JP3117667B2 - 光ファイバプローブ及びその製造方法 - Google Patents

光ファイバプローブ及びその製造方法

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JP3117667B2 JP09262146A JP26214697A JP3117667B2 JP 3117667 B2 JP3117667 B2 JP 3117667B2 JP 09262146 A JP09262146 A JP 09262146A JP 26214697 A JP26214697 A JP 26214697A JP 3117667 B2 JP3117667 B2 JP 3117667B2
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拓也 松本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばプローブ走
査型顕微鏡の一つである近接場光学顕微鏡において、エ
バネッセント光を検出または照射する光プローブとして
使用される光ファイバプローブ及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】通常の光学顕微鏡によって得られる画像
の分解能は使用される光の波長(回折限界)によって制
限される。
【0003】これに対して、光の波長以下、すなわちナ
ノメートルサイズの構造を有するプローブを備えた近接
場光学顕微鏡においては、光の波長を超えた分解能で光
学像を得ることができる。したがって、この近接場光学
顕微鏡技術を利用することにより、ナノメートル級の分
解能で、例えば生体試料、半導体試料、光メモリー材
料、感光性材料等の物体の形状測定や分光測定、さらに
はメモリー操作(書き込み/読み出し/消去)、光加工
などを行うことができる。
【0004】ここで、近接場光学顕微鏡の一例を図10
に示す。この顕微鏡は、コレクションモードと称される
近接場光学顕微鏡であり、全反射条件下で物体裏面から
光を照射したときに物体表面からの距離が光の波長より
も小さい、極めて近接した領域に発生するエバネッセン
ト光を検出して物体の形状を測定するものである。
【0005】具体的には、全反射条件下で物体にレーザ
光が照射されることにより生じたエバネッセント光30
を、プローブ32のナノメートルサイズとなされた先鋭
部31の先端によって散乱させ、この散乱光を検出す
る。エバネッセント光30の光パワーは試料表面からの
距離とともに指数関数的に減少することから、この光パ
ワーの変化を検出することによって試料の表面形状が観
測されることになる。
【0006】このような近接場光学顕微鏡においてエバ
ネッセント光30を散乱させるためのプローブ32とし
ては、金属針のような全体が金属によって構成された金
属プローブや、光ファイバの一端に円錐状の先鋭部を突
出形成した光ファイバプローブが用いられる。このうち
金属プローブは、光ファイバプローブに比べて散乱効率
が高く、高い検出感度を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、プローブ全
体が金属によって構成されている金属プローブでは、エ
バネッセント光がプローブ先端だけでなくプローブの根
本の部分によっても散乱される。この根本で生じる散乱
光は、先端で生じる散乱光を検出する際にはバックグラ
ンドノイズとなり分解能を低下させる。
【0008】しかも、金属プローブの場合、散乱させた
光を検出するためのに検出用のプローブを別に設ける必
要があり、装置構成が複雑になるといった欠点もある。
【0009】一方、光ファイバプローブでは、先鋭部に
よって散乱された光は当該先鋭部を通じて光ファイバの
コアに導かれ、この光を光ファイバのもう一方の端部
(出射端)から検出することができる。
【0010】しかし、試料表面にはエバネッセント光だ
けではなく、試料の表面粗さに起因した散乱光も発生す
る。上述のような光ファイバプローブでは、先鋭部の先
端だけでなく側面からも光が導入されてしまうため、こ
のような表面粗さによる散乱光も検出され、分解能が低
くなってしまう。
【0011】そこで本発明はこのような従来の実情に鑑
みて提案されたものであり、プローブの根本部分で散乱
された散乱光や試料の表面粗さに起因した散乱光の影響
を受けず、エバネッセント光が高感度、高分解能をもっ
て検出できる光ファイバプローブ及びその製造方法を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明の光ファイバプローブはコアの周りにクラ
