該セット固定具(42)としては、頭部(42a)付きネジを用い、且つ、そのネジ部(42b)の先端には、セット固定具(42)のネジ部(42b)の谷径よりも細いピン(42c)を固着させるか又は削り出ししていると共に前記頭部(42a)にツマミ部(42d)が設けられている(図4参照)。また前記ネジ部(42b)としてはネジ山を2山から5山程度としておくのが好ましい。又、前記ツマミ部(42d)としては、図4(a)に示すように円環状にすると良く、図4(b)に示すように三日月状とするものとしても良い。尚、前記取付部(41)に穿設した図1に示す2つの穴は、少なくとも一方をネジ穴とするのが好ましく、且つ、前記セット固定具(42)として、頭部(42a)付きネジ以外に、釘や太めの針金など棒状のものを用いても良い。(5)は踏板本体(1)が落下可能に支えられて設置するための金属製の設置枠であり、該設置枠(5)は、踏板本体(1)が容易に入る大きさを有し、設置枠(5)の前後(図1の図中に於いては上下)には立片(51)があり、該立片(51)の一方の中央には切欠(52)が穿設されており、立片(51)の左右には立片(51)よりも低い傾斜片(53)がある。更に設置枠(5)の底面には大きな四角穴(54)が穿設され、その底面の縁には丸穴(55)が穿設されている。この丸穴(55)は設置枠(5)の紛失防止用のものである。尚、前記設置枠(5)の役目は上記以外に、踏板本体(1)の落下距離を確保させると共に土が内部に入らないように維持させる役目も果たす。
(6)は一端側に後述する締付体(7)を介して締付け可能な括り輪部(6a)を形成した括りワイヤーであり、この括りワイヤー(6)としては、各数本の金属細線を撚り合せた柔軟性のあるもので、動物の足が容易に括り付けられるように弾力性を付勢可能となるものが好ましく、その太さとしては、例えば4mm〜5mm程度のものが好ましい。(7)は金属製の金具で形成した一般的な締付体であり、該締付体(7)は後述するコイルバネ部材(8)の弾発力で括り輪部(6a)を縮径する役目を成す。(8)は括りワイヤー(6)を貫通させる圧縮用のコイルバネ部材であり、該コイルバネ部材(8)は締付体(7)の下部に位置させておく。またコイルバネ部材(8)は圧縮した状態で弾発力を付与させるものであり、その弾発力は、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)が縮径して捕獲した動物の足から外れない強さのものである。
(9)は中心に挿通穴を穿設したストッパーであり、これはコイルバネ部材(8)の後方で括りワイヤー(6)に設け、前記挿通穴に括りワイヤー(6)を挿通させて設けている。このストッパー(9)には、端部に円形の鍔を形成し、且つ側面に止めネジ(91)を螺合させている。このストッパー(9)はコイルバネ部材(8)を圧縮する際に、鍔側を手で押して圧縮させ、所定の圧縮が完了した位置で止めネジ(91)を括りワイヤー(6)にネジ込み、その位置に圧縮状態のコイルバネ部材(8)を弾発的に保持するためのものである。また前記止めネジ(91)としては、手で簡単に締付けできる蝶ネジを使用するのが好ましい。(10)は踏板本体(1)の小穴(1b)に一端を挿通する保持用ワイヤーであり(図2参照)、この挿通した一端側は小穴(1b)を挟んで止め環と結び目を作り、小穴(1b)から抜けられないようにし、他端は立木又は杭等に結んで設置する。この保持用ワイヤー(10)は踏板(A)を設置する際に、捕獲した動物が暴れて踏板(A)が山中の谷間等に落ちて紛失するのを防止するためのものである。尚、前記保持用ワイヤー(10)を踏板本体(1)に装着する方法は、図2に示すような方法に限定されるものではない。
