JP3055963U - インクジェット記録用紙 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 水性インクを用いて記録するための、高い印
字品質と優れたインキ吸収性を備えたインクジェット記
録用紙を提供する。 【解決手段】 基紙３の片面には、例えば木目柄の印刷
層２が施されており、印刷層２のさらに上面にはインク
受容層１が設けられている。インク受容層１は、顔料と
バインダーを主原料とするものが好ましく、さらに好ま
しくは顔料はインク吸収性の高い多孔性の合成非晶質シ
リカ、多孔性アルミナ、多孔性擬ベーマイトのような無
機顔料であり、バインダーは水溶性である。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、水性インクを用いて記録するインクジェット記録用紙に関し、特に 高い印字品質と優れたインキ吸収性を備えた用紙に関する。

【０００２】

【従来の技術】

慶弔用の生花・花輪・樒の名札は専門の筆耕の方が杉・桧板またはこれらに似 せて木目調の印刷が施された用紙に芳名書きを行なっている。しかし手書きであ るために書くのに時間がかかり、また乾かすのにも場所と時間が必要であった。 最近このような不具合を解消するためにパーソナルコンピュータを使用して誰に でも手軽に筆文字が作成できるシステムが開発されている。これは、レーザープ リンタや感熱方式のプリンタを含み、例えばマックス株式会社の「ＣＡＬＬＩＧ ＲＡＰＨＩＣ ＳＹＳＴＥＭ 書家の筆」等である。一方、近年インクジェット 方式によるプリンタやプロッタも目覚ましい進歩を遂げ、フルカラーでしかも高 精細な画像が得られるようになってきた。本考案はこのインクジェット方式に適 した用紙に関するものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

インクジェット記録方式は、種々の作動原理、例えば静電吸引方式、圧電素子 を用いてインクに機械的振動または変位を与える方式、インクを加熱して発泡さ せ、その圧力を利用する方式等により、微小液滴を飛翔させて被記録材に附着さ せ、画像・文字等の記録を行なうものである。被記録材としては、印字ドットの 濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が速くて、印字ドッ トが重なった場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ド ットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけない こと、耐水性等が要求される。よって、従来のような木目調の印刷を施しただけ の用紙では、インクジェットプリンタにより印字すると、上記のような印字品質 を満足することができなかった。すなわち、インク吸収性が劣るために色調がく すんで色濃度が出ず、また耐水性も悪く水に濡れるとインクが流れてしまうなど の印字不良が発生していた。特に、生花用の名札として使用された場合、生花の 瑞々しさを保つために霧吹きで生花に水を吹きかけることがあり、印字されたも のに耐水性がなければ文字が滲んで商品価値が下落してしまうことがあった。

【０００４】 よって本考案の目的は、従来の木目調などが印刷された用紙に加工を施すこと により、上記したようなインクジェットプリンタに対する適性を持たせたインク ジェット記録用紙に関する。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために本考案は、基紙の少なくとも片面に印刷を施したイ ンクジェット記録用紙において、前記印刷を構成する印刷層の上面にインク受容 層を形成してインクジェット記録用紙を構成した。前記インク受容層は、顔料と バインダーを主成分とする塗被組成物からなるように構成でき、好ましくは前記 顔料は、多孔質の合成非晶質シリカ、多孔性アルミナ又は多孔性擬ベーマイト等 の無機顔料であり、前記バインダーは水溶性である。また基紙の一面に前記印刷 層及び前記インク受理層が設けられ、前記基紙の他面に粘着剤層を介して剥離紙 層が設けられているようにしてもよい。