ッドが設けられてなる光ファイバの一端に、コアがクラ
ッドから突出した突出部が形成され、この突出部表面に
先端部を除いて金属膜が形成されてなり、上記突出部
は、外周部が先端面より後退し、内周部の先端に金属球
が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】また、本発明の光ファイバプローブの製造
方法は、コアの周りにクラッドが設けられてなる光ファ
イバの一端にコアがクラッドから突出した突出部を形成
する突出部形成工程と、前記突出部表面に先端部を除い
てレジスト層を形成する工程と、上記突出部のレジスト
層から露出した先端部を、エッチングによって外周部を
先端面より後退させるとともに内周部を先鋭化する先鋭
化工程と、上記突出部の側面側から金属蒸気流を入射さ
せ、レジスト層上に金属膜を形成するとともに先鋭化さ
れた先端部に金属球を形成する金属被着工程を有するこ
とを特徴とするものである。
【0014】本発明の光ファイバプローブまたは本発明
の製造方法によって製造される光ファイバプローブは、
金属膜によって覆われていない先端部が光が導入される
開口部となる。この光ファイバプローブによってエバネ
ッセント光を検出するには、この開口部内にある金属球
を物体表面に対して光の波長よりも短い距離まで接近さ
せ、物体表面に生じているエバネッセント光をこの金属
球によって散乱させる。生じた散乱光は開口部からコア
内に導かれ、コア内を伝搬してもう一方の端部(出射
端)から検出される。
【0015】このようにこの光ファイバプローブではエ
バネッセント光が先端部に形成された金属球によって散
乱される。このため高い散乱効率が得られ、また全体が
金属によって構成された金属プローブのように根本での
散乱が生じない。さらに、突出部の側面に金属膜が形成
されているので、試料の表面粗さによる散乱光等の入射
がこの金属膜によって遮蔽される。したがって、高い検
出感度、高い分解能が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施の形
態について説明する。
【0017】本発明の光ファイバプローブは、図1に示
すようにコア1の周りにクラッド2が設けられてなる光
ファイバ3の一端に、コア1がクラッド2から突出した
突出部4が形成され、この突出部4表面に先端部を除い
て金属膜5が形成されてなる。また、上記突出部4は、
外周部4aが先端面より後退するとともに内周部4bが
先細り状に先鋭化され、この先鋭化された内周部4bの
先端に金属球6が形成されている。
【0018】上記光ファイバ3は、例えばSiO2系ガ
ラスよりなり、F、GeO2、B23等の添加によって
コア1よりもクラッド2の屈折率が低くなるように組成
制御されている。
【0019】そして、この光ファイバ3の一端には上記
突出部4が形成され、この突出部4表面に先端部を除い
て金属膜5が形成されている。この金属膜5は、試料の
表面粗さに起因する散乱光等の外乱光が当該プローブに
入射するのを遮蔽する遮蔽膜となるものである。この金
属膜5としては、金や銀等よりなる薄膜が設けられる。
なお、金属膜5と突出部4との間には、製造工程で用い
られるエッチングマスク用のレジスト層7が介在してい
ても構わない。
【0020】この光ファイバプローブでは、金属膜5が
形成されていない先端部が、光が取り込まれる開口部8
となる。この開口部8は、試料表面のエバネッセント光
が当該開口部から選択的に取り込まれるようにするため
に開口径Aが伝搬光の波長以下とされているのが望まし
い。
【0021】一方、上記突出部4の先鋭化された内周部
4bの先端には金属球6が形成されている。この金属球
6には、高い散乱効率が得られることから金、銀等を用
いるのが望ましい。金属球の形状は、光ファイバの中心
軸方向に切断した縦断面形状が真円状の球であっても良
く、楕円状の球(回転楕円体)であっても良い。なお、
高分解能を得るには、この金属球の大きさが小さい方が
好ましく、例えば曲率直径dが100nm以下であるの
が望ましい。
【0022】このような光ファイバプローブは、例えば
近接場光学顕微鏡において、全反射条件下で物体裏面か
ら光を照射したときに物体表面に生じるエバネッセント
光を散乱、検出するために用いられる。
【0023】この光ファイバプローブによってエバネッ
セント光を検出するには、開口部8内にある金属球6を
物体表面に対して光の波長よりも短い距離まで接近さ
せ、物体表面に生じているエバネッセント光をこの金属
