JP3101046B2 - 遊星歯車式差動装置 - Google Patents

遊星歯車式差動装置

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JP3101046B2
JP3101046B2 JP583392A JP583392A JP3101046B2 JP 3101046 B2 JP3101046 B2 JP 3101046B2 JP 583392 A JP583392 A JP 583392A JP 583392 A JP583392 A JP 583392A JP 3101046 B2 JP3101046 B2 JP 3101046B2
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正夫 寺岡
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両の駆動系に使用
される遊星歯車式差動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、遊星歯車機構を利用した差動装置
は周知であり、その代表的な構造は、被駆動歯車及びデ
フケースに固定された内歯歯車と、該内歯歯車と同軸で
かつデフケースに対して回転自在に配設された太陽歯車
と、前記内歯歯車に噛合う第1の遊星歯車と、該第1の
遊星歯車に噛合うとともに前記太陽歯車にも噛合う第2
の遊星歯車と、前記第1及び第2の遊星歯車をそれぞれ
回転自在に軸支するとともにそれ自体が前記デフケース
に対して回転自在に配設されたキャリアとを備え、前記
太陽歯車を一方の駆動軸例えば左車軸に連結し、前記キ
ャリアを他方の駆動軸例えば右車軸に連結してなるもの
である。
【0003】このような機構において、被駆動歯車を介
してデフケースに回転力を与えると、該デフケースと一
体結合した内歯歯車が回転し、その回転力は第1及び第
2の遊星歯車を介して太陽歯車及びキャリアに伝達さ
れ、太陽歯車に連結された左車軸及びキャリアに連結さ
れた右車軸を回転駆動するようになっている。
【0004】しかしながら、例えば車両の直進時に路面
状態等に起因して左車輪がスリップして左車軸の駆動ト
ルクが低下すると、右車軸の駆動トルクも低下してしま
うという特性がある。この特性を改善するために従来よ
り内歯歯車とキャリアとの相対回転又は内歯歯車と太陽
歯車との相対回転に制動をかけることにより、太陽歯車
に連結した左車軸とキャリアに連結した右車軸との差動
回転を制限し、反スリップ側車軸の駆動トルクの著しい
低下を防止するようにした発明がなされている(特開昭
61−96238号公報、実開平1−166157号公
報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記各
公報の図面にみられるように、内歯歯車とキャリアと
の、あるいは内歯歯車と太陽歯車との相対回転に制動を
かけるためには多板式摩擦クラッチ機構等が設けられて
いる。これらは多板式摩擦クラッチを油圧アクチュエー
タや電磁石で締結するように構成されており、いずれに
してもこのような構成ではオイルポンプや、バッテリー
を充電するためのオルタネータなどをエンジンで駆動し
なければならずそれだけパワーロスを伴い燃費が低下す
る。油圧式アクチュエータを用いる場合は油圧回路が構
造を複雑にすると共に回転するデフケースの外部に配置
された静止側の油圧アクチュエータとデフケースの内部
に配置された多板式摩擦クラッチとの間で押圧力を授受
するための機構が必要であり、これが構造を更に複雑に
する。又、電磁石を用いる場合は磁気回路を形成するた
めの磁気洩れ防止構造が必要であると共に、デフケース
と電磁石間のエアギャップ調整などが面倒である。
【0006】そこで、この発明は、エンジンのパワーロ
