JP3072026B2 - 吸音材 - Google Patents

吸音材

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JP3072026B2
JP3072026B2 JP7141651A JP14165195A JP3072026B2 JP 3072026 B2 JP3072026 B2 JP 3072026B2 JP 7141651 A JP7141651 A JP 7141651A JP 14165195 A JP14165195 A JP 14165195A JP 3072026 B2 JP3072026 B2 JP 3072026B2
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博文 柿本
木曽  治
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は吸音材に関するものであ
り、特に広い周波数範囲で優れた特性を有する吸音材に
関するものである。
【0002】近年、生活、産業などあらゆる分野で静か
な環境が求められている。例えば、生活分野においては
住宅の静かさが、また産業分野においても、従来は工場
外への騒音防止に力点が置かれていたが、近年は作業環
境に対しても静かさが求められ、作業者に対して良好な
環境が追求されるようになってきた。そのため、音や振
動の防止に関して多種多様な要望が顕在化し、その対策
としては、遮音、吸音、防振、制振等の手段を組み合わ
せて行われている。
【0003】
【従来の技術と問題点】従来より吸音材の材料として
は、無機質繊維、有機質繊維、連続気泡型発泡体、発泡
アルミニウム、多孔質材等が用いられている。中でもコ
ストおよび難燃性の観点から、主にグラスウール、ロッ
クウールが使用されている。ところが、グラスウールや
ロックウールは高周波音に対しては有効であるが、低周
波音に対しては通常の使用厚みでは有効でないという吸
音特性上の欠点を有している。また、作業者にとって、
これらの短繊維により、皮膚刺激によるかゆみの発生や
呼吸器系に悪影響を及ぼすといった問題があり、労働安
全衛生の面で、使用することが困難となっている。
【0004】一方、連続気泡型構造を有するウレタン等
の高分子材料は、発泡体であるため、膜自体の厚さが薄
くなり加水分解や酸化による劣化を受けやすく、長期の
使用に耐えられない欠点を有している。また、発泡アル
ミニウムは高コストという問題がある。上記の観点から
広い周波数領域にわたって長期間安定した性能を有する
吸音材の開発が望まれている。
【0005】
【課題およびその解決手段】本発明の課題は、労働安全
衛生上の欠点がなく、広い周波数領域において有効であ
り、しかも長期にわたり性能を発揮できる吸音材を低コ
ストで提供することにある。
【0006】本発明による吸音材は、少なくとも1枚の
フィルムまたはシートと、波状または折板状のフィルム
またはシートとを貼り合わせた段ボール状部材を複数貼
り合わせて形成する吸音材(A) 、フィルムまたはシート
と、一方の面に多数の凸部を形成したフィルムまたはシ
ートとを貼り合わせた、多数の独立気泡体を有するシー
ト状部材を重ね合わせ、または巻いて形成する吸音材
(B) 、フィルムまたはシートの一方の表面に、ゴムまた
は発泡体からなる帯状の部材を任意の間隔で貼り付けた
シート状部材を重ね合わせ、または巻いて形成する吸音
材(C) 、貫通穴を有するストロー状部材を多数結束また
は平面状に連結した部材を重ね合わせ、または巻いて形
成する吸音材(D) およびストロー状部材の一部をベロー
ズ状に加工し、このベローズ部を曲げ加工することによ
り音伝播行路長を長くした部材を多数結束または連結し
て形成する吸音材(E) から選ばれた1つまたは複数の吸
音材を単独または併用して重ね合わせ、または巻いて形
成することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】本発明による吸音材は、多数の貫通穴または開
口部を有し、この貫通穴または開口部を音源側に向けて
設置し、その内部を空気が通過するときの空気の流れが
受ける抵抗により音響エネルギーを熱エネルギーに変換
することで音波を減衰させることにより、吸音効果をも
たらすものである。
【0008】本発明においては、貫通穴または開口部を
