JP3076835B2 - 超伝導サンプリング測定回路 - Google Patents

超伝導サンプリング測定回路

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JP3076835B2
JP3076835B2 JP09133518A JP13351897A JP3076835B2 JP 3076835 B2 JP3076835 B2 JP 3076835B2 JP 09133518 A JP09133518 A JP 09133518A JP 13351897 A JP13351897 A JP 13351897A JP 3076835 B2 JP3076835 B2 JP 3076835B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般にジョセフソ
ン回路と総称される超伝導回路の出力する高速微小信号
を解析するため、当該信号を所定周期で複数回サンプリ
ングし、それに基づき拡大された時間軸上で当該信号を
復元、表示する超伝導サンプリング測定回路、いわゆる
“ジョセフソンサンプラ”の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】極低温環境下で動作するジョセフソン接
合を用いた超伝導回路の出力信号波形を測定するジョセ
フソンサンプラは、例えば、文献1:「電子技術総合研
究所彙報,第48巻,第4号,P.340-352」,通産省工業
技術院,電子技術総合研究所発行文献2:特公昭62-456
40号等で公知であるが、その原理的なシステム構成は図
4(A) に示すようになっている。
【0003】被測定回路11がジョセフソン回路系に固有
のラッチ動作をするために所定周期でのリセット動作を
必要とするか、そうでなくてもクロック同期動作をなす
場合には、外部に設けられたクロックパルス発振回路21
からの例えば 10KHz程度のクロックパルスCpが被測定回
路11に電源電流として供給され、これと同期の関係で測
定系を動作させるため、測定系中のパルス発生回路22、
トリガーパルス発生回路24、スイッチ回路34等にも電源
電流として供給される。
【0004】しかるに、クロック同期の関係で所定周期
でトリガーパルス発生回路24が繰り返し発生するトリガ
ーパルスItu は被測定回路11に与えられ、これに基づき
当該被測定回路11がそのたびごとに発生する被測定波形
Iuは負荷抵抗Ruを介し、望ましくはジョセフソン単接合
で構成されるジョセフソンサンプリングゲートJsに印加
される。当該サンプリングゲートJsは、当初は磁束量子
干渉デバイス(SQUID)で構成されることがあったが、高
速動作性に難点があり、時間分解能を高く取り難いた
め、最近では専らジョセフソン単接合に代わられてい
る。
【0005】上記の一方で、トリガーパルス発生回路24
の発生するトリガーパルスItu は可変遅延線回路25を介
し、可変遅延線制御回路23によりその時々で定められた
遅延時間を与えられた遅延駆動パルスItp となってパル
ス発生回路22に入力し、当該パルス発生回路22を駆動し
て、そこからパルス幅が極く短いインパルス状のパルス
Ip(以下、極短パルスIpと呼ぶ)を発生させ、これを負
荷抵抗Rpを介し、サンプリングゲートJsに印加する。
【0006】従って当該サンプリングゲートJsには被測
定波形Iuと極短パルスIpとの相乗電流が供給されるが、
図4(B) に示すように、例え被測定波形Iuのピーク値に
極短パルスIpが重なっても、それら両者の和(Ip+Iu)
のみではサンプリングゲートJsの臨界電流値Iso を越え
ることがないように、それらの電流値を設定する。
【0007】換言すると、これらの電流値の和(Ip+I
u)に、さらにバイアス電流Isを加えた電流(Ip+Iu+I
s)をサンプリングゲートJsに印加した時に、何回かに
亙るサンプリングで所定の確率、例えば50%の確率で当
該サンプリングゲートが電圧状態に遷移するように(す
なわち(Ip+Iu+Is)≧Iso となるように)、当該バイ
アス電流Isの値を調整、決定すれば、そのバイアス電流
