JP3093553B2 - エネルギー可変型高周波四重極ライナック - Google Patents

エネルギー可変型高周波四重極ライナック

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JP3093553B2
JP3093553B2 JP06004875A JP487594A JP3093553B2 JP 3093553 B2 JP3093553 B2 JP 3093553B2 JP 06004875 A JP06004875 A JP 06004875A JP 487594 A JP487594 A JP 487594A JP 3093553 B2 JP3093553 B2 JP 3093553B2
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    • H05ELECTRIC TECHNIQUES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H05HPLASMA TECHNIQUE; PRODUCTION OF ACCELERATED ELECTRICALLY-CHARGED PARTICLES OR OF NEUTRONS; PRODUCTION OR ACCELERATION OF NEUTRAL MOLECULAR OR ATOMIC BEAMS
    • H05H9/00Linear accelerators

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  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Particle Accelerators (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は例えばイオン注入器等
に利用される、低エネルギーの荷電ビームの加速を効率
よく行う、エネルギー可変型の高周波四重極ライナック
(以下、RFQ(Radio Frequency Q
u−adrupole)ライナックという)に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】図25は、例えば1989年12月12
〜14日に開催の「プロシィーディングス オブ ザ
セブンス シンポジューム オン アクセルレータ サ
イエンス アンド テクノロジー(Proceedin
gs of the 7thSymposium on
Accelerator Science andT
echnology)」に発表された「ストラクチャ
アンド アール・エフキャラクタリスティックス オブ
ザ アイ・エヌ・エス 25.5−MHz スプリット
コアキシャル アール・エフ・キュー(Struct
ure andRF Characteri−stic
s of the INS 25.5−MHz Spli
t Coaxial RFQ)」(論文集第92〜94
頁)に示された、従来の分割同軸型のRFQライナック
を簡略化して示す一部切欠斜視図である。図において、
1は円筒空洞、2はこの円筒空洞1内に配置されて、荷
電粒子を収束および加速するための高周波四重極電界を
発生する電極としての波打ち電極であり、3は波打ち電
極2を補強する背板である。4は対向した1対の波打ち
電極2を円筒空洞1に短絡するステムであり、5は真空
排気あるいは高周波入力、周波数チューナ等の取り付け
に使うポートである。なお、円筒空洞1に波打ち電極2
を取り付けたものを加速空洞と呼ぶ。これらは全て導電
体でできている。
【0003】図26はその波打ち電極2だけを拡大して
表した斜視図であり、図27は図25に示したRFQラ
イナックのビーム軸方向の断面図、図28はそのA−
A’矢示断面図およびB−B’矢示断面図である。な
お、図27および図28には電流と磁界のパスをあわせ
て示しており、背板3の記載は省略している。
【0004】また、図29はリエントラント型空洞を示
す断面図であり、図において6は内導体である。図30
は内導体6の形状を変形させたリエントラント型空洞を
示す断面図で、図31はこの図30の内導体をさらに1
組増やして図27に示した分割同軸型空洞に近づけた4
電極空洞の断面図である。
【0005】図32ないし図37は別の型のRFQライ
ナックの電極部分または加速空洞を示す斜視図あるいは
断面図である。図32は角型電極の概略を示す斜視図
で、図において7がその角型電極(ここではこのように
呼ぶ)であり、リング状の導電体に先の尖った2本の金
属棒を取り付けた構造となっている。この角型電極7は
図25における波打ち電極2の代わりに取り付けられ
る。なお、この角型電極7の付けられた加速空洞を角型
電極型RFQライナックと呼ぶ。図33は4ロッド電極
型RFQライナックの電極部の概略を示す斜視図、図3
4はそのロッド電極の形状を示す斜視図である。図にお
いて8がロッド電極であり、図33に示すようにステム
4に支持されて円筒空洞1の中に取り付けられる。図3
5は4ヴェイン型RFQライナックを示す断面図、図3
6はその一部切欠正面図である。図において、9はその
先端部分が波打ち電極2と同じ形状をしているヴェイ
ン、10は高周波を入力するループカプラ(高周波シス
テム)であり、11はサイドチューナ、12はチューナ
駆動機構である。図37はダブルH型(Double−
H型)RFQライナックを示す断面図であり、図35の
ヴェイン9の代わりに開いたパイプが2個付いた構造を
しており、電極としてはロッド電極8などが付けられ
る。
【0006】次に動作について説明する。RFQライナ
ックは荷電ビームを高周波電界により収束すると同時に
加速する装置であり、一般には原子核実験等を行なうた
めの高エネルギー加速器の初段部などに用いられる。こ
のRFQライナックは高周波四重極電界により荷電粒子
を集束・加速するものであるため、電極形状とか加速空
洞の構造は1つに限定されない。図25と図32から図
37に示すものがその代表的なものであるが、図25な
いし図28に示す分割同軸型RFQライナックについて
は、この発明の実施例として代表的に説明するためここ
で詳しく説明しておく。
【0007】図25における波打ち電極2は図26に示
すように、ビーム軸方向に波打つ形状になっている(こ
の波打ちをモジュレーションという)。この対向する一
対の波打ち電極2に同符号の交流電圧を与え、他の一対
の波打ち電極2にはその逆符号の交流電圧を与えると、
荷電ビームの通過する4つの波打ち電極2に囲まれたア
パーチャ内には四重極電界が発生する。この四重極電界
により荷電ビームは収束力を受けるが、波打ち形状によ
りビーム進行方向にも電界が発生するため、その成分に
より加速も受ける。波打ち周期は交流電圧の波長とビー
ム速度の積に比例した値でなければならいため(この理
由は後に説明する)、荷電ビームが加速されるに伴って
その周期は長くなるように作られる。従って、一度波打
ち電極2が加工されてしまうと、交流電圧の周波数によ
り荷電ビームの速度はきまる。つまり、周波数を変えな
い限り取り出しビームのエネルギーは変わらないことに
なる。なお、この波打ち電極2への交流電圧の与え方
は、加速空洞内に高周波電力を供給し、定在波を立たせ
る(共振状態)方式を用いる。この方式は効率よく電力
を供給できる。
【0008】以下に、分割同軸型空洞ではなぜ上記の様
な電圧が4つの波打ち電極に発生するのか、どのような
電磁界が発生しているのか説明する。図29は荷電粒子
を加速するために一般によく用いられているリエントラ
ント型空洞である。このリエントラント型空洞は同軸共
振空洞の内導体6を中心で切り離すことにより、その間
隙に電界を集中発生させ、その電界で粒子を加速するも
のである。電界、磁界の分布、表面電流のパスを図中に
示す。切り離された内導体6間の電位差は内導体6の円
筒断面にわたって一様である。
【0009】図30は上記リエントラント型空洞を変形
して強い電界のできる領域を広げたものである。電磁界
分布、電流パスは図29に示したリエントラント型空洞
と同じであり、内導体6間の電位差も一定となる。ま
た、図31は内導体をさらに1組増やした構造であり、
内導体6の代わりに波打ち電極2を用いたものである。
この空洞を3台つなぎ合わせたものが図25ないし図2
8に示したRFQライナックと等価となる。図27およ
び図28に電磁界および電流パスを示すが、波打ち電極
間電圧は先に説明した四重極電界を発生させるに必要な
電圧となり、更にビーム進行方向に一定となる。なお、
図31における背板3は波打ち電極2を機械的に補強す
るためのものである。
【0010】図27および図28において、4本の波打
ち電極2は各々一体物か分割して加工された後につなぎ
合わされたもので、いずれにしても高周波的には一体物
である。従って、高周波電力は加速空洞の任意の一ヶ所
から供給すれば波打ち電極2全体に渡って所定の電位分
布を得ることができる。ここで、つなぎ合わせ面を図2
8に示すようなA−A’矢示断面、B−B’矢示断面の
ようにした理由は、空洞内を真空に引くときに真空排気
ユニットが1台でよいこと、1箇所から高周波電力を供
給する場合空洞全体に高周波が伝わりやすい等のためで
ある。つなぎ面をビームが通過する部分以外を完全に覆
っても、波打ち電極がつながっている以上、1ヶ所から
高周波電力を供給しても他の空洞に伝わる。また、つな
ぎ面、すなわちステム4をなくしても、波打ち電極間電
圧分布は上記構造と同じものが得られるが、電極は一方
でしか支えられていないため、長くなると機械的に不安
定となり実用的でなくなる。そして一般的には、電極を
安定に固定するために図27,28では図示を省略した
背板3を電極に取り付ける。
【0011】このような加速空洞に高周波電力が効率よ
く供給されるためには、高周波の周波数が加速空洞の共
振周波数に一致しなければならない。共振周波数は一般
の電気回路では並列に接続されたキャパシタンスCとイ
ンダクタンスLの積により決まり、次式で与えられる。
【0012】
【数1】
