JP3085729B2 - セラミックカラー組成物及びそれを使用した板ガラスの製造方法 - Google Patents

セラミックカラー組成物及びそれを使用した板ガラスの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はセラミックカラー組成物
およびそれを使用した板ガラスの製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車の窓ガラス周辺また
中央部にセラミックカラー組成物をペースト化し、スク
リーン印刷、乾燥し、曲げ加工工程にて焼き付けるいわ
ゆる自動車用セラミックカラーペーストが普及してい
る。このセラミックカラーペーストは、素板ガラス周辺
部に焼き付けることにより、着色不透明層を形成し、ウ
レタン接着剤の紫外線による劣化防止したり、接着部
を車外より透視できないようにすることを目的として用
いられている。本用途の組成物としては、ガラス粉末に
耐熱性着色顔料を混ぜたものが知られており、通常、黒
色またはダークグレー色の色調を呈する。
【0003】一方、特に車両リアガラスにおいては、そ
り防止のために通電加熱ヒーターとして銀ペースト
が線状にプリントされ、焼き付けられる。そのヒーター
の電極形成部分(すなわち、バスバー部分)は、上記セ
ラミックカラーの焼き付け部分と位置的に重なる場合が
ある。通常、かかる場合には、板ガラス上にセラミック
カラーペーストと銀ペーストを重ね印刷して焼き付けら
れている。
【0004】しかし、従来の方法により製造された板ガ
ラスは、銀ペースト中の銀がセラミックカラー層を通し
てマイグレーションを起こし、板ガラスまで到達して、
アンバー色に発色することが避けられなかった。かかる
発色は、上記銀ペーストの電極部分の存在を際だたせる
ものであって、車両窓ガラスの車外からの美観を著しく
損ない問題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
有する前述の問題点を解消するためになされたものであ
り、銀ペースト中の銀のマイグレーションを有効に防止
することにより、アンバー発色を生じないことを特徴と
するセラミックカラー組成物およびそれを使用した板ガ
ラスの製造法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、無機成分がガ
ラス粉末40〜95重量%、耐熱性顔料粉末4〜40重
量%およびホウ化物、窒化物、炭化物またはそれらの混
合物の粉末1〜30重量%を含むセラミックカラー組成
物並びにそれを使用した板ガラスの製造法を提供するも
のである。
【0007】本発明のセラミックカラー組成物は、上記
構成の無機成分を主体とし、これに有機ビヒクルを含有
させペースト化したものである。かかるセラミックカラ
ー組成物を使用することによって、これを印刷後さらに
その上に銀ペーストを重ね印刷した車両窓ガラスは、通
常の曲げ成形工程で焼成されても銀のマイグレーション
によるアンバー発色等を生じず、車外等からの美観を損
ことがなくなった。
【0008】本発明のセラミックカラー組成物の無機成
分のうちガラス粉末の含有量が40重量%に満たない場
合は、本組成物が素板ガラス上に焼き付かなくなる。一
方、95重量%をえる場合は、ガラス粉末以外の成
分、即ち顔料またはホウ化物、窒化物、炭化物等の量が
少なくなりすぎ、所望の色調または銀のマイグレーショ
ン抑制効果が得られなくなる。かかるガラス粉末として
は、加熱により素板ガラスに融着するものであれば特に
制限はなく、その組成も特に限定されず、鉛ホウケイ酸
系、鉛チタンケイ酸系、ビスマスホウケイ酸系およびこ
れらの混合物等の種々のガラス粉末が適宜選択できる。
【0009】車両用に用途を限った場合でも、同様の組
成系のガラス粉末が適宜使用できるが、特に車両窓ガラ
スの場合は焼き付けと同時に素板ガラスはプレスにより
曲げ加工されることが多いので、プレス用曲げ型と離れ
やすいようなガラス粉末を用いた場合に特に製造効率は
高くなる。例えば、このセラミックカラー組成物として
