JP3059630B2 - 液晶表示パネル及びその製造方法 - Google Patents

液晶表示パネル及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液晶の電気光学特性を利
用した液晶表示パネルとその製造方法に関し、特に液晶
表示パネルの視野角拡大と液晶分子の配向に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶の電気光学特性を利用した液
晶表示パネルは、大画面化、大容量化によりOA機器へ
の応用が盛んに進められている。現在一般に実用化され
ている液晶表示パネルの動作モードとして、2枚のガラ
ス基板間で液晶分子が90゜ねじれた配向状態を呈する
ツイステッドネマティック(TN)型、180゜〜27
0゜の捻れた配向状態を呈するスーパーツイステッドネ
マティック(STN)型がある。TN型は主としてアク
ティブマトリックス型液晶表示パネルに、STN型は単
純マトリックス型液晶表示パネルに用いられている。以
下図面を用いて説明する。
【0003】アクティブマトリックス型液晶表示パネル
または小型サイズの液晶表示パネルに用いられるTN型
の場合、ガラス基板界面において液晶分子はガラス基板
に対してあるプレチルト角をもって一方向にかつ均一に
配向し、上下のガラス基板間で90゜捻れた状態を呈し
ている。90゜捻れ配向状態は、一般にガラス基板上に
形成されたポリイミド薄膜からなる配向膜をレーヨン布
等を用いて1方向にラビング処理し、上下基板間でその
方向が直交するよう配置することにより得られる。たと
えば図6に示す様にTN型液晶パネルに電圧を印加する
と、90゜捻れていた液晶分子が、閾(しきい)値電圧
以上で応答し始め、捻れ配向状態が解けてスプレイ配向
状態になり、液晶分子は分子長軸がガラス基板平面に対
して立ち上がった状態になる。いま基板法線(Z軸)に
対してθ傾斜した位置で方位角φを変化させながら液晶
分子を観察した場合、液晶分子の分子長軸の向きは方位
角方向では一様でない。このため方位角方向により液晶
分子の見かけの屈折率異方性(Δn)が変化することに
なり、液晶層の厚み(d)との積である複屈折量(Δn
d)が変化する。従って上下ガラス基板外面に吸収軸が
ラビング方向に直交するように偏光板を配置し、−Z軸
方向から光を入射した場合、方位角方向の変化に伴い光
の透過強度が異なり、視野角の非対称性が発生する。こ
の視野角の非対称性は中間調表示の場合特に問題にな
り、視野角方向によりコントラスト比が極端に低下した
り、または表示画像が反転する等の表示品位の低下を招
く。このためTN型液晶表示パネルでは、近年視野角の
拡大を図る取り組みが盛んに行われている。1例として
TN型液晶表示パネルの画素を2つの配向状態の異なる
領域に分割して視野角のTN拡大を図る方式(例えばケ
・タカトリ,ケ・スミヨシ,ワイ・ヒライ,エス・カネ
コ:ジャパン ディスプレイ ´92,591頁,1992年;K.T
akatori,K.Sumiyoshi,Y.Hirai,S.Kaneko:JAPAN DISPLAY
´92,PP.591,(1992) )が提案されている。またより工
程を簡素化して、視野角を拡大するアモルファス配向T
N方式が提案されている(ワイ・トコ,ティー・スギヤ
マ,ケー・カトー,ワイ・イイムラ,エス・コバヤシ:
エスアイディー 93 ダイジェスト,622 頁,1993年;
Y.Toko,T.Sugiyama,K.Katoh,Y.Iimura,S.Kobayashi:SID
93DIGEST,PP.622,(1993))。この方式はラビング処理
を施さずに液晶分子をランダムに配向させることで配向
状態の異なる領域を多数形成し、これにより視野角の拡
大を図るものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の1画素の配向領域を2分割する方式では、画素内で
液晶分子の配向方向を異ならせる為に、事前に配向膜に
ラビング処理を施した後に、フォトレジストの露光,エ
ッチングにより配向膜上にマスク領域を作製し、再度逆
方向にラビングした後、フォトレジストを剥離する工程
が必要になる。この場合、配向膜にフォトレジストの塗