【0013】この加速空洞の場合、キャパシタンスCと
しては、波打ち電極2の間のキャパシタンスCVVと波打
ち電極2と、ステム4の間のキャパシタンスCVSとの和
として与えられる。またインダクタンスLとしては、波
打ち電極2を取り巻くようにできる磁界から得られるイ
ンダクタンスLT と、ステム4を取り巻くようにできる
磁界から得られるインダクタンスLS から次式のように
与えられる。
【0014】
【数2】
【0015】ここで、lm はステム4にて仕切られた区
間の長さ、rC は円筒空洞1の内半径、rE は波打ち電
極2の実効的半径である。従って、高周波の周波数が決
まっている場合、加速空洞の共振周波数が等しくなるよ
うに電極間ギャップ長、円筒空洞1の断面積を決めなけ
ればならない。一般には、電極間ギャップはできるだけ
低い電圧で高電界を発生できるように決められるため、
それにより決まるキャパシタンスCから必要な共振周波
数が得られるように円筒空洞1の断面積が決められる。
しかしながら、実際に製作する場合、製作誤差が必ず生
じるために共振周波数はわずかにずれる。それを補正す
るために一般的には金属ブロックを円筒空洞1内に出し
入れするチューナを設け、それを出し入れすることによ
り等価的にインダクタンスLT を変え共振周波数を微調
整する。このような調整方式では、共振周波数の変化幅
は約1%である。
【0016】電極としては、波打ち電極2の他に図32
に示すような角型電極7が用いられる場合もある。これ
はリング状の導電体に先の尖った2本の金属棒が付けら
れ角型電極7が上下あるいは左右の背板3に取り付けら
れる構造である。図32に示すように、ある角型電極7
を上下の背板3に付け、次の角型電極7は左右の背板3
に付けるというように交互に取り付けると、角型電極7
の間には四重極電界が発生する。
【0017】また、図33に示すような電極を円筒空洞
1に設置しても同様の四重極電界が得られる。この電位
分布は、2つのステム4とそれにつながる2本のロッド
電極8を一組として考える。ステム4の付け根(ロッド
電極8とは反対側)をアース電位と考えると、よく知ら
れる同軸共振器と等価な構造となり、電圧はそれぞれの
ステム4の付け根でゼロ、ロッド電極8中心で最大とな
る分布が得られる。また、キャパシタンスはロッド電極
8において非常に大であるため、ロッド電極8の部分で
の位相の変化は小さく、ロッド電極8間電位差はステム
4間では略一定となる。なお、図34はこのロッド電極
8のみを取り出して詳細に示した斜視図である。
【0018】そのほかに、図35および図36に示した
4ヴェイン型のものもある。これは先端が波打ち電極2
と同一の構造をしたヴェイン9が4枚、円筒空洞1の内
部に取り付けられたものである。なお、円筒空洞1の両
端部には図36に示すように空間が設けられており、こ
の空間があることによりヴェイン9を取り囲むように磁
界を発生させることができる。これによって、この4枚
のヴエイン9の先端部が電極として作用し、荷電粒子の
収束および加速を行う。この時、ヴェイン9間のキャパ
シタンスがビーム軸に沿って一定ならばヴェイン9間の
電圧も一定となる。図35におけるサイドチューナ11
は電界分布調整及び共振周波数調整のために設けられた
もので、先に分割同軸型RFQライナックで少し触れた
共振周波数調整用チューナと構造的には同等のものであ
る。また、図35,図36には高周波電力を供給するた
めのループカプラ10も描かれている。
【0019】さらに、図37はダブルH型と呼ばれるも
ので、ヴェイン9の代わりに割れたパイプが2個付いた
ような構造をしており、その割れた部分に例えば図34
に示したロッド電極8が付けられるものである。
【0020】ところで、共振周波数(運転周波数)を変
えると出射ビームのエネルギーが変えられることは上に
述べたが、この方式による従来のRFQライナックの一
例を以下に説明する。
【0021】図38は1989年12月12〜14日に
開催の「プロシィーディングス オブ ザ セブンス
シンポジューム オン アクセルレータ サイエンス
アンドテクノロジー(Proceedings of
the 7th Symp−osium on Acc
elerator Science and Te−c
hnology)」に発表された「アクセルレーション
エクスペリメンツオブ ア バリアブル エナジー
アール・エフ・キュー ドリブン バイ アン エル・
シー タンク サーキット(Acceleration
Expx−riments of a Variab
le Energy RFQ Dr−iven by
an LC−tank Circuit)」(論文集第
95〜97頁)に示された、従来のエネルギー可変型R
FQライナックを示す概念図であり、図39はその等価
回路図である。図において13はタンク型インダクタン
ス、14は可変キャパシタンス、15は高周波電源であ
る。
【0022】このエネルギー可変型RFQライナックは
加速空洞全体が共振器になっているわけではなく、波打
ち電極2と並列に集中定数的な可変キャパシタンス14
とタンク型のインダクタンス13を接続し共振回路を形
作っているものである。このように集中定数的な可変キ
ャパシタンス14を使用しているため、電力効率は悪い
が共振周波数を容易に大幅に変えられる利点がある。
【0023】一方、ビームの通過効率を問題にしないな
ら、単一加速空洞で高周波電力を下げることにより様々
なエネルギーのビームを取り出すことができる。先ずR
FQライナックのビーム加速方法について説明する。R
FQライナックに限らず高周波で加速するライナックは
全てのセルで加速されるように周期構造をしており、加
速により粒子速度が早くなる分だけセルの長さを長くす
る。そして、一般的には各セル中心を通過する時の高周
波位相(同期位相φS )は常に一定となるように設計さ
れる。つまり、粒子があるセル中心から次のセル中心ま
で行く時に変化する高周波位相が常に2π(加速空洞の
タイプにより異なるがRFQラナックの場合はπ)とな
るように電極は設計される。
【0024】上記説明は同期粒子に対するものである
が、入射ビームはたとえ予めバンチされていても有限の
長さを持つため、各セル中心での高周波位相は粒子によ
って異なり、エネルギー増加が異なる。従って、設計通
りに加速されてゆく粒子(同期粒子)に対して他の粒子
はエネルギーが徐々に変わってゆく。
【0025】しかし、同期粒子に対する高周波の加速位
相(φS )をcos波の−90度から0度の間に設定すれ
ば、同期粒子以外の粒子はエネルギー、位相的に同期粒
子の回りを振動しながら加速されてゆく。その最外郭の
粒子が位相−エネルギー平面上で描く軌跡をセパラトリ
クスと呼び、その外側にいる粒子は位相振動しないため
にセルを進んでゆくうちに減速位相で通過するところも
あり、結果的に加速されずに出射される。セパラトリク
スはφS =−90度のとき最も大きく(但し平均すると
加速されない)、φS =0度で消滅する。即ち、φS
0度では同期粒子は最も効率よく加速されるが、その回
りの粒子は加速減速を繰り返し平均すると加速電圧はゼ
ロとなる。
【0026】次に、加速空洞に入力する高周波電力を変
えて電極電圧を変えても同期粒子の速度(またはエネル
ギー)は変わらないことを説明する。ここで、各セルで
のエネルギー増加分は次式で表される。
【0027】
【数3】
【0028】ここで、V0 は電極間電圧、Tはセル内の
電界分布及びセルを通過する時の高周波位相の変化を考
慮した係数である。各セル長は上式から得られるエネル
ギー増加を基に決められ電極が設計される。従って、同
期粒子とはあくまでも1セルを通過する時に設計値のΔ
Wを得る粒子のことである。従って、V0 が変わっても
同期粒子に対しては上式のΔWが一定となるような加速
のされ方をするため、V0 が変化するとφS が変化する
ことになる。なお、ここではTの変化は無視する。即
ち、変わったφS のタイミングで入射された粒子が同期
粒子となり、元の同期粒子は非同期粒子となってエネル
ギー的には新同期粒子の回りを振動しながら加速される
ことになる。
【0029】電極電圧を上げる場合はφS が−90度に
限りなく近づいてゆくだけだが、下げる場合はφS =0
度でセパラトリクスが消滅するため、それ以下に下げて
も粒子が加速されない状況は変わらない。ただし、加速
減速を繰り返すために結果として加速されないというこ
とであるから、この場合は位相振動が数回以上行われる
ようなライナックに対するものである。位相振動が1回
程度以下のライナックでは取り出しビームのエネルギー
幅は大きくなるが中心エネルギーは変わって取り出され
る。
【0030】次に、RFQライナックの場合に付いて説
明する。RFQライナックでは一般に連続ビームを入射
し、加速しながらバンチしてゆき(φS は最初は−90
度で徐々に最終値に近づける)、φS が最終値に達した
後でφS 一定で加速する。このφS 一定の領域を加速部
とよぶ。この方式により、より多くの粒子を加速できる
ことになる。この時の様子を図40に示す。同図は横軸
を高周波の位相、縦軸をエネルギーで表したものである
(Ein:入射エネルギー、Eex:出射エネルギー)。同
図の左側に通常加速の場合を示すが、連続ビームが加速
されながらバンチされてゆく様子が分かる。また、位相
振動のためにバンチビームはあるエネルギー幅を持つこ
とになる。
【0031】加速電圧が設計値から変化するとφS が変
わることは先に述べたが、加速電圧が高くなるとφS
−90度方向に変化し、低くなると0度方向に変化す
る。すなわち、加速電圧が低くなりすぎると一部の領
域、例えば加速部でセパラトリクスは消滅する。図40
の右側に加速電圧を20%下げた場合のセパラトリクス
の消滅の様子を示す。従って、加速部での位相振動が約
1回以下となるように設計すればエネルギー幅が広がる
ため、必要とするエネルギーで出てきた粒子だけを使用
すればよい。この場合、加速部に達するまでにも多くの
粒子がセパラトリクスからはみだすため、出射ビームの
エネルギーは非常に広がり、単位エネルギー幅当たりの
