JP3164318B2 - 水棲生物の付着防止効果を有する繊維および繊維製品 - Google Patents

水棲生物の付着防止効果を有する繊維および繊維製品

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JP3164318B2 JP4623992A JP4623992A JP3164318B2 JP 3164318 B2 JP3164318 B2 JP 3164318B2 JP 4623992 A JP4623992 A JP 4623992A JP 4623992 A JP4623992 A JP 4623992A JP 3164318 B2 JP3164318 B2 JP 3164318B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、海水や淡水に長期間接
触して使用されたときに、水棲生物の付着が極めて少な
い繊維、およびそれを含む繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】海水や淡水中で長期間使用される繊維製
品としては、例えば漁業用定置網、養畜魚介類用いけす
網等の水産用繊維製品;航路浮標、灯浮標、ブイ等の係
留に使用されるロープ;土木用に使用される汚濁防止繊
維膜等がある。これらの繊維製品は、海水や淡水に長期
間接触するうちに、その表面に種々の水棲生物、例えば
アオサやケイソウ等の藻類、イソギンチャク等の腔腸動
物、イソカイメン等の海綿動物、ウズマキゴカイ等の環
形動物、コケムシ等の触手動物、フジツボ等の節足動
物、ホヤ等の原索動物、ムラサキイガイ等の軟体動物が
付着し、生息する。
【0003】そして、これらの水棲生物の付着によっ
て、例えば定置網では重量増加に伴う網の沈下、水流抵
抗増大による網の流失、接触・屈曲による網の破損、捕
獲した魚介類の損傷等の問題が生じている。また、いけ
す網の場合も、重量増大による網の沈下の他に、海水や
淡水の流動性低下による酸素欠乏、種々の付着性水棲生
物による養畜魚介類の被害等の大きな障害をきたすこと
になる。
【0004】海水や淡水に長期間接触して使用される繊
維製品の水棲生物の付着を防止するための対策として、
これまでトリブチルスズオキサイド、トリフェニルスズ
オキサイド、トリフェニルスズアセテート、トリフェニ
ルスズクロライド等の有機スズ化合物で繊維製品を処理
する方法が広く使用されてきた。しかしながら、有機ス
ズ化合物の使用は、繊維製品を処理する際に激しい不快
臭や刺激臭を伴い作業環境を劣悪にするという問題があ
った。しかも、有機スズ化合物が魚介類の体内に異常に
蓄積されると、魚介類の奇形や死滅等の重大な障害を招
き、人間がそのような魚介類を摂取した場合には人体に
多大な悪影響を及ぼすことが近年明らかにされている。
従って、有機スズ化合物で処理された繊維製品の使用は
自主規制されるようになっており、全面禁止となる傾向
にある。
【0005】そこで、上記のような大きな弊害を伴う有
機スズ化合物に代わり得る技術の一つとして、金属銅、
亜酸化銅、酢酸銅、硫酸銅等の銅化合物を用いる方法が
ある。金属銅、および銅化合物は水中で銅イオンとな
り、水棲生物の付着防止効果を示すことが知られてい
る。例えば銅板を張った船底には水棲生物は長期間にお
いて付着することがない。また、銅イオンは海洋、河川
等の一般の環境において普通に存在し、生物全般にとっ
ての必須ミネラルとして重要な役割を果たしており、有
機スズ化合物のような弊害を招くことはない。
【0006】しかし、水棲生物の付着防止効果におい
て、生物の種類、生物の薬剤感受性、また環境条件等の
影響により、銅イオンのみでは付着防止効果が不十分な
場合があり、その為に他の有機化合物と併用することが
提案されている。かかる有機化合物としてはジチオカル
バミン酸金属塩、ジチオカルバミン酸エステル、チウラ
ムジサルファイド等のジチオカルバミン酸類が挙げら
れ、銅との併用において高い付着防止効果を示す(特開
平2−289109号公報)。ジチオカルバミン酸類化
合物は農薬、殺菌剤、防バイ剤、ゴム添加剤等として広
く用いられており、人体、魚類に対して極めて低毒であ
り、かつ環境中では無毒の物質に速やかに分解すること
