JP3149288U - 浚渫用パワーショベル - Google Patents

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繁喜 増田
繁喜 増田
繁 増田
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英志 岩部
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Abstract

【課題】バケット内の汚泥や土砂等を、周囲に飛散させることなく運ぶことができる環境性能の高い浚渫用パワーショベルを提供する。【解決手段】バケット203の開口端部と蓋210との間にパッキンを設けてバケット内部を密閉することにより、バケット203によって掬われた汚泥や土砂を、パッキンにより密閉されたバケット内部に確実に保持する。また、蓋210には空気抜孔を設けてバケット内部に残った空気を外部に逃がす構成とする。【選択図】図1

Description

本考案は、例えば河川の浚渫工事に用いられる浚渫用パワーショベル(バックホウ)に関する。
従来、河川等における浚渫工事に用いられる浚渫船(バックホウ船)においては、船上にバックホウと呼ばれるパワーショベルを設置し、このパワーショベルによって川底の汚泥を取り除くようになされている。
パワーショベルは、先端部を上下左右に移動自在のアームを有し、その先端部にバケットを備えている。このバケットによって川底等の汚泥や土砂を掬い上げて、土運船等に降ろすようになされている。
ところで、浚渫工事においては、河川の川底に堆積した汚泥等をバケットで掬い上げて取り除く際に、バケットによって汚泥等を掬い上げた後、アームを移動して土運船等に移動する必要があり、この際に、バケット内の汚泥が周辺にこぼれたり、又は川底から掬った汚泥等を引き上げる際に、掬われたバケット内の汚泥等が水中において拡散して、周囲の水質が劣化する問題があった。
かかる問題点を解決するための一つの方策として、バケットの開口部を蓋によって閉塞可能な構成とし、バケットによって汚泥等を掬った状態において、蓋により開口部を閉塞することにより、汚泥等がこぼれたり、水中において周囲に拡散することを低減するようになされたものが提案されている(特許文献1参照)。
図16は、従来の蓋付のパワーショベルの構成を示す斜視図である。図16に示すように、従来のパワーショベルでは、アーム1の先端部に碗型のバケット2が装着されている。バケット2の背面はHリング3及びメガネリング4を介して、さらにバケットシリンダ5に連結されている。バケットシリンダが伸縮すると、その伸縮がHリング3及びメガネリング4を介してバケット2に伝わり、バケット2が、矢印6のように、弧を描くように傾動できるようになされている。
アーム1の先端部には、蓋8が固定されている。この蓋8は、バケット開口部9を塞ぐ台座部分8a、その台座部分8aをアーム1に固定する、四角錐部分8b、及び台座8aの上に形成された翼状部分8cから構成されている。さらに、台座部分8aは、台座の上板部8a−aと台座の側面部8a−bからなり、上板部8a−aの下で、台座の側面部8a−bに囲まれた部分は空洞になっている。四角錐部分8bは、バケットシリンダが伸び、その動きがHリング3及びメガネリング4を介してバケット2に伝わり、バケット2が弧を描くように動くことにより、バケット開口部9が上を向いたときに、台座部分8aがバケット開口部9を塞ぐようになされている。
特開2005−330793号公報
しかしながら、前述した従来のパワーショベルでは、バケット開口部9と蓋8との間が密閉されておらず、水中においてバケット2によって汚泥等を掬った後、蓋8を閉じ、その状態でバケット2を水上に引き上げると、水底、水面及び水上にかけてバケット周囲の圧力が低くなることにより、バケット内部とバケット外部との圧力差によって、バケット内の汚泥等がバケット外部に飛散して、周囲の水質を劣化させる問題があった。
そこで、本考案は、バケット内の汚泥や土砂等を、周囲に飛散させることなく運ぶことができる環境性能の高い浚渫用パワーショベルを提供することを目的とする。
本考案は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、バケットの開口端部と蓋との間にパッキンを設けてバケット内部を密閉することにより、バケットによって掬われた汚泥や土砂を、パッキンにより密閉されたバケット内部に確実に保持する。また、蓋には空気抜孔を設けてバケット内部に残った空気を外部に逃がす構成とすることにより、バケットを水底から水上へ引き上げる際に、密閉されたバケット内部と外部との圧力差が大きくなる前に、空気抜孔からバケット内部に残った空気を外部に逃がす。これらにより、バケット内部の汚泥等がパッキンによる密閉状態に抗して外部に噴き出すことを防止することができる。