球6によって散乱させる。生じた散乱光は開口部8から
コア1内に導かれ、コア1内を伝搬してもう一方の端部
(出射端)から検出される。
【0024】このようにこの光ファイバプローブでは、
エバネッセント光が先端に形成された金属球6によって
散乱される。このため高い散乱効率が得られ、また全体
が金属によって構成された金属プローブのように根本で
の散乱が生じない。さらに、突出部4の側面に金属膜5
が形成されているので、試料の表面粗さによる散乱光等
の入射がこの金属膜5によって遮蔽される。したがっ
て、高い検出感度、高い分解能が得られる。
【0025】なお、この光ファイバプローブによってエ
バネッセント光を散乱、検出させるに当たっては、上記
金属球6に励起光を照射することでプラズモンを励起さ
せ、これによって散乱光強度を増大させるようにしても
良い。
【0026】プラズモンは、金属表面電子のプラズマ振
動の量子であり、励起光の波長と金属の共鳴波長が近い
場合に散乱光強度を大きく増強させる。この共鳴波長
は、金属の種類、形状、励起光の偏光方向によって決ま
るものであるので、プラズモン励起によって散乱光強度
を増大させる場合には、これらのパラメータを共鳴波長
と励起光波長とが近い値になるように設定するのが望ま
しい。なお、この場合、金属球6は、光ファイバの中心
軸方向が長軸となった回転楕円体であり、また長軸長が
長いもの程高い散乱効率が得られる。ここで具体例とし
て、金または銀よりなる金属球について、プラズモンの
共鳴波長とエバネッセント光の散乱効率の計算結果を示
す。金属球の形状は縦断面が真円状の球または長軸:短
軸=3:1の回転楕円体である。また、プラズモンを励
起させるための励起光(偏光)は、金属球が回転楕円体
の場合には電界の向きが楕円の長軸方向と一致するよう
な方向で入射させたものと想定した。金属球が球の場合
には中心対称であるので偏光方向は任意である。また、
散乱効率は、ガラスでの散乱効率を1としたときの倍率
で表示した。
【0027】
【表1】
【0028】このように金属球が回転楕円体の場合には
非常に高い散乱効率が得られる。
【0029】以上のような光ファイバプローブは、次の
ようにして作製される。
【0030】まず、図2に示すように、コア11の周り
にクラッド12が設けられた光ファイバ10を用意す
る。そして、この光ファイバ10の一端に、化学エッチ
ングによって突出部を形成する(突出部形成工程)。
【0031】この突出部形成工程では、コア11のエッ
チング速度R1とクラッド12のエッチング速度R2が等
しく(R1=R2)なるようなエッチング液を用いる第1
のエッチング工程と、コア11のエッチング速度R1
クラッド12のエッチング速度R2よりも小さく(R1
2)なるようなエッチング液を用いる第2のエッチン
グ工程の2段階のエッチングによって突出部を形成す
る。
【0032】まず、第1のエッチッング工程において、
1=R2なるエッチング液に光ファイバ10の一端を浸
漬すると、コア11のエッチング速度R1とクラッド1
2のエッチング速度R2が等しいので、先端面側におい
てはコア11とクラッド12が同じ量だけエッチングさ
れる。
【0033】また、光ファイバ10の外周面側では、外
周面に露出しているクラッド12がエッチングされて直
径が減少する。したがって、このエッチング時間を所定
間続けることにより、図3に示すように光ファイバ10
の一端にクラッド12の径が径小化した径小部13が形
成される。
【0034】なお、この第1のエッチング工程のエッチ
ング液としては、例えば40重量%NH4F水溶液:5
0重量%HF酸:H2O(体積比)が1.7:1:1の
緩衝フッ化水素溶液が用いられる。
【0035】次に、第2のエッチング工程では、R1
2なるエッチング液に、第1のエッチング工程で形成
された径小部13を浸漬する。このようなエッチング液
に径小部13を浸漬すると、クラッド12のエッチング
速度R2がコア11のエッチング速度R1よりも大きいの
で光ファイバ10の先端面側ではクラッド12がコア1
1より先にエッチングされ、基端面に対して後退する。
【0036】また、光ファイバ10の外周面側では、外
周面に露出しているクラッド12がエッチングされると
ともに、クラッド12がエッチングされることによって
コア11の外周面が先端面側から露出しはじめ、この外
周面に露出したコア11も引き続きエッチングされる。
このとき、コア11の外周面は先端側から露出すること
によって、先端側にいく程エッチング量が多くなり、直
径が減少する。したがって、このエッチングを所定時間
