JP3103515B2 - 血液保温箱及びこの箱に使用する保温剤 - Google Patents

血液保温箱及びこの箱に使用する保温剤

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JP3103515B2 JP09014643A JP1464397A JP3103515B2 JP 3103515 B2 JP3103515 B2 JP 3103515B2 JP 09014643 A JP09014643 A JP 09014643A JP 1464397 A JP1464397 A JP 1464397A JP 3103515 B2 JP3103515 B2 JP 3103515B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は血液保温箱及びこの
箱に使用する保温剤、詳しくは容器本体、保温剤及び、
密閉袋に収納された血液または成分血液(以下、血液バ
ッグと称す)からなる血液保温箱及び、ポリオキシエチ
レングリコールからなる保温剤に係り、その目的は、保
存条件や輸送状態に関わらず、血液を保存に適切な温度
を維持したまま保管あるいは輸送することにある。
【0002】
【従来の技術】血液製剤の保管は、一般には自記温度記
録計付並びに警報装置付の冷蔵庫及び冷凍庫を使用し、
各製剤ごとに定められた適切な保存温度で保管管理す
る。全血製剤及び赤血球成分製剤は通常、4〜6°Cで
保存する。その理由は、4〜6°Cにすることにより血
球の代謝を止めるので、長時間の保存が可能となるから
である。即ち、4〜6°Cで保存した場合には血球回収
率及び輸血後の血球生存率の低下が小さく、赤血球の酸
素運搬機能が劣化することもない。更に血球の形態変化
も起こらないので、全血製剤及び赤血球成分製剤は4〜
6°Cでの保存が好ましいとされている。また、血小板
成分製剤は20〜24°Cで保存する。更に全血製剤で
あっても、血小板の活性を期待する場合には血小板成分
製剤と同様に20〜24°Cで保存する。その理由は以
下の通りである。血小板成分製剤を全血製剤及び赤血球
成分製剤のように低温で保存して血球の代謝を止める
と、血小板は凝集や膨化を起こしてその機能を失ってし
まう。その結果、製剤中の血小板が減少するため、血小
板成分製剤を保存する場合には、血小板が代謝を行うこ
とができる20〜24°Cで保存するのが好ましい。た
だし、米国では48時間までであれば1〜6°Cでの保
存が可能とされており、短時間の保存の場合に限って低
温保存が行われている。
【0003】しかしながら、上記冷蔵庫や冷凍庫がない
場所に血液製剤を保管する必要がある場合や製剤を輸送
する場合には、保温剤等を用いて製剤を適切な温度に保
温する必要がある。そこで従来は、全血製剤及び赤血球
成分製剤を保管あるいは輸送する際には、寒剤を用いて
製剤を低温に保っている。寒剤としては水と塩類による
もの、あるいは氷と塩類によるものが用いられ、具体的
な例としては、水、塩化アンモニウム及び炭酸ナトリウ
ムを配合したものが好適に用いられている。また、血小
板成分製剤及び血小板の活性を期待した全血製剤の適切
な保存温度は20〜24°Cであるが、48時間以内に
使用する条件のもとに、低温で保管及び輸送する方法を
とっている。低温保管の方法としては上記寒剤による方
法が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の保存方法には以下のような問題点が存在する。寒剤
による低温保存では、低温になりすぎたり、また外気温
度に左右されて上昇するなど、保存に適切な温度である
4〜6°Cを維持することは難しいといった問題点があ
った。
【0005】また、血小板を低温で保存した場合、保存
の初期においては室温(20〜24°C)での保存と比
較して止血効果が高いが、約18時間後には輸血後の循
環血液中での血小板の寿命が低下してくる。即ち、低温
保存の血小板は保存直後から4時間以内に使用する場合
においては、室温保存に比べて止血効果において優れて
いるが、24時間以上経過するとその効果が低下してく
る。従って、低温保存の血小板は、保存開始から24時
間以内に止血目的で使用するのには適しているが、24
時間以上経過後の使用及び、血小板減少患者の出血予防
のために血小板を使用する場合には、低温保存は好まし
くないといった問題点があった。
【0006】上記事情から、保存条件や輸送状態に関わ
らず、血液製剤の種類に応じてそれぞれの製剤に最も適
した温度を確実に維持するための保温剤の創出が望まれ
ていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解
決するためになされたものであって、請求項1記載の発
明は、断熱性の素材からなり密閉可能な容器本体、この
本体内に収容される保温剤及び、密閉袋に収容された血
液または成分血液からなり、前記保温剤は、次式4(化
4)で示されるポリオキシエチレングリコールから形成
されてなり、その重合度は、8〜9、13〜14のいず
れかであることを特徴とする血液保温箱(但し、式1中
nは8〜9、13〜14の整数である)に関する。