有する材質を用い、貫通穴または開口部の背後にフィル
ム、シート、有機質繊維、連続気泡体、または空気層を
介在させることにより吸音効果を高め、さらに貫通穴ま
たは開口部に充填物を詰めたり、途中で座屈させたり、
縮径することによって内部を通過する空気の流れに対す
る抵抗を増加させることで吸音効果を高めている。
【0009】また、本発明では、吸音材を粘弾性体や連
続気泡体、有機質繊維を介して連結することにより吸音
特性を変化させることが可能であること、音源側に向け
た貫通穴または開口部の断面形状を段状、凹状または凸
状とすることにより、薄い厚みでも低周波側の吸音性能
が向上すること、さらに空気伝幡経路を延長することに
より空気抵抗を増すと共に吸音材厚みを薄くでき、ある
程度任意の共鳴周波数を設定することが可能であるた
め、広い周波数領域にわたり吸音効果を発揮することが
できるといった特徴をも有している。
【0010】さらに、吸音材の材料の一つとして段ボー
ル紙を使用する事から、資源のリサイクルの観点からも
有用である。
【0011】
【発明の構成】以下、本発明の構成について、より具体
的に説明する。
【0012】本発明における吸音材の材料としては、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの高分子
材料、紙、金属箔などからなる段ボール状部材、片面又
は両面から独立気泡体をはさんだシート、フィルム状部
材、細長いストロー状部材を多数連結した物、例えば簾
状にストロー状部材を連結した物が使用できる。
【0013】また、ストロー状部材の少なくとも一部を
ベローズ状またはらせん状に加工し、この部分を任意に
曲げ加工することにより、音波の経路を伸ばし、空気の
流動抵抗を増加させることにより吸音効果を高めること
が可能である。
【0014】さらに、片面又は両面から多数の独立気泡
体をはさんだシート、フィルム状部材は、その断面は1
本の細長い貫通穴ではなく、多数の独立気泡部分とそれ
に密接するフィルムやシートが空気の流動に対して抵抗
となるため、本発明では好適に使用できる。
【0015】なお、上記の貫通穴または開口部を有する
材料は繊維状物や連続気泡体と交互に積層する、あるい
はこれを周囲に巻き付けたものであってもよい。
【0016】ここで、本発明で言う繊維状部材とは、労
働安全衛生上無機質系は好ましくなく、有機質系の素材
である。
【0017】貫通穴または開口部を有する材料は、少な
くともその一部を粘弾性体を介して連結させることによ
り、空気の流動に基づく吸音材の振動を抑制し、振動し
ても早く減衰する作用が生じる。これは貫通穴または開
口部を構成する材料が拘束材として働き、粘弾性体が制
振材として作用するために拘束型制振効果が生じるため
である。その結果、吸音効果を高めることが可能とな
る。
【0018】また、貫通穴または開口部内部に有機質繊
維、連続気泡体などの空気流動の抵抗となる物質を介在
させたり、部分的に座屈、縮径を行って空気流動抵抗を
増加させることにより、吸音特性を任意に変化させるこ
とが可能である。
【0019】さらに貫通穴または開口部の前または後の
少なくとも一方に有機質繊維部材、シート状部材、フィ
ルム状部材、連続気泡体または多孔質材等を設ける、ま
たは吸音材を空気層を介して複数層設ける、さらに有機
質繊維部材、シート状部材、フィルム状部材、連続気泡
体または多孔質材と空気層を組合わせて設けることも可
能である。
【0020】貫通穴または開口部の形状は丸、四角また
はその他の不定形のいずれでも良く、特に限定はない。
また音源側に向ける側の形状としては、貫通穴または開
口部の軸方向の断面を段状、凹状または凸状とすること
により、一層低周波側の吸音性能を高めることが可能で
ある。
【0021】本発明による吸音材の作製および連結に用
いる粘弾性体は、常温架橋性であることが望ましい。こ
れは、常温架橋性を有する粘弾性体は、架橋反応前は液
状であるため、吸音材作製には好適であること、また季
節などにかかわりなく一定の条件で反応を行えること、
および溶剤を使用しないため火災などの問題が生じない
ことによる。
【0022】また、この粘弾性体は、圧縮応力が1Kgf/
cm2 のとき変位量が5%以上で、かつ60℃以下で流動し
ないことが望ましい。これは、変位量が5%以下では振
動防止効果が小さいこと、また夏期などに周囲の温度が
高温になった場合、流動して吸音材の本来の形状や配置
