JP3125235B2 - ヒト26sプロテアソーム - Google Patents

ヒト26sプロテアソーム

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JP3125235B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒト26Sプロテアソ
ームに関するものであり、さらに詳しくは、ATP依存
的にユビキチン結合蛋白質を分解する新規な細胞内多機
能プロテアーゼに関するものである。
【0002】
【従来の技術】細胞内で不必要あるいは異常な蛋白質が
分解される機構として、ユビキチン依存的分解経路が知
られている〔Rechsteiner,M.ed.,U
bi−quitin,Plenum,New York
(1988)〕。ユビキチンは分子量約8,500の蛋
白質で、真核生物の細胞に普遍的に存在し、種々の蛋白
質にイソペプチド結合し、分解のための目印となる。こ
のユビキチンによる蛋白質の修飾および分解にはATP
をエネルギー源として必要とすることがわっかている。
しかしながら、このユビキチン化した蛋白質を分解する
酵素の実体については明かになっていないことから、こ
のような、ユビキチン化した蛋白質を分解する機構が解
明できれば、細胞内における不必要あるいは異常な蛋白
質の動態を把握することが可能となり、さらに、各種病
態の診断、および治療法を確立する上で、きわめて有益
であり、その解明が、強く要請されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等
は、これまで、構造が解明されていないユビキチン化し
た蛋白質を分解する酵素の詳細を明かにすることを目標
とし、鋭意研究を積み重ねた結果、当該蛋白質を分解す
る酵素として、ヒト26Sプロテアソームを見い出すと
共に、これを精製し、単離することに成功して本発明を
完成するに至った。
【0004】すなわち、本発明は、ユビキチン化した蛋
白質を分解する新規な細胞内多機能プロテアーゼである
ヒト26Sプロテアソームを提供することを目的とする
ものである。また、本発明は、当該酵素を安定に製造す
る方法およびその酵素学的および物理学的性質も提供す
ることを目的とするものである。さらに、本発明は、ヒ
ト26Sプロテアソームの詳細を明らかにすることによ
り、当該酵素の機能とユビキチン化した蛋白質の分解機
構の解明に役立つのみならず、各種病態の診断、および
治療法として、役立つ新しい技術を提供することを目的
とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るための本発明の構成は、以下の(1)〜(2)からな
る。 (1)ヒト臓器、細胞の細胞質画分より、グリセリン、
2−メルカプトエタノールあるいはジチオスレイトー
ル、およびATPを添加した分離溶媒を用いて、ゲル濾
過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、イオン交換
カラム、およびグリセロール密度勾配遠心を用いた物理
化学的分離方法により精製して製造された、安定な状態
で精製されたヒト26Sプロテアソームであって、下記
の酵素学的および物理学的性質; (1) サクシニル−ロイシル−バリル−チロシン−4−メ
チルクマリル−7−アミドを分解する活性が10−20
nmoles/min/μg proteinである: (2) ユビキチンが結合した蛋白質をATP存在下で分解
する活性を有する:(3) ATPを分解する活性を有する:(4) 超遠心法で測定した沈降係数は26Sである:(5) 分子量は約2000kDa(キロダルトン)で、2
1ー31kDaの20Sプロテアソームと、それ以外に
分子量35ー110kDaの制御因子蛋白質群より構成
される:(6) 電子顕微鏡で観察した分子形状はダンベル状で、そ
の中央部にプロテアソームの構造が認められる:を有するヒト26Sプロテアソーム。
【0006】(2)前記(1)に記載の、ヒト臓器、細
胞の細胞質画分より安定な状態で精製されたヒト26S
プロテアソームを製造する方法であって、ヒト臓器、細