ス及び燃費の低下を伴わずに差動制限力が得られ、扱い
が簡単であると共に、小型軽量で構造簡単な遊星歯車式
差動装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1の発明の遊星歯車式
差動装置は、被駆動歯車及びデフケースに固定された内
歯歯車と、該内歯歯車と同軸でかつ前記デフケースに対
して回転自在に配設された太陽歯車と、前記内歯歯車に
噛合う第1の遊星歯車と、該第1の遊星歯車に噛合うと
ともに前記太陽歯車にも噛合う第2の遊星歯車と、前記
第1及び第2の遊星歯車をそれぞれ回転可能に軸支する
とともにそれ自体が前記デフケースに対して回転自在に
配設されたキャリアとを備え、前記太陽歯車を一方の駆
動軸に連結し、前記キャリアを他方の駆動軸に連結して
なる遊星歯車式差動装置であって、前記第1の遊星歯車
及び又は前記第2の遊星歯車と前記キャリアとの回転部
に設けられた差動制限手段と、差動制限用の摩擦クラッ
チ及びこれに適度な締結力を与える予圧ばねとを備えた
ことを特徴とする。
【0008】
【0009】第2の発明の遊星歯車式差動装置は、被駆
動歯車及びデフケースに固定された内歯歯車と、該内歯
歯車と同軸でかつ前記デフケースに対して回転自在に配
設された太陽歯車と、前記内歯歯車に噛合う第1の遊星
歯車と、該第1の遊星歯車に噛合うとともに前記太陽歯
車にも噛合う第2の遊星歯車と、前記第1及び第2の遊
星歯車をそれぞれ回転可能に軸支するとともにそれ自体
が前記デフケースに対して回転自在に配設されたキャリ
アとを備え、前記太陽歯車を一方の駆動軸に連結し、前
記キャリアを他方の駆動軸に連結してなる遊星歯車式差
動装置であって、前記第2の遊星歯車を前記内歯歯車の
前進駆動方向に対して前記第1の遊星歯車よりも後方に
配置すると共に、差動制限用の摩擦クラッチ及びこれに
適度な締結力を与える予圧ばねを備えたことを特徴とす
る。
【0010】
【作用】車両のエンジンからの出力が変速機、出力ギヤ
等を介して被駆動歯車に伝達されると、被駆動歯車と一
体のデフケース及び内歯歯車が回転駆動され、良好な路
面での直進時等には、デフケース及び内歯歯車と、第1
及び第2の遊星歯車と、太陽歯車と、キャリアとは殆ん
ど一体となって回転駆動され、左右の両車軸の駆動トル
クはほぼ相等しい。
【0011】ところが、差動制限手段がなんら設けられ
ていない場合、例えば路面状態等に起因して一方の車輪
がスリップしてそのスリップ側駆動軸の駆動トルクが低
下すると、他方の駆動軸の駆動トルクも低下してしま
う。
【0012】しかしながら、本出願の請求項1に記載の
差動装置にあっては、第1の遊星歯車及び又は第2の遊
星歯車とキャリアとの回転部に差動制限手段が設けてあ
るため、該回転部に適度な摩擦トルクが発生し、これに
より一方の駆動軸と他方の駆動軸間の駆動トルクの配分
が適切に行なわれる。
【0013】
【0014】また、本出願の請求項2に記載の差動装置
にあっては、第2の遊星歯車が、内歯歯車の前進駆動方
向即ち前方に対して第1の遊星歯車よりも後方に配置さ
れているため、前進駆動時において左右の駆動軸間に差
動回転が生じたとき、各歯車の噛合ピッチ点を含む作用
線に沿って生じる押圧力とそれらの反力との関係から、
各遊星歯車の自転に適度な制動がかかり、左右両駆動軸
間の駆動トルク配分が適切に行なわれる。
【0015】また、後進駆動時又はコースティング時に
おいては、前進駆動時に比較して各遊星歯車の自転に弱
い制動がかかり、左右両駆動軸間の駆動トルク配分が適
切に行なわれる。
【0016】これらのように、伝達トルクや回転数が大
きい程大きい差動制限力が得られる差動制限機能に加え
て、各発明は予圧ばねでイニシャルトルクが与えられる
摩擦クラッチを備えており、その制動力により伝達トル