が保てなくなることを防ぐためである。
【0023】さらに、本発明においては、この粘弾性体
は目的等に応じて発泡性、非発泡性のいずれも利用する
ことが可能である。すなわち、高周波音の吸音効果を高
め、軽量化を必要とする場合には、発泡性の粘弾性体が
望ましく、また低周波音の吸音効果を高め、かつ成形の
し易さを必要とする場合には、非発泡性の粘弾性体が望
ましい。
【0024】具体的には、再生ブチルゴム、ポリイソブ
チレン、ポリブタジエンなどを単独または併用し、これ
と硬化剤、可塑剤などを添加したものを使用することが
望ましい。
【0025】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。
【0026】図1は、本発明による吸音材を、建築物の
床板2と天井板3との間の空間に設置した第1の実施例
を示すものである。吸音材4により、床板2で発生した
音が天井板3に伝播するのを防止する。吸音材4は、支
持板5上に設置され、支持板5は図示しない支持部材に
より、床板2と天井板3との間で支持される。さらに、
吸音材4上に遮音性を有するシート状部材6を設置して
いる。
【0027】図2は、図1に示した実施例に用いられる
吸音材を示すものである。段ボール紙8を段状に、か
つ、貫通穴9が上向きとなるように粘着材(図示せず)
を用いて貼り合わせ、両端を高く、中央を低くして谷状
としている。
【0028】図3は、図1および図2に示した吸音材の
第2の実施例を示すものである。図2に示した吸音材
を、谷状部が交互になるように、粘弾性体(図示せず)
を介して連結したものである。
【0029】図4は、図3に示す吸音材を、床板と天井
との間の支持板12上に設置した状態を示すものである。
吸音材13の段ボールは粘着材(図示せず)を用いて貼り
合わされ、また各吸音材は粘弾性体(図示せず)を介し
て連結されている。
【0030】図5は、図1および図2に示した吸音材の
第3の実施例を示すものである。吸音材の支持板として
金網15を用い、金網15上に不織布16を設置し、その上に
吸音材17を配置する。吸音材は、図5(b) に示すように
中央部を座屈させている。この座屈部18により吸音材内
部を流れる空気の抵抗を増加させることとなる。
【0031】図6は、本発明による第4の実施例におけ
る吸音材の構成部材を示すものである。片面段ボール紙
20の凹部に常温架橋型粘弾性体21を充填し、その上にフ
ィルム22を設置する。さらにフィルム22上に不織布23を
設置している。本吸音材においては、段ボール紙と粘弾
性体21およびフィルム22によって拘束型制振構造をなし
ている。
【0032】図7は、図6に示した部材を複数貼り合わ
せた吸音材を示すものである。各部材は粘着材(図示せ
ず)を介して連結され、直方体型に形成されている。
【0033】図8は、図6および図7に示した部材を用
いた、本発明の第5の実施例を示すものである。図7に
示した吸音材の外周を、連続気泡型スポンジシート26で
囲んだ構造となっている。
【0034】図9は、本発明による吸音材の第6の実施
例に係る構成部材27を示すものである。フィルム28上に
多数のストロー状部材29を配置し、それらを常温架橋型
粘弾性体30により連結した簾状部材27としている。
【0035】図10は、本発明による吸音材の第6の実施
例31を示すものである。図9に示した簾状部材27をらせ
ん状に巻き、その外周にフェルト32を巻き付けたものと
なっている。この簾状部材27をらせん状に巻いたことに
より、下部に空間33が形成される。図10(b) は、その断
面図を示す。本実施例においては、凸状となっている側
を上階の床板方向に向けて配置する。
【0036】図11は、本発明による吸音材の第7の実施
例を示すものである。図9および図10に示した吸音材
を、支持板36上に敷いたフェルト37上に多数配置し、さ
らに吸音材上にフェルト38を設置している。また各吸音
材35は、格子状に形成した支持枠39によって側面を支持
されている。
【0037】図12は、本発明による吸音材の第8の実施
例に係る構成部材を示すものである。フィルム41と、凸
部42を有するフィルム43とを貼り合わせ、独立気泡体44
を形成している。
【0038】図13は、本発明による吸音材の第8の実施
例の断面図を示すものである。図12に示す、独立気泡体
からなる多数の凸部を有するシート状部材の上に不織布
