JP3170076B2 - 転がり軸受故障診断装置 - Google Patents

転がり軸受故障診断装置

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JP3170076B2 JP33898392A JP33898392A JP3170076B2 JP 3170076 B2 JP3170076 B2 JP 3170076B2 JP 33898392 A JP33898392 A JP 33898392A JP 33898392 A JP33898392 A JP 33898392A JP 3170076 B2 JP3170076 B2 JP 3170076B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、転がり軸受の正常、異
常の診断を行なう転がり軸受故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり軸受の振動を検出しその検出した
振動信号に基づいて転がり軸受故障診断を行なう手法が
従来よりいくつか提案されており、例えば下記のような
ものがある。 (1)振動加速度の包絡線検波波形を求め、その尖頭値
(ピーク値)と実効値(RMS値)とからの演算による
指標(Q値)を尺度とし、予め計算された振動数成分の
有無によって軸受故障部位の診断を行う手法(特開昭6
3−297813号公報、特開平1−152335号公
報参照) (2)振動加速度センサの信号を、転がり軸受の保持器
や、内/外輪、およびハウジングの固有振動数を各々中
心周波数とするバンドパスフィルタに通し、これを包絡
線検波処理したものと、振動加速度から求めた振動変位
信号との位相、周波数との関係と、回転周波数との大小
関係で転がり軸受の異常の診断を行う手法(特開平3−
221818号公報参照)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述の従
来の手法では、 (1)予め軸受諸元や、公称回転数を入力しなければな
らず、それによって計算された内/外輪、転動体の振動
数成分の抽出をプログラムにて行う必要があり、振動数
成分検出のために周波数方向の幅、比較する振幅値など
を予め決定しなければならず、その最適値を求めるのは
容易では無い。
【0004】(2)複数のバンドパスフィルタ、および
包絡線検波回路を必要とするなど、構成が複雑、高価と
なり、また、判定論理も複雑であるため、プログラミン
グ、および、調整には、熟練者を要する。このように、
いずれの手法の場合も、高精度の診断のためには、軸受
け診断に関して高度な知識を持つ作業者が、個々の軸受
けに対応したレベルの設定を行う必要がある。
【0005】本発明は、高度な知識、経験がなくても転
がり軸受の診断を行なうことのできる転がり軸受故障診
断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の転がり軸受故障診断装置は、 (1)転がり軸受の振動を検出する振動検出器 (2)振動検出器により検出された振動波形の包絡線を
求める包絡線検波器 (3)振動波形および包絡線の各フーリエスペクトルを
求める周波数解析器 (4)それぞれ複数のニューロンを有する、各フーリエ
スペクトルに基づいて求められた情報を入力する入力
層、該入力層との結合状態があらかじめ固定された中間
層、および該中間層との結合状態が学習により修正され
る、転がり軸受の故障の有無及び故障の状態を出力する
出力層からなるニューラルネットワーク を備えたことを特徴とする。
【0007】本発明においては、振動波形、および、そ
の包絡線の二つの周波数分析波形を一つの波形パターン
として、この波形パターンに、平滑化、正規化、圧縮な
どの前処理を必要に応じて施した後、ニューラルネット
にて波形認識をさせることにより異常判別させる。ニュ
ーラルネットワークには、予め、正常な軸受の波形パタ
ーンと、内/外輪、転動体各々に損傷のある場合の波形
パターンを学習させる。
【0008】ニューラルネットによる学習の方法は、下
記の通りである。ニューラルネットは、各周波数に対応
した入力層の各ニューロンにパターン入力が入力された
とき、入力層から大きな入力が送られた中間層のニュー
ロンは、学習入力が加えられる度に、そのカテゴリに相
当する出力層への結合に対しては正の重み付け増加して
いくが、その他のカテゴリに相当する出力層への結合に
対しては、逆に負の重み付けを増加していく。学習過程
で、ある中間層のニューロンへの入力が予め設定した域
値よりも小さいときには、全ての出力層への結合の重み
を、僅かづつ減少(負の方向に増加)して行く。出力層
には、出力すべきか否かの域値を設定して、必要に応じ
て無出力、単数出力、複数出力ができるものとする。
【0009】
【作用】本発明の転がり軸受故障診断装置は、上記のよ
うにニューラルネットワークにより故障診断を行なわし
めるものであるが、本発明は、そのニューラルネットワ
ークへの入力情報、およびそのニューラルネットワーク
自体に特徴を有する。先ずニューラルネットワークへの
