JPH0622759A - ラット26sプロテアソームおよびその製造方法 - Google Patents

ラット26sプロテアソームおよびその製造方法

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JPH0622759A
JPH0622759A JP4199028A JP19902892A JPH0622759A JP H0622759 A JPH0622759 A JP H0622759A JP 4199028 A JP4199028 A JP 4199028A JP 19902892 A JP19902892 A JP 19902892A JP H0622759 A JPH0622759 A JP H0622759A
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JP4199028A
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English (en)
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Naoki Niihara
直樹 新原
Keiji Tanaka
啓二 田中
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BIO MATERIAL KENKYUSHO KK
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BIO MATERIAL KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ラット26Sプロテアソームおよびその製造
方法を提供する。 【構成】 ユビキチン結合蛋白質を分解する細胞内多機
能プロテアーゼであるラットS26プロテアソーム。当
該ラット26Sプロテアソームは、ラット肝臓細胞など
の細胞質画分から、ATPを添加した特定の分離溶媒を
用いた物理化学的分離方法により、精製、単離すること
によって製造される。 【効果】 ユビキチン化した蛋白質を解する作用を有
し、各種癌をはじめとする各種病態のメカニズムの解
明、診断および治療などに有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラット26Sプロテア
ソームに関するものであり、さらに詳しくは、ATP依
存的にユビキチン結合蛋白質を分解する新規な細胞内多
機能プロテアーゼおよびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】細胞内で不必要あるいは異常な蛋白質が
分解される機構として、ユビキチン依存的分解経路が知
られている〔Rechsteiner M. ed.,
「U−biquitin」Plenum,New Yo
rk (1988)〕。ユビキチンは、分子量約8、5
00の蛋白質で、真核生物の細胞に普遍的に存在し、種
々の蛋白質にイソペプチド結合し、分解のための目印と
なる。このユビキチンによる蛋白質の修飾および分解に
は、ATPをエネルギー源として必要とすることがわっ
かている。
【0003】このようなユビキチン化した蛋白質を分解
する機構が解明できれば、細胞内における不必要な蛋白
質、あるいは異常な蛋白質の動態を把握することが可能
となり、さらに各種癌をはじめとする各種病態の診断、
および治療法を確立する上で、きわめて有益である。し
かしながら、このユビキチン化した蛋白質を分解する酵
素の実体については明らかになっていないことから、当
該、ユビキチン化した蛋白質を分解する機構の詳細を解
明することが強く要請されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等
は、このような状況を踏まえ、これまで、構造が解明さ
れていないユビキチン化した蛋白質を分解する酵素の詳
細を明らかにすると共に、各種癌をはじめとする各種病
態の診断、および治療法を確立することことを目標とし
て鋭意研究を積み重ねた結果、当該酵素として、ユビキ
チン化した蛋白質を分解する細胞内多機能プロテアーゼ
である新規なラット26Sプロテアソームを精製し、単
離すると共に、その詳細について解明することに成功し
て、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は、ユビキチン化した蛋
白質を分解する細胞内多機能プロテアーゼである新規な
ラット26Sプロテアソームを提供することを目的とす
るものである。
【0006】また、本発明は、当該酵素を安定、かつ高
収率で製造する方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0007】また、本発明は、ラット26Sプロテアソ
ームの酵素学的および物理学的性質などの詳細を明らか
にすることにより、当該酵素の機能の解明に役立つのみ
ならず、各種癌をはじめとする各種病態の診断、および
治療法として有用な新しい技術を提供することを目的と
するものである。
【0008】さらに、本発明は、ラット26プロテアソ
ームを抗原として調製される抗体を利用することによ
り、各種癌をはじめとする各種病態の免疫測定法による
診断技術を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るための本発明の構成は、以下の1〜3よりなるもので
ある。 1 下記の酵素学的および物理学的性質を有するラット
26Sプロテアソーム。 (1)ユビキチンが結合した蛋白質を、ATP存在下で
分解する活性を有する (2)ATPを分解する活性を有する (3)超遠心法で測定した沈降係数は、26Sである (4)分子量は、約2,000kDa(キロダルトン)
であり、21ー31kDaの20Sプロテアソームと、
それ以外の分子量35ー110kDaの制御因子蛋白質
群より構成される (5)電子顕微鏡で観察した分子形状は、ダンベル状
で、その中央部に20Sプロテアソームの構造が認めら
れる (6)中性アミノ酸である合成基質Suc−LLVY−
MCA(サクシニル−ロイシル−ロイシル−バリル−チ
ロシン−4−メチル−クマリル−7−アミド)を分解す
る酵素活性を有し、その至適pHは、7.5ー9.0で
ある (7)酸性アミノ酸であるCbz−LLE−NA(カル
ボベンゾキシルーロイシルーロイシルーグルタミン酸ー
2ーナフチルアミド)を分解する酵素活性を有し、その
至適pHは、7.0ー8.5であり、至適温度は、35
℃ー45℃、至適SDS添加濃度は、0.05%である (8)塩基性アミノ酸であるBoc−LRR−MCA