46を設置し、さらにゴムシート47を重ねる。これを、実
施例6および実施例7と同様にらせん状に巻き、凸状の
部分を上階の床板方向に向けて設置する。このシートを
らせん状に巻いたことにより、その下部には空間38が形
成される。
【0039】図14は、本発明による吸音材の第9の実施
例に係る構成部材を示すものである。ストロー状部材50
の中央部をベローズ状に加工し、ベローズ部51を曲げて
U字型に加工する。これを多数束ねて部材52を形成す
る。
【0040】図15は、本発明による吸音材の第9の実施
例の断面図を示すものである。図14に示したストロー状
部材50を加工して形成した構成部材52を、常温架橋粘弾
性体53、54で固定し、周囲に不織布55を巻き付け、紐状
部材56で周囲を結束している。本実施例においては、ス
トロー状部材の貫通穴側を上階の床板側に向けて設置す
る。
【0041】図16は、本発明による吸音材の第10の実施
例の平面図を示すものである。プラスチック製段ボール
58を、外側が高く、中心部が低くなるように段状に貼り
合わせている。
【0042】図17は、図16に示した吸音材を床板と天井
板との間に設置した状態を示す断面図である。支持板60
上に吸音材61を段状となる側を上階の床板側に向けて多
数配置し、その上にフェルト62を設置している。
【0043】図18は、本発明による吸音材の第11の実施
例63を示すものである。大きさの等しい複数の段ボール
材64を貼り合わせて直方体とし、外周部に粘弾性体65を
上下2か所において囲着している。
【0044】図19は、図18に示した吸音材を多数連結し
た状態を示すものである。各吸音材を上下方向に交互に
ずらせて連結している。本実施例においては、支持板状
にこの連結された吸音材を設置する。
【0045】図20は、本発明の各実施例に係る供試体に
対する吸音率測定を実施した残響室68の平面図を示すも
のである。設置部69に各供試体を設置し、測定を行う。
【0046】図21は、本発明の各実施例に係る供試体に
対する床衝撃音測定の際の、供試体の設置部位を示した
ものである。上階の床板71と下階の天井板72との間に支
持部材73を設置し、その上に吸音材74を設置する。床板
71上に設けたタッピングマシン75により床衝撃音を発生
させる。
【0047】図22は、床衝撃音測定に用いた測定装置の
概略を示すものである。精密騒音計78に接続されたマイ
クロホン77で受信した音を周波数分析器79で解析を行
い、記録計80で解析結果を記録する。
【0048】以下、本発明の各実施例に係る供試体およ
びこれを用いた測定結果について詳述する。
【0049】1.供試体の作製 ユニットA:厚さ5mm、長さ300mm の段ボール紙を、高
さ25mm間隔でブチルコム系粘着材で貼り付け、図2に示
す吸音材を作製した。その後吸音材を厚さ1mmのブチル
ゴムシーラー材を用いて連結し、図3に示すユニットA
を作製した。測定に際しては、ユニットAを図4に示す
ように凹凸面を床板に向けて設置した。
【0050】ユニットB:図2に示す吸音材を長さ方向
に圧縮し、中央部を座屈させた後、上部の凹凸が同方向
となるように連結した。これを図5に示すように金網上
に敷いた厚さ8mmの不織布上に設置し、ユニットBを作
製した。
【0051】ユニットC:図6に示すように厚さ5mmの
片面ダンボール紙の凹部に常温架橋粘弾性体を形成し、
その上に厚さ2mmの片面フィルム付不織布をフィルム面
と粘弾性体が密着する様に貼り合わせ、長さ300mm に切
断した後、ブチルゴム粘着剤を用いて連結し、図7に示
す吸音材を作製した。これを前記各実施例と同様に複数
連結してユニットCを作製した。
【0052】ユニットD:図8に示すように、ユニット
Cと同様の吸音材の周囲を厚さ3mmの連続気泡型スポン
ジシートで囲着し、これをブチルゴム粘着剤で連結して
ユニットDを作製した。
【0053】ユニットE:直径3mmのポリプロピレン製
のストロー状部材を厚さ20μm のポリエステルフィルム
上に並べ、その上から常温反応型発泡粘弾性体を幅4cm
で塗布して図9に示す構成部材を作製し、これを長さ20
cmに切断した後らせん状に巻き、さらにその周囲に厚さ
5mmのフェルトを巻き付けて吸音材を作製した。この吸
音材を凸面が上となるように複数配置し、ユニットEを
作製した。
【0054】ユニットF:ユニットEと同様のユニット
の上下に厚さ5mmのフェルトを全面に敷き、図11に示す