より具体的には、本考案では、以下のようなものを提供する。
(1)水中の土砂又は汚泥を掬い上げる浚渫用パワーショベルであって、先端部が移動可能なアームと、前記アームの先端部に装着され、傾動可能な碗型のバケットと、前記アームに固定され、前記バケットの前記傾動に応じて前記バケットの開口部を閉塞する蓋と、前記バケットの開口端部と前記蓋との間を密閉するパッキンと、前記蓋に設けられた空気抜孔と、前記空気抜孔の前記バケットに対向する側とは反対側の空気抜孔開口部を開閉する開閉板と、前記開閉板と前記蓋とを繋ぐ接続部材と、前記蓋と前記アームとを繋ぐチェーンと、を備え、前記開閉板は、前記空気抜孔開口部を少なくとも前記開閉板の自重によって閉塞し、また前記バケットの内部圧の前記自重に抗する上昇に応じて前記空気抜孔開口部を開くことを特徴とする浚渫用パワーショベル。
(1)記載の浚渫用パワーショベルによれば、蓋によってバケットの開口部が閉じられた状態において、バケットの開口端部と蓋との間がパッキンにより密閉されることにより、バケット内の汚泥や土砂等が周囲に飛散することを防止することができる。また、蓋に設けられた空気抜孔によって、バケット内部に残った空気を外部に逃がす構成としたことにより、バケット内部の圧力が周囲の圧力よりも高くなって、バケットの開口端部と蓋との間のパッキンによる密閉状態に抗してバケット内部の汚泥や土砂等が外部に噴き出す前に、空気抜孔からバケット内部の空気を外部に逃がすことができ、これにより、バケット内部の圧力と外部の圧力との差が、パッキンによる密閉状態に抗する程度に大きくなることを防止することができる。これにより、バケット内部の汚泥や土砂が、バケットの開口端部と蓋との間から噴出して、周囲の水質を劣化させることを回避することができる。また、アームと蓋とをチェーンによって繋いだことにより、蓋がアームから外れた場合においても、該蓋が水中に落下することを防止することができる。特に、バケットを傾動させてバケットの開口部に蓋を当接させることによりバケットの開口部を閉塞する構成においては、バケット内部に所定量以上の汚泥や土砂が掬われた場合には、該汚泥や土砂によって蓋に過剰な力が加わることになる。このような場合に、蓋が外れてもチェーンによってアームに繋がれていれば、蓋が水中に落下することを防止することができる。
(2) (1)記載の浚渫用パワーショベルにおいて、前記接続部材は、複数の空気孔を有するゴム材であり、少なくとも前記開閉板の自重によって前記空気抜孔開口部を密閉することを特徴とする浚渫用パワーショベル。
(2)記載の浚渫用パワーショベルによれば、空気孔を有するゴム材によって開閉板と蓋とを接続し、バケット内部の圧力が外部に対して相対的に高くなった場合には、内部の空気が開閉板を押し上げて、ゴム材の空気孔を介して外部に抜け、また、バケット内部の圧力が外部に対して相対的に低くなった場合には、ゴム材がパッキンとして作用し、バケット内部を密閉状態に保つことができる。
(3) (1)記載の浚渫用パワーショベルにおいて、前記接続部材は、前記開閉板と前記蓋との間に設けられた蝶番であり、前記開閉板と前記空気抜孔の開口端部との間を密閉する空気抜孔用パッキンを備えることを特徴とする浚渫用パワーショベル。
(3)記載の浚渫用パワーショベルによれば、蝶番によって蓋と開閉板とを接続することにより、開閉板は蝶番を介して傾動することで蓋の空気抜孔を開閉することとなる。このように開閉板を傾動させる構成としたことにより、アームの移動によって開閉板が容易に開閉することを防止することができる。また、開閉板と空気抜孔の開口端部との間には、空気抜孔用パッキンが設けられることにより、開閉板が閉じて空気抜孔を塞いだ状態においては、空気抜孔が密閉されることとなる。これにより、バケット内部の圧力が外部よりも低くなった場合には、空気抜孔は密閉され、また、前記の通り、バケットの開口部は、蓋(パッキン)によって密閉されていることにより、バケット内部が外部から密閉された状態を維持することができる。これにより、バケット内部の汚泥や土砂等が外部に飛散することを十分に防止することが可能となる。
本考案によれば、バケット内の汚泥や土砂等を、周囲に飛散させることなく運ぶことができる環境性能の高い浚渫用パワーショベルを提供することができる。
