JP3118164B2 - 新規酵母及び当該酵母を利用するパン類の製造法 - Google Patents

新規酵母及び当該酵母を利用するパン類の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規酵母及び当該酵母
を利用したパン類の製造方法に関するものである。更に
詳しくは全ての種類のパン類における冷凍生地や冷蔵生
地に有用な新規な酵母、当該酵母を含有するパン生地及
び当該酵母を利用したパン類の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、製パン業界においては、省力化に
よる製パン工程の合理化、労務管理の合理化を図るため
の製パン法の検討が進んでいる。また一方では、消費者
ニーズの多様化に応え、フレッシュなパンをよりおいし
い状態で提供し、更には消費者の要望するパン製品の品
種のバラエティー化を達成するために、冷凍生地製パン
法及び冷蔵生地製パン法の検討が進み、これらの製パン
法が盛んに行われるようになってきた。
【0003】従来の冷凍生地用酵母は、冷凍耐性が非常
に強く、長期間の冷凍保管後でも、冷凍前と変わらない
フレッシュな、かつ品質の安定したパンを製造できるよ
うにはなってきたが、パン生地の保管条件の不良などに
よる温度上昇で、凍結したパン生地が部分的に解凍して
しまい、パン生地中の酵母の活性が復活し、パン生地が
膨張して、最終製品のパンの品質が著しく低下するとい
うことがあるため、パン生地の保管時あるいは流通時の
冷凍庫の温度管理は非常に厳密にしなければならず、一
定の温度を保つために膨大なエネルギーを必要とする。
また、使用時に一旦解凍してしまえば、酵母の活性は復
活しているため、残ったパン生地を再度冷凍あるいは冷
蔵保管し、再度利用しようとすれば、パンの表皮に火膨
れが発生し、パンの品質は著しく低下してしまう、など
の問題点を抱えているのが実状である。
【0004】このような課題に関連して、特開平6−2
45687では、冷凍耐性酵母に由来し、低温感受性を
有するパン酵母が開示されているが、低糖生地(5〜6
%配合)での冷凍耐性及び低温感受性についてだけであ
り、また、解凍(昇温)後再冷凍後の発酵力は冷凍前の
60%程度であり、すべての種類の配合の冷凍生地での
実用性という面で問題がある。
【0005】ペストリーの製造では、ロールイン油脂を
層状に折り込むために、生地を予め低温処理するリター
ド法が取り入れられている。通常のパン酵母を用いた場
合には、低温下でも発酵は停止せず、生地が膨張してし
まい、ロールイン油脂がきれいに折り込まれず、できた
パンの層がきれいにならないことが多く、発酵が比較的
止まりやすい0℃付近まで温度を下げて低温処理を行っ
ているのが実状である。
【0006】このような課題を解決すべく、特開平5−
76348、特開平5−284896、特開平5−33
6872、特開平7−79767、及び特表平7−50
006には、冷蔵などの低温中では発酵しない、又は発
酵が停止し、一定温度以上で発酵する酵母いわゆる低温
感受性酵母が開示されているが、いずれも低温下で発酵
が速やかに停止することが特徴であり、ロールイン油脂
折り込みの際の低温処理時には、発酵は停止し、生地は
膨張せず、きれいな油脂の層が形成されるという課題は
解決されている。しかし、冷蔵生地製パン法において、
低温で発酵が停止してしまう性質の酵母を利用した場
合、生地温度がある程度上昇するまで生地を放置するな
どの工夫をしないと、通常のパン酵母を用いた場合に比
べ、生地膨張量が不足し、ボリュームのある良質のパン
ができない。また、低温下で発酵が完全に停止すること
により、酵母の発酵代謝物による生地の熟成も停止して
しまい、風味や食感の良好なパンが製造できない等の問
題点が残されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】冷蔵生地製パン法と
は、混捏したパン生地を直ちに又は発酵させた後、冷蔵
保管した後、発酵及び/又は加熱処理を行いパンを製造
する方法である。通常のパン酵母のパン生地中で活発に
発酵する温度域は25〜35℃であり、5℃程度の冷蔵
温度にさらされた生地中では、発酵が活発な状態から弱
い発酵状態へと移行していく。従って、冷蔵期間が長期
間の場合には、冷蔵されたパン生地中でも発酵が進行
