JP3086400U - 加熱調理容器の吸着脱臭材及び加熱調理容器 - Google Patents

加熱調理容器の吸着脱臭材及び加熱調理容器

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JP3086400U JP2001007838U JP2001007838U JP3086400U JP 3086400 U JP3086400 U JP 3086400U JP 2001007838 U JP2001007838 U JP 2001007838U JP 2001007838 U JP2001007838 U JP 2001007838U JP 3086400 U JP3086400 U JP 3086400U
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圭一 高尾
登起雄 甲斐
祐一 吉岡
光一 黒石
亜弓 幾井
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東洋電化工業株式会社
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 魚や肉等の食品の加熱調理にあたって、容器
への油や臭いの付着を防止して容器の洗浄の手間を省く
ことができると共に、加熱調理の際の食品の焼き上がり
に大きく寄与することができる加熱調理容器の吸着脱臭
材を提供する。 【解決手段】 粘土で構成されると共に炭化物を含まな
い表面層3と、粘土と炭化物にて構成される内層2とを
具備する。この吸着脱臭材1を、容器本体の底部に敷き
詰めるなどして配置することにより、加熱調理容器を構
成する。加熱調理容器の上方に焼き網を配置すると共に
この焼き網に食品を配置して、加熱調理を行うと、油は
加熱調理容器の吸着脱臭材に吸収され、臭い成分も加熱
調理容器の吸着脱臭材に吸収されると共に内層の炭化物
に吸着され、容器が油の汚染と臭の付着を防止できる。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、魚や肉等を加熱調理する際に用いられる加熱調理容器の吸着脱臭材 及びこの吸着脱臭材を備えた加熱調理容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、魚や肉等を加熱調理する際には、グリル等の加熱調理器具内に焼き網等 を配置すると共に、この焼き網の下方に水を満たした容器(トレー)を配置し、 これにより魚や肉等の加熱調理の際に出る油を容器で受けると共に、容器が汚れ ることを水にて防止していた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、このように容器内に水を満たしても容器に対する油の付着を充 分に防止することは困難であって、容器の洗浄には手間がかかり、また調理時に 付着した魚や肉等の臭いを取ることも困難であった。また容器内に配置した水は 、魚や肉等の調理自体に対して寄与するところが少なく、むしろ加熱調理器具内 の湿度が高くなることから、魚などはパリッと焼き上げることは難しいものであ った。
【0004】 本考案は上記の点に鑑みてなされたものであり、魚や肉等の食品の加熱調理に あたって、容器への油や臭いの付着を防止して容器の洗浄の手間を省くことがで きると共に、加熱調理の際の食品の焼き上がりに大きく寄与することができる加 熱調理容器の吸着脱臭材、及びこの加熱調理容器の吸着脱臭材を備える加熱調理 容器を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案の請求項1に係る吸着脱臭材1は、粘土で構成されると共に炭化物を含 まない表面層3と、粘土と炭化物にて構成される内層2とを具備して成ることを 特徴とするものである。
【0006】 また請求項2の考案は、均一な組成を有する粘土からなる母相によって吸着脱 臭材1を構成し、母相の内奥部に炭化物を含有させて内層2を形成すると共に内 層2の外側に炭化物を含まない表面層3を形成して成ることを特徴とするもので ある。
【0007】 また請求項3の考案は、内層2と表面層3との境界領域において炭化物の含有 量が内層2側から表面層3側にいくに従って連続的に減少するように形成して成 ることを特徴とするものである。
【0008】 また請求項4の考案は、内層2と表面層3を構成する粘土が焼結体であること を特徴とするものである。
【0009】 また本考案の請求項5に係る加熱調理容器4は、請求項1乃至4のいずれかに 記載の吸着脱臭材1を容器本体5の底面に配置して成ることを特徴とするもので ある。
【0010】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を説明する。
【0011】 本考案に係る吸着脱臭材1は、粘土で構成されると共に炭化物を含まない表面 層3と、粘土と炭化物にて構成される内層2とから成るものである。
【0012】 粘土としては、粘土鉱物から構成される種々の組成のものを用いることができ 、天然粘土を用いることができるほか、人工粘土を用いることもできる。ここで 、特にこのような粘土の焼結体で表面層3あるいは内層2を構成するようにする と、吸着脱臭材1の強度を向上することができる。
【0013】 また、炭化物とは、木炭、活性炭等の炭素に富んだ材料を指すものである。
【0014】 内層2は上記の粘土中に炭化物が分散した構成となるように形成することがで きる。内層2における粘土や炭化物の割合は適宜設定されるものであるが、好ま しくは炭化物を1〜80質量%、粘土を20〜99質量%含むようにするもので ある。ここで、炭化物の割合が1質量%に満たないと、炭化物の吸着性や吸湿性 等の効果が充分に発揮されなくなるおそれがあり、またこの割合が80質量%を 超えると成形が困難となるおそれがある。またこの内層2に含まれる炭化物は、 その形状としては粉末状、粒状、あるいはチップ状等のものを用いることができ 、その寸法は粒径又は一辺が10μm〜30mmの範囲のものが好ましい。ここ で内層2は必ずしも粘土と炭化物のみにて構成する必要はなく、セメントや他の セラミックス、あるいはその他の添加物を含有させることもできる。