浚渫用パワーショベルを搭載した浚渫船を示す側面図である。 浚渫用パワーショベルを搭載した浚渫船を示す側面図である。 アーム、バケット及びリンク部の構成を示す部分的拡大図である。 アーム、バケット及びリンク部の構成を示す部分的拡大図である。 蓋の正面を示す正面図である。 蓋、バケット及びアームを示す斜視図である。 バケット及び蓋の部分的縦断面を示す図である。 バケット及び蓋の部分的縦断面を示す図である。 開閉板を示す上面図である。 空気抜孔の開口部及び開閉板を示す側面図である。 動作の説明に供する断面図である。 第2の実施の形態に係るパワーショベルのバケット及び蓋を示す側面図である。 蓋の構成を示す側面図である。 蓋を示す正面図である。 開閉板を示す上面図である。 従来のパワーショベルを示す斜視図である。
本考案の浚渫用パワーショベルに係る実施の形態について、以下図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、浚渫用パワーショベル(バックホウ)200を搭載した浚渫船(バックホウ船)100を示す側面図である。図1に示すように、浚渫船100は、台船101に浚渫用パワーショベル(以下、パワーショベルと呼ぶ)200を搭載するようになされている。
台船101に搭載されたパワーショベル200は、先端部を上下左右に移動可能なアーム201及びこのアーム201の先端部において上下方向に傾動可能に軸支されたアーム202を有し、該アーム202の先端部に碗型のバケット203を備えている。
バケット203は、アーム202の先端部において、矢印204で示す方向及び逆方向に傾動可能に軸支されている。このバケット203は、アーム202に設けられたバケットシリンダ222によって、リンク部206を介して傾動動作する。
図2に示すように、浚渫船100においては、台船101に搭載されたパワーショベル200を用いて川底等に堆積した汚泥や土砂等をバケット203によって掬い上げ、これを水上まで持ち上げて、例えば浚渫船100に横付けされた土運船等に降ろす作業を行うようになされている。
図3及び図4は、アーム202、バケット203及びリンク部206の構成を示す部分的拡大図である。図3に示すように、アーム201の先端部には、アーム202が回転軸205を回動中心として上下方向に回動自在に枢支されており、アームシリンダ221を伸縮させることにより、アーム202を回動動作させることができる。
また、アーム202の先端部には、バケット203が回動軸207を回動中心として、矢印204で示す方向及び逆方向に傾動可能に枢支されており、バケットシリンダ222を伸縮させることにより、リンク部206を介してバケット203を矢印204方向又は逆方向に傾動させることができる。
アーム202の先端部には、蓋210が溶接等の手法によって固定されている。蓋210は、本体部211と、この本体部211をアーム202に固定するための支持部材212とを有している。支持部材212と本体部211との間は溶接等で固定されており、また、支持部材212とアーム202との間も溶接等によって固定されている。
アーム202と蓋210との間には、チェーン280が掛け渡されており、蓋210がアーム202から外れた場合においても、蓋210は、チェーン280によってアーム202に吊り下げられた状態となり、水中に落下することを防止する構成となっている。
図5は、蓋210の正面を示す正面図であり、図6は、蓋210、バケット203及びアーム202を示す斜視図である。図5及び図6に示すように、蓋210の支持部材212は、いわゆるH鋼によって構成されており、左右に補強板212A及び212Bを有している。なお、蓋210の本体部211には、バケット203の爪状突起部203Aの形状に合わせた切欠部211Cが形成されており、バケット203の開口部を蓋210の本体部211によって閉塞する場合に、切欠部211Cに爪状突起部203Aが嵌り込むことにより、蓋210の本体部211がバケット203開口部全体を確実に閉塞するように構成されている。
蓋210の本体部211は、上板部211Aと側面部211Bとからなり、上板部211Aの下方には、側面部211Bに囲まれた空洞部が形成されている。すなわち、側面部211Bは、本体部211の周囲を囲む壁状に形成されている。この壁状の側面部211Bに囲まれた空洞部には、ゴム製のパッキン230が設けられている。このパッキン230は、平板状に形成されており、本体部211(上板部211A)の下面部に固定されている。
図7及び図8は、バケット203及び蓋210の部分的縦断面を示す図である。因みに、図7は、バケット203及び蓋210の側面側の縦断面を示す図であり、図8は、バケット203及び蓋210の正面側の縦断面を示す図である。
