JP3146322B2 - タイヤトレッド用スプライスセメント - Google Patents

タイヤトレッド用スプライスセメント

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JP3146322B2
JP3146322B2 JP34132391A JP34132391A JP3146322B2 JP 3146322 B2 JP3146322 B2 JP 3146322B2 JP 34132391 A JP34132391 A JP 34132391A JP 34132391 A JP34132391 A JP 34132391A JP 3146322 B2 JP3146322 B2 JP 3146322B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は未加硫のトレッドゴム組
成物の端部同士を成形工程で接合して高性能の空気入り
タイヤを製造する際に、そのトレッドゴム組成物の接合
面に塗布するタイヤトレッド用スプライスセメントに関
する。
【0002】
【従来の技術】空気入りタイヤのトレッドは、未加硫の
トレッドゴム組成物をタイヤ本体の外周上に貼り付け、
その両端部を相互に接合した後、加硫成形されている。
従来、トレッドゴム組成物を接合する方法としては、大
別して2種類ある。一方は、トレッドゴム組成物の接合
面に成形時の粘着性が優れたスプライスセメントを塗布
し、これを乾燥させることにより接合する方法であっ
て、特にSBR又はBRを主体とするトレッドゴム組成
物に対して行われている。このようなスプライスセメン
トには、結合スチレン含有量が25重量%前後のゴム組
成物が使用されている。
【0003】他方は、100〜300℃に加熱した刃物
(ホットメス)でトレッドゴム組成物を切断し、限定時
間内にトレッドゴム組成物の両端部を接合する方法であ
って、特にハイスチレンゴムを主要ポリマーとするトレ
ッドゴム組成物に対して行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スプラ
イスセメントを使用する方法では、タイヤ成形時の粘着
性は良好であるものの、結合スチレン含有量が使用ポリ
マーの30重量%以上となるハイスチレンのトレッドゴ
ム組成物を接合する場合に、加硫後のスプライス部の接
着性が悪いため、走行中にスプライス部に剥離が発生し
やすいという問題点があった。
【0005】また、ホットメスを使用する方法では、タ
イヤ成形時の粘着性及び加硫後の接着性を考慮すると、
限定時間内にトレッドゴム組成物の両端部を接合する必
要があるため加工条件に制約を受けると共に、多数の成
形機に対してそれぞれホットメスを装備する必要がある
ため設備コストが増大してしまう。本発明の目的は、ト
レッドゴム組成物にハイスチレンゴムを使用しても、優
れた加硫接着性を付与することができるタイヤトレッド
用スプライスセメントを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るタイヤトレ
ッド用スプライスセメントは、セメントゴム100重量
部に対してホワイトカーボンを2〜30重量部と硫黄含
有の有機珪素化合物を0.5〜15重量部配合してなる
ことを特徴とするものである。本発明者等はスプライス
接着強度改善にあたり鋭意検討した結果、スプライス接
着強度不足となる原因を見出し、本発明のスプライスセ
メント改良法に至った。即ち、セメントを調製するに際
してカーボンの2次凝集構造(カーボンゲル)を分断破
砕して溶剤に分散させなければならない。カーボンゲル
はカーボンによる補強に必要な3次元ネットワーク構造
である。この3次元ネットワーク構造がくずれることに
よりスプライス部のセメント層は強度的に弱い層となっ
てしまう。このように、もともと強度の低いセメントに
よるスプライス部に強い摩擦力が加わると当然剥離が起
こってしまう。従って、強い摩擦力にも耐えられるセメ
ント層を形成するためには、分断破砕されたカーボンゲ
ルの3次元ネットワーク構造を修復することが必要とな
るが、本発明のスプライスセメントはそれを実現するも
のである。
【0007】本発明においては、セメントゴム100重
量部に対して、加硫剤として硫黄含有の有機珪素化合物
を0.5〜15重量部の割合で配合すると共に、ホワイ
トカーボンを2〜30重量部の割合で配合する。このホ
ワイトカーボンと硫黄含有の有機珪素化合物とは互いに
反応して結合した状態でセメント中に存在する傾向があ
る。更に、補強剤であるホワイトカーボンに結合した硫
黄含有の有機珪素化合物は、加硫によってジエン系ポリ
マーとも結合することができる。これによって分断破砕
されたカーボンゲルを補修するホワイトカーボンとポリ
マーによる3次元ネットワーク構造を形成することがで
きる。従って、強い摩擦力にも耐えられる優れた加硫接
着性を付与することができ、これにより走行中にスプラ
イス部に剥離が発生することを防止できる。
【0008】また、本発明によれば、ホットメスを使用
する場合とは異なって、設備コストを低減することがで
きると共に、加工条件に制約を受けることがなく、タイ
ヤ成形時の粘着性も良好である。しかしながら、ホワイ
トカーボンの配合量がセメントゴム100重量部に対し
て2重量部未満であると硫黄含有の有機珪素化合物の3
次元ネットワーク構造修復効果が不十分になり、30重
量部を超えると加硫性が低下する。このため、ホワイト
カーボンの配合量はセメントゴム100重量部に対して
2〜30重量部にする。また、硫黄含有の有機珪素化合
物の配合量がセメントゴム100重量部に対して0.5
重量部未満であると加硫接着性が不十分になり、15重
量部を超えても効果が飽和して無駄である。このため、
硫黄含有の有機珪素化合物の配合量はセメントゴム10
0重量部に対して0.5〜15重量部にする。
【0009】本発明のスプライスセメントは強度向上と
いう面で一般性をもっているが、その効果は、摩擦力を
顕著に高めるためにスチレン含有量30重量%以上のS
BR(スチレンブタジエンゴム)を用いたゴム組成物か