続けることによって、図4に示すように径小部13の端
部にクラッド12から突出した円錐状の突出部14が形
成される。
【0037】この第2のエッチング工程のエッチング液
としては、例えば40重量%NH4F水溶液:50重量
%HF酸:H2O(体積比)が10:1:1の緩衝フッ
化水素溶液が用いられる。
【0038】ここで、次工程ではこのようにして形成さ
れた突出部表面に先端を除いてレジスト層を形成する
が、このレジスト層から露出する先端部の大きさは、突
出部14が形成された段階での径小部13のクラッド径
Bによって決まる。すなわち、このクラッド径Bが大き
すぎると、突出部14の根本から先端に亘る全面をレジ
スト層が覆ってしまい、先端に開口を形成することがで
きない。逆に、クラッド径Bが小さすぎると、レジスト
層から露出する先端部の大きさが大きくなりすぎ、開口
径が大きくなる。その結果、分解能が低下する。このた
めこの突出部が形成された段階でのクラッド径Bは高分
解能を得る上で重要になる。
【0039】一方、この突出部が形成された段階でのク
ラッド径Bは、上記第1のエッチング工程のエッチング
時間によって制御される。したがって、このエッチング
時間は所定の開口径を得るべく正確に設定する必要があ
る。なお、目安として例えばクラッド径Bが20±1μ
mであるときに開口径は約100nmになる。
【0040】次に、この突出部表面に先端を除いてレジ
スト層を形成する(レジスト層形成工程)。
【0041】レジスト層の形成は、例えば図5(a)〜
(d)に示すような方法で行うと再現性のよい開口寸法
でレジスト層を形成することができる。
【0042】先ず、図5(a)に示すように先の工程で
突出部を形成した光ファイバ10を突出部14が上側に
なるように固定する。一方、レジストを充填した注射器
15を、針16先端と光ファイバ10の突出部14先端
が対向するようにして、針16を下側にして微動台に固
定する。そして、針16の先端から微量のレジストを押
し出し、針16先端にレジストの液滴17がぶらさがっ
た状態にする。
【0043】次いで、図5(b)に示すように注射器1
5を微動台の操作によって徐々に下に降ろし、図5
(c)に示すようにレジストの液滴17に光ファイバ1
0の突出部14先端が浸かるようにする。
【0044】その後、図5(d)に示すようにレジスト
の液滴17が落下しないように注射器15を上に引き上
げる。このとき、光ファイバ10の突出部14先端に付
着したレジストは表面張力によって僅かに後側に引き寄
せられるので、突出部14に先端部を除いてレジストが
付着した状態になる。
【0045】この他のレジスト層の形成方法としては、
容器内に入れられたレジスト中に光ファイバの突出部を
浸漬し、この後、光ファイバを引き上げる方法を用いる
ようにしても良い、この方法によっても注射器を用いる
場合と同様に再現性のよい開口寸法でレジスト層を形成
することができる。
【0046】そして、この後、レジストに応じた硬化処
理を施すことで、図6に示すように突出部14に先端部
を除いてレジスト層18が形成される。なお、このレジ
ストとしては、例えばフォトレジストが用いられる。こ
の場合、光ファイバの突出部14に先端部を除いてレジ
ストを付着させた後、ベーキングによってレジストを硬
化させればよい。
【0047】次に、レジスト層18から露出している突
出部14先端を、化学エッチングによって外周部を先端
面より後退させるとともに内周部を先鋭化する(先鋭化
工程)。
【0048】この先鋭化工程では、クラッド12のエッ
チング速度R2に比べてコア11のエッチング速度R1
十分大きく(R1>>R2)なるようなエッチング液を使
用する。
【0049】このようなエッチング液にレジスト層18
を形成した光ファイバ10の突出部14を所定時間浸漬
すると、レジスト層18から露出している突出部14先
端がエッチングされる。そして、このエッチングを所定
時間続けることによって、図7に示すように外周部14
aがレジスト層18先端よりも後退してくぼみが形成さ
れるとともに、内周部14bは突出部14の先端形状に
対応して先鋭化され、前記くぼみの中に先鋭部19が突
出した如き形状が形成される。但し、このとき先鋭部1
9の先端はレジスト層18の先端よりも若干先方に突き
出している必要がある。
【0050】なお、このエッチングでは、クラッド12
の端面12aとレジスト層18の間にエッチング液が染
み込みクラッド12がエッチングされてしまうとレジス
ト層18が剥離してしまう虞れがあるが、エッチング液
としてR1>>R2なる条件を満たすものを用いることに