(t−ブチルオキシカルボニルーロイシルーアルギニル
ーアルギニンー4ーメチル−クマリルー7ーアミド)を
分解する酵素活性を有し、その至適pHは、7.5ー
9.0であり、至適温度は、30℃ー45℃である
【0010】2 ラット臓器、細胞の細胞質画分より、
物理化学的分離方法により、安定、かつ高収率で精製さ
れたラット26Sプロテアソームを製造する方法におい
て、当該物理化学的分離方法が、超遠心、ゲル濾過カラ
ム、ハイドロキシアパタイトカラム、グリセロール密度
勾配遠心から選択される1種以上を用いたものであるこ
とを特徴とする前記1に記載されたラット26Sプロテ
アソームの製造方法。
【0011】3 ラットの臓器、細胞の細胞質画分よ
り、物理化学的分離方法により、安定、かつ高収率で精
製されたラット26Sプロテアソームを製造する方法に
おいて、グリセリン、2ーメルカプトエタノールあるい
はジチオスレイトール、およびATPを添加した分離溶
媒を用いた物理化学的分離方法により、精製することを
特徴とする前記2に記載されたラット26Sプロテアソ
ームの製造方法。
【0012】続いて、本発明についてさらに、詳細に説
明する。本発明者等は、これまで、構造が解明されてい
ないユビキチン化した蛋白質を分解する酵素の詳細を明
らかにすることを目標とし、鋭意研究を重ねてきた。そ
の結果、本発明により、当該酵素は、既に本発明者等が
報告した20Sプロテアソーム(多機能プロテアーゼ、
分子量約750kDa) 〔(TanakaK.,et
al.,「J.Mol.Biol.」203,985ー
996(1988)〕と、未知機能をもった制御因子が
結合した巨大な複合体であることがわかり、本発明者等
は、26Sプロテアソーム(分子量約2、000kD
a)と命名した。
【0013】20Sプロテアソームは、同一分子内に複
数の触媒活性をもつ多成分複合体プロテアーゼであり、
また酸性、塩基性、中性のアミノ酸を分解する多機能性
プロテアーゼでもあるが、ユビキチン化した蛋白質を分
解する活性はなかった。
【0014】従って、本発明の26Sプロテアソーム
は、プロテアーゼとしての20Sプロテアソームが、制
御因子と結合することにより、ユビキチン化した蛋白質
を識別して、分解するという新しい機能を獲得している
ものであることがわかった。また、当該酵素の新しい機
能として、ATPase活性をもつことが明らかになっ
た。さらに、当該酵素は、20Sプロテアソームと同様
に、酸性、塩基性、中性のアミノ酸を分解する活性をも
っていたが、アミノ酸分解における至適SDS濃度、至
適pH、至適温度は、20Sプロテアソームと異なるこ
とが明らかになった。
【0015】このような新しい知見を基礎として、本発
明のラット26Sプロテアソームは、これを用いること
により、当該酵素の機能の解明に役立つのみならず、各
種癌をはじめとする各種病態の診断、および治療法とし
て役立つ技術を確立する上で有用なものである。
【0016】このように、26Sプロテアソームの主要
な機能は、ユビキチンが結合した蛋白質を分解する活性
をもつことであるが、最近、癌遺伝子産物や、細胞周期
関連遺伝子産物が、このユビキチン依存性の分解経路で
分解されることが報告され注目されている。
【0017】これら遺伝子産物の蛋白質の例としては、
cーmyc癌遺伝子産物、p53癌抑制遺伝子産物
〔(Scheffner M.,et al.,「Ce
ll」63,1129ー1136(1990)〕、cd
c2キナーゼ調節蛋白質であるサイクリン(Clotz
er M.,et al.,「Nature」349,
132ー138(1991)〕などが挙げられる。
【0018】従って、本発明のラット26Sプロテアソ
ームは、癌化のメカニズムの解明や、癌の治療、および
診断に有用である。
【0019】また、アルツハイマー病患者の脳内には、
ユビキチン化した蛋白質が異常蓄積しており、少なくと
も、この疾患の原因の一つに細胞内における蛋白質分解
系の異常があることが示唆された。従って、本発明のラ
ット26Sプロテアソームは、アルツハイマー病のメカ
ニズムの解明や、アルツハイマー病の治療、および診断
に有用である。
【0020】このように、本発明の26Sプロテアソー
ムを用いた各種病態の診断法、および治療法の開発は、
これらの病態と本酵素との係わりを、ヒトにおける各種
病態の治療法および/または診断法の開発に直結する意
味で有用である。かかる測定には、例えば通常の免疫測
定法が使用でき、本発明の26Sプロテアソームは、当
該測定に使用する抗体の抗原として好適に使用される。
【0021】すなわち、本発明のラット26Sプロテア
ソームを抗原として常法によりモノクローナル抗体を作
製し、当該モノクローナル抗体を有効成分として各種病
態を測定し、診断するための免疫測定用診断剤を製造す
ることができる。当該診断剤としては、肝癌、腎癌、白
血病などの悪性腫瘍の診断剤などが好適なものとして例
示される。
【0022】次に、本発明ラット26Sプロテアソーム
の特性を有する蛋白質を得る製造方法について、詳述す
ると、以下の通りである。本発明ラット26Sプロテア
ソームは、ラットの種々の組織、器官、産生細胞から、
より具体的には、ラット腎臓、肝臓、心臓、脳、肺、胸
腺、などの各種臓器、およびラット肝癌細胞株、ラット
腎臓細胞株などの樹立細胞株の細胞質画分より得ること
ができる。
【0023】上記の細胞質分画の調製は、通常の細胞質
分画法によることができる。例えば、上記記載の細胞を
ホモジネートし、遠心分離することにより、細胞膜、
核、ミトコンドリア、リソゾームおよびミクロソームの
分画を除き、その上清を細胞質分画として使用できる。
【0024】かかる細胞質画分からの本発明ラット26
Sプロテアソームの分離、精製は、当該酵素の酵素化学
的、物理化学的性質等を利用した各種の処理操作により
実施することができる。例えば、これらの分離、精製方
法としては、透析法、限外濾過法、ゲル濾過法などの主
として分子量の差を利用する方法、イオンクロマトグラ
フィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティ−
クロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方
法、等電点電気泳動法などの等電点を利用する方法など
が挙げられる。
【0025】しかしながら、ATP依存的にユビキチン
結合蛋白質を分解する26Sプロテアソームの分離、精
製は、既に本発明者等が報告した20Sプロテアソーム
に比較して、非常に難しい。その理由として、(i)2