【0015】 一方、表面層3は内層2の表面側の全面を覆うように形成することが好ましい 。この表面層3の厚みは特に制限はされないが、30μm〜10mmの範囲とす ることが好ましい。またこの表面層3は複数の通孔を有する多孔質状に形成する と、吸着脱臭材1の外部と内層2とを表面層3に形成された通孔にて連通するこ とができ、吸着脱臭材1の優れた吸着性や吸湿性を維持することができる。ここ で表面層3は必ずしも粘土のみで構成する必要はなく、セメントや他のセラミッ クス、あるいはその他の添加物を含有させることもできる。
【0016】 上記の吸着脱臭材1では、表面層3を構成する粘土と内層2を構成する粘土と して、異なる組成を有するものを用いることもできるが、好ましくは表面層3と 内層2とを同一の組成を有する粘土で構成する。すなわち、吸着脱臭材1全体を 均一な組成を有する粘土からなる母相にて構成し、この母相の内奥部のみに炭化 物を含有させて内層2を形成すると共に、内層2の外側には炭化物を含有させず に、表面層3として形成するものである。このようにすると、内層2と表面層3 とは一体に形成されることとなって、内層2と表面層3との界面の強度が向上し 、内層2から表面層3が剥離しにくくなって、二層に分離した吸着脱臭材1の強 度を向上することができるものである。
【0017】 また、内層2と表面層3との境界領域においては、炭化物が含有量が不連続に 変化するような明確な界面が形成されるようにすることもできるが、好ましくは 、内層2と表面層3との境界領域において、炭化物の含有量が内層2側から表面 層3側にいくに従って連続的に減少するように形成するものである。このように すると、内層2と表面層3との間には明確な界面が存在しなくなり、内層2と表 面層3との一体性が向上して、内層2から表面層3が剥離しにくくなり、二層に 分離した吸着脱臭材1の強度を向上することができるものである。
【0018】 上記の吸着脱臭材1を得るにあたっては、その製造のための工程は特に制限さ れず、適宜の方法を適用することができる。例えば粘土と炭化物にて構成される 成形体を成形した後、その外層に粘土から構成される層をコーティングすること もできる。
【0019】 また、粘土と炭化物の混合物を所望の形状に成形して、全体に亘って粘土と炭 化物とが分散した成形体を作製し、この成形体の表層部分から炭化物を除去する ことにより、炭化物が除去された部分を表面層3として形成すると共に、その内 奥の炭化物が除去されていない部分にて内層2を形成して、吸着脱臭材1を得る こともできる。このようにすると、吸着脱臭材1は表面層3が形成される部分と 内層2が形成される部分とが完全に一体となった成形体から作製されることとな り、内層2から表面層3が更に剥離しにくくなって、二層に分離した吸着脱臭材 1の強度を向上することができるものである。また、表面層3における炭化物が 除去された部分には細孔が形成されることとなり、表面層3の多孔質性が向上す ることとなって、特に吸着脱臭材1を吸着材として用いる場合には、吸着すべき 成分が表面層3を通過して炭化物が含有されている内層2に容易に到達すること となり、吸着性能が向上するものである。
【0020】 成形体の表層部分から炭化物を除去する方法は特に限定されず、適宜の手法を 用いることができるが、好ましくは、成形体の表層側において炭化物と酸素とを 反応させて酸化させることにより除去するものである。このような成形体の表面 酸化により炭化物を除去するにあたっては、例えば、成形体を空気雰囲気等のよ うな酸素を含む雰囲気下において加熱することができる。この場合、成形体の表 層部分のみにおいて炭化物が除去されるように、適宜、加熱条件を設定するもの であり、このような加熱条件の制御により、所望の厚みを有する表面層3が形成 された吸着脱臭材1が得られる。
【0021】 また、このような表面酸化により吸着脱臭材1を得ると、内層2と表面層3と の境界領域における炭化物の含有量が、内層2側から表面層3側にいくに従って 連続的に減少するような吸着脱臭材1が容易に得られるものであり、このため、 吸着脱臭材1の強度を更に向上することができるものである。
【0022】 吸着脱臭材1の表面層3あるいは内層2を構成する粘土は、完全な焼結体であ れば、更に強度の高い吸着脱臭材1が得られるが、このような形態に限られるも のではなく、吸着脱臭材1中に焼結体として形成されていない部分があったり、 粘土が全く焼結されていないものでも良い。例えば上記のように成形体の表面酸 化により吸着脱臭材1を得る場合には、成形体の焼結体から表面酸化により表面 層3を形成して吸着脱臭材1を形成したり、あるいは表面酸化のための加熱処理 の際に同時に成形体中の粘土を焼結させたりすることにより、粘土の焼結体から 構成される吸着脱臭材1を得ることができる。
【0023】 このような吸着脱臭材1は、塊状、粒状、板状等のような適宜の形状に形成す ることができ、この吸着脱臭材1が敷き詰められる容器本体5の形状に応じた種 々の形状に形成される。
【0024】 また加熱調理用容器4の容器本体5は、通常の加熱調理に使用されるものを適 用することができ、例えば耐熱性の高い金属や陶磁器等の材料によって、上方が 開口した有底容器として形成し、必要に応じて表面耐食処理等を施したもので構 成することができる。このような容器本体5としては、家庭用のガスレンジに付 属したグリル等のグリル調理器具内に配置される調理用トレーなどを挙げること ができるが、このようなものに限られず、種々の加熱調理器具に対して配置可能 な、適宜の容器を挙げることができる。
【0025】 この吸着脱臭材1は、図2に示すように、加熱調理器具に用いられる容器本体 5の底部に敷き詰めて配置することにより、加熱調理容器4を構成する。図示の 例では粒状に形成された複数の吸着脱臭材1を容器本体5の底面の全面に亘って 敷き詰めている。