は、500〜620℃で基板ガラスに融着し、550〜
750℃で結晶化するようなガラス粉末がこの目的に適
している。
【0010】具体的には、例えば下記表示換算の重量%
表示で SiO2 13〜29 Al23 +La23 0.1〜 5 PbO 50〜75 TiO2 +ZrO2 +SnO2 4〜20 B23 0〜 6 Li2 O+Na2 O+K2 O 0〜 5 MgO+CaO+SrO+BaO 0〜 5 P25 0〜 5 F 0〜 2 となる組成を有するガラス粉末を用いることにより、車
両窓ガラス用板ガラスの製造効率のよいセラミックカラ
ー組成物を得ることができる。このガラス粉末の粒径と
しては、特に制限はないが、平均粒径は30μm以下が
好ましい。
【0011】結晶化ガラス粉末の上記組成の好ましい理
由は次の通りである。SiO2 ;ガラスネットワークフ
ォーマーであり、化学的、熱的、機械的特性を制御する
ために必須。13%より少ないと化学的耐久性に劣り好
ましくない。29%より多いとガラス軟化点が高くなり
過ぎ所望の曲げ加工温度でガラス表面に焼き付かない。
望ましくは15〜27%である。
【0012】Al23 +La23 ;化学的耐久性の
向上のためにいずれか一成分が必須である。0.1%よ
り少ないとその効果がない。5%より多いとガラスの軟
化点の上昇により所望の温度で焼き付かない。望ましく
は0.5〜4%である。PbO;フラックス成分および
結晶化成分として必須であり、50%より少ないとガラ
ス軟化点が高くなり過ぎ好ましくない。75%より多い
と化学的耐久性が悪くなり好ましくない。望ましくは5
2〜73%である。
【0013】TiO2 +ZrO2 +SnO2 ;結晶化お
よび化学的耐久性向上のためにいずれか一成分が必須で
あり、4%より少ないと所望の温度範囲で結晶化しない
ため好ましくない。20%より多いとガラス溶解時に失
透するので好ましくない。望ましくは6〜18%であ
る。 2 3 ;必須成分ではないが、フラックス成分と
して6%まで導入してもい。6%を超えると化学的耐
久性が悪くなり好ましくない。
【0014】Li2 O+Na2 O+K2 O;必須成分で
はないが、フラックス成分として5%まで導入しても
い。5%を超えると熱膨張係数が大きくなり好ましくな
い。MgO+CaO+SrO+BaO;必須成分ではな
いが、溶解性の向上、熱膨張係数の制御の目的で5%ま
で導入してもい。5%を超えると化学的耐久性が悪く
なる。P25 ;5%までであれば、化学的耐久性(特
に耐酸性)向上の目的で導入してもよい。5%を超える
とガラス溶解時に失透し好ましくない。F;2%までで
あれば、化学的耐久性(特に耐酸性)向上の目的で導入
してもよい。2%を超えるとガラス溶解時に失透するの
で好ましくない。
【0015】かかるガラス粉末は570〜700℃の温
度域で、チタン酸鉛、 ケイ酸鉛を主結晶として多量に析
出する結晶化ガラスである。かかる温度域は車両ガラス
であるソーダライムシリカ板ガラスの曲げ加工する
温度域に当る。それゆえ板ガラスの所望の部位に上記結
晶化ガラス粉末を塗布し板ガラスを加熱曲げ加工する
と、ガラス粉末も結晶化し、見掛け上粘度が高くなり、
曲げ加工装置のプレス型に付着することはない。
【0016】本発明の組成物の無機成分のうち耐熱性顔
粉末の含有量が4重量%に満たない場合は所望の濃度
の色調が得られず、一方、40重量%をえる場合、ガ
ラス粉末分が少なくなりすぎ、板ガラスへの焼き付きが
不良となる。かかる顔料としては、従来のセラミックカ
ラー組成物に使用されるものと同様でよく、銅クロムの
酸化物、鉄マンガンの酸化物、鉄の酸化物、チタンの酸
化物等を例示できる。また色調は与えないが、従来より
充填剤として使用されている例えばアルミナ、シリカ、
ジルコン等もまた上記耐熱性顔料に包含させることがで
きる。
【0017】また、本発明の組成物は、無機成分として
ガラス粉末および耐熱性顔料粉末とともに、ホウ化物、
窒化物、炭化物またはそれらの混合物の粉末の所定量を
必須構成成分として含有することが重要であり、これに
よりはじめて本発明所期の銀のマイグレーション防止効
果が達成される。
