JP3135777B2 - 流電陽極方式定電圧型自動電気防食法 - Google Patents

流電陽極方式定電圧型自動電気防食法

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JP3135777B2 JP06023511A JP2351194A JP3135777B2 JP 3135777 B2 JP3135777 B2 JP 3135777B2 JP 06023511 A JP06023511 A JP 06023511A JP 2351194 A JP2351194 A JP 2351194A JP 3135777 B2 JP3135777 B2 JP 3135777B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流電陽極方式のカソー
ド防食法において、被防食体の電位をその防食電位と最
卑安全電位との間で一定に保持し、完全防食すると共に
過防食を防止する電気防食法、およびそのための簡単な
定電圧自動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電気防食法は、海水中、河川水中や地中
等に設置された金属構造物や埋設管、あるいはコンクリ
ート中の鉄筋、さらに工業用水や有機・無機の液体に接
する化学装置等の腐食を防止する方法として利用され、
港湾、橋梁等のインフラストラクチャや各分野の産業で
の防食に多大の効果を挙げている。
【0003】電気防食法の適用形態としての流電陽極方
式では、マグネシウム合金、アルミニウム合金あるいは
亜鉛合金等の主としての卑電位の合金の流電陽極と被防
食体とが直結されて陽極から被防食体に防食電流が供給
されている。従って、陽極の接地抵抗(接水抵抗)、環
境の電気抵抗の大きさ、電流分布の如何によりその範囲
は異なるが、陽極に近接した部分の被防食体の電位は陽
極の電位まで分極され得る。上記の合金等のように−1
V(電位は、すべて飽和甘こう電極基準で表示する)以
下の卑電位の陽極電位を持つ流電陽極のときには、被防
食体は使用する陽極の種類に応じて−1.5〜−1V近
傍の卑電位まで分極するので、被防食体の表面では水素
発生反応が進行し、水素ガスが発生しその一部は被防食
体に吸収される。普通鋼等ではこの水素吸収は大きな障
害にならないが、降伏強度が高く割れを生じ易い高張力
鋼や水素化物の生成による強度低下を来たすチタンのよ
うな材料では、いわゆる水素脆化を起こし、材料本来の
強度が期待できなくなり、割れや破断のような重大な故
障に繋がれる恐れが大きい。一方、塗装した構造物のと
きには電位の過大な卑化に起因するアルカリの生成によ
る塗膜の剥離が生じる。
【0004】水素発生反応は電位が卑になるほど激しく
なるので、これらの材料について水素脆化と材料の電位
との関係が調べられ、水素脆化を生じさせない限界電位
が求められている。その結果によれば、高張力鋼では−
1.0〜−0.95V、チタンでは−0.7Vが限界電
位とされ、その他、種々の材料について限界電位の値が
与えられている。
【0005】また、ステンレス鋼は塩化物溶液中では構
造的な隙間や、錆びの下等は激しい隙間腐食が生じるこ
とがある。これを防止するためには−0、35〜−0、
5Vの範囲の電位領域に保持するカソード防食が有効で
あることはよく知られている。
【0006】既述のように、流電陽極を被防食体に直接
溶接する現在の技術では、被防食体は陽極の電位まで分
極され限界電位を超える。上記の限界電位を超えないよ
うにするには、それぞれの材料の限界電位に近い電位を
持つ陽極を用いればよい。しかし、各種材料の個々の限
界電位は、約−1Vから−0.5V以上に及ぶ貴な電位
領域にわたっており、この広い電位領域でこれらに対応
するすべての電位をそれぞれ固有の陽極電位として発生
できる流電陽極を開発することは殆ど不可能である。現