図7(a)及び図8(a)に示すように、バケット203の開口部を蓋210が閉塞していない状態において、バケットシリンダ222(図3)によってバケット203を矢印204方向(図3)に傾動させると、バケット203の開口端部209がパッキン230に当接し、さらにパッキン230の弾性に抗して、該パッキン230に食い込んだ状態となる(図7(b)、図8(b))。この状態でバケットシリンダ222(図3)が動作を停止するようになされており、バケット203の開口端部209と蓋210の本体部211との間は、パッキン230によって密閉されることとなる。すなわち、バケット203の開口部を蓋210の本体部211によって密閉状態で閉塞することができる。
また、図5、図7及び図8に示すように、蓋210の本体部211には、該本体部211の厚み方向、すなわちバケット203に対向する面部から反対側の面部に貫通する2つの空気抜孔213が形成されている。そして、パッキン230には、本体部211の空気抜孔213に併せた位置に、貫通孔214が形成されている。これにより、図7(b)及び図8(b)に示すように、バケット203を矢印204方向に傾動させて、バケット203の開口部を蓋210の本体部211によって閉塞した状態においては、バケット203と蓋210(本体部211)とによって形成される領域(以下これをバケット203の内部領域と呼ぶ)は、空気抜孔231によって外部に連通するように構成されている。すなわち、バケット203を傾動させて、該バケット203の開口部を蓋210によって閉塞した状態において、バケット203の内部領域の圧力が外部の圧力に比べて相対的に高くなった場合には、空気抜孔213を介してバケット203の内部領域の空気が外部に逃げるようになされており、これにより、バケット203の内部領域の圧力が外部に比べて過大になることを防止することができる。
蓋210の本体部211の上面側においては、空気抜孔213の開口部に金属製の開閉板251が設けられており、必要に応じて空気抜孔213の開口部を開いてバケット203の内部領域の空気を外部に逃がすように構成されている。図9は、開閉板251を示す上面図であり、また図10(a)及び(b)は、空気抜孔213の開口部及び開閉板215を示す側面図である。
図9及び図10に示すように、空気抜孔213の開口部の周囲には、ゴム材で形成されたメッシュ状の接続部材261が設けられている。この接続部材261は、空気抜孔213の開口部に設けられた台座部252(蓋210と固定関係)と開閉板251とに接続されている。図10(a)に示すように、開閉板251が上方に持ち上がった状態においては、接続部材261のメッシュが開いた状態となり、これに対して図10(b)に示すように、開閉板251が下方に下がった状態においては、接続部材251のメッシュが閉じた状態となる。すなわち、開閉板251が持ち上がった状態では、接続部材261の開いたメッシュが空気孔となって、該メッシュを介して、空気抜孔213と外部とが連通する状態となり、これに対して開閉板251が下がった状態においては、メッシュが閉じて接続部材261が空気抜孔213と開閉板251との間を密閉するパッキンとして機能することになる。
これにより、バケット203の内部領域の圧力が外部に比べて高くなった場合には、開閉板251がバケット203の内部領域の圧力によって持ち上がり(図10(a))、接続部材261の開いたメッシュを介してバケット203の内部領域の空気が外部に逃げることになる。そして、バケット203の内部領域の圧力が外部と同等となると、開閉板251はその自重によって下がり(図10(b)、接続部材261がパッキンとなってバケット203の内部領域が外部から密閉される。
このように、蓋210には空気抜孔213が設けられ、さらにこの空気抜孔213の開口部には接続部材261が設けられていることにより、バケット203の内部領域の圧力が高くなった場合には、内部領域の空気を外部に逃がして内部領域の圧力が高くなり過ぎることを防止することができ、また、内部領域の圧力が開閉板251を押し上げる程度に高くなっていない場合又は外気に比べて低くなっている場合(負圧状態)には、接続部材261がパッキンとして機能することにより、内部領域を外部から密閉することができる。
以上説明した構成において、浚渫船100(図1及び図2)に搭載されたパワーショベル200のアーム201及び202を下方に傾動させることにより、バケット203を水中に降下させる。その際、バケット203を矢印204と反対方向に傾動させる。そして、バケット203が水底に達する位置において、バケット203を矢印204で示す方向に傾動させることにより、水底の汚泥又は土砂等を掬うことができる。