胞の細胞質画分からのヒト26Sプロテアソームを、
リセリン、2−メルカプトエタノールあるいはジチオス
レイトール、およびATPを添加した分離溶媒を用い
て、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、
イオン交換カラム、およびグリセロール密度勾配遠心を
用いた物理化学的分離方法により精製して、安定な状態
で精製されたヒト26Sプロテアソームを調製すること
を特徴とするヒト26Sプロテアソームの製造方法。
【0007】
【0008】続いて、本発明についてさらに詳細に説明
する。本発明者等は、これまで、構造が解明されていな
いユビキチン化した蛋白質を分解する酵素の詳細を明か
にすることを目標とし、鋭意研究を重ねてきた。その結
果、本発明により、当該酵素は、既に本発明者等が報告
した20Sプロテアソーム(多機能プロテアーゼ、分子
量約750kDa) 〔Tanaka K., et al., J.Mol. Bio
l., 203, 985ー996 (1988)]と未知機能をもった制御因子
が結合した巨大な複合体であることがわかり、本発明者
等は、26Sプロテアソーム(分子量約2、000kD
a)と命名した。
【0009】20Sプロテアソームは、同一分子内に複
数の触媒活性をもつ多成分複合体プロテアーゼであり、
また酸性、塩基性、中性のアミノ酸を分解する多機能性
プロテアーゼでもあるが、ユビキチン化した蛋白質を分
解する活性はなかった。従って、本発明26Sプロテア
ソームは、プロテアーゼとしての20Sプロテアソーム
が、制御因子と結合することにより、ユビキチン化した
蛋白質を識別して、分解するという新しい機能を獲得し
ていることがわかった。さらに、当該酵素の新しい機能
として、ATPase活性をもつことが明かになった。
【0010】本発明のヒト26Sプロテアソームは、こ
れを用いることにより、当該酵素の機能とユビキチン化
した蛋白質の分解機構の解明に役立つのみならず、各種
病態の診断および治療法として役立つ技術が提供され
る。26Sプロテアソームの主要な機能は、ユビキチン
が結合した蛋白質を分解する活性をもつことであるが、
最近、癌遺伝子や細胞周期関連遺伝子がこのユビキチン
依存性の分解経路で分解されることが報告され注目され
ている。これら蛋白質の例としては、cーmyc癌遺伝
子産物、p53癌抑制遺伝子産物〔Scheffn-er M., et
al., Cell, 63, 1129ー1136(1990)]、cdc2キナーゼ
調節蛋白質であるサイクリン〔Clotzer M., et al., Na
ture, 349, 132ー138 (1991)]などが挙げられる。従っ
て、本発明のヒト26Sプロテアソームを用いることに
より、癌化のメカニズムの解明や癌の治療および診断に
有用である。
【0011】また、アルツハイマー病患者の脳内にはユ
ビキチン化した蛋白質が異常蓄積しており、少なくと
も、この疾患の原因の一つに細胞内における蛋白質分解
系の異常があることが示唆された。従って、本発明のヒ
ト26Sプロテアソームを用いることにより、アルツハ
イマー病のメカニズムの解明やアルツハイマー病の治療
および診断に有用である。
【0012】このように、本発明の26Sプロテアソー
ムの使用あるいは測定法の開発は、これらの病態と本酵
素との関わりのヒトにおける治療法および/または診断
法の開発に有用である。かかる測定には、例えば通常の
免疫測定法が使用でき、本発明の26Sプロテアソーム
は該測定に使用する抗体の抗原として用いることができ
る。
【0013】本発明ヒト26Sプロテアソームの特性を
有する蛋白質を得る製造方法について、詳述すると、以
下の通りである。本発明ヒト26Sプロテアソームはヒ
トの種々の組織、器官、産生細胞から、より具体的に
は、ヒト腎臓、肝臓、心臓、脳、肺、胸腺、などの各種
臓器およびヒト肝癌細胞株、ヒト腎臓細胞株などの樹立
細胞株の細胞質画分より得ることができる。上記の細胞
質分画の調製は、通常の細胞質分画法によることができ
る。例えば、上記記載の細胞をホモジネートし、遠心分
離することにより、細胞膜、核、ミトコンドリア、リソ
ゾームおよびミクロソームの分画を除き、その上清を細