【0018】本発明組成物の無機成分中のホウ化物、窒
化物、炭化物またはそれらの混合物の粉末の含有量は、
合量で1〜30重量%が望ましい。1重量%を下回る場
合は、銀のマイグレーション防止の効果は十分ではな
く、一方30重量%をえる場合は、ガラス粉末の量が
低下するため素板ガラスへの焼き付きが不十分となり、
いずれも好ましくない。本発明においては、かかるホウ
化物、窒化物、炭化物には、炭窒化物、ホウ炭化物等の
固溶体もその範囲に含まれる。
【0019】この範疇の物質であれば銀のマイグレーシ
ョン防止の効果は有している。かかるホウ化物として
は、ホウ化ランタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタ
ンが例示される。窒化物としては、窒化ケイ素、窒化ア
ルミニウム、窒化チタンが例示される。炭化物として
は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭窒化チタンが例示され
る。中でも、チタンのホウ化物、窒化物、炭化物および
炭窒化物並びに炭化ホウ素が特に高い効果を有する。合
成法や純度等に特に制限はないが、粒子径が小さいほど
銀のマイグレーション抑制の効果は高く、平均粒径が3
0μm以下であることが望ましい。
【0020】本発明のセラミックカラー組成物は、常法
通り所定量の前記無機成分と有機ビヒクルを均質に分
散、混練することによりペーストに調される。ここ
で、この有機ビヒクルとしては、エチルセルロース、ア
クリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂等の高分子
をαテルピネオール、ブチルカルビトール、アセテー
ト、フタル酸エステル等の溶媒に溶解させたものが使用
される。
【0021】かかるセラミックカラー組成物を使用した
板ガラスは次のようにして製造される。本発明の上記し
た各種無機成分と有機ビヒクルとを充分に混練し、セラ
ミックカラーペーストを調する。このセラミックカラ
ーペーストの粘度としては20000〜200000ポ
イズ程度が作業性の面で好ましい。
【0022】次いで図1のようにこのセラミックカラー
ペーストをスクリーン印刷により素板ガラスの表面の所
定部位にセラミックカラーペーストの層を形成する。車
両窓ガラス用板ガラスを製造する場合には、通常素板ガ
ラス1の表面の周縁部2に厚さ5〜50μm、幅10〜
200mm程度のセラミックカラーペーストの層3が形
成される。次いで、このセラミックカラーペーストの層
3を乾燥する。かかる乾燥は常温で行うこともできる
が、100〜200℃、0.5〜20分間程の加熱によ
り生産性を向上することができる。また、紫外線照射に
より乾燥を促進することができる。
【0023】次いで、曇り除去用の通電加熱ヒーターを
板ガラス面に形成するために、このセラミックカラーペ
ーストの層3上の少なくとも一部に銀ペーストを印刷し
て、セラミックカラーペーストの層と銀ペーストの層と
が一部重なるようにする。図1に示した例は、通電加熱
ヒーターのバスバー4が車外から見えないように、セラ
ミックカラーペーストでバスバー4を隠蔽し、このバス
バー4間に線条のヒーター線5を多数本形成した例であ
る。かかる銀ペーストとしては、銀粉末80〜95重量
%、ガラス粉末5〜20重量%からなる無機成分と上述
したような有機ビヒクルを混合したものが例示される。
【0024】車両窓ガラスの場合、銀ペーストの層とし
ては、厚さ5〜30μm、幅1〜30mm程度のものが
使用される。通常、セラミックカラーペースト層の存
在しない部位、すなわち、板ガラスの表面上にも銀ペー
ストが所定パターンに印刷され、アンテナ線、ヒーター
またはリード線等が形成される。次いで銀ペーストの
層を乾燥した後焼成され板ガラスにセラミックカラー層
および銀層を有する板ガラスが製造される。
【0025】この焼成は、ペースト中の有機ビヒクルが
除去され、ガラス粉末が基板ガラスに焼き付けられる条
件であればよい。板ガラスが通常のソーダ・ライム・シ
リカである場合、かかる焼成は550〜750℃、0.