クや回転数と無関係な適度の差動制限力が得られる。従
って、特に低速域での走破性が高く保たれる。
【0017】又、従来例と異って、本発明では差動制限
力を得るために油圧アクチュエータや電磁石などを用い
ないから、エンジンの燃費が低下することがなく扱いが
簡単であると共に、小型軽量で構造が簡単である。
【0018】
【実施例】以下、本発明を車両の終減速機に適用した場
合の実施例につき説明する。
【0019】図1は請求項1に係る実施例の遊星歯車式
差動装置1の縦断面図、図2は遊星歯車組を構成する各
可動部材の配列状態を示す横断面図である。なお、左右
の方向は図1での左右の方向であり、符号を付していな
い部材等は図示されていない。
【0020】デフケース3にはリングギヤ(被駆動歯
車)が固定されている。このリングギヤはプロペラシャ
フト側のドライブピニオンギヤと噛合っており、デフケ
ース3は変速機とプロペラシャフトを介してエンジンの
駆動力により回転駆動される。
【0021】図1に示したように、デフケース3の内部
には左右のハブ5,7が配置されている。左のハブ5は
左車輪側の駆動車軸にスプライン連結され、右のハブ7
は右車輪側の駆動車軸に軸方向移動可能にスプライン連
結されている。デフケース3の内部には遊星歯車組が配
置されている。その内歯歯車9はデフケース3に形成さ
れ、太陽歯車11は左のハブ5に形成されている。これ
らの間には互いに噛合った4組の第1の遊星歯車13及
び第2の遊星歯車15(図2に図示)が配置され、遊星
歯車13は内歯歯車9と噛合い、遊星歯車15は太陽歯
車11と噛合っている。
【0022】これらの遊星歯車13,15はそれぞれピ
ン17,19上に回転自在に支承され、これらのピン1
7,19は両端を左右のキャリア21,23に支持され
ている。これらのキャリア21,23はブリッジ部25
を介して溶接で一体にされ、右のキャリア23は右のハ
ブ7と一体に形成されている。各ピン17,19と遊星
歯車13,15との回転部の嵌合度合は摩擦トルクを生
じさせる目的で、従来よりも密に設定してある。上記回
転部の材料としては耐摩耗性の高い材料、例えば表面硬
化された鋼材等を使用するのが良い。
【0023】また、ピン17,19の外周には螺旋状の
油溝27を設け、これにより回転部に形成される油膜の
厚さを制御して摩擦トルクの大きさを制御するようにし
ている。デフケース3にはオイルの流入孔と流出孔とが
設けられ内部を潤滑している。
【0024】なお、第1及び又は第2の遊星歯車13,
15とキャリア21,23との回転部即ちピン17,1
9の外周面及び遊星歯車13,15の円孔の内周面の表
面粗度を粗くすることによっても摩擦トルクを増大させ
ることができる。
【0025】図1に示すように、遊星歯車組の左側には
クラッチ部材29が配置され、軸方向移動自在に太陽歯
車11と噛合っている。このクラッチ部材29と左のキ
ャリア21との間にはコーンクラッチ31(摩擦クラッ
チ)が形成されている。また、右のキャリア23とデフ
ケース3との間には皿ばね33(予圧ばね)が配置さ
れ、コーンクラッチ31を常時押圧し、適度なイニシャ
ルトルクを与えている。
【0026】こうして、遊星歯車式差動装置1が構成さ
れている。
【0027】デフケース3に入力したエンジンの駆動力
は内歯歯車9から第1と第2の遊星歯車13,15と右
のキャリア23から右のハブ7を介して右車輪を回転駆
動し、太陽歯車11から左のハブ5を介して左車輪を回
転駆動する。また、左右の車輪間に駆動抵抗差が生じる
と各遊星歯車13,15の自転と公転とによりエンジン
の駆動力は左右の車輪に差動分配される。
【0028】このとき、回転部の摩擦トルクにより遊星
歯車13,15の回転が制動され、差動制限が行われ
る。伝達トルクが大きい程この摩擦トルクは大きくな