在、アルミニウム合金陽極等の卑電位の流電陽極が主
で、貴電位の陽極としては、鉄−ニッケル電極やMn、
Ti等を含む特殊なアルミニウム系陽極が開発され、−
0.7V程度の電位を保持できるものの、陽極効率がか
なり低下する欠点がある。
【0007】卑電位の流電陽極を用いても被防食体の電
位を貴な値に保つ一手段として、流電陽極と被防食体と
の間を固定抵抗で結び、そこを流れる防食電流による電
圧降下を利用して貴電位に保持する方法は、防食電流が
時間的に変化するので電位の一定の保持は期待できず、
防食の不足、限界電位の超過等の不都合を生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら従来
技術の課題を解消し、流電陽極方式のカソード防食にお
いて、−1Vより卑な電位を有する陽極を使用しながら
も、−1V近傍より貴な値の安全限界電位に被防食体の
電位を保持することができる簡便かつ確実な防食方法お
よびそのための装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的に
沿って鋭意検討の結果、安定した高い電流効率で防食電
流を発生できるが、陽極電位が卑な電位であるので、そ
れと直結された被防食体の表面上で著しい水素発生を生
じる危険性のあるマグネシウム合金、アルミニウム合金
や亜鉛合金製の現用の流電陽極をその本来の卑な陽極電
位のままで使用し、従って高い電流効率を維持する条件
を保ちながら、被防食体はそれぞれについての安全限界
電位を超えないので、水素吸収や塗膜のアルカリ剥離等
の障害を生じることなく、安全に完全防食される方法を
確立し、そのために必要な極めて安定・簡易かつ安価な
装置を開発するに至った。
【0010】すなわち、本発明の流電陽極方式定電圧型
自動電気防食法は、流電陽極と被防食体をパワートラン
ジスタのエミッタとコレクタまたはソースとドレインに
接続し、あるいは逆に組合わせで接続し、そのベース電
流またはゲート電圧を調節することにより、該トランジ
スタのコレクタ・エミッタ間またはドレイン・ソース間
の電圧を一定に保持し、該被防食体の電位を該流電陽極
の電位より該電圧分だけ貴に維持することを特徴とす
る。
【0011】また、本発明の定電位自動制御式電気防食
装置は、流電陽極と被防食体の2電極よりなり、該流電
陽極と該被防食体に接続されるパワートランジスタ、被
防食体の目的とする電位の値を設定する電位設定部、お
よび測定される該被防食体の電位と設定電圧の差電圧を
増幅し、もって該トランジスタを制御する電圧増幅器を
有し、該電圧増幅器および電位設定部を駆動し、該トラ
ンジスタとは異なる電源を備えることを特徴とする。
【0012】以下、本発明の定電圧自動制御式電気防食
法について図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】図1は、本発明に係る電気防食法の一例を
模試的に示した説明図である。同図において、1は完全
防食のための防食電位より卑な値であるが水素脆化等を
生じさせない限界の電位の値が確認されている材料の被
防食体、2はアルミニウム合金陽極等の陽極電位が約−
1V以下の流電陽極、3は被防食体1と流電陽極2が置
かれる例えば海水等の環境を表わす。4は電流制御のた
めのパワートランジスタであり、5は演算増幅器のよう
な電圧増幅器を示す。6はトランジスタのコレクタ・エ
ミッタ間の電圧、すなわち、被防食体1、流電陽極2間
に与えられる電圧(以下、この電圧を調節電圧と称す
る)を定めるための調節電圧部である。7は外界よりの
衝撃電圧から電子回路を保護する入力保護アレスタであ
る。
【0014】以下、例えば海水中において、被防食体と
して高張力鋼、流電陽極としてはアルミニウム系陽極
(陽極電位:−1.1V)を用いる例で、図1に示す電
気防食法の内容を説明する。