【化4】 請求項2記載の発明は次式5(化5)で示されるポリオ
キシエチレングリコールからなり、その重合度は13〜
14であることを特徴とする血液製剤用保温剤(但し式
1中nは13〜14の整数である)に関する。
【化5】 更に、請求項3記載の発明は次式6(化6)で示される
ポリオキシエチレングリコールからなり、その重合度は
8〜9であることを特徴とする血液製剤用保温剤(但し
式1中nは8〜9の整数である)に関する。
【化6】
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる保温剤
はポリオキシエチレングリコールからなり、その化学式
次式7(化7)で示される。
【化7】
【0009】請求項2記載の発明に係る血液製剤用保温
剤は、上記式7中nが13〜14、即ちポリオキシエチ
レングリコールの重合度が13〜14である。この保温
剤は融点が23°Cで、融解熱が35cal/g であるた
め、血小板成分製剤の保存に適切である20〜24°C
に製剤を維持するのに有効である。この保温剤は、血液
バッグと保温剤が直接接触するようにした状態で血液保
温箱の容器本体内に収容される。この状態を保つことに
より融点が23°Cである保温剤は融解熱を発し、この
熱により血液製剤は20〜24°Cに維持される。
【0010】請求項3記載の発明において用いられる
液製剤用保温剤は、上記式7中nが8〜9、即ちポリオ
キシエチレングリコールの重合度が8〜9である。この
保温剤は融点が4〜8°Cで、融解熱は36cal/g であ
るため、全血製剤及び赤血球成分製剤の保存に適切であ
る4〜6°Cに製剤を維持するのに有効である。この保
温剤もまた、血液バッグと保温剤が直接接触するように
した状態で血液保温箱の容器本体内に収容される。この
状態を保つことにより融点が4〜8°Cである保温剤は
融解熱を発し、この熱により血液製剤は4〜6°Cに維
持される。
【0011】請求項1記載の発明において使用される血
液バッグとしては、一般に輸血等の目的で供給されてい
る主要血液製剤全てを好適に用いることができる。その
具体的な例としては新鮮血、保存血等の全血製剤、赤血
球濃厚液、血小板濃厚液等の成分血液製剤を挙げること
ができる。
【0012】以下、本発明に係る保温剤及び血液袋を断
熱性容器に入れ、血液保温箱とする状態を図1及び図2
に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る血液保
温箱の容器本体に保温剤及び血液バッグを収納した状態
の断面図、図2は本発明に係る保温剤の全体図、図3は
図2に示される保温剤のX−X断面図である。血液保温
箱1は開閉自在な容器本体2、保温剤3及び血液バッグ
4からなり、保温箱本体2は発砲スチロール等の断熱性
の高い素材から形成される。保温剤3はポリオキシエチ
レングリコールからなり、袋Bに充填されている。ま
た、容器本体2に温度計や警報ブザー付の温度センサ
ー、あるいは温度記録計等を設置することにより温度変
化を計測することが、より望ましい。図1に示すように
容器本体2に保温剤3と血液バッグ4を交互に収納し、
血液バッグ4が保温剤3に挟まれた状態にした後、容器
本体2のふたを閉めて血液保温箱とする。
【0013】
【実施例】以下、本発明を実施例1及び2に基づき更に
詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。 (実施例1)血小板製剤を保管あるいは輸送する場合に
ついて以下に説明する。保温剤としては、重合度が13
〜14のポリオキシエチレングリコール(日曹油化工業
株式会社製)400mlを袋に充填して密閉し、あらか
じめ20〜24°Cの恒温槽に放置しておいたものを使
用した。一方、血液バッグとしては、日本赤十字社製の
濃厚血小板「日赤」200mlの血液バッグを使用し
た。図1に示すように保温剤3及び血液バッグ4それぞ
れが、お互いに接触するように容器本体2内に収納し
て、血小板製剤バッグが保温剤3に挟まれてサンドウィ
ッチ効果がでる状態にした後、容器本体2のふたをして
密閉状態にし、保管あるいは輸送可能な血液保温箱とし
た。
【0014】(実施例2)赤血球製剤を保管あるいは輸
送する場合について以下に説明する。保温剤としては、
重合度が8〜9のポリオキシエチレングリコール(日曹
油化工業株式会社製)400mlを袋に充填して密閉
し、あらかじめ冷蔵庫(4〜8°C)に約3時間放置し
ておいたものを使用した。一方、血液バッグとしては、
日本赤十字社製の赤血球M・A・P「日赤」140ml
の血液バッグを使用した。図1に示すように保温剤3及
び血液バッグ4それぞれが、お互いに接触するように容
器本体2内に収納して、赤血球製剤バッグが保温剤3に
挟まれてサンドウィッチ効果がでる状態にした後、容器
本体2のふたをして密閉状態にし、保管あるいは輸送可
能な血液保温箱とした。
【0015】(比較例1)保温剤としては、水と塩化ア
ンモニウムを10:3の割合で配合した寒剤200ml
を袋に充填したものを使用した。血液バッグとしては、
実施例1で使用したものと同様の、日本赤十字社製の濃