布,現像,エッチング等の処理を施す過程で、イオン性
不純物の吸着などが発生し、配向膜の電気特性を大きく
劣化させることになる。また工程増による大幅なコスト
アップを招くという問題がある。
【0005】一方アモルファス配向TN方式では、液晶
分子は基板界面からの配向規制力を受けない為に任意な
方向に連続的に配向する。このため、画素間で液晶分子
の配向方向が異なったり、または1画素以上に連続的に
配向する領域が出現し、画素間での視野角方向とそのサ
イズの不規則性により、電圧印加時にザラツキ感が発生
するという問題がある。
【0006】本発明は上記課題を解決し、配向膜の特性
を劣化させることなく視野角の拡大を図ると共にザラツ
キ感を低減させる液晶表示パネル及びその製造方法を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の第1番目の液晶表示パネルは、一対の基板
間に液晶を挟持してなる液晶表示パネルにおいて、少な
くとも一方の基板上には、配向膜として形状記憶効果を
有する熱可塑性ポリマー薄膜とポリイミド薄膜が1画素
内でそれぞれ液晶物質と接触する状態で形成されている
ことを特徴とする。
【0008】次に本発明の第2番目の液晶表示パネル
は、一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶表示パネル
において、液晶層は正の誘電異方性を有するカイラルネ
マチック相であり、画素を構成する少なくとも一方の基
板上に形成された配向膜が、ポリイミドからなる一軸延
伸領域と形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーからな
る非延伸領域を持ち、前記画素内には液晶分子の配列方
向の異なるツイスト配向領域が複数存在することを特徴
とする。
【0009】次に本発明の第3番目の液晶表示パネル
は、一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶表示パネル
において、液晶層が正の誘電異方性を有するカイラルネ
マチック相であり、画素を構成する一方の基板間に形成
された配向膜が、ポリイミドからなる一軸延伸領域と形
状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーからなる非延伸領
域を有し、他方の基板に形成された配向膜は一軸延伸領
域を有し、前記一対の基板間で一軸延伸方向が直交し、
かつ前記一対の基板間で一軸延伸領域上で発現する液晶
分子のプレチルト角が異なり、前記画素内で部分的にス
プレイ・ツイスト配向した領域とツイスト配向した領域
が存在することを特徴とする。
【0010】前記本発明の第1〜3番目の液晶表示パネ
ルの構成においては、形状記憶効果を有する熱可塑性ポ
リマーが、ポリウレタンであることが好ましい。また前
記本発明の第1〜3番目の液晶表示パネルの構成におい
ては、形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーとポリイ
ミドが、基板上に分離形成または積層により形成されて
いることが好ましい。
【0011】また前記本発明の第1〜3番目の液晶表示
パネルの構成においては、一方の基板上の配向膜は、形
状記憶効果を有する熱可塑性ポリマー薄膜とポリイミド
薄膜が1画素内でそれぞれ液晶物質と接触する状態で形
成されており、かつ他方の基板上の配向膜は前記一方の
基板上の配向膜と実質的に同一かまたは均一組成の薄膜
であることが好ましい。
【0012】また前記本発明の第2〜3番目の液晶表示
パネルの構成においては、ポリイミドはラビングにより
一軸延伸されていることが好ましい。また前記本発明の
第2〜3番目の液晶表示パネルの構成においては、一対
の基板間でツイスト配向又はスプレイ・ツイスト配向し
た領域の液晶分子の捻れ角が約90度であることが好ま
しい。
【0013】次に本発明の液晶表示パネルの製造方法
は、一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶表示パネル
を製造する方法であって、少なくとも片側の基板上に配
