JP3123488B2 - 圧延用スリーブロールのシャフトの製造方法 - Google Patents

圧延用スリーブロールのシャフトの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、超硬合金、セラ
ミックスなどの硬質材料から成る耐摩耗性に優れたロー
ルスリーブをシャフトの外周に固定して構成される圧延
用スリーブロールにおける前記シャフトの製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】圧延用スリーブロールに使用されるシャ
フトは、ロールスリーブを固定した段階で既に内部に応
力が発生する。例えば、特公昭52−26227号公報
や特公昭60−20084号公報等に示されているよう
に、側面より圧力を加えてロールスリーブを固定する場
合(以下、これを側圧固定と言う)には、締付け反力に
よりシャフト内部に軸方向の引張応力が発生し、また、
内圧固定(特公昭56−53441号公報に示される方
法や焼き嵌め、圧入固定などの締まり嵌めによる固定
法)では、シャフト径方向に圧縮応力が、シャフト軸方
向には引張応力と圧縮応力とが分布して発生する。この
状態でシャフトは変動負荷である圧延荷重を受け、従っ
て、シャフト材料には、疲労強度及び靱性に優れている
機械構造用合金鋼(SCM材やSNCM材)が一般的に
使用されているが、それでも、ロールスリーブ固定によ
って発生する内部応力が疲労強度低下の一因となること
から、内部応力による疲労強度低下分を考慮してシャフ
ト径を太くするなどの対応を採らざるを得ないのが実情
である。
【0003】また、内圧固定の場合には嵌合面に10〜
40MPa程度の非常に大きな接触面圧が作用するた
め、ロールスリーブと比較して硬度の低いシャフト側の
嵌合面が塑性変形したり、摩耗したりする。表面に塑性
変形部が発生すると亀裂が生じ易くなり、シャフトが折
れることがある。また、シャフトの嵌合部が摩耗すると
締め代が減少してロールスリーブの空回りの原因になっ
たり、摩耗部に応力が集中してシャフト折損の原因にな
ったりする。
【0004】そこで、内圧固定式のスリーブロールにつ
いては、シャフトのロールスリーブ取付部の表面に硬質
クロムメッキを施してその面の摩耗と塑性変形を防止
し、併せて耐食性を向上させる方法が採られてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】シャフトの径を太くし
てシャフト強度を高めると、ロールスリーブの肉厚がシ
ャフトの増径分減少してロールの有効径が小さくなり、
ロール寿命が短くなる。ロールスリーブは、外周の圧延
溝(カリバー)が肌荒れしたり、偏摩耗した場合、外周
を削り直して元の径よりも小径のロールとして再生す
る。ロールの再加工代は、ロールスリーブの肉厚によっ
て決まるので、シャフト径を大きくするとロール寿命が
短くなって経済的に不利になる。
【0006】なお、スリーブロールのシャフトは、大量
生産される部品ではないので、疲労強度を従来材よりも
高めた専用のシャフト用鋼材を新たに開発するのは、開
発費や製造コストを考えると得策でない。
【0007】そこで、この発明は、一般に流通している
鋼材を用いてシャフトの疲労強度を高められるようにす
ることを課題としている。
【0008】また、内圧固定式スリーブロールで行われ
ている硬質クロムメッキによるシャフトのロールスリー
ブ取付部の被覆は、シャフトの疲労強度向上には役立た
ず、むしろ、メッキ層内に生じる引張残留応力や内部亀
裂の影響により疲労強度を低下させる。これは既に知ら
れていることであり、図1の実験データにもそれが現れ
ている。
【0009】また、クロムメッキ施工時に発生する水素
を吸収して鋼材が水素脆化し易く、靱性が低下して脆く
なることが多い。
【0010】さらに、内圧固定では嵌合部に10〜40
MPaの接触面圧が作用しており、この状態で圧延中に
ロール回転による接触面圧の局所的変動、微動摩擦が起
こるため、嵌合部の温度が局部的に上昇してクロムメッ
キの溶着が起こり、ロールスリーブをシャフトから外せ
なくなることがある。無理に外すと、メッキ層が剥離
し、シャフトを再使用する場合にはその補修が必要にな
ってシャフト再使用による経済上の利点が失われてしま
う。
【0011】従って、クロムメッキは無い方が良いが、
これを無くすと嵌合面の硬度が不足してその面の塑性変
形、摩耗が起こり、かつ耐食性も悪くなる。
【0012】そこで、クロムメッキ無しで表面の高硬度