り、差動制限力が強化される。一方、コーンクラッチ3
1ではイニシャルトルクにより伝達トルクや回転数の大
小には無関係に適度な差動制限力が得られる。
【0029】なお、遊星歯車13,15と各ピン17,
19とをそれぞれ一体構成にすると共に、各キャリア2
1,23との回転部を大径にしてもよい。又、例えばキ
ャリア21側を大径部にしキャリア23側を小径部にし
てもよい。このように回転部の径を大きくすることによ
り、図1の実施例と同一の摩擦係数であっても、さらに
摩擦トルクを増大させることができる。これに加えて、
後者の場合は第1の遊星歯車13と第2の遊星歯車15
との軸間距離が比較的短かくて大径軸部同士では干渉す
るような場合に有利である。
【0030】これらの場合においても、相対回転部の材
料としては耐摩耗性の高い材料、例えば表面硬化された
鋼材等を使用するのが良い。又、回転部の表面粗度を従
来よりも粗くすることによって、さらに摩擦トルクを増
大させることができる。
【0031】次に、図3と図4とにより請求項1に係る
他の発明の実施例を説明する。図3と図4の各装置3
5,37は摩擦クラッチ部が互いに異っているだけで、
遊星歯車組は共通のものであるから同一の部材には同一
の符号が付してある。左右の方向は図3と図4での左右
の方向であり、符号を付していない部材等は図示されて
いない。
【0032】デフケース39にはリングギヤ(被駆動歯
車)が固定されている。このリングギヤはプロペラシャ
フト側のドライブピニオンギヤと噛合っており、デフケ
ース39は変速機とプロペラシャフトを介してエンジン
の駆動力により回転駆動される。
【0033】図3と図4とに示したように、デフケース
39の内部には左右のハブ41,43が配置されてお
り、左のハブ41は左車輪側の駆動車軸にスプライン連
結され、右のハブ43は右車輪側の駆動車軸にスプライ
ン連結されている。デフケース39の内部には遊星歯車
組が配置されている。その内歯歯車45はデフケース3
9に形成され、太陽歯車47は左のハブ41に形成され
ており、これらの間には互いに噛合った第1の遊星歯車
49と第2の遊星歯車が配置されている。第1の遊星歯
車49は内歯歯車45と噛合い、第2の遊星歯車は太陽
歯車47と噛合っている。
【0034】第1の遊星歯車49は外側のピン51上に
回転自在に支承され、第2の遊星歯車は内側のピン上に
回転自在に支承されている。これらのピンは両端を左右
のキャリア53,55に支持されている。また、キャリ
ア53,55は溶接で一体にされており、右のキャリア
55は右のハブ43と一体に形成されている。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】また、図3の例ではデフケース39と左の
キャリア53との間にコーンクラッチ57(摩擦クラッ
チ)が形成されており、デフケース39とキャリア53
との間には皿ばね59(予圧ばね)が配置され、コーン
クラッチ57を常時押圧し、適度なイニシャルトルクを
与えている。
【0039】また、図4の例では、コーンクラッチ57
に加えて他のコーンクラッチ61(摩擦クラッチ)が配
置されている。このコーンクラッチ61は太陽歯車47
に移動自在に噛合ったクラッチ部材63とキャリア53
との間に形成されている。これらのコーンクラッチ5
7,61はデフケース39とクラッチ部材63との間に
配置された皿ばね65によって常時押圧され適度なイニ
シャルトルクを与えられている。
【0040】このようなイニシャルトルクにより、各遊
星歯車式差動装置35,37ともに伝達トルクや回転数
に無関係に、常時適度な差動制限力が得られる。なお、
云うまでもなく各イニシャルトルクが同じ大きさであれ
ば図4の例の方が各コーンクラッチ57,61の負担が
軽い。
【0041】次に、図5ないし図8により請求項2に係