向膜として、ポリイミド膜とポリウレタン膜を1画素内
で分離した状態で形成し、ラビングにより一軸延伸した
後、前記ポリウレタン膜のガラス転移点以上の温度に加
熱し、前記配向膜上に一軸延伸領域と非延伸領域を形成
することを特徴とする。
【0014】
【作用】前記本発明の第1番目の液晶表示パネルの構成
によれば、少なくとも一方の基板上には、配向膜として
形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマー薄膜とポリイミ
ド薄膜が1画素内でそれぞれ液晶物質と接触する状態で
形成されていることにより、配向膜の特性を劣化させる
ことなく視野角の拡大を図ると共にザラツキ感を低減さ
せる液晶表示パネルを実現できる。すなわち、前記少な
くとも2種類の配向膜を1画素内に形成することによ
り、画素内での配向を分割し、複数の配向状態の異なる
領域を形成することが可能になる。これにより、視野角
の拡大を図ると共にザラツキ感を低減させることができ
る。
【0015】次に前記本発明の第2番目の液晶表示パネ
ルの構成によれば、液晶層は正の誘電異方性を有するカ
イラルネマチック相であり、画素を構成する少なくとも
一方の基板上に形成された配向膜が、ポリイミドからな
る一軸延伸領域と形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマ
ーからなる非延伸領域を持ち、前記画素内には液晶分子
の配列方向の異なるツイスト配向領域が複数存在するこ
とにより、前記同様に配向膜の特性を劣化させることな
く視野角の拡大を図ると共にザラツキ感を低減させる液
晶表示パネルを実現できる。すなわち、液晶層が正の誘
電異方性を有するカイラルネマチック相であり、画素内
の少なくとも一方の基板上にはポリイミドからなる一軸
延伸領域と形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーから
なる非延伸領域をもつ配向膜を用いることによって、画
素内で配向方向の異なるツイスト配向領域を複数存在さ
せることができる。
【0016】次に前記本発明の第3番目の液晶表示パネ
ルの構成によれば、液晶層が正の誘電異方性を有するカ
イラルネマチック相であり、画素を構成する一方の基板
間に形成された配向膜が、ポリイミドからなる一軸延伸
領域と形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーからなる
非延伸領域を有し、他方の基板に形成された配向膜は一
軸延伸領域を有し、前記一対の基板間で一軸延伸方向が
直交し、かつ前記一対の基板間で一軸延伸領域上で発現
する液晶分子のプレチルト角が異なり、前記画素内で部
分的にスプレイ・ツイスト配向した領域とツイスト配向
した領域が存在することにより、前記同様に配向膜の特
性を劣化させることなく視野角の拡大を図ると共にザラ
ツキ感を低減させる液晶表示パネルを実現できる。すな
わち、液晶層が正の誘電異方性を有するカイラルネマチ
ック相であり、画素内の一方の基板上には、第1のポリ
イミドからなる一軸延伸領域と形状記憶効果を有する熱
可塑性ポリマーからなる非延伸領域を持つ配向膜を用
い、他方の基板上には第2のポリイミドからなる一軸延
伸領域を持つ配向膜を用いることにより、前記画素内に
スプレイツイスト配向領域とツイスト配向領域を存在さ
せることができる。
【0017】また、ポリイミドはラビングにより一軸延
伸されているという本発明の好ましい構成によれば、さ
らに容易に視野角の拡大を図ることができる。また、形
状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーとポリイミドが、
基板上に分離形成または積層により形成されているとい
う本発明の好ましい構成によれば、さらに容易に広視野
角の液晶パネルを実現できる。
【0018】また、一方の基板上の配向膜は、形状記憶
効果を有する熱可塑性ポリマー薄膜とポリイミド薄膜が
1画素内でそれぞれ液晶物質と接触する状態で形成され
ており、かつ他方の基板上の配向膜は前記一方の基板上
の配向膜と実質的に同一かまたは均一組成の薄膜である
と、同様に広視野角の液晶パネルを容易に実現できる。
