JP3146677B2 - 天然抗酸化物質の製造方法 - Google Patents

天然抗酸化物質の製造方法

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  • Anti-Oxidant Or Stabilizer Compositions (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業製品のなかの熱可
塑性樹脂、又は食品、医薬品、化粧品などに添加する抗
酸化物質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックフィルムなどの熱可塑性樹
脂は酸化劣化を受けやすいため、機械強度の低下や異臭
の発生、変色などが起こる。また、油脂を含む食品にお
いても酸化劣化しやすく、食品の見かけを悪くするばか
りでなく風味の劣化を伴い、さらに有毒物質を生成する
こともある。
【0003】この対策の一つとして、抗酸化物質の添加
が行われている。しかし、かって広範囲に用いられてい
た抗酸化物質であるBHT(ブチルヒドロキシトルエ
ン)やBHA(ブチルヒドロキシアニソール)などが、
近年発ガンへの関与や肺臓、肝臓への悪影響が指摘さ
れ、人工的合成化学物質の安全性に対する消費者の懸念
から天然物への関心が高まっている。
【0004】天然物由来の抗酸化物質には、広く植物に
存在するトコフェロール類をはじめ、フラボン誘導体、
コーヒー酸誘導体、没食子酸誘導体、ゴシポール、セザ
モールなどが知られている。一方、植物の種類からみる
と、香辛料、生薬、天然油脂植物などから複雑な抗酸化
物質を得ているが、未だに利用可能な抗酸化物質は得ら
れていない。また、植物材料を原料にして、抗酸化物質
を抽出する一般的方法は煩鎖な手順と処理を必要として
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題を解決するためになされたもので、その課題とすると
ころは、入手可能な天然材料から抗酸化物質を容易に抽
出、分離する方法を堤供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明はこの課題を解決
するため、エゴノキの葉を乾燥、粉砕し、無極性有機溶
媒で非極性物質を除去し、極性有機溶剤で極性物質を抽
出し、減圧乾固後pH3に調整してクロロホルム抽出部
を得る。ついでこれに炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液
を加え、クロロホルム可溶部を除去し、残りの水可溶部
をさらにpH3に調整した後、クロロホルム可溶部を
得、分取高速液体クロマトグラフィによって得られるこ
とを特徴とする天然抗酸化物質の製造方法を堤供する。
【0007】本発明におけるエゴノキは、わが国では北
海道から沖縄の温帯から亜熱帯に広く分布する落葉小高
木で、造園にも利用されており、入手は容易である。一
方、エゴノキの抽出物は食品の保存料としても認められ
ている。
【0008】本発明に利用したエゴノキは約300種類
の植物材料から抗酸化活性の検定により抗酸化活性の高
い材料として選んだものである。なお、抗酸化活性の検
定は下記の重量法あるいはチオシアン化法によった。図
1に結果を示す。
【0009】<重量法>蒸留して精製したリノール酸5
00mgをバイアルビン(32.4ml容量)にとり、
抽出液0.1mlを加え、よく撹拌後減圧下で溶剤を除
去してから40℃、RH50%の恒温恒湿器内に置き、
以後一日ごとに4〜5日間、重量を測定した。
【0010】<チオシアン化法>50ml容量の三角フ
ラスコに、下記組成の処理液を調整し、40℃の恒温器
に放置し、処理日から適宜0.1mlづつ取りだし、7
5%エタノール9.7mlを入れた広口バイアルビン
(32.7ml容量)に入れ、さらにチオシアン化アン
モニウム水溶液(30%)0.1mlと塩化第一鉄(1
2×10-2M、3.5%塩酸水溶液)0.1mlを加え
て発色させ3分後、500nmの吸光度を測定した。
【0011】 <処理液の組成> エタノール(99.5%) 1.90ml リノール酸エタノール液(2.5%) 2.05ml リン酸緩衝液(0.05M、pH7.0) 4.00ml 蒸留水 1.95ml 検定液(エタノール抽出液) 0.10ml 計 10.00ml
【0012】図中、ブランクとは検定液を入れないもの
を指す。また、BHTの市販品を同様処理して活性の測
定を行い、比較した。
【0013】以下、本発明を詳細に説明する。図1より
エゴノキの葉部に強い活性のあることから、本発明では
エゴノキの葉を使用する。エゴノキの葉は生葉または乾
燥葉を用いる。生葉の場合はそのまま溶媒とともに磨砕
し、乾燥葉の場合は日陰下で自然乾燥するかまたは温風
(50℃以下)で乾燥し、粉砕後使用する。
【0014】ついで、エゴノキの葉から極性物質を抽出
する。抽出を効率よく進めるため、予めヘキサン、ジク
ロロメタンなどの無極性有機溶媒で非極性物質を除去
し、その残渣にエタノール、メタノール、アセトンなど
の極性有機溶媒の単独あるいは2種以上の混合溶媒で抗
