JP3086992B2 - 強誘電性液晶素子 - Google Patents

強誘電性液晶素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強誘電性液晶(以下F
LCと記す)のスイッチング特性を利用して画像などを
表示する表示装置等を構成する液晶素子に関する発明で
ある。
【0002】
【従来の技術】FLCを用いた表示素子に関しては特開
昭61−94023号公報などに示されているように1
〜3μm程度のセルギャップを保って2枚の内面に透明
電極を形成し配向処理を施したガラス基板を向かい合わ
せて構成した液晶セルに、FLCを注入したものが知ら
れている。
【0003】FLC素子の特徴はFLCが自発分極を持
つことにより、外部電界と自発分極の結合力をスイッチ
ングに使えることと、FLC分子の長軸方向が自発分極
の分極方向と1対1に対応しているため外部電界の極性
によってスイッチングできることである。
【0004】FLCは一般にカイラルスメクティック液
晶(SmC* ,SmH* )を用いるので、バルク状態で
は液晶分子長軸がねじれた配向を示すが上述の1〜3μ
m程度のセルギャップのセルに入れることによって液晶
分子長軸のねじれを解消することができる(P213−
P234 N.A.LLARK et al,MCLC
1983,Vol.94)。
【0005】実際のFLCセルの構成は図6に示すよう
に単純マトリクス基板を用いていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のセル構成を用い
た場合には、液晶セルの耐久性に次のような問題点があ
った。
【0007】FLC分子はマトリクス駆動時の非選択信
号によってもある程度動くことが知られている。これは
非選択信号を印加した画素の光学応答を取ると、印加パ
ルスと同期して光量に変動を生じていることなどからも
明らかである。いわゆる、スプレイ配向(上下基板間で
分子長軸の角度に大きくねじれのある配向)ではこのよ
うな分子のゆらぎは、それによって分子の安定位置が変
化(スイッチング)することがなければ表示内容を保持
できるので若干のコントラストの低下以外には問題とは
ならなかった。ところが、上下基板間での分子長軸方向
の角度の変化の比較的少ない配向(以下ユニホーム配
向)のセルにおいては、液晶分子が電圧(例えば非選択
信号)の印加によって層内を移動するという現象が見ら
れる。この現象を図4を用いて詳しく説明する。
【0008】図4(a)は電圧印加前のセル状態、
(b)は電圧印加後のセル状態である。FLC46はシ
ール部材45内に封入されている。配向層としてはポリ
イミド薄膜を用いてラビング方向は(a)、(b)共に
下から上に向かって上下基板共平行に行なっている。こ
のような処理を行なうと、図4(c)に示すようにスメ
クティック層はラビング方向と直交した方向に生成され
る。
【0009】セル厚をらせんピッチを解除できる位に十
分に薄くした場合においてFLC分子は2つの安定状態
を取り得るが、その内の1つの状態にセル内の全分子の
方向を揃えておく。
【0010】この状態を+θの状態(図4(d))とす
ると、層法線に対してほぼ対称に−θの位置に他の安定
状態が存在する。
【0011】この状態(+θ)下でセル全面に電界(例
えば、10Hz、±8Vの矩形波)を印加すると液晶分
子は+θの層法線に対する傾きを保ったまま図4(a)
中の点Aから点Bの方向へ層内を移動し始める。
【0012】その結果電圧印加を長時間続けると図4
(b)に示すようにA端には液晶のない部分Eを生じセ
ル厚はB部の方がA部より厚くなる。このような現象
は、液晶分子が−θの状態にある場合にはB端からA端
へ向って層内を液晶が移動してE部のような液晶のない
空隙部がB端に生じる。
【0013】また、このような現象は20時間〜50時
間という比較的短い時間に生じる。E部のような電気光
学的にコントロールのできない部分の存在が表示品質上
望ましくないのはもちろんのこと、A部とB部のセル厚
が時間によって変化するのでは液晶パネル全体の駆動制
御が難しくFLCを用いた光学素子としては大きな問題
となっていた。
【0014】このような問題点に対し特開平4−247
429号公報などに示されているように、隣り合う領域
においてラビングの方向が交互に逆方向になるような複
数の領域を設定する手段が知られているが、いずれも十
分に解決されてはいない。
【0015】本発明は上記課題に鑑みなされたものであ
って、液晶駆動時のセル内での液晶分子の移動を抑え表
示品質を向上させたFLC素子の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
本発明によれば、液晶セルを構成する際に、一対の基板
のうち少なくとも一方の基板が互いに異なる方向にラビ
ング処理された複数の領域に分割され、各領域の液晶層