し、生地は過剰に発酵した状態となり、最終製品のパン
の品質の低下を招くことになる。これを解決するため
に、冷蔵温度をパン生地が凍結しない温度まで下げる方
法も行われているが、冷蔵に関わるエネルギーコストが
上昇する不具合を生じている。
【0008】一方、パン酵母の改良も行われ、低温感受
性を備えた各種の冷蔵用酵母が市販されてはいるが、低
温下での発酵が完全に停止することが大きな特徴である
ため、先に記した通常のパン酵母で見られた課題は、概
ね解決されてはいるが、発酵が停止し過ぎてしまい、冷
蔵保管された生地を常温域まで戻さなければ発酵が回復
せず、従来の製パン工程に適合しない。あるいは、発酵
が停止し過ぎて、冷蔵保管時の生地が未熟になり、パン
の品質が低下する等の課題を抱えているのが実状であ
る。
【0009】また、冷凍生地製パン法においては、パン
生地の冷凍保管時の期間による酵母の死滅あるいは活性
の低下が問題となるが、冷凍生地用酵母として市販され
ているものを利用することにより、ある程度の課題の解
決が可能になってきた。しかし、パン生地を冷凍状態で
保管する場合、流通する場合、及び生地解凍の温度管理
が不十分な場合には、この限りではなくなる。つまり、
温度管理が不適切で、生地温度が上昇して部分的な解
凍、あるいは生地解凍時の温度上昇による酵母の活性化
が、生地中の酵母の死滅、発酵力・生地膨張力の低下、
死滅酵母から漏洩した細胞内容物によるガス保持力の低
下が起こり、最終パン製品の内相及び外観の劣化、ある
いは風味や食感の低下を引き起こすことになる。
【0010】本発明は、従来の生地配合及び製パン工程
を変更せずに、冷凍及び/又は冷蔵によるパン生地への
悪影響のない、低コストで品質の安定したパンを製造す
るための酵母を提供することにある。つまり、長期間の
冷凍生地保管が可能な強い冷凍耐性を有し、かつ低温下
での発酵が通常のパン酵母に比べ抑制されるものの、停
止することはなく、更には冷蔵生地製法及び通常の冷凍
生地製法においても、ホイロ発酵時間に遅延を来さない
程度の低温感受性いわゆる低温発酵抑制能を有した酵母
を提供することを目的になされたものである。
【0011】更に、本発明は前記酵母を利用することに
よって、パン生地冷凍時の温度管理を徹底することな
く、フレッシュで美味しい各種の配合のパン類を製造す
る方法を提供することをも包含するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するためになされたものであって、従来のように、
自然界から、あるいは保存菌株からスクリーニングまた
は変異処理、あるいは交雑等の育種操作により、冷凍耐
性を有し、かつ低温で発酵が完全に停止するいわゆる低
温感受性酵母を取得したが、この酵母を利用した場合、
冷蔵生地製パン法においては、低温下での生地の熟成が
進まず、ホイロ時間の遅延も認められ、満足できる結果
には到らなかった。また、冷凍生地製パン法において
は、パン生地は冷凍されているため、通常の解凍条件で
はパン生地の温度は10℃以下と低く、酵母の活性が停
止しているために、冷蔵生地と同様に、生地温度が上昇
するまでは、生地の膨張はほとんどなく、その結果、ホ
イロ発酵時間が著しく遅延し、満足の出来るパンとはな
らなかった。
【0013】そこで、本発明者らは発想を根本的に転換
して、強い冷凍生地耐性を持ち、かつ低温での発酵が従
来のパン酵母よりもさらに緩慢にはなるものの、停止す
ることのない低温発酵抑制能に着目した。
【0014】本発明者らは、数多くの保存菌株の中から
から冷凍耐性の優れた菌株を選抜し、これらの選抜菌株
を親株として、変異処理及び交雑等による育種操作を行
い、造成された菌株について、幅広く目的酵母のスクリ
ーニングを行った結果、強い冷凍耐性を有し、かつ低温
下での発酵が抑制されることはあっても、停止すること
のない低温発酵抑制能を有した目的とする酵母を取得す
ることに成功した。
【0015】本発明は、このような有用新知見を基礎と
し、更に研究の結果、完成されたものであって、その詳
細は以下に述べるとおりである。
【0016】本発明に用いる酵母は、パン酵母として使
用しうるものであれば良いが、特にサッカロミセス・セ
レビシエに属する酵母が好ましく、性質として冷凍耐性
及び低温発酵抑制能を有していることが不可欠である。