粒子数は極めて少なくなる。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】従来のRFQライナッ
クは以上のように構成されているので、取り出すビーム
の速度、つまりエネルギーを大幅に変えることは困難な
ものであり、また、ビーム電流が非常に少ないなどの問
題点があり、原子核実験用の高エネルギー加速器の初段
部等、エネルギー可変である必要のないところに用いる
場合には特に問題はないが、同じ荷電粒子に対してエネ
ルギーを大幅に変えられることが要求される例えばイオ
ン注入器等には、このようなRFQライナックを単独で
用いることができないという問題点があった。
【0033】この発明は上記のような問題点を解消する
ためになされたもので、加速空洞の電力効率を下げず、
さらに単位エネルギー幅当たりのビーム電流を極端に悪
くすることもなく、エネルギーを任意に変えることがで
きるRFQライナックを得ることを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】この発明に係る高周波四
重極ライナックは、加速空洞内に設置された電極の間に
発生する高周波四重極電界によって荷電粒子を収束およ
び加速する高周波四重極ライナックにおいて、上記電極
をその全体を所定の電極間電圧の下で設計するととも
に、前記1つの加速空洞をそのビーム軸方向に上流側加
速空洞と下流側加速空洞に高周波的に2分割し、前記下
流側加速空洞に対して前記上流側加速空洞と同じレベル
あるいはそれよりも低いレベルの高周波電力を印加する
ことができる高周波システムを設けたものである。
【0035】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記上流側加速空洞と下流側加速空洞の分割比を等
しくしたものである。
【0036】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記電極が前記下流側加速空洞の同期位相を一定に
するものである。
【0037】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記上流側加速空洞と下流側加速空洞に高周波電力
を供給する高周波システムを、その一方は自励振とし、
他方はその周波数で運転する他励振としたものである。
【0038】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記加速空洞内の電極をビーム軸方向に切り離し、
その間にビーム通過窓が開けられた導電体による仕切板
を、前記加速空洞断面を覆うように設置することによっ
て、前記加速空洞のビーム軸方向への高周波的な2分割
を行うものである。
【0039】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、高周波四重極電界によって荷電粒子を収束および加
速する電極が内部に設置される加速空洞を、そのビーム
軸方向に上流側加速空洞と下流側加速空洞に高周波的に
2分割し、前記下流側加速空洞の高周波電力レベルを前
記上流側加速空洞の高周波電力レベルに比べて低くした
ことを特徴とするエネルギー可変型高周波四重極ライナ
ックにおいて、上流側加速空洞と下流側加速空洞に高周
波電力を供給する高周波システムを、その一方は自励振
とし、他方はその周波数で運転する他励振としたもので
ある。
【0040】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、高周波四重極電界によって荷電粒子を収束および加
速する電極が内部に設置される加速空洞を、そのビーム
軸方向に上流側加速空洞と下流側加速空洞に高周波的に
2分割し、前記下流側加速空洞の高周波電力レベルを前
記上流側加速空洞の高周波電力レベルに比べて低くした
ことを特徴とするエネルギー可変型高周波四重極ライナ
ックにおいて、前記加速空洞内の電極をビーム軸方向に
切り離し、その間にビーム通過窓が開けられた導電体に
よる仕切板を、前記加速空洞断面を覆うように設置する
ことによって、前記加速空洞のビーム軸方向への高周波
的な2分割を行うものである。
【0041】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記仕切板に高周波が通過できない程度の穴を施し
たものである。
【0042】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、真空排気ダクトから前記上流側加速空洞と下流側加
速空洞に分岐して接続される真空分岐ダクトを設けたも
のである。
【0043】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記電極の電極切り離し間隔をセル長の偶数倍にし
たものである。
【0044】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記上流側加速空洞と下流側加速空洞の高周波位相
を相対的に変える位相調整手段を持つものである。
【0045】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記仕切板のビーム通過窓の穴径と前記電極切り離
し位置の前後のセルにおける最小径を一致させるもので
ある。
【0046】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記電極の電極切り離し位置を波打ちのトップまた
はボトムにするものである。
【0047】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記仕切板のビーム通過窓の周辺に、その厚みを薄
くした薄板領域を形成したものである。
【0048】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、前記仕切板と電極の間隔を、隣接する電極が最接近
する間隔より大きく又は一致させるものである。
【0049】この発明に係る高周波四重極ライナック
は、4ヴェイン型RFQライナックの場合、前記仕切板
と電極の間隔を、隣接する電極が最接近する間隔の半分
より大きく又は一致させるものである。
【0050】
【作用】この発明における電極がその全体を所定の電極
間電圧の下で設計されている高周波四重極ライナックに
おいて、その1つの加速空洞をそのビーム軸方向に上流
側加速空洞と下流側加速空洞に高周波的に2分割すると
ともに、前記下流側加速空洞に対して前記上流側加速空
洞と同じレベルあるいはそれよりも低いレベルの高周波
電力を印加することができる高周波システムを設けたの
で、高周波的に2分割された下流側加速空洞の高周波電
力レベルを上流側加速空洞のそれよりも低くすることに
より、上流側加速空洞では正常に加速され、下流側加速
空洞でのみ位相振動の条件を外すことを可能とし、エネ
ルギーの広がりを小さくしてエネルギーの異なるビーム
を取り出すことができるRFQライナックを実現する。
【0051】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、上流側加速空洞と下流側加速空洞の分割
比を等しくしたことにより、2つの加速空洞の高周波電
力損失をほぼ等しくできる。
【0052】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、電極によって下流側加速空洞の同期位相
を一定にするようにしたことにより、下流側加速空洞の
全てのセルでセパラトリクスが消滅する高周波レベルを
ほぼ等しくできる。
【0053】この発明における2分割された加速空洞
は、その一方を自励振、他方をその周波数で運転する他
励振とすることにより、温度変化等によって共振周波数
が変わっても、他励振されている側の加速空洞はそれに
追随して信号発生器の周波数が変わるため、加速空洞の
共振周波数を信号発生器の出力周波数に保とうとする周
波数チューナシステムは片方の加速空洞にだけ設ければ
よくなる。
【0054】この発明における仕切板は、加速空洞内の
電極をビーム軸方向に切り離し、その間にビーム通過窓
が開けられた導電体により形成し加速空洞断面を覆うよ
うに設置されているので、電力損失を最小限にした加速
空洞の高周波的な分割を実現する。
【0055】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、仕切板に高周波が通過できない程度の穴
を施したことにより、真空的には1つの空洞と見なせる
ようになるため排気ユニットを1セットに削減でき、ま
た、仕切板では高周波電流が中心部から外側又はその反
対に流れようとするため電流方向に穴を開けたことにな
り電気抵抗が低減される。
【0056】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、真空排気ダクトから上流側加速空洞と下
流側加速空洞に分岐して接続される真空分岐ダクトを設
けたことにより、仕切板に真空排気用の穴を設けること
なく、仕切板での電力損失が抑えられる。
【0057】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、電極の電極切り離し間隔をセル長の偶数
倍にしたことにより、上流側電極を出たときの位相でビ
ームを下流側電極に入射させることができるため、2つ
の加速空洞の相対的高周波位相の調整が不要となる。
【0058】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、位相調整手段を設けて、上流側および下
流側加速空洞の高周波位相差を相対的に変えられるよう
にしたことにより、電極切り離し間隔を任意に選ぶこと
ができるため、電極切り離し位置でのビーム損失を最小
限にすることができる。
【0059】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、仕切板のビーム通過窓の穴径と電極切り
離し位置の前後のセルにおける最小径を一致させるよう