【0026】 このような加熱調理容器4を、家庭用のガスレンジに付属したグリル調理器や 、その他の網焼きによる調理が可能な加熱調理器具内に配置し、このこの加熱調 理容器4の上方に焼き網を配置すると共にこの焼き網に魚や肉等の食品を配置し 、加熱調理を行うことができる。
【0027】 このとき、食品から出る油は多孔質の吸着脱臭材1に吸着され、また臭い成分 も吸着脱臭材1に吸着されると共に内層2の炭化物に吸着されて脱臭される。ま た、この吸着脱臭材1は多孔質性で比表面積が高く、かつ粘土の焼結体と炭化物 とから構成されることから、優れた遠赤外線放射性を有し、これにより、魚など を調理する際にはパリッと香ばしく焼き上げることができるものである。
【0028】 また、表面層3が存在することによって炭化物が表面に露出しないこととなり 、人間が手で触れても手が黒く汚れるようなことがなく、かつ炭化物の微粉末が 飛散するようなこともなくなって、取扱性が良好なものである。またこのように 炭化物が露出しないことから、難燃性も向上するものであり、加熱調理の際に使 用しても火災等が発生することがないものである。
【0029】 また、炭化物材料からなるにも係わらず、黒色系の外観を呈さなくなり、表面 層3を構成する粘土に応じて良好な外観を備えさせることができるものである。 また炭化物のみではなく、炭化物と粘土にて構成されるため、所望の形状に容易 に成形することができて成形性が良いものである。
【0030】 また、長期間使用された吸着脱臭材1は、新たな吸着脱臭材1と交換すること ができるが、この使用後の吸着脱臭材1は、別の用途に再利用することができる 。例えばその多孔質性を利用して、植物の培土として再利用すれば、細孔内に微 生物を繁殖させて土壌を植物の育成に適したものに改質することができる。
【0031】 以下に、吸着脱臭材1の、具体的な製造方法を挙げる。
【0032】 まず第一の製造例について説明する。
【0033】 本製造例は炭化物と粘土とを配合した成形用組成物から吸着脱臭材1を得るも のである。また必要に応じてセメントや、粘土鉱物以外の他のセラミックスを配 合することができる。また成形用組成物には水を配合することが好ましく、また 成形性を向上する目的で一般的に用いられるバインダーを配合することもできる 。
【0034】 成形用組成物は上記の各成分を配合し、混練機等を用いて充分に混練すること により調製することができる。このとき、成形用組成物中の水を除く配合成分の 総量に対して、粘土を20〜99質量%、炭化物を1〜80質量%の割合で配合 することが好ましい。またセメントや他のセラミックスを配合する場合は、粘土 、セメント及び他のセラミックスの総量が20〜99質量%となるようにするこ とが好ましいが、この場合も粘土の割合が20〜99質量%の範囲内であること が好ましい。更に水を配合する場合は、成形用組成物の総量に対して水を1〜7 0質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0035】 更に、このように調製された成形用組成物中に、他の無機材料又は有機材料を 混入することもできる。例えば無機材料としてステンレス製のメッシュを混入す ることにより、この無機材料が補強材としての機能を発揮し、吸着脱臭材1の機 械的強度を更に向上することができる。
【0036】 このようにして調製された成形用組成物を、所望の形状に成形した後、得られ た成形体を乾燥し、更に不活性雰囲気下、無酸素雰囲気下又は還元性雰囲気下で 高温加熱を行って焼成する。
【0037】 ここで成形体の乾燥を行うにあたっては、室温で放置するか、あるいは乾燥機 を用いて好ましくは室温以上、250℃以下の範囲で加熱し、このような状態で 適宜の時間、充分に乾燥させるものである。
【0038】 また乾燥後の成形体を不活性雰囲気下で焼成する場合は、加熱炉内を窒素やヘ リウム等の不活性ガスで置換し、この状態で焼成を行うことができる。また無酸 素雰囲気下で焼成を行う場合には、加熱炉内を不活性ガスにて置換する際に酸素 が存在しなくなるまで完全に置換し、この状態で焼成を行うことができる。また 無酸素雰囲気下で焼成を行う場合には、いわゆる蒸し焼き状態で焼成することも でき、この場合は、例えば密閉された加熱炉内で加熱により成形体中の炭化物の 一部を酸化させることにより炉内の酸素を除去し、この状態で焼成をおこなうこ とができる。また、還元性雰囲気下で焼成を行う場合には、加熱炉内に還元剤粉 末を投入すると共に成形体をこの還元剤粉末内に配置して加熱炉内を還元性雰囲 気とし、この状態で焼成を行うことができる。この焼成時には、加熱炉内を70 0〜1100℃の範囲で加熱して行うことができる。この時の加熱時間は成形体 の形状や寸法によって適宜設定されるが、好ましくは成形体全体が均一に温度上 昇した後、30分間〜10時間の範囲で加熱するものである。この加熱工程によ り、成形体中の粘土が焼結して焼結体となる。
【0039】 次いで、焼結後の成形体を、空気雰囲気下等の酸素が存在する雰囲気下で60 0〜1100℃の温度で加熱する(表面酸化)。このとき成形体の表層部分では 炭化物が酸化されて除去され、成形体の表層部分には炭化物を含まない粘土の焼 結体からなる表面層3が形成される。このとき表面層3には炭化物が除去された 部分が微細な通孔として形成され、多孔質状に成形される。また表面層3の内側 には粘土の焼結体と炭化物とから構成される内層2が形成される。ここで、加熱 温度及び加熱時間を適宜設定することにより表面層3の厚みを所望の厚みに制御 することができる。このため加熱時間の範囲は加熱温度や所望の表面層3の厚み によって異なるが、好ましくは成形体全体が均一に温度上昇した後、30秒間〜 5時間の範囲で加熱するものである。
