JP3171825B2 - 通気性金型の製造方法 - Google Patents

通気性金型の製造方法

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JP3171825B2 JP15247398A JP15247398A JP3171825B2 JP 3171825 B2 JP3171825 B2 JP 3171825B2 JP 15247398 A JP15247398 A JP 15247398A JP 15247398 A JP15247398 A JP 15247398A JP 3171825 B2 JP3171825 B2 JP 3171825B2
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義彦 国枝
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中日本ダイカスト工業株式会社
花野商事株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細な多数の気孔
を有する金属材料を用いて通気性金型の少なくとも一部
を製造する方法に関し、特にダイカスト鋳造用金型の製
造に適した製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、樹脂成形用金型の材料とし
て、微細な多数の気孔を有する金属材料が知られてい
る。この金属材料は放電加工、高速切削加工などの方法
によって加工され、所望の形状及び寸法の金型にされ
る。得られた金型を用いると、気孔が気体の通路として
機能し、キャビティ内の空気やガスの一部を、型の合わ
せ面以外の箇所からでも排出させることができる。空気
やガスが閉じ込められて残り樹脂成形品に悪影響を及ぼ
す不具合を解消できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ダイカスト
鋳造用の金型の製作に際しても、前記と同様にして金属
材料を加工すると、以下のような問題が起こる。例え
ば、金属材料を放電加工した場合、電極と金属材料との
間で放電が行われ、その金属材料は加熱により高温とな
る。所望形状に加工された金型の温度は徐々に低下す
る。この温度低下の過程でいわゆる焼きなましが生じ、
金型の表層部が軟化する。この軟化により、表層部の強
度や硬度が著しく低下する。また、高速切削加工によっ
ても金型の表層部の強度や硬度が低下する。そして、こ
の金型を用いてダイカスト鋳造を行うと、金型に対し溶
湯による高い圧力が加わり、金型の表層部が変形し、気
孔が潰されてしまう。こうなると、気孔による排気性能
が十分発揮されなくなる。このような問題は、成形時に
高い圧力の加わる金型であれば同様にして起こり得る。
【0004】そこで、本発明の課題は、単に放電加工な
どの加工法によって製作した場合よりも、表層部が高い
強度及び硬度を有し、使用に際し高い圧力が加わっても
表層部の気孔が潰れることのない通気性金型の製造方法
を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の第1の
発明は、微細な多数の気孔を有する金属材料を用い、少
なくとも一部が通気性を有する金型のその通気性部分を
製造する方法において、前記金属材料を、前記通気性部
分と同一形状または略同一形状に加工する加工工程と、
前記加工工程による加工後の金属材料の少なくとも表層
部を焼入れする熱処理工程とを備えることを要旨として
いる。
【0006】上記第1の発明によると、金属材料から通
気性金型の通気性部分を得るまでに加工工程及び熱処理
工程を経る。加工工程では、金属材料が、前記通気性部
分と同一形状または略同一形状に加工される。熱処理工
程では、前記加工工程で加工された金属材料が熱処理さ
れる。熱処理により、金属材料の少なくとも表層部が焼
入れされ、前記通気性部分が得られる。従って、加工工
程の際に金属材料が高温となり、焼きなましのような現
象が起こり、加工後の金属材料の表層部が軟化しても、
少なくとも表層部はその後の熱処理に基づく焼入れによ
り強く、かつ硬くなる。