6Sプロテアソームは、20Sプロテアソームに比較し
て非常に不安定である、(ii)26Sプロテアソーム
の活性を検出するためのアッセイ系の確立が容易でない
ことがあげられる。
【0026】かかる課題を解決するために、鋭意検討を
重ねた結果、(i)の課題に対しては26S型プロテア
ソームを安定化させる条件として、グリセリン、2ーメ
ルカプトエタノールあるいはジチオスレイトール、そし
てATP、を分離溶媒中に添加しておくことにより、安
定化させることができることがわかった。
【0027】しかしながら、蛋白質の高次構造に影響す
る処理、クロマトグラフィーを繰り返すと、26Sプロ
テアソームは、その構成要素に不可逆的に解離した。そ
こで、このような知見を基礎として、本発明者等は、主
として、分子サイズの違いによる分離を基本戦略とし
て、必要に応じて最小限のクロマトグラフィーを操作を
行なう分離、精製方法を開発するに至った。
【0028】即ち、ラット26Sプロテアソームの製造
方法として、(1)超遠心法により得た細胞質画分を、
(2)バイオゲルカラム1.5mカラム、(3)バイオゲ
ル5mカラム、(4)ハイドロキシアパタイトカラム、
(5)グリセロール密度勾配遠心により分離、精製する
方法を開発するに至った。
【0029】本発明のラット26Sプロテアソームの精
製方法の特徴は、26Sプロテアソームを、できるだけ
カラムに吸着させないで精製することにより、蛋白質の
解離を防ぐことにある。即ち、(2)、(3)のバイオ
ゲルカラムでは、26Sプロテアソームはそれぞれ、分
子篩により溶出された。また、(4)のハイドロキシア
パタイトカラムでは、溶出液中のATPの濃度を2mM
から5mMにすることにより、20Sプロテアソームは
カラムに吸着するが、26Sプロテアソームはカラムに
吸着せずに溶出された。さらに、26Sプロテアソーム
が吸着するQーセファロースカラム等の電荷の差による
精製を省いた。
【0030】これらの改良により、26Sプロテアソー
ムがカラムに吸着することによる解離を防ぎ、簡便に収
率よく26Sプロテアソームを精製する方法を開発する
に至った。
【0031】次に、(ii)の課題に対しては、26S
プロテアソームの鋭敏なアッセイ法を開発した。一つは
ユビキチン結合蛋白質分解活性の測定に供する基質蛋白
質を安定に確保することにより、酵素活性を定量的に測
定することが可能になった。即ち、本発明者等は、ユビ
キチン依存性蛋白質分解系のよい基質となる125 I−リ
ゾチームとユビキチンを効率よく結合させる方法を開発
した〔(Tamu−ra T.,et al.,「FE
BS Lett.」292,154ー158(199
1)〕。
【0032】また、本発明者等は、Suc−LLVY−
MCAの分解に対して、20Sプロテアソームは、不活
性型であるが、26Sプロテアソームは活性型であるこ
とを見いだし、Suc−LLVY−MCAの分解活性を
調べることにより、26Sプロテアソームを簡便に検知
する方法を開発した。従って、この簡便なアッセイ法
と、上記記載の、より定量性の優れた125 I−リゾチー
ム−ユビキチン結合蛋白質の分解活性を調べることによ
り、26Sプロテアソーム精製の指標にした。
【0033】上記、分離、精製操作により、得られた本
発明ラット26Sプロテアソームは、前記した酵素学的
および物理化学的性質により特定される新規なものであ
る。
【0034】なお、本明細書および図面において、試薬
や分析法などを略号で表示する場合は、IUPAC−I
UBによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基
づくものを用いており、その例を次に挙げる。
【0035】Suc−LLVY−MCA;サクシニル−
ロイシル−ロイシル−バリル−チロシン−4ーメチルク
マリル−7−アミド(Succinyl−Leucyl
−L−eucyl−Valyl−Tyrosine−4
−Methyl−Courm−aryl−7−Amid
e)
【0036】Cbz−LLE−NA;カルボベンゾキシ
ル−ロイシル−ロイシル−グルタミン酸−β−ナフチル
アミド(Carbobenzoxyl−Leucyl−
Le−ucyl−Glutamic acid−β−N
aphthylamide)
【0037】Boc−LRR−MCA;t−ブチルオキ
シカルボニルーロイシルーアルギニルーアルギニンー4
ーメチル−クマリル−7−アミド(t−Butylox
yc−arbonyl−Leucyl−Arginyl
−Arginine−4−M−ethyl−Courm
aryl−7−Amide)
【0038】SDS ドデシル硫酸ナトリウム(S
odium Dodecyl Su−lphate)
【0039】PAGE ポリアクリルアミド電気泳
動(Polyacrylamidegel elect
rophoresis)
【0040】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 ラット26Sプロテアソームの精製におけるアッセイ法 (1)ユビキチン化蛋白質の分解活性125 I−リゾチームーユビキチン結合体は、本発明者等
の方法(TamuraT.,et al.,「FEBS
Lett.」292,154ー158(1991)〕
に従い、125 I−リゾチームとユビキチンをユビキチン
結合酵素系(E1、E2、E3)を用いて結合した。次
いで、125 I−リゾチームーユビキチン結合体(5,0
00−10,000cpm)と、26Sプロテアソーム
(あるいは精製過程でのカラムフラクション)を、50
mM TrisーHCl(pH7.5)、5mM Mg
Cl2 、2mM ATP、1mMジチオスレイトール中
(最終体積で100μlになるようにする)で、37℃
60−120分間、インキュベートした。反応後の125
I−リゾチームとユビキチン結合体の分解を調べるため
に、575μlの10%トリフルオロ酢酸と125μl
の4%牛血清アルブミン(キャリア蛋白質)を添加し
て、酸可溶性画分をγ−カウンターで測定した。
【0041】(2)合成ペプチドの分解活性 ペプチド合成基質としては、中性アミノ酸であるSuc
ーLLVYーMCA、塩基性アミノ酸であるBoc−L
RR−MCA(ペプチド研究所社製)、および酸性アミ
ノ酸であるCbz−LLE−NA(シグマ社製)のいず
れかを用い、26Sプロテアソーム(あるいは精製過程
でのカラムフラクション)と、0.05%SDS存在下
あるいは、非存在下において、100mM Trisー
HCl(pH8.0)中、37℃で、10ー30分間イ
ンキュベートした。反応は、100μlの10% SD
Sと2mlの0.1M TrisーHcl(pH9.
