JP3108485U - 転写具の駆動構造 - Google Patents

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Abstract


【課題】 ゴムや樹脂製のベルトは、特に長期に亘って使用する場合には、耐久性に乏しいために使用に伴い痩せてカスが生じたり弾力が変化して、安定して使用することができないという点を解消することにある。
【解決手段】 送出軸部2と巻取軸部3とに亘って、短縮方向に付勢するコイルばねの両端部を繋いだ円環状のベルト5を架けた構成とした。
【効果】 ベルト5の耐久性が飛躍的に高くなるので、長期に亘って安定して使用することができ、また、特に(転写媒体Tが塗布された)基材Pを取り換えて使用する転写具においては、飛躍的に交換回数を向上させることができる。
【選択図】 図1

Description

本考案は、特に基材(転写媒体)を取り換えて使用する転写具の駆動構造に係り、送出軸部と巻取軸部とに亘って架けたベルトの耐久性を向上させ、長期に亘って安定して使用可能な転写具の駆動構造に関するものである。
近年、例えば液状の修正液や液状の糊に代って、適量を容易に使用できる使い易さなどといった利点から、転写媒体を紙などの被転写体に転写する転写具が普及している。修正用の白色の転写媒体を使用する転写具は、被転写体の修正個所に転写媒体を転写して修正する。また、被転写体と貼着体とを貼着する粘着性を有する転写媒体を使用する転写具は、被転写体に転写した転写媒体に貼着体を貼着する。
上記した転写具は、粘着性を呈した転写媒体、白色の転写媒体、が異なる他は両者ともにほぼ同様であり、例えば次の構成となっている。転写具は、送出軸部、巻取軸部、及び転写部を備えている。送出軸部は、筐体内に設けられ、転写媒体が塗布された長尺帯状の基材をその回転により送り出す。巻取軸部は、筐体内に設けられ、被転写体に転写媒体を転写した後の基材をその回転により巻き取る。
転写部は、筐体の一端部に形成した開口から一部が露出した状態で設けられている。転写部は、転写媒体を塗布した基材を送出軸部から送り出し、被転写体に転写媒体を転写し、その後、該基材を巻取軸部へ送る。
巻取軸部と送出軸部は、転写部による基材の送り出しに伴って送出軸部が回転すると、この送出軸部の回転に連動して巻取軸部も回転駆動する。巻取軸部と送出軸部の前記駆動は、ギヤで噛合させる方式(以下、ギヤ方式という)と、巻取軸部と送出軸部に亘って環状のベルトを架けた方式(以下、ベルト方式という)が知られている。
一般的にベルト方式はギヤ方式に較べて、転写具全体の小型化に有利であると言われている。転写具は、商品品質として、転写媒体を確実に被転写体へ塗布させたり、基材の破断を防止したり、基材の送り出しや巻き取りを確実なものとする、などといった幾つもの条件を良好に満たす必要がある。
上記した条件を満たすためのポイントのうち、基材のテンションが挙げられる。つまりギヤ方式の場合、基材のテンションが低くなって弛んだりしないように、通常、巻取軸部の回転を予め送出軸部の回転に対して速くしておく。このとき、ギヤ方式では、送出軸部(に軸着されたギヤ)の径を大きくするとか、送出軸部と巻取軸部の間に減速ギヤを設けるといった策を講じる。従って、ギヤ方式は、ギヤの径の制約があったり、部材点数が増えることから、小型化に不利となる。
一方、ベルト方式は、ギヤの配列や噛合関係は問題とならないから、巻取軸部と送出軸部との距離に関係なく、ベルトを架ける部分が存在し、かつその部分の径を調整しておけば、巻取軸部の回転を送出軸部の回転に対して速くすることができる。従って、ベルト方式は、ギヤ方式に較べて、全体のデザイン的の柔軟度も高く、また、小型化も有利なのである。
ところで、本願で問題とするのは、ベルト方式の転写具であるが、ベルト方式で採用されているベルトは、全てといってよいほどゴムなどの樹脂をその素材としている。この理由は、送出軸部と巻取軸部の双方の軸と適度に接触して動力の伝達が可能である一方、巻取軸部と送出軸部との間で過度な回転差が生じたときにはスリップという、摩擦力と弾性力のバランスが自然に取れていて、かつ部材コスト面で有利だからである。
