JP3159715U - 鋏 - Google Patents
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Abstract
【課題】両刃間の枢支構造を堅牢化し、両刃の動きを滑らかなものにすることにより、被切断物の切断時における引き切りと、被切断物の刃先方向への逃げを防止する切れ味の良い実用的な鋏を提供する。【解決手段】鋏10は、左刃1と、右刃2の柄部4と、両柄連結リンク5と、右刃2の柄部4と分離して構成された右刃2とから成る。被切断物の切断時に、右刃2の刃部2aを左刃1の刃部1aに対して右刃2の柄部4方向に相対移動可能とする。【選択図】図1
Description
本考案は、例えば草花の軸の切断や、植木、庭木等の剪定などに用いる鋏に関する。その特徴とするところは、被切断物の切断時に、被切断物に対して剪断作用とともに、引き切り作用をも同時に加えることにより、切れ味を格段に向上させた鋏に関する。
従来、例えば草花の切り取りや、植木、庭木等の剪定をするには、鋏の右刃と左刃を開いた状態で両刃の根元に草花等の軸を咥え、両刃を閉じる際の剪断作用により切断する。
しかし、物を切断するには、被切断物の材質にもよるが被切断物に対して剪断作用のみでなく、まな板上の包丁の動きのように同時に包丁を手元の柄方向に引く、いわゆる「引き切り作用」をも加えると良く切れることが分っている。
また、通常、鋏は、両刃を最大限に開いた切断初期段階では、被切断物に対する両刃の交差角が大きいために、刃先を閉じるに従い、被切断物が刃先方向に滑り(刃先方向に押し出され)、切断最終段階になってようやく切れ始めるという欠点がある。
しかしながら、この場合、切断時の刃先に剪断作用に加え、上記「引き切り」作用が同時に加わると、静止している一方の刃先に対し、他方の刃先が手元(柄)方向に相対移動するので、上記「被切断物の刃先方向への滑り」の問題が若干ではあるが軽減されることになる。
そこで、従来、このような一対の刃のうち一方の刃に「引き切り作用」を可能ならしめた鋏が知られている(例えば特許文献1)。
この特許文献1に記載の鋏50は、図4に示す構成のもので、一対の刃51、52のうち、左刃51の右刃52との枢支部に、刃先方向に延びる長孔53aと、これに直交する長孔53bとを設けるとともに、先端部に小径のベアリング54a、54bが装着された枢支ピン55a、55bを上記2つの長孔53a、53b内に入るように右刃52上に立設したものである。
この鋏50によれば、図4(a)が示すように、切断初期段階においては、左刃51の先端が右刃52の先端から長さがE分だけ突出しており、両刃が閉じる切断終了段階の図4(b)においては、左刃51の先端が右刃52の先端から上記E分だけ後退した状態になるので、その後退分、図示しない被切断物に引き切り作用が加わるというものである。
しかしながら、この鋏50における左刃51の右刃52に対する枢支構造は、確定的なものではなく、浮動的なものである。なぜならば、左刃51は、右刃52の交差部から立設された直交する2個のベアリング54a、54bに案内されるので、その動きは常に二方向に動くからである。よって、左刃51の動きも刃先線に沿った一直線方向ではなく、正確な引き切れができない。
したがって、実際には両刃51、52間の動きはスムーズでなく、また、頻繁な開閉動作により、枢支ピン55a、55bと、長孔53a、53b内面間に磨耗やガタが生じる。したがって、耐久年数が低くなり、実用的なものではない。
そこで、本考案は、上記従来の鋏の欠点を解消すべくなされたもので、両刃の枢支構造を堅牢化するとともに、両刃の動きを滑らかなものにすることにより、切断時における被切断物に対する引き切りが確実に行なえ、更に被切断物の刃先方向への逃げの問題をも解消した切れ味の良い実用的な鋏を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本考案に係る鋏は、先端部に刃部を、他端部に柄部を有するとともに、前記刃部と柄部との間に枢支孔を有する左刃と、先端部に、前記左刃の枢支孔に枢支ピンで枢支される枢支孔を有する右刃の柄部と、一端部と他端部とに枢支孔が設けられ、該一端部の枢支孔が、前記左刃の枢支孔と柄部との間において左刃リンクピンで回動自在にピン結合された両柄連結リンクと、前記右刃の柄部とは別体に構成され、先端部に前記左刃の刃部方向に対向する刃部を、他端部にスライド長孔を有するとともに、該刃部と該スライド長孔との間に長手方向に延びる枢支長孔を有する右刃と、から成り、前記両柄連結リンクの他端部の枢支孔を、前記右刃の前記枢支長孔と前記スライド長孔との間において右刃リンクピンで回動自在にピン結合するとともに、前記右刃の柄部の枢支孔を、前記右刃のスライド長孔に右刃柄部ピンでピン結合することにより、被切断物の切断時に、前記右刃の刃部を、前記左刃の刃部に対して前記右刃の柄部方向に相対移動させることにより、前記被切断物を引き切り可能にしたことを特徴とする。