【0015】海水3中で流電陽極2からの防食電流は被
防食体1に流入し、外部回路で被防食体1から流電陽極
に戻るが、外部回路にはトランジスタのコレクタ・エミ
ッタ間の内部抵抗が介在するので電圧降下の結果、コレ
クタ・エミッタ間に電圧Ecが発生する。Ecは、調節
電圧設定部6で設定された設定電圧Esと比較され、そ
の偏差Es−Ecは電圧増幅器5で増幅され、その出力
はトランジスタ4にフィードバックされ、そのベース電
流を変化させ、トランジスタ4の内部抵抗を調節してE
cがEsに等しくなるように自動制御する。
【0016】ここで流電陽極2の通電時の陽極電位をE
aとし、被防食体1の通電時の分極電位をEp、防食電
流をIp、海水3の電気抵抗(環境抵抗)をRr、トラ
ンジスタ4の内部抵抗をRtとすれば、これらの電圧、
電流の関係は(1)式で示される。
【0017】
【数1】
【0018】フィードバック系の平衡条件では、Ip・
Rt=Ec=Esであるので、被防食体1の電位は、
【数2】
【0019】海水中のように、Rrが小さくIp・Rr
が無視できるときは、被防食体1の電位は陽極電位Ea
よりEsだけ貴な電位に一定に保持されることを(2)
式は示している。
【0020】種々の材料の安全最卑電位をEsaとし、
【数3】 になるように調節電圧設定部6でEsを設定すると、被
防食体1の電位は、防食電流が如何に変動しようとも安
全最卑電位に自動制御される。
【0021】例えば、高張力鋼およびチタンの水素脆化
防止の安全限界電位がそれぞれ−0.95V、−0.7
Vであり、一方、オーステナイトステンレス鋼の隙間腐
食防止電位が−0.5Vであることが分かっていると
き、流電陽極2として陽極電位が−1.1Vのアルミニ
ウム合金陽極を使用するとすれば、設定電圧Esの値と
しては、高張力鋼については0.15V、チタンの場合
は0.4V、ステンレス鋼のときには0.6Vと設定す
れば、各種材料はそれぞれ上記の安全限界電位に保持さ
れる。このようにして、卑な電位の1種類の流電陽極を
使用して安全限界電位が異なる複数の材料についてそれ
ぞれ安全にカソード防食できるので、被防食体の材料に
合わせて陽極電位の異なる流電陽極をわざわざ開発する
必要はない。この自動電気防食法で被防食体の電位が卑
になり過ぎないように制御されているこの間において、
陽極は本来の陽極電位で使用されているので、陽極効率
の低下はなく、通常の高い陽極効率で効果的に防食が可
能となる。
【0022】図1に記載の電気防食法は、被防食体1と
流電陽極2の間をトランジスタ4の内部抵抗で接続し、
そこに生じる調節電圧を一定に制御してその電圧分だけ
被防食体1の電位を流電陽極2の電位より貴に保持する
ものであるので、これは安定な陽極電位を持つ流電陽極
を基準電極として用いる定電位電解であるが、同時に流
電陽極を防食電流供給源の対極として作用させるので、
対極と基準電極の2つの機能を流電陽極に兼ねさせる、
いわゆる、2電極方式の定電位電解と言える。図1にお
いて、トランジスタ4に電界効果型トランジスタを使用
するときには、流電陽極2と被防食体1はトランジスタ
4のソースとドレインに接続し、ゲート電圧を調節して
ソース・ドレイン間の電圧を制御することとなる。ま
た、同図では、N型トランジスタを例として回路の機能
を説明したが、P型のバイポーラトランジスタまたはP
チャンネル型の電界効果型トランジスタを用いた場合で
も同様に調節電圧の制御ができる。
【0023】この電気防食法のもう一つの特徴は、電流
制御に使われるトランジスタ4の電流は流電陽極2から
供給されるので、防食電流の大小に関係なく出力用のト
ランジスタのための外部電源は一切必要なく、ベース電
流(あるいはゲート電圧)を調節する偏差増幅回路を駆
動するための極めて小容量の電源が必要となるのみで、
小電力でよいので電池駆動でも長年月にわたりこの電気
防食系を作動させ、電圧制御が可能である。このように
