JP3167110B2 - リレー接点の溶着監視機能に特徴を有するキーレス式エンジン始動装置 - Google Patents

リレー接点の溶着監視機能に特徴を有するキーレス式エンジン始動装置

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公利 斉藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イグニションキー
スイッチを操作せずに、無線による遠隔操作やタイマー
による制御によって自動車のエンジンを始動させるキー
レス式エンジン始動装置に関し、特に、自動車の本来の
スタータスイッチに対して並列接続する始動接点回路の
溶着を監視する機能部分に関する。
【0002】
【従来の技術】キーレス式エンジン始動装置を付加装着
した自動車の始動回路系統の概略を図1に示している。
よく知られているように、スタータモータ1はスタータ
リレースイッチ2の接点21を介してバッテリ3に接続
されている。スタータリレースイッチ2のコイル22の
中点とバッテリ3との間にスタータスイッチ4が入って
いる。このスタータスイッチ4はイグニションキースイ
ッチに組み込まれている接点である。以上は普通の始動
回路系統であり、キーを用いてスタータスイッチ4をオ
ンにすると、スタータリレースイッチ2に通電され、ス
タータリレースイッチ2を介してスタータモータ1にバ
ッテリ3から大電流が流れる。これでエンジンが始動さ
れる。
【0003】キーレス式エンジン始動装置5を付加装着
すると、本来のスタータスイッチ4に対してリレー6の
常開接点61が並列接続される。キーレス式エンジン始
動装置5のマイコン51がリレードライブ回路52を介
してリレー6を制御する。無線による遠隔操作式のもの
では、図示していない受信回路にて所定の始動指令信号
を受けたときに、マイコン51がリレー接点61をオン
にする。またタイマー式のものでは、ユーザにより設定
された時間になると、マイコン51がリレー接点61を
オンにする。接点61がオンになると、スタータスイッ
チ4がオフのままでも、スタータリレースイッチ2に通
電され、スタータモータ1が駆動される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この種のキーレス式エ
ンジン始動装置5においては、リレー接点61が溶着す
るという故障が発生することを考えておかなければなら
ない。すなわち、リレー接点61がオンになると、直流
の誘導性の負荷であるスタータリレースイッチ2のコイ
ル22に向けて大きな電流が流れるので、場合によって
は接点61が溶着してしまうことがあり得る。つまり、
接点61の開閉の際に火花が飛び、片側の接点が溶融し
て他方の接点へ転移し、接点の対向面に凹凸が生じ、開
閉を繰り返し行うことにより、最終的にその凹凸がブロ
ックされて溶着されてしまうおそれがある。
【0005】そこで、従来、リレー接点61からスター
タリレースイッチ2に向かうスタータ電源ラインLstの
電圧信号をマイコン51に入力し、マイコン51がリレ
ー6を駆動していないのに、リレー接点61がオンして
いて、スタータ電源ラインLstに高レベルの電圧信号が
発生していると、リレー接点61が溶着したものと判断
し、その旨をユーザに知らせるアラームを出すように構
成したものもある。
【0006】しかしながら、このような従来のリレー接
点溶着監視の仕組みでは、車種によっては充分な信頼性
を確保できないという問題があった。つまり、ある種類
の自動車では、自動変速機のシフトポジションに応じて
スタータ電源ラインLstに高レベルの電圧信号が発生し
たり、エンジン始動後でもすぐにスタータ電源ラインL
stの電圧が低下しない場合がある。そのような車種で
は、スタータ電源ラインLstの電圧信号から的確にリレ
ー接点61の溶着を検出できない。
【0007】本発明は、上記した背景に鑑みてなされた
もので、その目的とするところは、上記した問題を解決
し、キーレス式エンジン始動装置の始動接点回路の溶着
が起きにくくするとともに、溶着が起きたときには的確
にそのことを検出できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本発明では、キー
レス式エンジン始動装置において、次の要件(1)〜