先ず始めに本考案の括り罠の安全装置のセット方法について説明する。予め必要個数の括り罠を室内に運び、机等の平面に踏板本体(1)部分を載置して置く。先ず始めに、捕獲する目的の獣類に予め調節された踏板(A)の帯板(31),(32)の外周に、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)を回し掛けて装着する。次に取付部(41)にセット固定具(42)を螺合させて締付けることにより、ネジ部(42b)の先端に設けた細いピン(42c)が帯板(31),(32)の上面に配置される。この時、セット固定具(42)のネジ部(42b)にはネジ山が少ないため、セット固定具(42)を取付部(41)に締付ける際は素早く行えるものとなる。尚、前記セット固定具(42)として棒状のものを用いる時には、取付部(41)の穴に棒状のセット固定具(42)を差込むだけで、帯板(31),(32)から括りワイヤー(6)が外れることを防止出来るものとなる。
次にストッパー(9)を括り輪部(6a)の方向に手で押して、コイルバネ部材(8)を、締付体(7)を介して圧縮状態にさせ、その状態でストッパー(9)の止めネジ(91)を締付けて、ストッパー(9)を括りワイヤー(6)に固定する。この時、括り輪部(6a)は帯板(31),(32)に沿って装着されると共に帯板(31),(32)がセット固定具(42)によって略固定した状態でコイルバネ部材(8)を圧縮することにより、括りワイヤー(6)が付勢された状態でセット出来るものとなる。つまり、コイルバネ部材(8)を圧縮状態にさせる際の作業が安定して且つ安心して行えるため、従来よりも遥かに容易に括りワイヤー(6)のセットが完了するものとなるのである。上記の要領で本考案品を用いて順次複数の括り罠の括りワイヤー(6)をセットして行けば良い。このように自宅で括りワイヤー(6)のセットが容易に行えるものとなる。更に、この状態のものを車両に積んで現地まで運んでも、括り輪部(6a)は帯板(31),(32)から外れる恐れがなくなるものとなる。
次に本考案の括り罠の設置について説明する。予め地面に浅い穴を図3に示すように掘り、該穴の内部に設置枠(5)を置き、その上に、括りワイヤー(6)のセット済みの踏板本体(1)が乗せられて踏板(A)を設置する。そして、踏板(A)の設置が完了した後、括りワイヤー(6)の端部を立木又は地中に打ち込んだ杭に結ぶと共に踏板本体(1)の小穴(1b)に挿通して挿入した保持用ワイヤー(10)の端部を括りワイヤー(6)が結んだ立木や根に結ぶ。その後、セット固定具(42)を取付部(41)から外す。更に踏板(A)の上に落ち葉や土を被せる。これで括り罠の設置が完了する。前記安全セット手段(4)のセット及び解除以外の作業は実用新案登録第3170042号で行う作業と略同じである。
前記セット固定具(42)の着脱作業を図5に基づいて説明する。先ず始めにセット固定具(42)のピン(42c)を取付部(41)のネジ穴部に挿入し[図5(a)参照]、セット固定具(42)のツマミ部(42d)を手で回転させて捻じ込むと、セット固定具(42)は3回前後回転させるだけで締付けが完了し、且つ、前記ピン(42c)は帯板(31),(32)の上方へ配置されるので、帯板(31),(32)は作動することがなくなる[図5(b)参照]。この状態で括り罠を運搬すれば車両の振動で括り輪部(6a)が外れる心配はなく、現地に於いても安心して多数の括り罠を設置することが出来るものとなる。また設置後、セット固定具(42)を外す際、ツマミ部(42d)を手で3回前後回転させて引き抜くだけで、ネジ部(42b)は取付部(41)の前記ネジ穴部から外れるので、素早く安全装置の解除が行われるものとなるのである。
A 踏板
1 踏板本体
1a ガイド片
2 支持部材
3 括り輪装着帯体
31,32 帯板
4 安全セット手段
41 取付部
42 セット固定具
42a 頭部
42b ネジ部
42c ピン
42d ツマミ部
本考案は獣類を捕獲する括り罠に用いる安全装置に関する。