バケット203に汚泥又は土砂等が掬われた状態において、さらにバケット203を矢印204で示す方向に傾動させると、バケット203の開口部が蓋210によって閉塞される。この際、バケット203の内部領域の圧力が一時的に高くなると、空気抜孔213からバケット203の内部領域に残っている空気等が周囲の水中へ逃げることとなる。
このようにして、バケット203の内部領域の圧力が、バケット203の傾動動作によって大きくなった場合には、空気抜孔213から外部に逃げることにより、バケット203の内部領域の圧力が過大になることが防止される。
そして、バケット203の開口部が蓋210によって閉塞された状態となると、バケット203の内部領域は、バケット203の開口部と蓋210との間に設けられるパッキン230によって密閉されることとなる。この状態においては、空気抜孔213は、その開口部に設けられた開閉板251及び接続部材261によって、開閉板251の自重により外部から密閉された状態となる。なお、バケット203の内部領域には、掬われた汚泥や土砂等に加えて、バケット203を水上から水中に下ろした際に巻き込んだ空気も残留している。
蓋210によってバケット203の内部領域が閉塞された状態を保ったまま、アーム202を持ち上げてバケット203を水底から水面に上昇させ、さらに水上に持ち上げる。この場合、水底、水面及び水上の順にバケット203の周囲の圧力(水中にあっては、水圧であり、水上にあっては、気圧)が低下することにより、バケット203の内部領域の圧力は、相対的に外部の圧力よりも高くなっていく(図11(a))。
そして、バケット203の内部領域の圧力が開閉板251を持ち上げる程度に大きくなると、開閉板251が持ち上げられて、バケット230の内部領域に残っている空気が接続部材261を介して外部に逃げることとなる(図11(b))。開閉板251が持ち上げられる場合の内部空間の圧力は、開閉板251の自重及び外部の圧力(少なくとも自重)によって決定され、この圧力は、バケット203の開口部と蓋210との間のパッキン230による密閉状態を打ち破る圧力よりも小さいため、このパッキン230の合わせ部分からバケット内部の汚泥や土砂等が噴き出す前に、空気抜孔213を介して内部領域の空気が外部に逃げ、この結果、バケット203の内部領域の圧力は、外部の圧力と同等になって、開閉板251はその自重によって下がり、空気抜孔213を閉塞する。この場合、接続部材261によって空気抜孔213の開口部と開閉板251との間は密閉状態となる。この際、内部の空気が外部へ逃げたことやパッキン230の弾性力による戻りの発生、またはバケットシリンダ222のバックラッシュ等の影響によって、バケット203の内部領域の圧力が負圧になり(図11(c))、その結果、当該内部領域は確実に密閉される。これにより、バケット内部の汚泥や土砂等がバケット203の外部に撒き散らされるといった不都合が回避され、浚渫工事箇所周辺の水質が劣化することを防止することができる。かくして、環境性能の高いパワーショベルを実現することができる。
また、バケット203によって過剰な汚泥や土砂等が掬われた場合、バケット203を傾動させて該バケット203の開口部を蓋210によって閉塞しようとすると、蓋210がバケット203内の汚泥や土砂等によって押され、アーム202から外れる虞がある。この場合、蓋210とアーム202との間は、チェーン280によって繋がれていることにより、蓋210がアーム202から外れた場合であっても、水中に落下することが防止される。なお、例えば、連結棒等で蓋210とアーム202とを固定した場合、蓋210に過大な力が加わって外れた場合には、その力が当該連結棒にも伝わって該連結棒も外れる虞があるが、本実施の形態のように、自由度のあるチェーン280によって蓋210とアーム202とを繋ぐことにより、チェーン280が外れる虞はなくなる。
なお、上述の実施の形態においては、図9に示したように、空気抜孔213の周囲全体に亘って接続部材261を設ける場合について述べたが、これに限られるものではなく、一部に設けるようにしてもよい。例えば、空気抜孔213の形状が図9に示すように方形形状である場合には、その3方向の周囲又は2方向の周囲に設けるようにしてもよい。
また、上述の実施の形態においては、メッシュ状の接続部材261を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、紐状の接続部材を用いたり、又は複数の孔が形成された蛇腹を用いるようにしてもよく、要は、開閉板251が持ち上がった場合に空気抜孔213から外部に空気が抜け、また持ち上がった開閉板251が元の位置に戻って空気抜孔213を閉塞することができる構成であればよい。