【0040】 以上のような工程を経て成形される吸着脱臭材1は、所望の形状に容易に成形 することができて成形性が良いものであり、また、粘土の焼結体にて構成される ことから機械的強度にも優れるものである。また表面酸化によって形成される表 面層3は炭化物を含まず、かつ粘土の焼結体からなる多孔質状に形成されること から、素焼きの焼き物状の外観と肌触りを備えることとなり、従来の黒色系の炭 化物材料とは異なる優れた外観を有することとなる。
【0041】 また、表面層3を上記のような表面酸化によって形成することにより、表面層 3を簡便な工程にて形成することができ、表面層3と内層2とを別個に成形する 必要がなく、炭化物と粘土とを配合した成形用組成物から成形される成形体に表 面層3と内層2とを形成して吸着脱臭材1を得ることができて、表面層3を簡便 な工程にて形成することができるものである。またこのとき、表面酸化による表 面層3の形成を成形体を焼結させた後に行うことから、表面酸化の度合いを容易 に制御できて、炭化物の除去量を容易に調整することができ、表面層3を所望の 厚みに形成することが容易なものである。
【0042】 また、内層2と表面層3とは成形体に焼成と表面酸化を施すことにより形成さ れるものであるから、吸着脱臭材1は、全体に亘ってほぼ均一な組成を有する粘 土の焼結体からなる母相から構成され、この母相の表層側に炭化物を含まない表 面層3が形成されていると共に、母相の内奥部には母相中に炭化物が含有された 内層2が形成されており、このため内層2と表面層3とは一体に形成されている 。更には、成形体の最外層においては炭化物は完全に除去されて表面層3が形成 されるが、表面層3よりも内側の内層2においても炭化物の一部が酸化されて除 去されているものであり、その除去量は表層側ほど大きくなっている。このため 、内層2と表面層3との間には組成が不連続に変化するような明確な界面が存在 せず、内層2における表面層3との境界領域での炭化物の含有量は、内層2側の 領域から表面層3の領域にいくに従って連続的に減少し、このように炭化物の含 有量が減少することにより炭化物の含有量が0となった部分に表面層3が形成さ れている。
【0043】 このように、内層2と表面層3とは一体に形成されると共に、内層2と表面層 3との間には明確な界面が存在しないことから、内層2から表面層3が剥離する おそれがなく、二層に分離した吸着脱臭材1の強度を向上することができるもの である。
【0044】 次に第二の製造例について説明する。本実施形態は炭化されていない木質材料 と粘土とを配合した成形用組成物から吸着脱臭材1を得るものである。
【0045】 木質材料としては、粉末状、粒状、あるいはチップ状等のものを用いることが でき、例えばオガクズを用いることができる。その寸法は一辺又は粒径が10μ m〜30mmのものを用いることが好ましい。また成形用組成物には必要に応じ てセメントや、粘土鉱物以外の他のセラミックスを配合することができる。また 成形用組成物には水を配合することが好ましく、また成形性を向上する目的で一 般的に用いられるバインダーを配合することもできる。またこのとき成形用組成 物中には、木質材料に加えて、製造例1と同様の炭化物を含有させることもでき る。
【0046】 成形用組成物は上記の各成分を配合し、混練機等を用いて充分に混練すること により調製することができる。このとき、成形用組成物中の水を除く配合成分の 総量に対して、粘土を20〜99質量%、木質材料を1〜80質量%の割合で配 合することが好ましい。またセメントや他のセラミックスを配合する場合は、粘 土、セメント及び他のセラミックスの総量が20〜99質量%となるようにする ことが好ましいが、この場合も粘土の割合が20〜99質量%の範囲内であるこ とが好ましい。更に水を配合する場合は、成形用組成物の総量に対して水を1〜 70質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0047】 更に、このように調製された成形用組成物中に、他の無機材料又は有機材料を 混入することもできる。例えば無機材料としてステンレス製のメッシュを混入す ることにより、この無機材料が補強材としての機能を発揮し、吸着脱臭材1の機 械的強度を更に向上することができる。
【0048】 このようにして調製された成形用組成物を、所望の形状に成形した後、得られ た成形体を乾燥し、更に不活性雰囲気中、無酸素雰囲気中又は還元性雰囲気中で 高温加熱を行って焼成すると共に、木質材料を炭化させる。
【0049】 ここで成形体の乾燥を行うにあたっては、室温で放置するか、あるいは乾燥機 を用いて好ましくは室温以上、250℃以下の範囲で加熱し、このような状態で 適宜の時間、充分に乾燥させるものである。
【0050】 また乾燥後の成形体を不活性雰囲気下で焼成する場合は、加熱炉内を窒素やヘ リウム等の不活性ガスで置換し、この状態で焼成を行うことができる。また無酸 素雰囲気下で焼成を行う場合には、加熱炉内を不活性ガスにて置換する際に酸素 が存在しなくなるまで完全に置換し、この状態で焼成を行うことができる。また 無酸素雰囲気下で焼成を行う場合には、いわゆる蒸し焼き状態で焼成を行うこと もでき、この場合は例えば密閉された加熱炉内で加熱により成形体中の木質材料 の一部を炭化させることにより炉内の酸素を除去し、この状態で焼成をおこなう ことができる。また、還元性雰囲気下で焼成を行う場合には、加熱炉内に還元剤 粉末を投入すると共に成形体をこの還元剤粉末内に配置して加熱炉内を還元性雰 囲気とし、この状態で焼成を行うことができる。この焼成は、加熱炉内を700 〜1100℃の範囲で加熱して行うことができる。この時の加熱時間は成形体の 形状や寸法によって適宜設定されるが、好ましくは成形体全体が均一に温度上昇 した後、30分間〜10時間の範囲で加熱するものである。この加熱工程により 、成形体中の粘土が焼結して焼結体となると共に、木質材料が炭化されて炭化物 となる。このとき、成形用組成物中に予め木質材料と炭化物とが含有されている 場合には、元々含有されている炭化物と、木質材料が炭化することにより生成し た炭化物とが混在することとなる。