ここで言う冷凍耐性とは、パン生地中の酵母がパン生地
を冷凍処理を行った後、解凍後の生地膨張力が、冷凍・
解凍処理を行わないパン生地と同等の生地膨張力を発揮
する能力を言う。つまり、冷凍・解凍処理を行っても、
生地中での酵母の生残率及び発酵力の低下が普通のパン
酵母に比べて著しく少ない性質を示すものである。ま
た、低温発酵抑制能とは、パン生地を低温下で冷蔵保管
した場合に、普通のパン酵母を使用したパン生地に比
べ、生地の膨張が緩慢となるが、生地の膨張は微かに続
く性質を言う。つまり、低温感受性を有した酵母である
が、通常のパン酵母に比べ、低温下での発酵が抑制さ
れ、緩慢になることはあっても、発酵が停止したり、欠
如したり、あるいは不活性な状態になるものとは根本的
に異なる性質である。
【0017】本発明では、上記した冷凍耐性を有するサ
ッカロミセス・セレビシエに属する保存菌株から、特に
冷凍耐性の優れた菌株を選抜し、親株として使用した。
選抜された親株について、変異処理及び交雑による育種
操作を行い取得された造成株から、20〜35℃での常
温域では、発酵力が親株と同等以上である、及び−20
℃で2週間保管した後の生地の膨張力が親株に比べ同等
以上である、更には0〜10℃以下の低温域での発酵力
が、親株に比べ緩慢又は抑制されてはいるが、低温の温
度に関わらず発酵が停止することのない低温発酵抑制能
を有する菌株だけを選択した。
【0018】このような性質を有する酵母としては、以
下の番号で示される酵母が挙げられる。サッカロミセス
・セレビシエP−626(FERM P−1496
2)、サッカロミセス・セレビシエP−627(FER
M P−14963)、サッカロミセス・セレビシエP
−628(FERM P−14964)、サッカロミセ
ス・セレビシエP−629(FERM P−1496
5)、サッカロミセス・セレビシエP−630(FER
M P−14966)。
【0019】変異処理の方法は、エチルメタンスルホネ
ート処理、ニトロソグアニジン処理、紫外線照射等が公
知であり、これらの方法を用いることが出来る。変異誘
導された菌株の中から、低温域で発酵が抑制される菌株
を選択するには、親株と常温域で同等に発酵し、低温域
で発酵が抑制されている菌株を分離することにより可能
である。
【0020】本発明の酵母を利用することによって、低
温域でのパン生地の膨張が緩慢になる理由については明
らかではないが、変異を受けた本発明酵母の細胞膜を構
成する脂質が変化し、温度によってその流動性が変化
し、低温域では糖の取り込みが抑制され、緩慢になって
いるものと推定している。この考え方を指示する知見と
して、Biosci.Biotech.Bioche
m.,59(3)482−486(1995)には、低
温で発酵及び増殖が抑制される酵母についての新しい知
見が記載されている。つまり、細胞膜の主要構成脂質で
あるエルゴステロールが、酵母の低温感受性と関係し、
その際、低温感受性酵母は、低温下では芳香属系のアミ
ノ酸(例えばトリプトファン)が取り込めなくなり、ア
ミノ酸要求性となる。しかしながら、本発明の酵母は、
低温下であっても、アミノ酸要求性にはなっていないた
め、この酵母の低温感受性とは異なる機構と考えられ
る。
【0021】一般的に、温度感受性(Temperat
ure Sensitive:TS)に関与する遺伝子
がサッカロミセス属に存在することは公知の事実である
が、この低温感受性は、高温下もしくは低温下において
酵母の蛋白質の合成系が停止し、死滅するものであり、
本発明に関わる低温発酵抑制能とは基本的に異なる性質
である。
【0022】以下に、本発明の酵母についての取得例を
示す。
【0023】(1).酵母の変異処理方法 ここでは、エチルメタンスルフォネート(以下、EMS
と記す)による変異処理法を示す。親株となる冷凍耐性
を有した酵母菌株のスラントから、1白金耳、YPD培
地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2
%)5mlに植菌し、30℃、24時間振とう培養す
る。培養終了後、3,000rpm、5分で遠心分離し
集菌し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)にて1回
洗浄する。洗浄菌体を同じリン酸緩衝液5mlに懸濁