0)を添加し停止させ、反応後の溶液の蛍光を測定し、
分解活性を測定した。
【0042】(3)ATPase活性の測定 50mM Tris−HCl(pH7.5),5−15
μlの精製過程でのカラムフラクションあるいは26S
プロテアソーム(1−2μg)、1mM ジチオスレイ
トール、5mM MgCl2 ,および0.5μCi
〔2,8−3 H〕ATPを混合し(総体積25μl),
37℃で60分間反応させた。反応は、0.1M AT
P,ADP,およびAMPと3μlの10%SDSを添
加することにより停止させた。
【0043】反応液2μlを、0.5M LiClを含
む1Mギ酸中において、PEI(ポリエチレンイミン)
セルロース FーTLCプラスチックシート(メルク
社)上で展開し、生じたADPを分離した。〔3 H〕A
TPから〔3 H〕ADPへの変換は、Armon等の方
法〔Armon et al.,「J.Biol.,C
hem.」265,20723−20725(199
0)〕により、測定した。
【0044】実施例2 ラット26Sプロテアソームの製造 ラット26Sプロテアソームの製造は全て、4℃の条件
下で行ない、特に述べないかぎり標準液である25mM
TrisーHCl(pH7.5)、1mMジチオスレ
イトール、2mM ATP、20%グリセロールを用い
て、以下の順序に従い行なった。
【0045】(1)超遠心法による精製 ウィスターラット(雄)の肝臓を摘出し、総重量500
g分の肝臓を、その約3倍体積量の50mM Tris
ーHCl(pH7.5)、1mMジチオスレイトール、
2mM ATP、0.25M スクロース中で、Pot
terーEl−vehjemのホモジナイザーを用いて
ホモジナイズした。得られたホモジネートは、30,0
00rpm(日立RP42ロータ、平均 70,100
xg)で1時間超遠心し、得られた上清約3ー4gを出
発物質とした。
【0046】この上清を70,100xgで5時間遠心
し、得られた26Sプロテアソームを含む沈殿を約50
mlの標準液に溶かした。さらに、不溶物を除去するた
めに、20,000xgで30分間遠心した。この超遠
心法による精製により、約1.5gの蛋白質が回収さ
れ、ATP依存的に125 I−リゾチームーユビキチン結
合体を分解する活性は、4.3ng/h/mgであっ
た。なお、この活性は、クルードな状態でも、−70℃
で、数カ月間安定であった。
【0047】(2)バイオゲルA−1.5mとAー5m
分子篩クロマトグラフィーによる精製 超遠心法で得たサンプル約500ー600mgを、バイ
オゲルA−1.5mカラム(5x100cm、バイオラ
ッド社製)にアプライし、標準液を用いて60ml/h
rの速度で溶出した。各フラクションは10mlずつ集
め、その酵素活性を測定した。図1Aに得られたクロマ
トグラフィーの溶出パターンを示す。図1Aにおいて、
横軸はフラクション番号を、縦軸はSucーLLVYー
MCAを分解する活性(曲線(1))、0.05%SD
S存在下でSucーLLVYーMCAを分解する活性
(曲線(2))、ATPase 活性(曲線(3))、
蛋白質濃度(曲線(4))を示す。
【0048】図1Aで、バーa(フラクション番号75
付近)、バーb(フラクション番号100付近)のフラ
クション画分を比較すると、a画分は、0.05%SD
Sが存在しなくてもSucーLLVYーMCAを分解す
る活性があるが、b画分は、0.05%SDSが存在し
てはじめてSucーLLVYーMCAを分解する活性が
現われた。
【0049】また、この図中には示していないが、a画
分には、125 I−リゾチームーユビキチン結合体を分解
する活性があるが、b画分にはなく、さらにa、b両画
分中には、ウェスタンブロティングの結果から、プロテ
アソームのコンポーネントが含まれることがわかった。
これらのことより、a画分は、26Sプロテアソームで
あり、b画分は、20Sプロテアソームであることがわ
かった。
【0050】そこで、バーaで示した26S画分(蛋白
質量で90ー120mg)をプールして、次の精製に移
った。26Sプロテアソームは、バイオゲルAー1.5
mカラムでは、ボイドボリュームに近接して溶出するた
め、他の蛋白質が混入していた。そこで、夾雑蛋白質を
除去するために、バイオゲルAー1.5mカラムによる
精製でプールした26S画分(約300mg)をアミコ
