JP3151914B2 - リン酸塩系ガラスフィルタとその製造方法および撮像装置 - Google Patents

リン酸塩系ガラスフィルタとその製造方法および撮像装置

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JP3151914B2 JP04308692A JP4308692A JP3151914B2 JP 3151914 B2 JP3151914 B2 JP 3151914B2 JP 04308692 A JP04308692 A JP 04308692A JP 4308692 A JP4308692 A JP 4308692A JP 3151914 B2 JP3151914 B2 JP 3151914B2
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  • Glass Compositions (AREA)
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  • Surface Treatment Of Glass (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リン酸塩系ガラスフィ
ルタとその製造方法、およびそのリン酸塩系ガラスフィ
ルタを用いた撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ビデオカメラや電子スチルカメ
ラの撮像装置の色感度補正用光学素子として、従来より
銅や鉄などを添加したリン酸塩系ガラスが多用されてい
る(例えば、特公昭60-49142,59-15102 )。しかし、こ
のリン酸塩系ガラスは耐湿性に劣っており、空気中の水
分の作用で表面層が変質する、いわゆる「ヤケ」現象が
発生し、光学的性能を長期間保てない欠点があった。こ
の対策として、光学的性能を低下させずに耐湿性を高め
るために、リン酸塩系ガラスの光学面にコーティング処
理を施した後、光学ガラス、水晶等の耐湿性に富む硬質
の光学素子を接着してリン酸塩系ガラスを保護したり、
またリン酸塩系ガラスの表面にMgF2 などの誘電体保
護膜をコーティング処理する方法(特開平3-37142)等が
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来技術に
おいて、水晶などを接着して保護する方法では、ガラス
の成分によって異なるが、温度60℃、湿度90%の条
件による耐湿試験を行うと、せいぜい300時間程度で
接着層の劣化または剥離などによって光学性能に支障を
きたすことが明らかとなっている。また、誘電体の保護
膜をつけたガラスを同様に水晶などと接着して保護する
ことにより、耐湿性を向上することができるが、真空蒸
着処理を必要とするため、コスト高となるという問題が
あった。
【0004】本発明はこれらの問題を解決するためにな
されたもので、耐湿性が良好で、光学特性の優れたリン
酸塩系ガラスフィルタを提供するとともに、このような
リン酸塩系ガラスフィルタの製造方法を提供し、さらに
このリン酸塩系ガラスフィルタを用いた撮像装置を提供
することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】 本発明の目的を達成す
るために、第1の発明のリン酸塩系ガラスフィルタは、
リン酸塩系ガラス板により構成されてなるリン酸塩系ガ
ラスフィルタにおいて、そのリン酸塩系ガラス板の表面
層のリン酸化合物の重量成分比がその内部に比べ小さい
ことによって特徴付けられている。
【0006】また、第2の発明のリン酸塩系ガラスフィ
ルタの製造方法は、リン酸塩系ガラス板を、所定の濃度
および温度の酸溶液中に所定時間浸漬することにより、
上記リン酸塩系ガラス板に含まれる表面層のリン酸化合
物をその酸溶液内に溶出させることによって特徴付けら
れている。
【0007】さらに、第3の発明の撮像装置は、撮像レ
ンズと、その撮像レンズを透過した被撮像物体からの光
のうち所定の波長の光を選択的に吸収する光学フィルタ
と、その光学フィルタを通過した光の入射によって発生
した電荷を、蓄積し、転送する撮像素子とが光軸上に順
次配列された撮像装置において、上記光学フィルタがリ
ン酸塩系ガラス板により構成されているとともに、その
リン酸塩系ガラス板の表面層のリン酸化合物の重量成分
比がその内部に比べ小さく形成されていることによって
特徴付けられている。
【0008】
【作用】まず、第1の発明のリン酸塩系ガラスフィルタ
は、そのリン酸塩系ガラス板の表面層において、ヤケの
原因物質であるリン酸化合物の重量成分比がその内部に