また、上述の実施の形態においては、ゴム材で形成された接続部材261を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、要は弾性を有する材料であれば、他の種々の材料を用いることができる。
(第2の実施の形態)
上述の第1の実施の形態においては、接続部材261によって蓋210と接続された開閉板251を用いる場合について述べたが、本考案はこれに限られるものではなく、蝶番を介して開閉板251を開閉する構成としてもよい。以下、図面について、第2の実施の形態を説明する。
図3及び図4との対応部分に同一符号を付して示す図12は、第2の実施の形態に係るパワーショベル500のバケット203及び蓋510を示す側面図であり、図13は、蓋510の構成を示す側面図であり、また図14は、蓋510を示す正面図である。
図12〜図14に示すように、本実施の形態に係るパワーショベル500においては、第1の実施の形態のパワーショベル200と比べて、バケット203の開口部を閉塞する蓋510の空気抜孔513の開口部を閉塞するための開閉板551の取付け構造が異なる。なお、蓋510においては、第1の実施の形態の蓋210と比べて、開閉板551の取付け構造が異なる他は、基本的な構成は同一である。すなわち、バケット203の開口部を閉塞するための蓋510の本体部511と、バケット203の開口部と本体部511との間を密閉するためのパッキン530と、蓋510の本体部511に形成された空気抜孔513と、空気抜孔513の開口部を開閉する開閉板551とを備えている。
蓋510は、支持部材512によってアーム202に固定されている。支持部材512は、その左右に補強板512A及び512Bを有している。蓋510とアーム202との間は、チェーン280によって繋がれており、蓋510がアーム202から外れた場合であっても、蓋510が水中に落下することを防止している。
バケット203の開口端部は、蓋510の本体部511の下面部に設けられたパッキン530に当接して、バケット203の内部領域を密閉する。また、空気抜孔513の上部開口部には、開閉板551が蝶番を介して矢印504方向に傾動自在に枢支されている。これにより、開閉板551が空気抜孔513の開口部を閉じた場合には、空気抜孔513を外部から遮蔽することができ、開閉板551が開いた場合には、空気抜孔513が外部と連通状態とすることができる。なお、開閉板551の下面部(空気抜孔513の開口部を閉じる面部)には、パッキン(空気抜孔用パッキン)552が設けられており、開閉板551が閉じた場合に、空気抜孔513を外部から密閉するようになされている。
図15は、開閉板551を示す上面図である。図15に示すように、この開閉板551は、全体が方形形状の平板によって構成されており、その1つの側縁部551Aは、蝶番555によって、蓋510の本体部511(空気抜孔513の上部開口部)に傾動自在に枢支されている。
かかる構成において、バケット203が傾動してその開口部が蓋510の本体部511によって閉塞され、バケット203の内部領域の圧力が外部の圧力に比べて相対的に高くなると、開閉板551は、蝶番555を中心として傾動し、空気抜孔513の開口部が開いた状態となり、バケット203の内部領域が空気抜孔513を介して外部と連通する。これにより、バケット203の内部領域の空気が外部に逃げ、内部領域の圧力の上昇が抑えられる。
バケット203の内部領域の圧力が外部と同等となると、開閉板551は、蝶番555を中心として傾動することにより、空気抜孔513の開口部が閉じられる。この場合、開閉板551の下面側に設けられたパッキン552によって、空気抜孔513の開口部が密閉される。
本実施の形態においては、開閉板551のうち、アーム202に近い側の側縁部551Aに蝶番555を設けていることにより、アーム202を移動させた場合においてもその動きによって開閉板551が容易に開かないようになされている。すなわち、蓋510の本体部511は、アーム202に対して鋭角に取り付けられていることにより、本体部511のアーム202に近い側が、アーム202から遠い側に比べて常に鉛直下方に位置する状態となる。このような構成においては、開閉板551のアーム202に違い側の側縁部551Aに蝶番555を設けて該開閉板551の傾動中心とすることにより、この開閉板551の蝶番555が設けられた側の側縁部555は、対向する側縁部551B(図15)よりも常に鉛直下方に位置することとなる。これにより、アーム202が上下動等の動作を行った場合においても、開閉板551が容易に開くことを防止することができる。これにより、バケット203の内部の汚泥や土砂等が外部に飛散することを防止することができる。かくして、環境性能の高いパワーショベルを実現することができる。