(5)を備える構成を採用した。 (1)自動車のイグニションキースイッチに組み込まれ
ているスタータスイッチと並列に当該キーレス式エンジ
ン始動装置の始動接点回路が接続される。 (2)前記始動接点回路は、第1のリレーの常開接点と
第2のリレーの常開接点の直列回路である。 (3)当該キーレス式エンジン始動装置のマイコンがリ
レードライブ回路を介して第1のリレーおよび第2のリ
レーを制御する。この2つのリレー常開接点をともにオ
ンにすると、エンジン始動系統に電流が流れる。 (4)前記始動接点回路における前記電流の下流側に位
置する第2のリレーは常閉接点も有する切替接点型であ
り、その常閉接点の電圧信号を前記マイコンに導入す
る。 (5)前記マイコンは、第1のリレーおよび第2のリレ
ーの制御状態と前記常閉接点からの電圧信号とを比較対
照することで、前記始動接点回路の溶着の有無を監視す
る。
【0009】これにより、正常であれば、エンジン停止
中の第1,第2のリレーの非駆動状態であれば、マイコ
ンに導入される電圧信号はL(バッテリーと非導通)と
なり、第1のリレーのみが駆動状態(常開接点が閉じ
る)場合には、電圧信号はH(バッテリーと導通)とな
り、第1,第2のリレーをともに駆動状態にすると、電
圧信号はL(バッテリーと非導通)となる。従って、マ
イコンが動作状態(リレーの駆動/非駆動等)と、実際
の電圧信号の状態を比較することにより、正常であるか
否かが判断できる。また、異常の場合には、どのリレー
が異常なのかも判断できる。
【0010】また、自動変速機のシフトポジションに応
じてスタータ電源ラインLstに高レベルの電圧信号が発
生したり、エンジン始動後でもすぐにスタータ電源ライ
ンLstの電圧が低下しない場合がある。しかし、本発明
では、第2のリレーにより、溶着等検出ライン(電圧信
号を導入するライン)と、実際のエンジンをスタートす
る際に電流を流すスタータ電源ラインとは絶縁されてい
るので、上記理由によってスタータ電源ラインの電圧信
号が高レベルか否かに関係なく、両リレーの溶着等の有
無を判断できる。
【0011】
【発明の実施の形態】図2は、本発明の一実施例による
キーレス式エンジン始動装置5を付加装着した自動車の
始動回路系統の概略を示している。もちろん自動車側の
基本回路には変更はなく、スタータモータ1はスタータ
リレースイッチ2の接点21を介してバッテリ3に接続
されている。スタータリレースイッチ2のコイル22の
中点とバッテリ3との間にスタータスイッチ4が入って
いる。このスタータスイッチ4はイグニションキースイ
ッチに組み込まれている接点である。以上は普通の始動
回路系統であり、キーを用いてスタータスイッチ4をオ
ンにすると、スタータリレースイッチ2に通電され、ス
タータリレースイッチ2を介してスタータモータ1にバ
ッテリ3から大電流が流れる。これでエンジンが始動さ
れる。
【0012】本発明のキーレス式エンジン始動装置5を
付加装着すると、本来のスタータスイッチ4に対して第
1のリレー7の常開接点71と第2のリレー8の常開接
点81との直列回路が並列接続される。そして、係る2
つのリレー7,8の機能に着目すると、第2のリレー8
が、上記したリレー6に対応し、第1のリレー7が、そ
の上流側に設けられた溶着保護(溶着した時に車の始動
措置にダメージを与えないようにする)のためのリレー
ととらえてもよい。そして、エンジン始動時における接
点の開閉タイミングとしては、例えば、まず第1のリレ
ー7の常開接点71がオンになり、その後第2のリレー
8の常開接点8をオンにする。
【0013】そして係る接点のオン/オフ(開閉)制御
は、キーレス式エンジン始動装置5のマイコン51がリ
レードライブ回路52を介して第1のリレー7と第2の
リレー8を制御するようになる。無線による遠隔操作式
のものでは、図示していない受信回路にて所定の始動指
令信号を受けたときに、マイコン51がリレー常開接点
71とリレー常開接点81をオンにする。またタイマー
式のものでは、ユーザにより設定された時間になると、
マイコン51がリレー常開接点71とリレー常開接点8
1をオンにする。常開接点71と常開接点81がともに
オンになると、スタータスイッチ4がオフのままでも、
スタータリレースイッチ2に通電され、スタータモータ
1が駆動される。
【0014】さらに、電流の向きに対して下流側に接続
された第2のリレー8の接点は、常閉接点82も有する
