JP3127993B2 - 2サイクルv型エンジンのクランク軸支持構造 - Google Patents

2サイクルv型エンジンのクランク軸支持構造

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JP3127993B2 JP02023572A JP2357290A JP3127993B2 JP 3127993 B2 JP3127993 B2 JP 3127993B2 JP 02023572 A JP02023572 A JP 02023572A JP 2357290 A JP2357290 A JP 2357290A JP 3127993 B2 JP3127993 B2 JP 3127993B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば自動二輪車に採用される2サイクル
V型エンジンのクランク軸支持構造に関し、特にクラン
ク軸の支持強度を確保しながらエンジン幅を縮小できる
ようにしたクランク軸軸受の配置構造の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車に採用される2サイクル2気筒エンジンの
クランク軸支持構造としては、クランク軸の左,右端部
を左,右軸受で軸支し、左,右気筒間部分を中央軸受で
軸支するのが一般的である。 そして2サイクルエンジンの場合、左,右のクランク
室間部分を圧力の漏れが無いようシールする必要があ
る。このシールを確保できるようにしたクランク軸支持
構造の一例として、従来例えば特開昭61−283716号公報
に記載されているように、クランク軸の左,右クランク
室間部分に左,右一対の中央軸受を設け、該両中央軸受
間にシール部材を配設した構造がある。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
上記従来構造のクランク軸支持構造の場合、左,右一
対の中央軸受をシール部材の配置スペースを開けて配置
する構造であるから必然的にクランク軸が長くなり、エ
ンジン幅が大きくなる問題がある。 ここで上記エンジン幅の拡大を回避するために、上記
中央軸受を1個だけ配置し、これの左,右何れかにシー
ル部材を配置することが考えられる。しかしこのように
した場合、上記中央軸受はシール部材のない側に偏位す
ることとなり、従って上記クランク軸の中央部分では、
シール部材側のオーバーハング量が大きくなり、該側の
支持強度が低下する懸念がある。
【0004】 また、上記公報に記載のクランクケースは上,下に分
割式となっており、エンジンを冷却するための冷却水を
供給する導入孔は、クランクケースの璧を利用すること
なく別個に設けられているため、その成形及びシールが
面倒であるという問題がある。
【0005】 本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、
クランク軸の支持強度を確保しながらクランク軸長を短
くしてエンジン幅を短縮できるようにし、しかもクラン
クケースの壁内に設けた冷却水の導入孔の成形が容易で
あるとともにシールが確実にできる2サイクルV型エン
ジンのクランク軸支持構造を提供することを目的として
いる。
【0006】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、前,後ケースからなる前後2分割式クラン
クケースの合面間にクランク軸を配設し、前ケースの前
壁に上側気筒,下側気筒をクランク軸方向に見てV字状
をなすように配置し、上記クランク軸の隣接するクラン
ク室間部分を中央軸受で支持した2サイクルV型エンジ
ンのクランク軸支持構造において、上記前,後ケースの
合面部分でクランク軸より下側に、上記下側気筒に冷却
水を供給する導入孔をクランク軸方向に延びるように形
成し、上記中央軸受を内輪,外輪間に回転体を配置する
とともに該回転体の両側をシールしてなる密封型軸受と
し、該中央軸受を隣接する気筒間の中心に配置し、隣接
する気筒間における上記前,後ケースの上,下の締め付
けボルトのクランク軸方向位置を上記中央軸受の配置位
置と一致させるとともにクランク軸直角方向位置を内側
アーム間とし、かつ下側の締め付けボルトを上記冷却水
の導入孔のクランク室側縁部に位置させたことを特徴と
している。
【0007】
【作用】
本発明に係る2サイクルV型エンジンのクランク軸支
持構造によれば、中央軸受として両端がシールされた密
封型軸受を1つ配置したので、クランク軸の隣接するア
ーム部間に、上記密封型軸受の幅に等しいスペースを開
けるだけでよく、つまりそれだけクランク軸の長さが短
くて済み、隣接する気筒を近接させることができ、従っ
