JP3116428B2 - 薄膜誘電体およびその製造方法 - Google Patents

薄膜誘電体およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜誘電体およびその
製造方法に係わり、更に詳しくは有機溶媒に可溶な鉛化
合物、マグネシウム化合物、ニオブ化合物およびチタニ
ウム化合物を特定割合で含む薄膜形成用の溶液を基板上
に塗布後さらに熱処理することにより得られる薄膜誘電
体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より酸化チタン、チタン酸バリウム
はその誘電特性により磁器コンデンサーとして利用され
てきた。この磁器コンデンサーでは、静電容量を大きく
するため一般的に積層型にして用いられている。
【0003】コンデンサーの製造方法は、固相反応や溶
液反応で得られた粒径が0.5〜5μmの誘電体粉末に
バインダーと溶剤とを混合してスラリーを作製し、その
スラリーをドクターブレード法等で薄板状に成形し、得
られた薄板を10〜数十層に積層し、1200〜130
0℃の温度で焼成するという工程から成っている。
【0004】また、静電容量を大きくする方法として誘
電体層を薄膜化する方法がある。積層型コンデンサーの
場合、1層の厚みが約20〜40μmで、これを約50
層程度積層させたものが一般的であるが、1層が1μm
程度に薄膜化できてしかも単層でも積層型と同等、もし
くはそれ以上の静電容量が得られるなら、コンデンサー
の小型化が可能となる。
【0005】薄膜化の方法としてはスパッタ法、真空蒸
着法、CVD法等の気相法がこれまで試みられている。
〔ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティ
(J.Electrochem.Soc.)Vol.1
19,No.6 P735−739(1972)〕
【0006】また、有機金属化合物を塗布した後、熱分
解により薄膜誘電体を製造する方法がある。たとえば、
酢酸鉛とチタンアルコキシドとをメトキシエタノール中
でPb:Ti=1:1の比で混合した後、加熱反応さ
せ、これを石英ガラス基板上に塗布後に電気炉中で焼成
を行い、薄膜状チタン酸鉛を得る方法が知られている。
〔ブリティッシュ・セラミック・プロシーディング(B
ritish.Ceramic.Proceedin
g)(36)107−121(1985)〕
【0007】チタン化合物と鉛化合物との混合物、また
はチタン化合物と鉛化合物との反応生成物のβ−ジケト
ン溶液をチタン酸鉛形成前駆体溶液として、塗布、加熱
処理を繰返すことによりチタン酸鉛薄膜を製造する例が
特開昭59─139617号公報に記載されている。
【0008】特開昭60─200403号公報には、P
bZrO3 ーPbTiO3 −Pb(Mb1/3 Nb2/3
3 系について薄膜誘電体の製造方法が開示されてい
る。
【0009】また、特開平1─260870号公報に
は、添加剤としてアルコールアミンを用いた溶液の塗布
熱分解法による変性チタン酸ジルコン酸鉛の薄膜の製造
例が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、固相法
や液相法により得た誘電体の粉末を用いドクターブレー
ド法で薄膜状誘電体を形成する場合には、誘電体粉末の
粒径が大きいために誘電体の膜厚を20μm以下にする
ことは困難である。
【0011】ところで、コンデンサーの静電容量は C=(ε0 εr S/d)×n (式中、Cは静電容量、Sは面積、dは電極間距離、ε
0 は真空誘電率(8.85×10-12 F/m)、εr
比誘電率、nは積層数を示す)の関係にあるから、一般
に静電容量を大きくするためには積層数を増してやれば
良いわけであるが、ドクターブレード法では膜厚が厚く
なるので高容量化には自ずと限界がある。さらに、ドク
ターブレード法では誘電体粉末を得るための焼成と、成
形された生シートの焼成とを必要とするため製造コスト
が高くなるという欠点もある。
【0012】また、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法
等の気相法で薄膜状誘電体を形成しようとする場合、装
置が高価なことや目的とする誘電体物質の組成比を制御
することが困難であるため、高い比誘電率の薄膜を得る
ことが難しい等の問題点がある。
【0013】前記特開昭59─139617号公報や特
開昭60─200403号公報に開示されてる薄膜誘電
体は、その比誘電率が低いため静電容量の高容量化は期
待できない。また、特開平1─260870号公報には
変性チタン酸ジルコン酸鉛薄膜の製造例が記載されてい
るが、比誘電率や誘電損失等の誘電特性については何ら
の記載もない。