切替接点型であり、その常閉接点82の電圧信号がマイ
コン51に導入される。そして、マイコン51は、第1
のリレー7および第2のリレー8の制御状態と前記常閉
接点82からの電圧信号とを比較対照することで、始動
接点回路(両リレー7,8の接点の直列回路)の溶着の
有無を監視するようになっている。
【0015】つまり、常閉接点82には直列抵抗R1と
プルダウン抵抗R2とが接続されており、リレー8が駆
動されて可動接点が常開接点81側に切り替わっている
と、マイコン51に入力される前記電圧信号は低レベル
になる。また、上流側の第1のリレーの常開接点71が
閉じていて、第2のリレー8の可動接点が常閉接点82
側に復帰していると、マイコン51に入力される電圧信
号は高レベルになる。
【0016】従って、第1のリレー7の常開接点71が
溶着している場合には、第1のリレー7と第2のリレー
8の両方とも非駆動状態にしても、常開接点71は溶着
により閉じたままとなるので、バッテリー3からの電流
が、常開接点71→常閉接点82を介して両抵抗R1,
R2に流れ込む。その結果、前記電圧信号が高レベルに
なる。これで接点71の溶着を検出できる。
【0017】一方、第2のリレー8が溶着して常開接点
81が閉じている場合には、第1のリレー7を駆動して
接点71を閉じるとともに、第2のリレー8を非駆動状
態にすると、本来は常閉接点82に接続されて前記電圧
信号は高レベルになるところ、接点81に接続されたま
まであるので電圧信号は低レベルになる。これで接点8
1の溶着を検出できる。同様にして、溶着だけでなく、
リレー7や8の作動不良も検出できる。マイコン51
は、各種の故障診断処理を適時に実行し、なんらかの故
障を検出したならば、その旨をユーザに知らせるアラー
ムを出すようになっている。
【0018】そして、エンジン始動の際のマイコン51
の処理の一例を示すと、図3のようになる。つまり、ま
ず車載の各種センサからの検出信号を受け取り、エンジ
ンの始動をしてよいか判断する(ST1)。このセンサ
の一例としては、例えば、シフトポジションがPレンジ
になっているかや、ACCラインやイグニッションライ
ンがOFFであるか等である。そして、異常なしであれ
ば、ステップ2に進み、溶着等検出用のマイコン51に
入力される前記電圧信号のレベルがLであるか否かを判
断する。そして、この時Hであると、常開接点71と常
閉接点82がともに閉じていることになるので、少なく
とも第1のリレー7が溶着しているか、短絡しているか
のいずれかであることがわかる。つまり、いずれにして
も第1のリレー7が異常であると判断できるので、ステ
ップ8に飛び、エラー処理をする。そして、エンジンの
始動を行わない。
【0019】また、ステップ2の分岐判断でLとなる
と、少なくとも第1のリレー7は正常であると確認でき
る。そして、マイコン51はリレードライバ52に対し
て第1のリレー7をONにすべき命令信号を送る(ST
3)。そして、その状態で、再度マイコン51に入力さ
れる検出用の電圧信号がHであるか否かを確認する(S
T4)。そして、第1のリレー7は、すでに正常と判断
されているので、第2のリレー8も正常であるとする
と、第2のリレー8は非駆動状態で接点82が閉じてい
るので、バッテリー3からの電流は、抵抗R1,R2に
流れ込むため、電圧信号はHになる。従って、この時電
圧信号がLであると、第2のリレー8が溶着して接点8
1が閉じた状態であったり、第1のリレーが故障して接
点71が開いた(非接続)ままになっていると判断でき
る。つまり、第1または第2のリレー7,8が異常であ
ると判断できる。よって、ステップ7に飛びリレー7を
OFFした後ステップ8に飛び、エラー処理をする。そ
して、エンジンの始動を行わない。
【0020】そして、この判断でも異常がなれば、マイ
コン51はリレードライバ52に対して第2のリレー8
をONにすべき命令信号を送り、エンジンの始動を行う
(ST5)。これに伴い、第2のリレー8は、常開接点
81が閉じて、常閉接点82が開くので、正常であれ
ば、電圧信号はLとなる。そこで、始動中に電圧信号を
取得し、正常(L)であるか否かを判断する(ST
6)。そして、正常であれば、そのままでよいが、仮に
電圧信号がHとすると、第2のリレーが故障(常閉接点
82が閉じたまま(接点81が閉じない))していた
り、短絡(両接点81,82とも閉)しているといった