Isの値により、極短パルスIpが印加されている瞬時の被
測定波形Iuの値を求めることができる。そこで、この操
作を、可変遅延線制御回路23の指令により可変遅延線回
路25を介し、例えば1ps程度の微小な時間刻みで極短パ
ルスIpの印加タイミングをずらしながら繰返し行えば、
被測定波形Iuの全体を高い時間分解能で拡大した時間軸
上に復元、表示することができる。
【0008】ここで、手動でこのような測定操作、特に
バイアス電流Isの決定操作を行うのではなく、各サンプ
ル時におけるバイアス電流Isの大きさを最適に制御し、
かつ自動化するためには、従来からも図中で一点鎖線で
囲って示したようなバイアス電流帰還制御回路30が用い
られる。つまり、サンプリングゲートJsに得られる電圧
波形Vsを増幅器31により増幅し、この電圧Vsから参照電
圧Vrを比較回路32により引き去って、積分回路33により
積分する。得られた直流電圧VmをクロックパルスCpに同
期したスイッチ34により当該電圧値Vmのパルス波形に
し、抵抗Rsを介することでサンプリングゲートJsにバイ
アス電流Is(=Vm/Rs)を供給する。従って、参照電圧
Vrの大きさを調整すると、サンプリングゲートJsが電圧
状態になる確率を変えることができるので、このような
系において積分回路33の出力電圧Vmに基づきその時々の
バイアス電流Isを上述のIs=Vm/Rsから算出して電流軸
Yとし、可変遅延線制御回路23からの遅延時間値を時間
軸Xとして、適当なる公知表示器26にてプロット表示す
れば、目的の被測定波形Iuを拡大された時間字軸上にて
復元、表示することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ジョセフソンサンプラ
の動作原理は上記の通りであるが、図4(A) 中に点線10
で囲って示すように、従来、ジョセフソンサンプラの多
くの構成要素、特に極短パルスIpの発生回路22、サンプ
リングゲートJs、バイアス電流帰還制御回路30等は、測
定対象である被測定回路11と同じ基板チップ10上に搭載
され、そのまま極低温環境下に置かれるようになってい
た。というのも、常温で動作する半導体デジタルサンプ
リング測定回路を用いると、極低温環境下と常温環境下
を接続する長い信号ケーブルにより高速信号が劣化し、
高精度な波形測定が困難になるからである。
【0010】しかし、それがために、今度は別な制約が
生まれた。それは、被測定回路11がジョセフソンサンプ
ラを構成する各構成要素と同一の作製プロセスにより作
製されたものに限られると言うことである。例えばジョ
セフソンサンプラの構成要素がNbやNbN を電極に用いた
超伝導回路である場合、被測定回路11もそうしたNb系材
料を用いて構築されたものに限られる。そのため、昨今
では多くの研究機関で研究されている酸化物高温超伝導
体を電極に用いた回路については測定ができないか、極
めて困難だった。
【0011】また、ジョセフソンサンプラの多くの構成
要素を被測定回路11と同じチップ上に構築せねばならな
いことは、ある意味で無駄でもある。被測定回路の各々
に全て、逐一、ジョセフソンサンプラを構築せねばなら
ないからである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記に鑑み、被
測定回路からの被測定波形とパルス発生回路からの極短
パルスとに、さらにバイアス電流を重畳してサンプリン
グゲートに与え、極短パルスの重畳タイミングを微小時
間幅でずらしながらバイアス電流の大きさを制御するこ
とで被測定波形を拡大された時間軸上にて表示するジョ
セフソンサンプラにあって、少なくとも上記のパルス発
生回路、サンプリングゲート、さらに望ましくは設けら
れるバイアス電流の帰還制御回路に代表されるように、
当該ジョセフソンサンプラにおいて極低温環境下に置く
べき構成要素を被測定回路の搭載されている被測定回路
チップとは別の測定回路チップ上に搭載し、被測定回路
とジョセフソンサンプラとの接続は測定回路チップと被
測定回路チップ間のワイヤボンディングまたはフリップ
チップボンディングによりなすことを提案する。
【0013】また、被測定回路に対し被測定波形の元と
