JP3136046B2 - 木質材の寸法安定化方法 - Google Patents

木質材の寸法安定化方法

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JP3136046B2
JP3136046B2 JP06091755A JP9175594A JP3136046B2 JP 3136046 B2 JP3136046 B2 JP 3136046B2 JP 06091755 A JP06091755 A JP 06091755A JP 9175594 A JP9175594 A JP 9175594A JP 3136046 B2 JP3136046 B2 JP 3136046B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は木質材の寸法安定化方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】木材は水分の吸放出により膨潤または収
縮する。このことは無垢の挽き板、木材薄板(厚さ0.
2mm〜10mm程度)やパーチクルボード、MDFな
どでも同様である。建築用あるいは家具用材料として木
質材を用いる場合には、環境により木質材が膨潤または
収縮することは好ましくなく、環境に左右されない寸法
安定性を持つことが望まれる。
【0003】そのための対策として、従来、オーブン内
に木質材を入れ、180℃で16時間〜24時間程度加
熱して熱処理し、木質材の寸法安定化を図る方法、ある
いはプレス盤で木質材を上下に挟持してオートクレーブ
内に入れ、160℃〜220℃の高圧水蒸気で数分間処
理して木質材の寸法安定化を図る方法などが行われてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のうち、オーブン
による熱処理は、処理に長時間を要し生産性が悪いばか
りでなく、木質材の表面に著しい変色が生じるのを避け
られない。オートクレーブを用いた高圧水蒸気処理は、
木質材内部(中央部)への高圧水蒸気の浸透が難しく、
そのために処理効果が均一でなく、しかも、木質材の中
央部と周辺部での処理状態が往々にして異なる場合が生
じる。
【0005】本出願人は、上記のような従来の木質材の
処理方法の持つ不都合を解消すべく多くの実験と研究を
行い、従来の木材処理で用いられる熱盤を持つ平盤プレ
スの熱盤間に処理すべき木質材を配置し、さらにその周
囲に弾性シリコン材などの弾性密封材料とさらにその周
囲にステンレス材などの所要の厚さ規制治具とを配置し
たのち、該熱盤により木質材を加熱し、木質材そのもの
が有する水分を高圧水蒸気化して木質材の寸法安定化を
図る方法を発案しすでに提案している(特願平5−28
956号(特許第3109775号)、特願平5−28
957号(特許第3062368号)参照)。この方法
は、木材の圧締や複合材の製造に用いられる通常の熱盤
を持つ平盤プレスを用いて行うことができることから、
処理自体が簡素化される利点を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の処理方法は、処
理に際して木質材内部から発生する水蒸気を閉じ込める
ことが必須であり、そのために、弾性シリコン材料など
からなる弾性密封材料や剛性材料からなる厚さ規制治具
を処理すべき木質材の周囲に配置することを必要とす
る。そして、その熱処理過程において、木質材とともに
弾性密封材料や厚さ規制治具も同時に加熱されること、
さらには、処理効果を高めるために加熱後に熱盤に冷却
水を通すいわゆるホット・コールド処理を必要とするこ
と、の理由から、この処理方法は熱エネルギーのロスが
大きい。
【0007】また、木質材への加熱は平盤プレスの上下
の熱盤から基本的に行われることから、厚さの薄い平板
状の木質材の場合には木質材への熱伝導は迅速にかつ均
一に行われるが、柱材のように断面形状が正方形あるい
はそれに近い形状を持つものである場合には、木質材の
側方面は熱盤により直接は加熱されないために、全体の
加熱に時間がかかるばかりでなく均一に加熱することが
困難である。
【0008】さらに、通常、平板状の熱盤をそのままで
用いることから、断面が円形や長円形の木質材にこの処
理方法を適用することはきわめて困難である。また、平
板プレスを用いる方法は複数の木質材を一度に寸法安定
化処理することは不可能であり、ホット・コールド処理
を各木質材ごとに繰り返し行うことが必要なことから長
い平均処理時間が必要とされる。
【0009】本発明の目的は、従来の木質材の寸法安定
化方法および熱盤を持つ平板プレスによる木質材の寸法
安定化方法の持つ上記のような不都合を解消した新たな
木質材の寸法安定化方法を提供することにあり、より具
体的には、処理すべき木質材の断面形状にかかわらず、
その全周面からの加熱を可能とし、またいわゆるホット
・コールド処理が不要であることから、結果として熱エ
ネルギーのロスをなくして処理時間を短縮することを可
能とした木質材の寸法安定化方法を提供することにあ