前記において、他方の基板上の配向膜が均一組成の薄膜
である場合としては、例えばポリイミド膜、形状記憶熱
可塑性ポリマー膜、SiO2 の斜方蒸着膜などを使用で
きる。
【0019】また、一対の基板間でツイスト配向又はス
プレイ・ツイスト配向した領域の液晶分子の捻れ角が約
90度であるという本発明の好ましい構成によれば、さ
らに容易に視野角の拡大を図ることができる。
【0020】次に本発明の製造方法の構成によれば、前
記本発明の液晶表示パネルを効率よく合理的に安定して
製造できる。すなわち、ポリイミド配向膜は一軸延伸さ
れた状態にあり、熱可塑性ポリマーからなる配向膜は非
延伸状態にあり、この状態を持つ配向膜を上下の基板間
で組み合わせることにより、画素内に複数の配向状態の
異なる領域を形成させることができる。
【0021】
【実施例】以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に
説明する。本発明は、配向膜材料として形状記憶効果を
有する熱可塑性ポリマーを用いる。熱可塑性ポリマーと
しては例えば特開平2−116102号公報に提案され
ているポリウレタンを使用することができる。この形状
記憶効果を有するウレタン系ポリマーの構造式の一例を
下記式(化1)に示す。
【0022】
【化1】
【0023】ポリウレタンは部分結晶化されており、ガ
ラス転移点(Tg)以上になると分子鎖のミクロブラウ
ン運動によりゴム弾性状態になる。この状態で外力を受
けた場合、分子鎖は外力の方向に容易に配向し、また形
状も変形する。この状態でTg以下の温度に冷却した場
合、分子鎖のミクロブラウン運動が凍結されてプラスチ
ック状態となり、変形が固定され、形状が記憶されるこ
とになる。その後、Tg以上の再加熱により分子鎖のミ
クロブラウン運動が開始され、分子鎖の配向は解かれ、
元の形に復元することになる。
【0024】上記機能を有するポリウレタンとポリイミ
ドを配向膜とし基板上に形成しラビングを施した場合、
ラビングによりポリウレタンとポリイミド双方ともラビ
ングによる外力を受け、ラビング方向に分子鎖が一軸延
伸される。次にポリウレタンのTg以上の温度に基板を
再加熱することにより、ポリウレタンの分子鎖の配向が
解かれ、ポリウレタンは非延伸状態になる。ポリイミド
のTgはポリウレタンのTgよりも遥かに高いので、ポ
リイミドの一軸延伸効果が失われることはない。これに
より、基板に形成された配向膜上に一軸延伸部分と非延
伸部分とを形成することができる。上記配向膜を用いる
ことにより、画素内での配向を容易に分割することが可
能になる。
【0025】本発明の一実施例では、片側の基板に一軸
延伸部分と非延伸部分を持った配向膜を用い、他方の基
板に非延伸部分だけを持つ配向膜を用いる。画素内で一
軸延伸部分と非延伸部分が対向した領域では、液晶分子
の配列は基板界面の配向規制力となる一軸延伸部分の延
伸方向とカイラルネマチック相の螺旋ピッチ及び捻れ方
向に規定され、一軸延伸方向を固定軸とした約90度捻
れたツイスト配向状態を呈す。一方、非延伸部分同士が
対向した領域では、液晶分子の配列は基板界面の配向規
制力を受けず、カイラルネマチック相の螺旋ピッチと捻
れ方向に規定されたツイスト配向状態を呈する。この場
合、配向方向は基板界面が自由端となるので任意方向を
とり、前記ツイスト配向状態とは異なったツイスト配向
状態が少なくとも1つ以上出現する。このため、画素内
には配向方向の異なるツイスト配向した領域が少なくと
も2つ以上出現し、電圧印加時に画素内の液晶分子の複
屈折量の方位角方向での異方性を緩和する作用を有す
る。従って、基板表面に偏光板をその吸収軸が直交する
ように配置すると、透過光強度の視野角依存が緩和さ
れ、視野角を拡大する作用・効果がある。
【0026】本発明の別の実施例では、片側の基板には
一軸延伸部分と未延伸部分を持った配向膜を用い、他方
の基板には全て一軸延伸された配向膜を用いる。一軸延
伸された部分ではプレチルト角はそれぞれ基板間で異な
る。対向する基板間での一軸延伸方向とカイラルネマチ
ック相の捻れ方向を規定することにより、一軸延伸部分
同士が対向する領域ではスプレイツイスト配向となり、
非延伸部分と一軸延伸部分が対向する領域ではツイスト