の法線の基板投影方向が平行で且つ隣接する領域同士で
プレティルト角αの立ち上がり方向が互いに異なり、該
プレティルト角αがα>Θ−δ(Θはコーン角、δは液
晶層の傾き角)及びα>δを満足するように設定してな
るFLC素子である。本発明のFLC素子において好ま
しくは、各領域のラビング処理の方向が、液晶層の法線
の基板投影方向から一定角度ずれている、より好ましく
は、各領域において、上下基板でラビング方向が交差
し、液晶層の法線の基板投影方向とラビング方向とのな
す角度が±15°以内である、或いは、各領域のラビン
グ処理の方向が、液晶層の法線の基板投影方向と同一方
向である、より好ましくは、各領域において、上下基板
でラビング方向が平行である、及び、各領域のラビング
方向が、隣接する領域毎に逆転している。
【0017】
【作用】前述の分子の移動は基板面に対する液晶分子長
軸のなす角度(プレティルト角)に深く依存している。
上下基板のラビング方向は、ある角度交叉していてもス
メクティック層法線は2つのラビング方向の中間に生成
する。従って液晶移動の方向はスメクティック層内でプ
レティルト角が基板に対してどちらの向きに発生してい
る(立ち上がっている)かで決定される。
【0018】再び図4を例にとって説明すると(a)の
ようにラビングをした場合には、上下基板界面共に液晶
分子のプレティルトは、ラビング方向に対して浮き上が
るように生じる(図5(a))。このような場合に+θ
の位置に液晶分子を置いて電界を印加した場合に液晶が
A点の方角からB点の方角に向って流れるとは概に述べ
たが、プレティルト角が逆方向に生じていた場合(図5
(b))には、液晶分子は逆方向(B点からA点への方
角)に流れる。図5は、ガラス基板50上に配向膜51
を設け、ラビングを施した場合の液晶分子52のプレテ
ィルト53の方向を説明する図である。
【0019】また本発明者らはプレティルトの発生の方
向が隣り合う領域において逆方向となるように設定した
場合、その境界においてディフェクト(defect)
が発生すること、そしてそれは液晶のシェブロン構造が
影響しており、層の傾き角δの値が大きくなると、より
強いディフェクトが生じることを見い出した。また、こ
のディフェクトは液晶分子の流れに対し抵抗となり液晶
の移動量を抑えることができることがわかった。このこ
とから、ディフェクトの数についてはプレティルトの立
ち上り方向により区別される領域の数を設定すること
で、またディフェクトの強さについてはδの大きさを設
定すること、つまりプレティルトの大きさを設定するこ
とで液晶の移動量をコントロールすることができること
がわかる。
【0020】プレティルトの立ち上り方向が逆であって
も液晶分子長軸の基板面への投影角は等しいので表示内
容には影響がなくむしろ視野特性を平均化させて向上さ
せることができる。
【0021】
【実施例】
(実施例1)図1に本発明の実施例のセル構成を示す。
図1(a)及び(b)は対向して配置される電極基板1
1,12のラビング方向の処理を示したもので、基板を
5つの領域に分け、領域毎に方向が逆転するようにラビ
ング処理を施してある。また上下基板を重ね合わせた時
に対応する領域でラビング方向が上下で同一方向に交叉
するように構成してある。
【0022】交叉ラビングにおいては図2に示すように
層の法線方向に対して左に傾くもの(+クロス)と右に
傾くもの(−クロス)とがある。また従来のように上下
対応する領域で平行となる場合(図3)もある。
【0023】具体的な選択的ラビング処理の手法として
は、ラビング時にガラス基板側に厚さ100μmのステ
ンレス板で構成されたハード・マスクをかぶせる方法で
行なうことができる。このステンレス板には選択的に穴
が開けられているため、穴の開いた部分のみがラビング
処理される。また他の方法としては、全面ラビング処理
した基板上にレジスト層を形成しUV露光によって選択
的に窓を開け配向膜表面に対し逆方向にラビングを行な
う。その後全てのレジストを取り除く。
【0024】本実施例では基板11,12は、一辺が7
5mmのガラス基板上にITO膜を約1000Å形成
し、その上にTa25 膜を約500Åスパッタ形成し
た電極基板であり、配向膜としては、フッ素系ポリイミ
ド配向膜を約300Å塗布、焼成して形成したものであ
る。使用したFLCは次に示す特性を有するものであ
る。
【0025】Temp 30℃ この時のプレテ
ィルト角α=20° Ps 5.8nC/cm2 Θティルト角 14.3° δ 10.7°
【0026】
【数1】
【0027】図1(c)は、交互に逆方向にラビング処
理したガラス基板(a),(b)をセル状態に重ね合わ
せたものを示す。この時ラビング処理の異なる領域の境
界(例えば図1(c)のA)において層の法線の基板投
影方向に沿って幅約1〜3μmでディフェクトがセルの
端から端まで生じた。
【0028】図1(c)に示したセルはセル厚が約1.