電源が小容量・長寿命で回路の部品の数も少ないので、
極めて小型の装置にでき、水密構造にして土中または水
中にある流電陽極に密接して取り付けることが可能で、
これまで外部整流電源を用いる自動制御式の電気防食法
で故障の主因であった長いケーブルが全く不要となり、
事故のない安全な自動制御式の電気防食法が可能とな
る。
【0024】図2は、本発明に係る電気防食法におい
て、さらに改良された第2の例を示すものである。すな
わち、図2は図1の回路においてトランジスタ4のコレ
クタ・エミッタ間に分流用の固定抵抗8を並列に接続し
たものである。
【0025】この電気防食法では、電子回路を用いるの
で、入力保護アレスタ等で回路の保護に注意してあって
も、野外で作動中に落雷や漏洩等の大きなサージ電流で
トランジスタ等が破壊する恐れがないといえない。この
破壊で被防食体1と流電陽極2との接続が断たれること
になると、防食作用が停止する。これを防止する機能を
有するのが図2に示された電気防食法である。すなわ
ち、この防食系に流れるであろうと予想される防食電流
の定常状態での最小電流で設定電圧Esに等しい電圧降
下を生じるような値の固定抵抗8をトランジスタ4と並
列に被防食体1と流電陽極2間に接続することにより、
もしトランジスタ4が破壊・断線しても最小限の防食電
流は確保できるようにするものである。また、固定抵抗
8がトランジスタ4と並列になるので、サージが加わっ
たとき、トランジスタ4内を流れるサージ電流をバイパ
スしてトランジスタ4の保護にも効果がある。防食電流
は通常被防食体1のエレクトロコーテイング等の進行に
より初期電流の約50%程度まで低下するので、これを
目安に抵抗値が決定される。このようにして防食を開始
すると、最小電流以上に流れる初期の大きな電流は自動
的にトランジスタ4内を経由してバイパスされ、調節電
圧が常に一定になるように制御される。時間の経過と共
に、トランジスタ4内のバイパス電流は次第に減少し、
定常状態では固定抵抗8のみでほぼ必要な電流が供給さ
れる。この時期以前にトランジスタ関連の故障があって
も、上記の最低電流は供給され、一定の防食効果は確保
される。定常状態到達後は、パワートランジスタ4を通
過する電流は殆どゼロなので、装置の事故は防食状態に
は殆ど影響しない。図2の電気防食法においても、図1
と同様に、トランジスタ4がバイポーラ型でも電界効果
型でも、また、N型でもP型でも効果は全く変わりな
い。
【0026】流電陽極2の電流制御用のパワートランジ
スタ4の電源は流電陽極2自体が分担するが、電圧増幅
器5を含む偏差制御回路を駆動するため小容量の別個の
電源が必要となる。例えば、マイクロパワーの演算増幅
器と高出力の乾電池を用いると10年間の連続作動が可
能であり、この間に電池の交換は必要ない。しかし、保
守の簡便性のため流電陽極には30〜50年の使用が可
能な大容量のものもあるので、そのためには偏差制御回
路の電源の一層の長寿命化が望まれる。このため、この
電気防食方法の構成要素である流電陽極が“電気の塊”
であることに着目し、この流電陽極を制御対象とすると
同時に偏差増幅回路の電源とする方法を見出した。
【0027】図3は本発明の防食法の第3の例を説明す
るものである。すなわち、この電気防食法において被防
食体1の他に補助電極(陰極)101を流電陽極2の近
傍の環境3中に設置し、流電陽極2と補助電極101と
の間に流れる電流をスイッチング方式のDC・DCコン
バータ102で交流に変換後、昇圧・整流して電圧増幅
器5を駆動するに十分な電圧と電流容量を有する直流電
源をこの自動制御式の電気防食系に組み込んだものであ
る。補助電極101としては流電陽極2との間の電流が
大きく取れる有効電位差の大きい銅、チタン、ステンレ
ス鋼等が望ましい。このようにして商用交流は乾電池も
必要としない(但し、コンバータ102をスタートさせ