ユニットFを作製した。
【0055】ユニットG:平面フィルムと、凹凸を有す
るフィルムとを貼り合わせ、図12に示す独立気泡体を有
するシート状部材を作製する。このシートの凹凸を有す
る側の面に厚さ4mmの不織布を設置し、さらにその上に
1mmの非加硫ブチルゴムシートを重ねる。これをユニッ
トEと同様に長さ20cmに切断した後らせん状に巻き、図
13に示す吸音材を作製した。これを凸面が上となるよう
に複数配置し、ユニットGを作製した。
【0056】ユニットH:直径5mm、長さ30cmのポリプ
ロピレン製ストロー状部材の中央部6cmをベローズ状に
加工し、ベローズ部を曲げてU字状として図14に示す部
材を作製した。この部材のベローズ部と開口部をそれぞ
れ常温架橋型粘弾性体で連結し、その後周囲に厚さ2mm
の不織布を巻き付けて図15に示す吸音材を作製した。こ
れを複数連結してユニットHを作製した。
【0057】ユニットI:厚さ5mm、長さ150mm のポリ
プロピレン製プラスチック段ボールを、高さ25mm間隔で
中心部が凹面となるように段状にブチルゴム粘着材で貼
り合わせて吸音材を作製した。これを厚さ1mmのブチル
ゴムシートを用いて連結し、凹面側にもブチルゴムシー
トを設置した。その後厚さ10mmのフェルト上に凹面側が
上になるように設置し、図17に示すユニットIを作製し
た。
【0058】ユニットJ:厚さ5mm×幅150mm ×長さ10
0mm の段ボールを複数貼り合わせて直方体を形成し、そ
の外周の上部及び下部に厚さ0.5mm ×幅30mmのブチルゴ
ム粘弾性体を巻き付け、図18に示す吸音材Gを作製し
た。これを貫通穴の方向に高さ50mmづつ交互にずらせて
連結し、図19に示すユニットJを作製した。
【0059】2.試験方法 残響室法吸音率の測定 JIS-A-1409に示す方法により、大きさ 3.5m× 2.5mの
供試体を用い、図20に示すように残響室内に各供試体を
設置して測定を行った。 床衝撃音の測定 JIS-A-1418に示す方法により、床板と天井の間の空間に
厚さ12mmの石膏ボードを取り付け、各供試体を石膏ボー
ドの上に設置して試験を行った。図21および図22に供試
体の設置状況及び測定装置をそれぞれ示した。衝撃音は
タッピングマシンにより与えた。 かゆみ発生の有無 上記の試験を3名の作業者によって行い、作業者全員に
かゆみが発生しなかったものを「無し」、作業者全員に
かゆみが発生したものを「有り」とした。
【0060】上記の各測定結果を表に示す。なお、本表
における比較例とは、厚さ50mmのグラスウール24K を吸
音材の供試体として用いた場合を示す。また、各ユニッ
トの吸音率の値は、比較例に対する改善量として示し
た。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】以下試験結果に基づき、本発明の効果を
説明する。
【0063】ユニットAはダンボール紙の開口部を上下
方向として、垂直断面が凹面となる吸音材を、隣合う吸
音材の谷部が直交するように交互に連結した例である。
吸音率は低周波側でも 0.7程度であり、全周波数領域に
おいて 0.8程度と良好な吸音効果が得られている。また
床衝撃音も、比較例であるグラスウールに対して 125Hz
以上では大きな改善効果が得られている。また、かゆみ
は生じていない。
【0064】ユニットBは、ユニットAと同様の吸音材
を長さ方向に圧縮して中央部を座屈させたものを厚さ8
mmの不織布の上に設置し、これを金網によって支持した
ものである。本ユニットは低周波における吸音効果が高
く、全体でも 0.8以上が保たれている。床衝撃音の改善
効果も大きく1ランク以上の改善が可能であることがわ
かる。また、かゆみは生じていない。
【0065】ユニットCは波形紙と常温架橋粘弾性体お
よびフィルムにより拘束型制振構造となっており、かつ
有機質繊維を介在させた積層物となっている。吸音率に
ついては、いずれの周波数においてもほぼ 0.7以上が得
られ、これも広い周波数領域で吸音効果が高いことがわ
かる。床衝撃音も63Hz以外は1ランク以上改善できるこ
とがわかる。また、かゆみは生じていない。
【0066】ユニットDは、ユニットCで用いた吸音材
の周囲を連続気泡スポンジで囲着したものである。本ユ
ニットも広い周波数領域で吸音効果が高く、床衝撃音改
善効果も63Hz以外では高いことを示している。また、か