この場合、少なくとも枢支ピンをネジ止め構造にすることにより、左刃と右刃とを分解可能にしても良い。
また、少なくとも、左刃の柄部と両柄連結リンクとの間に、両部材間を拡げる付勢手段を介在させても良い。
本考案の鋏は、従来の鋏と異なり、引き切り作用をする右刃の2つの長孔を直交させずに右刃上で一直線上に位置させるとともに、それぞれの長孔の動きを枢支ピンで規制し、しかもそのうちの枢支長孔部分を左刃と右刃の柄部とで上下から挟持した状態でスライドさせるため、両刃間の枢支構造が堅牢化する。
したがって、両刃の動きが滑らかになり、効果的な被切断物の引き切りと剪断作用とが可能になり、切れ味が格段に向上する。
また、その際、右刃を左刃に対して相対移動させつつ切断するので、被切断物の刃先方向への逃げが抑制され、より一層切れ味の良い実用的な鋏が得られる。
以下、本考案を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本考案の挟10の左刃1と、右刃2を全開(最大交差角θ1)にしたときの正面図である。
図に示すように、本考案に係る鋏10は、左刃1と、右刃2と、右刃2の柄部4と、両柄連結リンク5と、これら部材をピン結合する枢支ピン3とで構成されている。
左刃1は、先端部に刃部1aを、他端部に作業者の指(不図示)を包囲する形状に曲成された柄部1bを有するとともに、これら刃部1aと柄部1bとの略中間部に2つの枢支孔1c、5aを有する。
右刃2の柄部4は、先端部に、左刃1の枢支孔1cに前述の枢支ピン3で枢支される枢支孔4aが穿設されているとともに、下部にも後述する右刃2のスライド長孔2cにピン結合される枢支孔4bが穿設されている。すなわち、本考案の右刃2の柄部4は、文字通り柄部のみで構成され、後述する右刃2とは分離された別体のものとされている点が第一の特徴である。
右刃2は、右刃2の柄部4とは別体に構成された棒状のもので、先端部に左刃1の刃部方向に対向する刃部2aを、他端部に長手方向に延びるスライド長孔2cを有するとともに、刃部2aと、スライド長孔2cとの間にも同方向に延びる枢支長孔2bを有する。これら2つの長孔2b、2cの中心は、一直線上にあり、具体的な位置とその長さについては後述する。
すなわち、この一直線上に位置する枢支長孔2bと、スライド長孔2cは、直交する従来の鋏50の長孔53a、53bとはその配置が異なるのであり、この点が本考案の鋏10の第二の特徴である。
次に両柄連結リンク5は、前述の左刃1の柄部1bと、右刃2の端部2dとを回動自在に連結するためのリンクである。
この両柄連結リンク5の一端部と他端部とには、それぞれ枢支孔5a、5bが穿設されており、それぞれの枢支孔5a、5bには、前述した左刃1の枢支孔1dと、右刃2の枢支孔2eとが重ね合わせられた状態で、それぞれが左刃リンクピン6と、右刃リンクピン7とでピン結合されている。
すなわち、この両柄連結リンク5も従来の鋏50には全く存在しない部材であり、この点が本考案の鋏10の第三の特徴である。
そして、本考案の鋏10は、図に示すように、左刃1の枢支孔1cと、右刃2の枢支長孔2bと、右刃2の柄部4の枢支孔4aとを、この順に下から積み重ねるとともに、これら枢支孔、枢支長孔等を1本の枢支ピン3でピン結合している。
一方、右刃2の端部2dは、そのスライド長孔2cが、右刃2の柄部4の枢支孔4bと右側柄部ピン8でピン結合されている。
以上により、本考案の鋏10が組み立てられている。
したがって、本考案の鋏10は、左刃1と、右刃2の柄部4については、この枢支ピン3を中心に回動可能に、右刃2については、左刃1に対して枢支長孔2b及びスライド長孔2cの長さ範囲内で相対移動可能になっている。
なお、左刃1の刃部1aと、右刃2の刃部2aとは、この実施形態では直刃のものであるが、例えば柳刃など如何なる形状のものであっても良い。
また、各枢支ピンは、各部材が回動自在な程度に加締めたものであるが、その他、例えば、鳩目構造(不図示)のものでも良い。