従来、獣類を捕獲する装置として、獣類の足をワイヤー等で括って捕獲する括り罠が一般に良く知られている。この従来の一般的な括り罠としては、例えば実用新案登録第3038510号が提案されている。この捕獲用罠は、捕獲対象の通過道又は近傍に埋め込まれる筒状の本体と、可撓性を有する長尺材により形成されると共に、前記本体に挿通され、この本体から引き出されて前記捕獲対象の通過道上に延長された一端に締付け可能な輪状絞り部を備えた捕獲用絞り材と、前記本体の頂部に捕獲用絞り材が貫通する状態で嵌装された締付体と、この締付体を前記捕獲用絞り材により導かれ前記輪状絞り部に向かう方向に付勢する部材と、前記捕獲用絞り材の輪状絞り部が囲む通過道上の領域に配置され、捕獲対象の体重により変位する重量受体と、この重量受体の下側領域に於いて前記本体により回動可能に支持されると共に、一片が前記重量受体の下面に連結され、他片が前記締付体に設けた係合溝部に係合された変位伝達部材とを具備し、前記変位伝達部材の他片により前記締付体を付勢部材の付勢力に抗して本体に拘束すると共に、前記重量受体に捕獲対象の重量が作用した時、前記他片に連動して一片を回動変位させ前記本体に対する拘束を解除して、この締付体を付勢部材の付勢力により捕獲用絞り材の輪状絞り部に圧接してこの輪状絞り部を締付け、捕獲対象の身体のいずれかの部分を搦め捕るようにしたことを特徴とするものである。
前記実用新案登録第3038510号の括り罠用仕掛け補助器具に於いては、ワイヤーの括り輪を縮径する際に、踏板と連動するロック解除手段(トリガー具等)を必要とし、罠全体の構造が複雑でコスト的にも高価となる。又、このようなトリガー具を用いると、トリガー具の作動を確実にするためには、トリガー具と連動する踏板を設置する際に、踏板の下側地中を深く掘る必要が生じるため、踏板の設置作業に手間が掛かり、特に山中で足場が悪いと、その設置作業が難しい等の問題点を有していた。
このため、従来使用しているトリガー具を必要とせず、踏板自体がトリガー具の役目を兼備し、罠全体の構造が簡単でコストも安価なものとなる共に、罠の設置作業で地中に深い穴を掘る必要がなく、山中に於ける設置作業が極めて簡単な括り罠を、本考案者が実用新案登録第3170042号で提案したところである。
この実用新案登録第3170042号で使用する括り罠のセット方法は、図2を参照して説明すれば、踏板(A)の帯板(31),(32)の外周に、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)を回し掛けて装着し、ストッパー(9)を括り輪部(6a)の方向に手で押して、コイルバネ部材(8)を、締付体(7)を介して圧縮状態にさせ、その状態でストッパー(9)の止めネジ(91)を締付けて、ストッパー(9)を括りワイヤー(6)に固定する。この時、括り輪部(6a)は帯板(31),(32)に沿って括りワイヤー(6)がセットされるため、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)の設置が簡単で確実に行える。この状態に於いて括り輪部(6a)は、コイルバネ部材(8)の弾発力と締付体(7)によって、括り輪装着帯体(3)に弾発的に装着される。これで踏板(A)に対する括りワイヤー(6)のセットは完了するのである。
しかしながら、従来の括り罠の括りワイヤー(6)のセットを自宅で行い、それを山などの現地に持ち込むと、車輌等による運搬中の振動によって括り輪部(6a)が外れ易く、且つ、罠を仕掛ける際に、コイルバネ部材(8)の弾発力が強いため、括り輪装着帯体(3)から括り輪部(6a)がずれ易くなり、この括り輪部(6a)が外れると、大怪我をする恐れがあった。このため、括り罠の括りワイヤー(6)のセットは自宅で行わず、山中などの現地で行うのが一般的である。従って、括り罠の設置には時間が掛かるため、括り罠を仕掛ける数量に限度があり、一人で多くの括り罠を仕掛けることは困難であり、且つ、括りワイヤー(6)をセットする際、粘土質の滑り易い場所や斜面などさまざまな条件下でのセット作業が行われるため、括り罠の括りワイヤー(6)のセットが安定して安全に行えない場合も生じ、更には大怪我をする恐れもあった。
本考案は括り罠の括りワイヤーのセットが自宅で容易に行えると共に運搬中の振動で括り輪部が外れる心配もなくなり、安全で且つ現地での設置が極めて簡単で短時間に行えるものとなる括り罠の安全装置を提供することを目的とする。
本考案は上記問題点を解消するために成されたもので、つまり、矩形状の踏板本体の長手方向に沿って設けたガイド片の両端部に、帯板が固定されるための安全装置を設け、該 安全装置が、ガイド片の両端上部に立設させた板状の取付部と、その取付部に取付けると 共に、帯板の上面に先端が配置されて、該帯板を固定するための頭付きネジ又はピンであ るセット固定具と、から少なくとも構成するものと成す。また前記セット固定具の頭部にツマミ部を設けたものとするのが好ましい。