このようなゴムや樹脂を採用したベルト方式の転写具において、さらに使い心地を良好にすべく改良した例えば以下のものが知られている。
特許第3441490号公報 特開2002−283795号公報 特開2004−9323号公報
特許文献1は、基材を正常走行させるべく、送出軸部と共に回転する第1プーリと、巻取軸部と共に回転する第2プーリと、の間に架けられた伝動ベルトが、送出軸部と巻取軸部との回転差をスリップによって吸収する構成としている。
特許文献2は、比較的小さな力で基材を走行させるべく、送出軸部と巻取軸部との間にベルトが架けられ、送出軸部又は巻取軸部が、可動部材によってこれら軸間距離が狭くなる方向に移動する構成としている。
特許文献3は、ゴムベルトの外方向へ膨らんで弛もうとする回転を防止すべく、送出軸部と巻取軸部との間に、ゴムベルトを案内するガイド部材を設けた構成としている。
上記した特許文献1〜3においては、その特許請求の範囲にはベルトとしてゴムや樹脂を採用しているという記載はないが、考案の詳細な説明中ではゴムを採用していることが記載されている。また、特許文献1〜3以外の他の出願及び他のベルト式の転写具においても、上記理由からベルトとしてはゴムなどの樹脂材料とされているのが実情である。
ところで、転写具は、改良が進み、それまで使っていた筐体、送出軸部及び巻取軸部に対して、消費してしまった転写媒体のみを補充すべく、転写媒体を塗布した基材を取り換えることができるものが出現した。
転写具において、取り換えが可能であるということは、真に必要となる必要最小限の部材である転写媒体(を塗布した基材)のみを購入すればよいから需用者にしてみれば出費を抑えることができるというメリットがある。また、取り換えた後に、不要となる部分、つまり筐体や送出軸部や巻取軸部といった基材を除く部分を捨てなくて良いので省資源化が図られるというメリットもある。
こうした取り換えが可能な転写具においては、取り換える基材(転写媒体)以外は継続的に使用することとなる。しかしながら、最近、ゴムや樹脂を材料としたベルト式の転写具は、基材を取り換えて継続して使用していると、ベルトの耐久性に乏しく、これに起因する使用安定性が悪化するといった問題が顕在化してきている。
例えば、ベルトが経時変化で伸びきってしまって弾力性がなくなり、送出軸部から巻取軸部へ適切に動力を伝達せず、空回りしてしまうといった問題。また、基材を取り換えて継続して使用していると、使用時の送出軸部と巻取軸部との接触でカスが発生するといった問題。
本考案が解決しようとする問題点は、ゴムや樹脂製のベルトは、特に長期に亘って使用する場合には、耐久性に乏しいために使用に伴い痩せてカスが生じたり弾力が変化して、安定して使用することができないという点である。
そこで、本考案の転写具の駆動構造は、送出軸部と前記巻取軸部とに亘って、短縮方向に付勢するコイルばねの両端部を繋いだ円環状のベルトを架けた構成とした。
上記構成とすることで、ゴムや樹脂製のベルトに較べて、使用に伴い痩せることもなく、また、カスが生じたり弾力が変化することがなく、従って長期に亘って安定して使用することができ、また、基材を取り換え使用するような転写具では、基材の取り替え頻度を大幅に向上させることができ、経済的となる。
本考案の転写具の駆動構造は、例えば図1及び図2に示す態様で実施可能である。
図1は、本考案の転写具の駆動構造の全体構成を、図2は、本考案の転写具の駆動構造のベルトを、それぞれ示す。
図において、1は、以下に示す部材を収納したり、支持したりする筐体である。2は、転写媒体Tが塗布された基材Pを送り出す送出軸部である。3は、被転写体上に転写媒体Tを転写した後の基材Pを巻き取る巻取軸部である。
