JP3138733B2 - 安定化リポソーム及びその形成方法 - Google Patents

安定化リポソーム及びその形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リポソームの利用
技術に関し、具体的には、リポソームを安定に形成する
技術に関する。このようなリポソームは、内包する親水
相に種々の化合物を含ませておくことで、DDS(ドラ
ッグデリバリーシステム)等への応用が期待されるもの
で、種種の環境で安定に存在することが期待されるとと
もに、構成する脂質にも毒性、生体内での分解性等につ
いての安全性が求められている。また、その安定性のコ
ントロールにより、種々薬品の検査等にも応用が期待さ
れている。
【0002】
【従来の技術】従来、リポソームを構成する脂質二分子
膜の構造中にコレステロールに代表されるステロイド等
を導入することにより前記脂質二分子膜が強化されるこ
とが知られているが、これら化合物のリポソーム安定化
の機構は明確にされておらず、種々の化合物がさらに検
討されている。
【0003】上述の化合物群は、前記脂質の一部に置き
換わって、前記脂質二分子膜を構成することで、二分子
膜上に釘状に入り込む構造をとっているものと考えられ
ている。さらに近年、脂質二分子膜を構成する脂質より
も十分に長く、前記二分子膜を貫通する構造のカロテノ
イド等の化合物群が見いだされている。このような化合
物群は、前記脂質二分子膜中にリベット状に取り込まれ
る構造をとり、前記二分子膜をさらに安定化させられる
ものとして期待されている。
【0004】この中で、ゼアキサンチンがホスファチジ
ルコリン(PC)からなる脂質二分子膜に対する安定化
作用を示すことが報告されている(中谷陽一ら、化学と
生物Vol.28No.9(1990)568頁〜57
6頁)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述のような
安定化作用を受けた既知の安定化リポソームといえど
も、安定性には限度があり、安定化の機構解明が不十分
であることからも、さらに安定化させられるリポソーム
の安定化が望まれている。また、上述のゼアキサンチン
に関しても、ジミリストイルホスファチジルコリン(D
MPC)からなるリポソームとの関係については検討さ
れているが、他のPCとの間における安定化については
検討されておらず、リポソームを用いる多種多様な環境
下に応用すべく、さらに、多様な安定化リポソームが望
まれている現状にある。従って、本発明の目的は、上記
欠点に鑑み、よりいっそう安定な安定化リポソームを提
供すること、および、多様な安定化リポソームを提供す
る点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、安定化リ
ポソームを形成すべく種々の化合物を検討したところ、
少なくとも一端側に糖修飾されたゼアキサンチンの誘導
体が、種々の油脂材料からなるリポソームに対して極め
て高いリポソーム安定化効果を発揮することを見いだ
し、本発明を完成するに到った。そこで、この目的を達
成するための本発明の安定化リポソームの特徴構成は、
PCを主剤としてなる油脂材料から膜形成されるリポソ
ームをカロテノイド化合物により安定化させてなる安定
化リポソームを、少なくとも一端側に糖修飾されたカロ
テノイド化合物を、卵黄由来のPC、あるいは、DPP
C、DOPCから選ばれる少なくとも一種の合成PCを
主剤としてなる油脂材料と膜形成させて構成する、もし
くは、PCを主剤としてなる油脂材料から膜形成される
リポソームをカロテノイド化合物により安定化させてな
る安定化リポソームを、少なくとも一端側に糖修飾され
たゼアキサンチン(zeaxanthin)類を、PC
を主剤としてなる油脂材料とから膜形成して構成する点
にある。
【0007】尚、好ましくは、少なくとも一端側に糖修
飾されたゼアキサンチン類を、卵黄由来のPC、あるい
は、DPPC、DOPCから選ばれる少なくとも一種の
合成PCを主剤としてなる油脂材料と膜形成させて構成
する。
【0008】また、前記ゼアキサンチン類が、化1に示
すサーモゼアキサンチン(thermozeaxant
hin)、化2に示すサーモビスゼアキサンチン(th
ermobiszeaxanthin)、化3に示すサ
ーモクリプトキサンチン(thermocryptox
anthin)から選ばれる少なくとも一種の化合物で
あることが望ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】 1 〜R3 はC8 〜C18のアシル基。
【0012】〔作用効果〕つまり、PCを主剤としてな
る油脂材料から膜形成されるリポソームにカロテノイド
化合物を添加してあれば、前記PCの二分子膜構造に前
記カロテノイド化合物が、リベット構造で導入されるた
めに、従来知られているゼアキサンチン等と同様に、安
定化効果が得られることが期待できる。ここで、今般、
特開平8−337592号として新規に見いだされた微