化、耐食性向上も図れるようにすることを課題としてい
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、スチール性シャフトのロール
スリーブ取付部の表面に、シャフト母材の窒化層を設
け、この窒化層形成部の外周にロールスリーブを固定す
る。
【0014】ロールスリーブの固定は、側圧固定、内圧
固定のどちらで行ってもよい。本発明を適用する場合、
硬質クロムメッキは不要である。
【0015】なお、前述の窒化層は、シャフトの軸受取
付部(ジャーナル部)の表面や駆動部の表面にも設けて
よい。
【0016】また、シャフトの材質は、JIS SNC
M630が特に適している。
【0017】次に、この発明では、上記の窒化層を生成
するため、560℃〜650℃の温度で焼き戻しされた
表面硬度がHRC 30〜40のシャフト用鋼材を、窒化
炉の中に垂直に配置し、この状態で焼き戻し温度よりも
低い550℃〜600℃の温度で5〜20時間イオン窒
化処理する方法を採る。この方法でのイオン窒化処理
後、更に、シャフト用鋼材の表面に形成された窒化層の
表層部を0.02mm〜0.15mmの深さ除去する
と、より性能のよいシャフトが得られる。
【0018】
【作用】表面に母材の窒化層を生じさせたシャフトは疲
労強度が向上する。従って、無処理のシャフトやクロム
メッキしたシャフトと比較して強度を維持しながらシャ
フト径を小さくすることが可能となり、その縮径量相当
分ロールスリーブ肉厚を増加させ得るので、再加工代を
大きくしてロール寿命を延ばすことができる。
【0019】また、鋼の窒化層は、耐摩耗性、耐食性に
も優れており、これにより、内圧固定式のスリーブロー
ルにおいては、シャフト表面に設けていた硬質クロムメ
ッキ層が不要になるので、メッキ層の焼付き、剥離の問
題が解消され、シャフトの補修無しでの再使用が可能に
なって補修の手間及び費用の削減が図れる。さらに、ク
ロムメッキの施工による疲労強度の低下が起こらず、シ
ャフトの長寿命化の面で更に有利になる。
【0020】なお、シャフトの軸受取付部は、ベアリン
グのインナーレースの着脱等によって傷付いたり、摩耗
したりする。シャフトの駆動部も強い面圧を受けるの
で、疲労、摩耗が起こり易い。従って、この軸受取付部
や駆動部の表面に窒化層を設けてその部分の疲労強度と
耐摩耗性を向上させることも、シャフトの延命に関して
有効なことと言える。
【0021】次に、この発明の方法の作用と条件限定の
理由を述べる。
【0022】JIS SNCM439、SNCM630
等の合金鋼を窒化処理して疲労強度、表面硬度を高める
ことは一般に行われていることであり、特開平2−29
4463号や特開平4−66646号公報にも関連の技
術が示されている。
【0023】窒化処理の方法としては、タフライド法、
ガス軟窒化、イオン窒化、ガス窒化等の方法があり、そ
のいずれの方法によっても前述の窒化層を生成できる。
この窒化処理は、比較的低温で行われ、窒化後の製品の
歪が少ないことで知られている。中でもイオン窒化は処
理歪が最も小さく、しかも、イオンの浸透が強力である
ため処理時間が短くて済み、鋼材の熱による機械的特性
の劣化を抑え易い。
【0024】そこで、この発明のシャフト製造方法は、
そのイオン窒化処理方法を採用する。
【0025】また、一般的な窒化処理温度は500℃〜
600℃程度とされているが、500℃前後の温度は鋼
材の焼き戻し脆化の温度領域であり、この温度で長時間
保持されると鋼材の衝撃値が低下するので、かかる温度
領域を避けてイオン窒化を550℃〜600℃の領域で
実施する。
【0026】処理時間は、コストや鋼材の機械的特性の
観点からは短い程よいが、5時間未満では生成される窒
化層の層厚が充分でなく、一方、20時間を越えると窒
化層の層厚は大きくなるが母材硬度が低下して必要なシ
ャフトの機械的特性が得られないケースが生じてくるの
で5〜20時間とした。
【0027】また、焼き戻し温度は、窒化処理後の鋼材
の歪や軟化を抑制するために窒化処理温度よりも高くす
る必要があるが、その焼戻し温度が高過ぎると、焼戻し
後の鋼材硬度がHRC 30以下になってスリーブロール
用シャフトに要求される引張り強度を満たせなくなる。
必要強度を確保するには、焼き戻し後にHRC 30〜4
0の表面硬度が必要である。焼戻し温度が低過ぎると、
焼戻し後の表面硬度がHRC 40を越えて靱性が低下
し、強度バランスが悪くなる。従って、焼戻し温度は5
60℃〜650℃とする。