てそれだけエンジン幅が縮小される。 また密封型軸受としたので両気筒間の中心に軸受を配
置することができ、クランク軸の支持強度に偏りが生じ
ることはない。また、前,後ケースの合面部分でクラン
ク軸より下側に、下側気筒に冷却水を供給する導入孔を
クランク軸方向に延びるように形成したので、その成形
が容易である。さらに両気筒間部分における締結ボルト
を軸受と同じ位置で、かつ両内側クランクアーム間に、
さらに冷却水導入孔のクランク室側縁部に配置したの
で、該軸受部分の締結強度が向上するとともに導入孔部
分のシール性が向上する。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図について説明する。 第1図ないし第7図は本発明の一実施例による2サイ
クルV型エンジンのクランク軸支持構造を説明するため
の図であり、第1図は平面図、第2図はクランクケース
内の平面展開図、第3図は第5図のIII−III線断面図,
第4図は第5図のIV−IV線断面図、第5図はクランクア
ームの正面図、第6図(a),(b)はそれぞれ後ケー
ス,前ケースを合面側から見た図、第7図は該実施例構
造を採用した自動二輪車の左側面図である。なお、特記
なき限り車両に乗車した状態で説明する。
【0009】 図において、1は本実施例構造を備えた自動二輪車で
あり、該自動二輪車1の車体フレーム2はヘッドパイプ
2aに左,右一対の横断面矩形のメインフレーム2bの前端
を溶接固定し、該各メインフレーム2bを左,右に拡げな
がら後方斜め下方に延長し、該延長後端にリヤアームブ
ラケット2cを溶接固定するとともに、該両ブラケット2c
同士をクロスパイプで溶接接続した構造のものである。
【0010】 上記車体フレーム2のヘッドパイプ2aによって下端で
前輪3を軸支する前フォーク4が左右に操向自在に軸支
されており、上記リヤアームブラケット2cによって後端
で後輪5を軸支するリヤアーム6が上下に揺動自在に枢
支されている。なお、7は上記左,右のフレーム部材2
b,2b上を覆うように配置された燃料タンク、21はラジエ
ータである。
【0011】 上記車体フレーム2には水冷式2サイクルV型2気筒
のエンジンユニット8が懸架支持されている。このエン
ジンユニット8のクランクケース9は前,後ケース26,2
7からなり、該両ケース26,27の合面部分にクランク軸の
クランクアーム部が挿入される左,右のクランク室72a,
72bが形成されている。そして前ケース26の前璧の上部
左側に上側気筒10が、下部右側に下側気筒11が側面から
見てV字状をなすように配置接続されており、上記Vバ
ンクは90度をなし、かつ車両前方に向けて開いている。
上記上側気筒10の背面側、つまり上記クランクケース9
の上記Vバンクの外側部分に上側気化器14aが接続さ
れ、該気化器14aには上記左,右のメインフレーム2b間
に配置された上側エアクリーナ15が上側エアダクト17を
介して接続されている。
【0012】 また下側気筒11の背面側、つまり上記クランクケース
9のVバンク内部分に下側気化器14bが接続され、該気
化器14bにはエンジン右方に配置された下側エアクリー
ナ18が接続されている。
【0013】 さらにまた上記上側,下側気筒10,11の前側には上
側,下側排気管22a,22bが接続されている。
【0014】 上記クランクケース9の前,後ケース26,27の合面部
分にクランク軸28が、これの後側下方にメイン軸29が平
行に配設されている。このメイン軸29は左,右端部が玉
軸受36で軸支され、該両軸受36,36間には多数の変速歯
車37が装着されており、さらに右側突出部にはクラッチ
機構38が装着されている。このクラッチ機構38は、該メ
イン軸29に軸支されたアウタハウジング38aと該メイン
軸29に嵌合固着されたインナハウジング38bとの間に、
その外周縁がアウタハウジング38aに係止するアウタブ
レート38cとその内周縁がインナハウジング38bに係止す
るインナプレート38dとを交互に配置し、さらに該両プ
レートを押圧部材38eで圧接させた構造となっている。
また上記アウタハウジング38aには減速大歯車40が固着
されており、これは上記クランク軸28の右端に固着され
た減速小歯車35と噛合している。
【0015】 また上記メイン軸29内にはクラッチ操作機構39のプッ
シュロッド39aが進退自在に挿入されており、該プッシ
ュロッド39aの先端はポール39b,プッシュピン39cを介し
て上記押圧部材38eの軸心部分に当接している。また上
記プッシュロッド39aの後端には、プッシュレバー39eが
当接している。この上記プッシュレバー39eは上記後ケ
ース27に形成されたガイド部27a内を車両後方に延びて
おり、図示していないが、さらにこの延長端はアーム,