胞質分画として使用できる。
【0014】かかる細胞質画分からの本発明ヒト26S
プロテアソームの分離、精製は、当該酵素の酵素化学
的、物理化学的性質等を利用した各種の処理操作により
実施することができる。例えば、これらの分離、精製方
法としては、透析法、限外濾過法、ゲル濾過法などの主
として分子量の差を利用する方法、イオンクロマトグラ
フィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティク
ロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、
等電点電気泳動法などの等電点を利用する方法などが挙
げられる。
【0015】しかしながら、ATP依存的にユビキチン
結合蛋白質を分解する26Sプロテアソームの分離、精
製は既に本発明者等が報告した20Sプロテアソームに
比較して、非常に難しい。その理由として、(i)26
Sプロテアソームは、20Sプロテアソームに比較して
非常に不安定である、(ii)26Sプロテアソームの
活性を検出するためのアッセイ系の確立が容易でないこ
とによる。
【0016】かかる課題を解決するために、鋭意、検討
を重ねた結果、(i)の課題に対しては26S型プロテ
アソームを安定化させる条件として、グリセリン、2ー
メルカプトエタノールあるいはジチオスレイトール、そ
してATPを分離溶媒中に添加しておくことにより、安
定化させることができた。しかしながら、蛋白質の高次
構造に影響する処理、クロマトグラフィーを繰り返す
と、26Sプロテアソームは、その構成要素に不可逆的
に解離した。
【0017】従って、本発明者等は、主として、分子サ
イズの違いによる分離を基本戦略として、必要に応じて
最小限のクロマトグラフィー操作を行なう分離、精製
方法を発明するに至った。より、具体的には、超遠心法
により得た細胞質画分をバイオゲルカラム(バイオラッ
ド社製)、ハイドロキシアパタイトカラム、Qーセファ
ロースカラム、グリセロール密度勾配遠心により分離、
精製することにより、本発明26Sプロテアソームを精
製するに至った。
【0018】次に、(ii)の課題に対しては、26S
プロテアソームの鋭敏なアッセイ法を開発した。一つは
ユビキチン結合蛋白質分解活性の測定に供する基質蛋白
質を安定に確保することにより、酵素活性を定量的に測
定することが可能になった。即ち、本発明者等は、ユビ
キチン依存性蛋白質分解系のよい基質となる125I-リゾ
チームとユビキチンを効率よく結合させる方法を開発し
た[ Tamura T., et al., FEBS Lett., 292, 154ー158 (1
991)]。
【0019】また、本発明者等は、Suc-LLVY-MCA の分
解に対して、20Sプロテアソームは、不活性型である
が、26Sプロテアソームは活性型であることを見いだ
し、Suc-LLVY-MCA の分解活性を調べることにより、2
6Sプロテアソームを簡便に検知する方法を開発した。
従って、この簡便なアッセイ法と上記記載のより、定量
性の優れた125I-リゾチーム-ユビキチン結合蛋白質の分
解活性を調べることにより、26Sプロテアソーム精製
の指標にした。上記、分離、精製操作により、得られた
本発明ヒト26Sプロテアソームは、前記した酵素学的
および物理化学的性質より特定される。
【0020】なお、本発明および図面において試薬や分
析法などを略号で表示する場合、IUPAC-IUBに
よる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくも
のであり、その例を次に挙げる。
【0021】Suc-LLVY-MCA サクシニル−ロイシル
−ロイシル−バリル−チロシン−4−メチルクマリル−
7−アミド(Succinyl-Leucyl-Leucyl-Valyl-Tyrosine-
4-Methyl-Coumaryl-7-Amide) SDS ドデシル硫酸ナトリウム (Sodiumu
Dodecyl Sulphate) PAGE ポリアクリルアミド電気泳動 (Poly
acrylamide gel elect-rophoresis)