し、EMSを0.2ml添加し、30℃で、60分間変
異処理を行い、3,000rpm、5分間遠心分離で集
菌し、リン酸緩衝液で洗浄後、6%チオ硫酸ナトリウム
を加え中和し、EMSを分解する。更に生理食塩水5m
lで3回洗浄し、洗浄菌体を5ml生理食塩水に懸濁
し、上記のYPD培地に2%の寒天を添加したYPD寒
天プレートに、適宜希釈して塗沫する。
【0024】(2)低温発酵抑制酵母のスクリーニング
法 先に変異処理を行いYPD寒天プレートに塗沫したもの
を、30℃、2日間培養し、出現したコロニーをレプリ
カ法により、別の2枚のYPD寒天プレートに移して、
10℃で5日間、30℃で2日間培養する。30℃では
親株と同等の生育を示し、10℃では親株よりも生育が
抑制されている(但し、生育してこないものは除く)コ
ロニーを低温感受性酵母として選択する。
【0025】更に、分離した菌株をYPD寒天培地に
て、数代経代培養し、低温感受性が安定した菌株を選抜
する。次に、選抜した菌株をYPD培地5mlに、1白
金耳、植菌し、30℃で16時間培養後、洗浄し、1×
107細胞/mlとなるように、30ppmのブロムク
レゾールパープル(BCP)の入った3本のYPD(p
H6.5)培地5mlに懸濁し、5℃で2日間、10℃
で24時間、及び30℃で3時間静置培養する。培養
後、3,000rpm、5分で遠心分離し、菌体を除去
した上澄液の590nmでの吸光度を分光光度計にて測
定する。BCPはpH指示薬として用いられているもの
で、pH6.5の場合には青紫色であり、pHの低下と
ともに黄色に変化し、吸光度は低下する。従って、親株
に比べて、各温度域での吸光度の変化の小さい株を選択
する。その際、低温感受性株ではあるが、5℃及び10
℃においての吸光度が初発に比べてほとんど、あるいは
全く変化しない株は、発酵が低温で停止していることに
なるため、選択の基準から除外する。このようにして、
低温発酵抑制能を有した酵母菌株を選択することが出来
る。
【0026】上記のようにして、目的の低温抑制能を有
する酵母の取得の1例を示したが、1段階の変異処理だ
けでは、低温下での発酵が抑制されても、常温域での発
酵力や冷凍耐性が低下する傾向にあるため、これを回避
する手段の1例として、戻し交配が可能である。戻し交
配とは、変異株と野生株の胞子株を分離し、互いに異な
る接合型をもった胞子株同士を交雑させて、交雑株をと
り、更に交雑株から胞子株をとり、野生株の胞子株と交
雑を行うという操作を1回以上行う方法である。これを
行うことによって、低温発酵抑制能に関わる遺伝子と、
野生株の優れた発酵力及び/又は冷凍耐性の遺伝子を合
わせ持つ菌株を造成することが出来る。
【0027】但し、本発明の酵母の性質である低温発酵
抑制能は劣性の遺伝であり、単純に低温発酵抑制能を持
った胞子株と野生型の胞子株を交雑しても、低温発酵抑
制能は発現せず、交雑株は野生型となってしまう。従っ
て、野生型となった交雑株から胞子株を取得し、先に記
述したスクリーニング法により、低温発酵抑制能を有す
る胞子株を選抜し、元の低温発酵抑制能を有する胞子株
と交雑することが必要である。
【0028】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明するが、本発明を制限するものではない。
【0029】
【実施例1】 1.供試菌株:サッカロミセス・セレビシエP−626
(FERM P−14962)、同P−627(FER
M P−14963)、同P−628(FERM P−
14964)、同P−629(FERM P−1496
5)、及び同P−630(FERM P−14966)
の5株。
【0030】2.培養:各酵母菌株のスラントから1白
金耳、YPD培地5mlに植菌し、30℃で24時間振
とう培養したものを、糖蜜培地(糖として3%、窒素
源:尿素/硫酸アンモニウム=3/1、リン源:リン酸
1ナトリウム)200mlに接種し、30℃で、48時
間振とう培養した。これを30L容ジャーファーメンタ
ーに接種し、糖蜜を流加しながら30℃、14時間通気
撹拌しながら、種培養を行った。種培養で得られた酵母
菌体を洗浄し、本培養の種とし、種培養と同様に、糖蜜
を流加し、30℃で、通気撹拌し、アルコール制御培養
を行った。培養終了後、培養ブロスを分離・水洗・濾過
して圧搾生酵母を得た。
