JP3150899B2 - 多層構造豆腐の製造方法 - Google Patents

多層構造豆腐の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は豆腐の製造方法に関
するものである。さらに詳しくは、木綿豆腐と絹豆腐が
層状に一体形成された多層構造豆腐の製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】豆腐としては、絹こし豆腐と木綿ごし豆
腐が知られている。これらの豆腐の製造方法の基本的な
工程は同一であり、豆乳に凝固剤を添加して熟成した後
に、これを押し固め、しかる後に、押し固めた豆腐材料
を一定の形状に裁断する工程からなっている。木綿ごし
豆腐の場合には、熟成後の豆腐材料を撹拌機を用いて撹
拌した後に押し固める工程が追加される。
【0003】木綿ごし豆腐は、コクがあり、腰があるの
で、箸で摘んでもくずれにくく、鍋物などに使用され
る。絹ごし豆腐は、柔らかいので舌触りがよい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの豆腐はそれぞ
れ特徴がある。しかし、従来においては双方の特徴を備
えた豆腐は提案されていない。例えば、木綿ごし豆腐と
絹ごし豆腐が層状に形成された構造の豆腐は提案されて
いない。
【0005】このような層構造の豆腐を実現できれば、
木綿および絹の双方を同時に味わうことができるので商
品としての魅力がある。しかしながら、従来の方法をそ
のまま用いて、木綿および絹豆腐を製造して、これらを
相互に重ね合わせたとしても、これらの層の間には一体
性が無いので、調理の途中に分離してしまい、好ましく
ない。
【0006】本発明の課題は、このような点に鑑みて、
絹層と木綿層が物理的に一体化された多層構造の豆腐を
製造するための製造方法を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は次の工程により多層構造の豆腐を製造す
るようにしている。すなわち、本発明の多層構造豆腐の
製造方法は、豆乳に凝固剤を入れて撹拌する撹拌工程
と、撹拌後の凝固剤添加豆乳を熟成凝固させる熟成凝固
工程と、熟成後に得られた豆腐材料の上面および下面の
うちの少なくとも一方の面をほぐし砕いて木綿素地層を
形成する木綿層形成工程と、前記豆腐材料を押し固め
て、木綿層および絹層を備えた豆腐を形成するプレス圧
着工程とを有することを特徴としている。
【0008】このように熟成後の豆腐材料を押し固める
のに先立って、豆腐材料の上面あるいは下面、またはそ
れら双方の面をほぐして砕くことにより、プレス工程を
経た後に得られた豆腐は、ほぐして砕くことにより形成
された木綿層とそれ以外の部分の絹層との境界部分が相
互に物理的に一体化された構造となっている。従って、
多層構造であるにもかからわず、各層が一体化された状
態の豆腐を得ることができる。
【0009】ここで、豆腐の上面および下面が木綿層
で、その間に絹層が挟まれた三層構造の豆腐を製造する
ためには、上記の木綿層形成工程において、前記豆腐材
料の中間にほぐしの入らない部分を絹素地層として残し
た状態となるように、当該豆腐材料の上面および下面を
それぞれほぐせばよい。このようにすれば、中間の絹層
が上下の木綿層で挟まれ、しかも、これらの三層が一体
化された三層構造豆腐を製造することができる。
【0010】また、三層構造豆腐を生産性良く製造する
ためには、搬送ラインに沿って連続的に豆腐材料を搬送
し、搬送される豆腐材料の上方および下方にそれぞれ撹
拌機を配置しておき、これらの撹拌機によって豆腐材料
の上面および下面を連続的にほぐして木綿素地層を形成
すればよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して本発明の
実施の形態を説明する。
【0012】図1には、本発明を適用した三層構造豆腐
の製造工程を示してある。この図を参照して豆腐の製造
方法を説明する。
【0013】まず、ステップST1において、水漬槽内
において大豆を1日近く付けておく。次に、ステップS
T2において、水に浸した大豆を豆擦り機に掛けて潰
す。ステップST3では、豆擦り機に掛けた後の豆を擂
ることにより得られる豆汁を、煮沸釜で煮込む。例えば
7分程度煮込む。この後は、煮込んだ豆汁を、ステップ
ST4において、絞り機に掛けて、豆乳とおらかに分離
して、ステップST5において豆乳のみを豆乳プールタ
ンクに溜める。一般的には、濃度12パーセントの豆乳
を得る。
【0014】次に、ステップST6において、スタティ
ックミキサーを用いて、タンクから供給される豆乳に凝
固剤を添加して混ぜる。ここで豆乳は摂氏約72度から
約75度に保持しておく。ステップST7では、凝固剤