比べ小さいため、ヤケの反応は抑制され、ガラス板表面
は安定化する。
【0009】また、第2の発明のリン酸塩系ガラスフィ
ルタの製造方法は、リン酸塩系ガラ板を所定の濃度およ
び温度の酸溶液中に所定時間浸漬することにより、その
ガラス板の表面および表面層のリン酸化合物が溶出し、
表面層では内部に比べリン酸化合物の重量成分比が小さ
くなる。
【0010】さらに、第3の発明の撮像装置では、光学
フィルタとして用いられているリン酸塩系ガラスの表面
層はヤケの反応は抑制され、ガラス板表面は安定化す
る。したがって、耐湿性に優れ、光学的性能を長期間保
つことができる。
【0011】
【実施例】図1は第1の発明の実施例を示す模式的断面
図である。この実施例のリン酸塩系ガラスフィルタは、
リン酸塩系ガラス板1で構成され、その表面層におい
て、リン酸塩系ガラスに含まれるリン酸化合物の重量成
分比が小さい構成となっている。このように、ヤケの主
な原因物質であるリン酸化合物2、たとえば、リン酸塩
がリン酸塩系ガラス板1の表面層において少ないほどガ
ラス表面は安定化し、ヤケを抑制することができる。
【0012】また、図2は第1の発明の他の実施例を示
す模式的断面図である。この実施例では、上述した第1
の発明の実施例のリン酸塩系ガラス板1の光学面1a,
1bのそれぞれに接着剤3を介して水晶板4が接着され
た構成となっている。すなわち、2枚の水晶板4により
リン酸塩系ガラス板1が挟み込まれることにより、表面
は保護されている。
【0013】以上の構成よりなる図1および図2に示し
た実施例を製造する方法、すなわち、第2の発明の実施
例を以下に説明する。まず、40℃に保たれた0.5N
−リン酸溶液に、10mm角で厚みが1mmのリン酸塩
系ガラスを浸漬し、攪拌しながら10時間酸処理した。
【0014】この酸処理に用いる酸は、上述したリン酸
の他、硝酸・塩酸・酢酸等の溶液を用いても良い。ま
た、この酸処理は、高濃度、高温、短時間での処理を行
うと、ガラスの表面の荒れや潜傷が発生し、また、分光
特性に変化を生じる等、光学特性の劣化をきたす。した
がって、この酸処理は、濃度5N以下、温度80℃以下
の雰囲気で20時間までの条件で行うことが望ましい。
【0015】このようにリン酸塩系ガラスを酸処理する
ことにより、ヤケの原因物質のリン酸化合物をリン酸塩
系ガラスの表面層から強制的に溶出させる。すなわち、
リン酸塩系ガラス表面層は溶け出しやすいものを先に溶
出させることにより、表面層は溶け出しにくいものがリ
ッチに存在する結果、リン酸塩系ガラス表面は安定化す
る。
【0016】なお、この酸処理したリン酸塩系ガラス
は、分光透過率特性や目視による表面状態に変化はなか
ったが、オージェ電子分光分析(AES)により、その
表面層のリンのエネルギ強度が酸処理前と比べ、減少し
ていたことにより、表面層にはリン酸化合物が減少して
いることが確認された。
【0017】以上述べた方法により製造された図1に示
す実施例および本発明方法による酸処理を行っていない
リン酸塩系ガラス(以下、比較例〔1〕という)につい
て、60℃−90%の条件で耐湿試験を行った。その結
果、図1に示す実施例では300時間経過後、目視で確
認できる白ヤケが発生したのに対し、比較例〔1〕では
150時間経過後、白ヤケが発生することが確認され
た。
【0018】また、本発明方法により製造した図2に示
す実施例および本発明方法による酸処理を行っていない
リン酸塩系ガラス板の光学面にそれぞれ、接着剤を介し
て水晶板が接着された構成(以下、比較例〔2〕とい
う)について、同様に60℃−90%の条件で耐湿試験
を行った。その結果、図2に示す実施例は1000時間
経過後、光学特性の異常発生したのに対し、比較例
〔2〕では150時間経過後、剥離等の異常が発生する
ことが確認された。
【0019】これらの実験結果から、本発明のリン酸塩
系ガラスフィルタの構成によれば、耐湿性が向上するこ
とが明らかとなり、したがって、光学特性をより優れた
ものとすることが明らかとなった。
【0020】なお、リン酸塩系ガラスフィルタの構成
は、以上述べたものに限ることなく、その他、例えば図
1に示す実施例のリン酸塩系ガラスの光学面に誘電体の
保護膜をコーティングする構成でもよく、この場合さら
に耐湿性が向上することはいうまでもない。
【0021】図3は第3の発明の実施例を説明する構成
図である。以下、図面を参照しつつ説明する。この実施
例は、色感度補正用の光学装置として、ビデオカメラあ
るいは電子スチルカメラ等に用いられている。
【0022】撮像レンズ5は、被撮像物体からの光を、
撮像素子Iの受光面に結像させるためのレンズであっ
て、この撮像レンズ5と撮像素子Iとの間に、光学フィ