る発明の実施例を説明する。図5は請求項2に係る発明
の第1実施例の遊星歯車式差動装置67を示し、図6は
その第2実施例の遊星歯車式差動装置69を示す。図5
と図6の遊星歯車組は共通のものであり、同一機能の部
材には互いに同一の符号が付してある。左右の方向は図
5と図6での左右の方向であり、符号を付していない部
材等は図示されていない。
【0042】デフケース71にはリングギヤ(被駆動歯
車)が固定されている。このリングギヤはプロペラシャ
フト側のドライブピニオンギヤと噛合っており、デフケ
ース71は変速機とプロペラシャフトを介してエンジン
の駆動力により回転駆動される。
【0043】図5と図6とに示したように、デフケース
71の内部には左右のハブ73,75が配置されてお
り、左のハブ73は左車輪側の駆動車軸にスプライン連
結され、右のハブ75は右車輪側の駆動車軸にスプライ
ン連結されている。デフケース71の内部には遊星歯車
組が配置されている。その内歯歯車77はデフケース7
1に形成され、太陽歯車79は左のハブ73に形成され
ており、これらの間には互いに噛合った第1の遊星歯車
81と第2の遊星歯車83(図7、図8)が配置されて
いる。第1の遊星歯車81は内歯歯車77と噛合い、第
2の遊星歯車83は太陽歯車79と噛合っている。
【0044】第1の遊星歯車81は外側のピン85上に
回転自在に支承され、第2の遊星歯車83は内側のピン
上87(図7、図8)に回転自在に支承されている。こ
れらのピン85,87は両端を左右のキャリア89,9
1に支持されている。また、キャリア89,91は溶接
で一体にされており、右のキャリア91は右のハブ75
と一体に形成されている。
【0045】図7は矢印P方向に内歯歯車77が回転さ
れた時の前進駆動時における各歯車の噛合状態を示し、
図8は矢印Q方向に内歯歯車77が回転された時の後進
駆動時又はコースティング時における各歯車の噛合状態
を示す。
【0046】両図を通して、R1 は内歯歯車77の噛合
ピッチ円半径、R2 は太陽歯車79の噛合ピッチ円半
径、γ1 は第1及び第2の遊星歯車81,83のピッチ
円半径、αは噛合圧力角を示す。
【0047】遊星歯車81,83の各ピン85,87に
対する回転部では第1の発明に従って摩擦力による差動
制限力が生じるようにされている。
【0048】図7及び図8にみられるように、第2の遊
星歯車83は、内歯歯車77の前進駆動回転方向即ち図
7の矢印Pの方向(前方)に対して、第1の遊星歯車8
1よりも後方に配置されている。
【0049】図7において、良好な路面での前進駆動時
には、内歯歯車77が矢印P方向に駆動回転され、その
時各遊星歯車81,83と、これらを軸支しているピン
85,87と、太陽歯車79とは殆んど相対回転するこ
となく、ほぼ一体となって回転し、右のハブ75(キャ
リア91)に連結された右車軸と左のハブ73(太陽歯
車79)に連結された左車軸との回転速度及び駆動トル
クはほぼ同じである。
【0050】そのとき各噛合ピッチ点P1 ,P2 ,P3
を通る各作用線の方向にはそれぞれ、矢印P方向の力の
分力たる力F1 とその反力F1R、力F2 とその反力F2R
及び力F3 とその反力F3Rが生じている。そして第1の
遊星歯車81には力F1 と反力F2Rが作用しているので
その合力Mは当該遊星歯車81をキャリア89,91に
固定したピン85に対し矢印Mの向きに押圧し、そのた
めピン85と当該遊星歯車81との間に大きな摩擦力が
生じており、これにより当該遊星歯車81の自転が適度
に制限される。
【0051】また、第2の遊星歯車83には力F2 と反
力F3Rとが作用しているのでその合力Nは当該遊星歯車
83をキャリア89,91に固定されたピン87に対
し、矢印Nの向きに押圧し、そのためピン87と当該遊