が明らかとなっている。
【0007】金属銅、銅化合物、有機化合物等を繊維製
品に付与する手段として、銅粉末、亜酸化銅等の銅化合
物の粉末、ジチオカルバミン酸類等の有機化合物の粉末
を天然樹脂、合成樹脂等からなる塗料に混合し、これを
繊維表面に塗装、硬化させる方法がある。しかし、この
方法の場合には繊維が硬くなるため撚糸・整経・製織・
製網等の加工性および製品として使用時の作業性が劣
り、また繊維表面の粗さが原因で養畜魚介類を損傷する
等の不都合が生じる。さらに、磨耗等によって比較的短
期間に有効成分および塗膜が繊維から脱落し、水棲生物
の付着防止効果が消失してしまう。
【0008】また、銅粉末、亜酸化銅等の銅化合物の粉
末、ジチオカルバミン酸類等の有機化合物の粉末を合成
繊維に含有させる方法もあるが、十分な効果を発現させ
るだけの量を添加した場合、紡糸性・延伸性等の繊維化
工程性に劣り、強度・耐久性においても実用に供するこ
とのできるものが得られず、さらに繊維の表面層に存在
する成分のみが効果に寄与するだけであるので、短期間
に水棲生物の付着防止効果が消失してしまう。
【0009】以上のように、金属銅あるいは銅化合物、
および有機化合物を用いたもので水棲生物の付着防止効
果が高く、永続的で、かつ強度、加工性、作業性等でも
実用に供することができる繊維は現在まで得られていな
いのが実情である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、魚介
類や人体に対する安全性が高く、含有物の繊維製品から
の溶出や脱落がなく耐久性があり、水棲生物の付着を長
期に亘って防止できる繊維、およびそれからなる繊維製
品を提供することにある。また、本発明の目的は、繊維
製品が粗くなったり硬くならず、捕獲または養畜した魚
介類の損傷を招かない、水棲生物の付着防止用の繊維お
よびそれを含む繊維製品を提供することにある。さら
に、本発明は、撚糸、整経、製織、製編、製網等の加工
性が良く、使用時に作業性のよい網や網等の繊維製品に
なる繊維、およびそれらを含む繊維製品の提供をも目的
としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく研究を行った結果、通常の熱可塑性樹脂から
なる繊維、例えばポリエチレン繊維やポリプロピリン繊
維、ナイロン6繊維やナイロン66繊維、ポリエチレン
テレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維
を銅イオン含有水溶液中に浸漬処理しても該繊維の表面
や内部に銅が吸着あるいは化学的結合等により付着また
は含有されることはほとんどないが、ベンゾトリアゾー
ル系化合物を混合、もしくは共重合により導入した熱可
塑性ポリマーからなる繊維は、上記浸漬処理により繊維
表面や内部に銅が多量に付与されることが見出されすで
に出願した(特願平3−215978号)。さらに研究
を続けた結果、かかる繊維にジチオカルバミン酸類化合
物を付与することにより長期に亘り水棲生物の付着防止
効果がより高められることを見出し、本発明に至った。
【0012】本発明において、ベンゾトリアゾール系化
合物が混合または共重合された熱可塑性ポリマーとは、
ベンゾトリアゾール系化合物をポリマーと混合、または
ポリマーの主鎖または側鎖に共重合させたポリマーのこ
とを意味する。そしてベンゾトリアゾール系化合物と
は、化学式1で表されるベンゾトリアゾール骨格をその
構造中に含有する化合物であって、ポリマーに共重合さ
せる場合には、その骨格にカルボキシル基や水酸基のよ
うなエステル結合形成基などが直接または他の有機基を
介して結合している化合物である。ベンゾトリアゾール
系化合物は、単独で使用しても、2種類以上を混合して
使用しても良い。本発明で使用するベンゾトリアゾール
系化合物の具体例として下記の化学式2〜化学式8で表
される化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】 化学式1において、A、BおよびCのうちの二つは結合
しており、A〜Gは水素原子または少なくとも一つはエ
ステル結合形成性基を有しており、残りが水素原子また