よってこのようなレジスト層18の剥離は十分に回避さ
れる。
【0051】この先鋭化工程のエッチング液としては、
例えば50重量%HF酸:H2O(体積比)が1:50
や1:100のフッ化水素溶液が用いられる。
【0052】続いて、レジスト層18上に金属膜を形成
するとともに先鋭部19に金属球を形成する(金属被着
工程)。
【0053】この金属被着工程では、図8に示すように
光ファイバ10の外周面に向かって金、銀等の金属蒸気
を入射させ、レジスト層18表面と先鋭部19先端に金
属蒸気を被着させる。この場合、光ファイバ10の全周
面に亘って金属蒸気が被着するように、光ファイバ10
を中心軸を中心にして回転させながら金属蒸気を入射さ
せるか、あるいは光ファイバ10の一方の側から金属蒸
気を入射させた後反対側から金属蒸気を入射させる。
【0054】このように、金属蒸気を被着させることに
よって、図9に示すようにレジスト層18表面に金属膜
20が形成されるとともに、レジスト層から突き出た先
鋭部19の先端に金属球21が形成され、光ファイバプ
ローブが完成する。
【0055】ここで、金属蒸気の被着方法は、特に限定
されないが、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等が
用いられる。このうち、真空蒸着法は金属蒸気の指向性
が高いため、金属蒸気が開口内側に回り込み難く、先鋭
部先端に付着する金属球の大きさを小さく抑えることが
できる。先鋭部先端に付着する金属球を小さくすること
によって、製造されるプローブの分解能が向上する。
【0056】また、先鋭部の先端に被着される金属の被
着量は、金属蒸気の入射方向と直交する方向に対する光
ファイバの傾斜角度θによっても制御される。この傾斜
角度θは15〜20゜であるのが望ましい。また、金属
被着工程を2段階で行うようにし、第1の金属被着工程
では先鋭部の先端には金属が被着せず、レジスト層表面
にのみ金属が被着するような傾斜角度θを選び、第2の
金属被着工程では第1の金属被着工程で形成された金属
膜上にさらに金属が被着されるとともに先鋭部の先端に
も金属が被着されるような条件を選ぶようにしても良
い。こうすることで、レジスト層表面に形成される金属
膜を十分な厚さで形成しながら、金属球を薄く形成する
ことができ、遮光性及び散乱効率の双方の点で有利にな
る。また、この方法によればレジスト層表面の金属膜と
先鋭部先端の金属球とを異なる金属で形成することがで
きるので、それぞれに適した金属を選択することが可能
である。なお、第1の金属被着工程と第2の金属被着工
程の成膜方法は同じ成膜方法であっても、異なる成膜方
法であってもいずれでも良い。
【0057】
【実施例】本発明の具体的な実施例について実験結果に
基づいて説明する。
【0058】実施例1 まず、コアの周りにクラッドが設けられてなる光ファイ
バを用意した。なお、コアはGeO2添加SiO2よりな
り、クラッドはSiO2よりなる。
【0059】そして、この光ファイバの一端に、第1の
エッチング工程によって径小部を形成した。この第1の
エッチング工程の条件を下記に示す。
【0060】第1のエッチング工程の条件 エッチング液 ;40重量%NH4F水溶液:50
重量%HF酸:H2O(体積比)が1.7:1:1の緩
衝フッ化水素溶液 エッチング液の温度;25.0±0.1℃ エッチング時間 ;77.0分 続いて第2のエッチング工程によって径小部の先端にコ
アが円錐状に先鋭化した突出部を形成した。この第2の
エッチング工程の条件を以下に示す。なお、第2のエッ
チング工程が終了した段階での径小部のクラッド径Bは
20μmであった。
【0061】第2のエッチング工程の条件 エッチング液 ;40重量%NH4F水溶液:50
重量%HF酸:H2O(体積比)が10:1:1の緩衝
フッ化水素溶液 エッチング液の温度;25.0±0.1℃ エッチング時間 ;90.0分 次に、この光ファイバの突出部表面に、先端を除いてレ
ジスト層を形成した。
【0062】このレジスト層形成工程では、フォトレジ
スト(東京応化社製 商品名TSMR−V50:粘度6
0mPa・s)を用い、このフォトレジストが充填され
た注射器の針先端にレジストの液滴を押し出し、この液
滴に光ファイバの突出部を漬けることでレジスト層を形
成した。
【0063】続いて、化学エッチングによって、突出部
のレジスト層から露出した先端の外周部をレジスト層先
端よりも後退させるとともに内周部を先鋭化し、くぼみ
の中に先鋭部が突出した如き形状を形成した。この先鋭
化工程でのエッチング条件は以下の通りである。