一方、図示は省略するが、これら構成の枢支ピンに代えて、十字孔付き小ネジを各部材に挿通し、袋ナットと、平座金とで止めるなどのネジ構造とすることにより、各部材を分解可能な構造のものにしても良い。
この場合、少なくとも枢支孔1d、5aにおいて、左刃1の柄部1bと両柄連結リンク5との間に、例えばバネ座金、皿バネ等の、両部材間を拡げようとする付勢手段(不図示)を介在させることにより、両刃1、2の交差部を常に密着状態にし、使い始めの切れ味を常に維持することができる。
更に、各構成部材の材質については、本実施形態の鋏10ではステンレス鋼製であるが、従来の鋏50のように例えば工具鋼とし、刃部に焼入れ等を施しても良い。
次に、本考案の作用を図1〜図3に基づいて説明する。
図2は、図1の鋏10の左刃1と、右刃2間を半閉状態にした正面図、図3は、全閉状態にした正面図である。
まず、前述した図1においては、作業者が左刃1の柄部1bを右刃2の柄部4に対して全開するので、左刃リンクピン6が枢支ピン3に対して反時計方向に回動する。左刃リンクピン6が反時計方向に回動すると、このピン6にピン結合している両柄連結リンク5が図の斜め右上方向に引き上げられる。
両柄連結リンク5が図の斜め右上方向に引き上げられると、両柄連結リンク5の他端部の右刃リンクピン7は、右刃2の端部2dに右刃リンクピン7でピン結合されているので、右刃2も同様に斜め右上方向に(刃先方向に)引き上げられる。
しかし、右刃2は、その動きが枢支長孔2bとスライド長孔2c内をスライドする枢支ピン3と、右側柄部ピン8とで規制されているので、右刃2の全体が一直線状に刃先2f方向にスライドする。
そして、右刃2の枢支長孔2bの下端の内周面が枢支ピン3の外周面と接触した時点で停止し、この時、右刃2の刃先2fは、左刃1の刃先1eから変位長さE1だけ突出している。この変位長さE1は、本考案の鋏10の右刃2の左刃1に対する最大相対移動長さ(刃先2fの突出長さ)である。
次に、作業者が図2の如く、両柄部1b、4を矢印B方向に半分閉じると、左刃1の柄部1bは、両柄連結リンク5上端部の左刃リンクピン6を図の時計回り方向に回動させる。そうすると両柄連結リンク5が左刃リンクピン6を中心に回動しつつ、他端部の右刃リンクピン7が右刃2の端部2dを図の左斜め下方に引き下げる。
右刃2は、その枢支長孔2bと、スライド長孔2c内にそれぞれ枢支ピン3と、右側柄部ピン8とが装着されているので、これら二個のピンに案内され、枢支長孔2bの全長Lの半分の位置(枢支長孔2bの中央位置)まで斜め下方に移動する。
このとき、右刃2は、その動きが枢支ピン3と、右側柄部ピン8とで拘束されているので、その刃先2fは、左刃1の刃部1aに対し、右刃2の刃部2aの刃先線に一致して上記長さ分だけ後退する。したがって、刃先2fの刃先1eからの変位長さはE2(E2=E1−L/2=L/2)となる。
したがって、左刃1と右刃2の根元に位置する被切断物Pには、その両側に両刃1、2からの剪断作用が加わるともに、被切断物Pの右側には、右刃2の刃部2aが、上記変位長さがE1からE2に相対移動した長さ分、引き切り作用が更に加わる。
更に、両柄部1b、4を閉じ、両刃1、2の柄部1b、4をP点で接触させることで、左刃1の刃先1eと、右刃2の刃先2fとを閉じると、図3の状態になる。
この状態に至る過程でも勿論、両柄連結リンク5による右刃2の右斜め下方への引下げは進行しており、結局、枢支ピン3の外周面が、枢支長孔2bの上端部の内周面に接触した時点、すなわち図2の状態よりも右刃2が更に枢支長孔2bの長さLの残り半分の長さ(L/2)だけ移動した時点で、両刃1、2の柄部1b、4がP点で接触し、両刃1、2の刃先が閉じる(E3=0)。
すなわち、本考案の枢支長孔2bの長さLは、左刃1に対する右刃2の相対移動長さに等しく、その下端部の位置は、図1に示すように、右刃2の最大突出位置に一致し、その上端部の位置は、図3に示すように、両刃1、2の刃先1e、2fが一致した位置である。
図2の状態から図3の状態までの間、被切断物Pは、両刃1、2の交差角θ2がより小さくなるために刃先方向に若干押し出されつつも、更なる上記剪断作用と引き切り作用とが加わるために、最終的には完全に切断される。
今度は逆に両刃1、2の柄部1b、4を開くと、右刃2は、図示は省略するが、前述した動きと逆の動きである斜め上方へのスライドを行うため、右刃2の刃先2fは、変位長さがE3(図3)→E2(図2)→E1(図1)の順に前方に突出し、次の切断準備が完了する。