ゆみは生じていない。
【0067】ユニットEは、簾状に並べたポリプロピレ
ン製パイプ状部材を、常温反応型発泡粘弾性体をを用い
て連結し、これを中心部が凸面となるようにらせん状に
巻き、更に外周にフェルトを囲着したものである。 125
Hz〜 250Hzでは吸音効果がやや低下するものの、いずれ
も0.55以上となり、充分吸音効果がある。また 315Hz以
上では全ての周波数で 0.8以上となっており、良好であ
る。床衝撃音も 250Hz以上では1ランク以上の改善がで
きている。また、かゆみは生じていない。
【0068】ユニットFは、ユニットEと同様の吸音材
の上下にフェルトを敷いた場合である。吸音率の効果は
ユニットEと同様の傾向が見られるが、効果は更に高く
なっている。床衝撃音の改善効果も 250Hz以上で1ラン
ク以上であり、 500Hzでは特に優れた効果を示してい
る。かゆみは生じていない。
【0069】ユニットGは、独立した気泡体を有するシ
ートと不織布およびフェルトを積層し、ユニットEおよ
びユニットFと同様にらせん状に巻いた吸音材であり、
本ユニットはあらゆる方向に連通穴が形成されている。
本ユニットにおいては、 125Hz〜 250Hzでは吸音効果が
やや低下しているものの、吸音効果は 0.4以上となり充
分吸音効果がある。また 315Hz以上ではほぼ 0.8以上の
吸音率となっている。床衝撃音も 250Hz以上でほぼ1ラ
ンク以上の改善が見られる。本ユニットにおいてもかゆ
みは生じていない。
【0070】ユニットHは、連通穴の開口部が音源側と
反対方向には無い例であり、ストロー状部材にベローズ
部を設け、ベローズ部で曲げ加工を行ってU字状部材を
形成し、ベローズ部と上部で多数の部材を常温反応型粘
弾性体で連結し、高速型制振構造体としたものに不織布
を囲着している。本ユニットは吸音率が全周波数域にお
いて 0.8以上となり、吸音効果が高いことがわかる。床
衝撃音改善効果も高く、63Hz以外では1ランク以上改善
できることがわかる。本ユニットにおいてもかゆみは生
じていない。
【0071】ユニットIは、プラスチック段ボール部材
を用いて、中心部を低く、四辺方向に25mm間隔で段状に
四辺を徐々に高くするように形成した吸音材の上面と側
面にゴムシートを貼り、フェルト上にゴムシート面を上
にしたものである。本ユニットにおいても吸音率は低周
波から高周波まで良好であり、床衝撃音も全周波数領域
で1ランク以上の改善ができることを示している。ま
た、かゆみは生じていない。
【0072】ユニットJは、高さの等しい複数の段ボー
ルを貼合わせ、その外周をブチルゴム粘弾性体で囲着
し、これを連通穴方向に50mmづつ交互にずらせて連結
し、下部に空間を持たせたものである。本ユニットは、
特に低周波側での吸音効果が高く、全周波領域で 0.8以
上の吸音率が得られた。床衝撃音の改善効果も高く、い
ずれの周波数においても1ランク以上改善できることが
わかった。また、かゆみは生じていない。
【0073】比較例は、吸音材として、厚さ50mmの 24K
グラスウールを用いた例である。 200Hz以下では吸音効
果が低く 0.5以下である。特に 125Hzでは効果は期待で
きないことがわかる。また、無機質繊維であるため、作
業時のかゆみの発生は避けられなかった。
【0074】上記より本発明による吸音材は、いずれも
広い周波数領域にわたって大きな吸音効果が認められ、
現在主として使用されている無機質繊維系吸音材に代わ
って使用することが可能であり、かつ、吸音性能も上回
るものであり、作業時のかゆみも生じないことが確認さ
れた。また、廃棄物として処理されているダンボール紙
を有効利用することができ、しかも箱形状に折れ曲がり
座屈したものであっても充分用いることができることも
判明した。
【0075】さらに表面を凹凸状に形成することによ
り、特に低周波側において有効な吸音効果が発現され、
またユニットGに示すように空気通過経路長を伸ばすこ
とにより、吸音材の厚みを薄くしても吸音効果の高いも
のが得られることが判った。
【0076】従って、本発明は様々な分野において騒音
の低減に有効であり、かつ廃棄物の有効利用としての可
能性も見出すことができた。そのため、本発明は各分野
での騒音環境の改善のみならず、資源有効利用の観点に
おいても、その貢献度が大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る吸音材を、建築物