【0064】先鋭化工程のエッチング条件 エッチング液 ;50重量%HF酸:H2O(体積
比)が1:50のフッ化水素溶液 エッチング液の温度;25.0±0.1℃ エッチング時間 ;60±1秒 そして、このようにして先鋭部を形成した後、スパッタ
リング法によってレジスト層表面に金の金属膜を形成す
るとともに、レジスト層から突き出た先鋭部の先端に金
の金属球を形成し、光ファイバプローブを作製した。な
お、ここでは金属蒸気の入射方向と直交する方向に対し
て光ファイバを15゜傾け、光ファイバの一方の側から
金属蒸気を入射させた後、反対側から金属蒸気を入射さ
せることによって光ファイバの周面全面に金属蒸気が被
着するようにした。この金属の被着条件は以下の通りで
ある。また、先鋭部の先端に形成された金属球の曲率直
径dは50nmであり、開口径Aは100nmであっ
た。
【0065】金属被着工程の条件 成膜方法 ;スパッタリング法 金属 ;金 スパッタ時間 ;片側350秒 光ファイバの傾斜角度θ;15゜実施例2 まず、コアの周りにクラッドが設けられてなる光ファイ
バを用意した。なお、コアはGeO2添加SiO2よりな
り、クラッドはSiO2よりなる。
【0066】そして、この光ファイバの一端に、第1の
エッチング工程によって径小部を形成した。この第1の
エッチング工程の条件を以下に示す。
【0067】第1のエッチング工程の条件 エッチング液 ;40重量%NH4F水溶液:50
重量%HF酸:H2O(体積比)が1.7:1:1の緩
衝フッ化水素溶液 エッチング液の温度;25.0±0.1℃ エッチング時間 ;80.0分 続いて第2のエッチング工程によって径小部の先端にコ
アが円錐状に先鋭化した突出部を形成した。この第2の
エッチング工程の条件を以下に示す。なお、この第2の
エッチング工程が終了した段階で径小部のクラッド径B
は15μmであった。
【0068】第2のエッチング工程の条件 エッチング液 ;40重量%NH4F水溶液:50
重量%HF酸:H2O(体積比)が10:1:1の緩衝
フッ化水素溶液 エッチング液の温度;25.0±0.1℃ エッチング時間 ;90.0分 次に、この光ファイバの突出部表面に、先端を除いてレ
ジスト層を形成した。
【0069】このレジスト層形成工程では、まず容器に
入れられたレジストを用意し、このレジストに光ファイ
バの突出部先端を浸漬した後、引き上げることによって
行った。なお、ここでは光ファイバの上下の移動をモー
タを用いて行い、この移動が一定速度で行われるように
した。
【0070】続いて、化学エッチングによって、突出部
のレジスト層から露出した先端の外周部をレジスト層先
端よりも後退させるとともに内周部を先鋭化し、くぼみ
の中に先鋭部が突出した如き形状を形成した。この先鋭
化工程でのエッチング条件は以下の通りである。なお、
ここでは実施例1の先鋭化工程で用いたエッチング液よ
りも濃度の低いものを使用したので、実施例1の場合よ
りもエッチングが遅い速さで進行した。
【0071】先鋭化工程のエッチング条件 エッチング液 ;50重量%HF酸:H2O(体積
比)が1:100のフッ化水素溶液 エッチング液の温度;25.0±0.1℃ エッチング時間 ;2分30秒 そして、このようにして先鋭部を形成した後、真空蒸着
法によってレジスト層表面に金の金属膜を形成するとと
もに、レジスト層から突き出た先鋭部の先端に金の金属
球を形成し、光ファイバプローブを作製した。なお、こ
こでは金属蒸気の入射方向と直交する方向に対して光フ
ァイバを15゜傾け、中心軸を回転軸として回転させな
がら蒸着を行った。この金属の被着条件は以下の通りで
ある。また、先鋭部の先端に形成された金属球の曲率直
径dは100nmであった。
【0072】金属被着工程の条件 成膜方法 ;真空蒸着法 金属 ;金 金属膜の膜厚 ;700nm 光ファイバの傾斜角度θ;15゜実施例3 第1のエッチング工程、第2のエッチング工程、レジス
ト層形成工程、先鋭化工程を実施例2と同様の条件で行
った。
【0073】次に2段階の金属被着工程によってレジス
ト層表面に金の金属膜を形成するとともに、レジスト層
から突き出た先鋭部の先端に金の金属球を形成した。
【0074】まず、第1の金属被着工程では、真空蒸着
法を用い、金属蒸気の入射方向と直交する方向に対して
光ファイバを20゜傾け、中心軸を回転軸として回転さ
せながら蒸着を行った。この金属の被着条件は以下の通
りである。
【0075】第1の金属被着工程の条件 成膜方法 ;真空蒸着法 金属 ;金 金属膜の膜厚 ;700nm 光ファイバの傾斜角度θ;20゜ 光ファイバの傾斜角度を20゜にすると、金属蒸気は、