る。本発明の他の目的は、処理操作が簡単でありなが
ら、木質材の断面形状にかかわらず、高圧水蒸気の木質
材中央部への浸透を確実とし、木質材の中央部と周辺部
での処理状態を均一化した木質材の寸法安定化方法を提
供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による寸法安定化木質材の製造方法は、処理
すべき木質材の外形寸法と実質的に等しい内径寸法を持
つ耐圧容器内に処理すべき木質材を密封状態に収容し、
その状態で該木質材を加熱して木質材の内部水分を高圧
水蒸気化して木質材を処理することを特徴とする。
【0011】前記耐圧容器の断面形状は、方形、円形、
長円形など任意であり、処理すべき木質材の断面形状に
合わせて耐圧容器を作成するか、作成された耐圧容器の
断面形状に合わせて木質材の形状を整える。さらに、耐
圧容器は単一の内部空間を持つものであってもよく、内
部が仕切り壁により複数に区画されていてもよい。さら
に、複数枚の木質材を例えは鏡面板のような好ましくは
耐圧容器の同じ素材で形成される定板を介在させて積層
した状態で耐圧容器内に収容して処理を行うこともでき
る。また、密封状態を維持することができるように、例
えば容器本体あるいは容器を構成する蓋部材の内周面に
シリコンゴム材料などからなるパッキン材料を取り付け
るようにしてもよい。
【0012】次に、本発明についてさらに詳述する。本
発明において木質材とは、無垢の挽き板、木材薄板など
だけでなくMDFやパーチクルボードなどの加工材料も
含むものであり、等しく目的は達せられる。処理すべき
木質材を前記耐圧容器に密封状態に収容した後に、木質
材を160℃〜220℃程度に加熱して木質材の内部水
分を高圧水蒸気化し、耐圧容器の内部を高圧化する。そ
れにより、木質材は高圧水蒸気処理が進行し寸法安定化
が施される。
【0013】図1、図2は本発明の寸法安定化方法に用
いる耐圧容器Aとそこに収容される木質材Wの一例を示
すものであり、断面が方形である長尺状の木質材Wがそ
の外周面との間にほぼ空隙のない状態に形成された耐圧
容器A内に収容されている。耐圧容器Aはこの例では容
器本体部分1と蓋部分2とからなり、内面にはシリコン
ゴムシートがパッキングの目的で張り付けてある。容器
本体部分1内に前記木質材Wを収容した後に、蓋部分2
を係止具3により取り付けて容器内部を密封状態とさ
れ、加熱される。
【0014】図3は耐圧容器とそこに収容される木質材
の他の一例を示すものであり、この耐圧容器Aは図1に
示したものと同様な容器であるが、容器内部には、ステ
ンレスやアルミ板製の鏡面板のような好ましくは耐圧容
器の同じ素材で形成される定板Bを挟んだ状態で3枚の
処理すべき木質材W’が収容されている。耐圧容器の他
の例として、図示しないが、内部に仕切り壁を一体に形
成したものも有効に用いることができ、その際には、処
理すべき木質材は耐圧容器の壁面と前記仕切り壁とで形
成される空間の大きさに加工されて容器内に収容され
る。
【0015】図4は耐圧容器とそこに収容される木質材
の他の一例の断面を示す斜視図であり、この耐圧容器
A’はほぼ円筒状の形状をしており、容器内部には円柱
状の木質材W''が収容されている。耐圧容器A’は図示
されない蓋部材により容器内部を密封状態とされ、加熱
される。木質材の加熱手段は、耐圧容器に密封状態に収
容した木質材を160℃〜220℃程度に加熱して木質
材そのものが持つ水分を水蒸気化できることを条件に任
意であり特に制限はないが、ドライヤーのような熱風循
環方式や蒸気加熱方式による加熱手段、または、高周波
加熱手段などであってよく、ここで高周波とは300M
Hz〜3000MHzのマイクロ波をも含む広義の高周
波を指す。
【0016】前記耐圧容器および定板の素材は、木質材
に対する加熱温度と発生する水蒸気による高圧に耐える
ものであることを条件に任意であり、ステンレス材、ア
ルミ材のような金属材料、ポリカーボネート、エポキシ
樹脂のような樹脂材料などであってよい。処理に際して
は、木質材を収容した耐圧容器を1個あるいは複数個、
通常のドライヤ内にあるいは高周波照射設備内に収容
し、必要な加熱を行う。耐圧容器内の木質材は、高周波
加熱の場合はもちろんドライヤーでの加熱の場合であっ
ても均一に加熱される。加熱後、耐圧容器はドライヤー
から取り出され自然冷却される。約50℃以下の温度に
なった時点で、処理材は耐圧容器から取り出される。そ
れにより、高圧水蒸気化処理された木質材の表面特性は
一層改善され、かつその状態で寸法は安定化する。
【0017】
【発明の効果】本発明は上記のように構成されているの
で、簡単な工程でもって木質材の寸法安定化処理を木質
材の全域にわたりほぼ均一にかつ短時間で施すことがで
きる効果がある。また、任意の形状および寸法の木質材
に対して容易に寸法安定化処理を施すことができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。 〔実施例1〕含水率15%、厚さ10cm、幅10c