配向となる。スプレイツイスト配向領域とツイスト配向
領域では、液晶層ミッドプレインでの液晶分子のチルト
方向が逆になるために、画素が2分割され、電圧印加時
に画素の液晶分子の複屈折量の方位角方向での異方性が
緩和され、視野角を拡大する作用・効果がある。
【0027】以下に本発明の具体的実施例について図面
を参照しながら説明する。 (実施例1)図1は本発明の液晶表示パネルの構成断面
図の一例である。約300μm幅のストライプ状の透明
電極102を有するガラス基板101上に固形分濃度6
重量%のポリイミドワニス(例えばAL−5417:日
本合成ゴム株式会社製)を印刷転写し、150℃で1時
間焼成することによりポリイミド配向膜103を形成し
た。膜厚は約800オングストローム(80nm)程度
であった。次に固形分濃度6重量%のポリウレタン溶液
(例えば、WF009:三菱重工業株式会社製)を凸版
印刷により配向膜103上に部分的に転写し、150℃
で1時間焼成してポリウレタン配向膜104を形成し
た。ポリウレタン配向膜104は、ストライプ状の透明
電極102の中心部に約200μm角の大きさで格子状
に存在している。ポリウレタン配向膜104の膜厚は約
800オングストローム(80nm)程度である。次に
配向膜103、104をレーヨンクロスにより1方向に
ラビングした後、再度150℃で1時間循環恒温槽内で
配向膜103,104を加熱した。ポリウレタン配向膜
104のTgは93℃である。
【0028】対向するガラス基板105上には約300
μm幅のストライプ状の透明電極106が形成されてお
り、その上に上記と同様の方法でポリウレタン配向膜1
07を全面に形成した。ポリウレタン配向膜107には
ラビングは施さなかった。
【0029】次にガラス基板105上またはポリイミド
配向膜107上にプラスチックからなる球状のスペーサ
(例えばミクロパール:積水ファイン株式会社製)を均
一に分散させた。スペーサの球径は5μmである。ガラ
ス基板101の周辺部に熱硬化型のシール材(例えばス
トラクトボンド:三井東圧化学製)を液晶注入口を設け
て印刷形成し、ストライプ状の透明電極102、106
が直交するようにガラス基板101、105を張り合わ
し、所定の温度でシール材を完全硬化させた。
【0030】次に屈折率異方性が0.134であるネマ
チック液晶に右捻れのカイラル物質(例えばR−101
1:メルク製)を添加し、セルギャップdに対してその
自発捻れピッチpの値がd/p=0.25、即ちガラス
基板間で約90゜捻れるように濃度調整した。この様な
条件で作製したカイラルネマチック液晶を40℃に加温
した状態でガラス基板101、105間に真空注入法に
より注入した。カイラルネマチック液晶が完全に充填さ
れた後、液晶表示パネルを徐冷して、液晶注入口を封止
樹脂により封口した。
【0031】このようにして作製した液晶表示パネルの
ガラス基板101,105の表面に偏光板をその偏光軸
が互いに直交するように張り付け、ガラス基板105よ
り光を入射し、ガラス基板101上方より観察した。
【0032】ポリイミド配向膜103とポリウレタン配
向膜107に挟まれた領域では、液晶分子108はポリ
イミド配向膜103の一軸延伸方向(ラビング方向)1
09にアンカリングされ、そこから右捻れで90度回転
した分子配列を持つツイスト配向領域110が観察され
た。一方ポリウレタン配向膜104とポリウレタン配向
膜107に挟まれた領域では、中心部に特異点を持つシ
ュリーレン模様が現れ、シュリーレン模様の観察から特
異点は−2π回転したディスクリネーションであった。
透過率の測定結果から、ディスクリネーション部分でも
基板間で液晶分子が右捻れで90度回転した分子配列を
もつツイスト配向領域111が出現していることが確認
された。ツイスト配向領域110、111とは液晶分子
の配向方向が異なり、1画素が配向分割されていること
が確認された。
【0033】この結果より、一度ラビングによりポリウ
レタン配向膜104に付与された一軸延伸効果がTg以
上の加熱により完全に失われ、非延伸状態になったこと
が確認された。ラビングによる配向規制力が全く存在し
ないために、液晶分子はその自由エネルギーが極小にな
るように配向したものと考えられる。