安定に連続作動させるためにバックアップ用として充電
式の小容量の二次電池104は必要である)。従って、
外界との接続の必要がなく全く独立して流電陽極2が消
耗しつくすまで電気防食はメンテナンスフリーに実施で
きる。
【0028】図4は上述の補助電極101を必要としな
いさらに第4の例であって、電気防食系内を流れる防食
電流を利用して電圧増幅器等を駆動する電源を得ようと
する効率のよい方法を説明するものであり、図2に示す
電気防食法において適用されるものである。すなわち、
図2の電気防食系では、出力トランジスタ4と並列に分
流用の固定抵抗8があり、流電陽極2と被防食体1との
間に流れる初期防食電流の約50%の電流が常時流れて
いるので、この電流を利用しスイッチング方式で駆動用
電源を得ようとするものである。つまり、図4に示すよ
うに、図2の分流用の固定抵抗8の代わりに一次巻線の
直流抵抗が固定抵抗8の抵抗値と同じ値である昇圧用ト
ランス81を用い、パワートランジスタ4に高周波交流
も入力し、トランジスタ4をスイッチングすることによ
り、トランス81の二次側に交流を発生させ、それを整
流して電圧増幅器5や交流発振器61等の電源とするも
のである。バックアップ用電池104はこの際も必要で
ある。トランスの一次巻線の直流抵抗の値は、その両端
の調節電圧の値と分流用の電流の大きさによって定ま
る。
【0029】
【実施例】以下、実施例等に基づいて本発明を具体的に
説明する。
【0030】実施例1 図5の試験装置は、図1の説明図に基づいて設計したも
ので、出力トランジスタ4にはN型バイポーラトランジ
スタを用いた。調節電圧設定部における固定抵抗と可変
抵抗は電圧増幅器の電源電圧を分圧して調節電圧の基準
を設定した。7は回路保護ダイオードであり、定電流装
置9、電流計10および電圧計11は、偏差制御装置の
電気的特性を評価するとき、装置に電流を与えるために
臨時的に付加されたものである。図5の試験装置におい
て、調節電圧設定部6で100mVを設定し、電圧増幅
器5を作動させ、次いで、定電流装置9から0〜1Aの
範囲の種々の値の電流を接続端子12および12′の間
に流し、その際の電流計10および電圧計11の値を記
録したものが図6である。電流が0Aのとき電圧は当然
0mVであるが、電流を流し始めると電圧は直ちに10
0mVになった。電流をさらに増加させても、電圧はほ
ぼ100mVで殆ど変化しなかった。この結果、この定
電圧自動制御回路は設定した調節電圧分だけ被防食体の
電位を流電陽極の電位より貴な値に維持できることが示
された。
【0031】そこで、海水を入れたビーカーに高張力鋼
試験片と−1.1Vの陽極電位を持つアルミニウム合金
陽極を浸漬し、試験装置の接続端子12に試験片、接続
端子12′に流電陽極をそれぞれ接続した。試験装置の
調節電圧設定部6では150mVに設定した。高張力鋼
の電位は液中に挿入した飽和甘こう電極で測定した。そ
の電位と接続端子12、12′間に流れる防食電流の経
時変化を図7にし示す。防食電流は初期には大きく10
mAを超えたが、急速に減少し、200時間以降は2m
A程度に減少し、さらに漸減する傾向を示した。一方、
高張力鋼の電位は、この間ほぼー950mVの一定値を
維持した。なお、陽極電位も−1100mVの一定値を
保った。すなわち、この電圧制御装置を用いれば、高張
力鋼の電気防食系において、水素脆化の危険性のない防
食が可能であることが示された。
【0032】実施例2 図8の装置は、図2に示される電気防食法の抵抗並列式
の説明図の回路を具体化したもので、出力トランジスタ
4′にはNチャンネル電界効果型トランジスタを用い、
並列抵抗8には1Ωの固定抵抗を用いた。調節電圧設定
部6では100mVに設定し、性能試験として、定電流
装置9から最大1Aまでの電流を流した。そのときの電
流・電圧の関係は、図9に見られるように、0〜100
mAの間では、電流に比例して電圧は0から100mV