ンPMー10メンブランにより、約50mlに濃縮し、
バイオゲルAー5mカラム(5x100cm、バイオラ
ッド社製)にバイオゲルAー1.5mカラムの際と同条
件でアプライした。
【0051】図1Bに、得られたクロマトグラムのパタ
ーンを示す。図1Bにおいて、横軸はフラクション番号
を、縦軸はSucーLLVYーMCAを分解する活性
(曲線(1))、0.05%SDS存在下でSucーL
LVYーMCAを分解する活性(曲線(2))、蛋白質
濃度(曲線(3))を示す。図1Bにおいて、夾雑する
蛋白質は、ボイドボリュームに溶出され(曲線
(3))、SDS非存在下でも、SucーLLVYーM
CAを分解する26Sプロテアソームの活性(曲線
(1))が、フラクション番号78付近のa画分にみら
れた。
【0052】図1Cに、図1Bと同様のフラクションに
おけるATPase活性と125 I−リゾチームーユビキ
チン結合体を分解する活性を示す。図1Cにおいて横軸
はフラクション番号を、縦軸は125 I−リゾチームーユ
ビキチン結合体を分解する活性(曲線(1))およびA
TPase活性(曲線(2))を示す。図1Cから、バ
ーaで示される画分には、125 I−リゾチームーユビキ
チン結合体を分解する高い活性がみられた。また、この
画分には、ATPase活性もみられた。そこで、この
画分(約100mg)をプールして次の精製に移った。
【0053】(3)ハイドロキシアパタイトカラムによ
る精製 バイオゲルAー5mカラムで得られた26Sプロテアソ
ーム画分に、ATPを最終濃度5mMになるように添加
した。このサンプル約100mgを、10mMリン酸緩
衝液(pH6.8)、1mMジチオスレイトール、5m
M ATP、20%グリセロールで平衡化したハイドロ
キシアパタイトカラム(ベッドボリューム;55ml)
にアプライした。
【0054】26Sプロテアソームは、5mMATP存
在下では、カラムに吸着せずに溶出されたが、20Sプ
ロテアソームを含む約70%の蛋白質はカラムに吸着し
た。カラムは1ベッド体積の上記緩衝液で洗浄し、非吸
着画分として集めた。こうして、約30mgの26Sプ
ロテアソーム蛋白質が得られた。
【0055】(4)グリセロール密度勾配遠心法による
精製 ハイドロキシアパタイトカラムによる精製で得られた2
6Sプロテアソーム画分をアミコンPM−10メンブラ
ンを用いた限外濾過により2.0mg/mlに濃縮し、
グリセロール密度勾配遠心法による精製を行なった。
【0056】図2に、その結果を示す。図2において横
軸はフラクション番号を、Aの縦軸はSucーLLVY
ーMCAを分解する活性(曲線(1))、0.05%S
DS存在下でSucーLLVYーMCAを分解する活性
(曲線(2))、蛋白質濃度(曲線(3))を示し、B
の縦軸は、125 I−リゾチームーユビキチン結合体を分
解する活性(曲線(4))およびATPase活性(曲
線(5))を示す。0.05%のSDS存在下あるい
は、非存在下でもSucーLLVYーMCAを分解する
活性が、バーaで示したフラクション番号12ー16付
近にみられた。さらに、この画分には、125 I−リゾチ
ームーユビキチン結合体を分解する活性およびATPa
se活性がみられた。
【0057】最終的に、このフラクション番号12ー1
6の画分を集めることにより、26Sプロテアソームを
精製するに至った。その蛋白質量を測定すると、約55
0μgであり、その酵素活性を示すと以下の様になっ
た。125 I−リゾチームーユビキチン結合体の分解活
性;418 pg/hr/μg、ATPase活性;
2.1nmol/hr/μg、SucーLLVYーMC
Aの分解活性;30.5pmol/min/μg 。ま
た、この精製26Sプロテアソームの沈降係数を超遠心
法で測定したところ約26Sであった。また、この値と
拡散係数から、求めた分子量は約2、000kDaであ
った。
【0058】実施例3 ラット26Sプロテアソームの電気泳動による構造解析 (1)SDSーポリアクリルアミド電気泳動にによる解
析 実施例2(4)で精製したラット26Sプロテアソーム
の分子構造を明らかにするために、SDSーポリアクリ
ルアミド電気泳動(SDSーPAGE)により解析し
た。ラット26Sプロテアソームを1%SDSで変性
後、Laemmli等の方法〔Laemmli,U.