【0034】図2は1画素内での液晶分子の配向状態を
表したものである。画素の中心部には200μm角の大
きさのポリウレタン配向膜が対向する領域129が存在
している。画素の周辺部にはラビング方向にアンカリン
グされて90度ツイスト配向する液晶分子121が存在
し、ツイスト配向領域122が存在する。ポリウレタン
配向膜が対向する画素の中心部129には液晶分子が−
2π回転した特異点123とアイソジャイヤー124が
存在し、その周辺に液晶分子121が異なった方向に配
列し、配向方向の異なる4つのツイスト配向領域12
5、126、127、128が存在している。ツイスト
配向領域125、127または126、128はミッド
プレインの液晶分子の方向が180゜回転しているの
で、斜めから見た場合、液晶分子の△nの異方性が緩和
されることになる。
【0035】次に2V,60Hzの矩形波電圧を印加し
たところ、各配向領域内の液晶分子はツイスト配向状態
からスプレイ配向状態に変形し始め、液晶層中(バル
ク)に変形の不連続性に伴うディスクリネーションライ
ンが発生した。この時、画素内には、5つ配向状態の異
なる領域(ドメイン)が存在していた。電圧を上昇する
に伴いツイスト配向領域122のドメインが優勢にな
り、ツイスト配向領域125、126、127、128
部に相当するドメインは順次縮小していき、6V印加状
態では画素内はツイスト配向122のドメインだけにな
っていた。バルク中に発生したディスクリネーションラ
インは特異点123に収束して消失した。
【0036】図3に本実施例での、等コントラスト曲線
の視野角依存性の測定結果を示す。図中の130、13
1はそれぞれコントラスト比が10:1、20:1の等
コントラスト曲線である。本実施例の場合、等コントラ
スト曲線はやや歪んだ円形をしており、従来の画素分割
されていないTN方式と比較して、かなり視野角特性が
対称になっていることが確認できた。
【0037】アモルファス配向TN方式に比べ、本実施
例ではシュリーレン配向領域が画素外に連続的につなが
ることはないので、斜め方向から見た場合、ザラツキ感
のない良好な表示を得ることができた。
【0038】従来考案されている配向分割方式を用いる
ことなく、形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーを配
向膜として用いることにより容易に画素分割が可能にな
り、視野角特性が改善されていることが確認できた。
【0039】本実施例ではポウレタン配向膜をラビング
した直後にTg以上の温度に再加熱したが、液晶を注入
した後に再加熱して画素分割を実現することも可能であ
る。 (実施例2)図4に本発明の別の実施例の液晶表示パネ
ルの画素内の断面図を示す。ガラス基板201、202
にはポリイミド配向膜203(例えばSE−7310:
日産化学工業株式会社製)とポリウレタン配向膜204
を分離した状態で形成した。ガラス基板201、202
を一方向にラビング処理した後、150℃で熱処理を行
い、ラビング方向が互いに反平行になるように張り合わ
せた。液晶には2枚のガラス基板間で左周りに90度捻
れ配向するようにカイラル材(例えばCN:チッソ石油
化学株式会社製)を添加した。
【0040】画素内には、ガラス基板201のラビング
方向205に配向規制されたツイスト配向領域とガラス
基板202のラビング方向206に配向規制されたツイ
スト領域と発生していた。ポリウレタン配向膜204に
付与された一軸延伸効果は熱処理により消失していた。
【0041】閾値電圧以上の電圧を印加すると、画素内
には2つのドメイン207と208が発生し、バルクで
の液晶分子のダイレクタ方向は約90度ずれ、境界部分
にディスクリネーションラインが発生した。8V、60
Hzの電圧印加に対しても2つのドメイン207と20
8は安定に存在した。
【0042】本実施例でも画素が2分割されることによ
り、視野角特性の非対称性が緩和され、視野角が拡大す
ることが確認できた。 (実施例3)図5に本発明のさらに別の液晶表示パネル
の断面図を示す。ガラス基板301上にはポリイミド配
向膜303(例えばSE−7210:日産化学工業株式
会社製)とポリウレタン配向膜304を分離形成し、ラ