【0014】また、上記諸公報に記載されている製造方
法においては、出発物質の組成比は化学量論比通りに調
製されている。しかし、鉛含有化合物は焼成中に鉛の飛
散が起こりやすいので組成比の制御が難しく、そのため
に高い比誘電率のものを得ることは困難である。
【0015】そこで、本発明の目的は、高い比誘電率を
有する薄膜誘電体およびその製造方法を提供することに
ある。
【0016】
【課題を解決するための手段】かかる事情に鑑み、本発
明者らは有機溶媒に可溶な鉛化合物、マグネシウム化合
物、ニオブ化合物およびチタニウム化合物を原料として
用いた薄膜誘電体の製造方法について鋭意検討を行った
結果、高い比誘電率を有する薄膜誘電体が得られること
を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0017】すなわち、本発明は一般式(1−x)Pb
(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3で示される組成
を有し、平均膜厚が0.15〜5.0μm(ここでxは
0.05≦x≦0.4)であることを特徴とする薄膜誘
電体、および基板上に薄膜形成用の溶液を塗布して薄膜
を形成し、該薄膜を熱処理することにより薄膜誘電体を
製造する方法において、添加剤と有機溶媒と有機溶媒に
可溶な鉛化合物、マグネシウム化合物、ニオブ化合物お
よびチタニウム化合物との混合物または反応生成物から
成り、かつ、鉛の過剰率が1〜30モル%の範囲にある
薄膜形成用の溶液を用いることを特徴とする薄膜状誘電
体の製造方法を提供するものである。
【0018】以下本発明を更に詳細に説明する。本発明
においては、有機溶媒に可溶な鉛化合物としては、例え
ばジエトキシ鉛、ジイソプロポキシ鉛、鉛アセチルアセ
ナート、蟻酸鉛、酢酸鉛等を用いることができる。
【0019】有機溶媒に可溶なマグネシウム化合物とし
ては、例えばジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグ
ネシウム、ジイソプロポキシマグネシウム、マグネシウ
ムアセチルアセトナート、酢酸マグネシウム、硝酸マグ
ネシウム等を用いることができる。
【0020】有機溶媒に可溶なニオブ化合物としては、
例えばペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、
ペンタイソプロポキシニオブ、ペンタブトキシニオブ、
塩化ニオブ等を用いることができる。
【0021】有機溶媒に可溶なチタニウム化合物として
は、例えばテトラメトキシチタニウム、テトラエトキシ
チタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラ
ブトキシチタニウム、四塩化チタン等を用いることがで
きる。
【0022】有機溶媒としては前記鉛化合物、マグネシ
ウム化合物、ニオブ化合物およびチタニウム化合物を溶
解するものならばどのような溶媒を用いてもよいが、好
ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノール、ペンタノール、メトキシエタノール、エトキシ
エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キ
シレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘ
プタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジオキサン、
テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチル
エチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、酢酸メチ
ル、酢酸エチル、蟻酸エチル等のカルボン酸エステル
類、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾ
イルアセトン等のβ−ジケトン類、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられ、
これら溶媒を単独、あるいは2種以上を併用することも
できる。
【0023】本発明においては、先ず薄膜形成用の溶液
が調製される。調製方法としては鉛化合物、マグネシウ
ム化合物、ニオブ化合物およびチタニウム化合物を有機
溶媒中に溶解して室温で混合するか、或は有機溶媒中で
加熱下で反応せしめる方法が用いられる。これに、さら
に添加剤を加えて薄膜形成用の溶液が得られる。
【0024】より均一な薄膜を得るためには、該溶液の
重合を行ったものを用いることが望ましい。この場合
は、1〜5重量%の水を含む有機溶媒を用いることが必