【０００６】

【考案の実施の形態】

以下図示の実施の形態について説明する。

【０００７】 本考案は、図１に示すように支持体である基紙３の片面に、例えば木目柄の印 刷層２を印刷し、さらにその上面に、例えば合成シリカを主成分とし、顔料、接 着剤、染料インク定着材等を配合してなるインク受容層１を設けてなる。さらに 具体的には、支持体である基紙３は、パルプ等の繊維性物質と従来公知の顔料、 サイズ剤、定着剤、紙力増強剤等の各種添加剤を１種以上用いて混合し、長網抄 紙機、丸網抄紙機等の各種装置により製造された原紙である。好ましくは、イン ク吸収性が低下しないように、基紙３にはクレーコート等のコート層を設けるこ となく、そのまま印刷層２を設けたほうがよいが、アート紙、コート紙、キャス トコート紙等の塗工を施した紙でも構わない。また、インク吸収性アップの目的 で、原紙のステキヒトサイズ度は１０秒以下が好ましい。印刷層２の印刷として は、木目柄の他、大理石調、布目調などの柄物や用紙全面にカラーリングした色 物などがあり、その種類を問わない。

【０００８】 インク受容層１は、顔料とバインダーとを主成分とする塗被組成物からなり、 これに添加剤として染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、 離型剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等を適宜配合する ことができる。またカール調整のために、必要に応じてインク受容層１が設けら れた支持体の反対面にバックコート層を設けてもよい。

【０００９】 インク受容層１に用いられる顔料としては公知の炭酸カルシウム、カオリン、 タルク、クレー、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫 化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸 カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロ イダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼ オライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのような白色顔料や、プラス チックピグメント、マイクロカプセルのような有機顔料等が挙げられる。上記の 中でも、インク吸収力の高い多孔性の合成非晶質シリカ、多孔性アルミナ、多孔 性擬ベーマイト等の無機顔料が好ましい。

【００１０】 バインダーとしては、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、酢酸ビニル、カルボ キシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カ ゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シラノール変性ＰＶＡ等の変性ＰＶＡ、無水マレ イン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、メチルメタクリレート−ブタジ エン共重合樹脂等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル及び メタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素 樹脂等の熱硬化合成樹脂系の水性接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレ タン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブ チラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系の接着剤が挙げられる。これらの中で も好ましいのは水溶性のバインダーである。

【００１１】 インクの耐水化及び定着剤として、カチオン性の樹脂の添加が知られている。 カチオン性樹脂としては、水に溶解した時、離解してカチオン性を呈する従来公 知のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーのいずれも使用できる。例えば、ポ リエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリア ミン類、またはその誘導体、第３級アミノ基や第４級アンモニウム基を有するア クリル樹脂、ジアクリルアミン等が使用できるが、好ましくは３級及び／または ４級アンモニウム基を有する化合物がよい。添加量は顔料１００重量部に対し１ ０〜３０重量部の範囲で調整される。さらに必要に応じて分散剤、界面活性剤、 流動性改良剤、消泡剤、離型剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、防腐剤、耐 水化剤等を適宜配合することができる。

【００１２】 本考案に係るインクジェット記録用紙は、例えば木目調の柄が印刷された支持 体の上に乾燥塗工量が４〜３０ｇ／ｍ² 、好ましくは５〜２０ｇ／ｍ² になるよ うに塗工する。塗工量が４ｇ／ｍ² 未満だとインクの浸透性にバラツキが生じて ドット径が不均一となって濃度ムラが発生する。３０ｇ／ｍ² を超えると塗工層 の強度が低下し、またコストも無駄にアップする。塗工方法としては、ブレード コーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースコーター、バーコ ーター、グラビアコーター等の各種の塗工装置により塗被、乾燥できる。

【００１３】 このようにして製造された記録用紙をベースに、図２に示すようにインク受容 層１が形成された面とは反対の面に、従来なされているように粘着剤層４及び剥 離紙５を設けた記録用紙としてもよい。

【実施例】

【００１４】 以下、実施例により本考案をより具体的に説明する。まず、以下の配合に従っ て原紙を抄造した。 ≪原紙作成≫ ・パルプ配合 針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP) フリーネス370cc １０％ 広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP) フリーネス370cc ９０％ ・填料 タルク（ＹＤＫ、カミタルク株式会社製） 対パルプ ８．５％ シリカ（トクシールGU-N、株式会社トクヤマ製） 対パルプ １％ 酸化チタン(TCA-123P 、トーケムプロダクト製） 対パルプ ６％ ・エマルジョンサイズ剤(AL-120 、日本ＰＭＣ株式会社製）対パルプ ０．１％ ・カチオン澱粉(GEMCAT200、マニルドラ社製） 対パルプ ０．６％ ・ポリアクリルアミド（ハーマイドC-10、ハリマ化成株式会社製）対パルプ１％ ・硫酸バンド（硫酸アルミニウム、日鉄鉱業株式会社製） 対パルプ ０．５％

