JP3167432B2 - 振動波駆動装置および振動波駆動装置を備えた機器 - Google Patents
振動波駆動装置および振動波駆動装置を備えた機器Info
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Description
械エネルギー変換素子を用いて励起した2以上の振動の
合成により振動子の略棒状の金属材料部材に円振動を形
成し、該振動子に加圧接触した接触体を相対的に移動
し、機械エネルギーを得る振動波駆動装置および振動波
駆動装置を備えた機器に関する。
において、図11に示す振動波駆動装置を提案してい
る。1は金属材料からなる振動子で、筒形状の金属ブロ
ック間に複数の圧電素子3を介装し、ボルト7によりこ
れら金属ブロックを締結することで該複数の圧電素子3
を挟持固定し、振動子を構成している。振動子1は、該
圧電素子の駆動用圧電素子に位相の異なる交流電圧を印
加することにより、直交する2つの振動を励起し、その
合成により振動子の先端部に駆動のための円振動を形成
する。なお、振動子1の上部にはくびれた周溝が形成さ
れ、駆動のための振動の変位を大きくしている。
加圧用のバネSにより加圧接触し駆動のための摩擦力を
得るようにしている。6はベアリングで、ロータ2を回
転可能に支持している。
る振動子は、金属ブロックの材質を選定する基準として
振動減衰性の少ない材料を主眼とし、さらにこの中から
機械的加工の容易な材料例えば、JISC3601(銅
59〜63%、鉛1.8〜3.7%、残Zn )なる快削
黄銅を選んでいた。
来の構成の振動波駆動装置において、励起される2つの
振動モードを合成して理想的な真円運動を振動子の軸心
に対して形成し、加圧接触するロータに対して常に一定
の摩擦駆動力を伝達するには、どうしてもそれら2つの
振動モードの共振周波数を一致させる必要がある。さも
ないと、振動子の駆動面に形成される駆動振動が周状の
駆動面に形成される円運動の軌跡が一定しないことにな
る。そのため、ロータに対して一定の摩擦駆動力の伝達
ができず、効率の低下を招くことになる。
振周波数を一致させようとしたが、両振動モードの共振
周波数を一致させることが難しかった。
因について種々検討し、両振動モードにおける振動子の
固有振動数の不一致に起因することを見いだした。
動系の固有振動数が異るのならば、これを一致させるた
めに、例えば振動子の一部に切欠きを入れたり、あるい
は質量を付加したりするれば良く、本出願人はこのよう
な外的負荷を振動子に設けた内容の出願を既に行ってい
る。
は、振動子個々により条件が異なるため非常に面倒であ
ると云え、振動子の材料そのものによって直交する2つ
の振動の振動方向における固有振動数の一致が得られる
ことが望まれる。
成分組成に止まらず、ミクロ的視野から振動子の金属材
料をさらに検討し、本来振動子の金属材料が持っている
結晶構造の異方性、特にヤング率の異方性が上記した固
有振動数の不一致の原因であることを見いだした。
解決し、振動子に外的負荷等を特に設けることなく駆動
に供する2つの振動の共振周波数を等しくすることがで
きる振動波駆動装置および振動波駆動装置を備えた機器
を提供することにある。
には、振動子の金属材料部材の弾性係数を直交する2つ
の振動の振動方向において等しくすれば良いと云える。
振動子を有する振動波駆動装置においては、振動波駆動
装置の振動子に使用される金属材料の固有振動数(これ
は材料のヤング率と密度に依存するのだが、特にヤング
率が直接的要因である。)の異方性について考慮されな
ければならない。
の2方向の振動を使った従来例のような振動波駆動装置
の振動子を構成する金属材料としては、該振動モードの
軸心に対し、そのヤング率は高い同軸性を保証する必要
がある。
の振動子を構成する金属材料の製造方法には圧延と引抜
き(押出し)が考えられるが、どちらもその材料成分及
び加工法に依存した結晶方位異方性が存在する。例え