星歯車83との間に大きな摩擦力が生じ、これにより当
該遊星歯車83の自転が適度に制限される。
【0052】このように第1及び第2の遊星歯車81,
83の自転が適度に制限されることにより、左のハブ7
3(太陽歯車79)と右のハブ75(キャリア91)と
の差動回転が適度に制限される。
【0053】次に、図8において、良好な路面での後進
駆動時又はコースティング時には、内歯歯車77が矢印
Qの方向に駆動回転され、その時各遊星歯車81,83
と、これらを軸支しているピン85,87と、太陽歯車
79とは殆んど相対回転することなく、殆んど一体とな
って回転し、キャリア91側の右車軸と、太陽歯車79
側の左車軸との回転速度及び駆動トルクはほぼ同じであ
る。
【0054】そのとき各噛合ピッチ点P1 ,P2 ,P3
を通る各作用線の方向にはそれぞれ、矢印Q方向の力の
分力たる力F1 とその反力F1R、力F2 とその反力F2R
及び力F3 とその反力F3Rが生じている。そして第1の
遊星歯車81には力F1 と反力F2Rが作用しているので
その合力Mは当該遊星歯車81をキャリア89,91に
固定されたピン85に対し、矢印Mの向きに押圧し、そ
のためピン85と当該遊星歯車81との間に、図7の場
合よりは小さな摩擦力が生じ、これにより当該遊星歯車
81の自転が適度に制限される。
【0055】また、第2の遊星歯車83には力F2 と反
力F3Rとが作用しているので、それらの合力Nは当該遊
星歯車83をキャリア89,91に固定されたピン87
に対し、矢印Nの向きに押圧し、そのためピン87と当
該遊星歯車83との間に、図7の場合よりは小さな摩擦
力が生じ、これにより当該遊星歯車83の自転が適度に
制限される。
【0056】このように、第1及び第2の遊星歯車8
1,83の自転が適度に制限されることにより、左のハ
ブ73(太陽歯車79)と右のハブ75(キャリア9
1)との差動回転、換言すれば左車軸と右車軸との差動
回転が、後進駆動時又はコースティング時に適する程度
に制限される。
【0057】なお、図7及び図8における合力M及びN
の値を大きくするためには、噛合圧力角αの値を大きく
するのが良い。
【0058】また、図5の例では左のキャリア89と太
陽歯車79との間に多板クラッチ93(摩擦クラッチ)
が配置され、図6の例では内歯歯車77と太陽歯車79
との間に多板クラッチ95(摩擦クラッチ)が配置され
ている。これらのクラッチ93,95は右のキャリア9
1とデフケース71との間に配置された皿ばね97(予
圧ばね)により適度に押圧され、それぞれイニシャルト
ルクを与えられている。
【0059】次に、上記構成による各実施例の作用を説
明する。
【0060】車両走行中、例えば路面の状態等に起因し
て左車輪がスリップし、左軸トルクが低下しても請求項
1記載の差動装置1の場合は、第1の遊星歯車13及び
又は第2の遊星歯車15とキャリア21,23との回転
部の摩擦トルクにより、太陽歯車11及びこれに連結さ
れた左車軸の過回転とそれに伴なう右車軸の回転速度低
下が防止され、右車軸の駆動トルクはそれ程低下せず、
左右両車軸間に適度な駆動トルクの配分が得られる。
【0061】
【0062】また、請求項2記載の差動装置67,69
の場合は、第2の遊星歯車83を第1の遊星歯車81よ
りも後方に配置したため、前進駆動時には比較的大きな
制動トルクを、後進又はコースティング時には比較的小
さな制動トルクを各遊星歯車81,83に生じさせるこ
とができ、これにより左右両車軸間の適度な駆動トルク
の配分が得られる。
【0063】これに加えて、各請求項記載の差動装置
1,35,37,67,69ではそれぞれの実施例で説
明したように、摩擦クラッチのイニシャルトルクにより
伝達トルクや回転数とは無関係に常時適度な差動制限力
が得られる。