入力情報としては振動波形およびその振動波形の包絡線
それぞれのフーリエスペクトルに基づいて求められた情
報が選択される。これにより、例えば振動波形のみをニ
ューラルネットワークに入力する場合と比べ、故障診断
に役立つ情報が高度に凝縮されてニューラルネットワー
クに入力されることになる。
【0010】また、ニューラルネットワーク自体の特徴
に関しては、入力層と中間層との結合があらかじめ固定
されていることである。転がり軸受故障診断装置を構成
しようとする場合に、転がり軸受の故障モードとそのと
きの振動波形、包絡線やそれらのフーリエスペクトルに
どのような現象があらわれるかということについてはあ
らかじめかなりのレベルまで把握されているのが通常で
ある。そこで、それらの知見により、典型的な故障モー
ドとフーリエスペクトルに現われる特徴とに基づいて入
力層と中間層とを結合しておく。これによりニューラル
ネットワーク自体に学習させる前にこのニューラルネッ
トワークは、生まれた時点から故障診断に関し‘本能’
を持っていることになり、学習の収束が早く、かつより
適切な判断を行なうことのできるニューラルネットワー
クとなる。
【0011】本発明の転がり軸受故障診断装置は、この
ように、振動波形およびその包絡線の各フーリエスペク
トルに基づく情報をニューラルネットワークの入力情報
とし、しかも故障診断に関するノウハウをそのニューラ
ルネットワークの入力層と中間層との間の結合状態とし
て予め組み込んであるため、ニューラルネットワークの
学習の収束も早く、しかも熟練者でなくても転がり軸受
けの正常、異常の診断を容易に行なうことができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図
1は本発明の転がり軸受け故障診断装置の一実施例を表
わすブロック図である。モータの作用で回転する負荷の
軸受けに、振動加速度を検出する振動検出器が取付けら
れ、この振動検出器により軸受けの振動が検出される。
この振動検出器により検出された振動加速度信号は増幅
器及び包絡線検波器に入力され、適切に増幅された振動
加速度信号と包絡線検波された振動包絡線検波信号を得
る。これらの振動加速度信号と振動包絡線検波信号は周
波数解析器に入力され、振動加速度信号のフーリエスペ
クトルと振動包絡線検波信号のフーリエスペクトルが求
められる。これらのフーリエスペクトルは波形識別器に
入力され、適切な前処理のあとニューラルネットワーク
で軸受けの故障が診断される。
【0013】図2は、波形識別器の内部を表わす模式図
である。この波形識別器に組み込まれたニューラルネッ
トワークの構成は以下のとおりである。このニューラル
ネットワークは、複数の入力受容装置によりメモリセル
に入力されたパターン情報を処理する入力層、入力層の
出力を、目的に対して予め持っている知識を基にして接
続を固定した回路を通して受容して、出力層に情報を伝
達する中間層、および、中間層からの情報をまとめて出
力を決定する出力層の三層から成る。
【0014】このニューラルネットワークへの入力とし
ては、一つには、平滑化、正規化、圧縮などの処理を通
した周波数解析波形を周波数方向に複数に分割し、その
分割毎の平均パワーが入力層の各ニューロン(メモリセ
ル)への入力となる。各分割幅は任意である。他方で
は、周波数解析した波形から、一次処理(ピーク検出、
高調波成分抽出など)を行い、その各々の成分値が入力
層の各ニューロンの入力とされる。
【0015】中間層の各ニューロンは、入力層の特定の
二つのペアと結合される。この特定の結合の組み合わせ
は、予め得られている知識によって決定される。軸受け
の故障診断においては、内外輪疵、転動体疵のように、
多くの研究によって得られた知識が予め存在している場
合には、それを利用して、入力層の特定のペアが決定さ
れる。もし、予め得られた知識が無い場合には、ニュー
ラルネットワークの構成に先立ち、入力層の全ての二つ
のニューロンのペア各々と結合した中間層が作成され、
特定の故障におけるパターンが入力層に呈示された時、
最も大きな出力が得られる中間層がその故障における特
定のペアとされる。
【0016】軸受け故障診断において、内輪、外輪、転
動体のスポット欠陥などでは、1k〜3kHz程度の振
動成分が、異常時に卓越した周波数となることが知られ
ている。また、同時に、包絡線検波の周波数解析波形に
は、低周波数領域のオーバーオール値が大きく、キズ周
波数を基本的周波数とするハーモニック列が卓越して表
れることが知られている。これらの既知の知識を利用
し、両者に相当する入力層のニューロンと、特定の(内
輪、外輪、転動体の異常に各々対応した)中間層のニュ
ーロンを予め結合しておく(図2参照)。
【0017】即ち、前者の1k〜3kHz程度の範囲の
振動成分に対応した入力層のニューロンと特定の中間層
のニューロンとを下式にて結合しておく。 Q2 (i)=X1 (i)・X1 (j) … (1) 但し、 X1 (i):1k〜1.5kHz間のパワースペクトル
に相当する入力層のニューロンの出力 X1 (j):1.5〜3kHz間のパワースペクトルに