ば、圧延板の場合、圧延方向とそれに直角な方向ではヤ
ング率が異なる。そして、その程度は材料成分、圧下
率、焼きなまし温度等で異なる。
向と半径方向でヤング率は異なる。そして、その程度は
圧延板と同様に材料成分及び製造条件によって異なる。
トシェイプに製作しようとすると、焼結、鍛造、鋳造等
の各加工法をとってみても、粉末形状異方性、プレス方
向によるファイバーフローの形成、凝固組織の異方性等
が存在して、ヤング率の等方性の達成は難しい。さらに
困ったことには、例えば前述した押出し棒にしても、そ
の半径方向同士ならヤング率が同じかというと、結晶粒
が大き過ぎるとそれさえも異なってくる。
粒を微細球形状にすることで、製造上同一なる方向(例
えば、押出し丸棒なら半径方向同士)のヤング率は略一
致する。
ことにより、結晶粒が微細球状になり、その結果安定し
た固有振動数が得られるようになった。
駆動装置の第1の構成は、圧電素子等の電気−機械エネ
ルギー変換素子と略棒状の金属材料部材によって構成さ
れ、2つ以上の方向の異なる曲げ振動を合成して、該金
属材料部材の駆動部に軸心を中心とする円振動を発生さ
せる振動子と、該振動子の該駆動部に加圧接触させた接
触体と、を有し、該振動子の該円振動によって該振動子
と該接触体とを相対回転させる振動波駆動装置におい
て、該振動子を構成する該金属材料部材は、冷間引抜き
と焼きなましを複数回繰り返すことにより、前記金属材
料部材の結晶粒を微細球形状化することによって、該振
動子に形成される該2つ以上の曲げ振動の各々に対応し
た曲げ振動方向における弾性係数のずれを小さくしたこ
とを特徴とする。
駆動装置の第2の構成は、上記第1の構成で、前記振動
子に形成される前記2つの以上の曲げ振動の各々に対応
した曲げ振動方向における弾性係数のずれを0.6 %以内
にしたことを特徴とする。
駆動装置を備えた機器の構成は、上記した第1または第
2の構成の振動波駆動装置を駆動源として用いて被駆動
部材を駆動したことを特徴とする。
例を示す断面図である。
て参照した特願平2−206241号にその駆動原理等
が詳細に示されているので、ここではその詳細は省略す
るが、電極板4に不図示の駆動回路より交流電圧を印加
すると共に、複数の圧電素子3の中の1つのセンサ用の
圧電素子から振動状態を検出しながら駆動制御し、直交
する2つの曲げ振動を合成して振動子1に円運動を発生
させ、それをロータ2に伝え、ベアリング6に支持され
ている出力歯車5に伝達する。
げ振動の固有振動数(共振周波数)をいかに略一致させ
るかということである。振動子を構成する金属ブロック
部材1には、本実施例では快削黄銅(JISC360
4)を使用している。以前は同じ6−4黄銅である高力
黄銅を使用していたが、2つの曲げ共振周波数が一致せ
ず、すなわち周波数が分離して困っていた。そこで、黄
銅材料の結晶組織異方性について調べてみた。図2の
(a)、(b)は以前使用していた高力黄銅丸棒と、加
工硬化と焼きなましを繰り返し与えて製造された本実施
例の快削黄銅丸棒の輪切り顕微鏡組織を示している。
している。一方快削黄銅は、直径0.02mm程度の微
細球状結晶粒になっている。これらの組織の差は高力黄
銅に微量含有されているAl、Mnなどの元素にもよる
が、むしろ製造工程でいかに加工硬化と焼きなまし(再
結晶)を繰り返したかによるところが大きい。したがっ
て、微細球状結晶粒の大きさは0.05mm以下である
ことが好ましいとわかった。
銅と快削黄銅の輪切り断面において、その周辺付近をビ
ッカース硬さ試験機(荷重50gf)により試験した結
果を示している。高力黄銅の方が硬さのバラツキが大き
く、圧痕形状がゆがんでいることが多い。このことは、
ミクロ的には変形抵抗の差が大きいことを示唆してい
る。したがって、ビッカース硬さの分布のバラツキが±
10%以下であることがわかった。
ために、本発明者は以下の方法を用いた。
金属ブロック部材と類似形状の図5に示すダミー1−a
(外径10mm、内径4mm、長さ9mm、くびれ部の