【0022】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】実施例1 ヒト26Sプロテアソームの精製におけるアッセイ法 (1)ユビキチン化蛋白質の分解活性125 I−リゾチームーユビキチン 結合体は、本発明者等
の方法〔Tamura T.,et al., FEBS Lett., 292, 154ー158
(1991)]に従い、125I−リゾチームとユビキチン結合
体をユビキチン結合酵素系(E1、E2、E3)を用い
て結合した。次いで、125I−リゾチームーユビキチン
結合体 (5、000-10、000 cpm) と26Sプロテアソームを
50mM TrisーHCL (pH7.5)、5mM MgCl2 、2mM ATP、1mM ジチ
オスレイトール中(最終体積で100mlになるようにする)
で、37℃、60ー120分間、インキュベートした。
125I−リゾチームとユビキチン結合体の分解を調べる
ために、575ml の10%トリフルオロ酢酸と125mlの4
%牛血清アルブミン(キャリア蛋白質)を添加して、酸
可溶性画分をγ-カウンターで測定した。
【0024】(2)合成基質SucーLLVYーMCA の分解活性 ペプチド合成基質であるSuc-LLVY-MCA(ペプチド研究所
製)と26Sプロテアソームを、0.05% SDS 存在下ある
いは、非存在下において、100mMTris-HCL (pH8.0)中、
37℃、10ー30分間インキュベートした。反応は、
100mlの10%SDSと2mlのTrisーHcl (pH9.0) を添
加し停止させ、反応後の溶液の蛍光を測定した。
【0025】実施例2 ヒト26Sプロテアソームの製造 ヒト26Sプロテアソームの製造は全て、4℃の条件下
で行ない、特に述べないかぎり標準液である 50 mM Tri
sーHCl (pH7.5)、1 m Mジチオスレイトール、5mM MgCl2 2
mM ATP、20 %グリセロールを用いて、以下の順序に従い
行なった。
【0026】(1)超遠心法による精製 新鮮なヒト腎臓約100gを50 mM TrisーHCl (pH7.5)、1
m M ジチオスレイトール、5 mM MgCl2、2 mM ATP、0.25 M
スクロース中、ワーリングブレンダーを用いてホモジ
ナイズした。得られたホモジネートは、70,100 x g で
1時間超遠心し、得られた上清約4gを出発物質とし
た。この上清を70,100 x gで5時間遠心し、得られた2
6Sプロテアソームを含む沈殿を約50mlの標準液に
溶かした。さらに、不溶物を除去するために、10,000 g
で30分間遠心し、約240mgの蛋白質が回収され
た。
【0027】(2)バイオゲル A-1.5m 分子篩クロマト
グラフィーによる精製 超遠心法で得たサンプルをバイオゲル A-1.5m カラム
(5 x 90 cm)(バイオラッド社製)にアプライし標準
液を用いて60 ml/hrの速度で溶出した。図1に得られた
クロマトグラフィーの溶出パターンを示す。図1におい
て横軸はフラクション番号を、縦軸はSucーLLVYーMCA を
分解する活性(曲線(1))、0.05 % SDS存在下でSucー
LLVYーMCA を分解する活性(曲線(2))、ATPase 活性
(曲線(3))、蛋白質濃度(曲線(4))を示す。ま
た、上段には、各フラクション番号における抗ヒトプロ
テアソームモノクローナル抗体およびポリクローナル抗
体を用いたウェスタン.ブロッティングの結果を示す。
【0028】バーA(フラクション番号80ー90)、
バーB(フラクション番号100ー115)のフラクシ
ョン画分を比較すると、A画分は0.05 % SDSが存在しな
くてもSucーLLVYーMCA を分解する活性があるが、B画分
は0.05 % SDSが存在してはじめてSucーLLVYーMCA を分解
する活性が現われた。また、この図中には示していない
がA画分には、125I−リゾチームとユビキチン結合体
を分解する活性があるが、Bにはなかった。さらにA、
B両画分中には、ウェスタンブロティングの結果から、
プロテアソーームのコンポーネントが含まれることがわ
かった。これらのことより、A画分は26Sプロテアソ