先鋭部の先端にはほとんど被着せず、レジスト層表面に
のみ金の金属膜が形成された。
【0076】次に、第2の金属被着工程では、スパッタ
リング法を用い、光ファイバの一方の側から金属蒸気を
入射させた後、反対側から金属蒸気を入射させることに
よって、金属膜上にさらに金属蒸気を被着させるととも
にレジスト層から突き出た先鋭部の先端に金の金属球を
形成し、光ファイバプローブを作製した。この金属の被
着条件は以下の通りである。また、先鋭部先端に形成さ
れた金属球の曲率直径dは30nmであった。
【0077】第2の金属被着工程の条件 成膜方法 :スパッタリング法 金属 ;金 スパッタ時間 ;片側100秒 光ファイバの傾斜角度θ;0゜
【0078】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明では光ファイバの一端に、コアがクラッドから突出し
た突出部を形成し、この突出部表面に先端部を除いて金
属膜を形成し、さらに上記突出部の外周部を先端面より
後退させ、内周部の先端に金属球を形成するので、プロ
ーブの根本部分で散乱された散乱光や試料の表面粗さに
よる散乱光の影響を受けず、エバネッセント光を高感
度、高分解能をもって検出することが可能な光ファイバ
プローブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した光ファイバプローブの一例を
示す要部概略断面図である。
【図2】光ファイバプローブの製造方法を工程順に示す
ものであり、製造に供する光ファイバを示す要部概略断
面図である。
【図3】光ファイバに径小部を形成するための第1のエ
ッチング工程を示す要部概略断面図である。
【図4】突出部を形成するための第2のエッチング工程
を示す要部概略断面図である。
【図5】レジスト層形成工程を示すものであり、(a)
は光ファイバと、レジストを充填した注射器の位置関係
を示す模式図であり、(b)は注射器を降下させている
様子を示す模式図であり、(c)はレジストの液滴中に
光ファイバの突出部を浸けた状態を示す模式図であり、
(d)注射器を引き上げている様子を示す模式図であ
る。
【図6】レジスト層が形成された光ファイバを示す要部
概略断面図である。
【図7】突出部先端の先鋭化工程を示す要部概略断面図
である。
【図8】レジスト層表面と先鋭部先端への金属被着工程
を示す要部概略断面図である。
【図9】金属膜と金属球が形成された光ファイバを示す
要部概略断面図である。
【図10】近接場光学顕微鏡の原理を示す模式図であ
る。
【符号の説明】
1 コア、2 クラッド、3 光ファイバ、4 突出
部、5 金属膜、6 金属球、7 レジスト層、8 開
口部
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 13/10 - 13/24 G12B 21/00 - 21/24 G02B 21/00 - 21/36 G01B 7/34 G01B 11/30 H01J 37/28 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コアの周りにクラッドが設けられてなる
    光ファイバの一端に、コアがクラッドから突出した突出
    部が形成され、この突出部表面に先端部を除いて金属膜
    が形成されてなり、 上記突出部は、外周部が先端面より後退するとともに内
    周部が先細り状に先鋭化され、この先鋭化された内周部
    先端に金属球が形成されていることを特徴とする光ファ
    イバプローブ。
  2. 【請求項2】 上記突出部の側面に、レジスト層を介し
    て金属膜が形成されていることを特徴とする請求項1記
    載の光ファイバプローブ。
  3. 【請求項3】 コアの周りにクラッドが設けられてなる
    光ファイバの一端にコアがクラッドから突出した突出部
    を形成する突出部形成工程と、前記突出部表面に先端部
    を除いてレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
    上記突出部のレジスト層から露出した先端部を、エッチ
    ングによって外周部を先端面より後退させるとともに内
    周部を先鋭化する先鋭化工程と、レジスト層上に金属膜
    を形成するとともに先鋭化された先端部に金属球を形成
    する金属被着工程を有することを特徴とする光ファイバ
    プローブの製造方法。
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