異常であると判断できるので、リレーを総てOFFにし
てエンジン始動動作を停止した(ST7)後、エラー処
理する(ST8)。
【0021】また、マイコンはエンジン始動動作終了時
に、まず第2のリレー8をOFFにすべき命令信号を送
る(ST9)。そしてその状態で再度マイコン51に入
力される検出電圧がHであるか否かを確認する(ST1
0)。そしてエンジン始動動作後、第2のリレー8が正
常であるとすると、第2のリレー8の常時閉接点82は
閉じており、また第1のリレー7の接点71は閉じたま
まなので電圧信号はHになる。仮に電圧信号がLである
とすると第2のリレーが溶着(接点81が閉じたまま)
などの異常と判断できるので、第1のリレー7をOFF
すべき命令信号を送り(ST7)、エンジンのスタータ
が回り続ける異常動作を回避して、エラー処理をする
(ST8)。
【0022】なお、係る判定アルゴリズムは、一例であ
り、本発明は上記した手順で各リレーの異常を判断する
ものに限られず、また、エンジンの始動手順に合わせて
行わずに、その始動前などに独立して任意のリレーを駆
動/非駆動状態にし、そのときの電圧信号の状態を監視
し、正常であるか否か、或いは異常の場合には、どのリ
レーがどういう異常であるかを判断する処理を行うよう
にしてもよい。また、第1のリレー7はエンジンを継続
動作(アイドリング)させるためのイグニッション系の
リレーと兼用してもよい。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、自動変速機のシフトポ
ジションに応じてスタータ電源ラインLstに高レベルの
電圧信号が発生したり、エンジン始動後でもすぐにスタ
ータ電源ラインLstの電圧が低下しないような車種にお
いても、スタータ電源ラインLstの電圧状況に影響され
ずに、キーレス式エンジン始動装置の始動接点回路にて
溶着が起きたときには的確にそのことを検出できる。ま
た、始動接点回路を2つのリレー接点の直列回路で構成
したので、溶着が起きにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のキーレス式エンジン始動装置を付加装着
した自動車の始動回路系統の概略を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施例によるキーレス式エンジン始
動装置を付加装着した自動車の始動回路系統の概略を示
す回路図である。
【図3】マイコンの機能を説明するフローチャートであ
る。
【符号の説明】
1 スタータモータ 2 スタータリレースイッチ 3 バッテリ 4 スタータスイッチ 5 キーレス式エンジン始動装置 51 マイコン 52 リレードライブ回路 7 第1のリレー 71 常開接点 8 第2のリレー 81 常開接点 82 常閉接点 Lst スタータ電源ライン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B60R 25/04 601 B60R 25/04 601

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リレー接点の溶着監視機能に特徴を有す
    るキーレス式エンジン始動装置であって、次の要件
    (1)〜(5)を備える。 (1)自動車のイグニションキースイッチに組み込まれ
    ているスタータスイッチと並列に当該キーレス式エンジ
    ン始動装置の始動接点回路が接続される。 (2)前記始動接点回路は、第1のリレーの常開接点と
    第2のリレーの常開接点の直列回路である。 (3)当該キーレス式エンジン始動装置のマイコンがリ
    レードライブ回路を介して第1のリレーおよび第2のリ
    レーを制御し、この2つのリレー常開接点をともにオン
    にすると、エンジン始動系統に電流が流れる。 (4)前記始動接点回路における前記電流の下流側に位
    置する第2のリレーは、常閉接点も有する切替接点型で
    あり、その常閉接点の電圧信号を前記マイコンに導入す
    る。 (5)前記マイコンは、第1のリレーおよび第2のリレ
    ーの制御状態と前記常閉接点からの電圧信号とを比較対
    照することで、前記始動接点回路の溶着の有無を監視す
    る。
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