JP3147614B2 - 熱処理用ケース - Google Patents

熱処理用ケース

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JP3147614B2
JP3147614B2 JP25291093A JP25291093A JP3147614B2 JP 3147614 B2 JP3147614 B2 JP 3147614B2 JP 25291093 A JP25291093 A JP 25291093A JP 25291093 A JP25291093 A JP 25291093A JP 3147614 B2 JP3147614 B2 JP 3147614B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば溶体化処理に
用いられる熱処理用ケースに係り、さらに詳しくは、加
熱炉から取り出したワークが急冷されるまでの間にワー
クを保温し、冷却液体中ではワークを良好に急冷するこ
とができる熱処理用ケースに関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば強析出型Ni合金(Ni−19
Cr−4Mo−14Co−Fe−1.3Al−3Ti
等)などの材質のワークを、工業的に溶体化処理するに
は、ワークを熱処理用ケースに収容し、ワークを収容し
た熱処理ケースを加熱炉内に入れ、所定温度に加熱した
後、加熱炉から取り出し、このケースをワークと共に冷
却水中に沈めて、ワークの急冷処理を行なう。
【0003】従来用いられている熱処理用ケースは、ワ
ークの取り出し用開口部を有するケースであり、蓋は設
けられていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
熱処理用ケースを用いて溶体化処理を行なうと、ケース
を加熱炉から取り出し、冷却水中に入れるまでの間に、
ワークが除々に冷却され、適正な溶体化処理を行なうこ
とができず、ワークの材質によっては、熱処理後に所望
の特性を得られないおそれがあった。
【0005】そこで、熱処理用ケースの取り出し用開口
部に対し、保温蓋体を設けることも考えられる。保温蓋
体を設けることで、加熱炉から冷却水まで搬送する途中
でワークが冷却されるという問題点を防止することがで
きる。しかしながら、この方法では、ワークを収容する
熱処理用ケースが冷却水中に入れられた際に、ケース内
部に冷却水が入り込み難くなり、ワークの急冷処理を阻
害するおそれがあった。
【0006】本発明は、このような実状に鑑みてなさ
れ、加熱炉から取り出したワークが急冷されるまでの間
にワークを保温し、冷却液体中ではワークを良好に急冷
することができる熱処理用ケースを提供することを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の熱処理用ケースは、熱処理すべきワークが
取り出し自在に収容されるケース本体と、このケース本
体の取り出し開口部に対して着脱自在に取り付けられる
保温蓋体とから成り、上記保温蓋体には、ケース内部の
熱が逃げ難く、冷却液体が入り込み易い流入口が形成し
てある。
【0008】上記流入孔は、ケース内部に収容されるワ
ークの形状を逃げるように形成してあることが好まし
い。
【0009】
【作用】本発明に係る熱処理用ケースは、ワークを収容
した状態で、加熱炉に入れられる。その後、ワークは、
熱処理用ケースと共に、所定温度まで加熱され、加熱炉
から取り出される。加熱炉から取り出された熱処理用ケ
ースは、冷却液体が収容された冷却槽まで搬送され、そ
の中に入れられる。
【0010】本発明では、加熱炉から冷却槽まで搬送さ
れる間、ワークの温度は、保温蓋体による保温効果のた
めに、蓋体がない場合に比較して、それほど低下するこ
とはない。したがって、ワークは、加熱炉での加熱温度
をほぼ維持した状態で冷却液体中に入れられる。熱処理
用ケースには、冷却液体が入り込み易い流入口が形成し
てあるので、冷却液体中では、冷却液体が流入口を通し
てケース内部に素早く侵入し、ケース内部のワークを良
好に急冷処理することができる。
【0011】したがって、熱処理用ケース内部のワーク
は、精密な温度制御で溶体化処理され、所望の性能を有
する熱処理後のワークを得ることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明に係る熱処理用ケースを、図面
に示す実施例に基づき、詳細に説明する。図1は本発明
の一実施例に係る熱処理用ケースを用いた熱処理工程を
示す概略図、図2は同実施例に係る熱処理用ケースの概
略斜視図、図3は同実施例に係る熱処理用ケースを用い
た熱処理工程の作用を示すグラフ、図4は本発明の他の
実施例に係る熱処理用ケースの正面図である。
【0013】図1,2に示すように、本発明の一実施例
に係る熱処理用ケース2は、台車4の上に載せられ、台
車4ごと加熱炉6内に収容されるようになっている。加
熱炉6には、扉8が開閉自在に装着してある。この扉8
が開くことで、熱処理用ケース2を載せた台車4は、加
熱炉6内に出入りすることが可能になっている。台車4
は、耐熱製煉瓦などで構成してある。
【0014】熱処理用ケース2の内部には、図2に示す
ように、熱処理すべきワーク15が収容可能になってい
る。ワーク15の具体的形状は、特に限定されないが、
本実施例では、コイル状線材である。本実施例に係る熱
処理用ケース2は、ワークの取り出し用開口部を有する
ケース本体10と、この取り出し用開口部に着脱自在に
取り付けられる保護蓋体12とを有する。ケース本体1
0と保護蓋体12とは、たとえばステンレスで構成して
ある。
【0015】本実施例では、保温蓋体12には、ケース
2内部の熱が逃げ難く、冷却液体が入り込み易いよう
に、流入口14,16が形成してある。流入口14,1
6は、ケース内部に収容されるワーク15のコイル形状