【0007】なお、熱処理工程での熱処理により生ずる
金属材料の変形量は微小である。このため、熱処理工程
に先立つ加工工程では、金属材料を通気性部分と同一形
状または略同一形状に加工している。同一形状に加工し
ても、略同一形状に加工しても最終的に得られる通気性
部分は実質的に同一となるからである。ここでの同一形
状とは、目的とする通気性部分と同じ形状をいう。ま
た、略同一形状とは、熱処理による微小な変形量を推定
し、その変形分を考慮した形状であり、熱処理工程にお
いてその考慮した分だけ変形すれば、目的とする通気性
部分と同じ形状となる形状をいう。
【0008】請求項2に記載の第2の発明は、第1の発
明に加え、前記熱処理工程が非酸化性雰囲気下で行われ
ることを要旨としている。
【0009】上記第2の発明によると、熱処理工程で
は、熱処理が非酸化性雰囲気下で行われる。このため、
熱処理時に、加工後の金属材料の少なくとも表層部が酸
素と反応することがなく、酸化にともなう不具合、例え
ば脆化が起こりにくい。
【0010】請求項3に記載の第3の発明は、第1また
は第2の発明に加え、前記加工工程が、前記金属材料の
加工に際し水または油を用いる処理を含み、前記熱処理
工程が、前記加工工程において前記金属材料に付着した
水または油を、焼入れ処理に先立ち除去する除去工程を
含むことを要旨としている。
【0011】上記第3の発明によると、加工工程では金
属材料の加工に際し水または油が使用される。水または
油の付着した金属材料がそのまま熱処理されると、その
水または油により金属材料の表層部の酸化が促進される
おそれがある。これに対し第3の発明における熱処理工
程では、熱処理に先立ち除去工程が行われる。この工程
においては、加工工程で金属材料に付着した水または油
が除去される。従って、その後に行われる焼入れ処理の
際には、金属材料は水または油の付着していない状態と
なっている。
【0012】請求項4に記載の第4の発明は、第1乃至
第3のいずれか1つの発明に加え、前記熱処理工程での
熱処理が熱間等方加圧法に従って行われることを要旨と
している。
【0013】上記第4の発明によると、熱処理工程で
は、加工後の金属材料が熱間等方加圧法に従って熱処理
される。すなわち、高温高圧下において、加工後の金属
材料がアルゴンガスや窒素ガスを圧力媒体として焼成さ
れる。焼成後、金属材料の周囲の温度は急激に低下され
る。この温度低下により金属材料の少なくとも表層部が
焼入れされ、強くかつ硬くなる。また、熱間等方加圧法
では、金属材料に対し、その周囲から均等で非常に高い
圧力が加わる。この加圧により、金属材料の開いた気孔
(開孔)は押し潰されることなく形状を維持するが、閉
気孔が押し潰され欠陥が少なくなり、強度が高くなる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施
形態について、図面に従って説明する。まず、通気性金
型の概略について説明する。図2に示すように、通気性
金型1はダイカスト鋳造に用いられるものであり、移動
不能に設けられた固定型2と、水平方向に往復動可能に
設けられ、かつ、その往復動により固定型2に接近及び
離間する可動型5とを備えている。固定型2及び可動型
5はそれぞれ母型3,6と、その母型3,6に組込まれ
た入駒4,7とを備えている。入駒4,7は母型3,6
よりも高い強度及び硬度を有している。両入駒4,7に
は成形部(ここでは凹部)4a,7aが形成されてい
る。両成形部4a,7aは、可動型5が固定型2に接近
して合わせられたときに、所望形状の鋳物を成形するた
めの成形空間(キャビティ)8を形成するためのもので
ある。ここでは、キャビティ8として断面略ト字状をな
すものを例示したが、これに限られない。
【0015】両入駒4,7及び両母型3,6には、2種
類の溝11,12が形成されている。一方の溝11は、
可動型5が固定型2に合わせられたときに、キャビティ
8に溶融金属(溶湯)を導くための流路を形成するため
のものである。流路の途中にはシリンダ13が設けられ
ている。シリンダ13は、キャビティ8に溶湯を供給す
るためのピストン(図示略)が往復動可能に収容される