【0028】さらに、この発明の方法では、以下のこと
が特に重要になる。窒化処理は、自動車のクランクシャ
フト、カムシャフトなど比較的小さな部品に適用されて
いる。このような小物部品は特別の工夫無しで処理でき
るが、スリーブロール用のシャフトは、非常に大きく、
重いため、長尺シャフトは特に、イオン窒化処理中に自
重による影響が出て処理歪が大きくなり易い。全長が1
000mmを越えるような長尺シャフトの場合、僅かな
歪が大きな曲がりや反りとなって現れるので、処理歪を
できるだけ小さく抑えてやらないと、曲がりや反りを修
正するための仕上げ研削代が大きくなる。それを見込ん
だより厚い窒化層を得ようとすると、イオン窒化の処理
時間が長くなって鋼材の機械的特性の劣化や生産性低下
が起こる。また、シャフトの曲がり、反りが大きいと、
研削仕上げ後に残される窒化層の厚みが各部で不均一に
なって、表面硬度のばらつきが大きくなる。
【0029】そこで、この発明では、シャフト鋼材を窒
化炉内に垂直に配置してイオン窒化を行う。これによ
り、自重による歪が抑制され歪の絶対値が小さくなって
上記の不具合が解消される。
【0030】さらに、窒化層の表面研削は、寸法精度を
確保することのみを目的としてなされてきたが、この発
明では研削深さを限定して表層の脆化物を除去する。窒
化層の表層部には硬くて脆いFe2-3 N化合物やFe4
N化合物などが生じている。これ等の化合物は、ほぼ
0.015mmの深さまで生成されることを確認したの
で、余裕を見て、表層部を少なくとも0.02mmの深
さ研削し、脆化物を除去する。
【0031】研削量の上限は、研削によって窒化層が無
くなると窒化処理の意味が無くなるので深さ0.15m
mを上限とする。これにより、シャフトの靱性が向上
し、残存窒化層により、疲労強度の維持、表面の高硬度
化、耐食性の確保がなされてバランスのよいシャフトが
得られる。
【0032】なお、窒化処理に適した機械構造用鋼とし
てSACM645がJISで定められているが、機械的
特性値がより優れているSNCM630に窒化処理を施
すと、より高強度のシャフトを実現できる。
【0033】
【発明の実施の形態】図2乃至図6に、この発明の製造
方法を用いて作られた圧延用スリーブロールの具体例
示す。
【0034】図2のスリーブロールは、超硬合金、硬質
合金、セラミックスなどで形成されたロールスリーブ1
を、鋼製シャフト2の外周に嵌め、シャフト2に螺合し
たナット4を締付けてスペーサリング3によりロールス
リーブ1の両側面に挾持圧を加える構造になっている
が、この構造に限定されるものではない。5はフィレッ
トリングである。この図2のスリーブロールは、圧延荷
重を受けた際に曲げモーメントが最大になるシャフト2
の中央のロールスリーブ取付部の表面に母材鋼の窒化層
6(図に細かく点を打った部分)を設けている。この部
分は、高い嵌め合い精度が要求されるので、イオン窒化
処理後に生成された窒化層の表面を必要に応じて研削仕
上げする。窒化層の表層部には、先に述べたように硬く
て脆いFe2-3 N化合物やFe4 N化合物が生じている
ので、研削仕上げは脆化物を除去する深さで行うのがよ
い。
【0035】図3は、内圧固定式熱間線材圧延用スリー
ブロールへの適用例である。このスリーブロールは、ロ
ールスリーブ1とシャフト2のテーパ嵌合部に液圧を導
入し、その液圧でロールスリーブ1を拡径させてロール
スリーブの着脱を行う。嵌合部の液圧を除去するとロー
ルスリーブ1が収縮し、締まり嵌めの状態になってロー
ルスリーブ1がシャフト2上に固定される。このスリー
ブロールは、シャフトのロールスリーブ取付部(テーパ
嵌合部)に複雑な応力が加わるので、その部分の表面に
窒化層6を設けている。また、この場合も、必要に応じ
て窒化処理後に仕上げ研削を行うようにしている。従来
は、この部分に耐摩耗性、耐食性向上のためのクロムメ
ッキ層を施すのが一般的であったが、図3のスリーブロ
ールにはそのクロムメッキ層が存在しない。従って、ク
ロムメッキの溶着によるロールスリーブの着脱不能の問
題、メッキ剥離によるシャフト再使用時の補修の問題、
シャフトの水素脆化の問題が起こらない。事実、ロール
スリーブ1が廃却径となった後に解体した結果、ロール
スリーブ1の取外しは支障無く行え、新しいロールスリ
ーブを取付けてシャフト2を補修無しで再使用すること
ができた。
【0036】図4は、第3の実施形態である。このスリ
ーブロールは、シャフト2の軸受取付部(ジャーナル
部)2aの表面にも窒化層6を設けている。この部分