m、長さ100cmの杉材を、該杉材と実質的に同じ内
法寸法を持つステンレス製の耐圧容器に収容して密封
し、200℃のドライヤー内で1時間、2時間、3時間
加熱した。その後、そのままの状態でドライヤーから取
り出し自然冷却した。50℃になった時点で耐圧容器か
ら杉材を取り出した。
【0019】〔比較例1〕前記した熱盤を持つ平盤プレ
スの熱盤間に木質材を配置して処理する方法により寸法
安定化処理を行った。すなわち、平板プレスの熱盤上に
実施例1と同じ杉材を配置し、その周囲にシリコンゴム
からなる弾性密封材料とステンレス材からなる厚さ規制
治具を配置して、木質材を密封状態に挟持した。その状
態で200℃で1時間、2時間、3時間加熱した後、熱
盤の冷却水循環通路に冷却水を8分間流し(いわゆるホ
ツト・コールド処理)、その後熱盤を離間して解圧を行
った。
【0020】〔実施例2〕含水率13%、厚さ5cm、
幅10cm、長さ100cmの松材を、該松材と実質的
に同じ内法寸法を持つステンレス製の耐圧容器に収容し
て密封し、180℃のドライヤー内で1時間、2時間、
3時間加熱した。その後、そのままの状態でドライヤー
から取り出し自然冷却した。50℃になった時点で耐圧
容器から杉材を取り出した。 〔比較例2〕実施例2と同じ松材を用い、かつ、加熱を
180℃で1時間、2時間、3時間とした以外は比較例
1と同様な処理を行った。
【0021】〔実施例3〕含水率8%、厚さ1.5cm、
幅10cm、長さ100cmのパーチクルボードを、該
パーチクルボードと実質的に同じ内法寸法を持つステン
レス製の耐圧容器に収容して密封し、180℃のドライ
ヤー内で20分、40分、60分加熱した。その後、そ
のままの状態でドライヤーから取り出し自然冷却した。
50℃になった時点で耐圧容器から杉材を取り出した。 〔比較例3〕施例3と同じパーチクルボードを用い、か
つ、加熱を180℃で20分、40分、60分とした以
外は比較例1と同様な処理を行った。
【0022】〔実施例4〕含水率15%、厚さ10c
m、幅10cm、長さ100cmの杉材を、該杉材と実
質的に同じ内法寸法を持つポリカーボネート製の耐圧容
器に収容して密封し、高周波照射設備内に、13.5MH
z、出力200V・8kwの条件で2分間、4分間、6
分間加熱した。その後、そのままの状態でドライヤーか
ら取り出し自然冷却した。50℃になった時点で耐圧容
器から杉材を取り出した。
【0023】〔比較例4〕 上記の同じ杉材を用い、高周波加熱可能な熱盤加熱を行
う以外は、比較例1と同様な処理を行った。ただし、高
周波加熱の条件は実施例4と同じとした。実施例1〜
4、および比較例1〜4の試験体の中央の部分から15
×15×15mmの試験片を取り出し、次式により飽水
抗膨潤能(ASE)(25℃減圧吸水1時間、その後2
3時間浸漬)を測定した。
【0024】 表1にその結果を示す。
【0025】
【表1】
【0026】〔考 察〕表1から明らかなように、すべ
て高いASE値を示しており、かつ、平板プレスにより
処理する場合と比較して短時間の処理で同等のASE値
を得ることができることがわかる。これは、従来の熱盤
によるものは上下の2面からの加熱であるのに対して本
発明においては6面すなわち全周面からの加熱であり木
質材の処理に熱エネルギーが有効に利用されている結果
であると解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による木質材の寸法安定化方法に用いる
耐圧容器の一例を示す斜視図。
【図2】図1のII-II 線による断面図。
【図3】本発明による木質材の寸法安定化方法に用いる
耐圧容器の他の例を示す断面図。
【図4】本発明による木質材の寸法安定化方法に用いる
耐圧容器のさらに他の例を示す断面による斜視図。
【符号の説明】
W…木質材、A…耐圧容器、B…定板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B27K 5/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 処理すべき木質材の外形寸法と実質的に
    等しい内径寸法を持つ耐圧容器内に処理すべき木質材を
    密封状態に収容し、その状態で該木質材を加熱して木質
    材の内部水分を高圧水蒸気化して木質材を処理すること
    を特徴とする木質材の寸法安定化方法。
  2. 【請求項2】 内部が仕切り壁により区画されている耐
    圧容器を用いることを特徴とする請求項1記載の木質材
    の寸法安定化方法。
  3. 【請求項3】 複数枚の木質材を定板を介在させて積層
    した状態で耐圧容器内に収容することを特徴とする請求
    項1記載の木質材の寸法安定化方法。
  4. 【請求項4】 耐圧容器の前記壁面の所要箇所にはパッ
    キン材料が取り付けられていることを特徴とする請求項
    1または2記載の木質材の寸法安定化方法。
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