【0064】図9は実験により得られた、本発明に係る
トルク配分特性図であり、横軸に右車軸トルクTR を、
縦軸に左車軸トルクTL をとったものである。同図で線
イ及び線イ’は右車軸のトルク低下時の左車軸のトルク
配分限界を示し、線ロ及び線ロ’は左車軸のトルク低下
時の右車軸のトルク配分限界を示すものである。なお、
線イ’と線ロ’はそれぞれ摩擦クラッチのイニシャルト
ルクによるものである。
【0065】車両走行中、通常は限界線イ及び線イ’と
限界線ロ及び線ロ’で囲まれた範囲即ち斜線が施された
範囲内で走行している。例えば左車輪がスリップして左
車軸トルクTL が点Aにて示すようにTL1まで低下した
時であっても、右車軸トルクTR は比較的大きく、適度
な駆動トルクTR1が得られる。
【0066】逆に、例えば右車輪がスリップして右車軸
トルクTR が低下した時でも、線イ及び線イ’で示す限
界特性により、線ロ及び線ロ’で述べたと同様に左車軸
トルクTL は比較的大きく、適度な駆動トルクが得られ
る。
【0067】なお、同図の第三象限に示した特性図の線
ハと線ハ’及びニとニ’は、実験により得られた、車両
後進時又はコースティング時の本発明に係る限界特性を
示すもので、第1象限にて示した前進駆動時の特性より
も若干弱い特性が得られた。なお、線ハ’と線ニ’はそ
れぞれ摩擦クラッチのイニシャルトルクによるものであ
る。この特性により、車両のコーナ進入時にアンダース
テアが強くなるのを抑えることができ、かつABS(ア
ンチ・スキッド・ブレーキ・システム)との干渉を起さ
ないという効果がある。
【0068】また、線イ’、ロ’、ニ’、ハ’で示した
イニシャルトルクによる差動制限力により、低速走行時
などのようにスリップ側の軸トルクが小さい場合でも反
スリップ側では例えば悪路から脱出できる程度の軸トル
クが得られ、車両の走破性が高く保たれる。
【0069】図10は従来良く行なわれていた、遊星歯
車とキャリアの相対回転部にニードルベアリングを介装
し、摩擦係数の値を小さくして実験した結果得られたト
ルク配分特性図である。この場合、例えば左車輪がスリ
ップ等して左車軸トルクTL が低下して線ヘの点Bにて
示すようにTL2まで低下した時、右車軸トルクTR も非
常に低下してTR2となってしまうことがわかった。
【0070】同様に、右車輪がスリップ等して右車軸ト
ルクTR が低下した時も、線ホからわかるように、左車
軸トルクTL も非常に小さくなってしまうのである。ま
た、図9の特性と異って、イニシャルトルクにより低軸
トルク時の差動制限力を補償する機能がない。
【0071】以上述べたように、本発明によるトルク配
分特性は従来の特性に較べて優れている。
【0072】また、本発明の差動装置は、従来例と異っ
て、エンジンの出力を直接消費するアクチュエータや電
磁クラッチのような駆動装置を用いないから制御の必要
がなく扱いが簡単である上にエンジンのパワーロスが少
なく、燃費が向上すると共に、構造が簡単であり、小型
軽量である。
【0073】
【発明の効果】以上述べたように、請求項1に係る発明
は、第1の遊星歯車及び又は第2の遊星歯車とキャリア
との回転部に差動制限手段を設けたことにより、一方の
駆動軸の駆動トルクが低下しても、他方の駆動軸の駆動
トルクが著しく低下するようなことがなく、一方の駆動
軸と他方の駆動軸との間に適度な駆動トルクの配分が得
られる。
【0074】
【0075】また、請求項2に係る発明は、第2の遊星
歯車を、内歯歯車の前進駆動方向に対して第1の遊星歯
車よりも後方に配置したため、前進駆動時には比較的大
きな制動トルクを各歯車に与えることができ、後進駆動
時又はコースティング時には比較的小さな制動トルクを
各歯車に与えることができ、これにより一方の駆動軸と
他方の駆動軸との間に、前進駆動時と後進駆動時又はコ