にしたことにより、最小のビーム損失で加速空洞の高周
波的な独立度が高められる。
【0060】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、電極の電極切り離し位置を波打ちのトッ
プまたはボトムにしたことにより、電極切り離し位置で
の漏れ電界を最小にできるためビームに与える影響を最
小にできる。
【0061】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、仕切板の厚みをビーム通過窓の周辺で薄
くしたことにより、仕切板の機械的強度を損なうことな
く電極切り離し間隔を最少にすることができる。
【0062】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、仕切板と電極の間隔を、隣接する電極が
最接近する間隔より大きく又は一致させたことにより、
放電限界的な問題のない、ビーム損失の少ない装置が得
られる。
【0063】この発明におけるエネルギー可変型RFQ
ライナックは、4ヴェイン型RFQライナックの場合、
仕切板と電極の間隔を、隣接する電極が最接近する間隔
の半分より大きく又は一致させたことにより、放電限界
的な問題のない、ビーム損失の少ない装置が得られる。
【0064】そして、これらの効果は、高周波四重極電
界によって荷電粒子を収束および加速する電極が内部に
設置される加速空洞を、そのビーム軸方向に上流側加速
空洞と下流側加速空洞に高周波的に2分割するととも
に、前記下流側加速空洞の高周波電力レベルを前記上流
側加速空洞の高周波電力レベルに比べて低くしたエネル
ギー可変型高周波四重極ライナックにおいても同様に得
られる。
【0065】
【実施例】実施例1. 以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1
は請求項1及び請求項3に記載の発明の一実施例による
エネルギー可変型RFQライナックを示す構成図であ
る。図において、31は円筒形の上流側加速空洞、32
はこの上流側加速空洞31に接続された円筒形の下流側
加速空洞であり、33はこれら両加速空洞31,32を
接続するフランジである。34は加速空洞31,32の
共振周波数にほぼ等しい運転周波数の高周波信号を発生
する信号発生器(高周波システム)であり、35は信号
発生器34からの高周波信号を増幅して各加速空洞3
1,32のループカプラ10に供給する高周波アンプ
(高周波システム)である。36は加速空洞31,32
の製作誤差による共振周波数のずれを補正し、また完成
後は温度による加速空洞31,32の構造変化等に伴う
共振周波数の変化を補正する周波数チューナ(高周波シ
ステム)、37は加速空洞31,32内の高周波レベル
をモニタループで(高周波システム)あり、38はモニ
タループ37と信号発生器34からの信号の位相差を一
定に保つように周波数チューナ36を制御するチューナ
制御装置(高周波システム)である。なお、このエネル
ギー可変型RFQライナックの加速空洞31,32の内
部には、従来例であげた例えば図26に示す波打ち電極
2が設置されている。
【0066】次に動作について説明する。加速空洞3
1,32の内部はそれぞれ、例えば従来例で示した図2
5のような構造をしており、その波打ち電極2内を荷電
ビームは通過する。ここで、加速空洞31,32の断面
形状は円形に限定されるものではなく、例えば四角であ
ってもよい。上流側加速空洞31と下流側加速空洞32
は高周波的には独立しており、各々の空洞に接続された
高周波アンプ35によってそれぞれ独立に各加速空洞3
1,32内の高周波レベル(電極電圧レベル)を調整す
ることができる。即ち、外見的には1つの加速空洞のよ
うに見えてはいるが高周波的には2つに分割された空洞
となっている。
【0067】なお、この加速空洞の分割の仕方として
は、図2に示すように完全に独立した2つの加速空洞3
1,32を真空ダクト39を介してつなぎ合わせる方法
も考えられる。しかしながら、一般にRFQライナック
は低エネルギー(低速度)領域で使用し、荷電ビームに
強い収束力を与えるため、荷電ビームは加速空洞を離れ
るとすぐに広がってしまう。そのため図2に示す方法を
用いた場合、真空ダクト部39に収束用磁石を設ける必
要が生じる。さらに、バンチも広がるために下流側加速
空洞32である程度再バンチしなければならず、電極設
計が複雑になるだけでなく効率の悪い装置となってしま
う。
【0068】図1に示す接続部は、この図2に示した真
空ダクト部39を除いて上流側加速空洞31と下流側加
速空洞32とを直接接続したものと考えてもよいし、一
体空洞内部を上流側加速空洞31と下流側加速空洞32
に高周波的に分離したものと考えてもよく、その方法は
限定しない。
【0069】ここで、この実施例1では高周波システム
は一般的なものを用いており、高周波信号を発生する信
号発生器34からの信号を2台の高周波アンプ35で増
幅して上流側加速空洞31と下流側加速空洞32にそれ
ぞれ入力するものである。なお、従来例で示した高周波
電源15はこの信号発生器34と高周波アンプ35を一
体にしたものである。高周波アンプ35と加速空洞3
1,32との電気的結合には一般にループカプラー10
を用いる。
【0070】また、周波数チューナ36は例えば金属ブ
ロックを加速空洞31,32の内部に出し入れするもの
で、従来例で挙げたサイドチューナ11と原理的には同
じであり、その数は1台に限るものではない。これは、
加速空洞31,32の製作誤差等により生じる共振周波
数の誤差を補正するとともに、運転時に温度変化等によ
り生じる共振周波数変動を補正するためのものである。
製作誤差による共振周波数誤差は、製作後に一度補正す
るだけでよいため周波数チューナ36は固定式のもので
よい。しかし、運転時の温度変化等による変動は随時補
正しなければならないため可動式でなければならない。
ここでの補正方法は、信号発生器34の出力高周波と加
速空洞31,32内の高周波の位相差を常時測定し、位
相差がある一定の値を保持するように周波数チューナ3
6を出し入れするものである。つまり、加速空洞31,
32の共振周波数が変わると上記位相差が変化する原理
を利用したものである。位相差の検出と周波数チューナ
36の制御はチューナ制御装置38で行う。
【0071】次に、この加速空洞を用いたビームシミュ
レーション結果の一例について説明する。まず、電極設
計は最大の出射エネルギーに対して通常の設計を行う。
ここで、図3はビーム軸に沿った電極パラメータとビー
ムエネルギーの変化を示す説明図であり、波打ち電極2
を例にして計算した場合の、ビーム軸に沿った電極パラ
メータの一例とその時のビームエネルギーを示してい
る。なお、加速粒子はリン(P、質量数31)の一荷で
あり、運転周波数は25MHz とした。ここでmは電極
の波打ちの度合いを表す量であり、波打ちのない場合は
m=1で、この場合ビーム軸方向の電界成分(加速成
分)は存在しない。波の深さが大きくなるほどmの値は
大きくなり加速成分も大きくなる。
【0072】またφS は同期位相であり、直流ビームを
効果的に捕獲できるように−90度から始まり、バンチ
させた後は一定値に保つ。なおバンチングの過程でのこ
の同期位相φS の変化のさせ方は、どのような性能を必
要とするかによって異なるもので、この発明とは直接関
係がないためここでは触れない。ただし、この実施例で
は同期位相φS =−25度に一旦バンチさせた後にφS
=−15度とし、その後は一定にするという特殊なやり
方をしている。これは計算に同期位相φS の変化方法に
ある制約条件を設けて計算するプログラムを使ってお
り、バンチ後の同期位相φS を−15度として計算する
と正常解がないという結果になるため、その値を−25
度で計算したものである。ここで、同期位相φS の値が
小さいほどセパラトリクスが小さくなって、設計製作誤
差等に対してビーム損失を招き易くなるため、一般には
最終値は−30度から−25度程度に選ばれる。しかし
ながら、小さいほど加速効率をあげられることと、わず
かの電極電圧減でセパラトリクスを消滅できるため、−
15度という値はこの実施例によるエネルギー可変型R
FQライナックでは有効である。
【0073】なお、電極電圧(電極間電圧)はビーム軸
に沿って一定としている。ただし、加速電圧は図3に示
す波打ち電極2の波打ちの度合いを示す値mが1ではゼ
ロであり、この値が大きいほど大きくなるため、ビーム
軸に沿って変化している。これはバンチを効果的に行う
ためである。
【0074】図4は図3に示した計算例において、単一
空洞を電極パラメータで高周波的に分離しないで電極電
圧を全体的に変えた場合の出力ビームのエネルギー分布
を示す説明図であり、図5は本発明の下流側加速空洞3
2の電極電圧だけを変えた場合の出力ビームのエネルギ
ー分布、図6は電極電圧を下げた時にビームエネルギー
がビーム軸に沿ってどのように変わるかを分かりやすく
示したものである。
【0075】電極パラメータで高周波的に分離しないで
電極電圧を全体的に変えた場合、すなわち従来例で述べ
た単一空洞の高周波レベルを変えた場合の出力ビームの
エネルギー分布は図4に示すようになる。図4の横軸は
出射ビームのエネルギー、縦軸はビーム強度であり、い
くつかの電極電圧に対して行った計算結果が示されてい
る。なお、図中のVn は最大出射エネルギーが得られる
電極電圧(設計値)で規格化した値であり、Vn =1が
その設計値である。計算は100個の粒子に対して行っ
ており、最大出射エネルギー(1.58MeV)の10
%のエネルギー間隔でその間に存在する粒子数をプロッ
トしている。従って、この場合には全粒子数が100で
あるため%と同じ意味を持つ。
【0076】この値Vn の減少に伴つてエネルギーは下
がるが、エネルギー幅が広がることがわかる。例えばこ
の荷電ビームをイオン注入に用いると、注入イオンの深
さに大きな広がりを持つため、この中からある許容でき
るエネルギー幅のイオンだけを使用することになり、必
然的に使用できるイオン数は少なくなる。また、わずか