【0051】 次いで、焼結後の成形体を、空気雰囲気下等の酸素が存在する雰囲気下で60 0〜1100℃の温度で加熱する(表面酸化)。このとき成形体の表層部分では 炭化物が酸化されて除去され、成形体の表層部分には粘土の焼結体からなる表面 層3が形成される。この表面層3には炭化物が除去された部分が微細な通孔とし て形成され、多孔質状に成形される。また表面層3の内側には粘土の焼結体と炭 化物とから構成される内層2が形成される。ここで、加熱温度及び加熱時間を適 宜設定することにより表面層3の厚みを所望の厚みに制御することができる。こ のため加熱時間の範囲は加熱温度や所望の表面層3の厚みによって異なるが、好 ましくは成形体全体が均一に温度上昇した後、30秒間〜5時間の範囲で加熱す るものである。
【0052】 以上のような工程を経て成形される吸着脱臭材1は、第一製造例の場合と同様 に、所望の形状に容易に成形することができて成形性が良いものであり、また、 粘土の焼結体にて構成されることから機械的強度にも優れるものである。また表 面酸化によって形成される表面層3は炭化物を含まず、かつ粘土の焼結体からな る多孔質状に形成されることから、素焼きの焼き物状の外観と肌触りを備えるこ ととなり、従来の黒色系の炭化物材料とは異なる優れた外観を有することとなる 。更に、表面層3を上記のような表面酸化によって形成することにより、簡便な 工程にて形成すると共に表面酸化の度合いを容易に制御できて表面層3を所望の 厚みに形成することが容易なものであり、しかも内層2と表面層3とは一体に形 成されると共に、内層2と表面層3との間には明確な界面が存在しないことから 、内層2から表面層3が剥離するおそれがなく、二層に分離した吸着脱臭材1の 強度を向上することができるものである。
【0053】 更に、本製造例では、成形体の成形後に木質材料を炭化するものであることか ら、特に成形用組成物中に炭化物を配合しない場合には、木質材料を予め炭化し た後、粘土と混練して再度焼成するよりも工程数を削減することができ、また炭 化物を扱う工程が減ることで粉塵等の飛散がなく、作業環境を向上することがで きる。
【0054】 また炭化物よりも木質材料の方が粘土と混練した場合の成形用組成物の可塑性 が優れ、成形性がより向上するものであり、また焼成後の形状加工が容易となる 。更に、焼成時に木質材料が水分の脱離や有機成分の分解脱離によって炭化物と なる過程において体積収縮が起こり、成形体中の空隙が増加して均質な多孔質状 に成形されるものであり、その結果、表面層3だけでなく内層2も更に多孔質状 に形成されるものである。
【0055】 次に第三の製造例について説明する。
【0056】 本製造例は、第一の製造例の場合と同様に炭化物と粘土とを配合した成形用組 成物から吸着脱臭材1を得るものであり、まず第一の製造例と同様の手法により 成形用組成物からなる成形体を成形する。
【0057】 このようにして得られた成形体を乾燥し、更に酸素含有雰囲気中で高温加熱を 行って焼成する。
【0058】 ここで成形体の乾燥を行うにあたっては、室温で放置するか、あるいは乾燥機 を用いて好ましくは室温以上、250℃以下の範囲で加熱し、このような状態で 適宜の時間、充分に乾燥させるものである。
【0059】 乾燥後の成形体を焼成するにあたっては、空気雰囲気のような酸素含有雰囲気 の加熱炉内に成形体を配置し、この状態で加熱炉内を600〜1100℃の範囲 で加熱して行うことができる。
【0060】 この加熱工程においては、成形体中の粘土が焼結して焼結体となると同時に、 成形体の表層部分では炭化物が酸化されて除去され、成形体の表層部分には炭化 物を含まない粘土の焼結体からなる表面層3が形成される。このとき表面層3に は炭化物が除去された部分が微細な通孔として形成され、多孔質状に成形される 。また表面層3の内側には粘土の焼結体と炭化物とから構成される内層2が形成 される。 ここで、焼成時の加熱時間は、加熱温度、成形体中の炭化物の含有量 、成形体の形状や寸法等によって適宜設定されるものであり、成形体を構成する 粘土が十分に焼結されると共に表層部分の炭化物の除去量が所望のものとなるよ うに調整されるものである。また加熱温度及び加熱時間を適宜設定することによ り表面層3の厚みを所望の厚みに制御することができる。
【0061】 以上のような工程を経て成形される吸着脱臭材1は、第一及び第二製造例の場 合と同様に、所望の形状に容易に成形することができて成形性が良いものであり 、また、粘土の焼結体にて構成されることから機械的強度にも優れるものである 。また表面酸化によって形成される表面層3は炭化物を含まず、かつ粘土の焼結 体からなる多孔質状に形成されることから、素焼きの焼き物状の外観と肌触りを 備えることとなり、従来の黒色系の炭化物材料とは異なる優れた外観を有するこ ととなる。更に、表面層3を上記のような表面酸化によって形成することにより 、表面層3を簡便な工程にて形成することができ、しかも内層2と表面層3とは 一体に形成されると共に、内層2と表面層3との間には明確な界面が存在しない ことから、内層2から表面層3が剥離するおそれがなく、二層に分離した吸着脱 臭材1の強度を向上することができるものである。
【0062】 更に、上記の第三製造例におけるような工程にて吸着脱臭材1を成形すると、 成形体の焼結と成形体の表層側における炭化物の除去とが同時に行われることか ら、製造工程を簡略化することができ、吸着脱臭材1の製造効率を向上すること ができるものである。
【0063】 次に第四の製造例について説明する。
【0064】 本製造例は、第二の製造例の場合と同様に炭化物と木質材料とを配合した成形 用組成物から吸着脱臭材1を得るものであり、このとき木質材料に加えて、炭化 物を配合することもできる。そして、まず第二の製造例と同様の手法により成形 用組成物からなる成形体を成形する。
【0065】 このようにして得られた成形体を乾燥し、更に酸素含有雰囲気中で高温加熱を 行って焼成する。