の床と天井との間の空間に設置した状態を示す断面図で
ある。
【図2】本発明の第2の実施例に係る、段ボール紙を貼
り合わせて形成した吸音材の斜視図である。
【図3】図2に示す吸音材を、隣合う吸音材の谷状部が
交互になる様に連結した状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す吸音材を、支持部材上に設置した状
態を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る、図2に示す吸音
材を中央に座屈部を設け、これを支持部材上に設置した
ことを示す断面図である。
【図6】本発明の第4および第5の実施例に係る吸音材
の構成部材を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例に係る吸音材の斜視図で
ある。
【図8】本発明の第5の実施例に係る吸音材の斜視図で
ある。
【図9】本発明の第6および第7の実施例に係る吸音材
の構成部材の斜視図である。
【図10】本発明の第6の実施例に係る吸音材の外観図
および断面図である。
【図11】本発明の第7の実施例に係る吸音材を複数設
置した状態を示す図である。
【図12】本発明の第8の実施例に係る吸音材の構成部
材の斜視図である。
【図13】本発明の第8の実施例に係る吸音材の断面図
である。
【図14】本発明の第9の実施例に係る吸音材の構成部
材の斜視図である。
【図15】本発明の第9の実施例に係る吸音材の断面図
である。
【図16】本発明の第10の実施例に係る吸音材を上から
見た図である。
【図17】本発明の第10の実施例に係る吸音材を、支持
部材上に設置したことを示す断面図である。
【図18】本発明の第11の実施例に係る吸音材の斜視図
である。
【図19】本発明の第11の実施例に係る吸音材を複数連
結した状態を示す斜視図である。
【図20】本発明の各実施例に係る供試体の吸音率測定
を実施した残響室内での吸音材の設置部位を示した図で
ある。
【図21】本発明の各実施例に係る供試体の床衝撃音測
定時の吸音材の設置部位を示した図である。
【図22】床衝撃音の測定装置の概略図である。
【符号の説明】
2,69,71 床版 3,72 天井板 4,7,13,17,24,25,31,35,45,52,57,61,6
6,74 吸音材 5,12,36,60,73 支持板 6 シート状部材 8,64 段ボール紙 9 貫通穴 15 金網 16,23,46,55 不織布 18 座屈部 20 片面段ボール紙 21,30,53,54 常温架橋型粘弾性体 22,28 フィルム 26 連続気泡型スポンジシート 27 簾状部材 28,41,43 フィルム状部材 29,50 ストロー状部材 32,37,38,65 フェルト 33,48 空間 39 支持枠 42 凸部 44 独立気泡体 47 ゴムシート 51 ベローズ部 56 紐状部材 58 プラスチック段ボール 65 粘弾性体 68 残響室 69 設置部 75 タッピングマシン 77 マイクロホン 78 精密騒音計 79 周波数分析器 80 記録計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G10K 11/16 G10K 11/16 A 11/162 D (56)参考文献 特開 平5−19774(JP,A) 特開 平2−276629(JP,A) 特開 昭57−92240(JP,A) 実開 昭49−88701(JP,U) 実開 昭57−189481(JP,U) 実開 昭52−24310(JP,U) 実開 昭49−146715(JP,U) 実開 平5−35912(JP,U) 実開 平1−173212(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E04B 1/86 B32B 3/28 B32B 3/30 B32B 7/02 B32B 29/08 G10K 11/16 G10K 11/162

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1枚のフィルムまたはシート
    と、波状または折板状のフィルムまたはシートとを貼り
    合わせた段ボール状部材を複数貼り合わせて、貫通穴ま
    たは開口部を有するように形成し、かつ、この貫通穴ま