ースティング時とに応じて適切な駆動トルクの配分が得
られる。
【0076】また、各請求項の発明は摩擦クラッチとこ
れにイニシャルトルクを与える予圧ばねとにより低速時
などでの差動制限力が得られる。
【0077】上記のように、本発明はエンジンの出力を
消費するアクチュエータや電磁クラッチのような駆動源
を用いないから扱いが簡単である上、エンジンのパワー
ロスが少なく、燃費が向上すると共に、構造簡単で、小
型軽量である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1の発明の他の実施例を示す断面図である。
【図4】第1の発明の更に他の実施例を示す断面図であ
る。
【図5】第2の発明の第1実施例を示す断面図である。
【図6】第2の発明の第2実施例を示す断面図である。
【図7】第2の発明の各実施例の説明図(前進駆動時)
である。
【図8】第2の発明の各実施例の説明図(後進駆動時又
はコースティング時)である。
【図9】本発明の上記各実施例のトルク配分特性図であ
る。
【図10】従来の差動装置のトルク配分特性図である。
【符号の説明】
1,35,37,67,69 遊星歯車式差動装置 3,39,71 デフケース 9,45,77 内歯歯車 11,47,79 太陽歯車 13,49,81 第1の遊星歯車 15,83 第2の遊星歯車 21,23,53,55,89,91 キャリア 31,57,61 コーンクラッチ(摩擦クラッチ) 33,59,65,97 皿ばね(予圧ばね) 93,95 多板クラッチ(摩擦クラッチ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 1/44,1/45

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被駆動歯車及びデフケースに固定された
    内歯歯車と、該内歯歯車と同軸でかつ前記デフケースに
    対して回転自在に配設された太陽歯車と、前記内歯歯車
    に噛合う第1の遊星歯車と、該第1の遊星歯車に噛合う
    とともに前記太陽歯車にも噛合う第2の遊星歯車と、前
    記第1及び第2の遊星歯車をそれぞれ回転可能に軸支す
    るとともにそれ自体が前記デフケースに対して回転自在
    に配設されたキャリアとを備え、前記太陽歯車を一方の
    駆動軸に連結し、前記キャリアを他方の駆動軸に連結し
    てなる遊星歯車式差動装置であって、前記第1の遊星歯
    車及び又は前記第2の遊星歯車と前記キャリアとの回転
    部に設けられた差動制限手段と、差動制限用の摩擦クラ
    ッチ及びこれに適度な締結力を与える予圧ばねとを備え
    たことを特徴とする遊星歯車式差動装置。
  2. 【請求項2】 被駆動歯車及びデフケースに固定された
    内歯歯車と、該内歯歯車と同軸でかつ前記デフケースに
    対して回転自在に配設された太陽歯車と、前記内歯歯車
    に噛合う第1の遊星歯車と、該第1の遊星歯車に噛合う
    とともに前記太陽歯車にも噛合う第2の遊星歯車と、前
    記第1及び第2の遊星歯車をそれぞれ回転可能に軸支す
    るとともにそれ自体が前記デフケースに対して回転自在
    に配設されたキャリアとを備え、前記太陽歯車を一方の
    駆動軸に連結し、前記キャリアを他方の駆動軸に連結し
    てなる遊星歯車式差動装置であって、前記第2の遊星歯
    車を前記内歯歯車の前進駆動方向に対して前記第1の遊
    星歯車よりも後方に配置すると共に、差動制限用の摩擦
    クラッチ及びこれに適度な締結力を与える予圧ばねを備
    えたことを特徴とする遊星歯車式差動装置。
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