を混合した後の豆乳を例えば18分間程度熟成させて、
凝固させる。凝固後に得られた豆腐材料を、ステップS
T8において、成形機に掛けて、上面および下面を所定
の深さに撹拌して、木綿素地層を付ける。この後は、ス
テップST9において、豆腐材料を脱水プレス機に掛け
て、所定の形状に押し固めながら、澄まし水を絞り取
る。
【0015】以上の工程を経て、上面および下面に一定
の厚さの木綿層が形成され、それらの間に絹層が形成さ
れた三層構造の豆腐が得られる。この豆腐は、ステップ
ST10においてカッティング機によって所定の大きさ
に裁断される。しかる後に、包装機を用いて裁断後の豆
腐を1丁づつ包装し、ステップST11において、冷水
層に包装後の豆腐を浸漬して、芯温が摂氏約5度前後と
なるまで冷却する。例えば、摂氏1度の冷水中で約75
分間程度冷却する。このようにして三層構造の豆腐が得
られる(ステップST13)。
【0016】次に、図2を参照して、本発明の製造方法
の特徴をなす上記のステップST6、7、8の各工程を
更に詳しく説明する。
【0017】上記の各工程は搬送ラインに沿って順次に
処理される。すなわち、図2に示すように、コンベア1
が搬送ラインに沿って配置されており、コンベア1によ
って、豆乳が凝固剤混合位置を経て搬送される。凝固剤
は、本にがり(塩化マグネシウム)5に対してすまし粉
(硫酸カルシウム)3、及びグルコノデラクトン(GD
L)2の割合で含むものである。コンベア1の上面に区
画形成されている凝固槽3には、豆乳4および凝固剤5
がそれぞれ供給されて、この凝固槽3に貯留される。そ
して、これらが撹拌される。撹拌された後は約20分間
程度熟成して凝固を促進させて、豆腐材料6を得る。
【0018】凝固後の豆腐材料6は、コンベア1が搬送
ラインに沿って前進することによって、次の工程に移行
する。この工程(ステップST8)では、コンベア1の
上方に上層形成装置7が配置され、コンベア1の下方に
は、下層形成装置8が配置されている。上層形成装置7
は、豆腐上面に木綿層を形成するために、豆腐材料6の
上面をほぐすためのものである。この上槽形成装置7
は、豆腐材料6の上面に垂直な回転軸線の回りに回転す
る円筒状の撹拌刃71を備えている。この撹拌刃を回転
させながら、豆腐材料6の上面に沿って左右に移動させ
て、豆腐材料6の上面をほぐす。この撹拌刃の押し込み
量を調整することにより、ほぐしの深さを調整すること
ができる。それによって、豆腐上面に形成される木綿層
の層厚を調整できる。
【0019】これに対して、下側の下層形成装置8は、
豆腐下面に木綿層を形成するために、豆腐材料6の下面
をほぐすためのものである。この下層形成装置8は、コ
ンベア1の幅方向(搬送方向とは直交する方向)に向け
てほぼ水平配置された撹拌用の櫛刃81を備えている。
この櫛刃81は、左右に往復移動しながら、豆腐材料6
の下面をほぐすためのものである。この櫛刃81は、コ
ンベア1を構成しているコンベアプレートの切れ目に配
置されている。この櫛刃81の刃の高さを調整すること
により、豆腐下面に形成される木綿層の層厚を調整でき
る。
【0020】このように上下の形成装置7、8によって
上面および下面が所定の深さでほぐされた豆腐材料6
は、コンベア1によって順次に、プレス機9に搬入され
る。プレス機9においては、上方から所定の力で豆腐材
料6が押し固められる。
【0021】図3には、このようにして得られた三層構
造豆腐10の断面構成を示してある。この図に示すよう
に、三層構造豆腐10は、上面側に、一定の厚さの木綿
層11が形成され、同様に下面側にも一定の厚さの木綿
層12が形成され、これらの間には、絹層13が形成さ
れている。上側の木綿層11と中間の絹層13との境界
部分は、物理的に分離しておらず相互の入り組みあって
一体化されている。同様に、下側の木綿層12と中間の
絹層13との境界部分も物理的に分離しておらず相互の
入り組みあって一体化されている。
【0022】本例の方法により製造した三層構造豆腐1
0は、三層の部分が相互に一体化された層構造となって
いる。したがって、例えば、煮くずれして各層が分離し
てしまうことがなく、常に、木綿豆腐および絹豆腐の双
方の味覚を同時に味わうことができる。また、両側がこ
しの強い木綿層11、12によって覆われているので、
絹豆腐とは異なり、煮くずれ等がすることがなく、箸で
掴んでも崩れにくいので便利である。
【0023】(その他の実施の形態)以上の説明は、搬
送ラインに沿って各工程を行なう連続製造方式に対して
本発明を適用したものである。この代わりに、間欠方
式、あるいはバッチ方式により本発明を実施してもよ
い。
【0024】例えば、図4に示すように、まず、ステッ
プST21において、一定の形状をした升21に豆乳4
と凝固剤5を投入して撹拌する。次にステップST22