も、窒化処理後、必要に応じて仕上げ研削を行う。その
他の構成は、図2のスリーブロールと同じであるので説
明を省く。この図4のスリーブロールは、ロールスリー
ブ1が2回廃却される間(約6年間)、軸受取付部の補
修無しで使用できた。
【0037】図5は、シャフト2の駆動部2bの表面に
も窒化層6を設けた例である。このスリーブロールもロ
ールスリーブが2回廃却になる約6年間、シャフト駆動
部の補修無しで使用できた。
【0038】図6は、シャフト2の全表面に窒化層を設
けたものである。これは、窒化処理時に不要箇所を窒化
防止剤の塗膜で覆う工程が省かれるので、生産性の面で
有利になる。また、応力が集中し易いシャフト外周のぬ
すみ部2cも含めてシャフト2の全域に窒化層6が設け
られているので全域の疲労強度が向上する。
【0039】なお、例示のスリーブロールの窒化層6
は、いずれもイオン窒化処理して生じさせた。
【0040】このイオン窒化は、歪抑制の効果が最も高
い処理法であるが、長尺のスリーブロール用シャフトは
窒化処理時の僅かな歪が大きな曲がりや反りとなって現
れるので、長尺シャフトに適した技術を確立するために
事前に下記の実験を試みた。
【0041】その実験には、図7に示す形状のシャフト
を用いた。同シャフトの寸法諸元は、D=φ200m
m、d=φ150mm、L=1200mm、L1 =60
0mm、L2 =300mmである。シャフト材質は、従
来からスリーブロールに用いられているSNCM439
とSNCM630の2種とした。その2種類のシャフト
鋼材を取り代5mm/径を残して各々630℃で焼き戻
しした。この時点での表面硬度は、SNCM630がH
Rc34、SNCM439がHRc31であった。その
後、研削仕上げ代0.2mm/径を残して580℃で1
0時間の条件でシャフト全体にイオン窒化処理を施し
た。この処理は、歪抑制のために、シャフトを窒化炉内
に垂直に保持して行った。
【0042】その結果、得られたシャフトは2者とも両
センタ基準の振れが0.02mm以下に納まり、研削仕
上げ後も表面に窒化層が残されるものになっていた。
【0043】図8は、試作シャフトの窒化後の表面硬度
分布を示している。これによると、どちらのシャフトも
窒化層が0.5mm(1mm/径)程度の深さで生成さ
れているが、2者の表面硬度は著しく異なっている。S
NCM630のシャフトは表面硬度がHv900であ
り、仕上げ研削代である0.2mm/径を除去後もHv
750以上の表面硬度が維持される。これに対し、SN
CM439のシャフトは、表面硬度がHv540であ
り、同じく研削仕上げをした場合の表面硬度はHv49
0以上となる。この差は、Crの含有量に起因する。従
って、JIS規定のニッケルクロムモリブデン鋼(SN
CM材)を使用する場合は、Cr含有量が最大のSNC
M630を選択すると窒化処理の効果が最大限に引き出
される。
【0044】なお、窒化層の断面を顕微鏡で観察したと
ころ、表面から深さ0.015mmあたりまで白色のF
2-3 NやFe4 Nの化合物層が確認された。これ等の
脆い物質は衝撃を受けると表面に亀裂が入り易く、シャ
フト折損の引き金になる。従って、実用に供するシャフ
トについては、窒化層の表層部を深さ0.02mm〜
0.15mm除去するのが望ましい。
【0045】次に、SNCM630の窒化処理品と未処
理品について疲労強度の変化を比較した。疲労強度の評
価は、小野式回転曲げ疲労試験によって行った。窒化処
理品の窒化条件は前述の試作シャフトと同じにし、窒化
後に表面を0.2mm/径(深さ0.1mm)だけ研削
した。その結果を図9に示す。この図から、窒化処理に
よる疲労限の向上効果が確認できる。
【0046】図2のスリーブロールのシャフト(全長1
600mm、ロールスリーブ取付部直径210mm、材
質SNCM630)は、上記の処理により、ロールスリ
ーブが2回廃却される寿命(約6年)に勝る寿命が実際
に得られている。
【0047】なお、窒化処理を前提とした場合は窒化鋼
であるSACM645も選択肢に挙げられるが、これは
焼入性や機械的特性がSNCM630より劣るので、直
径が200mmを越えるようなスリーブロール用シャフ
トに用いる場合SNCM630より強度が出ず、価格も
SNCM439より高いため窒化処理するメリットがさ
ほど出ない。また、窒化を前提にした専用材の開発は、
開発コストや生産性を考えると得策でなく、従って、シ
ャフト材料は、JISで定められた流通量の多い機械構
造用鋼を用いるのがよい。
【0048】