な電極電圧の変化でビームのエネルギー分布が大きく変
わるため、高周波システムの制御が難しくなる。図4に
は電極電圧を上げた場合の結果についても示している
が、中心エネルギーは殆ど変わらないことが分かる。
【0077】これに対して、図3に破線で示す位置で電
極を2分割し、下流側加速空洞32の電極電圧だけを変
えた場合、その出力ビームのエネルギー分布は図5に示
すようになる。この場合、Vn の値によってはエネルギ
ー幅は多少広がるが、全てが鋭いピークを持つため、任
意のエネルギー幅に対するビーム強度を大幅に下げずに
エネルギーを下げられることがわかる。ここでは上流側
電極はVn =1として計算した。この時のビーム軸に沿
ったエネルギー変化をわかりやすく示すと図6のように
なる。
【0078】この実施例1では下流側電極でφS を一定
にしているため、セパラトリクスが消滅する電極電圧は
下流側電極の全てのセルでほぼ等しくなり、容易に効果
的な電極パラメータの決定ができる。
【0079】実施例2. なお、上記実施例1では図3に示したように、下流側加
速空洞32(下流側電極)は上流側加速空洞31(上流
側電極)に比べて短くなっているものについて説明した
が、両者の長さをほぼ等しくするように設計してもよ
い。そのようにすると、両加速空洞31,32での電力
損失をほぼ等しくすることができるため、高周波アンプ
35としては同一仕様のものを2台用意すればよく、コ
ストを下げられる利点がある。具体的には、例えば図3
に示したパラメータを延長して上流側電極と下流側電極
の長さがほぼ等しくなるようにすればよい。その場合、
当然出射エネルギーは上がるが、その長さが位相振動の
約一周期分以下であれば同等の効果が得られる。ただ
し、この場合には電極パラメータの設定に制約を受ける
欠点を持つことになる。例えば出射エネルギーを任意に
選べないなどの制約であり、出射エネルギーを固定する
とビーム軸に沿ったパラメータの最適化が容易でなくな
る。因に、この実施例2は請求項2に記載の発明に対応
している。
【0080】実施例3. また、上記実施例1では下流側加速空洞32における同
期位相φS を一定としたものを示したが、例えばφS
−25度になった時点でセパラトリクスに対して荷電ビ
ームの存在領域がある程度小さくなっていれば、そこか
ら後を下流側加速空洞32とし、下流側加速空洞32で
は徐々にφS を最終値に変える方式でも同様の効果が得
られる。セパラトリクスとビーム存在領域がほぼ等しい
バンチングの過程でVn を変えると、従来例と同様にエ
ネルギー幅が大きくなる。
【0081】実施例4. また、上記実施例1では分割同軸型RFQライナックを
用いたが、従来例で示した4ロッド電極型、角型電極
型、ダブルH型等の他のタイプのRFQライナックであ
ってもよく、上記実施例と同様の効果が得られる。
【0082】実施例5. 次にこの発明の実施例5を図について説明する。図7は
請求項4に記載の発明の一実施例によるエネルギー可変
型RFQライナックを示す構成図であり、加速空洞に関
しては実施例1と同一構成となっている。実施例1との
違いは、加速空洞31,32の一方、この場合には上流
側加速空洞31の高周波システムを自励振とした点にあ
る。図7において、50は上流側加速空洞31内のモニ
タループ37で検出した高周波の位相を変えて信号発生
器34にフィードバックして閉ループを形成することに
より、上流側加速空洞31の共振周波数で自発的に発振
させる位相調整器(高周波システム)である。なお、他
の部分は実施例1で同一符号を付したものと同一であ
り、その説明は省略する。
【0083】次に動作について説明する。加速空洞3
1,32は一般に温度変化により構造が変形し共振周波
数が変化する。空洞共振器型の加速空洞31,32はQ
値が高いため、入力する高周波電力の周波数と共振周波
数がほぼ一致していないと入力インピーダンスが大きく
変わり高周波を入力できなくなる。このため、実施例1
で示したように、一般に共振周波数の変動を補正する周
波数チューナ36が付けられ、共振周波数を一定に保つ
ようにする。この場合、信号発生器34からの信号の周
波数は固定されており、このようなシステムを他励振と
よぶ。
【0084】これに対して図7に示すように、上流側加
速空洞31内の高周波をモニタループ37で検出し、そ
の位相を位相調整器50で適当に変えて信号発生器34
にフィードバックすることによって閉ループを形成する
と、上流側加速空洞31の共振周波数で発振し運転でき
る。この場合、信号発生器34は信号発生器としてでは
なく単に前段アンプの役割をになうことになる。これ
は、電子回路工学の発振器において、アンプ出力の位相
を適当に変えて入力側に戻すことにより自発的に発振す
る自励発振器と同じ原理であり、このような高周波シス
テムが自励振である。従って、この自励振においては温
度変化等によって上流側加速空洞31の共振周波数が変
わると運転周波数も変わる。
【0085】一方、下流側加速空洞32の高周波システ
ムは実施例1の場合と同様に他励振として、自励振によ
る上流側加速空洞31の共振周波数で決まる周波数で運
転する。ここで、運転周波数が変わるとビームエネルギ
ーも変わる。しかし、温度変化等によるエネルギー変化
は、加速空洞31,32が一般に冷却されていることも
あり、イオン注入器等の単独使用では無視できるほど小
さく問題はない。
【0086】このような自励振とすることにより、上流
側加速空洞31には共振周波数保持用の周波数チューナ
36、チューナ制御装置38は不要となり、コストを下
げられるだけでなく運転制御も簡単になる。
【0087】ここで、下流側加速空洞32にも同様の高
周波システムを設け自励振にすると周波数チューナ36
は不要になる。しかしこの場合、2つの周波数で運転す
ることになり、2つの加速空洞31,31の位相差が時
間的に変動するためビーム損失が大きくなる。従って、
下流側加速空洞32は上流側加速空洞31で決まる周波
数で運転する他励振としている。
【0088】なお、上流側加速空洞31を他励振とし下
流側加速空洞32を自励振としても同様の効果が得られ
る。また、上記実施例では上流側加速空洞31に周波数
チューナ36が付けられていないが、製作誤差等で共振
周波数が設計値から大きくずれる可能性のある場合は周
波数チューナ36を取り付け、共振周波数の調整を行
う。この場合は、一般に製作直後に一度調整するだけで
すむため、周波数チューナ36は固定式の安価なもので
もよく、可動型とするにしても極めて簡単なものでよ
い。
【0089】実施例6. 次にこの発明の実施例6を図について説明する。図8は
請求項5に記載した発明の一実施例によるエネルギー可
変型RFQライナックの加速空洞31,32を示すビー
ム軸方向の断面図であり、分割同軸型を例にして表した
ものである。図9はそのビーム軸と直角方向の断面図
で、図9(a)はC−C’断面図、(b)はD−D’断
面図、(c)はE−E’断面図である。図において、5
1は導電体にて形成され、加速空洞断面を全体的に覆う
ように配置されて、上流側加速空洞31と下流側加速空
洞32を高周波的に分離する仕切板であり、52は荷電
ビームを通すために仕切板51の中央部に開けられたビ
ーム通過窓である。なお、1〜4は図25に同一符号を
付した従来のそれらと同一であるため、その説明は省略
する。
【0090】次に動作について説明する。分割同軸型加
速空洞の構造的原理については従来例で説明した通りで
ある。従来例との違いは、円筒空洞1の中央部付近に仕
切板51を設けたことであり、波打ち電極2もその点で
切り離している。仕切板51は図9(c)に示すよう
に、円筒空洞1の断面を覆う円盤状の形をしており中心
部にビーム通過窓52が開けられている。また、この仕
切板51は円筒空洞1の側壁に接触しており、その接触
部分に例えば高周波コンタクタなどを使うと、高周波抵
抗をより小さくできて有効である。
【0091】なお、仕切板51と波打ち電極2との接触
に関しては、図8に示す上下の波打ち電極2とは接触し
ており、紙面に垂直方向の波打ち電極2とは切り離され
ている。従って、仕切板51は等価的には図9(b)に
示すステム4と同様の役割を果たす。しかしながら、仕
切板51は円筒空洞1の断面をビーム通過窓52を除い
て分離することができても、電力効率の悪い加速空洞に
なるとか、単位エネルギー幅当たいて全面的に覆ってい
るため、上流側加速空洞31と下流側加速空洞32の磁
気的結合を非常に弱くしており、さらに切り離した波打
ち電極2同士が互いに見えないくらいにビーム通過窓5
2を小さくしているため、切り離した波打ち電極2同士
のキャパシティブな結合も非常に弱くなる。このため、
例えば上流側加速空洞31だけに高周波電力を入力して
も、それが下流側加速空洞32に伝播されることはな
い。従って、上流側加速空洞31と下流側加速空洞32
の高周波レベルを独立に変えられることになる。
【0092】なお、上記実施例では波打ち電極2を用い
たものを示したが、従来例で示した角型電極、4ロッド
電極、4ヴェイン型、ダブルH型等に適用しても同様の
効果が得られる。各々の概略断面を図10から図13に
示す。図10は角型電極型RFQライナックに適用した
場合の断面図であり、図11は4ロッド電極型RFQラ
イナックに、図12は4ヴェイン型RFQライナック
に、図13はダブルH型RFQライナックにそれぞれ適
用した場合の断面図である。なお、図11の4ロッド電
極型RFQライナックでは、仕切板51はステム4とス
テム4の中間に配置する。
【0093】また、上記実施例では仕切板51は加速空
洞をほぼ等分割する位置に設けた場合について説明した
が、必ずしもほぼ等分割にしなくともよい。図14はそ
のような場合の、図8と同様の分割同軸型RFQライナ
ックを示す断面図である。図示の例では、上流側加速空
洞31が下流側加速空洞32より充分大きくなるように
分割されており、仕切板51はその上流側加速空洞31
と下流側加速空洞32との間に配置されている。
【0094】実施例7. なお、上記実施例6では対向している2対の波打ち電極
2を両方ともビーム方向に切り離して、その間に仕切板