要である。
【0025】得られた薄膜形成用の溶液中の鉛の過剰率
は1〜30モル%の範囲にあることが望ましい。ここ
で、鉛の過剰率はPb/(Mg+Nb+Ti)のモル比
を意味する。鉛の過剰率が1モル%未満では、得られた
薄膜の組成が化学量論組成にはならずに比誘電率の低い
薄膜しか得られない。また、鉛の過剰率が30モル%を
超える場合は、得られた薄膜に酸化鉛が残留してしまう
ため比誘電率の高いものを得ることができない。
【0026】本発明により得られた薄膜誘電体は、一般
式(1−x)Pb(Mg1/3 Nb2/ 3 )O3 −xPbT
iO3 で示される組成を有し、ここでxは0.05≦x
≦0.4の範囲にあることが望ましい。xが0.05よ
り小さい場合は絶縁抵抗が高いものを得ることができ
ず、またxが0.4より大きい場合は比誘電率の高いも
のが得られない。
【0027】本発明で用いられる誘電体形成用の溶液中
の金属化合物の濃度は、金属化合物の種類によっても異
なるが、希釈し過ぎて濃度が低い場合は、所定の膜厚を
得るのに塗布を多数回繰り返さなければならず経済的で
ないし、逆に濃度が濃すぎると塗布の作業性が低下する
ので、一般には酸化物に換算して2〜80重量%、好ま
しくは5〜50重量%が適用される。したがって、誘電
体形成用の溶液の濃度は薄膜状誘電体の目的とする膜厚
により上記の範囲で決定すればよい。
【0028】本発明においては、膜厚を均一化するため
に添加剤を加えて誘電体形成用の溶液を調製する。添加
剤としてはカルボン酸(C6 〜C20)、グリコール、ア
ミン等を添加することができる。例えばカプロン酸、カ
プリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸等の1価カルボン酸、アジピン酸、ピメリン
酸、フタル酸セバシン酸等の2価カルボン酸、エチレン
グリコール、プロピレングリコールジエチレングリコー
ル等のグリコール類、モノエタノールアミン、ジエタノ
ールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等を用
いることができる。
【0029】膜厚を均一化するための添加剤の添加量は
鉛1モルに対して0.1〜3.0モルの範囲、好ましく
は0.1〜2.0モルの範囲である。0.1モル未満で
は膜厚を均一化する効果は小さく、3.0モルを超える
と有機物が増すために焼成後に緻密で平滑な薄膜を得る
ことが困難となる。
【0030】比誘電率の温度に対する変化を小さくする
ためにB、Si、Ca、Bi、Zr、Ta、Nd、Sb
等の化合物や還元防止剤としてのMn、Al等の化合物
を添加することもできる。
【0031】また、塗布膜の厚さを均一にするために、
例えばポリオールやエチルセルロース等の高分子物質、
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセチルアセト
ン、グリセリンのような高沸点化合物、ノニオン系また
はアニオン系の界面活性剤等を添加することができる。
【0032】このようにして調製された誘電体形成用の
溶液は、次いで基板上に塗布される。基板は平滑性があ
り、400℃以上の温度に耐えるものならばどのような
ものでも用いることができるが、例えばガラス基板、セ
ラミック基板、半導体基板、金属薄膜または導電性酸化
物で被覆されたそれ等の基板等が挙げられる。
【0033】具体的には石英ガラス基板、アルミナ、ジ
ルコニア、マイカ等の基板、シリコン基板、金、白金、
パラジウム、銀、銅、クロム、チタニウム、アルミニウ
ム、タンタル、金−クロム、パラジウム−銀、白金−タ
ンタル、白金−チタニウム、スズまたはアンチモンをド
ープした酸化インジウム等の薄膜で被覆された石英ガラ
ス、アルミナ、ジルコニア、マイカ、シリコン等の基
板、金、白金、パラジウム、銀、銅、ニッケル、ニッケ
ル−クロム等の金属基板が挙げられる。
【0034】用いられる基板の表面はできるだけ平滑で
あることが好ましく、Ra<0.1μmであることが好
ましい。(ここで、RaはJISB0601に定められ
ている中心線平均粗さを示す。)
【0035】基板への塗布方法としては浸漬法、スプレ
ー法、スピンナー法、刷毛塗り法等の公知の塗布方法を
用いることができる。
【0036】基板へ塗布して得た薄膜の加熱処理温度
は、溶媒中の金属化合物の濃度、溶媒の種類、基板の種
類等により異なるが、誘電体の結晶化温度以上の温度に
する必要があり、通常は400〜1200℃、好ましく
は500〜1000℃である。400℃未満では有機物
が分解せず、1200℃を越える場合は著しい粒成長と
ともに粒界に空孔が生成し、絶縁性の良い薄膜が得られ
ない。
【0037】焼成雰囲気は空気中、不活性ガス中、誘電