【0031】3.生地試験法:表1に示した各種配合に
ついて、各酵母の低温発酵抑制能を比較した。発酵力
は、イースト工業会で定められた方法に準じた。対象区
として、市販のレギュラーイースト及び冷凍生地用のF
D−1イースト(いずれもオリエンタル酵母工業株式会
社製)を用いた。その結果を表2に示した。また、5℃
におけるFD−1イースト及びP−626株の生地膨張
の経時変化について図1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【図1】
【0035】表2に見られるように、低温発酵抑制能を
有するP−626、P−627、P−628、P−62
9、P−630の5株はいずれの種類の生地において
も、28℃の常温域では対照区のレギュラーイースト及
びFD−1イーストと変わらない強さの発酵力を有して
いるが、5℃という低温域では、対照区に比べ明らか
に、発酵が抑制されている。5℃、24時間後の生地膨
張量で比較すれば、対照区の生地膨張量の30〜40%
程度である。
【0036】また、図1に見られるように、低温発酵抑
制能を有するP−626株の5℃での生地膨張の変化
は、24℃に捏上げられた生地が5℃の発酵室に移行
し、生地温度が低下するにつれて発酵が弱まるが、発酵
は停止せず、12時間以降は5ml/3時間の生地膨張
速度で発酵が連続している。一方、低温発酵抑制能のな
いFD−1イーストの場合には、低温になるにつれて酵
母の活性は低下し発酵は抑えられるが、P−626株程
ではなく10ml/3時間の膨張速度である。
【0037】
【実施例2】実施例1で得られた酵母菌体を用いて、表
3に示した配合で生地を調製し、28℃でフロアを30
分とった後、−20℃で生地を4週間保管し、各酵母の
冷凍耐性の経時変化を、室温解凍1時間後の35℃での
所定容積に達するまでの適性ホイロ時間を見ることによ
って比較した。バターロール生地(中糖生地)の結果を
図2に、菓子パン生地(高糖生地)での結果を図3に示
した。
【0038】
【表2】
【0039】
【図2】
【0040】
【図3】
【0041】図3及び図4で明らかなように、冷凍耐性
のないレギュラーイーストは、冷凍保管期間が長くなる
につれて、解凍後のホイロ時間が長くなる傾向である
が、冷凍耐性を有する冷凍生地用酵母のFD−1イース
トと同様に、低温発酵抑制能を有するP−626〜63
0の5株とも、解凍後のホイロ発酵時間は、冷凍期間の
長短に関わらず、極めて安定しているため、5菌株とも
強い冷凍耐性を有していることが分かる。また、低温で
の発酵が抑制されるために、生地解凍後のホイロ時間は
遅延されることが予想されるが、P−626〜630の
5株とも、冷凍前の生地でのホイロ発酵時間とほとんど
変化なく、低温発酵抑制能を有した酵母を利用すること
によって、冷凍生地における低温感受性株のデメリット
であるホイロ発酵時間の遅延は全く起こらない。
【0042】
【実施例3】実施例1で得られた酵母菌体のうちP−6
26及びP−629株の2つの酵母を用いて、表2に示
したバターロール配合で生地を調製し、28℃で30分
フロアをとった後、−20℃で3週間冷凍保管したパン
生地を、冷蔵庫でオーバーナイト解凍後、再冷凍し、1
週間後に室温で2時間解凍し、適性ホイロ時間を測定し
た結果を表4に示した。また、同時にホイロ時間を一定
(50分)にした後、焼成しパンを作成し、パンの比容
積を測定した。比容積は、なたね置換法により求めた。
その結果を表5に示した。
【0041】更に、−20℃で3週間冷凍保管したパン
生地を冷蔵庫でオーバーナイト解凍後、そのまま冷蔵保
存した生地を、ホイロ時間を一定(50分)にした後、
焼成しパンを作成し、パンの比容積を測定し、パンの品
質を評価した。その結果を表6に示した。
【0042】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】表4で明らかなように、再冷凍保管した後
のホイロ時間は、冷凍耐性の強いFD−1イーストは約
10分遅れてしまうが、P−626及びP−629株で
は1〜2分程度であり、再冷凍もこの酵母の場合には可
能である。冷凍耐性の強さが変わらない酵母の間で、表
4のような結果がでるのは、低温での解凍中に、FD−
1イーストは酵母の活性が復活し、活性化された状態で