ルタFが配置されている。
【0023】この光学フィルタFは、リン酸塩系ガラス
板1を挟んで2枚の水晶板4が接着されて形成された構
成となっている。また、このリン酸塩系ガラス板1は、
その表面層のリン酸化合物の重量成分比がその内部に比
べ小さく形成されている。この光学フィルタFは、色補
正ガラスとも呼ばれ、固体撮像素子Iの波長感度が可視
光のみならず、近赤外域まで伸びているため、この光学
フィルタFのリン酸塩系ガラス板1により、不必要な近
赤外線を吸収し、カットすることができる。
【0024】この光学フィルタFを通過した光は、撮像
素子Iに入射する。この撮像素子Iは、その光軸上に沿
ってカバーガラス6、色分離フィルタ7およびCCD8
が順次配列されており、従って、入射光つまり近赤外線
が除去された後の光は、色分離フィルタ7によって所定
の波長毎に分離された後、CCD8へ入射する。そし
て、CCD8は、この光入射によって発生した電荷を順
次蓄積してゆき、その蓄積した電荷を所定の時間毎に外
部へと出力し、その出力がCRT等の表示装置(図示せ
ず)に画像情報として供される。
【0025】なお、図3に示す実施例では、光学フィル
タFをリン酸塩系ガラス板1の両面に各1枚ずつの水晶
板4が接着された構成であるが、この水晶板4は2枚か
ら7枚程度でもよく、この場合も上述したと同様の効果
を得ることができる。
【0026】図4に、本発明実施例に用いたリン酸塩系
ガラスフィルタの分光透過率特性を示す。この図から明
らかなように、リン酸塩系ガラスフィルタを用いること
により、波長750nm から1000nmの波長領域での光はほと
んど透過せずに吸収されることが明らかである。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、第1の発明によれ
ば、そのリン酸塩系ガラス板の表面層において、ヤケの
原因物質であるリン酸化合物の重量成分比がその内部に
比べ小さい構成としたので、ヤケの反応は抑制され、ガ
ラス板表面は安定化する結果、耐湿性は向上し、しか
も、光学特性が優れたリン酸塩系ガラスフィルタを提供
することができる。
【0028】また、第2の発明によれば、リン酸塩系ガ
ラス板を、所定の濃度および温度の酸溶液中に所定時間
浸漬するようにしたので、処理条件である酸溶液の濃
度、温度および時間を容易に制御することができる。そ
の結果、製造工程を簡略化することができ、しかも、コ
ストを低減することができる。
【0029】さらに、第3の発明によれば、第1の発明
によるリン酸塩系ガラス系ガラスフィルタを光学フィル
タとして用いた構成の撮像装置としたことにより、光学
特性の優れた、しかも、耐久性の向上したものとなる。
たとえば、ビデオカメラ等に用いられた場合、画質およ
び感度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の実施例を示す模式的断面図
【図2】第1の発明の他の実施例を示す模式的断面図
【図3】第3の発明の実施例を示す構成図
【図4】第3の発明を説明する図
【符号の説明】
1・・・・リン酸塩系ガラス板 1a,1b・・・・光学面 2・・・・リン酸化合物 3・・・・接着剤 4・・・・水晶板 5・・・・撮像レンズ 8・・・・CCD F・・・・光学フィルタ I・・・・撮像素子

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸塩系ガラス板により構成されてな
    るリン酸塩系ガラスフィルタにおいて、そのリン酸塩系
    ガラス板の表面層のリン酸化合物の重量成分比がその内
    部に比べ小さいことを特徴とするリン酸塩系ガラスフィ
    ルタ。
  2. 【請求項2】 リン酸塩系ガラス板を、所定の濃度およ
    び温度の酸溶液中に所定時間浸漬することにより、上記
    リン酸塩系ガラス板に含まれる表面層のリン酸化合物を
    その酸溶液内に溶出させるリン酸塩系ガラスフィルタの
    製造方法。
  3. 【請求項3】 撮像レンズと、その撮像レンズを透過し
    た被撮像物体からの光のうち所定の波長の光を選択的に
    吸収する光学フィルタと、その光学フィルタを通過した
    光の入射によって発生した電荷を、蓄積し、転送する撮
    像素子とが光軸上に順次配列された撮像装置において、
    上記光学フィルタがリン酸塩系ガラス板により構成され
    ているとともに、そのリン酸塩系ガラス板の表面層のリ
    ン酸化合物の重量成分比がその内部に比べ小さく形成さ
    れていることを特徴とする撮像装置。
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