51を挿入するものを示したが、仕切板51のビーム通
過窓52を長穴として、2対の波打ち電極2のうちの一
方を切断せずにその長穴によるビーム通過窓52内に挿
通するようにしてもよい。なお、この長穴によるビーム
通過窓52内に挿通された波打ち電極2は仕切板51と
接触するように挿通されている。このようにすれば、波
打ち電極2の一方を加速空洞の分割位置で切り離すこと
なく一体物として製作することが可能となり、波打ち電
極2をより強固に固定することができる。
【0095】実施例8. また、上記実施例6では仕切板51の中央部にビーム通
過窓52のみを開けたものについて説明したが、高周波
が通過できない程度の穴を多数開けると、上流側加速空
洞31と下流側加速空洞32は真空的には一体となり、
どちらか一方から真空排気を行うだけでよくなりコスト
を低減できる。図15はそのような仕切板51の一例を
示す正面図であり、図中、53は仕切板51に放射線状
に開けられた高周波が通過できない程度の長穴である。
また、図16は上記実施例6の場合の真空排気系の概略
図であり、図において、54は真空排気ユニット、55
は真空排気ユニット54を上流側加速空洞31あるいは
下流側加速空洞32に接続している真空排気ダクトであ
る。因に、この実施例8は請求項6に記載の発明に対応
している。
【0096】実施例6に示した仕切板51は、中央部に
ビーム通過窓52しか開いていないため、真空排気は図
16に示すように上流側加速空洞31および下流側加速
空洞32でそれぞれ個別に行わなければならない。しか
し、図15に示すように、仕切板51に高周波が通過で
きない程度の長穴53を多数開けると、上流側加速空洞
31と下流側加速空洞32は真空的には一体となる。従
って、1つの真空排気ユニット54によって加速空洞3
1,32のどちらか一方から真空排気を行うだけでよく
なるため、1系統分の真空排気ユニット54と真空排気
ダクト55のコストを削減できる。ここで、この仕切板
51に穴を開けることは高周波抵抗を大きくするため、
仕切板51での電力損失が大きくなるが、図15に示す
ように長穴53を放射線状に開けると高周波抵抗は小さ
くなる。なぜならば、高周波電流は電極接触部から円筒
空洞1側壁に向かって流れる(ただし交流であるため電
流の向きは時間的に交番する)ために、電流の向きに長
軸を有する長穴53を開けることによって高周波抵抗を
小さくすることができ、仕切板51での電力損失を軽減
できる。
【0097】実施例9. また、上記実施例8では1つの真空排気ユニット54で
上流側加速空洞31と下流側加速空洞32の真空排気を
行うため、仕切板51に長穴53を開けたものを示した
が、図17に示すように、1つの真空排気ユニット54
から上流側加速空洞31と下流側加速空洞32に分岐し
て接続された真空分岐ダクト56を用いれば、ビーム通
過窓52以外の穴を開けなくても、1系統分の真空排気
ユニット54と真空排気ダクト55を削減することが可
能となる。これによって、仕切板51に開けた穴による
高周波抵抗の増大が防止でき、仕切板51での電力損失
を最小限まで低減できる。なお、この場合、真空分岐ダ
クト56は必然的に長くなるため、径の大きいものを使
用した方が効果的である。因に、この実施例9は請求項
7に記載の発明に対応している。
【0098】実施例10. また、上記各実施例においては波打ち電極2の電極切り
離し間隔を特に規定してはいないが、この電極切り離し
間隔を2セル分に選ぶと、上流側加速空洞31と下流側
加速空洞32の位相差を変える必要がなくなる。図18
は電極切り離し間隔が任意に選ばれた場合の電極切り離
し位置付近のビーム軸方向の断面を、荷電粒子がビーム
軸を進む時の高周波位相の変化とともに示した説明図
で、その断面は波打ち電極2のビーム軸に対して垂直な
互いに直交する二平面(x,y)による断面がいっしょ
に示されている。図19は実施例10による電極切り離
し位置付近のビーム軸方向の断面を、荷電粒子がビーム
軸を進む時の高周波位相の変化とともに示した説明図
で、この場合も波打ち電極2のビーム軸に対して垂直な
互いに直交する二平面(x,y)による断面がいっしょ
に示されている。因に、この実施例10は請求項8に記
載の発明に対応している。
【0099】波打ち電極2は波打ちの半周期、つまりボ
トムとトップの間を荷電粒子が進む時に高周波位相がπ
だけ変わるように設計されており、それを1セルと呼
ぶ。電極の波打ち(モジュレーション)によって生じる
電界のビーム軸成分(z成分)は、隣合うセルでは反対
の向きになっているため、高周波位相がπだけ変わるこ
とによって荷電粒子は全てのセルで加速を受ける条件が
存在する。従って、荷電粒子が上流側電極(上流側加速
空洞31)を出た時の高周波位相は、下流側電極(下流
側加速空洞32)に入った時の高周波位相とほぼ一致し
ていなければならない。
【0100】図18に示した例では電極切り離し間隔を
任意に選んでいるため、何らかの方法によって上流側加
速空洞31と下流側加速空洞32との位相を変えなけれ
ばならない。これに対して、図19に示すように電極切
り離し間隔を2セル分に選ぶと、上流側加速空洞31と
下流側加速空洞32の位相差を変える必要がなくなって
高周波位相調整が不要と成り、高周波システムが簡素化
されてコストが低減でき、さらにビーム調整も容易とな
る。なお、この電極切り離し間隔は2セルでなくても1
セルの偶数倍であれば同じ効果が得られる。
【0101】実施例11. 次にこの発明の実施例11を図について説明する。図2
0は請求項9に記載の発明の一実施例によるエネルギー
可変型RFQライナックを示す構成図である。この実施
例11は信号発生器34からの高周波信号が下流側加速
空洞32の高周波アンプ35には位相調整手段を介して
供給されている点で実施例1とは異なっている。図中の
57がこの位相調整手段として用いられている、図7に
符号50を付したものと同等の位相調整器である。な
お、波打ち電極2の電極切り離し位置付近の構造は図1
8と同様である。
【0102】前記実施例10においては、波打ち電極2
の1セルの長さが長くなれば電極切り離し間隔も必然的
に長くなる。RFQライナックでは一般に強い収束力で
荷電ビームを収束させているため、電極を離れるとビー
ム径は急速に大きくなる。従って、この電極切り離し間
隔が長いほど下流側電極あるいは仕切板51に衝突して
失われる荷電ビームが多くなる。特に、荷電ビームが通
過できるアパーチャがビーム径にほぼ等しくなるような
領域に波打ち電極2の電極切り離し位置があると、この
損失は大きなものとなる。
【0103】これを避けるためには、仕切板51と波打
ち電極2の間の距離はその相互間で放電が起きない最短
の距離であることが望ましい。しかしながら、他方で実
施例9で説明したように荷電粒子が上流側電極を出ると
きの高周波位相は下流側電極に入るときの位相にほぼ一
致していなければならない。そのため、図20に示すよ
うに、信号発生器34と下流側加速空洞32の高周波ア
ンプ35との間に位相を大きくずらすことのできる位相
調整器57を設け、上流側加速空洞31と下流側加速空
洞32の高周波位相を相対的に変えている。なお、この
位相調整器57は信号発生器34と高周波アンプ35の
間の電気長を変えられるものであり、変化幅は最大2π
でよい。これにより、波打ち電極2の電極切り離し間隔
は任意に選ぶことが可能となる。
【0104】実施例12. また、上記各実施例においては、仕切板51のビーム通
過窓52の穴径と電極切り離し位置前後のセルの最小径
との関係について特に言及してはいないが、それらをほ
ぼ一致させると、最小のビーム損失で加速空洞31,3
2の高周波的な独立度を高めることができる。
【0105】ここで、仕切板51のビーム通過窓52
は、大きすぎると上流側加速空洞31と下流側加速空洞
32との高周波結合が大きくなり、各々を独立に制御で
きなくなる。また、それを小さくしすぎると仕切板51
に荷電ビームが衝突して失われてしまうという問題が生
じる。波打ち電極2あるいは4ロッド電極8の場合、ビ
ーム軸から電極トップまでの距離を半径とするビームア
パーチャ(1セルを通して最小ビームアパーチャとな
る)よりもビーム径が大きくなると、ビームは電極に当
たり出す。従って、電極切り離し位置の前後のセルにお
ける最小ビームアパーチャと仕切板51のビーム通過窓
52の径をほぼ等しくすることにより、ビーム通過窓5
2を最も効果的なものとすることができる。因に、この
実施例12は請求項10に記載の発明に対応している。
【0106】実施例13. また、上記各実施例では波打ち電極2の電極の切り離し
位置を特に限定してはいなかったが、図18に示すよう
に、波打ちのトップあるいはボトムで波打ち電極2を切
り離すと、切り離し空間に漏れ出す電界を最小にするこ
とができ、ビームに与える影響を小さくすることができ
る。なぜなら、この点では電界はビーム軸に垂直な成分
しか発生せず、この点で切り離すと漏れ電界は最小とな
る。因に、この実施例13は請求項11に記載の発明に
対応している。
【0107】実施例14. 次にこの発明の実施例14を図について説明する。図2
1は請求項12に記載の発明の一実施例によるエネルギ
ー可変型RFQライナックを示す断面図で、同図(a)
は電極切り離し点付近の断面をビーム軸方向の波打ち電
極2のビーム軸に対して垂直な互いに直交する二平面
(x,y)についていっしょに示したものであり、同図
(b)はビーム軸と直交する平面の断面を示したもので
ある。図において、60は仕切板51のビーム通過窓5
1が開けられている中央部の電極近傍においてその板厚
を薄くした薄板領域である。また、61は波打ち電極2
および背板3を仕切板51に固定するためのL金具で、
例えばネジで固定する。なお、その他の部分はすでに説
明ずみであるため、その説明は省略する。
【0108】電極切り離し間隔はできるだけ短い方が望
ましいことは実施例11で説明した通りであるが、この
電極切り離し間隔をより短くできる方法について示した
のが図21に示したこの実施例13である。加速空洞3
1,32の内径は運転周波数によって異なるが、一般に