は他の置換基である。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】上記のベンゾトリアゾール系化合物のう
ち、カルボン酸を有する化合物については、そのアルキ
ルエステルをも含む。熱可塑性ポリマーに混合、もしく
は共重合させるベンゾトリアゾール系化合物の量は、
0.05〜50wt%、特に0.5〜50wt%の範囲
が好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物は極微量でも
銅との併用により水棲生物の付着防止効果を示すことが
できるが、実用上必要な、数ケ月以上の水棲生物の付着
防止効果を維持させるための銅、およびジチオカルバミ
ン酸類化合物と併用するには、熱可塑性ポリマーに対し
0.05wt%以上を混合、もしくは共重合することが
望ましい。また、50wt%を超えると溶融紡糸時にフ
ィルター詰まりや毛羽断糸を起こしやすく使用困難であ
る。
【0022】本発明における熱可塑性ポリマーとして
は、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリロニトリル
系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、アラ
ミド系、全芳香族ポリエステル系、ポリオレフィン系等
が挙げられ、特にベンゾトリアゾール系化合物がポリマ
ーの主鎖または側鎖に共重合されているポリエステル系
ポリマーが、長期に亘る水棲生物の付着防止効果が特に
顕著であることより好ましい。ポリエステルとしては、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート、またはポリヘキサメチレンテレフタレートを主成
分とするポリエステル;テレフタール酸、イソフタール
酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタール酸、
α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,
4′−ジカルボキシフェニル、5−ナトリウムスルホイ
ソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、ア
ゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ま
たはこれらのエステル類と、エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペン
チルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノー
ル、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリ
コールなどのジオールとからなる繊維形成性ポリエステ
ル等が挙げられ、その構成単位の70モル%以上、特に
80モル%以上がポリエチレンテレフタレート単位、ポ
リブチレンテレフタレート単位、またはポリヘキサメチ
レンテレフタレート単位であるポリエステルが好まし
い。ポリエステル繊維は湿潤による強度低下がほとんど
無く、海水や淡水に接触して使用される用途に対して極
めて適している。
【0023】ベンゾトリアゾール系化合物が混合、もし
くは共重合されている熱可塑性ポリマーからなる繊維に
銅を付与する方法の1つとして、第二銅イオン、水酸化
銅錯イオン、銅アンモニア錯イオン等を含む水溶液中に
該繊維を浸漬する方法が挙げられる。繊維に付与する銅
の量は、ベンゾトリアゾール系化合物の10モル%以
上、特に50モル%以上であることが水棲生物の付着防
止効果の点で好ましい。
【0024】本発明におけるジチオカルバミン酸類化合
物とは化学式9で表されるジチオカルバミン酸金属塩で
あり、具体例としてジメチルジチオカルバミン酸、ジエ
チルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン
酸、フェニルメチルジチオカルバミン酸、シクロヘキシ
ルジチオカルバミン酸、ピペリジンジチオカルバミン
酸、モノメチルジチオカルバミン酸、モノエチルジチオ
カルバミン酸、モノブチルジチオカルバミン酸、フェニ