体が還元され易い場合は酸素雰囲気中でも焼成すること
が出来る。
【0038】本発明の薄膜状誘電体の厚さは0.15〜
5.0μmである。0.15μm未満では耐電圧が低
く、絶縁破壊が起こりやすく、また5.0μmを越える
場合には1層当たりの静電容量が小さくなるため、高い
静電容量のものが得られないので好ましくない。
【0039】
【発明の効果】本発明の薄膜状誘電体は、誘電体粉末を
スラリー化して用いるドクターブレード法に比較して製
造コストが廉価であるとともに、高い比誘電率のものが
得られるために静電容量を大きくすることが可能とな
り、その工業的価値は頗る大なるものがある。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明の範囲は実施例により、何ら限定される
ものではない。
【0041】実施例1 ジイソプロポキシ鉛(34.15g)、ジエトキシマグ
ネシウム(3.62g)、ペンタエトキシニオブ(2
0.12g)およびテトライソプロポキシチタニウム
(1.42g)を混合し、これをイソプロパノール−ト
ルエンの重量比が1:1である混合溶媒(149.30
g)中に溶解し、これに添加剤としてイソステアリン酸
(7.46g)(鉛1.0モルに対して0.25モル)
を添加して、酸化物換算で15重量%の誘電体形成用の
溶液を調製した。得られた溶液の鉛の過剰率は5モル%
であった。この溶液をPt(0.5μm)/Ti(0.
05μm)の薄膜で被覆されたアルミナ基板上に250
0rpmでスピンナー(ミカサ株式会社製1H−2D)
により塗布後、450℃で30分間酸素中で焼成し、こ
の塗布と焼成の操作を5回繰り返し、最後に800℃で
1時間空気中で焼成して膜厚が1.0μmの緻密で透明
な薄膜誘電体を得た。ここで得られた薄膜誘電体の組成
は、一般式が(1−x)Pb(Mg1/3 Nb 2/3 )O3
−xPbTiO3 で示され、本実施例ではxが0.05
となった。この薄膜上にAu電極をスパッター(アルパ
ック株式会社製SBH−1104RE)により形成した
後、1KHz、25℃での静電容量と誘電損失を横河ヒ
ューレットパッカード社製LCRメーター4262Aに
より測定した。比誘電率εr はC=(ε0 εr S/d)
×nから計算により求めた。(面積S=1mm2 とし
た。)また、横河ヒューレットパッカード社製超絶縁抵
抗計YHP4329Aを用いて直流10V印加時の絶縁
抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0042】実施例2 実施例1において、ジイソプロポキシ鉛(34.15
g)、ジエトキシマグネシウム(3.23g)、ペンタ
エトキシニオブ(18.02g)およびテトライソプロ
ポキシチタニウム(4.26g)を混合し、これをイソ
プロパノール−トルエンの重量比が1:1である混合溶
媒(147.48g)中に溶解し、これに添加剤として
イソステアリン酸(7.46g)(鉛1.0モルに対し
て0.25モル)を添加した以外は実施例1と同様にし
て電気的特性を求めた。ここで得られた薄膜誘電体の組
成はxが0.15となった。結果を表1に示す。
【0043】実施例3 実施例1において、ジイソプロポキシ鉛(34.15
g)、ジエトキシマグネシウム(2.66g)、ペンタ
エトキシニオブ(14.85g)およびテトライソプロ
ポキシチタニウム(8.52g)を混合し、これをイソ
プロパノール−トルエンの重量比が1:1である混合溶
媒(144.76g)中に溶解し、これに添加剤として
イソステアリン酸(7.46g)(鉛1.0モルに対し
て0.25モル)を添加した以外は実施例1と同様にし
て電気的特性を求めた。ここで得られた薄膜誘電体の組
成はxが0.30となった。結果を表1に示す。
【0044】実施例4 実施例1において、ジイソプロポキシ鉛(34.15
g)、ジエトキシマグネシウム(2.29g)、ペンタ
エトキシニオブ(12.72g)およびテトライソプロ
ポキシチタニウム(11.36g)を混合し、これをイ
ソプロパノール−トルエンの重量比が1:1である混合
溶媒(142.96g)中に溶解し、これに添加剤とし
てイソステアリン酸(7.46g)(鉛1.0モルに対
して0.25モル)を添加した以外は実施例1と同様に
して電気的特性を求めた。ここで得られた薄膜誘電体の
組成はxが0.40となった。結果を表1に示す。
【0045】比較例1 実施例1において、ジイソプロポキシ鉛(34.15
g)、ジエトキシマグネシウム(3.77g)、ペンタ
エトキシニオブ(21.30g)およびテトライソプロ
ポキシチタニウム(0g)を混合し、これをイソプロパ
ノール−トルエンの重量比が1:1である混合溶媒(1
50.12g)中に溶解し、これに添加剤としてイソス
テアリン酸(7.46g)(鉛1.0モルに対して0.