ビング処理をした後、ポリウレタン配向膜のTg以上の
温度に再加熱した。ガラス基板302上にはポリイミド
配向膜305(例えばAL−1054:日本合成ゴム株
式会社製)を形成し、ラビング処理を施した。ポリイミ
ド配向膜303ではプレチルト角が約6゜、ポリイミド
配向膜305ではプレチルト角が約1゜、ポリウレタン
配向膜ではプレチルト角はほとんど0゜であった。2枚
のガラス基板間でのラビング方向は直交している。
【0043】液晶は実施例2と同様のカイラルネマチッ
ク液晶である。ポリイミド配向膜303とポリイミド配
向膜305に挟まれた部分では、スプレイ・ツイスト配
向領域306が形成された。ポリウレタン配向膜304
とポリイミド配向膜305に挟まれた領域ではツイスト
配向領域307が形成された。スプレイ・ツイスト配向
領域306とツイスト配向領域307では、液晶分子の
ダイレクターの傾く方向が異なり、互いに相補する形で
配列している。
【0044】閾値電圧以上の電圧印加に対して、画素内
に2つのドメインが発生し、実施例1、2と同様に視野
角の非対称性が緩和され、視野角拡大することが確認さ
れた。
【0045】前記実施例1、2、3では、ポリウレタン
配向膜104を部分印刷方式により分離形成したが、ポ
リウレタンとポリイミドとの混合溶液を基板上に塗布
し、その後ポリウレタンとポリイミドを分離させて配向
膜を形成する相分離方式やポリイミド配向膜上にポリウ
レタン溶液を噴霧してポリウレタン配向膜を分離形成す
るスプレー方式を用いても十分可能である。
【0046】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の液晶表示パ
ネルは形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーを配向膜
に用い、Tg以上の温度領域への加熱により容易にラビ
ング効果を消失させることができ、ポリイミド配向膜と
分離形成することにより、基板上に一軸延伸領域と非延
伸領域を発生させることが可能になる。この配向膜を用
いることにより、画素内に配向方向または配向状態の異
なる領域を複数発生させることができ、画素を配向分割
することが可能になる。画素の配向分割により、画素を
斜め通過する光の透過率は平均化され、視野角特性の非
対称性が緩和され、視野角が拡大する効果を持つ。本発
明により画素の配向分割が容易に実現し、表示特性の向
上に大きな効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の液晶表示パネルの断面図で
ある。
【図2】本発明の実施例1の液晶表示パネルの画素内の
微視的な配向状態を示した上視図である。
【図3】本発明の実施例1の液晶パネルの視野角特性を
示した図である。
【図4】本発明の実施例2の液晶表示パネルの断面図で
ある。
【図5】本発明の実施例3の液晶表示パネルの断面図で
ある。
【図6】TN型液晶パネルの電圧印加状態での斜視図で
ある。
【符号の説明】
101 ガラス基板 102 透明電極 103 ポリイミド配向膜 104 ポリウレタン配向膜 105 ガラス基板 106 透明電極 107 ポリウレタン配向膜 108 液晶分子 109 一軸延伸方向 110 第1のツイスト配向領域 111 第2のツイスト配向領域 121 液晶分子 122 ツイスト配向領域 123 特異点 124 アイソジャイヤー 125 ツイスト配向領域 126 ツイスト配向領域 127 ツイスト配向領域 128 ツイスト配向領域 129 ポリウレタン配向膜が対向する領域 130 コントラスト比が10:1の等コントラスト曲
線 131 コントラスト比が20:1の等コントラスト曲
線 201 ガラス基板 202 ガラス基板 203 ポリイミド配向膜 204 ポリウレタン配向膜 205 ラビング方向 206 ラビング方向 207 ドメイン 208 ドメイン 301 ガラス基板 302 ガラス基板 303 ポリイミド配向膜 304 ポリイミド配向膜 305 ポリイミド配向膜 306 スプレイ・ツイスト配向領域 307 ツイスト配向領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−142545(JP,A) 特開 平4−342762(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1337

