JP3164992B2 - 誘導障害防止接地設備 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、誘導障害防止接地設
備に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、
高層ビル、工場、および、原子力発電所などの大型構造
物における電気設備の安全対策に特に有用である誘導障
害防止接地設備に関するものである。

【０００２】

【従来の技術と課題】従来から、工場、および、原子力
発電所における電気設備等においては、その設備の大出
力化が行なわれており、万一の場合に備えて、安全対策
は必須の条件となっている。

【０００３】このような電気設備の安全対策のひとつと
して、万一その電気機器内で地絡および短絡などの事故
が生じた場合、作業員の安全性を確保するために、接地
設備の充実が必要であり、そのための法律的な基準およ
び技術的な検討が行なわれてきている。

【０００４】このような接地設備は、例えば、電気設備
技術基準第１８条、および、１９条に代表されるよう
に、電気機器の故障時の人身に対する保安接地を主に考
えられており、その接地方法は、例えば、図１（ア）に
例示したように、高圧および特別高圧の電気機器（１）
に対する接地については、１０Ω以下の接地抵抗を有す
る接地線（２）を用いて、設置点（３）に接地すること
となっており、さらに、例えば図１（イ）に例示したよ
うに、低圧の電気機器（４）に対する接地については、
１００Ω以下の接地抵抗を有する接地線（５）を用いて
接地点（６）に接地することになっている。

【０００５】さらに、このような従来の接地設備におい
ては、接地線の接地抵抗に関する基準だけでなく、図１
（ウ）に例示したように、電気機器（１０２）へ送電す
る３相変圧器（１０１）の中性点の接地に関しても、事
故時の過電流の人体および機器への影響を抑制するため
に、接地抵抗（１０３）の接地が義務づけられている。

【０００６】しかしながら、近年においては、高層ビ
ル、工場、および、原子力発電所などの大型構造物の出
現により、比較的近距離で接地を取ることができなくな
ってきている。

【０００７】そこで、大型構造物において接地を行なう
場合には、例えば図２に例示したように、短極、複数
極、接地メッシュ、および、これらの合成からなる接地
極（２３）と中継端子（７）とを接地母線（８）を介し
て接続し、さらに、その中継端子（７）と電気機器（１
０）〜（２２）とを接地支線（９）を介して接続し、結
果として、その電気機器を接地している。

【０００８】このような長距離の接地線を用いた接地設
備においては、これらの接地母線（８）および接地支線
（９）が、商用周波（５０または６０Ｈｚ）を超える高
周波のアンテナとなってしまい、そして、接地母線およ
び接地支線において共振して定在波が生じ、接地支線に
つながる電気機器へ誘導傷害を与えることが多々あっ
た。

【０００９】具体的には、電気機器（１０）〜（２２）
で反射した障害波が、再び接地支線（９）および接地母
線（８）を介して、接地極（２３）まで伝播し、再び、
その放出された障害波の多くは反射して、電気機器（１
０）〜（２２）へ向けて伝播してしまう。このように、
接地極（２３）と電気機器（１０）〜（２２）との間で
障害波の反射を繰り返す間に、電気機器（１０）〜（２
２）は障害波の影響を受け、その結果、誤動作が生じ、
さらには電気機器の損傷を招く恐れもある。

【００１０】この発明は、以上の通りの従来技術の欠点
を解消し、接地線に生じた定在波などの誘導障害波の反
射を防止することを可能とする、新しい誘導障害防止接
地設備を提供することを目的としている。

【００１１】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するために、高層ビル、工場、原子力発電所等の
大型構造物における電気機器に対する誘導障害防止接地
設備において、該誘導障害防止接地設備は、接地極と中
継端子とを接地母線を介して接続し、この中継端子と電
気機器とを接地支線を介して接続した接地設備であっ
て、その接地支線内、中継端子間内、および接地母線内
のいずれにおいても、前記接地極と前記電気機器との間
の共振により生じた誘導障害波を吸収し、且つ商用周波
の地絡・短絡電流は、吸収することなく通電するローパ
スフィルターが配設されており、前記接地支線内に配設
されているローパスフィルターは、インピーダンスの低
いインダクタンスおよび抵抗成分で構成され、商用周波
の地絡・短絡電流を吸収することなく通電し、前記中継
端子間内に配設されているローパスフィルターは、環状
またはメッシュ状に配設されていることを特徴とする大
型構造物における電気機器に対する誘導障害防止接地設
備を提供する。