K.,「Nature」227,680−685(19
70)〕による10ー20%濃度勾配ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動により分離し、銀染色を行なった。その
結果を、図3に示す。また、同様にして、精製したヒト
腎臓26Sプロテアソームおよびラットおよびヒトのそ
れぞれの20Sプロテアソームの電気泳動の結果もあわ
せて示す。
【0059】図3Aに示す様に、ラットおよびヒトの2
0Sプロテアソームの分子量は、既に本発明者等が報告
した様に、21ー31kDaであった。一方、26Sプ
ロテアソームについては、図3Bに示す様に、ラットお
よびヒトで、ともに21ー110KDaのバンドが確認
された。ラットとヒトでは電気泳動上のパターンは図
中、矢印で示した箇所が異なっていたが、他はほとんど
一致していた。従って、ラット26Sプロテアソーム
は、ヒトと同様に、21ー31KDaの20Sプロテア
ソームと35ー110KDaの制御因子蛋白質群より構
成される巨大な複合体蛋白質であることがわかった。
【0060】次に、ラット26Sプロテアソーム中にジ
スフィルド結合が存在するかどうかを調べるために、2
ーメルカプトエタノール存在下で電気泳動を行なったと
ころ(図6B、+ME)、非存在下の場合(−ME)と
比較して変わらなかった。このことより、ラット26S
プロテアソーム複合体中には、ジスフィルド結合が存在
しないことがわかった。
【0061】(2)2次元電気泳動による解析 26Sプロテアソームの分子構成をさらに明らかにする
ために、1次元目に等電点電気泳動、2次元目にSDS
ーPAGE(12.5%のゲル濃度)を行なう2次元電
気泳動を、O’Farrell の方法〔O’Farr
ell P.H.,「J.B.Chem.」250,4
007−4021(1975)〕で行ない、銀染色し
た。その結果を図4に示す。
【0062】図4において、横軸は、等電点マーカー
で、縦軸は分子量マーカーを示す。図4では、等電点3
ー10、分子量21ー31kDaに15ー20個のバン
ド(囲みB)と等電点4.0ー6.5、分子量35ー1
10kDaに15ー25個のバンド(囲みA)が見られ
た。Bの15ー20個の成分は、本発明者等が、すでに
報告した20Sプロテアソームの構成成分であり、一
方、Aの15ー20個の成分は、20Sプロテアソーム
に結合する制御因子蛋白質群であった。
【0063】(3)未変性状態でのポリアクリルアミド
電気泳動 26Sプロテアソームの分子構造をさらに明らかにする
ために、未変性状態でポリアクリルアミド電気泳動(PA
GE)を行なった。その結果を図5に示す。ポリアクリル
アミドゲルの濃度は、3%(A)、4%(B)、5%
(C)で比較し、サンプルとしては、精製した20Sプ
ロテアソーム(20S)を10μg、肝臓のホモジネー
トを超遠心して得たクルードなエクストラクト(CE)
を200μg、および精製した26Sプロテアソーム
(26S)を3.5μgを用い、それぞれのゲルで比較
した。
【0064】3%および4%のゲルでは、26Sプロテ
アソームは、同様の挙動を示し、2つのアイソフォーム
26Sαと26Sβの存在が確認されたが、5%ゲルで
は、確認できなかった。一方、20Sプロテアソーム
は、すべてのゲル濃度で確認でき、ポリアクリルアミド
濃度に電気泳動上の移動度が依存していた。さらに、ク
ルードなエクストラクトにおいてみられる26Sα、2
6Sβ、および20Sプロテアソームのバンドは、それ
ぞれ精製して得られたバンドの位置に一致していた。こ
のことは、実施例2の(4)で精製して得られた26S
プロテアソームには、2つのアイソフォームが存在する
ことを示している。
【0065】さらに、この二つのアイソフォームを電気
泳動で調べたところ、26Sα、26Sβプロテアソー
ムは、ともに同じ分子量の20Sプロテアソームと35
ー150kDaの制御因子から構成されていることがわ
かった。このことより、この2つのアイソフォームが生
じたのは、分子量サイズによるものではなく、荷電状態
の違う2種類の26Sプロテアソームが存在しているた
めであることがわかった。
【0066】実施例4 ラット26SプロテアソームのATPase活性とユビ
キチン結合蛋白質の分解活性 実施例2の(4)で精製したラット26Sプロテアソー
ムのATPase活性および125 I−リゾチームーユビ
キチン 結合体分解活性のpH依存性とATP依存性を
調べた。pH依存性の結果を図6Aに、ATP濃度依存
性の結果を図6Bに示す。図6Aより、26Sプロテア
ソームのATPase活性とユビキチン結合蛋白質分解
活性は、pH8ー9にピークがあったことより、該酵素
の至適pHは8ー9であることがわかった。
【0067】また、図6Bより、26Sプロテアソーム
のATP分解のKm値は、約0.25mMであることが
わかった。これらの結果より、精製26Sプロテアソー
ムはATP存在下でユビキチン結合蛋白質を分解する活
性があり、その至適pHは、8ー9、Km値は、0.2
5mMであることがわかった。
【0068】実施例5 ラット26SプロテアソームのATPase活性 実施例2の(4)で精製したラット26Sプロテアソー
ムのATPase活性について、ATPaseの阻害剤
等を用いて調べた。その結果を表1に示す。表1には、
ユビキチン結合蛋白質、およびATP分解活性に及ぼす
各種阻害剤の添加効果について、すなわち、添加した化
合物の最終濃度におけるATPa−se活性、および
125 I−リゾチームーユビキチン 結合体分解活性の無
添加コントロールに対する相対活性(%)を示す。
【0069】
【表1】
【0070】ATPase阻害剤であるヴァナディトと
クゥエルセチンは、26SプロテアソームのATPas
e活性を阻害するとともに、125 I−リゾチームーユビ
キチン結合体分解活性も大きく阻害(コントロールの3
5%以下)した。また、Nーエチルマレイミドとヘミン