請求項1のように矩形状の踏板本体(1)の長手方向に沿って設けたガイド片(1a)の両端部に、帯板(31),(32)が固定されるための安全装置(4)を設け、該安全装置(4)が、ガイド片(1a)の両端上部に立設させた板状の取付部(41)と、その取付部(41)に取付けると共に、帯板の上面に先端が配置されて、該帯板を固定するための頭付きネ ジ又はピンであるセット固定具と、から少なくとも構成することにより、本考案は自宅で事前に括りワイヤー(6)のセットが行え、そのまま現地へ安心して持ち込めるものとなるため、一人で多数の括り罠を効率良く設置出来るものとなると共に、安全で且つ現地に於いて安心して設置が極めて簡単で短時間に行えるものとなる。この結果、一人で多数の獣類の捕獲が可能なものとなるのである。
請求項2のようにセット固定具(42)として頭部(42a)付きネジを用い、且つ、前記セット固定具(42)のネジ部(42b)の先端に、該ネジ部(42b)の谷径よりも細いピン(42c)を設けたものとすることにより、簡単な構造であっても確実に括り輪部(6a)の外れが防止できるものとなるため、安価に製作することができ、且つ、括りワイヤー(6)のセットが簡単に行えると共に括り罠の運搬や括り罠の仕掛けが誰にでも簡単に且つ安全に行えるものとなった。
請求項3に示すようにセット固定具(42)の頭部(42a)にツマミ部(42d)を設けることにより、安全装置(4)のセットが誰にでも簡単に行えるものとなった。
本考案が踏板に取付けられた状態を示す斜視図である。
本考案がセットされた踏板に、括りワイヤーと保持用ワイヤーを装着した状態を示す説明図である。
本考案がセットされた踏板の設置状態を示す説明図である。
本実施形態のセット固定具を示す説明図である。
本考案の作用を示す説明図である。
本考案の実施形態を図面に基づいて説明する。(A)は踏板であり、該踏板(A)は金属製で後述する踏板本体(1),支持部材(2),括り輪装着帯体(3),設置枠(5)とから少なくとも構成されたものである。(1)は長方形状で金属板の踏板本体であり、該踏板本体(1)には、踏板本体(1)の長手方向に沿って外縁を折曲し、一方の外縁を立設したガイド片(1a)と成し、他方(手前)の外縁を下方に折曲させている。また踏板本体(1)には1個或いは2個以上の小穴(1b)を穿設させている。この小穴(1b)は踏板(A)の紛失防止用のものである。前記踏板(A)としては、実用新案登録第3170042号で用いるものを利用するのが好ましい。
(2)は踏板本体(1)の長手方向中央で上下両側(図2の図中に於いては上下)に取付けた一対の支持部材であり、該支持部材(2)は金属板を断面L字状に折曲して形成され、踏板本体(1)に対して上下移動可能に取付けられている。又、前記支持部材(2)には、全体を上下移動させる角度調節手段(21)を設けたものとしても良い。尚、本考案で言う「踏板本体(1)の長手方向中央で上下両側に取付け」とは、図1、図2に示す図中に於いて上下で且つそれぞれに取付け、且つ、その位置は長手方向の中央部に取付けることを指すものとする。(3)は支持部材(2)に両開口端側を回動自在に装着した略コの字状の金属製帯板(31),(32)の2つから成ると共にこの帯板(31),(32)の中間部が踏板本体(1)の長手方向両端から突出する括り輪装着帯体であり、該括り輪装着帯体(3)の帯板(31),(32)の中間には溝(31a),(32a)が図1に示すように形成されている。また括り輪装着帯体(3)としては、後述する括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)を掛け止めするための機能を有するものであれば、上記形状に限定されるものではない。又、前記溝(31a),(32a)の役目は、帯板(31),(32)に括りワイヤー(6)をセットする際に位置が決まり易くなると共に括りワイヤー(6)が帯板(31),(32)から直ぐに外れることなく、獣類の足を確実に括り付けることが出来るためのものである。尚、本考案で言う「帯板(31),(32)の中間部」とは、両側から折曲して略コの字状に形成された際、開口側と反対側の真直ぐな基部側を指すものとする。