ームであり、B画分は20Sプロテアソームであること
がわかった。
【0029】(3)ハイドロキシアパタイトとQ-セフ
ァロースカラムによる精製 バイオゲル A-1.5m カラムより得られた26Sプロテア
ソームを含むA画分を10mM リン酸カリウム緩衝液(p
H6.8)、1 mM ジチオスレイトール 、2 mMATP、20 %グ
リセロールで平衡化したハイドロキシアパタイトカラム
(1.5x15cm)(バイオラッド社製)にアプライし
た。カラムは5ベッド体積の同上緩衝液で洗浄後、吸着
したサンプルは3ベッド体積の0.1M リン酸カリウム緩
衝液(pH6.8)、1 mM ジチオスレイトール 、2 mM AT
P、20 %グリセロールで溶出した。
【0030】溶出サンプルは標準液で平衡化したQーセ
ファロースカラム(1.5x15cm)(ファルマシア社
製)にアプライした。アプライした大部分の蛋白質はQ
-セファロースカラムに吸着した。カラムを5ベッド体
積の標準液で洗浄後、吸着した蛋白質を200mlの0
−0.8M NaClの直線勾配により溶出し、1.4
mlずつ溶出画分を集めた。図2(A)にQーセファロ
ースによる溶出パターンを示す。図において、横軸はフ
ラクション番号を、縦軸はSucーLLVYーMCA を分解する活
性(曲線(1))、0.05 % SDS存在下でSucーLLVYーMCA
を分解する活性(曲線(2))、ATPase活性(曲線
(3))、NaClのグラディエント濃度(曲線
(4))を示す。また、図2(B)には、バイオゲル A
-1.5m カラムより得られた20Sプロテアソーム画分の
分離パターンを(A)と同様に示す。図2(A)より、
26Sプロテアソーム画分は0.38Mの塩濃度で溶出
され、0.05 % SDSの存在の有無にかかわらずでSucーLLVY
ーMCA を分解する活性を有するが、図2(B)より、2
0Sプロテアソーム画分は0.05 % SDSが存在しないと、
SucーLLVYーMCA を分解する活性を有さないことがわかっ
た。
【0031】 (4)グリセロール密度勾配遠心法による精製 Q-セファロースクロマトグラフィーより得られた26
S、20S画分はそれぞれアミコンPMー10メンブラ
ンを用いた限外濾過により、濃縮し、グリセロール密度
勾配遠心を行なった。その結果を図3に示す。図3にお
いて、(A)、(B)はそれぞれ26S画分、20S画
分の分離パターンを示す。また、横軸はフラクション番
号を、縦軸は、SuvcーLLVYーMCA を分解する活性(曲線
(1))、0.05 % SDS存在下でSuvcーLLVYーMCA を分解す
る活性(曲線(2))ATPase活性(曲線(3))、AT
P依存的に125I-リゾチームーユビキチン結合体を分解
する活性(曲線(4))を示す。
【0032】図3(A)の26S画分において、フラク
ション番号14ー16に26Sプロテアソームの特徴で
ある125I-リゾチームーユビキチン複合体を分解する活
性および0.05 % SDSの存在の有無にかかわらずでSucーLL
VYーMCA を分解する活性がみられたが、(B)の20S
画分においてはみられず、フラクション番号18ー20
に20Sプロテアソームの活性のみがみられた。
【0033】最終的にフラクション番号14ー16の画
分を集めることにより、26Sプロテアソームを精製す
るに至った。その蛋白質量を測定すると、0.6mgで
あり、125I-リゾチームーユビキチン結合体を分解する
活性は10 % /hr/μg prote-in、ATPase活性は150
ー200nmoles/hr/μg protein 、SucーLLVYーMCAを分解
する活性は10ー20nmoles/min/μg proteinであっ
た。また、この精製26Sプロテアソームの沈降係数を
超遠心法で測定したところ約26Sであった。またこの
値と拡散係数から、求めた分子量は約2,000kDaであ
った。
【0034】実施例3 26Sプロテアソームの電気泳動による構造解析 (1)SDSーポリアクリルアミド電気泳動による解析 実施例2(4)で精製した26Sプロテアソームの分子
構造を明かにするために、SDSーポリアクリルアミド
電気泳動(SDSーPAGE)により解析した。グリセ