ルジチオカルバミン酸、ニトロフェニルジチオカルバミ
ン酸、クロロフェニルジチオカルバミン酸、エチレンビ
スジチオカルバミン酸、ブチレンビスジチオカルバミン
酸等のナトリウム塩、もしくはカリウム塩が挙げられ
る。
【0025】
【化9】 R↓1およびR↓2はアルキル基、フェニル基、アルキル
フェニル基、ハロゲノフェニル基、ニトロフェニル基、
クロロアルキル基、シクロアルキル基から選ばれる基、
または水素原子、あるいはR↓1とR↓2が結合してヘテ
ロ環を形成したもののいずれかであり、かつR↓1とR
↓2は同一でも異なっていても良い。また、MはNaま
たはKの金属原子を表す。
【0026】ジチオカルバミン酸類化合物の繊維への付
与量は、ベンゾトリアゾール系化合物の10モル%以
上、特に50モル%以上であることが水棲生物の付着防
止効果の点で好ましい。
【0027】次に本発明の繊維の製造法についてポリエ
ステルを例にあげて説明する。まずポリエステルの原料
であるテレフタール酸を、メタノールによってエステル
化した後ジメチルテレフタレートとして精製し、2.5
倍モル程度のエチレングリコール、重合触媒としてジメ
チルテレフタレートに対して0.05wt%程度の酢酸
亜鉛、さらにベンゾトリアゾール系化合物をジカルボン
酸成分に対して0.01〜10モル%加え、大気圧中で
150〜230℃に加熱してエステル交換反応を行なわ
せ、その後昇温減圧してエチレングリコールを追い出
し、三酸化アンチモンを重合触媒として重合反応を行な
う。次いで得られたポリマーを取り出してペレット化
し、水洗、乾燥してベンゾトリアゾール系化合物が共重
合されたポリエステルペレットを得る。重合の方法、使
用する触媒等は、ここに挙げたものに限定されない。ポ
リエステルペレットの繊維化に関しては特に限定される
ものではなく、適宜の溶融紡糸方法を用いればよい。ま
た、繊維の断面形状も特に限定されるものではなく、円
形、異形、中空形のいずれであってもよく、また芯鞘型
やバイメタル型の複合形状であっても良い。この場合、
水棲生物の付着防止性を高めるうえでベンゾトリアゾー
ル系化合物が共重合されたポリマーが繊維表面の少なく
とも一部を形成していなければならない。
【0028】次いで、第二銅イオン、水酸化銅錯イオ
ン、銅アンモニア錯イオン等を含む水溶液中に繊維、も
しくは該繊維を含む繊維製品を浸漬加工し、水洗、乾燥
させ、繊維に銅を付与させる。特に銅アンモニア錯イオ
ンを含み、pH7〜12に調節された水溶液中に、浴比
1/10〜1/100、温度20〜70℃で0.5〜2
4時間浸漬して銅イオンを吸着させ、その後水洗、乾燥
させる方法が好ましい。
【0029】さらに銅が付与された繊維を、銅の10モ
ル倍以上のジチオカルバミン酸Naまたはジチオカルバ
ミン酸Kを溶解させた水溶液中に浴比1/10〜1/1
00、温度0〜50℃で0.5〜24時間浸漬した後、
水洗、乾燥することによりジチオカルバミン酸類化合物
を繊維に付与する。必要に応じて銅およびジチオカルバ
ミン酸類化合物を付与した繊維、もしくはその繊維を含
む繊維製品の表面を樹脂加工することによって、水中へ
の付与成分の溶出速度をコントロールすることが可能で
ある。
【0030】このようにして得られた、銅およびジチオ
カルバミン酸類化合物が付与されたポリエステル系繊維
は、その表面に緻密で堅牢な銅およびジチオカルバミン
酸含有層が形成されており、極めて高い水棲生物の付着
防止効果を長時間維持することができる。また、繊維自
体は一般のポリエステル繊維と同様の強度、耐久性、柔
軟性を持っており、加工性にも極めて優れている。
【0031】本発明の繊維は、そのまま、また、必要に
応じて他の繊維と混繊、混紡、撚合したのち、糸、ロー
プ、紐、網、編織物、不織布等の繊維製品とすることが
できる。本発明の繊維および繊維製品は、海水や淡水に
長期間接触して使用される漁業用定置網、養畜魚介類用
生簀網、海水や淡水の濾過フィルター等の水産用繊維製
品;航路浮標、灯浮標、ブイ等の係留に使用されるロー
プ;土木用に使用される汚濁防止繊維膜等を構成する原
料繊維あるいは原料繊維製品として使用することができ
る。また、本発明の繊維および繊維製品は水中における
用途のみならず、真菌類、細菌類に対しての抗菌、殺菌