50cm程度の大きさになる。従って仕切板も同程度の
大きさになるため、薄すぎると取付精度が悪くなるとか
運転中の熱変形が起こりやすくなるなどの問題が生じ
る。また、一般に加速空洞31,32およびステム4、
波打ち電極2は冷却しており、仕切板51も冷却する場
合が多い。この場合、冷却構造を考慮すると仕切板51
は厚い方が製作が容易となる。
【0109】そこで、図21に示すように、仕切板51
の波打ち電極2と対抗する中心部付近(図21(b)に
ハッチングを施した部分)のみを薄くして薄板領域60
を形成すれば、強度的にも問題がなく、かつ電極切り離
し間隔を短くすることが可能となる。なお、薄板領域6
0のビーム通過窓52に面した部分が丸くなっているの
は放電対策のためである。また、波打ち電極2に仕切板
51が接触する部分(x方向)で仕切板51の厚みを変
えている理由は、漏れ電界をより少なくするためであ
る。
【0110】実施例15. また、実施例7で説明した、仕切板51のビーム通過窓
52を長穴として、波打ち電極2のうちの一方の対をそ
の長穴内に挿通する場合には、図22に示すように、切
り離された波打ち電極2と対抗する中心部付近(図22
(b)にハッチングを施した部分)のみを薄くして薄板
領域60を形成する。この構造ではビーム通過窓52と
して長穴が開けられており、波打ち電極2をその長穴に
挿通するようにしたため、仕切板51に接触する電極2
は切り離すことなく一体物で製作することが可能とな
る。そのため、波打ち電極2の固定をより強固にでき
る。
【0111】実施例16. また、上記実施例14,15では薄板領域60を仕切板
51と一体物で製作したものについて述べたが、図23
に示すように薄板領域を仕切板51の本体とは別個に作
成し、それらを組み付けるようにしてもよく、上記実施
例14と同様の効果が得られる。図23において、62
は仕切板51の中央部の電極近傍に大きく開けられた仕
切板開口部であり、63は仕切板51より薄い導電性板
材より成り、中心部にビーム通過窓52が開けられた仕
切板薄板(薄板領域)である。この仕切板薄板63を仕
切板51の仕切板開口部62にネジ止めなどで取りつけ
ることによって薄板領域を実現する。
【0112】実施例17. また、上記各実施例においては、仕切板と電極の間隔
と、隣接する電極が最接近する間隔との関係について特
に言及してはいないが、前者を後者とほぼ等しいか若干
大きくすると、分割同軸型RFQライナックにおいて、
放電限界的な問題のない、ビーム損失の少ない装置を実
現することができる。
【0113】ここで、RFQライナックで加速効率をよ
り高く、さらに同一運転周波数でより重いイオンを加速
するためには、電界強度をできるだけ高くしなければな
らない。従って、そのようなRFQライナックでは電極
の放電限界が重要なパラメータとなる。
【0114】図24はその電極先端付近を拡大して示し
た断面図である。電極断面形状はセル中心(波打ち形状
のトップとボトムの中間)では4回対称であり、その曲
率半径は一般にビーム軸から電極先端までの距離に等し
くされる。この場合、隣合う電極の距離はg=0.82
8r0 となり、1セルを通して最も接近する。従って電
極表面電界強度も最大となり、平行平板的に考えた場
合、電極間電圧をV0 とすると電極表面電界強度はE=
1.207V0 /r0 となる。図24に示す断面形状一
定の2次元数値計算によると、最大電界強度はE=1.
36V0 /r0 となる。また、波打ちを考慮した3次元
形状で計算すると、セルのパラメータにより異なるが多
少それよりも大きな値となる。
【0115】一方、分割同軸型RFQライナックでは一
対の電極は仕切板に接続される。従って、他の一対の電
極と仕切板の電位差はV0 である。この間隔は短いほど
よいが、短すぎるとここで放電限界が決まってしまうた
め、放電しないぎりぎりの間隔が望ましい。電極と仕切
板との対向面は、電極の角の加工にもよるがほぼ平行平
板的に考えられる。従って、この間隔は上述したように
隣合う電極が最接近する間隔にほぼ等しいかそれよりも
少し大きくした値に選べば、多少余裕のある間隔になる
ため効果的である。因に、この実施例17は請求項13
に記載の発明に対応している。
【0116】実施例18. なお、上記実施例17では分割同軸型RFQライナック
の場合について説明したが、4ヴェイン型RFQライナ
ックの場合には、仕切板と電極との間隔を隣接する電極
が最接近する間隔の半分にほぼ等しいか若干大きくして
おけばよい。すなわち、4ヴェイン型RFQライナック
では、4電極(ヴェインの先端部)はそれぞれ仕切板か
ら離されており、仕切板はアース電位であり、4電極は
それに対して+V0 /2および−V0 /2の電位差とな
っている。従って、仕切板と電極との間隙は実施例17
に示した分割同軸型RFQライナックとは異なり、隣合
う電極が最接近する間隔のほぼ半分かそれよりも少し大
きくした値に選べば、多少余裕のある間隔になるため効
果的である。これによって、4ヴェイン型RFQライナ
ックにおいても、放電限界的な問題のない、ビーム損失
の少ない装置が実現できる。因に、この実施例18は請
求項14に記載の発明に対応している。
【0117】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、電極
全体が所定の電極間電圧の下で設計された1つの加速空
洞をビーム軸方向に高周波的に2分割して、下流側加速
空洞の高周波レベルを相対的に下げるように構成したの
で、電力効率を下げることなく様々なエネルギーのビー
ムを効果的に取り出すことができる効果がある。
【0118】この発明によれば、上流側加速空洞と下流
側加速空洞の分割比が等しくなるように構成したので、
2つの加速空洞の高周波電力損失がほぼ等しくなり、2
台の高周波アンプを同一仕様で製作できる効果がある。
【0119】この発明によれば、電極によって下流側加
速空洞の同期位相が一定になるように構成したので、下
流側加速空洞の全てのセルでセパラトリクスが消滅する
高周波レベルがほぼ等しくなり、その結果、取り出しビ
ームのエネルギーの広がりを小さくできるため容易に効
果的な電極パラメータを決定できる効果がある。
【0120】この発明によれば、高周波システムを2分
割した加速空洞の一方は自励振とし、他方をその周波数
で運転する他励振とするように構成したので、高周波シ
ステムの簡素化が可能となり、コストの低減、さらには
装置の信頼性の向上をはかることができる効果がある。
【0121】この発明によれば、電極をビーム軸方向に
切り離しその間に導電体の仕切板を設置するように構成
したので、加速空洞の高周波的な分割をより確実に行う
ことができる効果がある。
【0122】この発明によれば、仕切板に高周波が通過
できない程度の穴を施すように構成したので、真空的に
は1つの空洞と見なせるようになるため排気ユニットを
1セットに削減できるとともに、仕切板での電力損失を
低減できる効果がある。
【0123】この発明によれば、真空排気ダクトから上
流側加速空洞と下流側加速空洞に分岐して接続される真
空分岐ダクトを設けるように構成したので、仕切板に真
空排気用の穴を設けることなく、仕切板での電力損失を
低減できる効果がある。
【0124】この発明によれば、電極の電極切り離し間
隔をセル長の偶数倍になるように構成したので、2つの
加速空洞の相対的高周波位相の調整が不要になるととも
に、ビーム調整が容易になる効果がある。
【0125】この発明によれば、上流側と下流側の加速
空洞の高周波位相を相対的に変えるための位相調整手段
を設けるように構成したので、電極切り離し間隔を任意
に選択することが可能となり、電極切り離し点前後のセ
ル長が長くても切り離し間隔を短くすることができ、そ
の位置でのビーム損失を少なくできる効果がある。
【0126】この発明によれば、仕切板のビーム通過窓
の穴径と電極切り離し位置の前後のセルにおける最小径
を一致させるように構成したので、最小のビーム損失で
加速空洞の高周波的な独立度が高められる効果がある。
【0127】この発明によれば、電極の電極切り離し位
置を波打ちのトップまたはボトムにするように構成した
ので、電極切り離し位置での漏れ電界を最小にできるた
めビームに与える影響を最小にできる効果がある。
【0128】この発明によれば、仕切板の厚みをその中
央部の電極近傍で薄くするように構成したので、電極切
り離し間隔を短くでき、その位置でのビーム損失を最少
にすることができる効果がある。
【0129】この発明によれば、仕切板と電極の間隔
を、隣接する電極が最接近する間隔より大きく又は一致
させるように構成したので、放電限界的な問題のない、
ビーム損失の少ない装置が得られる効果がある。
【0130】この発明によれば、4ヴェイン型RFQラ
イナックの場合、仕切板と電極の間隔を、隣接する電極
が最接近する間隔の半分より大きく又は一致させるよう
に構成したので、放電限界的な問題のない、ビーム損失
の少ない装置が得られる効果がある。
【0131】そして、これらの効果は、高周波四重極電
界によって荷電粒子を収束および加速する電極が内部に
設置される加速空洞を、そのビーム軸方向に上流側加速
空洞と下流側加速空洞に高周波的に2分割するととも
に、前記下流側加速空洞の高周波電力レベルを前記上流
側加速空洞の高周波電力レベルに比べて低くしたエネル
ギー可変型高周波四重極ライナックにおいても同様に得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1によるエネルギー可変型R
FQライナックを示す構成図である。
【図2】この発明の不適当な適用例による加速空洞を示
す構成図である。
【図3】この発明の実施例1における、波打ち電極を例
に計算したビーム軸に沿った電極パラメータの一例とそ
の時のエネルギーを示す説明図である。
【図4】図3に示した計算例において、電極を分割しな
いで電極電圧を全体的に変えた場合の出力ビームのエネ
ルギー分布を示す説明図である。
【図5】図3に示した計算例において、電極を分割して
下流側加速空洞の電極電圧だけを変えた場合の出力ビー