送出軸部2及び巻取軸部3は、例えばポリアセタール、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの材料で以下のように構成されている。
例えば本例では、送出軸部2及び巻取軸部3は、(転写媒体Tが塗布された新たな)基材Pの取り替えが可能なように構成される。送出軸部2及び巻取軸部3は、基材Pの走行方向と直交する方向に2分割される筐体1の本体筐体1Aとカバー筐体1Bにおいてそれぞれ枢支部1Aa,1Baで枢支される回転軸2A,3Aを有している。これら回転軸2A,3Aは、カバー筐体1Bを開けたときには一端側が本体筐体1A側で枢支される。また、回転軸2Aは、回転速度を調整するために、回転軸3Aよりも径を大きくしている。
これら回転軸2A,3Aの各々の外周面には凸状の係合部2Aa,3Aaが軸方向に形成されている。回転軸2A,3Aにおいて係合部2Aa,3Aaの本体筐体1A側の終端部には、外周方向に拡がるフランジ部2Ab,3Abが形成されている。回転軸2A,3Aは、フランジ部2Ab,3Abで区画された本体筐体1A側に、後述するベルト5が架けられる。
さらに、送出軸部2及び巻取軸部3は、基材Pを巻装した芯2B,3Bをそれぞれ有している。芯2B,3Bには、その内周面に凹状の係合部2Ba,3Baが軸方向に形成されている。回転軸2A,3Aは、係合部2Aa,3Aaが芯2B,3Bの係合部2Ba,3Baと係合しつつ、該芯2B,3Bを貫通して、その他端側が閉めたカバー筐体1B側で枢支される。
4は、送出軸部2と巻取軸部3との間における基材Pの搬送方向途中において、本体筐体1A側に、筐体1内から転写に要する先端部が露出するように設けられた転写部である。本例では、例えば修正用の白色の転写媒体Pを採用して説明するため、転写部4の先端部が舌状となっている。
5は、送出軸部2及び巻取軸部3、詳細には本例ではフランジ部2Ab,3Abで区画された本体筐体1A側の回転軸2A,3Aに架けられたベルトである。このベルト5は、短縮方向に付勢する金属製のコイルばねの両端部を繋いで円環状とされている。
ベルト5は、その弾力を、同構成の転写具で採用されるゴムや樹脂のものと較べて高くすることが望ましい。この理由は、次の通りである。金属のベルト5と上記した素材でなる回転軸2A,3Aとの素材間の動摩擦係数は低い。従って、ベルト5の弾力が、同構成の転写具で採用されるゴムや樹脂の弾力と同等もしくは低いと、空回りが生じて送出軸部2の回転駆動力を巻取軸部3に適切に伝達できないといった可能性がある。
さらに回転軸2A,3Aにおけるベルト5との接触面の動摩擦係数を0.1以上としておけば、上記と同様に長期に亘って良好に送出軸部2と巻取軸部3を駆動させることができる。なお、本願で言う動摩擦係数は、測定条件は0.38kgf/cm2 の荷重を6.2cm/secで移動させる際のものである。
上記条件の背景は、次の通りである。ゴムや樹脂であれば、弾力とスリップのバランスが採れているのであるが経時変化が激しく耐久性に乏しいので、本考案のようにベルト5を採用することとした。このとき、ベルト5と送出軸部2及び巻取軸部3との動摩擦係数を考慮しないと、耐久性は優れるものの、駆動力伝達に際してはゴムや樹脂のベルトに較べて滑りやすいという課題が生じたからである。
従って、上記のように条件を設けたのである。まず、0.1より低いと、金属製のベルト5と樹脂製の回転軸2A,3Aとが滑って空回りや発生しやすく、適切に動力が伝達されない可能性があると共に、この空回りを抑制するためにベルト5の弾力を過剰に高くする必要がある。そうすると、回転軸2A,3Aを不要に摩耗させたりするといった部材の耐久性に関して悪影響をおよぼす可能性がある。なお、最も望ましくは動摩擦係数の下限値を0.15とすれば前記した可能性はさらに低減される。
なお、動摩擦係数の上限は1.0以下とすればよい、1.0より高いと、上記とは逆に滑りにくく、基材Pに過剰なテンションがかかった際に回転軸2A,3Aとベルト5とがスリップせずに基材Pを破断してしまう可能性がある。