なるパルス波形またはランプ波形を印加する必要のある
場合には、そのための被測定パルス波形発生回路または
被測定ランプ波形発生回路も測定回路チップ上に搭載す
ることを提案する。
【0014】
【発明の実施の形態】図1〜3にはそれぞれ、本発明に
従って構成されるジョセフソンサンプラを用いた測定系
が示されている。ただし、図4に即して既に説明した従
来の構成に対し、同じで良いか同様の構成要素には同一
の符号を付してあり、本発明により特に改変を要さない
ものについては再度の説明は省略する。また、図面を簡
明にする意味から、図4に示して説明したクロックパル
ス発振回路21とそれから周期的な電源電流として与えら
れるクロックパルスCpは図1〜3中では図示を省略し、
図4中のトリガーパルス発生回路24と可変遅延線回路25
も図示を省略しており、トリガーパルス発生回路24の発
生するトリガーパルスItu と可変遅延線回路25の発生す
る遅延駆動パルスItp のみを図1〜3の各測定系に印加
される信号として示してある。なお、これら図示してい
ないクロックパルス発振回路21、トリガーパルス発生回
路24、可変遅延線回路25のどれか、あるいはいくつか、
または全ては、要すれば直ぐ後に述べる測定回路チップ
40上に搭載しても良いが、通常は常温環境下に置いて良
い。
【0015】さらに、図1〜3のいずれの測定系でも、
サンプリングゲートJsとしては既述した理由から望まし
い単段ジョセフソンゲートが用いられている。そして、
その臨界電流値Iso に対し、被測定回路11から得られる
被測定波形の電流値Iuと発生タイミングを微小時間幅で
ずらして当該被測定波形に重畳させられる極短パルスIp
の和は常に Iso>(Iu+Ip)となるように設定され、そ
の上で既述した電流帰還制御回路30により、バイアス電
流値Isを制御し、これら三つの電流Iu,Ip,Isが重畳的
に印加されるサンプリングゲートJsの状態を観測するこ
とでその時々のバイアス電流値Isに基づき被測定波形を
拡大した時間軸上で表示する。従って、バイアス電流帰
還制御回路30内の構成も図4に示した構成と同様であっ
て良く、外部からの参照電圧Vrも同様にして比較回路32
に印加すれば良いし、図示していないが積分回路33の出
力に基づき、図示しない表示器(図4中の表示器26)に
より測定波形を可視表示できる。この表示器26は、人が
視認するものである限り、常温環境下に置く。
【0016】しかるに、まず図1の測定系では、本発明
に従い特徴的なことに、被測定回路11の搭載されている
被測定回路チップ50と同じチップの上には、ジョセフソ
ンサンプラにあって極低温環境下におくべき構成要素は
搭載されていない。これら極低温環境下に置くべき構成
要素、図示の場合は極短パルスIpの発生回路22、後述す
る被測定波形の元となる波形を発生する被測定パルス波
形発生回路61、サンプリングゲートJsとその周辺の抵抗
Rs,Rp,Ru、バイアス電流帰還制御回路30は、被測定回
路チップ50とは別個独立の測定回路チップ40上に搭載さ
れている。そして、被測定回路11とジョセフソンサンプ
ラとの電気的な接続は、測定回路チップ40上に設けられ
ているボンディングパッド41,・・・・ と、被測定回路
チップ50上に設けられているボンディングパッド51,・
・・・ とを公知のフリップチップボンディング法に準
拠し、例えば半田バンプ42,・・・・ を援用してなすよ
うにしている。
【0017】そのため、まず言えることは、ジョセフソ
ンサンプラと異なる作製プロセスで作製された被測定回
路11であっても、これを測定の対象とし得る。ジョセフ
ソンサンプラがNbないし NbN系材料で作られ、対して被
測定回路11が酸化物高温超伝導材料で作製されている場
合等も問題ない。また、ボンディングパッド接続部分を
取り外して使えば、いくつもの、あるいはまた何種類も
の被測定回路に対し、一つのジョセフソンサンプラを流
用することができる。
【0018】さて、図1の回路では、被測定回路11は具
体的にはパルス信号を伝送するストリップ線路12となっ
ている。つまり、ここで予定している測定目的は、スト