力を利用した靴下、壁紙等に応用することも可能であ
る。
【0032】
【実施例】
実施例1 テレフタール酸をメタノールによってエステル化し、ジ
メチルテレフタレートとして精製し、2.5倍モルのエ
チレングリコール、重合触媒としてジメチルテレフタレ
ートに対して0.05wt%の酢酸亜鉛、テレフタール
酸に対して5モル%の2−(2′−ヒドロキシフェニ
ル)−ベンゾトリアゾール−5、5′−ジカルボン酸
(化学式2の化合物)を加え、大気圧中で200℃に加
熱してエステル交換反応を行ない、さらに酢酸亜鉛に対
して1.2倍モルのリン酸、ジメチルテレフタレートに
対して500ppmの三酸化アンチモンを加え、280
℃、0.1mmHgに昇温・減圧して重合反応を行な
い、得られたポリマーをペレット化し、水洗、乾燥し
た。このペレットを120℃で乾燥したのち、丸孔ノズ
ルを用いて溶融紡糸した。該紡糸原糸をローラープレー
ト方式により延伸し、75デニール/36フィラメント
のマルチフィラメントとし、これを直径6.7mmの網
状となるように撚糸した。これを、酢酸銅を100g/
lの濃度で含有し、アンモニア水によりpH8に調節さ
れた水溶液中に浴比1/50、温度60℃で24時間浸
漬後、振盪して銅を吸着させて水洗、乾燥し、次にジメ
チルジチオカルバミン酸ナトリウム10g/l水溶液中
に浴比1/50、温度25℃で1時間浸漬し水洗、乾燥
して銅およびジチオカルバミン酸類化合物が併せて2.
8wt%付与されたポリエステル系繊維からなる撚糸を
得た。
【0033】実施例2 実施例1において、共重合成分として、2−(2−ヒド
ロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール−5、5′−ジ
カルボン酸に代えて1−マレイン酸−ベンゾトリアゾー
ル(化学式3の化合物)を用いた以外は実施例1と同一
の方法により銅およびジチオカルバミン酸類化合物が併
せて2.2wt%付与されたポリエステル系繊維からな
る撚糸を得た。
【0034】実施例3 実施例1において、共重合成分として、1−ブタンジオ
ール−ベンゾトリアゾール(化学式4の化合物)を用い
る以外は実施例1と同一の方法により銅およびジチオカ
ルバミン酸類化合物が併せて2.3wt%付与されたポ
リエステル系繊維からなる撚糸を得た。
【0035】実施例4 実施例1において、共重合成分として、1−プロピレン
グリコール−ベンゾトリアゾール(化学式5の化合物)
を用いる以外は実施例1と同一の方法により銅およびジ
チオカルバミン酸類化合物が併せて2.2wt%付与さ
れたポリエステル系繊維からなる撚糸を得た。
【0036】実施例5 実施例1において、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリ
ウムに代えてジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを
用いた以外は実施例1と同一の方法により銅およびジチ
オカルバミン酸類化合物が併せて3.0wt%付与され
たポリエステル系繊維からなる撚糸を得た。
【0037】実施例6 実施例1において、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリ
ウムに代えてジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムを
用いた以外は実施例1と同一の方法により銅およびジチ
オカルバミン酸類化合物が併せて3.2wt%付与され
たポリエステル系繊維からなる撚糸を得た。
【0038】実施例7 1H−ベンゾトリアゾールを20モル%配合させた低密
度ポレエチレンを、10t/mの片撚糸であって、10
00デニール/192フィラメントのポリエステルフィ
ラメント100重量部に対し150重量部被覆し、実施
例1と同一の方法により銅およびジチオカルバミン酸類
化合物を併せて3.5wt%付与して樹脂被覆糸を得
た。
【0039】比較例1 実施例1において、共重合成分の2−(2′−ヒドロキ
シフェニル)−ベンゾトリアゾール−5、5′−ジカル
ボン酸を添加しなかった以外は実施例1と同一の方法に
より銅およびジチオカルバミン酸類化合物が併せて0.