1μmにコントロールされていて同様のセルに全面均一
に上下基板共に同一方向にラビング処理を行なったもの
との液晶移動の差異を次のように調べた。
【0029】セル内に図4に示すような層方向に離れた
2点A,Bを取り±15V,10Hzの矩形波を25時
間室温で印加し、その前後のセル厚の差を測定して、合
わせて図4(b)のE部の存在の有無を調べた。
【0030】
【表1】
【0031】表1によってわかるように従来例ではA点
からB点へ液晶が移動しかつE部のような空隙部が発生
しているのに対し、本実施例においては、ほとんど液晶
の流れは発生せず、またE部のような空隙部も発生して
いなかった。
【0032】(実施例2)プレティルト角の値をα=1
3°とした以外は実施例1と同様にしてセルを作成し評
価を行なった。結果は上下基板同一方向にラビングした
ものよりは良かった。但し、実施例1に比べディフェク
トの大きさがやや小さくなっていたが、液晶の流れは生
じていなかった。E部のような空隙部は発生していなか
った。
【0033】(実施例3)ラビング方向と層の法線の基
板投影方向とのなす角度を0°(図3)とする以外は実
施例1と同様にしてセルを作成し評価を行なった。
【0034】結果は実施例1と同様に液晶の流れはほと
んど生じず、またE部のような空隙部も発生していなか
った。但し図7に示すような駆動波形を用いて駆動を行
なったところ全面書ける駆動範囲が実施例1に比べてや
や狭くなっていた。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように液晶セル内での基板
面と液晶分子とのなす角度の方向(プレティルト角の方
向)とその大きさを制御することによって液晶分子の流
れによる耐久不良の問題を解決し、表示品質の向上が図
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるラビング方向を示す図
である。
【図2】ラビング方向の交叉方向の説明図である。
【図3】本発明の実施例3の説明図である。
【図4】従来技術の説明図である。
【図5】FLCのプレティルトの説明図である。
【図6】液晶素子の断面図である。
【図7】本発明の実施例で用いた駆動電圧の波形図であ
る。
【符号の説明】
45 シール部材 46 FLC 50 ガラス基板 51 配向膜 52 液晶分子 53 プレティルト角 61a,61b ガラス基板 62a,62b ITOストライプ状電極 63a,63b 絶縁膜 64a,64b 配向制御膜 65 シーリング部材 66 液晶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−101516(JP,A) 特開 平4−240820(JP,A) 特開 平3−252624(JP,A) 特開 平4−247429(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1337 G02F 1/141 G02F 1/113 101

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 それぞれに透明電極とラビング処理した
    配向膜を有する1対の基板間に強誘電性液晶を狭持して
    なる液晶素子であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板が互いに異
    なる方向にラビング処理された複数の領域に分割され、
    各領域の液晶層の法線の基板投影方向が平行で且つ隣接
    する領域同士でプレティルト角αの立ち上がり方向が互
    いに異なり、該 プレティルト角αがα>Θ−δ(Θはコ
    ーン角、δは液晶層の傾き角)及びα>δを満足するこ
    とを特徴とする強誘電性液晶素子。
  2. 【請求項2】 各領域のラビング処理の方向が、液晶層
    の法線の基板投影方向から一定角度ずれている請求項1
    記載の強誘電性液晶素子。
  3. 【請求項3】 各領域において、上下基板でラビング方
    向が交差し、液晶層の法線の基板投影方向とラビング方
    向とのなす角度が±15°以内である請求項1または2
    記載の強誘電性液晶素子。
  4. 【請求項4】 各領域のラビング処理の方向が、液晶層
    の法線の基板投影方向と同一方向である請求項1記載の
    強誘電性液晶素子。
  5. 【請求項5】 各領域において、上下基板でラビング方
    向が平行である請求項4記載の強誘電性液晶素子。
  6. 【請求項6】 各領域のラビング方向が、隣接する領域
    毎に逆転している請求項1〜5のいずれかに記載の強誘
    電性液晶素子。
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US6133974A (en) 1996-08-16 2000-10-17 Nec Corporation Liquid crystal display with two areas of liquid crystal with orthogonal initial orientations
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