もこれらの活性をATPase阻害剤と同様に阻害し
た。しかしながら、プロテアーゼインヒビターとして知
られているロイペプチン、キモスタチン、EPー475
はこれらの活性を阻害しなかった。
【0071】これらの結果より、26Sプロテアソーム
のATP分解活性とユビキチン化蛋白質の分解とは、密
接に関連していることがわかった。また、26Sプロテ
アソームの活性は、既存のプロテアーゼインヒビターで
は、阻害されなっかたことより、既存のプロテアーゼと
は、異なる触媒活性部位を持つと推察される。
【0072】実施例6 ラット26Sプロテアソームの蛋白質分解活性に及ぼす
影響因子 ラット20Sプロテアソームは、不活性型で細胞内に局
在し、SDSやポリLーリシンで活性化され、酸性、塩
基性、および中性のアミノ酸を分解することが知られて
いる〔Tanaka K.et al.,「J.Bio
l.Chem.」261,15197−15203(1
986)〕。しかしながら、26Sプロテアソームの詳
細については明らかになっていないため、その蛋白質分
解活性に及ぼすSDS濃度、pH、温度の影響を20S
プロテアソームと比較した。
【0073】なお、蛋白質分解活性の測定においては、
基質として、合成基質を用い、中性アミノ酸としては、
キモトリプシン様基質Suc−LLVY−MCA(ペプ
チド研究所社製)、酸性アミノ酸としては、Cbz−L
LE−NA(シグマ社製)、塩基性アミノ酸としては、
トリプシン様基質Boc−LRR−MCA(ペプチド研
究所社製)を用いた。
【0074】(i)SDS濃度 図7に、ラット20Sプロテアソームと26Sプロテア
ソームの蛋白質分解活性に及ぼすSDS添加濃度の効果
を示す。20Sプロテアソーム(図7上段)は、Suc
−LLVY−MCA、Cbz−LLE−NAの分解に対
しては不活性型であったが、SDS添加により活性化さ
れ、最大活性はSDS濃度が0.05%で見られ、0.
07%以上では、酵素の変性により失活した。一方、B
oc−LRR−MCAの分解は、SDS濃度依存的に阻
害された。
【0075】次に、26Sプロテアソーム(図7下段)
について調べたところ、Suc−LLVY−MCAの分
解に対してSDSを添加をしなくても活性があることが
わかった。さらにこの活性は、SDS濃度0.01%で
は阻害されたが、それ以上の濃度では、再び活性化さ
れ、20Sプロテアソームと同様の挙動を示した。
【0076】これは、26Sプロテアソーム中の20S
プロテアソームが0.01%で解離し、さらにSDSを
添加することにより、20Sプロテアソームが活性化さ
れるためと考えられる。Cbz−LLE−NAの分解に
対しては20Sプロテアソームと同様の挙動を示すが、
Boc−LRR−MCAの分解に対しては、SDSによ
る濃度依存的阻害効果は、大きかった。これらの結果よ
り、20Sプロテアソームは制御因子と結合することに
より、26Sプロテアソームを生成し、20Sプロテア
ソームと異なる蛋白質分解活性を示すことがわかった。
【0077】(2)pHによる影響 図8に、ラット20Sプロテアソーム(図8上段)と2
6Sプロテアソーム(図8下段)の蛋白質分解活性に及
ぼすpHの影響を示す。黒丸は、0.05%SDS添加
した際の、また、白丸は無添加の際の蛋白質分解の相対
活性を示す。20Sおよび26Sプロテアソームは共
に、中性から弱アルカリ性領域に最大活性があった。
【0078】Suc−LLVY−MCA分解活性につい
ては、両プロテアソーム共に、pH8に最大活性があっ
たが、分解活性のパターンは両プロテアソームでは異な
っていた。26SプロテアソームのSuc−LLVY−
MCA分解活性において、SDSはpH8.0以下で
は、いくぶん阻害的に作用するが、pH8.0以上では
影響しなかった。
【0079】一方、20Sプロテアソームに関しては、
広範囲のpHにわたって、SDSは、Suc−LLVY
−MCA分解活性を上昇させた。Cbz−LLE−N
A、Boc−LRR−MCAの分解に対するpHの影響
は、両プロテアソーム共にほぼ同様の挙動を示し、この
際、SDSはCbz−LLE−NAの分解に対して活性
化に、Boc−LRR−MCAの分解に対しては阻害的
に作用した。
【0080】(3)温度による影響 図9に、ラット20Sプロテアソーム(図9上段)と2
6Sプロテアソーム(図9下段)の蛋白質分解活性に及
ぼす温度の影響を示す。黒丸は0.05%SDSを添加
した際の、また白丸は無添加の際の蛋白質分解の相対活
性を示す。
【0081】図9上段に示される様に、20Sプロテア
ソームの蛋白質分解の相対活性は、全て40℃で最大活
性があった。一方、図9下段に示される様に、26Sプ
ロテアソームのSuc−LLVY−MCA分解活性は4
0℃では不安定であったが、0.05%SDSを添加し
た際には、50℃に最大活性があった。これに対して、
Cbz−LLE−NAおよびBoc−LRR−MCAの
分解に及ぼす温度の影響に関しては、20Sおよび26
Sプロテアソームは、ほぼ同様の挙動を示した。これら
のことより、Suc−LLVY−MCAを分解するキモ
トリプシン様活性に関しては、26Sプロテアソームの
ほうが、20Sプロテアソームより、安定であることが
わかった。
【0082】実施例7 ラット26Sプロテアソームの形状 ヒト26Sプロテアソームを50mg/mlに調製し、
1ー3%ウラニル酢酸(pH4.5)で支持膜上に逆染
色し、電子顕微鏡(日立社製、H7000)で観察し
た。
【0083】図10に、電子顕微鏡写真を基に描いた2
6Sプロテアソームの分子構造モデルを示す。図10で
示されるように26Sプロテアソームの分子形状はダン
ベル状で、その中央部には20Sプロテアソームの構造
が認められた。
【0084】
【発明の効果】本発明者等の研究によれば、プロテアソ
ームの遺伝子は、肝癌細胞、腎癌細胞、白血病細胞など
の悪性腫瘍細胞において正常細胞に比較して異常に高く
発現し、さらに、これらの腫瘍細胞の核にプロテアソー