箇所である。他方の溝12は、可動型5が固定型2に合
わせられたときに、第1ガス抜き路14を形成するため
のものである。第1ガス抜き路14は、流路を通じて溶
湯がキャビティ8に流入してきたときに、そのキャビテ
ィ8の空気やガスの一部を排出させるための通路であ
る。
【0016】母型3及び入駒4には、キャビティ8と母
型3の外部とを連通させる第2ガス抜き路15が形成さ
れている。第2ガス抜き路15は、前述した第1ガス抜
き路14と同様の目的で設けられたものであり、その途
中には、通気性を有し、かつ第2ガス抜き路15を塞ぐ
閉塞部材16が配置されている。閉塞部材16は前述し
た成形部4aの一部を構成するものであり、通気性金型
1の通気性部分に相当する。なお、固定型2及び可動型
5において閉塞部材16を除く箇所は、通気性を実質的
に有しない金属材料によって形成されている。
【0017】次に、閉塞部材16を製造する方法につい
て説明する。この製造方法は、図1に示すように、金属
材料17を、閉塞部材16と同一形状または略同一形状
に加工する加工工程Iと、加工工程Iを経た後の金属材
料18を熱処理し、少なくともその表層部18aを焼入
れすることにより所望の閉塞部材16にする熱処理工程
IIとを備える。
【0018】加工工程Iで用いる金属材料17は、ダイ
カスト鋳造用金型の材質として一般的に知られているも
の、例えば熱間工具鋼(SKD)、クロム鋼などを材質
としている。金属材料17には、数μm乃至数十μm程
度の平均空孔径を有する微細な多数の気孔が、同金属材
料17の全体に分散して設けられている。隣り合う気孔
は互いにつながっており、金属材料17は全体として通
気性を有している。金属材料17は、例えば水噴霧法に
よる高合金鋼粉末と、強度向上のための高合金短繊維と
を混合した後、焼結することにより得られた多孔質焼結
体である。
【0019】加工工程Iでは、金属材料17に放電加工
を施す。ここでの放電加工は、キャビティなどの加工の
ために一般的に行われているものと同じであり、油など
の絶縁性液体の中で電極と被加工物(この場合、金属材
料17)とを微少間隔で対向させ、パルス状の電圧を加
え、アーク放電を短時間発生させ、そのエネルギーによ
って加工を行う方法である。この放電加工により、金属
材料17が閉塞部材16と同一形状または略同一形状に
加工される。放電加工に際しては、金属材料17が放電
にともなう加熱により高温となる。放電加工後の金属材
料18は絶縁性液体から取出されて放置される。放電加
工後の金属材料18の温度は、時間の経過に従い徐々に
下がる。この温度低下の過程でいわゆる焼きなましが生
じ、金属材料18が軟化する。このように冷却された金
属材料18には水または油が付着している。
【0020】熱処理工程IIは、金属材料18に付着し
た水または油を、焼入れ処理に先立ち除去(脱水または
脱脂)する除去工程IIaを含んでいる。水を除去する
方法としては、例えば、金属材料18を加熱して水分を
蒸発させることが挙げられる。この加熱は、焼入れのた
めの熱処理とは別に行ってもよいし、その熱処理の初期
に行ってもよい。後者の場合には、例えば、水分が蒸発
するまではゆっくりと金属材料18を加熱する。
【0021】焼入れのための熱処理は非酸化性雰囲気下
で行われることが望ましい。ここで、非酸化性雰囲気と
は、酸素がなく酸化反応が起こらない雰囲気をいい、例
えば、真空状態にされた空間、アルゴンガスなどの不活
性ガスが満たされた空間などが挙げられる。また、非酸
化性雰囲気には還元性雰囲気が含まれる。例えば、カー
ボンの粒子で取り囲まれた空間が還元性雰囲気に相当す
る。この空間で熱処理が行われると酸素がカーボンと反
応し、還元性雰囲気が得られる。本実施形態では、これ
らのことを考慮して、熱処理工程において熱間等方加圧
法(高温静水圧成形法、HIPとも呼ばれる)が行われ
る。HIPは、素材(金属材料18)を高温高圧下でア
ルゴンガスや窒素ガスを圧力媒体として焼成する方法で
ある。HIPによる熱処理に際しては、金属材料18の
周囲の温度は1300K(ケルビン)程度まで上昇さ
れ、その後、急激に低下される。
【0022】HIPを行うことにより、金属材料18の