【0066】 ここで成形体の乾燥を行うにあたっては、室温で放置するか、あるいは乾燥機 を用いて好ましくは室温以上、250℃以下の範囲で加熱し、このような状態で 適宜の時間、充分に乾燥させるものである。
【0067】 乾燥後の成形体を焼成するにあたっては、空気雰囲気のような酸素含有雰囲気 の加熱炉内に成形体を配置し、この状態で加熱炉内を600〜1100℃の範囲 で加熱して行うことができる。
【0068】 この加熱工程においては、成形体中の粘土が焼結して焼結体となると同時に、 成形体中の木質材料が炭化されて炭化物となる。このとき、成形用組成物中に予 め木質材料と炭化物とが含有されている場合には、元々含有されている炭化物と 、木質材料が炭化することにより生成した炭化物とが混在することとなる。更に このとき成形体の表層部分では炭化物が酸化されて除去され、成形体の表層部分 には粘土の焼結体からなる表面層3が形成される。この表面層3には炭化物が除 去された部分が微細な通孔として形成され、多孔質状に成形される。また表面層 3の内側には粘土の焼結体と炭化物とから構成される内層2が形成される。
【0069】 ここで、焼成時の加熱時間は、加熱温度、成形体中の炭化物の含有量、成形体 の形状や寸法等によって適宜設定されるものであり、成形体を構成する粘土が十 分に焼結されると共に表層部分の炭化物の除去量が所望のものとなるように調整 されるものである。また加熱温度及び加熱時間を適宜設定することにより表面層 3の厚みを所望の厚みに制御することができる。
【0070】 以上のような工程を経て成形される吸着脱臭材1は、第一及び第二製造例の場 合と同様に、所望の形状に容易に成形することができて成形性が良いものであり 、また、粘土の焼結体にて構成されることから機械的強度にも優れるものである 。また表面酸化によって形成される表面層3は炭化物を含まず、かつ粘土の焼結 体からなる多孔質状に形成されることから、素焼きの焼き物状の外観と肌触りを 備えることとなり、従来の黒色系の炭化物材料とは異なる優れた外観を有するこ ととなる。更に、表面層3を上記のような表面酸化によって形成することにより 、表面層3を簡便な工程にて形成することができ、しかも内層2と表面層3とは 一体に形成されると共に、内層2と表面層3との間には明確な界面が存在しない ことから、内層2から表面層3が剥離するおそれがなく、二層に分離した吸着脱 臭材1の強度を向上することができるものである。
【0071】 更に、本製造例では、成形体の成形後に木質材料を炭化するものであることか ら、特に成形用組成物中に炭化物を配合しない場合には、木質材料を予め炭化し た後、粘土と混練して再度焼成するよりも工程数を削減することができ、また炭 化物を扱う工程が減ることで粉塵等の飛散がなく、作業環境を向上することがで きる。
【0072】 また炭化物よりも木質材料の方が粘土と混練した場合の成形用組成物の可塑性 が優れ、成形性がより向上するものであり、また焼成後の形状加工が容易となる 。更に、焼成時に木質材料が水分の脱離や有機成分の分解脱離によって炭化物と なる過程において体積収縮が起こり、成形体中の空隙が増加して均質な多孔質状 に成形されるものであり、その結果、表面層3だけでなく内層2も更に多孔質状 に形成されるものである。
【0073】 更に、上記の第四の製造例におけるような工程にて吸着脱臭材1を成形すると 、成形体の焼結と木質材料の炭化及び成形体の表層側における炭化物の除去とが 同時に行われることから、製造工程を簡略化することができ、吸着脱臭材1の製 造効率を向上することができるものである。
【0074】
【実施例】
(実施例1) ベントナイト70質量部、粉炭30質量部、カルボキシメチルセルロース0. 2%水溶液30質量部を配合し、混練することにより、成形用組成物を得た。こ のとき粉炭としては、200メッシュアンダーのもの、すなわち目開き74μm の篩いにより分級したものを用いた。
【0075】 この成形用組成物を球状に成形し、この成形体を室温で12時間放置した後、 110℃で3時間放置することにより乾燥させた。
【0076】 乾燥後の成形体を、炉内で還元剤粉末と共に900℃で3時間加熱することに より焼成し、更に還元剤粉末が存在しない状態で炉内に1L/minの流量で空 気を流通させながら、900℃で3時間加熱することにより表面酸化を行い、吸 着脱臭材1を得た。
【0077】 (実施例2) ベントナイト80質量部、木質材料20質量部、カルボキシメチルセルロース 0.2%水溶液30質量部を配合し、混練することにより、成形用組成物を得た 。このとき木質材料としては、200メッシュアンダーのもの、すなわち目開き 74μmの篩いにより分級したものを用いた。
【0078】 この成形用組成物を球状に成形し、この成形体を室温で12時間放置した後、 110℃で3時間放置することにより乾燥させた。
【0079】 乾燥後の成形体を、炉内で還元剤粉末と共に900℃で3時間加熱することに より焼成し、更に還元剤粉末が存在しない状態で炉内に1L/minの流量で空 気を流通させながら、900℃で3時間加熱することにより表面酸化を行い、吸 着脱臭材1を得た。
【0080】 (実施例3) ベントナイト70質量部、粉炭30質量部、カルボキシメチルセルロース0. 2%水溶液30質量部を配合し、混練することにより、成形用組成物を得た。こ のとき粉炭としては、200メッシュアンダーのもの、すなわち目開き74μm の篩いにより分級したものを用いた。
【0081】 この成形用組成物を球状に成形し、この成形体を室温で12時間放置した後、 110℃で3時間放置することにより乾燥させた。
【0082】 乾燥後の成形体を、炉内で空気雰囲気下で900℃で1時間加熱することによ り焼成し、吸着脱臭材1を得た。
【0083】 (実施例4) ベントナイト80質量部、木質材料20質量部、カルボキシメチルセルロース 0.2%水溶液30質量部を配合し、混練することにより、成形用組成物を得た 。このとき粉炭としては、200メッシュアンダーのもの、すなわち目開き74 μmの篩いにより分級したものを用いた。