【００１２】さらに、この発明は、前記の誘導障害防止
接地設備において、中継端子間内に配設されているロー
パスフィルタは、キャパシタンスと抵抗とが直列に接続
されたバイパスフィルタによって構成されていることを
もその態様として提供する。

【００１３】

【作用】上記の特徴を有する、高層ビル、工場、原子力
発電所等の大型構造物における電気機器に対するこの発
明の誘導障害防止接地設備では、例えば図３に例示した
ように、短極、複数極、接地メッシュ、および、これら
の合成からなる接地極（２３）と中継端子（７）とを接
地母線（８）を介して接続し、さらに、この中継端子
（７）と電気機器（１０）〜（２２）とを接地支線
（９）を介して接続するとともに、接地支線（９）内
に、接地極と電気機器との間の共振により生じた誘導障
害波を吸収し、且つ商用周波の地絡・短絡電流は吸収す
ることなく通電するローパスフィルター（２４）〜（３
６）を挿入して接地を得るようにしている。

【００１４】またさらに、この発明では、前記の誘導障
害防止接地設備において、前記図３に例示したように、
複数の接地母線（８）間に生じた誘導障害を吸収するた
めに、中継端子（７）間に、環状またはメッシュ状とな
るように、障害波を吸収するローパスフィルター（３
７）〜（４３）を介在させることも包含している。

【００１５】もちろん、このローパスフィルターは、抵
抗成分を用いてもよい。

【００１６】また、その中継端子（７）と接地極（２
３）とは接地母線（８）を用いて接続するが、この接地
母線（８）内にもローパスフィルター（４４）〜（４
６）を挿入してもよい。

【００１７】前述のローパスフィルター（２４）〜（３
６）は、商用周波数の５０Ｈｚ、または、６０Ｈｚ付近
において比較的インピーダンスの低いインダクタンス、
および、障害波電力を吸収する抵抗成分で構成されてい
ることが好ましく、例えば、図４（ａ）、（ｂ）、
（ｃ）、（ｄ）および（ｅ）に示したように、可変コイ
ル（２４１）、抵抗（２４２）、コイル（２４３）、キ
ャパシタンス（２４４）を、単独で、または、直列、ま
たは、並列で接続したものを、その態様として示すこと
ができる。もちろん、この発明で用いられるローパスフ
ィルターは、この図４に限定されるものではない。

【００１８】この場合のインダクタンスは磁路を構成す
るコアや空心のすべてをいい、抵抗成分は抵抗器、また
は、それと等価な線や導体から構成される。さらに、フ
ェライトなどのように低周波ではインダクタンスによ
り、高周波ではロスタンジェントにより抵抗と見なせる
ものから構成されてもよい。

【００１９】障害波を吸収するローパスフィルター（３
７）〜（４３）は、例えば、前記図４に例示したよう
に、抵抗器、または、それと等価な線や導線で構成する
抵抗である。

【００２０】さらに、この発明で用いられる障害波を吸
収するローパスフィルター（３７）〜（４３）は、図５
に例示したように、キャパシタンス（３７１）と抵抗
（３７２）を直列に接続したバイパスフィルターによっ
て構成してもよい。

【００２１】またさらに、この発明で用いられる接続母
線（８）に挿入したローパスフィルター（４４）〜（４
６）は、前記図４に示したのと同等のものを用いてもよ
い。

【００２２】この発明の接地設備は、前記図３に示すよ
うに、接地設備に誘起した誘導障害波の電力が、接地支
線（９）に挿入したローパスフィルター（２４）〜（３
６）および中継端子（７）間に挿入したローパスフィル
ター（３７）〜（４３）により消費され、その結果、電
気機器への障害を大幅に減少することができる。

【００２３】またさらに、商用周波を通すローパスフィ
ルターは、電気機器（１０）〜（２２）内で万一地絡や
短絡事故が生じたとしても、すみやかにその電力を接地
支線（９）および接地母線（８）を介して接地極（２
３）の電位へ導き、作業員の人身の保安を確保すること
が可能である。