生物由来のゼアキサンチン類を適用したところ、極めて
高いリポソーム安定化効果を発揮することがわかった。
これは、前記ゼアキサンチンが、末端に糖鎖を有するこ
とに由来し、種々のPCと安定なリポソームの二分子膜
構造を形成するためではないかと考えられる。すなわ
ち、前記糖鎖の水酸基が、前記PCの親水基と相互作用
して、前記ゼアキサンチンに代表されるカロテノイドを
前記二分子膜中に安定に存在させるのに寄与しているも
のと予想されるのである。
【0013】従って、糖修飾されたカロテノイドは、卵
黄由来のPCや、特定の合成PCから形成されるリポソ
ームを安定化することがわかり、種々多様な安定化リポ
ソームの提供が可能となった。また、ここで、詳細に検
討されたサーモゼアキサンチンは、種々のPCからなる
リポソームを安定化することが見いだされ、糖修飾され
たゼアキサンチン類は種々のPCからなるリポソームを
安定化し、種々多様な安定化リポソームの提供が可能と
なった。
【0014】尚、前記ゼアキサンチン類として新規に見
いだされたものとしては、サーモゼアキサンチン(th
ermozeaxanthin)、サーモビスゼアキサ
ンチン(thermobiszeaxanthin)、
サーモクリプトキサンチン(thermocrypto
xanthin)が有効であると考えられり、これらゼ
アキサンチン類を用いれば多種多様な安定化リポソーム
を提供するのに役立てられる。また、上述の安定化リポ
ソームは、リポソーム形成用脂質に、前記ゼアキサンチ
ン類が、サーモゼアキサンチン(thermozeax
anthin)、サーモビスゼアキサンチン(ther
mobiszeaxanthin)、サーモクリプトキ
サンチン(thermocryptoxanthin)
から選ばれる少なくとも一種の化合物を添加し、膜形成
させる事によって得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0016】本発明の安定化リポソームは、図1に示す
ように、PCを主剤としてなる油脂材料から膜形成され
る二分子膜中に少なくとも一端側に糖修飾されたカロテ
ノイド化合物が、リベット状に組み込まれ、前記二分子
膜を安定化させるものと考えられる。このとき前記糖鎖
は、前記二分子膜の親水基と相互作用して、膜表面に位
置固定され、また、前記カロテノイドの疎水性骨格が、
前記二分子膜の厚さとほぼ一致して、リベット状に組み
込まれた姿勢が安定に保持されるとともに、前記二分子
膜を構成する脂質の挙動を拘束していると考えられる。
また、糖鎖から延出する脂肪酸基は、前記二分子膜中に
取り込まれて、さらに、複雑な相互作用を発揮し、安定
化に寄与しているものと考えられる。以下、リポソーム
の製造方法の一例を示す。サーモゼアキサンチン(以下
TZと称する)と卵黄由来のPC(以下EPCと称す
る)とをモル比で1:100に混合してある脂質(以下
1:100混合脂質と称する、他の混合比率のものにつ
いても同様)を少量のジエチルエーテルに溶解し、なす
型フラスコに入れる。これを器壁で薄膜を形成するよう
に減圧乾燥させる。これに、100mMのカルセイン水
溶液(pH7.5)を加え、窒素雰囲気下にてよく懸濁
して乳白色の懸濁液(10mgPC/ml)を得た。こ
の懸濁液を液体窒素により凍結する急速凍結行程と、凍
結した懸濁液を室温で融解する融解行程とを交互に5回
繰り返し行い、孔径100nmのフィルターで限外濾過
した。 (この過程で粒径のそろった一枚膜リポソーム
が調整されることが知られている。(DLS法(動的光
散乱法)によると100nm付近に中心を持つ径分布
の、比較的大きな一枚膜リポソームが確認できる。)ま
た、リポソーム内部にはカルセインが自己消光する濃度
で封入されている。)さらに、得られたリポソームをゲ
ル濾過(セファクリルS300)することにより、余剰
のカルセインを除去して、50mM Tris−HCl
(pH7.5)緩衝液に懸濁されたカルセイン封入リポ
ソームを得た。一方前記100mMのカルセイン水溶液
(pH7.5)に代え、50mM Tris−HCl
(pH7.5)緩衝液を用いてカルセイン非封入のリポ
ソーム等も同様にして得られる。また、前記混合脂質に
代えEPCのみのものを用いて調整したTZ非添加リポ
ソーム等も同様にして得られる。尚、このようなリポソ
ーム調整法としては、上述の凍結融解法の他に、界面活
性剤透析法、水和法、エーテル注入法、逆層蒸留法等他
の種々公知の方法を用いることができる。また、粒径の
そろった一枚膜リポソームとするには、上述の限外濾過
の他、超音波処理等の種々公知の方法を採用することが
出来る。
【0017】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0018】上述のリポソームの熱安定性を調べたとこ
ろ、TZの安定化効果が確認できた。尚、リポソームの
安定性は、以下のように試験、評価した。
【0019】<安定性試験方法>前記カルセイン封入リ
ポソームを、50mM Tris−HCl(pH7.