を逃げるように、ケースの4角部と、中央部とに形成し
てある。このような位置に流入口14,16を形成する
ことで、ケース2を加熱炉6から取り出した場合でも、
ワーク15の熱が冷め難い。
【0016】加熱炉6中において、ケース2内に収容さ
れたワーク15は、たとえば700〜1200℃まで加
熱され、その後、加熱炉6から取り出される。加熱炉6
から取り出されたワーク15を収容しているケース2
は、冷却水が貯留してある冷却槽付近まで、台車4によ
って搬送される。その後ケース2は、リフトなどにより
釣り上げられ、冷却槽の冷却水中に入れられる。
【0017】本実施例では、加熱炉6から冷却槽まで搬
送される間、ワーク15の温度は、図3の曲線Aに示す
ように、保温蓋体12による保温効果のために、蓋体1
2がない場合(図3中、曲線B)に比較して、それほど
低下することはない。したがって、ワーク15は、加熱
炉6での加熱温度をほぼ維持した状態で冷却水中に入れ
られる。また、熱処理用ケース2には、冷却水が入り込
み易い流入口14,16が形成してあるので、冷却水中
では、冷却水が流入口14,16を通してケース2内部
に素早く侵入し、ケース2内部のワーク15を良好に急
冷処理することができる。
【0018】したがって、本実施例の熱処理用ケース2
は、Ni−19Cr−4Mo−14Co−Fe−1.3
Al−3Ti、Ni−15Cr−7Fe−0.7Al−
2.5Ti、またはNi−19.5Cr−Co−1.1
Al−2.2Tiなどの強析出型Ni合金のように、あ
る温度X以上の温度から急激に冷却しなければ、ワーク
の性能が変化してしまうような精密な熱処理を行なう必
要のある材質のワークの熱処理に好適に用いることがで
きる。たとえばNi−19Cr−4Mo−Fe−1.3
Al−3Ti製のワークを、加熱炉6にて1025℃に
4時間加熱した後、30℃の冷却水中に5分間入れて、
溶体化処理を行なったところ、従来の蓋無しの熱処理ケ
ースを用いた場合で、熱処理後に得られるワークの引張
強さが、75kgf/mm2 であったのに対し、本実施
例の熱処理用ケース2を用いた場合には、100kgf
/mm2 であり、本実施例の有効性が証明された。
【0019】なお、本発明は、上述した実施例に限定さ
れるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変するこ
とができる。たとえば、冷却液体としては、冷却水に限
定されず、冷却油およびこれに類する液体を用いること
もできる。
【0020】また、図4に示すように、熱処理用ケース
20の保護蓋体22に形成する流入口24,26の形状
および形成数は、ケース内部の熱が逃げ難く、冷却液体
が入り込み易い形状および形成数であれば特に限定され
ず、保護蓋体22の4角部に形成する流入口24の形状
を四角形状とし、蓋中央部には、多数の細孔型流入口2
6を明けるように構成することもできる。また、蓋体2
2の4角部全てに流入口14または24を形成する必要
はなく、少なくとも一角部以上であれば良い。
【0021】また、本発明では、図5に示すように、熱
処理用ケース30のケース本体32の底面にも、流入口
34、36を設けても良い。流入口34、36の配置数
および配置パターンは特に限定されないが、図示する例
では、比較的大径の流入口34を四隅に設け、小径の流
入口36を中央部に多数設けてある。また、ケース本体
32には把手38を設けてある。
【0022】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、ワークは、熱処理用ケースと共に、加熱炉での加熱
温度をほぼ維持した状態で冷却液体中に入れられる。熱
処理用ケースには、冷却液体が入り込み易い流入口が形
成してあるので、冷却液体中では、冷却液体が流入口を
通してケース内部に素早く侵入し、ケース内部のワーク
を良好に急冷処理することができる。
【0023】したがって、熱処理用ケース内部のワーク
は、精密な温度制御で溶体化処理され、所望の性能を有
する熱処理後のワークを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る熱処理用ケース
を用いた熱処理工程を示す概略図である。
【図2】図2は同実施例に係る熱処理用ケースの概略斜
視図である。
【図3】図3は同実施例に係る熱処理用ケースを用いた
熱処理工程の作用を示すグラフである。
【図4】図4は本発明の他の実施例に係る熱処理用ケー
スの正面図である。
【図5】図5は本発明の他の実施例に係る熱処理用ケー
スに用いるケース本体の斜視図である。
【符号の説明】
2,20… 熱処理用ケース 4… 台車 6… 加熱炉 8… 扉 10… ケース本体 12… 保温蓋体 14,16,24,26… 流入口 15… ワーク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 1/00 C22F 1/10 C21D 1/18 C21D 1/63

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱処理すべきワークを収容した状態で、
    加熱炉に入れられ、所定温度に加熱された後に加熱炉か
    ら取り出され、熱処理すべきワークが収容された状態で
    冷却液体内に入れられる熱処理用ケースであって、 熱処理すべきワークが取り出し自在に収容されるケース
    本体と、このケース本体の取り出し開口部に対して着脱
    自在に取り付けられる保温蓋体とから成り、 上記保温蓋体には、ケース内部の熱が逃げ難く、冷却液
    体が入り込み易い流入口が形成してある熱処理用ケー
    ス。
  2. 【請求項2】 上記流入孔は、ケース内部に収容される
    ワークの形状を逃げるように形成してある請求項1に記
    載の熱処理用ケース。
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