ムのエネルギー分布を示す説明図である。
【図6】図5に示した下流側加速空洞の電極電圧だけを
変えた時の、ビームエネルギーのビーム軸に沿った変化
を示す説明図である。
【図7】この発明の実施例5によるエネルギー可変型R
FQライナックを示す構成図である。
【図8】この発明の実施例6によるエネルギー可変型分
割同軸型RFQライナックを示すビーム軸方向の断面図
である。
【図9】図8のC−C’、D−D’およびE−E’にお
ける断面図である。
【図10】この発明の実施例6によるエネルギー可変型
角型電極型RFQライナックを示す断面図である。
【図11】この発明の実施例6によるエネルギー可変型
4ロッド電極型RFQライナックを示す断面図である。
【図12】この発明の実施例6によるエネルギー可変型
4ヴェイン型RFQライナックを示す断面図である。
【図13】この発明の実施例6によるエネルギー可変型
ダブルH型RFQライナックを示す断面図である。
【図14】この発明の実施例6によるエネルギー可変型
分割同軸型RFQライナックの他の構成例を示す断面図
である。
【図15】この発明の実施例8によるエネルギー可変型
RFQライナックにて用いられる仕切板を示す正面図で
ある。
【図16】この発明の実施例8における加速空洞内の排
気を説明するための真空排気系を示す概略構成図であ
る。
【図17】この発明の実施例9による真空排気系を示す
概略構成図である。
【図18】この発明の実施例6における電極切り離し位
置付近をビーム軸方向の高周波位相の変化とともに示す
説明図である。
【図19】この発明の実施例10による電極切り離し位
置付近をビーム軸方向の高周波位相の変化とともに示す
説明図である。
【図20】この発明の実施例11によるエネルギー可変
型RFQライナックを示す構成図である。
【図21】この発明の実施例14における電極切り離し
位置付近を示す断面図である。
【図22】この発明の実施例15における電極切り離し
位置付近を示す断面図である。
【図23】この発明の実施例16における電極切り離し
位置付近を示す断面図である。
【図24】この発明の実施例17における波打ち電極の
先端付近を示す断面図である。
【図25】従来の分割同軸型RFQライナックを示す一
部切欠斜視図である。
【図26】その波打ち電極を示す斜視図である。
【図27】従来の分割同軸型RFQライナックの概略断
面を電流および磁界のパスとともに示した説明図であ
る。
【図28】図27のA−A’およびB−B’における断
面図である。
【図29】従来のリエントラント型加速空洞を示す断面
図である。
【図30】図29の内胴体を変形したリエントラント型
加速空洞を示す断面図である。
【図31】分割同軸型空洞の原理を示す4電極空洞の断
面図である。
【図32】従来の角型電極型RFQライナックの電極部
を示す斜視図である。
【図33】従来の4ロッド電極型RFQライナックの電
極部を示す斜視図である。
【図34】図33のロッド電極の詳細を示す斜視図であ
る。
【図35】従来の4ヴェイン型RFQライナックを示す
断面図である。
【図36】従来の4ヴェイン型RFQライナックを示す
一部切欠正面図である。
【図37】従来のダブルH型RFQライナックを示す断
面図である。
【図38】従来の周波数可変によるエネルギー可変型R
FQライナックを示す概略図である。
【図39】図38に示すエネルギー可変型RFQライナ
ックの等価回路図である。
【図40】従来のRFQライナックにて荷電ビームがバ
ンチされながら加速される様子を示す説明図である。
【符号の説明】
2 波打ち電極(電極) 7 角型電極(電極) 8 ロッド電極(電極) 9 ヴェイン(電極) 10 ループカプラ(高周波システム) 31 上流側加速空洞 32 下流側加速空洞 34 信号発生器(高周波システム) 35 高周波アンプ(高周波システム) 36 周波数チューナ(高周波システム) 37 モニタループ(高周波システム) 38 チューナ制御装置(高周波システム) 50 位相調整器(高周波システム) 51 仕切板 52 ビーム通過窓 57 位相調整器(位相調整手段) 60 薄板領域 63 仕切板薄板(薄板領域)

Claims (16)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加速空洞内に設置された電極の間に発生
    する高周波四重極電界によって荷電粒子を収束および加
    速する高周波四重極ライナックにおいて、上記電極をその全体を所定の電極間電圧の下で設計する
    とともに、 前記1つの加速空洞をそのビーム軸方向に上
    流側加速空洞と下流側加速空洞に高周波的に2分割し、前記下流側加速空洞に対して前記上流側加速空洞と同じ
    レベルあるいはそれよりも低いレベルの高周波電力を印
    加することができる高周波システムを設けた ことを特徴
    とするエネルギー可変型高周波四重極ライナック。
  2. 【請求項2】 前記上流側加速空洞と下流側加速空洞の
    分割比を等しくしたことを特徴とする請求項1に記載の
    エネルギー可変型高周波四重極ライナック。
  3. 【請求項3】 前記電極が前記下流側加速空洞の同期位
    相を一定にすることを特徴とする請求項1に記載のエネ
    ルギー可変型高周波四重極ライナック。
  4. 【請求項4】 前記上流側加速空洞と下流側加速空洞に
    高周波電力を供給する高周波システムを、その一方は自
    励振とし、他方はその周波数で運転する他励振としたこ
    とを特徴とする請求項1に記載のエネルギー可変型高周
    波四重極ライナック。
  5. 【請求項5】 前記加速空洞内の電極をビーム軸方向に
    切り離し、その間にビーム通過窓が開けられた導電体に
    よる仕切板を、前記加速空洞断面を覆うように設置する
    ことによって、前記加速空洞のビーム軸方向への高周波
    的な2分割を行うことを特徴とする請求項1に記載のエ
    ネルギー可変型高周波四重極ライナック。
  6. 【請求項6】 高周波四重極電界によって荷電粒子を収
    束および加速する電極が内部に設置される加速空洞を、
    そのビーム軸方向に上流側加速空洞と下流側加速空洞に
    高周波的に2分割し、前記下流側加速空洞の高周波電力
    レベルを前記上流側加速空洞の高周波電力レベルに比べ
    て低くしたことを特徴とするエネルギー可変型高周波四
    重極ライナックにおいて、 上流側加速空洞と下流側加速空洞に高周波電力を供給す
    る高周波システムを、その一方は自励振とし、他方はそ
    の周波数で運転する他励振としたことを特徴とするエネ
    ルギー可変型高周波四重極ライナック。
  7. 【請求項7】 高周波四重極電界によって荷電粒子を収
    束および加速する電極が内部に設置される加速空洞を、
    そのビーム軸方向に上流側加速空洞と下流側加速空洞に
    高周波的に2分割し、前記下流側加速空洞の高周波電力
    レベルを前記上流側加速空洞の高周波電力レベルに比べ
    て低くしたことを特徴とするエネルギー可変型高周波四
    重極ライナックにおいて、 前記加速空洞内の電極をビーム軸方向に切り離し、その
    間にビーム通過窓が開けられた導電体による仕切板を、
    前記加速空洞断面を覆うように設置することによって、
    前記加速空洞のビーム軸方向への高周波的な2分割を行
    うことを特徴とするエネルギー可変型高周波四重極ライ
    ナック。
  8. 【請求項8】 前記仕切板に高周波が通過できない程度
    の穴を施したことを特徴とする請求項5から請求項7の
    うちのいずれか一項記載のエネルギー可変型高周波四重
    極ライナック。
  9. 【請求項9】 真空排気ダクトから前記上流側加速空洞
    と下流側加速空洞に分岐して接続される真空分岐ダクト
    を設けたことを特徴とする請求項5から請求項7のうち
    のいずれか一項記載のエネルギー可変型高周波四重極ラ
    イナック。
  10. 【請求項10】 前記電極の電極切り離し間隔をセル長
    の偶数倍にしたことを特徴とする請求項5から請求項7
    のうちのいずれか一項記載のエネルギー可変型高周波四
    重極ライナック。
  11. 【請求項11】 前記上流側加速空洞と下流側加速空洞
    の高周波位相を相対的に変える位相調整手段を持つこと
    を特徴とする請求項5から請求項7のうちのいずれか一
    記載のエネルギー可変型高周波四重極ライナック。
  12. 【請求項12】 前記仕切板のビーム通過窓の穴径と前
    記電極切り離し位置の前後のセルにおける最小径を一致
    させることを特徴とする請求項5から請求項7のうちの
    いずれか一項記載のエネルギー可変型高周波四重極ライ
    ナック。
  13. 【請求項13】 前記電極の電極切り離し位置を波打ち
    のトップまたはボトムにすることを特徴とする請求項5
    から請求項7のうちのいずれか一項記載のエネルギー可
    変型高周波四重極ライナック。
  14. 【請求項14】 前記仕切板のビーム通過窓の周辺に、
    その厚みを薄くした薄板領域を形成したことを特徴とす
    請求項5から請求項7のうちのいずれか一項記載のエ
    ネルギー可変型高周波四重極ライナック。
  15. 【請求項15】 前記仕切板と電極の間隔を、隣接する
    電極が最接近する間隔より大きく又は一致させることを
    特徴とする請求項5から請求項7のうちのいずれか一項
    記載のエネルギー可変型高周波四重極ライナック。
  16. 【請求項16】 4ヴェイン型RFQライナックの場
    合、前記仕切板と電極の間隔を、隣接する電極が最接近
    する間隔の半分より大きく又は一致させることを特徴と
    する請求項5から請求項7のうちのいずれか一項記載の
    エネルギー可変型高周波四重極ライナック。
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