リップ線路12の評価、パルス信号伝搬の観測である。こ
のように、信号線路そのものを評価したいことも実際に
は良くある。
【0019】そのため、当該ストリップ線路12に入力す
る被測定波形の元となるパルス信号は、できるだけ幅の
狭い極短パルスの方が望ましいので、図1の場合には、
図4に即して説明したトリガーパルスItu の入力を受け
て駆動する被測定パルス波形発生回路61を新たに挿入
し、この回路61の発する極短パルスIuf を、被測定回路
であるストリップ線路12への入力信号波形としている。
一方、ジョセフソンゲートJsに重畳される極短パルスIp
もまた、既述したように尖鋭なものであることが望まし
いので、これを発生するパルス発生回路22と共に、これ
らパルス発生回路61,22は、図1中に併示されている極
短パルス発生器60により構成されている。この極短パル
ス発生器60は、簡単な構成の割に本願で始めて開示され
るもので、実効も大きいが、説明の都合上、当該極短パ
ルス発生器60の構成とその動作については後に回す。
【0020】被測定パルス波形発生回路61の発したパル
ス信号Iuf は、ボンディング接続部(41,42,51)を介
し被測定回路チップ50上の被測定回路11であるストリッ
プ線路12の一端に入力され、ストリップ線路12を経た被
測定波形Iuは再びボンディング接続部(51,42,41)を
介し測定回路チップ40上に戻り、被測定回路側から見た
負荷抵抗Ruを介してサンプリングゲートJsに印加され
る。その一方で、既に説明したように、遅延駆動パルス
Itp により駆動されるパルス発生回路22の発する極短パ
ルスIpと、バイアス電流帰還制御回路30の発するバイア
ス電流IsもサンプリングゲートJsに印加され、既述した
手順でサンプリング測定が行われる。
【0021】しかるに、この図1に示す測定系では、測
定回路チップ40上に搭載されている被測定パルス波形発
生回路61の発した被測定パルス波形Iuf は、ボンディン
グ接続部(41,42,51)を介し被測定回路11であるスト
リップ線路12の一端に入力されるだけではなく、被測定
回路チップ50上にてその一部が分岐されて、なるべく短
い短絡線路52を介した後、再度ボンディング接続部(5
1,42,41)を経てサンプリングゲートJsに印加される
ようになっている。このようにすると、ストリップ線路
12における信号伝搬の伝搬速度をも評価できる。
【0022】また、図示の場合、測定回路チップ40と被
測定回路チップ50との間で信号が流れるボンディングパ
ッド対の間には、それぞれ接地路43として示した線路な
いしヴィアホールにより図示しないグランドプレーンに
接続されたボンディングパッド対が幾何的に介在してい
る。これは、ボンディングパッド接続部におけるインピ
ーダンスを低くするためで、信号の立ち上がりが 100ps
程度以下に速まってくると、このようなシールド用のボ
ンディングパッド部分を設けることの効果が大きくなっ
てくる。図示の場合にはさらに、信号線路の外側にも接
地路43で短絡されたシールド用ボンディングパッド対を
設けているが、これは本来のシールド効果の外、他の信
号線路が隣接して設けられる場合には、やはり同様に相
互干渉によるインピーダンスの上昇を抑える点で意味が
ある。
【0023】ただし、本発明に従い、ボンディングパッ
ド41,51を介しての接続を図ると、当該ボンディングパ
ッド部分の幾何的面積が大きいことから、インピーダン
スの上昇を招き、インピーダンス不整合を生ずることも
ある。しかし、そのような場合には、公知の考え方に従
い、図中では代表的に一個所にしか示していないが、イ
ンピーダンスマッチング用キャパシタンスCmを設ければ
良い。このキャパシタンスは、個別部品としてのキャパ
シタにより得られるものであっても良いが、本出願人は
既に、特願平7-326923号にて、当該ボンディングパッド
の幾何的な面積を積極的にキャパシタンスとして利用す
る工夫も開示しているので、この技術を使うとなお良
い。
【0024】また、信号伝搬速度評価のために被測定パ
ルス波形Iuf の一部を分岐的に流す短絡線路52を設けた
場合には特に、インピーダンスマッチングのために、当