5〜30分間程度保持することにより達成される。車両
窓ガラス用板ガラスを製造する場合には、上記焼成の工
程と同時に曲げ加工のための加熱、または曲げ加工の少
なくとも一部が施されることが生産性向上の点で好まし
い。具体的には、上記焼成のための加熱工程において、
次の2次曲げ加工のための板ガラスの加熱または自重曲
げ加工が施されるようにするのが好ましい。次いで、必
要に応じて、この板ガラスのプレス曲げ加工、垂下曲げ
加工、エアフォーム曲げ加工が施される。
【0026】
【実施例】実施例 表1の組成および粒度特性を有するガラス粉末、黒色耐
熱性顔料粉末(銅クロムの酸化物、大日精化工業(株)
製、#9510)、ホウ化物、窒化物、炭化物またはそ
れらの混合物の粉末を表2に記載する混合比(単位:重
量%)で混合した。この混合粉末80重量部に対し10
重量%のエチルセルロースを溶解したαテルピネオー
ル溶液を20重量部の割合で加えて混練し、3本ロール
ミルにより均質分散を行い、所望のペースト粘度に調整
し、ペースト状のセラミックカラー組成物(セラミック
カラーペースト)を得た。
【0027】
【表1】
【0028】このペーストを、通常のソーダ・ライム・
シリカの素板ガラス上にスクリーン印刷し、厚さ約30
μmのセラミックカラーペーストの層を形成した。次い
でこれを100℃で5分間加熱し、乾燥した。次いで、
セラミックカラーペーストの層に重なるように銀ペース
トを印刷、乾燥した。この印刷された素板ガラスを70
0℃に保たれた電気炉に投入し、4分間加熱して焼き付
けセラミックカラー層および銀層を有する板ガラスを製
造した。
【0029】この焼き付けを行った板ガラスを印刷がさ
れていない面より色差計(ミノルタ社製CR200)で
測定した。色差は、セラミックカラー組成物が印刷され
ている部分のうち、銀ペーストが重ね印刷されていない
部分を標準とし、重ね印刷されている部分の色差を求め
た。この評価結果を表2に示す。ここで、この色差が小
さいほうが、銀のマイグレーションによるアンバー発色
が抑制されていることを示し、ΔEが1.5以下では肉
眼では色調の相違はなく区別はできなかった。
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】本発明のセラミックカラー組成物は、銀
ペーストと重ね印刷された場合に、焼成中の銀のマイグ
レーションを有効に防止することによりアンバー発色を
生じない。また、本発明によれば、かかるアンバー発色
のない美観に優れた板ガラスが製造され、特に美観に優
れた車両窓ガラスが製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により製造される車両窓ガラスの平面
図。
【符号の説明】
1 素板ガラス 3 セラミックカラーペーストの層 4 バスバー 5 ヒーター線
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 1/00 - 14/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機成分がガラス粉末40〜95重量%、
    耐熱性顔料粉末4〜40重量%およびホウ化物、窒化
    物、炭化物またはそれらの混合物の粉末1〜30重量%
    を含むセラミックカラー組成物。
  2. 【請求項2】ホウ化物、窒化物、または炭化物が、それ
    ぞれチタンの化合物である請求項1記載のセラミックカ
    ラー組成物。
  3. 【請求項3】銀ペーストと重ねてガラス板に印刷し、次
    いで焼成するセラミックカラーペーストに用いる請求項
    1または2記載のセラミックカラー組成物。
  4. 【請求項4】請求項1、2または3記載のセラミックカ
    ラー組成物を含有するセラミックカラーペーストを準備
    し、素板ガラス表面の一部に該セラミックカラーペース
    トの層を形成し、該セラミックカラーペーストの層上の
    少なくとも一部を覆って銀ペーストの層を形成し、次い
    で加熱、焼成する、素板ガラス表面にセラミックカラー
    およびセラミックカラー層上に銀層が少なくとも一部
    において積層された板ガラスの製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1、2または3記載のセラミックカ
    ラー組成物を含有するセラミックカラーペーストを準備
    し、素板ガラス表面の一部に該セラミックカラーペース
    トの層を形成し、該セラミックカラーペーストの層上の
    少なくとも一部を覆って銀ペーストの層を形成し、次い
    で加熱、焼成する、素板ガラス表面にセラミックカラー
    およびセラミックカラー層上に銀層少なくとも一部
    において積層された車両窓ガラス用板ガラスの製造方
    法。
  6. 【請求項6】焼成工程中で、曲げ加工を素板ガラスの
    なくとも一部ことを特徴とする請求項4または5
    記載の板ガラスの製造方法。
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