【００２４】以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発
明について説明する。

【００２５】

【実施例】実際にこの発明の誘導障害防止接地設備を製
作した。

【００２６】例えば図６に例示したように、単極の接地
極（２３）と中継端子（７）とを、接地母線（８）を介
して接続した。さらに、この中継端子（７）と電気機器
（１１）〜（２２）とは、接地支線（９）を介して接続
し、その接地線には、フェライト製のリングに数回巻き
付けた。中継端子（７）は１００Ω程度の抵抗器を延長
線として用いて環状になるように接続した。単独で他の
電気機器と遠隔な電気機器（１０）は、接地母線（５
０）を介して接続し、商用周波を通し、障害波となる周
波の電力を吸収するＬＲフィルターを介して、接地支線
（５１）を用いて接地を行なった。

【００２７】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、接地設備に誘起した誘導障害波は、接地支線に挿
入したローパスフィルター、および、中継端子間に挿入
したローパスフィルターにより消費され、その結果、電
気機器への障害を非常に減少させることが可能となる。

【００２８】さらに、万一、電気機器内で地絡や短絡事
故を生じた場合においても、この発明の誘導障害防止接
地設備においては、商用周波を通すローパスフィルター
を用いているので、すみやかに、その誘導障害波を、接
地支線、および、接地母線を通じて接地極の電位へ導
き、その結果、人身の安全を確保することも可能とな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ア）（イ）（ウ）は、各々従来の接地の分類
を示す回路図である。

【図２】従来の誘導障害防止接地設備を示した回路図で
ある。

【図３】この発明の誘導障害防止接地設備を示した回路
図である。

【図４】（ａ）（ｂ）（ｃ）（ｄ）（ｅ）の各々は、こ
の発明の誘導障害防止接地設備で用いられるローパスフ
ィルターを示した回路図である。

【図５】この発明の誘導障害防止接地設備で用いられる
ローパスフィルターを示した回路図である。

【図６】この発明の実施例を示した回路図である。

【符号の説明】

１ 電気機器 ２ 接地線 ３ 接地点 ４ 電気機器 ５ 接地線 ６ 接地点 ７ 中継端子 ８ 接地母線 ９ 接地支線 １０〜２２ 電気機器 １０２ 電気機器 １０１ ３相変圧器 １０３ 接地抵抗 ２３ 接地極 ２４〜３６ ローパスフィルター ３７〜４３ ローパスフィルター ４４〜４６ ローパスフィルター ２４１ 可変コイル ２４２ 抵抗 ２４３ コイル ２４４ キャパシタンス ３７１ キャパシタンス ３７２ 抵抗 ５０ 接地母線 ５１ 接地支線

フロントページの続き (72)発明者 大川 慶直 茨城県那珂郡那珂町大字向山801番地の １ 日本原子力研究所那珂研究所内 (72)発明者 村野 佳大 千葉県千葉市中央区新宿２丁目１番24号 株式会社 関電工千葉支店内 (72)発明者 船橋 和夫 茨城県水戸市根本２丁目585番 株式会 社 関電工茨城支店内 (72)発明者 古屋 一彦 東京都港区芝浦４丁目８番33号 株式会 社 関電工内 (72)発明者 岡田 健一 東京都港区芝浦４丁目８番33号 株式会 社 関電工内

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 高層ビル、工場、原子力発電所等の大型
   構造物における電気機器に対する誘導障害防止接地設備
   において、 該誘導障害防止接地設備は、 接地極と中継端子とを接地
   母線を介して接続し、この中継端子と電気機器とを接地
   支線を介して接続した接地設備であって、 そ の接地支線内、中継端子間内、および接地母線内のい
   ずれにおいても、前記接地極と電気機器との間の共振に
   より生じた誘導障害波を吸収し、且つ商用周波の地絡・
   短絡電流は、吸収することなく通電するローパスフィル
   ターが配設されており、 前記接地支線内に配設されているローパスフィルター
   は、インピーダンスの低いインダクタンスおよび抵抗成
   分で構成され、商用周波の地絡・短絡電流を吸収するこ
   となく通電し、 前記中継端子間内に配設されているローパスフィルター
   は、環状またはメッシュ状に 配設されていることを特徴
   とする大型構造物における電気機器に対する誘導障害防
   止接地設備。
2. 【請求項２】 請求項１の中継端子間内に配設されてい
   るローパスフィルタは、キャパシタンスと抵抗とが直列
   に接続されたバイパスフィルタによって構成されている
   ことを特徴とする大型構造物における電気機器に対する
   誘導障害防止接地設備。