直径6mm、長さ2mm、上端からの長さ3mm)を各
々の材料で作製し、定盤8の上に落とし、発生する音を
高感度指向性マイクロフォン9で拾い、これをアンプ1
0で増幅し、FET(高速フーリエ変換器)11で分析
するもので、以下打診法と称す。
(a)のように、50486HZ と50817HZ に2
つのスペクトルピークが現れた。このことは、該ダミー
の最低次曲げ振動モードの剛い方向は50817HZ の
固有振動数をもっており、逆に柔らかい方向は5048
6HZ の固有振動数をもっていることになり、このよう
な材料を振動波駆動装置の振動子の材料として使用する
と、それらの周波数の差分(周波数分離量)331HZ
に応じて、圧電素子等の電気−機械エネルギー変換素子
を組み込んだ振動子においても周波数が分離してしま
う。
削黄銅を使用して作製された振動子を、インピーダンス
アナライザー(YHP4194A)で周波数とアドミッ
タンスの関係を測定した結果である。
高力黄銅を使用した振動子は、この測定でも250HZ
も分離していた。一方、快削黄銅は図5の(b)に示す
ように、打診法では51212HZ の所に1つのピーク
が立つだけで、その材料を使用して組み立てられた振動
子も、また図6の(b)に示すように僅か20HZ しか
分離しなかった。この20HZ は調査の結果、振動子の
他の構成部品の寸法精度に起因するものだとわかった。
量に及ぼす要因として、金属ブロック材料の結晶組織異
方性が大きくきいていることがわかった。
離の程度、すなわち周波数の分離量/固有振動数 <
0.3%であることがわかった。
置き換えれば、振動方向の弾性係数のずれが0.6%以
内であることが好ましいといえる。
密度:ρ(kg),周波数f(HZ)とすると、 曲げ振動の場合 f∝v 一方 E=ρv2 ∝ρ×f2 の関係にある。例えばfで0.3%、すなわ
ち1000HZ と1003HZ の差なら、振動子の長さ
が同じであると、Eで0.6%、すなわち1と1.00
6の差になる。
力黄銅と本実施例の快削黄銅の他に、諸工程で製造され
た快削黄銅材料をサンプルとして、その輪切り断面にX
線を当て、その反射強度を測定し、結晶方位を同定し
て、α相(面心立方)の2方位とβ相(体心立方)のピ
ーク高さをX線ディフラクトメータを用いて調べ、前記
打診法による周波数分離量との関係をグラフに表したの
が図7である。
間押出しにより外径を50mm、内径を30mmとし、
これを冷間引抜きと完全焼きなましを9回繰り返し、外
径を10.5mm、内径を3mmとしたもの。Bは8イ
ンチビレットを熱間押出しにより直径20mmとし、こ
れを冷間引抜きと完全焼きなましを3回繰り返して直径
12mmとしたもの。Cは6インチビレットを熱間押出
しにより直径14mmとし、これを冷間引抜きと完全焼
きなましを1回行い、直径を12mmとしたもの。Dは
8インチビレットを熱間押出しにより直径20mmとし
たもの。Eは6インチビレットを熱間押出しにより直径
14mmとしたもの。Fは鋳造のままのもの。なおこれ
らの材料はJISC3604に相当するものである。
れるX線強度のピークを高力黄銅を一例として提示した
ものである。
タ効率に大きな影響を与えない周波数分離量を150H
Z 以内とすると、すなわち0.3%以内の周波数分離量
を得るには、図7よりB相X線強度比 β110 /α111
で1.5以下であることが必要だとわかる。
料は平衡状態に近づき、β相が減少するからと考えられ
る。そして、同時に結晶粒も球状微細になる。
β相)及びその方位で3種のヤング率をもった結晶粒が
混在していることをわかりやすく示した模式図である。
このことからも、結晶粒が極端に大きくなって、例え
ば、上記3種のヤング率をもった結晶粒が一粒ずつしか
存在しない3つの結晶粒からなる材料を想定すれば、周
波数分離量がいかに大きく、又そのバラツキが大きくな
るか予測できる。3種の結晶粒が球状に細かく分散すれ
ば、バランスが良くなることが推定できる。