25モル)を添加した以外は実施例1と同様にして電気
的特性を求めた。ここで得られた薄膜誘電体の組成はx
が0となった。結果を表1に示す。
【0046】比較例2 実施例1において、ジイソプロポキシ鉛(34.15
g)、ジエトキシマグネシウム(1.91g)、ペンタ
エトキシニオブ(10.59g)およびテトライソプロ
ポキシチタニウム(14.20g)を混合し、これをイ
ソプロパノール−トルエンの重量比が1:1である混合
溶媒(141.16g)中に溶解し、これに添加剤とし
てイソステアリン酸(7.46g)(鉛1.0モルに対
して0.25モル)を添加した以外は実施例1と同様に
して電気的特性を求めた。ここで得られた薄膜誘電体の
組成はxが0.50となった。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】実施例5 酢酸鉛3水塩(39.8g)をメトキシエタノール(1
37.1g)中に70℃加熱下で溶解後120℃で2時
間脱水を行いその後90℃に冷却し、ジエトキシマグネ
シウム(3.23g)とペンタブトキシニオブ(25.
97g)とテトライソプロポキシチタニウム(4.26
g)とを加え、さらに添加剤としてジエタノールアミン
(10.5g)(鉛1.0モルに対して1.0モル)添
加して、酸化物換算で15重量%の誘電体形成用の溶液
を調製した。得られた溶液の鉛の過剰率は5モル%であ
った。この溶液をAu(0.5μm)/Ti(0.06
μm)の薄膜で被覆されたアルミナ基板上に3000r
pmでスピンナ−により塗布後、450℃で30分間酸
素中で焼成し、最後に850℃で30分間空気中で焼成
して膜厚が0.15μmの緻密で透明な薄膜誘電体を得
た。ここで得られた薄膜誘電体の組成は、一般式が(1
−x)Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 −xPbTiO3
で示され、本実施例ではxが0.15であった。この薄
膜上にAu電極をスパッターにより形成した後、薄膜誘
電体の電気特性を実施例1と同様の方法で測定した。結
果を表2に示す。
【0049】実施例6 実施例5において得られた溶液を、アルミナ基板上に1
500rpmでスピンナーにより塗布後、450℃で3
0分間酸素中で焼成し、この塗布と焼成の操作を20回
繰り返し、最後に850℃で30分間空気中で焼成して
膜厚が5.0μmの緻密で透明な薄膜誘電体を得た以外
は実施例1と同様にして電気的特性を求めた。結果を表
2に示す。
【0050】比較例3 実施例5において得られた溶液を、アルミナ基板上に6
000rpmでスピンナーにより塗布後、450℃で3
0分間酸素中で焼成し、最後に850℃で30分間大気
中で焼成して膜厚が0.08μmの緻密で透明な薄膜誘
電体を得た以外は実施例1と同様にして電気的特性を求
めた。結果を表2に示す。
【0051】比較例4 実施例5において得られた溶液を、アルミナ基板上に1
000rpmでスピンナーにより塗布後、450℃で3
0分間酸素中で焼成し、この塗布と焼成の操作を50回
繰り返し、最後に850℃で30分間空気中で焼成して
膜厚が20.0μmの緻密で透明な薄膜誘電体を得た以
外は実施例1と同様にして電気的特性を求めた。結果を
表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】実施例7 ジエトキシ鉛(30.02g)、ジメトキシマグネシウ
ム(2.44g)、ペンタエトキシニオブ(18.02
g)およびテトライソプロポキシチタニウム(4.26
g)を混合し、これをイソプロパノール−トルエンの重
量比が1:1である混合溶媒(155.56g)中に溶
解し、これに添加剤としてイソステアリン酸(4.30
g)(鉛1.0モルに対して0.15モル)を添加し
て、酸化物換算で15重量%の誘電体形成用の溶液を調
製した。得られた溶液の鉛の過剰率は1モル%であっ
た。この溶液をPt(0.5μm)/Ta(0.05μ
m)の薄膜で被覆されたアルミナ基板上に2500rp
mでスピンナーにより塗布後、450℃で30分間酸素
中で焼成し、この塗布と焼成の操作を5回繰り返し、最