少なくとも表層部18aが焼入れされ、所望の閉塞部材
16が得られる。従って、加工工程Iの際に金属材料1
7が高温となり、焼きなましのような現象が起こり表層
部18aが軟化しても、少なくとも表層部18aの強度
及び硬度は、その後の熱処理(HIP)に基づく焼入れ
により、ダイカスト鋳造に十分に耐え得る程度まで高め
られる。特に、HIPでは、金属材料18に対し、その
周囲から均等で非常に高い圧力が加わる。この加圧によ
り、金属材料18の開いた気孔(開孔)は押し潰される
ことなく形状を維持するが、閉気孔が潰され欠陥が少な
くなり、強度が高くなる。このため、通気性を維持しつ
つ、金属材料18の少なくとも表層部18aの強度及び
硬度を確実に高めることができる。
【0023】また、HIPによる加熱処理は非酸化性雰
囲気下で行われるので、熱処理により、金属材料18の
少なくとも表層部18aが酸素と反応することがなく、
酸化にともない生ずる不具合、例えば脆化、強度や硬度
の低下が起こりにくい。また、加工工程Iで水または油
の付着した金属材料18がそのまま熱処理されると、そ
の水または油により金属材料18の表層部18aの酸化
が促進されるおそれがある。しかし、本実施形態の熱処
理工程IIでは、焼入れに先立ち除去工程IIaが行わ
れ、金属材料18に付着した水または油が完全に除去さ
れている。従って、その後に行われるHIPでは、水ま
たは油の付着していない金属材料18に対し熱処理が施
されることとなる。このことも、強度及び硬度の高い閉
塞部材16を製造するうえで重要である。さらに、HI
Pによると寸法精度の高い閉塞部材16が得られる。こ
れは、HIPでは、金属材料18に対し四方から等しい
大きさの高圧力が加わることから、ねじれ、歪みなどが
発生しにくいためと考えられる。
【0024】上記のようにして得られた閉塞部材16
は、図2に示すように通気性金型1の一部品として使用
される。すなわち、閉塞部材16は固定型2側の入駒4
に組込まれ、その一部が成形部4aの一部として機能す
る。この通気性金型1によってダイカスト鋳造を行う場
合には、ピストンの往復動により、溶湯が流路を通じて
キャビティ8に供給される。図2の場合、流路からキャ
ビティ8内に入り込んだ溶湯の大部分は、上方へ向けて
流動する。この際、キャビティ8内の空気やガスの一部
は、吸引などの操作により第1ガス抜き路14を通って
通気性金型1の外部へ排出される。溶湯がキャビティ8
の最上部に至ると、第1ガス抜き路14からの空気やガ
スの排出が止まる。
【0025】続いて溶湯は、未だ溶湯の充填されていな
い箇所(右方へ突出する箇所)へ流動する。その未充填
箇所は袋小路のように閉空間となる。しかし、この箇所
には第2ガス抜き路15がつながっており、しかも、微
細な多数の気孔を有する閉塞部材16が配置されてい
る。このため、前記閉空間の空気やガスは、閉塞部材1
6の気孔及び第2ガス抜き路15を通じて通気性金型1
の外部へ排出される。空気やガスが閉じ込められて残り
鋳物に及ぼす悪影響を排除でき、品質の高い鋳物を成形
することができる。
【0026】加えて、本実施形態では前述したように閉
塞部材16の強度及び硬度が熱処理によって高められて
いる。閉塞部材16は、金属材料17が本来持っている
特性(通気性)と同等の特性を発揮する。このため、ダ
イカスト鋳造に際し、溶湯による高い圧力が加わって
も、閉塞部材16の少なくとも表層部は変形せず、気孔
が潰されることがない。従って、通気性金型1を用いた
ダイカスト鋳造が繰り返し行われても、高い排気性能を
長期間にわたって持続させることができる。
【0027】上述した製造方法による効果を確認するた
めに、常温下において以下の引張り強度試験、硬度試験
及びパンチ試験をそれぞれ行った。引張り強度試験及び
硬度試験に際しては、図3で示す形状の試験片を複数作
成した。この試験片の大きさはJIS Z2201−1
9685号で規定されている試験片の約40%である。
各試験片の長さL1,L2及び幅W1,W2は、16,
30,10,16(単位はいずれもmm)に設定されて
いる。これらの試験片は、平均空孔径の異なる3種類
(7μm、20μm、30μm)の金属材料を、放電加