ロール密度勾配により得られたフラクションを1%SD
Sで変性後、10ー20%の濃度勾配ポリアクリルアミ
ドゲルにより分離し、銀染色を行なった。その結果を図
4に示す。グリセロール密度勾配により得られたフラク
ション番号14ー16の画分に26Sプロテアソームの
活性が存在するが、この画分には21ー110KDaの
バンドが確認された。従って、26Sプロテアソームは
21ー31KDaの20Sプロテアソームと35ー11
0KDaの制御因子蛋白質群より構成される巨大な複合
体蛋白質であることがわかった。
【0035】(2)2次元電気泳動による解析 26Sプロテアソームの分子構成をさらに明かにするた
めに1次元目に未変性のPAGEを、2次元目にSDS
ーPAGEを行なう2次元電気泳動を行ない、銀染色し
た。その結果を図5に示す。実施例2(4)で精製した
26Sプロテアソームを3ー10%の未変性のポリアク
リルアミドゲルで分離したところ、1,300kDa
(1)、1,100kDa(2)、700kDa(3)の3本の
バンドが確認された。
【0036】さらに、2次元目に10ー20%のSDS
ーPAGEを行なったところ、700kDa複合体は、2
1ー31kDaの20Sプロテアソームのコンポーネン
トと50kDaのコンポーネントより構成されているこ
とがわかった。一方、1,300kDaの複合体は21ー3
1kDaと35ー110kDaより構成され、1,100k
Daの複合体も1,300kDaの分離パターンに類似して
いた。これらのことより、1,100kDaと700kDaの複
合体は1,300kDaの複合体が一部分解したものであ
り、26Sプロテアソームは、電気泳動上は、1,300 k
Daの複合体であることがわかった。
【0037】実施例4 26Sプロテアソームのユビキチン結合蛋白質の分解活
性 実施例2(4)で精製した26Sプロテアソームのユビ
キチン結合蛋白質に対する分解活性を調べた。ユビキチ
ン結合蛋白質として、125I−リゾチームーユビキチン結
合体を用い、2mMATP存在下、精製26Sプロテア
ソームを2時間反応させた後、SDSーPAGEを行な
い、オートラジオグラフィーを行なった。オートラジオ
グラムの結果を図6に示す。
【0038】図6において、左端は分子量マーカーを、
レーン(1)は26Sプロテアソーム非存在下の場合、
レーン(2)、(3)、(4)、(5)はそれぞれ、
2、4、8、10μgの26Sプロテアソームを添加し
た場合の結果を示す。26Sプロテアソーム非存在下の
場合、125I−リゾチームーユビキチン複合体のバンド
が、67kDa以上にみられたが(レーン(1))、2
6Sプロテアソームを添加した場合は、これらのバンド
が消失し、125I−リゾチームの14kDaのバンドのみ
となった。これらの結果より、精製26Sプロテアソー
ムはATP存在下でユビキチン結合蛋白質を分解する活
性があることがわかった。
【0039】実施例5 26SプロテアソームのATPase活性 実施例2(4)で精製した26SプロテアソームのAT
Pase活性について、ATPaseの阻害在を用いて
調べた。その結果を図7に示す。図7において、横軸
は、ATPase阻害剤であるヴァナデイト(A)とヘ
ミン(B)の添加濃度を、縦軸は、ATP存在下の125I
−リゾチームーユビキチン複合体の分解活性(曲線
(1))およびATP分解活性(曲線(2))を示す。
【0040】26SプロテアソームにはATP分解活性
があることを 実施例2(4)で記載したが、この活性
はATPase阻害剤であるヴァナデイトとヘミンの添
加により、濃度依存的に阻害される。また、この際、
125I−リゾチームーユビキチン結合体の分解活性も同様
に阻害された。これらの結果より、26Sプロテアソー
ムのATP依存性のユビキチン化蛋白質の分解には、A
TPの分解が必要であることがわかった。
【0041】実施例6 ヒト26Sプロテアソームの形状 ヒト26Sプロテアソームを50μg/ml に調製し、1
ー3%ウラニル酢酸(pH4.5)で支持膜上に逆染色
し、電子顕微鏡(日立社製、H7000)で観察した。
図8に、電子顕微鏡写真より得られた写真を基に26S
プロテアソームの分子構造モデルを示す。この図8で示