クラッチケーブルを介してクラッチレバーに連結されて
いる。
【0016】 また上記メイン軸29の下方には強制潤滑用オイルポン
プ45が配設されている。該ポンプ45のオイルポンプケー
ス46は上記クランクケース9の右壁に着脱可態に装着さ
れた外側ケース46aとこれの内側に固着された内側ケー
ス46bとからなる二分割構造になっている。そしてこの
オイルポンプケース46内に挿入されたオイルポンプ軸47
は上記メイン軸29と平行に配置されており、かつ上記ク
ラッチ機構38のアウタハウジング38aの軸方向投影面内
でかつ該メイン軸29の略真下に位置している。またこの
オイルポンプ軸47の外端に一体形成されたポンプ歯車48
は上記メイン軸29の減速大歯車40に固着されたポンプ駆
動歯車40aに噛合している。
【0017】 またこのオイルポンプ軸47には水ポンプ49の水ポンプ
軸50が同軸をなすように連結されている。該水ポンプ軸
50はクランクケース9の左壁側に延び、その左端は水ポ
ンプケース51内に挿入されている。この水ポンプケース
51はクランクケース9の後ケース27の左壁に一体形成さ
れた内ケース51aとこれに装着された外ケース51bとから
なる二分割構造のものであり、水ポンプ軸50のケース内
挿入端にプレード52が固着されている。
【0018】 この水ポンプ51から上記下側気筒11への冷却水は、第
6図(a),(b)に示すように、後ケース27の入口27
bから前,後ケース26,27の合面部分に形成された導入孔
26h,27cに流入し、前ケース26に形成された連通孔26iか
らシリンダの冷却ジャケット内に導入される。また上側
気筒10への冷却水は冷却ホース51cを介して供給され
る。
【0019】 また上記オイルポンプ軸47の後側にはキック軸53が該
オイルポンプ軸47と平行に、かつ上記アウタハウジング
38aの軸方向投影面より外側に位置するように配設され
ている。このキック軸53の外端部にはキックアーム53a
が固着され、内端部に装着されたリターンばね53bで元
の位置に回動付勢されている。またこのキック軸53の略
中央付近にはキック歯車53cが軸方向に摺動可能に装着
されており、該キック歯車53cはキック時には付勢ばね5
3dによって軸方向外側に移動して上記オイルポンプ45の
ポンプ歯車48に噛合するようになっている。
【0020】 そして上記クランク軸28は、左,右クランクアーム70
a,70b同士を連結ピン28cの圧入により連結してなる組立
式のものである。このクランク軸28の左,右アーム部70
a,70bには左,右コンロッド32a,32bによって上記上側,
下側気筒10,11内に挿入された上側,下側ピストン33a,3
3bが連結されており、また左側突出部にはフライホイル
マグネトー34が、右側突出部にはバランサ駆動歯車44,
及び上記減速小歯車35がそれぞれ装着固定されている。
【0021】 上記左クランクアーム70aは外側,内側アーム28a,67
を、右クランクアーム70bは外側,内側アーム28b,67を
それぞれ圧入によって組み立てたものである。上記左,
右の内側アーム67は、円盤状のアーム本体67aの外周縁
部にクランクピン67bを一体形成してなるものであり、
該アーム本体67aの中心部には上記連結ピン28cが圧入さ
れる連結孔67cが形成されている。またこのアーム本体6
7aの上記クランクピン67bと反対側の略半分領域を覆う
ようにウェイト68が固定ボルト68aで固着されている。
なお、67d,67eは肉抜き穴であり、肉抜き穴67eは栓部材
69a,69bで閉塞されている。
【0022】 また上記クランク軸28は上記左,右の外側アーム28a,
28bの軸部分が左,右玉軸受31a,31bで軸支され、連結ピ
ン28c部分が中央玉軸受31cで軸支されている。この中央
玉軸受31cは上記左,右クランクアーム70a,70b間の中
心、ひいては上記上側,下側気筒10,11の中心Cから同
一距離Lの位置に位置しており、かつ上記左,右クラン
クアーム70a,70b間寸法は該中央玉細受31cの幅に設定さ
れている。
【0023】 ここで上記中央玉軸受31cは、インナレース31d,アウ
タレース31e間に回転体である多数の鋼球31fを配設し、
該鋼球31fの両側をシールプレート31gで密封し、内部に
グリス等の潤滑剤を充填してなる密封型玉軸受である。
【0024】 さらにまた、上記前,後ケース26,27は、左,右玉軸
受31a,31b部分及び中央玉軸受31c部分がそれぞれ結合ボ
ルト71a〜71cで締結されており(第6図参照)、この中
央結合ボルト71cは、上記中央玉軸受31cと同じクランク
軸方向位置、つまり上側,下側気筒10,11の中心に配設
されている。
【0025】 なお、第1図において、42はバランサ軸であり、これ