ムが、異常蓄積することが観察されており、本発明の2
6Sプロテアソームを抗原とする抗体を用いることによ
り、これらの各種腫瘍をはじめとする各種病態を、通常
の免疫測定法により測定し、前記各種病態を診断するこ
とが可能である。
【0085】また、多機能プロテアーゼが、前記悪性腫
瘍をはじめ、アルツハイマー病等の各種病態と深く関与
している重要な因子であるとされていることから、本発
明のラット26プロテアソームは、そのような各種病態
の発現メカニズムの解明と、その有効な治療法を確立す
る上できわめて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ラット26Sプロテアソームのバイオゲ
ルカラムによる精製における溶出パターンを示す。
【図2】本発明ラット26Sプロテアソームのグリセロ
ール密度勾配遠心法による精製における溶出パターンを
示す。
【図3】本発明ラット26SプロテアソームのSDS-
PAGEによる分析結果を示す。
【図4】本発明ラット26Sプロテアソームの2次元電
気泳動による分析結果を示す。
【図5】本発明ラット26Sプロテアソームの未変性状
態での電気泳動による分析結果を示す。
【図6】本発明ラット26Sプロテアソームによるユビ
キチン結合蛋白質およびATP分解活性に及ぼすpHお
よびATP濃度依存性を示す。
【図7】本発明ラット26Sプロテアソームの蛋白質分
解活性のSDS濃度依存性を示す。
【図8】本発明ラット26Sプロテアソームの蛋白質分
解活性のpH依存性を示す。
【図9】本発明ラット26Sプロテアソームの蛋白質分
解活性の温度依存性を示す。
【図10】本発明ラット26Sプロテアソームの形状を
電子顕微鏡写真を基に作製した分子構造モデルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 33/574 A 9015−2J

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の酵素学的および物理学的性質を有す
    るラット26Sプロテアソーム。 (1)ユビキチンが結合した蛋白質を、ATP存在下で
    分解する活性を有する (2)ATPを分解する活性を有する (3)超遠心法で測定した沈降係数は、26Sである (4)分子量は、約2,000kDa(キロダルトン)
    であり、21ー31kDaの20Sプロテアソームと、
    それ以外の分子量35ー110kDaの制御因子蛋白質
    群より構成される (5)電子顕微鏡で観察した分子形状は、ダンベル状
    で、その中央部に20Sプロテアソームの構造が認めら
    れる (6)中性アミノ酸である合成基質Suc−LLVY−
    MCA(サクシニル−ロイシル−ロイシル−バリル−チ
    ロシン−4−メチル−クマリル−7−アミド)を分解す
    る酵素活性を有し、その至適pHは、7.5ー9.0で
    ある (7)酸性アミノ酸であるCbz−LLE−NA(カル
    ボベンゾキシルーロイシルーロイシルーグルタミン酸ー
    2ーナフチルアミド)を分解する酵素活性を有し、その
    至適pHは、7.0ー8.5であり、至適温度は、35
    ℃ー45℃、至適SDS添加濃度は、0.05%である (8)塩基性アミノ酸であるBoc−LRR−MCA
    (t−ブチルオキシカルボニルーロイシルーアルギニル
    ーアルギニンー4ーメチル−クマリルー7ーアミド)を
    分解する酵素活性を有し、その至適pHは、7.5ー
    9.0であり、至適温度は、30℃ー45℃である
  2. 【請求項2】 ラット臓器、細胞の細胞質画分より、物
    理化学的分離方法により、安定、かつ高収率で精製され
    たラット26Sプロテアソームを製造する方法におい
    て、当該物理化学的分離方法が、超遠心、ゲル濾過カラ
    ム、ハイドロキシアパタイトカラム、グリセロール密度
    勾配遠心から選択される1種以上を用いたものであるこ
    とを特徴とする前記請求項1に記載されたラット26S
    プロテアソームの製造方法。
  3. 【請求項3】 ラットの臓器、細胞の細胞質画分より、
    物理化学的分離方法により、安定、かつ高収率で精製さ
    れたラット26Sプロテアソームを製造する方法におい
    て、グリセリン、2ーメルカプトエタノールあるいはジ
    チオスレイトール、およびATPを添加した分離溶媒を
    用いた物理化学的分離方法により、精製することを特徴
    とする前記請求項2に記載されたラット26Sプロテア
    ソームの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7601512B2 (en) 2002-07-19 2009-10-13 Bayer Cropscience Ag Methods for identifying inhibitors of the 20S and 26S proteasome
JP2019527815A (ja) * 2016-06-06 2019-10-03 マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ 生体高分子複合体の精製のための方法

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US11401301B2 (en) 2016-06-06 2022-08-02 Max-Planck-Gesellschaft Zur Foerderung Der Wissenschaften E.V. Method for the purification of biological macromolecular complexes

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