該分岐線路である短絡線路52や、ストリップ線路12への
接続線路の一方または双方中に、マッチング抵抗Rm1,Rm
2 を設けた方が良いこともある。
【0025】もちろん、このような接地路43で接地され
たボンディングパッド対を設ける構造や、インピーダン
スマッチングキャパシタCmやマッチング抵抗Rm1,Rm2(上
述のようにいずれか一方でも良い)を設ける構成は、後
述する図2,図3の測定系においても必要に応じ、同様
に適用できる。
【0026】しかるに、先に触れたように、サンプリン
グゲートJsに印加する極短パルスIpや、場合により用い
るのが望ましい被測定パルス波形発生回路61からの出力
パルスIuf を、文字通りにパルス幅の十分短い尖鋭な波
形のパルスとして出力するには、図1中に併示した極短
パルス発生器60を用いるのが望ましい。そこで、これに
つき説明するに、その基本的な構成は一般に4JLゲー
トと略称されて極めて周知の四接合電流注入型ジョセフ
ソンゲートを有して成っている。すなわち、超伝導閉ル
ープ中に四つのジョセフソン接合J1,J2,J3,J4があ
り、当該閉ループにはゲート端子Tgからゲート抵抗Rgを
介しゲート電流(電源電流)Igの流れ込むノード(接続
点)と、接地(グランドプレーン)に接続するノードが
設けられ、これらノード対を境にして左右のブランチ
(枝回路)に分かたれている。一方のブランチ、図示の
場合は左ブランチに属する二つのジョセフソン接合J1,
J2の間に入力端子Tiからの入力信号電流Iiが流入し、当
該流入点と接地との間に設けられているジョセフソン接
合J1には並列に入力抵抗Riが設けられている。
【0027】これら左ブランチ中のジョセフソン接合J
1,J2の臨界電流値に対し、他方のブランチである右ブ
ランチ中の二つのジョセフソン接合J3,J4の臨界電流値
は、電流増幅率を高く取るために大きく取られ、一般に
は周知のように三倍程度に選ばれる。
【0028】閉ループには並列に負荷抵抗RLが設けら
れ、これにより基本的な四接合電流注入型ジョセフソン
ゲートの基本構成が満足されるが、図示の極短パルス発
生器60ではさらに、負荷抵抗RLのホット側端から取り出
される出力端子Toへの出力線路中に、ジョセフソン接合
J5が介在している。そのため、この極短パルス発生器60
は、次のような動作により目的の極短パルスを発生する
ことができる。
【0029】ゲート臨界電流値の80〜90%の大きさの電
源電流Igが与えられている状態で、入力信号電流Iiとし
て既述のトリガーパルスItu か遅延駆動パルスItp が印
加されると、まずは入力抵抗Riに並列なジョセフソン接
合J2がこれら電流の相乗効果で電圧状態に遷移し、その
結果、次いでこれら電流は右ブランチ中のジョセフソン
接合J3,J4に流れ込み、これらを電圧状態にスイッチさ
せる。すると、右ブランチ中に流れていた電源電流Igは
逆方向となる入力信号電流Iiより大きいので、残ってい
るジョセフソン接合J1を介し入力抵抗Riに向けて流れ、
これを電圧状態に遷移させて、最終的に閉ループ全体を
電圧状態に遷移させ、電源電流Igは負荷抵抗RLの方に、
入力信号電流Iiは入力抵抗Riにのみ、流れる状態とな
る。
【0030】この動作は周知の四接合電流注入型ジョセ
フソンゲートの基本動作であるが、図示の極短パルス発
生器60では、負荷抵抗RLへの電流線路は分岐され、負荷
抵抗RLに流れる負荷電流(電圧状態に遷移した後の電源
電流Ig)の一部が追加のジョセフソン接合J5に流れるよ
うになっている。そしてそのために、このジョセフソン
接合J5を介し出力端子Toに生ずる出力電流は極短パルス
となる。すなわち、上述の基本動作によりゲートが全体
として電圧状態に遷移した瞬間から、負荷抵抗RLに比し
て出力端子Toに接続した負荷回路のインピーダンスの方
を適当に低く設定することで、最初は電源電流Igの殆ど
が追加のジョセフソン接合J5を介し、出力電流として負
荷回路に流れ込む。
【0031】しかし、経時的に見て上昇して行く出力電
流の大きさが追加のジョセフソン接合J5の臨界電流を越
えた瞬間に、当該ジョセフソン接合J5が電圧状態に遷移
して出力端子Toを介し負荷抵抗RLに並列な負荷回路に与