は左,右端部が左,右軸受42a,42bで軸支されており、
両端にはバランサウェイト43a,43bが装着されている。
また該バランサ軸42に固着されたバランサ歯車43cは上
記クランク軸28に固着されたバランサ駆動歯車44に噛合
している。
【0026】 次に本実施例の作用効果について説明する。 本実施例に係るクランク軸支持構造では、クランク軸
28の中央部分を密封型の中央玉軸受31c1個で軸支したの
で、左,右クランクアーム70a,70b間寸法応は上記中央
玉軸受31cの幅だけあればよく、また隣接する気筒10,11
をV字状に配置したので、気筒間寸法を上記左,右クラ
ンクアーム70a,70b間寸法に合わせることができ、それ
だけクランク軸長さを短縮してエンジン幅を狭くするこ
とができる。
【0027】 また、上記中央玉軸受31cを、鋼球31fの左,右対称位
置にシールプレート31gを有する密封型のものとしたの
で、該中央玉軸受31cを両気筒10,11間の中心に配置する
ことができ、クランク軸の支持強度を左.右均等にで
き、全体としての支持強度を向上できる。ちなみに、1
つの玉軸受とシール部材とを設ける場合は、このシール
部材の幅だけ玉軸受の配置位置が偏位することとなり、
クランク軸の支持強度が左,右でアンバランスとなる。
また上記中央玉軸受31cと同じ位置に中央締結ボルト71c
を配置したので、この点からもクランク軸の支持強度を
向上できる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る2サイクルV型エンジンの
クランク軸支持構造によれば、前,後ケースの合面部分
でクランク軸より下側に、下側気筒に冷却水を供給する
導入孔をクランク軸方向に延びるように形成したので、
冷却水導入孔の成形が容易である。また、隣接する気筒
間の中心に1つの密封型中央軸受を配置するとともに、
該部分のクランクケース締結ボルトを該中央軸受と同じ
位置で両内側クランクアーム間に、さらに冷却水導入孔
のクランク室側縁部に位置するように配置したので、ク
ランク軸の支持強度及び冷却水導入孔のシール性を保持
しながらクランク軸長さを短縮してエンジン幅を狭小化
できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第7図は本発明の一実施例による2サイク
ルエンジンのクランク軸支持構造を説明するための図で
ある。
【第1図】 第1図は本発明に係るクランク軸支持構造の平面図であ
る。
【第2図】 第2図はクランクケース内の平面展開図である。
【第3図】 第3図は第5図のIII−III線断面図である。
【第4図】 第4図は第5図のIV−IV線断面図である。
【第5図】 第5図はクランクアームの正面図である。
【第6図】 第6図(a),第6図(b)はそれぞれ後ケース,前ケ
ースを合面側から見た図である。
【第7図】 第7図は該実施例エンジンを搭載した自動二輪車の左側
面図である。
【符号の説明】
8……2サイクルV型エンジン 9……クランクケース 10,11……上側,下側気筒(隣接する気筒) 26,27……前,後ケース 26h,27c……冷却水導入孔 28……クランク軸 31c……中央玉軸受 31f……回転体 67……内側アーム 71c……締め付けボルト 72a,72b……左,右のクランク室(隣接するクランク
室)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】前,後ケースからなる前後2分割式クラン
    クケースの合面間にクランク軸を配設し、前ケースの前
    壁に上側気筒,下側気筒をクランク軸方向に見てV字状
    をなすように配置し、上記クランク軸の隣接するクラン
    ク室間部分を中央軸受で支持した2サイクルV型エンジ
    ンのクランク軸支持構造において、上記前,後ケースの
    合面部分でクランク軸より下側に、上記下側気筒に冷却
    水を供給する導入孔をクランク軸方向に延びるように形
    成し、上記中央軸受を内輪,外輪間に回転体を配置する
    とともに該回転体の両側をシールしてなる密封型軸受と
    し、該中央軸受を隣接する気筒間の中心に配置し、隣接
    する気筒間における上記前,後ケースの上,下の締め付
    けボルトのクランク軸方向位置を上記中央軸受の配置位
    置と一致させるとともにクランク軸直角方向位置を内側
    アーム間とし、かつ下側の締め付けボルトを上記冷却水
    の導入孔のクランク室側縁部に位置させたことを特徴と
    する2サイクルV型エンジンのクランク軸支持構造。
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