【0084】 この成形用組成物を球状に成形し、この成形体を室温で12時間放置した後、 110℃で3時間放置することにより乾燥させた。
【0085】 乾燥後の成形体を、炉内で空気雰囲気下で900℃で1時間加熱することによ り焼成し、吸着脱臭材1を得た。
【0086】 (外観評価) 上記のようにして得られた各実施例の吸着脱臭材1は、いずれも表面は素焼き の焼き物状に形成されて、炭化物は露出されなかった。またダイヤモンド切削機 を用いて切断した断面には、炭化物を含まない粘土の焼結体からなる表面層3と 、粘土の焼結体に炭化物が分散した黒色の内層2とが形成されていた。
【0087】 (炭化物分散形態評価) 上記実施例1の条件にてソフトボール大(直径80mm)に形成された評価用 の試料を、ダイヤモンド切削機を用いて切断することにより、吸着脱臭材1の外 面側から内方に向けた7.5mmおきの箇所から試験片を切り出した。試験片の 寸法は6mm×6mm×6mmとした。この試験片を、吸着脱臭材1の外面側に 配置されてたものから順に、試験片1〜5とする。
【0088】 この各試験片に対して、水銀圧入法による細孔分布測定を行い、細孔直径ごと の細孔容積と、細孔の全容積とを導出した。図3に、各試験片の、細孔直径ごと の細孔容積の導出結果を示し、図4には、細孔分布測定から導出された、吸着脱 臭材1の内奥側から外層側にかけての、全細孔容積の分布及び細孔の平均直径の 分布を示す。ここで、図3中では◇は試験片1、□は試験片2、△は試験片3、 ○は試験片4、×は試験片5についての、それぞれの各細孔直径ごとの試験片重 量あたりの細孔容積を示す。また、図4中では□は重量あたりの全細孔容積を示 し、○は平均細孔直径を示す。
【0089】 これらの結果から明らかなように、吸着脱臭材1中では、内奥側よりも外層側 のほうが細孔の容積や細孔の平均直径が大きいものであり、また細孔の容積や平 均直径が大きい外層側の領域と、細孔の容積や平均直径が小さい内奥側の領域と の境界では、細孔の容積や平均直径は連続的に変化するものであった。このよう に内奥側と外層側との間に細孔の容積や平均直径の相違が発生するのは、外層側 で炭化物が酸化によって除去されることにより炭化物が配置されていた部分に空 隙が生じるためである。このため、上記のように細孔の全容積や平均直径の連続 的な変化が発生していることから、吸着脱臭材1中に残存する炭化物の含有量が 内奥側から外層側に向かうに従って連続的に減少することが証明される。
【0090】 (多孔質性評価) また、実施例1にて得られた吸着脱臭材1に対して、ユアサアイオニクス製の 品番「AUTOSCAN−33」を用い、窒素雰囲気下で窒素ガスを吸着させる BET法により、細孔直径に対する細孔容積を導出した。この結果を図5に示す 。
【0091】 また、ユアサアイオニクス製の「NOVA1000」を用い、水銀圧入法によ り、吸着脱臭材1中の細孔直径ごとの細孔の総容積を測定した。この結果を図6 に示す。尚、図中の横軸は細孔直径を示し、縦軸は細孔直径10μmの細孔の総 容積を100%とした場合の、各細孔直径における細孔の総容積を示す。
【0092】 図示の結果から明らかなように、吸着脱臭材1中には微細な細孔を多数有する 多孔質状に形成されていることが確認できる。
【0093】 (アンモニア吸着性評価) 実施例1にて得られた吸着脱臭材160mlを直径25mm、長さ115mm のカラム中に充填し、このカラムに500ppmのアンモニアを含む気流を流通 させて、カラムから流出する気流中のアンモニア濃度を測定した。また比較対象 として竹炭と、備長炭と、ヤシガラ活性炭についても、同様の試験を行った。こ の結果を図7に示す。尚、図中において、■は実施例1にて得られた吸着脱臭材 1、●は竹炭、▲は備長炭、×はヤシガラ活性炭についての、試験結果をそれぞ れ示す。
【0094】 この結果から、実施例1にて得られる吸着脱臭材1では、炭化物を含まない表 面層3が形成されているにも拘わらず、吸着体として使用される他の材料と比べ ても高いアンモニア吸着能を長時間維持することが確認できる。
【0095】 (硫化水素ガス吸着性評価) 実施例1にて得られた吸着脱臭材1と、比較対象である吸着脱臭材1と、竹炭 と、備長炭と、ヤシガラ活性炭について、それぞれ60mlの試料を直径25m m、長さ115mmのカラム中に充填し、このカラムに500ppmの硫化水素 ガスを含む気流を流通させて、カラムから流出する気流中の硫化水素ガス濃度を 測定した。この結果を図8に示す。尚、図中において、■は実施例1にて得られ た吸着脱臭材1、●は竹炭、▲は備長炭、×はヤシガラ活性炭についての、試験 結果をそれぞれ示す。
【0096】 この結果から、実施例1にて得られる吸着脱臭材1では、炭化物を含まない表 面層3が形成されているにも拘わらず、吸着体として使用される他の材料と比べ ても高い硫化水素ガス吸着能を長時間維持することが確認できる。
【0097】 (遠赤外線放射性評価) 日本電子社製の遠赤外線測定装置(品番「IR−IR200」)を用い、実施 例1にて得られる吸着脱臭材1の遠赤外線放射率を測定した。また、比較対象と して酸化アルミニウムについても同様の試験を行った。この結果を図9に示す。
【0098】 この結果から、実施例1にて得られる吸着脱臭材1は、酸化アルミニウムと比 較して、広い波長領域において良好な遠赤外線放射性を有することが確認できる 。
【0099】
【考案の効果】
上記のように本考案では、加熱調理容器の吸着脱臭材は、粘土で構成されると 共に炭化物を含まない表面層と、粘土と炭化物にて構成される内層とを具備する ため、加熱調理に用いられる容器本体の底部に敷き詰めるなどして配置すること により加熱調理容器を構成し、この加熱調理容器の上方に焼き網を配置すると共 にこの焼き網に魚や肉等の食品を配置して、加熱調理を行うと、食品から出る油 は多孔質の加熱調理容器の吸着脱臭材に吸収され、また臭い成分も加熱調理容器 の吸着脱臭材に吸収されると共に内層の炭化物に吸着され、容器が油で汚染され ることを防止すると共に臭いが付着することを防止することができるものである 。