まで直線的に増加した。100mA以上の電流範囲では
電圧は殆ど変化なくほぼ100mVを保持した。固定抵
抗8は1Ωであり、設定した調節電圧は100mVであ
るので、100mA以上の電流範囲の電圧の自動制御が
可能となることが示された。
【0033】次に、この抵抗並列式の電圧自動制御装置
を用い実施例1と同様の電気防食のビーカー試験を行っ
た。定常最低電流を1mAと予想し、並列固定抵抗は1
50Ωとし、調節電圧設定部6では150mVに設定し
た。試験中の高張力鋼試験片の電位と防食電流の時間経
過を図10に示す。最初、電流は10mA以上も流れた
が、急速に減少し2mA程度緩やかに減少する傾向を示
した。この間、電流は、設定した1mAの定常最低電流
を上回っているので、本装置は単位調節機能を発揮し、
試験片電位はほぼ−950mVの一定値に保持され、ま
た、発錆もなく、高張力鋼の水素脆化を防止しながら電
気防食できることが示された。
【0034】実施例3 電位の偏差制御回路の電源の長寿命化を計るため、流電
陽極のエネルギーを利用する自給式の電源を構築する2
方法について試験した。
【0035】海水中において、ステンレス鋼板(図3に
示す補助陰極101に相当する)とアルミニウム合金流
電陽極2間にフライバック方式のスイッチング電源を接
続した。両極間を流れる電流はこのDC・DCコンバー
タにより約9Vの直流に変換することができ、図5の試
験回路における偏差制御回路の電圧増幅器を長時間にわ
たり安定に作動させた。
【0036】次に、図4に示す分流回路の電流を利用す
る方法を試験した。図8の試験回路において、固定抵抗
8に代わって一次巻線の直流抵抗が0.8Ωのトランス
を接続し、二次側には整流・平滑回路を付加した。直流
の設定電圧は400mVとし、その設定電圧に20kH
zの矩形波交流発振回路からの交流電圧を重畳し、この
複合電圧を設定電圧として電圧増幅器6に与えた。定電
流装置9から1Aの電流を加え、すなわち、トランスに
は500mA流した。トランスの二次側には約9Vの電
圧が得られ、これを電源として電圧増幅器を作動させる
ことができた。
【0037】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明に係る電
気防食法によって、電流効率のよい現用のマグネシウム
合金、アルミニウム合金あるいは亜鉛合金等の極めて卑
な電位を持つ流電陽極と直結すると卑電位になり過ぎて
水素脆化を生じる高張力鋼やチタン、あるいは活性/不
動態の限界電位を超えるステンレス鋼等に対する流電陽
極方式カソード防食において、本発明に係る定電圧自動
制御装置を用いることにより、電位の過大な卑化を防止
し、それぞれの材料に特有な安全限界電位に保持でき、
過防食による障害なく完全防食を可能ならしめることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電気防食法の第1の例を示す説明
図。
【図2】 本発明の電気防食法の第2の例を示す説明
図。
【図3】 本発明の電気防食法の第3の例を示す説明
図。
【図4】 本発明の電気防食法の第4の例を示す説明
図。
【図5】 実施例1で用いた定電圧自動制御装置の回路
例。
【図6】 実施例1における電流と電圧の関係を示すグ
ラフ。
【図7】 実施例1における電流と電位の経時変化を示
すグラフ。
【図8】 実施例2で用いた定電圧自動制御装置の回路
例。
【図9】 実施例2における電流と電圧の関係を示すグ
ラフ。
【図10】 実施例2における電流と電位の経時変化を
示すグラフ。
【符号の説明】
1:被防食体、2:流電陽極、3:環境(海水)、4:
バイポーラ型トランジスタ、4′:電界効果型トランジ
スタ、5:電圧増幅器、6:調節電圧設定部、7:入力
保護アレスタ、8:並列固定抵抗、9:定電流装置、1
0:電流計、11:電圧計、12、12′:接続端子、