においてそのまま所定の温度状態で放置して熟成して凝
固させる。この後は、ステップST23において、升2
1の中に得られた豆腐材料6の上面6aを一定の深さで
ほぐす。これと同時に、升21よりも一回り大きな升2
2を用意し、この内面に木綿の布23を敷いておく。
【0025】次に、ステップST24において、升21
を逆さにして、内部の豆腐材料6を、一回り大きな升2
2に開ける。この結果、ほぐされた状態の面6aが下側
に向いた状態で豆腐材料6が大きな升22に入る。この
後は、ステップST25において、裏返した豆腐材料6
の上面6bを一定の深さでほぐす。次に布を被せ、プレ
ス機に掛けて押し固める。このような工程を経ても、上
面および下面に一定の層厚の木綿層が形成された三層構
造豆腐を製造することができる。
【0026】次に、上記の説明では、本発明を三層構造
豆腐の製造に適用した例である。三層構造とする代わり
に、木綿と絹の二層構造豆腐の製造のために本発明を適
用することもできる。この場合には、上面および下面の
うちの一方の面のみをほぐし、しかる後にプレス機で押
し固めればよい。
【0027】また、上述した上層および下層の形成工程
において使用した撹拌機(7、8)は一例を示すもので
あり、本発明をこれらの撹拌機に限定するものではな
い。その他の刃型形状の撹拌機を使用してしもよい。
【0028】さらには、上下の層を形成するための撹拌
の深さ、程度は、豆腐材料の特性、周囲温度、湿度等に
応じて適宜最適となるように設定すべき性質のものであ
る。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多層構造
豆腐の製造方法においては、豆乳に凝固剤を添加した後
に熟成させて凝固させることによって得られた豆腐材料
の上面あるいは下面、または双方の面を所定の深さにほ
ぐし、しかる後に、全体を押し固めるようにしている。
したがって、本発明の方法によれば、各層が物理的に一
体化された状態が形成され、各層が分離してしまうこと
がない。したがって、木綿および絹層を同時に賞味する
ことのできる新たなタイプの豆腐を製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した連続式の三層構造豆腐の製造
方法を示す概略工程図である。
【図2】図1の工程のうちの本発明の特徴をなす工程を
詳しく示す説明図である。
【図3】図1の工程によって得られる三層構造豆腐の断
面構成を示す説明図である。
【図4】本発明を適用したバッチ式の三層構造豆腐の製
造方法を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 コンベア 4 豆乳 5 凝固剤 6 凝固した豆腐材料 7 上層形成装置 8 下層形成装置 10 三層構造豆腐 11、13 木綿層 12 絹層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/20 - 1/201 A23L 1/211

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 豆乳に凝固剤を入れて撹拌する撹拌工程
    と、撹拌後の凝固剤添加豆乳を熟成凝固させる熟成工程
    と、熟成凝固後に得られた豆腐材料の上面および下面の
    うちの少なくとも一方の面をほぐし砕いて木綿素地層を
    形成する木綿層形成工程と、前記豆腐材料を押し固め
    て、木綿層および絹層を備えた豆腐を形成するプレス圧
    着工程とを有することを特徴とする多層構造豆腐の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記木綿層形成工程
    は、前記豆腐材料の上面および下面をそれぞれほぐし砕
    いて、中間に残った絹素地層を挟み両側に木綿素地層を
    形成することを特徴とする多層構造豆腐の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、搬送ラインに沿って
    連続的に搬送される前記豆腐材料の上方および下方にそ
    れぞれ撹拌機を配置し、これらの撹拌機によって前記豆
    腐材料の上面および下面を連続的にほぐして木綿素地層
    を形成することを特徴とする多層構造豆腐の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の多層構造豆腐の製造方
    法によって製造された上面および下面に木綿層が形成さ
    れこれらの層の間に絹層が一体形成されていることを特
    徴とする三層構造豆腐。
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