(4)は帯板(31),(32)に括りワイヤー(6)がセットされた際に前記帯板(31), (32)を固定し、括り罠が安全に持ち運び可能とするための安全装置であり、該安全装置 (4)の構造が、ガイド片(1a)の両端上部に立設させた板状の取付部(41)と、該取付 部(41)に取付けると共に、帯板(31),(32)の上面に先端が配置されて、該帯板(31 ),(32)を固定するための頭付きネジ又はピンであるセット固定具(42)と、から少な くとも成されている。またセット固定具(42)としては、頭部(42a)付きネジを用い、且つ、そのネジ部(42b)の先端には、セット固定具(42)のネジ部(42b)の谷径よりも細いピン(42c)が固着されるか又は削り出ししていると共に前記頭部(42a)にツマミ部(42d)が設けられている(図4参照)。また前記ネジ部(42b)としてはネジ山を2山から5山程度としておくのが好ましい。又、前記ツマミ部(42d)としては、図4(a)に示すように円環状にすると良く、図4(b)に示すように三日月状とするものとしても良い。尚、前記取付部(41)に穿設した図1に示す2つの穴は、少なくとも一方をネジ穴とするのが好ましく、且つ、前記セット固定具(42)として、頭部(42a)付きネジ以外に、釘や太めの針金など棒状のものを用いても良い。(5)は踏板本体(1)が落下可能に支えられて設置するための金属製の設置枠であり、該設置枠(5)は、踏板本体(1)が容易に入る大きさを有し、設置枠(5)の前後(図1の図中に於いては上下)には立片(51)があり、該立片(51)の一方の中央には切欠(52)が穿設されており、立片(51)の左右には立片(51)よりも低い傾斜片(53)がある。更に設置枠(5)の底面には大きな四角穴(54)が穿設され、その底面の縁には丸穴(55)が穿設されている。この丸穴(55)は設置枠(5)の紛失防止用のものである。尚、前記設置枠(5)の役目は上記以外に、踏板本体(1)の落下距離を確保させると共に土が内部に入らないように維持させる役目も果たす。
(6)は一端側に後述する締付体(7)を介して締付け可能な括り輪部(6a)を形成した括りワイヤーであり、この括りワイヤー(6)としては、各数本の金属細線を撚り合せた柔軟性のあるもので、動物の足が容易に括り付けられるように弾力性を付勢可能となるものが好ましく、その太さとしては、例えば4mm〜5mm程度のものが好ましい。(7)は金属製の金具で形成した一般的な締付体であり、該締付体(7)は後述するコイルバネ部材(8)の弾発力で括り輪部(6a)を縮径する役目を成す。(8)は括りワイヤー(6)を貫通させる圧縮用のコイルバネ部材であり、該コイルバネ部材(8)は締付体(7)の下部に位置させておく。またコイルバネ部材(8)は圧縮した状態で弾発力を付与させるものであり、その弾発力は、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)が縮径して捕獲した動物の足から外れない強さのものである。
(9)は中心に挿通穴を穿設したストッパーであり、これはコイルバネ部材(8)の後方で括りワイヤー(6)に設け、前記挿通穴に括りワイヤー(6)を挿通させて設けている。このストッパー(9)には、端部に円形の鍔を形成し、且つ側面に止めネジ(91)を螺合させている。このストッパー(9)はコイルバネ部材(8)を圧縮する際に、鍔側を手で押して圧縮させ、所定の圧縮が完了した位置で止めネジ(91)を括りワイヤー(6)にネジ込み、その位置に圧縮状態のコイルバネ部材(8)を弾発的に保持するためのものである。また前記止めネジ(91)としては、手で簡単に締付けできる蝶ネジを使用するのが好ましい。(10)は踏板本体(1)の小穴(1b)に一端を挿通する保持用ワイヤーであり(図2参照)、この挿通した一端側は小穴(1b)を挟んで止め環と結び目を作り、小穴(1b)から抜けられないようにし、他端は立木又は杭等に結んで設置する。この保持用ワイヤー(10)は踏板(A)を設置する際に、捕獲した動物が暴れて踏板(A)が山中の谷間等に落ちて紛失するのを防止するためのものである。尚、前記保持用ワイヤー(10)を踏板本体(1)に装着する方法は、図2に示すような方法に限定されるものではない。