(他の実施の形態)
上述の第1及び第2実施の形態においては、開閉板251、551を方形形状とする場合について述べたが、これに限られるものではなく、円形形状等、種々の形状を適用することができる。
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、蓋210(510)の本体部211(511)の下面部の空気抜孔213(513)を除く全面にパッキン230(530)を設ける場合について述べたが、これに限られるものではなく、バケット203の開口端部209に当接する位置のみに設けるようにしてもよい。
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、2つの空気抜孔213(513)を設ける場合について述べたが、これに限られるものではなく、1つ又は3つ以上の空気抜孔を設けるようにしてもよい。
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、ゴム材によって形成されたパッキン230(530)を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、要は弾性を有する部材であれば、他の種々の材料を用いることができる。
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、開閉板251、551が少なくともその自重によって空気抜孔213、513を閉塞する場合について述べたが、これに加えて、例えばばね等の弾性体によって所定の押圧力(付勢力)を開閉板251、551に加えながら空気抜孔213、513を閉塞するようにしてもよい。このような付勢手段と開閉板を供えた閉塞手段を用いれば、開閉板251、551が容易に開かないようにすることができる。この場合、開閉板の自重と弾性体による付勢力とによって開閉板251、551が開く際の内部圧を決定することができる。
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、浚渫船100(台船101)に搭載される自走可能なパワーショベル200(500)について述べたが、これに限られるものではなく、台船101に固定されたパワーショベルとしてもよい。
(浚渫用パワーショベルの概要)
実施の形態における浚渫用パワーショベル200(500)は、水中の土砂又は汚泥を掬い上げる浚渫用パワーショベルであって、先端部が移動可能なアーム202と、アーム202の先端部に装着され、傾動可能な碗型のバケット203と、アーム202に固定され、バケット203の傾動に応じてバケット203の開口部を閉塞する蓋と、バケット203の開口端部209と蓋との間を密閉するパッキン230(530)と、蓋210(510)に設けられた空気抜孔213(513)と、空気抜孔213(513)のバケット203に対向する側とは反対側の空気抜孔開口部を開閉する開閉板251(551)と、開閉板251(551)と蓋210(510)とを繋ぐ接続部材261(555)と、蓋210(510)とアーム202とを繋ぐチェーン280と、を備え、開閉板251(551)は、空気抜孔開口部を少なくとも開閉板251(551)の自重によって閉塞し、またバケット203の内部圧の自重に抗する上昇に応じて空気抜孔開口部を開くことを特徴とする。
この構成によれば、蓋210(510)によってバケット203の開口部が閉じられた状態において、バケット203の開口端部209と蓋210(510)との間がパッキン230(530)により密閉されることにより、バケット内の汚泥や土砂等が周囲に飛散することを防止することができる。また、蓋に設けられた空気抜孔213(513)によって、バケット内部に残った空気を外部に逃がす構成としたことにより、バケット内部の圧力が周囲の圧力よりも高くなって、バケット203の開口端部209と蓋210(510)との間のパッキン230(530)による密閉状態に抗してバケット内部の汚泥や土砂等が外部に噴き出す前に、空気抜孔213(513)からバケット内部の空気を外部に逃がすことができ、これにより、バケット内部の圧力と外部の圧力との差が、パッキン230(530)による密閉状態に抗する程度に大きくなることを防止することができる。