えられる出力電流が断たれ、電源電流Igは専ら負荷抵抗
RLにのみ流れるようになる。
【0032】従って、この極短パルス発生器60を図1中
のパルス発生回路22として用いると出力パルスIpとして
極短パルスが得られ、被測定パルス波形発生回路61とし
て用いた場合には十分鋭い被測定パルス波形Iuf をスト
リップ線路12に入力させることができる。
【0033】本発明者の実験例では、臨界電流密度10KA
/cm2のNb/AlOx/Nbジョセフソン接合を用い、ジョセフソ
ン接合J1,J2,J5の臨界電流値を 150μA,ジョセフソン
接合J3,J4のそれをその三倍の 450μA に設定し、入力
抵抗Riの値を 0.5Ω,出力負荷抵抗RLの値を 5Ω,ゲー
ト抵抗Rgの値を40Ωに設定して、波高値 200μA,半値幅
10ps程度の急峻なパルスを得るのに成功した。このよう
に、4JLゲートの基本構成に対し、実質的にその出力
線路に直列に追加のジョセフソン接合J5を設けただけの
簡単な構成の割に、この極短パルス発生器60は高い動作
信頼度で目的の極短パルスを発生させることができる。
そして、この極短パルス発生器60は、後述の他の実施形
態においても用い得ることはもちろん、これ自体単独
で、任意のジョセフソン回路に利用することができる。
【0034】なお、このような極短パルス発生器60を用
いる場合の外、他の構造の極短パルス発生器を用いる場
合であっても、図1中のパルス発生回路22や被測定パル
ス波形発生回路61のグランドプレーンへの接地位置と、
サンプリングゲートJsの接地位置との間は、幾何的にな
るべく離す方が望ましい。 100ps程度以下のパルス信号
を取扱うようになると、これらの接地位置が近い場合、
グランドプレーンを通じてのサンプリングゲートJsへの
回り込みによる干渉が生じ、検出誤差の原因となること
もあるからである。また、各部に供給する電源波形は、
複数のジョセフソン接合を直列接続して成る公知の電圧
レギュレータにより、安定化されているのが望ましい。
【0035】図2は本発明の他の実施形態を示してい
る。これについては図1中の構成と異なる点にのみ説明
し、他についてはこれまでの説明をそのまま援用でき
る。この点は、後述の図3に示す実施形態についても同
様である。
【0036】図2の測定系では、被測定対象はストリッ
プ線路12を通過したパルス波形ではなく、ランプ波形で
ある。従って、トリガーパルスItu により駆動され、通
常のジョセフソンゲートにより構成できる被測定ランプ
波形発生回路62が用いられており、その出力は図2中に
模式的に示すようにランプ波形Iuf となる。
【0037】さらにこの実施形態の場合、当該ランプ波
形Iuf は第一、第二のゲート71,72に共に与えられ、第
一ゲート71から出力された被測定ランプ波形Iuf は測定
回路チップ40と被測定回路チップ50との間の接続部分で
ある既述のボンディングパッド接続部(41,42,51)を
介してストリップ線路12に入力され、ストリップ線路12
を通過した被測定ランプ波形Iuは、再びボンディングパ
ッド接続部(51,42,41)を介し負荷抵抗Ru1 を経てサ
ンプリングゲートJsに印加される。
【0038】一方で第二ゲート72から出力された被測定
ランプ波形Iuf は測定回路チップ40と被測定回路チップ
50との間の接続部分である既述のボンディングパッド接
続部(41,42,51)を介してできるだけ短い長さの短絡
線路52に入力され、当該線路を通過した被測定ランプ波
形Iuは再びボンディングパッド接続部(51,42,41)を
介し負荷抵抗Ru2 を経てサンプリングゲートJsに印加さ
れる。
【0039】従って、第一、第二ゲート71,72の電源を
交互に切り替えることにより、ストリップ線路12を経た
場合と短絡線路52を経た場合の信号波形Iuを比較でき、
ストリップ線路伝搬特性のより詳しい評価が可能とな
る。
【0040】図3に示す測定系は、図2に示した測定系
の更なる改良であって、主として異なる所は、ボンディ
ングパッド接続部(41,42,51)そのものの存在の影響
をも評価できることである。
【0041】すなわち、被測定ランプ波形発生回路62の