厚血小板「日赤」200mlの血液バッグを使用した。
実施例の場合と同様に図1に示すように保温剤3及び血
液バッグ4それぞれが、お互いに接触するように容器本
体2内に収納した後、容器本体2のふたをして密閉状態
にし、保管あるいは輸送可能な血液保温箱とした。
【0016】(比較例2)保温剤としては水と塩化アン
モニウムを10:3の割合で配合した寒剤200mlを
袋に充填したものを使用した。血液バッグとしては、実
施例2で使用したものと同様の、日本赤十字社製の赤血
球M・A・P「日赤」140mlの血液バッグを使用し
た。実施例の場合と同様に図1に示すように保温剤3及
び血液バッグ4それぞれが、お互いに接触するように容
器本体2内に収納した後、容器本体2のふたをして密閉
状態にし、保管あるいは輸送可能な血液保温箱とした。
【0017】上記実施例1〜2及び比較例1〜2で得ら
れた血液保温箱を約24時間放置した後、ふたを開けて
血液製剤の状態を確認した。実施例1及び2の血液保温
箱内の血液バッグは容器本体内に入れる直前の血液バッ
グとほとんど変わらなかったが、比較例1及び2の血液
保温箱内の血液バッグはいずれも冷却しすぎたことによ
り固化し、使用不可能な状態となっていた。
【0018】
【発明の効果】請求項1記載の発明は、断熱性の素材か
らなり密閉可能な容器本体、この本体内に収容される保
温剤及び、密閉袋に収容された血液または成分血液から
なり、前記保温剤は、次式8(化8)で示されるポリオ
キシエチレングリコールから形成されてなり、その重合
度は、8〜9、13〜14のいずれかであることを特徴
とする血液保温箱(但し、式1中nは8〜9、13〜1
4の整数である)に関する。
【化8】 請求項2記載の発明は次式9(化9)で示されるポリオ
キシエチレングリコールからなり、その重合度は13〜
14であることを特徴とする血液製剤用保温剤に関す
る。(但し式9中nは13〜14の整数である)
【化9】 更に、請求項3記載の発明は次式10(化10)で示さ
れるポリオキシエチレングリコールからなり、その重合
度は8〜9であることを特徴とする血液製剤用保温剤に
関するものであるから以下のような効果を奏する(但し
式10中nは8〜9の整数である)。
【化10】
【0019】請求項2記載の発明に係る保温剤は重合度
が13〜14であるポリオキシエチレングリコールから
形成されてなり、その融点は23°Cで、35cal/g の
融解熱を発するため、血小板成分製剤のように適切な保
存温度が20〜24°Cである製剤の血液バッグと接触
させた状態を保つことにより、血液バッグの温度を20
〜24°Cに維持することができるという効果を奏す
る。請求項3記載の発明に係る保温剤は重合度が8〜9
であるポリオキシエチレングリコールから形成されてな
り、その融点は4〜8°Cで、36cal/g の融解熱を発
するため、全血製剤や赤血球成分製剤のように適切な保
存温度が4〜6°Cである製剤の血液バッグと接触させ
た状態を保つことにより、血液バッグの温度を4〜6°
Cに維持することができるという効果を奏する。即ち、
請求項1記載の発明に係る血液保温箱は、密閉可能な容
器本体内に、上記保温剤及び血液バッグが収納されてな
るため、保存条件や輸送状態に関わらず、血液を保存に
適切な温度を維持したまま保管あるいは輸送することが
できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る血液保温箱の容器本体に保温剤及
び血液バッグを収納した状態の断面図である。
【図2】本発明に係る保温剤を袋に充填した状態の全体
図である。
【図3】本発明に係る保温剤を袋に充填した状態の断面
図である。
【符号の説明】
1 − 血液保温箱 2 − 容器本体 3 − 保温剤 4 − 血液バッグ B − 袋
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61J 1/14 A61J 3/00 300

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 断熱性の素材からなり密閉可能な容器本
    体、この本体内に収容される保温剤及び、密閉袋に収容
    された血液または成分血液からなり、前記保温剤は、次
    式1(化1)で示されるポリオキシエチレングリコール
    から形成されてなり、その重合度は、8〜9、13〜1
    4のいずれかであることを特徴とする血液保温箱。(但
    し、式1中nは8〜9、13〜14の整数である) 【化1】
  2. 【請求項2】 次式2(化2)で示されるポリオキシエ
    チレングリコールからなり、その重合度は13〜14で
    あることを特徴とする血液製剤用保温剤。(但し式1中
    nは13〜14の整数である)【化2】
  3. 【請求項3】 次式3(化3)で示されるポリオキシエ
    チレングリコールからなり、その重合度は8〜9である
    ことを特徴とする血液製剤用保温剤。(但し式1中nは
    8〜9の整数である)【化3】
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