相当する入力層のニューロンの出力 Q2 (i):特定の中間層ニューロン(i)の入力 それぞれの上付き添え字は、層を示す。1は入力層、2
は中間層、3は出力層である。また、各出力は、規格化
された0〜1の間の値を持つものとする。
【0018】また、後者においては、低周波のオーバー
オール値やハーモニック列の値を入力層に入力し、入力
層のニューロンと、前者とは別な特定中間層のニューロ
ンとを下式にて結合しておく。 Q2 (k)=X1 (k)・X1 (l) … (2) Q2 (l)=X1 (m)・X1 (n) … (3) 但し、 X1 (k):低周波のオーバーオール値 X1 (l),X1 (m),X1 (n):ハーモニック列
の値(基本波f,2f,3f) Q2 (k),Q2 (l):特定の中間層ニューロン
(k),(l)の入力 各中間層のニューロンと該当する異常を示す出力層のニ
ューロン間の結合は、下式で示されるが、これは学習に
よって調整される。
【0019】 Q3 (i)=X2 (i)・W3 (i,i)+X2 (k)・W3 (i,k)+ X2 (k)・W3 (i,l) …(4) 但し、 X2 (i):特定の中間層ニューロン (i)の出力 X2 (k):特定の中間層ニューロン (k)の出力 W3 (i,i):特定の中間層ニューロン(i)と、該
当する異常を示すの出力層のニューロン(i)間の結合
係数 W3 (i,k):特定の中間層ニューロン(k)と、該
当する異常を示す出力層のニューロン(i)間の結合係
数 W3 (i,l):特定の中間層ニューロン(l)と、該
当する異常を示す出力層のニューロン(i)間の結合係
数 本案の学習方式は、下記のように、中間層と出力層の各
ニューロン間の結合係数を修正することによって行われ
る。
【0020】 W3 (i,k)t+1 =W3 (i,k)t +μ−c ただし、添え字tは時刻を表わす。またμとcは、下記
の値を取るものとする。 もし、Q2 (i)>αで、入力波形が該当する異常の
時、μ=a(>0) もし、Q2 (i)>αで、入力波形が該当する異常では
ない時、μ=b(<0,|b|<a) もし、Q2 (i)<αであれば、μ=0 c:中間層の全てのニューロンから引かれる正の小さな
値 α:入力層からの各値が最大値である場合に近い正の大
きな値 このようにして、予め既知の診断知識を反映したニュー
ラルネットワークを用いて、学習により異常時のデータ
を学習することより、診断時にしばしば必要となる煩雑
なレベル調整無しの診断装置が容易に構成できる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の転がり軸
受故障診断装置は、 (1)周波数分析後の波形パターンを、予めノウハウを
組み込んだニューラルネットにより学習させるため、熟
練者でなくても、ころがり軸受け異常診断が容易に可能
となる。 (2)周波数分析後の波形をパターンとして、ニューラ
ルネットにより判断させるため、その判定のための煩雑
なレベル設定が不要となる。 (3)周波数分析後の波形パターン情報に、一次前処理
を施した情報も入力するニューラルネットワークの構成
によって既知識の組込が容易となる。 (4)ニューラルネットの構成を、予めノウハウを組み
込んだ結合とするため、各層毎に全ての結合をする一般
的な誤差逆伝播(BP)型に比べ、学習の収束が早い。
少なくとも入力層と中間層間の結合の数の演算が省略さ
れる分、一般的なBP型に比べ演算が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受け故障診断装置の一実施例
を表わすブロック図である。
【図2】波形識別器の内部を表わす模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 馬 青 神奈川県横浜市緑区白山1丁目16番1号 株式会社小野測器テクニカルセンター 内 (56)参考文献 特開 平1−152335(JP,A) 特開 平4−106429(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01M 13/04 G01H 17/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 転がり軸受の振動を検出する振動検出器
    と、 前記振動検出器により検出された振動波形の包絡線を求
    める包絡線検波器と、 前記振動波形および前記包絡線の各フーリエスペクトル
    を求める周波数解析器と、 それぞれ複数のニューロンを有する、前記各フーリエス
    ペクトルに基づいて求められた情報を入力する入力層、
    該入力層との結合状態があらかじめ固定された中間層、
    および該中間層との結合状態が学習により修正される、
    前記転がり軸受の故障の有無及び故障の状態を出力する
    出力層からなるニューラルネットワークとを備えたこと
    を特徴とする転がり軸受故障診断装置。
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