出力したランプ波形Iuf は第一、第二、第三のゲート7
1,72,73の全てに与えられ、第一ゲート71から出力さ
れた被測定ランプ波形Iuf は測定回路チップ40と被測定
回路チップ50との間の接続部分である既述のボンディン
グパッド接続部(41,42,51)を介してストリップ線路
12に入力され、ストリップ線路12を通過した被測定ラン
プ波形Iuは再びボンディングパッド接続部(51,42,4
1)を介し負荷抵抗Ru1 を経てサンプリングゲートJsに
印加される。
【0042】一方で第二ゲート72から出力された被測定
ランプ波形Iuf は測定回路チップ40と被測定回路チップ
50との間の接続部分である既述のボンディングパッド接
続部(41,42,51)を介してできるだけ短い長さの短絡
線路52に入力され、当該線路を通過した被測定ランプ波
形Iuは再びボンディングパッド接続部(51,42,41)を
介し負荷抵抗Ru2 を経てサンプリングゲートJsに印加さ
れる。
【0043】さらに、第三ゲート73からの被測定ランプ
波形Iuf はボンディングパッド接続部分を介することな
く、測定回路チップ40上にてのみ、所定の線路を経て負
荷抵抗Ru3 を介し、サンプリングゲートJsに印加され
る。従って、第一、第二、第三ゲート71,72,73の電源
を順繰りに切り替えて既述の手法でサンプリング測定す
れば、ストリップ線路12を経た場合と短絡線路52を経た
場合、さらにはボンディングパッド接続部分すら経ない
場合の各信号波形Iuを比較でき、ストリップ線路の伝搬
特性をさらに詳しく評価できるようになる。
【0044】以上の各実施例においては、測定回路チッ
プ40と被測定回路チップ50との接続はフリップチップボ
ンディングによりなしていた。しかしこれに代えて、そ
れ自体は公知のワイヤボンディングによりなしても良
い。また、もちろんのことであるが、被測定回路11は、
図示のストリップ線路12に限ることはなく、例えば論理
回路等、任意のジョセフソン回路であって良い。
【0045】
【発明の効果】本発明によると、従来はサンプリング測
定が困難であった、ジョセフソンサンプラと異なる材料
系で作製されたジョセフソン回路の測定も可能になる。
また、取り外し可能なボンディングパッド接続構造ない
しワイヤボンディング接続構造により、測定回路チップ
上のジョセフソンサンプラと被測定回路チップ上の被測
定回路とを接続するため、一つのジョセフソンサンプラ
をいくつものジョセフソン回路の測定に流用することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する第一の形態の測定系の概
略構成図である。
【図2】本発明方法を実施する第二の形態の測定系の概
略構成図である。
【図3】本発明方法を実施する第三の形態の測定系の概
略構成図である。
【図4】従来におけるジョセフソンサンプラの代表的一
例の概略構成図である。
【符号の説明】
11 被測定回路, 12 ストリップ線路, 22 極短パルス発生回路, 30 バイアス電流帰還制御回路, 40 測定回路チップ, 41 測定回路上のボンディイングパッド, 42 半田バンプ, 43 接地路, 50 被測定回路チップ, 51 被測定回路チップ上のボンディングパッド, 60 極短パルス発生器, 61 被測定パルス波形発生回路, Js サンプリングゲート, Ip 極短パルス, Iu 被測定波形, Is バイアス電流
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 弘 茨城県つくば市梅園1丁目1番4 工業 技術院電子技術総合研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−137489(JP,A) 特開 平6−177444(JP,A) 特公 昭62−45640(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 39/22 G01R 13/34 G11C 11/44 G11C 27/02 H01L 39/00 H01L 39/02 H01L 39/24