後に800℃で1時間空気中で焼成して膜厚が1.0μ
mの緻密で透明な薄膜誘電体を得た。ここで得られた薄
膜誘電体の組成は、一般式が(1−x)Pb(Mg1/3
Nb 2/3 )O3 −xPbTiO3 で示され、本実施例で
はxが0.15であった。この薄膜上にAu電極をスパ
ッターにより形成した後、薄膜誘電体の電気特性を実施
例1と同様の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0054】実施例8 実施例7において、ジエトキシ鉛(31.21g)、ジ
メトキシマグネシウム(2.44g)、ペンタエトキシ
ニオブ(18.02g)およびテトライソプロポキシチ
タニウム(4.26g)を混合し、これをイソプロパノ
ール−トルエンの重量比が1:1である混合溶媒(15
4.26g)中に溶解し、これに添加剤としてイソステ
アリン酸(4.47g)(鉛1.0モルに対して0.1
5モル)を添加した以外は実施例1と同様にして電気的
特性を求めた。ここで得られた溶液の鉛の過剰率は5モ
ル%であった。結果を表3に示す。
【0055】実施例9 実施例7において、ジエトキシ鉛(38.64g)、ジ
メトキシマグネシウム(2.44g)、ペンタエトキシ
ニオブ(18.02g)およびテトライソプロポキシチ
タニウム(4.26g)を混合し、これをイソプロパノ
ール−トルエンの重量比が1:1である混合溶媒(14
5.70g)中に溶解し、これに添加剤としてイソステ
アリン酸(5.54g)(鉛1.0モルに対して0.1
5モル)を添加した以外は実施例1と同様にして電気的
特性を求めた。ここで得られた溶液の鉛の過剰率は30
モル%であった。結果を表3に示す。
【0056】比較例5 実施例7において、ジエトキシ鉛(29.72g)、ジ
メトキシマグネシウム(2.44g)、ペンタエトキシ
ニオブ(18.02g)およびテトライソプロポキシチ
タニウム(4.26g)を混合し、これをイソプロパノ
ール−トルエンの重量比が1:1である混合溶媒(15
5.90g)中に溶解し、これに添加剤としてイソステ
アリン酸(4.26g)(鉛1.0モルに対して0.1
5モル)を添加した以外は実施例1と同様にして電気的
特性を求めた。ここで得られた溶液の鉛の過剰率は0モ
ル%であった。結果を表3に示す。
【0057】比較例6 実施例7において、ジエトキシ鉛(40.12g)、ジ
メトキシマグネシウム(2.44g)、ペンタエトキシ
ニオブ(18.02g)およびテトライソプロポキシチ
タニウム(4.26g)を混合し、これをイソプロパノ
ール−トルエンの重量比が1:1である混合溶媒(14
4.00g)中に溶解し、これに添加剤としてイソステ
アリン酸(5.75g)(鉛1.0モルに対して0.1
5モル)を添加した以外は実施例1と同様にして電気的
特性を求めた。ここで得られた溶液の鉛の過剰率は35
モル%であった。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 3/00 - 3/14 C04B 35/00 - 35/22 C04B 35/42 - 35/51

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 (1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3 で示される組成を有し、平均膜厚が0.15〜5.0μ
    m(ここでxは0.05≦x≦0.4)であることを特
    徴とする薄膜誘電体。
  2. 【請求項2】基板上に薄膜形成用の溶液を塗布して薄膜
    を形成し、該薄膜を熱処理することにより薄膜誘電体を
    製造する方法において、添加剤と有機溶媒と有機溶媒に
    可溶な鉛化合物、マグネシウム化合物、ニオブ化合物お
    よびチタニウム化合物との混合物または反応生成物から
    成り、かつ、鉛の過剰率が1〜30モル%の範囲にある
    薄膜形成用の溶液を用いることを特徴とする請求項1記
    載の薄膜誘電体の製造方法
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