先ず始めに本考案の括り罠の安全装置のセット方法について説明する。予め必要個数の括り罠を室内に運び、机等の平面に踏板本体(1)部分を載置して置く。先ず始めに、捕獲する目的の獣類に予め調節された踏板(A)の帯板(31),(32)の外周に、括りワイヤー(6)の括り輪部(6a)を回し掛けて装着する。次に取付部(41)にセット固定具(42)を螺合させて締付けることにより、ネジ部(42b)の先端に設けた細いピン(42c)が帯板(31),(32)の上面に配置される。この時、セット固定具(42)のネジ部(42b)にはネジ山が少ないため、セット固定具(42)を取付部(41)に締付ける際は素早く行えるものとなる。尚、前記セット固定具(42)として棒状のものを用いる時には、取付部(41)の穴に棒状のセット固定具(42)を差込むだけで、帯板(31),(32)から括りワイヤー(6)が外れることを防止出来るものとなる。
次にストッパー(9)を括り輪部(6a)の方向に手で押して、コイルバネ部材(8)を、締付体(7)を介して圧縮状態にさせ、その状態でストッパー(9)の止めネジ(91)を締付けて、ストッパー(9)を括りワイヤー(6)に固定する。この時、括り輪部(6a)は帯板(31),(32)に沿って装着されると共に帯板(31),(32)がセット固定具(42)によって略固定した状態でコイルバネ部材(8)を圧縮することにより、括りワイヤー(6)が付勢された状態でセット出来るものとなる。つまり、コイルバネ部材(8)を圧縮状態にさせる際の作業が安定して且つ安心して行えるため、従来よりも遥かに容易に括りワイヤー(6)のセットが完了するものとなるのである。上記の要領で本考案品を用いて順次複数の括り罠の括りワイヤー(6)をセットして行けば良い。このように自宅で括りワイヤー(6)のセットが容易に行えるものとなる。更に、この状態のものを車両に積んで現地まで運んでも、括り輪部(6a)は帯板(31),(32)から外れる恐れがなくなるものとなる。
次に本考案の括り罠の設置について説明する。予め地面に浅い穴を図3に示すように掘り、該穴の内部に設置枠(5)を置き、その上に、括りワイヤー(6)のセット済みの踏板本体(1)が乗せられて踏板(A)を設置する。そして、踏板(A)の設置が完了した後、括りワイヤー(6)の端部を立木又は地中に打ち込んだ杭に結ぶと共に踏板本体(1)の小穴(1b)に挿通して挿入した保持用ワイヤー(10)の端部を括りワイヤー(6)が結んだ立木や根に結ぶ。その後、セット固定具(42)を取付部(41)から外す。更に踏板(A)の上に落ち葉や土を被せる。これで括り罠の設置が完了する。前記安全装置(4)のセット及び解除以外の作業は実用新案登録第3170042号で行う作業と略同じである。
前記セット固定具(42)の着脱作業を図5に基づいて説明する。先ず始めにセット固定具(42)のピン(42c)を取付部(41)のネジ穴部に挿入し[図5(a)参照]、セット固定具(42)のツマミ部(42d)を手で回転させて捻じ込むと、セット固定具(42)は3回前後回転させるだけで締付けが完了し、且つ、前記ピン(42c)は帯板(31),(32)の上方へ配置されるので、帯板(31),(32)は作動することがなくなる[図5(b)参照]。この状態で括り罠を運搬すれば車両の振動で括り輪部(6a)が外れる心配はなく、現地に於いても安心して多数の括り罠を設置することが出来るものとなる。また設置後、セット固定具(42)を外す際、ツマミ部(42d)を手で3回前後回転させて引き抜くだけで、ネジ部(42b)は取付部(41)の前記ネジ穴部から外れるので、素早く安全装置(4)の解除が行われるものとなるのである。
A 踏板
1 踏板本体
1a ガイド片
2 支持部材
3 括り輪装着帯体
31,32 帯板
4 安全装置
41 取付部
42 セット固定具
42a 頭部
42b ネジ部
42c ピン
42d ツマミ部