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被測定回路からの被測定波形とパルス発
    生回路からの極短パルスとに、さらにバイアス電流を重
    畳してサンプリングゲートに与え、該極短パルスの重畳
    タイミングを微小時間幅でずらしながらバイアス電流の
    大きさを制御することで上記被測定波形を拡大された時
    間軸上にて表示する超伝導サンプリング測定回路であっ
    て;該超伝導サンプリング測定回路にあって極低温環境
    下に置くべき構成要素を上記被測定回路の搭載されてい
    る被測定回路チップとは別の測定回路チップ上に搭載
    し;該被測定回路と該超伝導サンプリング測定回路との
    接続は上記測定回路チップと上記被測定回路チップ間の
    ワイヤボンディングまたはフリップチップボンディング
    によりなすことを特徴とする超伝導サンプリング測定回
    路。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の超伝導サンプリング測定
    回路であって;上記被測定波形の元となるパルス波形ま
    たはランプ波形を生ずる被測定パルス波形発生回路また
    は被測定ランプ波形発生回路も上記測定回路チップ上に
    搭載すること;を特徴とする超伝導サンプリング測定回
    路。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の超伝導サンプリング測定
    回路であって;上記被測定回路に与える信号の一部を分
    岐する短絡線路を上記被測定回路チップ上に設けたこ
    と;を特徴とする超伝導サンプリング測定回路。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の超伝導サンプリング測定
    回路であって;上記測定回路チップ上に第一、第二のゲ
    ートを設け;上記被測定波形の元となる波形を上記第一
    のゲートを介した後、上記被測定回路に与えるようにす
    る一方で;上記被測定波形の元となる波形を上記第二の
    ゲートを介した後、上記測定回路チップと上記被測定回
    路チップ間のワイヤボンディングまたはフリップチップ
    ボンディングにより該被測定回路チップ上の短絡線路の
    一端に与え;該短絡線路の他端から出力される被測定波
    形を上記被測定回路チップと上記測定回路チップ間のワ
    イヤボンディングまたはフリップチップボンディングを
    介した後、上記サンプリングゲートに与えるように構成
    し;上記第一、第二のゲートを交互に切り替えて使用す
    ること;を特徴とする超伝導サンプリング測定回路。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の超伝導サンプリング測定
    回路であって;上記測定回路チップ上に第一、第二、第
    三のゲートを設け;上記被測定波形の元となる波形を上
    記第一のゲートを介した後、上記被測定回路に与えるよ
    うにする一方で;上記被測定波形の元となる波形を上記
    第二のゲートを介した後、上記測定回路チップと上記被
    測定回路チップ間のワイヤボンディングまたはフリップ
    チップボンディングにより該被測定回路チップ上の短絡
    線路の一端に与え;該短絡線路の他端から出力される被
    測定波形を上記被測定回路チップと上記測定回路チップ
    間のワイヤボンディングまたはフリップチップボンディ
    ングを介した後、上記サンプリングゲートに与えるよう
    にすると共に;さらに、上記被測定波形の元となる波形
    を上記第三のゲートを介し、上記測定回路チップ上の線
    路を介してのみ、上記サンプリングゲートに与えるよう
    に構成し;上記第一、第二、第三のゲートを順に切り替
    えて使用すること;を特徴とする超伝導サンプリング測
    定回路。
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