されるように26Sプロテアソームの分子形状はダンベ
ル状で、その中央部には20Sプロテアソームの構造が
認められた。
【0042】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、ユビキ
チン化した蛋白質を分解する新規細胞内多機能プロテア
ーゼであるヒト26Sプロテアソームを精製し、単離す
ることにより、当該酵素の詳細を明らかにしたものであ
り、これにより、当該酵素の機能とユビキチン化した蛋
白質の分解機構の解明に役立つのみならず、各種病態の
診断、および治療法として役立つ新しい技術を提供し得
る等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ヒト26Sプロテアソームのバイオゲル
カラムによる精製における溶出パターンを示す。
【図2】本発明ヒト26SプロテアソームのQーセファ
ロースカラムによる精製における溶出パターンを示す。
【図3】本発明ヒト26Sプロテアソームのグリセロー
ル密度勾配遠心法による精製における分画パターンを示
す。
【図4】本発明ヒト26SプロテアソームのSDS-P
AGEによる分析結果を示す。
【図5】本発明ヒト26Sプロテアソームの2次元電気
泳動による分析結果を示す。
【図6】本発明ヒト26Sプロテアソームによるユビキ
チンが結合したリゾチーム蛋白質の分解をSDSーPA
GEで分析した結果を示す。
【図7】本発明ヒト26Sプロテアソームのユビキチン
結合蛋白質の分解に及ぼすATP-ase阻害剤およびヘミン
の添加効果を示す。
【図8】本発明ヒト26Sプロテアソームの形状を電子
顕微鏡写真を基に作製した分子構造モデルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト臓器、細胞の細胞質画分より、グリ
    セリン、2−メルカプトエタノールあるいはジチオスレ
    イトール、およびATPを添加した分離溶媒を用いて、
    ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、イオ
    ン交換カラム、およびグリセロール密度勾配遠心を用い
    た物理化学的分離方法により精製して製造された、安定
    な状態で精製されたヒト26Sプロテアソームであっ
    て、下記の酵素学的および物理学的性質; (1) サクシニル−ロイシル−バリル−チロシン−4−メ
    チルクマリル−7−アミドを分解する活性が10−20
    nmoles/min/μg proteinである: (2) ユビキチンが結合した蛋白質をATP存在下で分解
    する活性を有する:(3) ATPを分解する活性を有する:(4) 超遠心法で測定した沈降係数は26Sである:(5) 分子量は約2000kDa(キロダルトン)で、2
    1ー31kDaの20Sプロテアソームと、それ以外に
    分子量35ー110kDaの制御因子蛋白質群より構成
    される:(6) 電子顕微鏡で観察した分子形状はダンベル状で、そ
    の中央部にプロテアソームの構造が認められる:を有するヒト26Sプロテアソーム。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の、ヒト臓器、細胞の細
    胞質画分より安定な状態で精製されたヒト26Sプロテ
    アソームを製造する方法であって、ヒト臓器、細胞の細
    胞質画分からのヒト26Sプロテアソームを、グリセリ
    ン、2−メルカプトエタノールあるいはジチオスレイト
    ール、およびATPを添加した分離溶媒を用いて、ゲル
    濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、イオン交
    換カラム、およびグリセロール密度勾配遠心を用いた
    理化学的分離方法により精製して、安定な状態で精製さ
    れたヒト26Sプロテアソームを調製することを特徴と
    るヒト26Sプロテアソームの製造方法。
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