5)緩衝液で1000倍希釈し、所定温度に所定時間間
維持する熱処理を行う。このとき、破壊されたリポソー
ムからは、カルセインが漏出し、前記緩衝液内で希釈さ
れて蛍光を発する(リポソーム内に封入された状態のま
までは自己消光を起こして蛍光は発しない)。この蛍光
を蛍光分析器で測定する(励起波長488nm、発光波
長517nm)と、カルセイン量が測定できる。この放
出カルセイン量は、破壊されたカルセイン封入リポソー
ム量に比例するから、この量が少ないほど安定なリポソ
ームが得られていることがわかる。尚、熱安定性の試験
では、温度を変えながら10分間の熱処理によるカルセ
イン漏出量の測定、経時安定性の試験では、室温にて維
持時間に対するカルセイン漏出量の測定を行った。
【0020】尚、カルセイン量は、当初封入されていた
カルセインに対する放出カルセインの量の割合として求
め、カルセイン封入リポソームの大きさ、量等の差異を
補償できるように換算している。当初封入されていたカ
ルセイン量は、全カルセイン封入リポソームを、界面活
性剤等により破壊し、前記放出カルセイン量と同様に求
めた。
【0021】<EPC:TZ添加の効果>TZ:EPC
のモル比が1:500の混合脂質、1:100の混合脂
質を用いてカルセイン封入リポソームを形成し、それぞ
れの安定性を試験した。その結果、図2のようになっ
た。このグラフから前記TZは、リポソームを広い温度
範囲で安定化していることがわかる。また、EPCに代
えて、大腸菌由来のホスファチジルエタノールアミン
(PE)を用いて同様の検討を行ったところ、図3のよ
うになり、PEを用いた場合にも低温域においては、T
Zの耐熱安定化の寄与が認められることがわかった。
尚、従来用いられていたコレステロールや、β−カロテ
ンは、同様の条件下で、EPCリポソームを不安定化し
ていることがわかり(下記参考1参照)、EPCリポソ
ームの安定化には、TZあるいはその類縁体に代表され
る糖カロテノイドを用いることが特に有効であることが
わかる。
【0022】<DPPC:TZ添加の効果>先と同様に
EPCに代えてDPPCを用いて、TZ:DPPCのモ
ル比が1:500の混合脂質、1:100の混合脂質か
らカルセイン封入リポソームを形成し、それぞれの安定
性を試験した。すると、図4、図5のようになり、低温
側での熱安定性が向上しており(図4)、経時安定性も
向上している(図5)ことがわかり、DPPCのリポソ
ームも安定化されることがわかった。
【0023】また、希釈液のpHを種々変更して同様に
経時安定性を調べたところ、図6〜7のようになり、い
ずれのpHにおいてもカルセイン放出量の飽和量がTZ
添加なしの場合に比べて低く抑えられ、耐酸性も向上し
ていることがわかる。
【0024】<DOPC:TZ添加の効果>先と同様に
EPCに代えてDOPCを用いて、TZ:DOPCのモ
ル比が1:500の混合脂質、1:100の混合脂質か
らカルセイン封入リポソームを形成し、それぞれの安定
性を試験した。すると、図8のようになり、低温側での
熱安定性が向上していることがわかり、DOPCのリポ
ソームも安定化されることがわかった。尚、DPPC、
DOPCのような合成PCの場合は、相転移を伴うため
に、相転移温度の前後で膜内の脂質分子の運動性や流動
性が著しく異なり、安定化の寄与に温度領域の限界が生
じるのではないかと考えられる。
【0025】<DMPC:TZ添加の効果>先と同様に
EPCに代えてDMPCを用いて、TZ:DMPCのモ
ル比が1:500の混合脂質、1:100の混合脂質か
らカルセイン封入リポソームを形成したところ、DMP
Cのリポソームと同様の安定性を発揮することがわかっ
たが、DPPC、DOPCほどの安定化効果はみられな
かった。これは、疎水基部分の長さの影響、あるいは、
糖鎖に結合したアルキル基による安定化効果もしくは不
安定化効果が発揮されていることが示唆される。つま
り、PCとしては、EPC、DPPC、DOPCがTZ
類との関係で特に好ましく、安定化の効果を受けやすい
といえるが、他のDMPC等のPCについても利用可能
であることがわかる。
【0026】<参考1>EPCにβ−カロテンやコレス
テロールを添加した際の熱安定化を調べたところ、図9
のようになり、これらの添加剤は、少なくとも合成脂質