【0100】 また、この加熱調理容器の吸着脱臭材は優れた遠赤外線放射性を有し、これに より、魚などを調理する際にはパリッと香ばしく焼き上げることができるもので ある。
【0101】 また、表面層が存在することによって炭化物が表面に露出しないこととなり、 人間が手で触れても手が黒く汚れるようなことがなく、かつ炭化物の微粉末が飛 散するようなこともなくなって、取扱性が良好なものである。またこのように炭 化物が露出しないことから、難燃性も向上するものであり、加熱調理の際に使用 しても火災等が発生することがないものである。
【0102】 また、炭化物材料からなるにも係わらず、黒色系の外観を呈さなくなり、表面 層を構成する粘土に応じて良好な外観を備えさせることができるものである。ま た炭化物のみではなく、炭化物と粘土にて構成されるため、所望の形状に容易に 成形することができて成形性が良いものである。
【0103】 また、長期間使用された加熱調理容器の吸着脱臭材は、新たな加熱調理容器の 吸着脱臭材と交換することができるが、この使用後の加熱調理容器の吸着脱臭材 は、別の用途に再利用することができ、例えばその多孔質性を利用して、植物の 培土として再利用すれば、細孔内に微生物を繁殖させて土壌を植物の育成に適し たものに改質することができるものである。
【0104】 また、均一な組成を有する粘土からなる母相によって加熱調理容器の吸着脱臭 材を構成し、母相の内奥部に炭化物を含有させて内層を形成すると共に内層の外 側に炭化物を含まない表面層を形成するため、炭化物を含む内層と炭化物を含ま ない表面層とは一体に形成され、これにより表面層と内層との間の剥離の発生が 防止されて二層に分離した加熱調理容器の吸着脱臭材の強度を向上することがで きるものである。
【0105】 また、内層と表面層との境界領域において炭化物の含有量が内層側から表面層 側にいくに従って連続的に減少するように形成するため、内層と表面層との間に は組成が不連続に変化するような明確な界面が存在しなくなり、これにより表面 層と内層との間の剥離の発生が防止されて二層に分離した加熱調理容器の吸着脱 臭材の強度を向上することができるものである。
【0106】 また請求項4の考案は、内層と表面層を構成する粘土が焼結体であるため、加 熱調理容器の吸着脱臭材は表面層が形成される部分と内層が形成される部分とが 完全に一体となった成形体から得られることとなり、内層から表面層が剥離しに くくなって、二層に分離した加熱調理容器の吸着脱臭材の強度を向上することが できるものであり、また表面層には細孔が形成されることとなり、表面層の多孔 質性が向上することとなって、特に加熱調理容器の吸着脱臭材を吸着材として用 いる場合には、吸着すべき成分が表面層を通過して炭化物が含有されている内層 に容易に到達することとなり、吸着性能が向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱調理容器の吸着脱臭材の構成の一例を示す
断面図である。
【図2】加熱調理容器の一例を示す断面図である。
【図3】実施例1における、各試験片中の細孔直径ごと
の細孔容積を示すグラフである。
【図4】実施例1における、加熱調理容器の吸着脱臭材
の内奥側から外層側にかけての、全細孔容積の分布及び
細孔の平均直径の分布を示すグラフである。
【図5】BET法にて測定された、実施例1における加
熱調理容器の吸着脱臭材中の細孔直径に対する細孔容積
分布を示すグラフである。
【図6】水銀圧入法にて測定された、実施例1における
加熱調理容器の吸着脱臭材中の細孔直径に対する細孔容
積分布を示すグラフである。
【図7】実施例1における加熱調理容器の吸着脱臭材に
ついての、アンモニアガス吸着性の試験結果を示すグラ
フである。
【図8】実施例1における加熱調理容器の吸着脱臭材に
ついての、硫化水素ガス吸着性の試験結果を示すグラフ
である。
【図9】実施例1における加熱調理容器の吸着脱臭材及
び酸化アルミニウムについての、遠赤外線放射率の測定
結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 吸着脱臭材 2 内層 3 表面層 4 加熱調理容器 5 容器本体
フロントページの続き (72)考案者 幾井 亜弓 高知県香美郡土佐山田町大法寺421−3

Claims (5)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘土で構成されると共に炭化物を含まな
    い表面層と、粘土と炭化物にて構成される内層とを具備
    して成ることを特徴とする加熱調理容器の吸着脱臭材。
  2. 【請求項2】 均一な組成を有する粘土からなる母相に
    よって加熱調理容器の吸着脱臭材を構成し、母相の内奥
    部に炭化物を含有させて内層を形成すると共に内層の外
    側に炭化物を含まない表面層を形成して成ることを特徴
    とする請求項1に記載の加熱調理容器の吸着脱臭材。
  3. 【請求項3】 内層と表面層との境界領域において炭化
    物の含有量が内層側から表面層側にいくに従って連続的
    に減少するように形成して成ることを特徴とする請求項
    1又は2に記載の加熱調理容器の吸着脱臭材。
  4. 【請求項4】 内層と表面層を構成する粘土が焼結体で
    あることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載
    の加熱調理容器の吸着脱臭材。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱
    調理容器の吸着脱臭材を容器本体の底面に配設して成る
    ことを特徴とする加熱調理容器。
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