し快削黄銅、純銅丸棒、アルミ合金丸棒、炭素鋼(S4
5C)丸棒、快削黄銅丸棒(引抜きと焼きなましを9回
繰り返した)}を図5に示すダミー形状に各10個切削
加工し、上記の打診法により周波数分離量のバラツキを
グラフ化したもので、高力黄銅は周波数分離量が大きい
だけでなく、そのバラツキも著しく大きい。
はりα(111方位)とα(100方位)という2種類
のヤング率をもった結晶粒の存在によると思われる。一
方、炭素鋼のそれはかなり小さい。これは炭素鋼の場合
はα相(体心立方)は110方位しか現れず、セメンタ
イトとの共析組織のパーライトになっているにしても、
その組織は一般的に黄銅等と比べて微細なものが簡単に
得られるからであろう。
は、快削黄銅(引き抜きと焼きなましを複数回繰り返し
たもの)、アルミ合金(引き抜きと焼きなましを複数回
繰り返したもの)炭素鋼(引き抜きと焼きなましを複数
回繰り返したもの)が好ましい。
源とする機器、例えばカメラのAF駆動機構を示し、大
ギア14aと小ギア14bとを同軸的に有するギア14
の大ギア14aが振動波駆動装置側の出力歯車5に噛合
しており、ギア14の小ギア14bがレンズ鏡筒の回転
筒15のギア15aに噛合し、振動波駆動装置の回転を
ギア14を介して回転筒15を回転させ、例えばフォー
カス用のレンズ(不図示)を移動させる。一方、ギア1
4にはパルス板12が固定され、ギア14の回転により
フォトカップラ13によりパルス板12の回転を検出
し、検出情報をAF制御回路(不図示)に送り、AF制
御を行うように振動波駆動装置の駆動制御が行われる。
動子の金属材料部材を冷間引抜きと焼きなましを複数回
繰り返すことにより、前記金属材料部材の結晶粒を微細
球形状化することによって、該振動子に形成される該2
つ以上の曲げ振動の各々に対応した曲げ振動方向におけ
る弾性係数のずれを小さくしたので、振動子に励起され
る振動の共振周波数を略一致させることができ、効率の
高い振動波駆動装置および振動波駆動装置を備えた機器
を提供することができ、特に同一性能の振動波駆動装置
を大量に生産することができるといった多大な効果を奏
する。
断面図。
(400倍)、(b)は快削黄銅の輪切り断面の顕微鏡
写真(400倍)。
果、(b)は快削黄銅の輪切り断面の硬さ試験結果。
略図。
ドのスペクトルピークとインピーダンスアナライザーで
求めた振動子のアドミッタンスとの関係を示す図、
(b)打診法で求めた快削黄銅の一次曲げモードのスペ
クトルピークとインピーダンスアナライザーで求めた振
動子のアドミッタンスとの関係を示す図。
断面のβ(110方位)ピーク高さ比と周波数分離量の
関係を示す図。
の例を示す図。
のバラツキを示す図。
図。
の概略図。
Claims (3)
- 【請求項1】 圧電素子等の電気−機械エネルギー変換
素子と略棒状の金属材料部材によって構成され、2つ以
上の方向の異なる曲げ振動を合成して、該金属材料部材
の駆動部に軸心を中心とする円振動を発生させる振動子
と、該振動子の該駆動部に加圧接触させた接触体と、を
有し、該振動子の該円振動によって該振動子と該接触体
とを相対回転させる振動波駆動装置において、 該振動子を構成する該金属材料部材は、冷間引抜きと焼
きなましを複数回繰り返すことにより、前記金属材料部
材の結晶粒を微細球形状化することによって、該振動子
に形成される該2つ以上の曲げ振動の各々に対応した曲
げ振動方向における弾性係数のずれを小さくしたことを
特徴とする振動波駆動装置。 - 【請求項2】 前記振動子に形成される前記2つ以上の
曲げ振動の各々に対応した曲げ振動方向における弾性係
数のずれを0.6 %以内にしたことを特徴とする請求項1
記載の振動波駆動装置。 - 【請求項3】 請求項1又は2に記載の振動波駆動装置
を駆動源として用いて被駆動部材を駆動したことを特徴
とする振動波駆動装置を備えた機器。
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