61:交流発振器、71:トランス、101:補助陰
極、102:DC・DCコンバータ、103:整流・平
滑回路、104:バックアップ電池、Ep:被防食体電
位、Ea:陽極電位、Ec:調節電圧、Es:(直流)
設定電圧、Eac:矩形波設定電圧。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流電陽極と被防食体をパワートランジス
    タのエミッタとコレクタまたはソースとドレインに接続
    し、あるいは逆に組合わせで接続し、そのベース電流ま
    たはゲート電圧を調節することにより、該トランジスタ
    のコレクタ・エミッタ間またはドレイン・ソース間の電
    圧を一定に保持し、該被防食体の電位を該流電陽極の電
    位より該電圧分だけ貴に維持することを特徴とする流電
    陽極方式定電圧型自動電気防食法。
  2. 【請求項2】 前記トランジスタのコレクタ・エミッタ
    間またはドレイン・ソース間に固定抵抗を並列に接続す
    る請求項1に記載の電気防食法。
  3. 【請求項3】 前記トランジスタとは別個の電源により
    駆動される電圧増幅器と調節電圧設定部を有し、該調節
    電圧設定部で設定される電圧と該トランジスタのコレク
    タ・エミッタ間またはドレイン・ソース間の電圧との偏
    差を増幅し、該トランジスタのベース電流あるいはゲー
    ト電圧を制御し、該トランジスタの両端の電圧を設定電
    圧に等しくする請求項1または2に記載の電気防食法。
  4. 【請求項4】 前記流電陽極とその近傍に設けた補助陰
    極とにスイッチング方式のDC・DCコンパータを接続
    し、該流電陽極と該補助陰極との間を流れる電流を交流
    に変換後昇圧・整流した直流電源をもって、該トランジ
    スタを制御する電圧増幅器を駆動する請求項3に記載の
    電気防食方法。
  5. 【請求項5】 前記トランジスタと並列に昇圧比を有す
    るトランスの一次コイルを接続し、調節電圧設定部で設
    定される直流電圧に交流発振器の交流電圧を加え、この
    複合電圧と該トランジスタの両端の電圧との偏差を電圧
    増幅器で増幅し、もって該トランジスタに交流電流を発
    生させ、トランスの二次側コイルに生じる交流電流を整
    流・平滑して該電圧増幅器、該調節電圧設定部ならびに
    該交流発振器の電源とする請求項3に記載の電気防食
    法。
  6. 【請求項6】 流電陽極と被防食体の2電極よりなり、
    該流電陽極と該被防食体に接続されるパワートランジス
    タ、被防食体の目的とする電位の値を設定する電位設定
    部、および測定される該被防食体の電位と設定電圧の差
    電圧を増幅し、もって該トランジスタを制御する電圧増
    幅器を有し、該電圧増幅器および電位設定部を駆動し、
    該トランジスタとは異なる電源を備えることを特徴とす
    る定電位自動制御式電気防食装置。
  7. 【請求項7】 前記トランジスタのコレクタ・エミッタ
    間またはドレイン・ソース間に固定抵抗を並列に接続す
    る請求項6に記載の電気防食装置。
  8. 【請求項8】 前記電圧増幅器および該電位設定部の駆
    動電源が、流電陽極と該流電陽極の近傍に設けられた補
    助陰極、あるいは該流電陽極と該被防食体とに接続され
    るスイッチング方式のDC・DCコンバータにより増圧
    された直流電源である請求項6に記載の電気防食装置。
  9. 【請求項9】 前記トランジスタと並列に昇圧比を有す
    るトランスの一次コイルを有し、かつ交流電圧を発する
    交流発振器を備える請求項6に記載の電気防食装置。
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