    たは開口部を音源に向けて配置することを特徴とする吸
    音材。
  2. 【請求項2】 フィルムまたはシートと、一方の面に多
    数の凸部を形成したフィルムまたはシートとを貼り合わ
    せた、多数の独立気泡体を有するシート状部材を重ね合
    わせ、またはらせん状に巻いて、貫通穴または開口部を
    有するように形成し、かつ、この貫通穴または開口部を
    音源に向けて配置することを特徴とする吸音材。
  3. 【請求項3】 フィルムまたはシートの一方の表面に、
    ゴムまたは発泡体からなる帯状の部材を任意の間隔で貼
    り付けたシート状部材を重ね合わせ、またはらせん状に
    巻いて、貫通穴または開口部を有するように形成し、か
    つ、この貫通穴または開口部を音源に向けて配置するこ
    とを特徴とする吸音材。
  4. 【請求項4】 貫通穴を有するストロー状部材を多数結
    束または平面状に連結した部材を重ね合わせ、またはら
    せん状に巻いて形成し、かつ、この貫通穴を音源に向け
    て配置することを特徴とする吸音材。
  5. 【請求項5】 ストロー状部材の一部をベローズ状に加
    工し、このベローズ部を曲げ加工することにより音伝播
    行路長さを長くした部材を多数結束または連結して形成
    することを特徴とする吸音材。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれか1項に
    記載の吸音材において、部材の少なくとも一部を粘弾性
    体により連結したことを特徴とする吸音材。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれか1項に
    記載の吸音材において、貫通穴または開口部の少なくと
    も一部を、充填物、座屈または縮径により空気流動抵抗
    を増加させることを特徴とする吸音材。
  8. 【請求項8】 請求項1から請求項7のいずれか1項に
    記載の吸音材において、構成部材の片面に有機質繊維ま
    たは連続気泡体からなるシート状部材を設けた後これを
    積層したことを特徴とする吸音材。
  9. 【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれか1項に
    記載の吸音材において、その外周の少なくとも一部に、
    貫通穴または開口部に平行に有機質繊維、連続気泡体ま
    たは粘弾性体を設けたことを特徴とする吸音材。
  10. 【請求項10】 請求項1から請求項9のいずれか1項
    に記載の吸音材において、貫通穴または開口部に対し垂
    直方向の少なくとも片側に、有機質繊維、発泡体、フィ
    ルム、シートまたは多孔質材を設けたことを特徴とする
    吸音材。
  11. 【請求項11】 請求項1から請求項10のいずれか1
    項に記載の吸音材において、背面に空気層を設けたこと
    を特徴とする吸音材。
  12. 【請求項12】 請求項1から請求項11のいずれか1
    項に記載の吸音材において、多数の部材を層状に設けた
    ことを特徴とする吸音材。
  13. 【請求項13】 請求項1から請求項12のいずれか1
    項に記載の吸音材において、部材を貫通穴または開口部
    が上下方向となるように段状、凹面状または凸面状に連
    結し、この面を音源側に向けて配置したことを特徴とす
    る吸音材。
  14. 【請求項14】 請求項6または請求項9記載の吸音材
    において、前記粘弾性体が常温架橋性を有し、圧縮応力
    が1Kg/cmのとき変位量が5%以上であって、かつ60
    ℃以下で流動しないことを特徴とする吸音材。
  15. 【請求項15】 請求項1記載の吸音材(A) 、請求項2
    記載の吸音材(B) 、請求項3記載の吸音材(C) 、請求項
    4記載の吸音材(D) および請求項5記載の吸音材(E) か
    ら選ばれた1つまたは複数の吸音材を単独または併用し
    て重ね合わせ、またはらせん状に巻いて、貫通穴または
    開口部を有するように形成し、かつ、この貫通穴または
    開口部を音源に向けて配置することを特徴とする吸音
    材。
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