これにより、バケット内部の汚泥や土砂が、バケット203の開口端部209と蓋210(510)との間から噴出して、周囲の水質を劣化させることを回避することができる。また、アーム202と蓋210(510)とをチェーン280によって繋いだことにより、蓋210(510)がアーム202から外れた場合においても、該蓋210(510)が水中に落下することを防止することができる。特に、バケット203を傾動させてバケット203の開口部に蓋210(510)を当接させることによりバケット203の開口部を閉塞する構成においては、バケット内部に所定量以上の汚泥や土砂が掬われた場合には、該汚泥や土砂によって蓋に過剰な力が加わることになる。このような場合に、蓋210(510)が外れてもチェーン280によってアーム202に繋がれていれば、蓋210(510)が水中に落下することを防止することができる。
また、実施の形態の浚渫用パワーショベル200は、上記構成に加えて、接続部材261は、複数の空気孔(メッシュ)を有するゴム材であり、少なくとも開閉板251の自重によって空気抜孔開口部を密閉することを特徴とする。
この構成によれば、空気孔(メッシュ)を有するゴム材によって開閉板251と蓋210とを接続し、バケット内部の圧力が外部に対して相対的に高くなった場合には、内部の空気が開閉板を押し上げて、ゴム材の空気孔を介して外部に抜け、また、バケット内部の圧力が外部に対して相対的に低くなった場合には、ゴム材がパッキンとして作用し、バケット内部を密閉状態に保つことができる。
また、実施の形態の浚渫用パワーショベル200は、上記構成に加えて、接続部材は、開閉板551と蓋510との間に設けられた蝶番555であり、開閉板551と空気抜孔513の開口端部との間を密閉する空気抜孔用パッキン552を備えることを特徴とする。
この構成によれば、蝶番555によって蓋510と開閉板551とを接続することにより、開閉板551は蝶番555を介して傾動することで蓋510の空気抜孔513を開閉することとなる。このように開閉板551を傾動させる構成としたことにより、アーム202の移動によって開閉板551が容易に開閉することを防止することができる。また、開閉板551と空気抜孔513の開口端部との間には、空気抜孔用パッキン552が設けられることにより、開閉板551が閉じて空気抜孔513を塞いだ状態においては、空気抜孔513が密閉されることとなる。これにより、バケット内部の圧力が外部よりも低くなった場合には、空気抜孔513は密閉され、また、前記の通り、バケット203の開口部は、蓋510(パッキン530)によって密閉されていることにより、バケット内部が外部から密閉された状態を維持することができる。これにより、バケット内部の汚泥や土砂等が外部に飛散することを十分に防止することが可能となる。
100 浚渫船
101 台船
200 パワーショベル
201、202 アーム
203 バケット
205 バケットシリンダ
206 リンク部
210、510 蓋
211、511 本体部
212、512 支持部材
213、513 空気抜孔
230、530 パッキン
251、551 開閉板
261 接続部材
280 チェーン
552 空気抜孔用パッキン
555 蝶番

Claims (3)

  1. 水中の土砂又は汚泥を掬い上げる浚渫用パワーショベルであって、
    先端部が移動可能なアームと、
    前記アームの先端部に装着され、傾動可能な碗型のバケットと、
    前記アームに固定され、前記バケットの前記傾動に応じて前記バケットの開口部を閉塞する蓋と、
    前記バケットの開口端部と前記蓋との間を密閉するパッキンと、
    前記蓋に設けられた空気抜孔と、
    前記空気抜孔の前記バケットに対向する側とは反対側の空気抜孔開口部を開閉する開閉板と、
    前記開閉板と前記蓋とを繋ぐ接続部材と、
    前記蓋と前記アームとを繋ぐチェーンと、を備え、
    前記開閉板は、前記空気抜孔開口部を少なくとも前記開閉板の自重によって閉塞し、また前記バケットの内部圧の前記自重に抗する上昇に応じて前記空気抜孔開口部を開くことを特徴とする浚渫用パワーショベル。
  2. 前記接続部材は、複数の空気孔を有するゴム材であり、少なくとも前記開閉板の自重によって前記空気抜孔開口部の周囲を密閉することを特徴とする請求項1に記載の浚渫用パワーショベル。
  3. 前記接続部材は、前記開閉板と前記蓋との間に設けられた蝶番であり、前記開閉板と前記空気抜孔の開口端部との間を密閉する空気抜孔用パッキンを備えることを特徴とする請求項1に記載の浚渫用パワーショベル。
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