らなるトレッドに対して特に有効である。この場合、セ
メントゴムの結合スチレン含有量は30重量%以上にす
ることが好ましく、これによりスプライスセメントとト
レッドゴム組成物との間にスチレン含有量の差が生じる
ことを回避でき、加硫接着性を一層向上させることがで
きる。
【0010】本発明において、硫黄含有の有機珪素化合
物は、例えば一般式Y−SiZ3 で表すことができる。
Yはゴム分子との反応基であって、メルカプト基及びポ
リスルファイド基等で置換することができ、硫黄を含有
していれば更にビニル基、エポキシ基及びメタクリル基
等を付加することができる。Zはホワイトカーボンのシ
ラノール基との反応基であって、メトキシ基、エトキシ
基、メトキシエトキシ基及びクロロ基等で置換すること
ができる。このような硫黄含有の有機珪素化合物の一例
として、ビス−(3−トリエトキシシリル−プロピル)
−テトラスルファイド(Si69)を下記化学式1に示
す。
【0011】化学式1
【0012】
【実施例】下記表1に示す配合でスプライスセメントを
調製し、それぞれについて下記の方法により物性、加工
性及び接着性を調べ、その結果を表2に示した。 (物性)スプライスセメントを160℃×15分の条件
で加硫した後に、300%引張応力(300M)、引張
強度(T.S.)及び伸び(EL.)を測定した。 (加工性)スプライスセメントの被着体(トレッドゴム
組成物)に対するスプライス部のタックを調べた。タッ
クが良好であるものを○で示した。 (接着性)スプライスセメントを使用してスチレン含有
量が38重量%のトレッドゴム組成物を接合し加硫した
後、この接合体の表面をグラインダーで貼り合わせ面が
剥がれる方向に逆バフし、スプライス部における接着状
況を調べた。剥離が全くないものを◎で示し、剥離がほ
とんどないものを○で示し、剥離がわずかにあるものを
△で示し、剥離が著しく発生したものを×で示した。ま
た、上記接合体に対して、界面剥離(A)又は材料破壊
(B)が発生するまでの静的接着力を測定し、更に40
0rpmの条件で80%の歪みを与えて界面剥離(A)
又は材料破壊(B)が発生するまでの回数を計測するこ
とにより動的接着力を測定した。
【0013】
【0014】
【0015】この表2から明らかなように、実施例1〜
5及び比較例1〜4のスプライスセメントは、ほぼ同様
の物性及び加工性を有しているものの、接着性に顕著な
差があった。即ち、実施例1〜5では、比較例1〜4と
は異なって逆バフによるスプライス部の剥離がほとんど
発生しておらず、静的接着力が72kg/in.と高
く、動的接着力が350万回以上と高いものであった。
【0016】次に、スチレン含有量が38重量の帯状の
トレッドゴム押出物をタイヤ本体の外周上に貼り付け、
その両端部を上記実施例5又は比較例1のスプライスセ
メントを使用して接合した。また、比較例5として、上
記と同様のトレッドゴム押出物をタイヤ本体の外周上に
貼り付け、その両端部をホットメスにより接合した。次
いで、これらを成形して加硫することにより高性能キャ
ップトレッドを有する空気入りタイヤ(195/70R
14)を製造した。
【0017】上述の供試タイヤについて、下記の方法に
より加工性及び接着性を調べ、その結果を表3に示し
た。 (加工性)タイヤ成形時の加工性を調べた。タイヤ成形
時の粘着性が高く加工性が良好であるものを○で示し、
粘着力が低く加工性が不十分であるものを×で示した。 (接着性)タイヤトレッド表面を貼り合わせ面が剥がれ
る方向にグラインダーで逆バフし、スプライス部におけ
る接着状況を調べた。また、供試タイヤを乗用車に装着
し、距離2.0kmの環状走路を平均速度120km/
hで10周走行した後、スプライス部における接着状況
を調べた。いずれも、剥離が発生してないものを○で示
し、深さ2mm以下長さ5mm以下の剥離が発生したも
のを△で示し、深さ2mm以上長さ5mm以上の剥離が
発生したものを×で示した。
【0018】 この表3から明らかなように、実施例5ではスプライス
部のタックが良好であるためタイヤ成形時の加工性が優
れており、逆バフ後及び走行後においてスプライス部に
剥離が発生することがなく接着性が優れていた。これに
対して、従来と同様のセメントを使用した比較例1で
は、加工性が優れているものの、接着性が悪かった。ま
た、ホットメスを使用した比較例5では、接着性はそれ
ほど悪くないが、タイヤ成形時の粘着性が低いため加工
性が悪かった。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、セ
メントゴム100重量部に対してホワイトカーボンを2
〜30重量部と硫黄含有の有機珪素化合物を0.5〜1
5重量部配合するから、分断破砕されたカーボンゲルの
3次元ネットワーク構造を補修することができる。従っ
て、トレッドゴム組成物にハイスチレンゴムを使用して
も、優れた加硫接着性を付与することができ、走行中に
スプライス部に剥離が発生することを防止できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−76343(JP,A) 特開 平3−197209(JP,A) 特開 昭63−270751(JP,A) 特開 平4−353538(JP,A) 特開 昭57−12040(JP,A) 特開 昭55−120641(JP,A) 特開 昭56−79134(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 21/00 B60C 11/00 C08K 3/36 C08K 5/54 C09J 121/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セメントゴム100重量部に対してホワ
    イトカーボンを2〜30重量部と硫黄含有の有機珪素化
    合物を0.5〜15重量部配合してなるタイヤトレッド
    用スプライスセメント。
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