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶
    表示パネルにおいて、少なくとも一方の基板上には、配
    向膜として形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマー薄膜
    とポリイミド薄膜が1画素内でそれぞれ液晶物質と接触
    する状態で形成されていることを特徴とする液晶表示パ
    ネル。
  2. 【請求項2】 一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶
    表示パネルにおいて、液晶層は正の誘電異方性を有する
    カイラルネマチック相であり、画素を構成する少なくと
    も一方の基板上に形成された配向膜が、ポリイミドから
    なる一軸延伸領域と形状記憶効果を有する熱可塑性ポリ
    マーからなる非延伸領域を持ち、前記画素内には液晶分
    子の配列方向の異なるツイスト配向領域が複数存在する
    ことを特徴とする液晶表示パネル。
  3. 【請求項3】 一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶
    表示パネルにおいて、液晶層が正の誘電異方性を有する
    カイラルネマチック相であり、画素を構成する一方の基
    板間に形成された配向膜が、ポリイミドからなる一軸延
    伸領域と形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマーからな
    る非延伸領域を有し、他方の基板に形成された配向膜は
    一軸延伸領域を有し、前記一対の基板間で一軸延伸方向
    が直交し、かつ前記一対の基板間で一軸延伸領域上で発
    現する液晶分子のプレチルト角が異なり、前記画素内で
    部分的にスプレイ・ツイスト配向した領域とツイスト配
    向した領域が存在することを特徴とする液晶表示パネ
    ル。
  4. 【請求項4】 形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマー
    が、ポリウレタンである請求項1,2または3に記載の
    液晶表示パネル。
  5. 【請求項5】 形状記憶効果を有する熱可塑性ポリマー
    とポリイミドが、基板上に分離形成または積層により形
    成されている請求項1,2または3に記載の液晶表示パ
    ネル。
  6. 【請求項6】 一方の基板上の配向膜は、形状記憶効果
    を有する熱可塑性ポリマー薄膜とポリイミド薄膜が1画
    素内でそれぞれ液晶物質と接触する状態で形成されてお
    り、かつ他方の基板上の配向膜は前記一方の基板上の配
    向膜と実質的に同一かまたは均一組成の薄膜である請求
    項1,2または3に記載の液晶表示パネル。
  7. 【請求項7】 ポリイミドはラビングにより一軸延伸さ
    れている請求項2または3に記載の液晶表示パネル。
  8. 【請求項8】 一対の基板間でツイスト配向又はスプレ
    イ・ツイスト配向した領域の液晶分子の捻れ角が約90
    度であることを特徴とする請求項2または3に記載の液
    晶表示パネル。
  9. 【請求項9】 一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶
    表示パネルを製造する方法であって、少なくとも片側の
    基板上に配向膜として、ポリイミド膜とポリウレタン膜
    を1画素内で分離した状態で形成し、ラビングにより一
    軸延伸した後、前記ポリウレタン膜のガラス転移点以上
    の温度に加熱し、前記配向膜上に一軸延伸領域と非延伸
    領域を形成することを特徴とする液晶表示パネルの製造
    方法。
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