本考案に係る鋏10は、上記の構成としたので、以下に述べる従来の鋏50では得られない多くの作用効果を奏することができる。
1.本考案の鋏10は、従来の鋏50のように引き切り作用をする左刃151の2つの長孔53a、53bを直交させずに、右刃2上で右刃2の2つの長孔を一直線上に位置させるとともにそれぞれの長孔の動きを枢支ピンで規制し、しかもそのうちの枢支長孔2b部分を左刃1と右刃2の柄部4とで上下から挟持した枢支構造下でスライドさせる。
したがって、右刃2の枢支構造が従来の鋏50のように浮動化せず、堅牢化したものになる。よって、切断時における被切断物Pの引き切り作用も滑らかで確実なものとなり、被切断物Pには剪断作用に加え、枢支長孔2bの長さLに相当する長さの引き切り作用が同時に加わり、被切断物Pに対する切れ味が格段に向上する。
2.また、切断時は被切断物Pに対して右刃2が手元方向に移動するので、被切断物Pの刃先方向への逃げが抑制される。したがって、被切断物Pに対する切れ味がより一層向上する。
3.また、各枢支ピン3、6〜8をネジ止め構造のものにした場合には、両刃1、2を個々に分解することができ、切れ味が落ちた場合の刃部1a、2aの研磨が非常に容易になる。
4.更に、少なくとも、左刃1の柄部4と、両柄連結リンク5との間に、両部材間を拡げようとする付勢手段(不図示)を介在させた場合には、この付勢手段の付勢力が力点となり、枢支ピン3が支点となり、刃部1a、2aの交差部が作用点となる「てこの原理」が作用するので、両刃1、2の交差部は常にその刃面が互いに密着状態となる。
したがって、本考案の鋏10は、切れ味が落ちることなく、使い始めの切れ味を常に維持することができる。
本考案の鋏10の用途は、特に限定されるものではなく、あらゆる用途に使用できるものである。
以上に説明した本考案の鋏10の実施形態は、ほんの一例である。したがって、本考案の鋏10は、これら実施形態のものに何ら限定されず、実用新案登録請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形、組み合わせが可能であり、これらの変形、組み合わせも本考案の範囲に含まれることは勿論である。
例えば、上記実施形態の鋏10は、右刃2に引き切り作用を持たせたが、両刃1、2の配置を左右対称にした、いわゆる勝手違いの配置とすることにより、左刃1に引き切り作用を持たせることもできる。
1 左刃
1a 刃部
1b 柄部
2 右刃
2a 刃部
2b 枢支長孔
2c スライド長孔
3 枢支ピン
4 右刃の柄部
5 両柄連結リンク
6 左刃リンクピン
7 右刃リンクピン
8 右側柄部ピン
10 鋏(本考案)
P 被切断物
1a 刃部
1b 柄部
2 右刃
2a 刃部
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10 鋏(本考案)
P 被切断物
Claims (3)
- 先端部に刃部を、他端部に柄部を有するとともに、前記刃部と柄部との間に枢支孔を有する左刃と、
先端部に、前記左刃の枢支孔に枢支ピンで枢支される枢支孔を有する右刃の柄部と、
一端部と他端部とに枢支孔が設けられ、該一端部の枢支孔が、前記左刃の枢支孔と柄部との間において左刃リンクピンで回動自在にピン結合された両柄連結リンクと、
前記右刃の柄部とは別体に構成され、先端部に前記左刃の刃部方向に対向する刃部を、他端部にスライド長孔を有するとともに、該刃部と該スライド長孔との間に長手方向に延びる枢支長孔を有する右刃と、から成り、
前記両柄連結リンクの他端部の枢支孔を、前記右刃の前記枢支長孔と前記スライド長孔との間において右刃リンクピンで回動自在にピン結合するとともに、
前記右刃の柄部の枢支孔を、前記右刃のスライド長孔に右刃柄部ピンでピン結合することにより、
被切断物の切断時に、前記右刃の刃部を、前記左刃の刃部に対して前記右刃の柄部方向に相対移動させることにより、前記被切断物を引き切り可能にしたことを特徴とする鋏。 - 少なくとも枢支ピンを、ネジ止め構造にすることにより、左刃と右刃とを分解可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の挟。
- 少なくとも、左刃の柄部と両柄連結リンクとの間に、両部材間を拡げる付勢手段を介在させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の挟。
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