から成るリポソームでは図6,7に示されるように安定
化の効果を発揮するものと報告されているものの、本実
験に於けるpH7.5の条件でのEPCリポソームの熱
安定性に関しては不安定化に働いていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】糖修飾されたカロテノイドによるリポソーム安
定化の作用説明図
【図2】EPCに対するTZによる熱安定化効果を示す
グラフ
【図3】PEに対するTZによる熱安定化効果を示すグ
ラフ
【図4】DPPCに対するTZによる熱安定化効果を示
すグラフ
【図5】DPPCに対するTZによる経時的安定化効果
を示すグラフ(pH7.5)
【図6】DPPCに対するTZによる経時的安定化効果
を示すグラフ(pH6.5)
【図7】DPPCに対するTZによる経時的安定化効果
を示すグラフ(pH9.0)
【図8】DPPCに対するTZによる熱安定化効果を示
すグラフ
【図9】EPCに対するβ−カロテンやコレステロール
による熱安定化効果を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 昭裕 静岡県清水市袖師町1900番 株式会社海 洋バイオテクノロジー研究所 清水研究 所 (56)参考文献 特開 平8−337592(JP,A) 特表 平7−503014(JP,A) 国際公開96/4891(WO,A1) 国際公開98/47534(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 9/00 - 9/72 A61K 47/00 - 47/48 CA(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスファチジルコリン(phosphatidylch
    oline,以下PCと称する)を主剤としてなる油脂材料
    から膜形成されるリポソームをゼアキサンチン(zeaxan
    thin)類により安定化させてなる安定化リポソームであ
    って、 少なくとも一端側に糖修飾されたゼアキサンチン類を、
    PCを主剤としてなる油脂材料とともに膜形成してある
    安定化リポソーム。
  2. 【請求項2】 前記PCを主剤としてなる油脂材料が、
    卵黄由来のPC、あるいは、ジパルミトイルホスファチ
    ジルコリン(以下DPPCと称する)、ジオレイルホス
    ファチジルコリン(以下DOPCと称する)から選ばれ
    る少なくとも一種の合成PCである請求項1記載の安定
    化リポソーム。
  3. 【請求項3】 前記ゼアキサンチン類が、サーモゼアキ
    サンチン(thermozeaxanthin)、サーモビスゼアキサン
    チン(thermobiszeaxanthin)、サーモクリプトキサン
    チン(thermocryptoxanthin)から選ばれる少なくとも
    一種の化合物である請求項1又は2記載の安定化リポソ
    ーム。
  4. 【請求項4】 PCを主剤としてなるリポソーム形成用
    脂質に、前記ゼアキサンチン類が、サーモゼアキサンチ
    ン(thermozeaxanthin)、サーモビスゼアキサンチン
    (thermobiszeaxanthin)、サーモクリプトキサンチン
    (thermocryptoxanthin)から選ばれる少なくとも一種
    の化合物を添加し、膜形成する請求項1、2又は3のい
    ずれかに記載の安定化リポソームの形成方法。
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JP5585981B2 (ja) * 2010-02-26 2014-09-10 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 光応答性リポソーム及び光応答性リポソームを利用した物質の運搬方法
CN103169141B (zh) * 2013-03-18 2016-04-06 北京林业大学 一种利用类脂囊泡包封类胡萝卜素的制备方法

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