酸化物質を含む極性物質を抽出する。
【0015】この抽出物から酸性物質を抽出する。前記
抽出物を水に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液または
塩酸でpH3に調整後、クロロホルム可溶部を採り、減
圧乾固し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液に溶解す
る。この後クロロホルム可溶部を除き、水可溶部をpH
3に調整後、クロロホルム可溶部の酸性物質を得る。
【0016】この抽出物から抗酸化物質を分離する。前
記抽出物をエタノールに溶解し、分取高速液体クロマト
グラフィを用い、メタノールを溶離液として濃度20〜
80%の範囲で段階的に分取する。結果を図3に示すよ
うに、65〜75%の範囲に抗酸化活性の強い画分を得
る。さらにこの画分をメタノール50%の溶離液で分画
する。結果を図4に示すように、2個の成分A、Bを
得、これを減圧乾固する。このようにして得た物質をそ
のまま、または適当な溶媒に溶かし、単独または他の助
材と混合して利用する。
【0017】
【実施例】エゴノキの葉の温風乾燥粉末1.7kgを分
液ロートを用いて(以下抽出作業は全て同様)ヘキサン
2.0lで一回、ジクロルメタン2.0lで3回この順
序で抽出し、この残渣に2.0lの99.5%エタノー
ルを加えて3回抽出し、抽出物をロータリエバポレータ
ーを用いて(以下減圧乾固は全て同様)減圧乾固する。
このエタノール可溶部を1.0lの蒸留水に溶解し、水
酸化ナトリウムあるいは塩酸でpH3に調整した後、2
00mlのクロロホルムで数回抽出、抽出物を合わせて
減圧乾固する。これに炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液
を加えて溶解し,クロロホルムで数回抽出除去する。こ
の残渣の水溶液をpH3に調整し、クロロホルムで数回
抽出し、減圧乾固する。以上の操作によって1.5gの
酸性物質を得た。
【0018】酸性物質を99.5%エタノールに溶か
し、メタノールを溶離液として分取高速液体クロマトグ
ラフィ(日本分光(株)製:「クロマトグラフLC80
0シリーズ」)(使用カラム:ODS−10、30×2
50mm(野村化学(株)製:「DEVELOSI
L」))、流速10ml/minにより抗酸化物質を分
離する。すなわち、まず20%〜80%までのメタノー
ル濃度の段階的に分取した中で65〜75%範囲の画分
を分け、ついでこれを50%の溶離液で分画し、2成分
A、Bを分取する。両成分をそれぞれ減圧乾固する。2
成分の収得量はA約200mgとB約100mgであっ
た。
【0019】この2成分をエタノールに溶解し、図1の
場合と同様にして市販のBHT、δ−トコフェロールと
比較しながら検定を行った。抗酸化活性の検定結果を図
2に示した。2成分ともにトコフェロール類の中で活性
の最も強いδ−トコフェロールよりもはるかに強く、さ
らにBHTと比べても優れていることが分かった。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、今日まで利用が試みら
れたことのないエゴノキの葉のエタノール抽出物から分
取高速液体クロマトグラフィによって、容易に抗酸化物
質を分離することが可能となった。また、本発明による
分離成分は活性がトコフェロール類やBHTよりも優れ
ていることが分かったので、BHTの代替としての利用
が可能である。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1】エゴノキの葉または果実のエタノール抽出液
を、重量法とチオシアン化法によって抗酸化活性を検定
した結果を示すグラフである。
【図2】本発明によるエゴノキの葉から分離した成分
を、重量法とチオシアン化法による抗酸化活性を検定し
た結果を、BHTやδ−トコフェノールと比較して示し
たグラフである。
【図3】本発明に係る、エゴノキの葉から分画した酸性
成分を分取高速液体クロマトグラフィにより段階的に分
取した結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係る、エゴノキの葉から分画した酸性
成分を分取高速液体クロマトグラフィにより段階的に分
取したものからさらに分画した結果を示すグラフであ
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エゴノキ(Styrax japonica Sieb. et Zuc
    c.)の葉から無極性有機溶媒で非極性物質を除去し、極
    性有機溶媒で極性物質を抽出し、減圧乾固後、pH3に
    調整してクロロホルム可溶部を採り、さらに炭酸水素ナ
    トリウム飽和水溶液を加えて得た水可溶部をpH3に調
    整してクロロホルム可溶部を抽出し、極性有機溶媒を溶
    離液とした分取高速液体クロマトグラフィにより得られ
    ることを特徴とする天然抗酸化物質の製造方法。
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