【発明の効果】以上述べたように、この発明は、圧延用
スリーブロールの鋼製シャフトの疲労強度を、表面の窒
化処理によって高めたので、シャフト径を小さくするこ
とができ、そのため、ロールスリーブの再加工代を増加
させてロールの寿命を向上させることが可能になる。
【0049】特に、内圧固定式スリーブロールについて
は、従来、嵌合部のシャフト表面に設けていたクロムメ
ッキが不要となるため、メッキ層の焼付き、剥離、メッ
キ時のシャフトの水素脆化の問題が解消され、シャフト
を補修無しで再使用することが可能になる。
【0050】また、この発明のシャフト製造方法では、
シャフト用鋼材を窒化炉内に垂直に配置して窒化中の自
重による歪を抑えるので、窒化処理後のシャフトの曲が
りや反りが小さくなり、仕上げ研削での取り代が平均化
されて研削後の表面硬度分布のばらつきが小さくなる。
【0051】また、取り代の平均化により、窒化層を無
駄に厚く形成する必要が無くなり、窒化処理時間の短縮
によるシャフトの機械的特性の劣化防止、生産性の向上
が図れる。
【0052】さらに、仕上げ研削時に窒化層表面の脆化
物を除去したものはシャフトの衝撃値の低下が抑えら
れ、シャフトの折損防止の効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SNCM447の無処理品とクロムメッキ品の
疲労試験結果を示す図表
【図2】この発明を適用したスリーブロールの具体例
示す部分破断側面図
【図3】この発明を適用したスリーブロールのの形
の部分破断側面図
【図4】スリーブロールの更に他の形態を示す部分破断
側面図
【図5】スリーブロールの更に他の形態を示す部分破断
側面図
【図6】スリーブロールの更に他の形態を示す部分破断
側面図
【図7】イオン窒化処理の実験に用いたシャフトの側面
【図8】窒化処理後のシャフトの硬度分布を示す図表
【図9】SNCM630の無処理品と窒化処理品の疲労
試験結果を示す図表
【符号の説明】
1 ロールスリーブ 2 シャフト 2a 軸受取付部 2b 駆動部 2c ぬすみ部 3 スペーサリング 4 ナット 5 フィレットリング 6 窒化層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−75808(JP,A) 特開 平3−232984(JP,A) 特開 平2−182308(JP,A) 特開 平6−264211(JP,A) 特開 平2−294463(JP,A) 特開 平4−66646(JP,A) 実開 昭51−101336(JP,U) 実開 昭63−6833(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 27/03 520 C21D 1/06 C21D 9/28 C23C 8/38 F16C 13/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロールスリーブ取付部の表面にシャフト
    母材の窒化層を設けた鋼製シャフトの外周に、硬質材料
    で形成されたロールスリーブを固定して成る圧延用スリ
    ーブロールのシャフトの製造方法において、上記の窒化
    層を生成するために、560℃〜650℃の温度で焼き
    戻しされた表面硬度がHRC 30〜40のシャフト用鋼
    材を、窒化炉の中に垂直に配置し、この状態で焼き戻し
    温度よりも低い550℃〜600℃の温度で5〜20時
    間イオン窒化処理することを特徴とする圧延用スリーブ
    ロールのシャフトの製造方法。
  2. 【請求項2】 ロールスリーブ取付部の表面にシャフト
    母材の窒化層を設けた鋼製シャフトの外周に、硬質材料
    で形成されたロールスリーブを固定して成る圧延用スリ
    ーブロールのシャフトの製造方法において、上記の窒化
    層を生成するために、560℃〜650℃の温度で焼き
    戻しされた表面硬度がHR C 30〜40のシャフト用鋼
    材を、窒化炉の中に垂直に配置し、この状態で焼き戻し
    温度よりも低い550℃〜600℃の温度で5〜20時
    間イオン窒化処理し、そのイオン窒化処理後に、更に、
    シャフト用鋼材の表面に形成された窒化層の表層部を
    0.02mm〜0.15mmの深さ除去することを特徴
    とする圧延用スリーブロールのシャフトの製造方法。
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