工することにより得たものである。ここでは、平均空孔
径が7μmの金属材料から製作したものを試験片Aと
し、20μmの金属材料から製作したものを試験片Bと
し、30μmの金属材料から製作したものを試験片Cと
する。
【0028】試験片A,B,Cに対しそれぞれ4種類の
熱処理(熱処理1,2,3,4)を行った。熱処理1で
は、真空炉内に試験片A,B,Cを配置し、その真空炉
内の温度を図4において特性線CL1で示すように変化
させた。90分程度の時間をかけて温度を徐々に上昇さ
せ、最高温度1223Kに保持した後、温度を急激に低
下させた。熱処理2では、熱処理1と同様にして加熱処
理を行った。熱処理1との相違点は特性線CL2で示す
ように、最高温度が1223Kから1323Kに上げら
れた点である。熱処理3では、HIP装置を用い、カプ
セルフリー熱間等圧加圧法(CFHIP)に従い、特性
線CL3で示す温度変化に従って試験片A,B,Cを加
熱した。昇温の途中、923Kでの加熱を10分間継続
し、1123Kでの加熱を10分間継続し、1223K
での加熱を5分間継続した。1223Kでの加熱後、炉
冷により温度を急激に低下させた。熱処理4では、熱処
理3と同様にして加熱を行った。熱処理3との相違点
は、特性線CL4で示すように最高温度が1223Kか
ら1323Kに上げられた点である。
【0029】前記のように熱処理1,2,3が施された
試験片A,B,Cの寸法を測定し、熱処理前の寸法に対
し、どの程度膨張または収縮したかを計算した。その結
果を図5に示す。いずれの熱処理1,2,3に関しても
膨張率は、−0.2乃至+0.3%という非常に狭い範
囲に収まっていた。
【0030】続いて、熱処理1,2,3,4が施された
試験片A,B,Cと、施されていない試験片A,B,C
とをそれぞれ引張り試験機に取付けて長手方向に引張
り、各試験片A,B,Cが破断されたときの強度(引張
り強度)を測定した。その測定結果を図6に示す。いず
れの試験片A,B,Cに関しても、熱処理1,2,3,
4を施すことにより、施していないものよりも引張り強
度が高くなった。また、いずれの試験片A,B,Cに関
しても、CFHIPによる熱処理を施した場合(熱処理
3,4)の方が、真空での熱処理を施した場合(熱処理
1,2)よりも引張り強度が高くなった。最も引張り強
度が高くなったのは、どの試験片A,B,Cに関しても
熱処理4(1323KでのCFHIPによる熱処理)で
あった。また、1323Kでの熱処理2,4が施された
場合でも、施されていない場合でも、平均空孔径の小さ
な(7μm)試験片Aの引張り強度がほかの試験片B,
Cの引張り強度よりも高くなった。
【0031】次に、引張り強度試験において破断された
試験片A,B,Cを用いて硬度試験を行った。これらの
試験片A,B,Cを樹脂で水平に埋め、#800程度の
粗さのエメリー紙により研磨し、硬度をビッカース硬度
試験機によって測定した。試験片A,B,Cに対する負
荷荷重を5Kgに設定し、負荷時間を15秒に設定し
た。そして、各試験片A,B,Cについて5箇所ずつ、
硬度を測定した。その測定結果を図7に示す。いずれの
試験片A,B,Cに関しても、同じ平均空孔径であって
も、CFHIPによる熱処理を施した場合(熱処理3,
4)の方が、真空での熱処理を施した場合(熱処理1,
2)よりも硬度が高くなった。これは、CFHIPによ
る熱処理を施した場合には高い等方圧が試験片A,B,
Cに加わり、閉気孔が押し潰され欠陥が少なくなるため
と考えられる。最も硬度が高くなったのは、どの試験片
A,B,Cに関しても熱処理4(1323KでのCFH
IPによる熱処理)であった。さらに、各試験片A,
B,Cに関しては、CFHIPによる熱処理を施した場
合(熱処理3,4)においてのみ、硬度の上昇が見られ
た。
【0032】CFHIPによる熱処理を施した場合(熱
処理3)には平均空孔径が小さいほど硬度が高くなっ
た。これは、仮に金属材料の空孔が固体材料における欠
陥とすると、平均空孔径の小さな試験片Aほど欠陥が小
さいためと考えられる。CFHIPによる熱処理を施し
た場合(熱処理3)には、いずれの試験片A,B,Cに
関しても、熱処理を施さない場合よりも硬度が高くなっ