再凍結されるのに対して、低温で発酵が抑制されるP−
626及びP−629株では、解凍後も酵母の活性化が
極めて緩慢であるため、再凍結による影響がでにくいの
である。
【0045】この結果を反映するように、表5では、焼
成後のパンの状態を比較したが、再冷凍時に活性化され
た状態のFD−1イーストのパンは、比容積は他と変わ
らないが、パンの表面に火膨れが多数形成され、同時に
冷凍障害も見られた。また、解凍時に発酵が進行してい
る分、風味は酸臭があるものとなっていた。しかし、低
温発酵が抑制されるP−626及びP−629株では、
再冷凍したパンであっても、通常の冷凍生地保管時と同
様でパンの表皮に火膨れは認められず、風味も変化なく
良好であった。
【0046】解凍生地をそのまま冷蔵保管した場合の結
果を表6に示した。表6から明らかなように、低温発酵
抑制能のないFD−1では生地が冷蔵保管中に発酵して
しまい、生地の熟成も過剰に進行するため、保存期間が
長くなるにつれて、生地のガス保持力は低下し、比容積
は低下し、同時にパンの品質も劣化する。一方、P−6
26株及びP−629株では生地の発酵が低温域では緩
慢であるため、比容積は変化せず、パンの品質も安定し
ている。
【0047】
【発明の効果】本発明によって、冷凍耐性及び低温で発
酵が抑制され緩慢になることはあっても、発酵が欠如し
たり停止することのない低温発酵抑制能を有する新規な
酵母が創製された。このような性質を持つ新規な酵母を
利用することによって、従来の通常製パン法、冷蔵生地
製法、及び冷凍生地製法が、配合や工程を変更すること
なく行える他、更には、冷凍生地製パン法において、調
製された生地を冷凍保管して実際に使用する場合、従来
の使用方法通り、解凍後加熱処理してパンを製造する場
合の他に、解凍した生地をそのまま冷蔵保管したり、あ
るいは再冷凍して保管後使用することが可能となり、受
注生産時などに発生する残解凍生地を処分することなく
有効に活用できるため、生産性の向上に寄与することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷蔵保管生地の生地膨張量の経時変化を示す。
【図2】各種酵母のバターロール生地冷凍保管期間と解
凍後のホイロ時間の関係を示す。
【図3】各種酵母の菓子パン生地冷凍保管期間と解凍後
のホイロ時間の関係を示す。
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/18 WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】冷凍耐性能及び低温発酵抑制能を有する酵
    母が、サッカロミセス・セレビシエであることを特徴と
    する新規酵母。
  2. 【請求項2】冷凍耐性能及び低温発酵抑制能を有するサ
    ッカロミセス・セレビシエが、サッカロミセス・セレビ
    シエP−626(FERM P−14962)、サッカ
    ロミセス・セレビシエP−627(FERM P−14
    963)、サッカロミセス・セレビシエP−628(F
    ERM P−14964)、サッカロミセス・セレビシ
    エP−629(FERM P−14965)、サッカロ
    ミセス・セレビシエP−630(FERM P−149
    66)であることを特徴とする新規酵母。
  3. 【請求項3】パンに利用される原料と水と酵母が配合さ
    れ、混捏されたパン生地を冷蔵及び/又は冷凍保管した
    後、常温に戻して、発酵及び/又は加熱処理して、パン
    類を製造する方法において、請求項1及び2記載の新規
    酵母を用いてなるパン生地を利用すること特徴とするパ
    ン類の製造方法。
  4. 【請求項4】前記したパン生地が冷凍及び/又は冷蔵生
    地である請求項3記載のパン生地であることを特徴とす
    るパン生地。
  5. 【請求項5】請求項1及び2記載の新規酵母を1種又は
    2種以上含有してなる冷凍パン生地であることを特徴と
    するパン生地。
  6. 【請求項6】請求項1及び2記載の新規酵母を1種又は
    2種以上含有してなる冷蔵パン生地であることを特徴と
    するパン生地。
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