つまり、本考案では、短縮方向に付勢するコイルばねの両端部を繋いで円環状としたベルト5を採用することで、ゴムや樹脂の耐久性の問題を解決することができ、さらに上記した条件を満たせば、ゴムや樹脂のベルトと同じ使用感を、長期に亘って維持することができるのである。
以下、本考案の転写具の駆動構造に係る実施例とその効果について説明する。
実施例と比較例の構成条件は次の通りである。
(実施例1)
ベルト種類:短縮方向に付勢するコイルばね(金属製)の両端部を繋いだ円環状のベルト送出軸部・巻取軸部の材質:ナイロン
動摩擦係数:0.104
(実施例2)
ベルト種類:短縮方向に付勢するコイルばね(金属製)の両端部を繋いだ円環状のベルト送出軸部・巻取軸部の材質:ポリアセタール
動摩擦係数:0.180
(比較例)
ベルト種類:ゴム
送出軸部・巻取軸部の材質:ポリアセタール
動摩擦係数:0.890
実験条件は、実施例及び比較例について、基材P、転写媒体Tの寸法や組成及び巻取長さ(10m)を同じとすると共に、使用(操作)条件も同じとしたうえで、使用状況が悪化するまでの交換回数を確認した。なお、交換回数は、50回以上で(本実験では最大を100回とした)交換できれば品質上問題無い。
(比較例の結果)
交換回数が30回を越えた頃から、スリップが生じたり、カスが出始め、交換回数が48回のときにゴムベルトの摩耗に起因して適正に基材を送り出さなくなる症状が頻繁になって使用感が極端に悪化した。この結果、商品の耐久性に問題があることが判った。
(実施例1の結果)
交換回数が92回のときに、回転軸2A,3Aが摩耗しはじめ、適正に基材を送り出さない症状が出始めた。これは、摩擦係数が0.104としていたため、ベルト5の弾力を高くする必要があったからである。しかしながら、商品の耐久性は問題がないことが判った。
(実施例2の結果)
交換回数が100回になっても、全く問題なく使用できた。これは摩擦係数が0.180としていたため、ベルト5の弾力も適度なものとすることができたからである。よって、商品の耐久性に全く問題がないことが判った。
以上のことから、やはりゴム製のベルトは耐久性に乏しく、長期に亘って使用するには不適であることが判明した。これに対して、本考案であれば、ゴム製に較べてほぼ倍程度の耐久性に優れ、その間の使用感には何らの変化もなく安定していることが判明した。
上記実施例では修正用の白色の転写媒体Tを採用した例で示したが、粘着性を有する転写媒体Tを採用し、かつ転写部4の先端部をローラー状とした構成であっても適用が可能であり、上記実施例と同等の作用効果を得ることができる。
上記実施例では、基材Pを取り換え可能な転写具を前提として説明したが、これに限らず、取り換えができないものであっても、長期に亘って安定して使用可能なことは言うまでもない。
本考案の転写具の駆動構造を示す分解斜視図である。 本考案の転写具の駆動構造におけるベルトを示し、(a)は斜視図、(b)はA−A線断面図、(c)はB矢視図、である。
符号の説明
1 筐体
2 送出軸部
2A 回転軸
2B 芯
3 巻取軸部
3A 回転軸
3B 芯
4 転写部
5 ベルト

Claims (2)

  1. 筐体と、この筐体内に設けられ、転写媒体が塗布された基材を送り出す送出軸部及び被転写体上に転写媒体を転写した後の基材を巻き取る巻取軸部と、これら送出軸部と巻取軸部の基材搬送方向途中で前記筐体内から露出して設けられた転写部とを備えた転写具の前記送出軸部と前記巻取軸部を連動駆動させる構造において、前記送出軸部と前記巻取軸部とに亘って、短縮方向に付勢するコイルばねの両端部を繋いだ円環状のベルトを架けたことを特徴とする転写具の駆動構造。
  2. 送出軸部と巻取軸部の、ベルトが接触する面の動摩擦係数を0.1〜1.0としたことを特徴とする請求項1記載の転写具の駆動構造。
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