た。しかし、真空で熱処理を施した場合(熱処理1)の
硬度は、熱処理を施さない場合の硬度と同程度であり、
熱処理1による効果がほとんど見られなかった。また、
CFHIPによる熱処理を施した場合(熱処理4)の硬
度は、熱処理を施さない場合の硬度よりも高くなった
が、平均空孔径による差は見られなかった。これに対
し、真空で熱処理を施した場合(熱処理2)の硬度は、
熱処理を施さない場合の硬度と同程度であり、熱処理2
による効果がほとんど見られなかった。
【0033】パンチ試験に際しては、1種類の直径(1
0mm)と、3種類の厚み(0.5mm,0.6mm,
0.7mm)とを有する円板状(硬貨状)の試験片D,
E,F,G,H,I,J,K,Lを用いた。これらの試
験片D乃至Lは、いずれも20μmの平均空孔径を有す
る金属材料を、放電加工して得たものである。試験片D
乃至Lは、厚みと、熱処理の有無及び種類との組合わせ
において相互に異なっている。詳しくは、図9に示すよ
うに試験片D,E,Fに対してはいずれも熱処理が施さ
れていない。試験片D,E,Fの厚みは順に0.5m
m,0.6mm,0.7mmである。試験片G,Hの厚
みはいずれも0.5mmであるが、前者に対しては熱処
理1が施され、後者に対しては熱処理2が施されてい
る。試験片I,J,Kに対してはいずれも熱処理3が施
されている。試験片I,J,Kの厚みは順に0.5m
m,0.6mm,0.7mmである。試験片Lは0.5
mmの厚みを有し、かつ熱処理4が施されている。
【0034】また、パンチ試験に際しては簡易的な装置
として図8に示す治具21を用いた。治具21は、上下
両把持具22,23と、それらを締結するボルトなどの
締結具24と、上側の把持具22に上下方向へのスライ
ド可能に挿通されたピン25とを備えている。そして、
両把持具22,23によって各試験片D乃至Lの外周部
分を把持し、締結具24によって両把持具22,23を
所定の締付け力(13Kg)で締付けた。各試験片D乃
至L上に所定の直径(2.4×10-3m)を有する鋼球
26を載せ、荷重によりピン25を1mm/minの速
度で下動させた。そして試験片D乃至Lが破断する際の
荷重を測定した。その結果を図9に示す。
【0035】熱処理1,2,3,4を施した場合(試験
片G,H,I,J,K,L)の方が、施さない場合(試
験片D,E,F)よりも荷重が小さくなった。この現象
の原因としては、除去工程IIaにおいて水または油が
十分に除去されず、その水または油の存在が原因で酸化
反応が起こったこと、試験片D乃至Lの厚みが小さく、
残存した水または油の影響を熱処理時に大きく受けたこ
と、などが考えられる。このように考えた根拠は、実際
に試験片G乃至Lを観察してみると、その表面が酸化ク
ロムのような緑色を呈しており、金属光沢が見られなか
ったからである。そのほかに、同じ加熱温度及び厚みで
あれば、熱処理1より熱処理3の方が荷重が大きく、熱
処理2より熱処理4の方が荷重が大きいことがわかっ
た。すなわち、真空での熱処理よりもHIPによる熱処
理の方が強度向上の点で大きな効果を期待できることが
わかった。
【0036】このように引張り強度試験、硬度試験及び
パンチ試験の測定結果から、(a)熱処理1,2,3を
施すことによる試験片A,B,Cの膨張が少ないこと、
(b)熱処理1,2,3,4を施すことにより引張り強
度が上昇すること、(c)熱処理1,2よりも熱処理
3,4の方が引張り強度が高くなること、(d)熱処理
3,4を施すことにより硬度が上昇すること、(e)水
または油の存在が強度低下を招くおそれがあること、な
どを確認することができた。
【0037】なお、本発明は次に示す別の実施形態に具
体化することができる。
【0038】(1)本発明は、加工工程において放電加
工に代えて高速切削加工を行う場合にも適用できる。
【0039】(2)本発明は通気性金型1の一部を製造
する場合だけでなく、全部を製造する場合にも適用でき
る。
【0040】(3)熱処理工程IIでの焼入れのための
熱処理は、鋳造時に溶湯の圧力が直接加わる箇所、すな
わち金属材料18の少なくとも表層部18aに対して行
われればよく、それ以外の箇所に関しては、必要に応じ