05wt%付与されたポリエステル系繊維からなる撚糸
を得た。
【0040】比較例2 実施例1の方法において、ジメチルジチオカルバミン酸
ナトリウムを用いなかった以外は実施例1と同一の方法
により銅だけが1.2wt%付与されたポリエステル系
繊維からなる撚糸を得た。
【0041】比較例3 比較例1で得られた撚糸をジメチルジチオカルバミン酸
銅粉末30wt%、バライト粉25.1wt%、ロジン
5.5wt%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5wt%、
リン酸トリクレシル2.1wt%、4−メチル−2−ペ
ンタノン19wt%、キシレン12.8wt%の割合で
配合した塗料に浸漬して乾燥し、金属銅が繊維表面に1
0.1wt%付着した撚糸を得た。
【0042】各撚糸の硬さ(剛直性)を調べた。その結
果を表1に示す。次に得られた各撚糸を用いて直径5m
mのロープを作製し、その時の作製のしやすさを調べた
ところ表1に示す結果を得た。また、繊維に銅のみを付
与しただけでは十分な水棲生物の付着防止効果が得られ
なかった海域で、各撚糸を4月から翌年の10月までの
18ケ月間、水深約1〜2mの位置に浸漬して海棲生物
の付着状況を調べたところ表1に示す結果を得た。表1
における海棲生物の付着状況は、下記の基準により目視
により判定したものである。 5…生物の付着が何ら観察されない。 4…撚糸の表面積の約2割に生物が付着している。 3…撚糸の表面積の約4割に生物が付着している。 2…撚糸の表面積の約8割に付着生物に覆われている。 1…撚糸の表面積全体(10割)が付着生物に覆われて
いる。
【0043】
【表1】
【0044】表1の結果から、ベンゾトリアゾール系化
合物が混合または共重合されたポリマーからなり、銅お
よびジチオカルバミン酸類化合物が付与された繊維から
なる撚糸は、18ケ月後も海棲生物の付着がないかまた
は少なく、長期間海水中で有効に使用し得るのに対し
て、銅のみが付与された場合は海棲生物の付着防止効果
が不十分であり、ジメチルジチオカルバミン酸銅粉末を
混練させた塗料を塗布した撚糸の場合は長期間海水で有
効に使用できないことがわかる。
【0045】
【発明の効果】本発明の繊維およびそれを含む繊維製品
は、魚介類や人体に対する安全性が高く、繊維製品から
の含有物の溶出や脱落が少なく耐久性があり、水棲生物
の付着を長期に亘って防止できる。また、本発明の繊維
および繊維製品は、表面が滑らかであり、しかも柔軟性
に富むので、捕獲または養畜した魚介類の損傷を招か
ず、撚糸、整経、製織、製編、製網等の際の加工性がよ
く、その上、実用時の作業性が極めて良好である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06M 101:32 (72)発明者 徳永 勲 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 審査官 澤村 茂実 (56)参考文献 特開 平2−289109(JP,A) 特開 平1−149777(JP,A) 特開 平2−188581(JP,A) 特開 平1−260054(JP,A) 特開 平5−44110(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 11/00 - 15/72 D01F 1/10 D01F 6/00 - 6/94

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ベンゾトリアゾール系化合物が混合、も
    しくは共重合された熱可塑性ポリマーからなり、ジチオ
    カルバミン酸類化合物と銅との錯体が付与されている繊
    維。
  2. 【請求項2】 熱可塑性ポリマーがポリエステル系ポリ
    マーである請求項1記載の繊維。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の繊維を含む繊維製品。
JP4623992A 1992-01-31 1992-01-31 水棲生物の付着防止効果を有する繊維および繊維製品 Expired - Fee Related JP3164318B2 (ja)

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