て熱処理を行えばよい。
【0041】
【発明の効果】以上のように、第1の発明によれば、単
に放電加工などの加工法によって製作した場合よりも、
表層部が高い強度及び硬度を有し、使用に際し高い圧力
が加わっても表層部の気孔が潰れることのない通気性金
型を製造することができる。
【0042】第2の発明によれば、第1の発明の効果に
加え、熱処理工程での熱処理に際し、酸化反応にともな
う強度低下や硬度低下を防ぐことができる。
【0043】第3の発明によれば、第1または第2の発
明の効果に加え、熱処理工程での熱処理に際し、水また
は油の存在に起因する強度低下や硬度低下を防ぐことが
できる。
【0044】第4の発明によれば、第1乃至第3のいず
れか1つの発明の効果に加え、通気性を維持しつつ、加
工後の金属材料の少なくとも表層部の強度及び硬度を確
実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における製造工程を示す工
程図である。
【図2】通気性金型の断面図である。
【図3】引張り強度試験及び硬度試験に用いられる試験
片の正面図である。
【図4】熱処理1,2,3,4における温度変化を示す
グラフである。
【図5】試験片A,B,Cの各々について熱処理1,
2,3を行った場合の膨張率を示すグラフである。
【図6】試験片A,B,Cの各々について、熱処理を行
わなかった場合の引張り強度と、熱処理1,2,3,4
を行った場合の引張り強度とを示すグラフである。
【図7】試験片A,B,Cの各々について、熱処理を行
わなかった場合の硬度と、熱処理1,2,3,4を行っ
た場合の硬度とを示すグラフである。
【図8】パンチ試験用治具の断面図である。
【図9】試験片D乃至Lの各々がパンチ試験により破断
したときの荷重を示すグラフである。
【符号の説明】
1 通気性金型 17,18 金属材料 18a 表層部 I 加工工程 II 熱処理工程 IIa 除去工程
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷川 庄司 岐阜県各務原市金属団地188番地 中日 本ダイカスト工業株式会社内 (72)発明者 藤原 秀雄 兵庫県神戸市西区高塚台3丁目2番地45 花野商事株式会社内 (56)参考文献 特開 平9−225580(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22C 9/06 B22D 17/22

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微細な多数の気孔を有する金属材料を用
    い、少なくとも一部が通気性を有する金型のその通気性
    部分を製造する方法において、 前記金属材料を、前記通気性部分と同一形状または略同
    一形状に加工する加工工程と、 前記加工工程による加工後の金属材料の少なくとも表層
    部を焼入れする熱処理工程とを備えることを特徴とする
    通気性金型の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記熱処理工程は非酸化性雰囲気下で行
    われることを特徴とする請求項1に記載の通気性金型の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 前記加工工程は、前記金属材料の加工に
    際し水または油を用いる処理を含み、 前記熱処理工程は、前記加工工程において前記金属材料
    に付着した水または油を、焼入れ処理に先立ち除去する
    除去工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記
    載の通気性金型の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記熱処理工程での熱処理は熱間等方加
    圧法に従って行われることを特徴とする請求項1乃至3
    のいずれか1つに記載の通気性金型の製造方法。
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