【００１５】 上記配合の紙料を長網多層抄紙機にて２層抄きで抄紙した。その結果、坪量８ １．４ｇ／ｍ² ステキヒトサイズ度５秒の原紙が得られた。次に、以下の方法に 従って実施例及び比較例のインクジェット記録用紙を作成した。

【００１６】 （実施例１） 上記のようにして作成した原紙に、下記のような明細にて木目柄の印刷をグラ ビアコーター２色刷りで行なった。 １色目（下地クリーム着色） インキ配合 ・ＧＶＮ下地クリーム（大日精化工業株式会社製） ５０％ ・ＧＶＮメジウム（同上） １５％ ・ＧＶＮ Ｎｏ．４溶剤（同上） ３５％ ２色目（木目柄） インキ配合 ・ＧＶＮ木目柄セピア（大日精化工業株式会社製） ５２％ ・ＧＶＮメジウム（同上） １５．６％ ・ＧＶＮ Ｎｏ．４溶剤（同上） ３１．３％ ・ＧＶＮ７３３黄（同上） １％ ・ＧＶＮ７１１紅（同上） ０．１％

【００１７】 次にその上に、下記配合にてインクジェット記録適性を持たせた塗料をグラビ アリバースコーターにて乾燥厚１０ｇ／ｍ² となるように塗工し、乾燥させるこ とにより実施例１の記録紙を得た。 インク受容塗工液１ ・非晶質合成シリカ（ファインシールX37B、株式会社トクヤマ製） ９．５％ ・水性バインダー(PVA-117、クラレ株式会社製） ３．５％ ・カチオン樹脂(PAS J-81 、日東紡績株式会社製） １．５％ ・分散剤 微量 ・消泡剤 微量 ・水 ８５．５％

【００１８】 （実施例２） 実施例１における木目柄を印刷した原紙に、下記配合にてインクジェット記録 適性を持たせた塗料をグラビアリバースコーターにて乾燥厚１０ｇ／ｍ² となる ように塗工し、乾燥させることにより実施例２の記録紙を得た。 インク受容塗工液２ ・非晶質合成シリカ（ミズカシルP78A、水澤化学工業株式会社製） ９．５％ ・水性バインダー(PVA-117、クラレ株式会社製） ３．５％ ・カチオン樹脂（スミレーズレジン1001、住友化学工業株式会社製）２．０％ ・分散剤 微量 ・消泡剤 微量 ・水 ８５％

【００１９】 （実施例３） 実施例１における木目柄を印刷した原紙に、下記配合にてインクジェット記録 適性を持たせた塗料をグラビアリバースコーターにて乾燥厚１０ｇ／ｍ² となる ように塗工し、乾燥させることにより実施例３の記録紙を得た。 インク受容塗工液３ ・非晶質合成シリカ（ファインシールX37B、株式会社トクヤマ製） ９．５％ ・水性バインダー(PVA-R1130、クラレ株式会社製） ２．５％ ・エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(S401、住友化学工業株式会社製）１．５％ ・カチオン樹脂（スミレーズレジン1001、住友化学工業株式会社製）２．０％ ・分散剤 微量 ・消泡剤 微量 ・水 ８４．５％

【００２０】 （実施例４） 実施例１のインクジェット記録用紙の記録面と反対面に、アクリルエマルジョ ン型粘着剤（オリバインＢＰＷ−５３９７、東洋インキ製造株式会社製）を２０ ｇ／ｍ² 塗工した剥離紙（８０ＧＳブルー、王子製紙株式会社製）を貼合して実 施例４のタック紙を作成した。

【００２１】 （比較例１） 実施例１において木目柄を印刷した段階の用紙をそのまま評価した。

【００２２】 実施例１〜４及び比較例のインクジェット記録適性結果を表１に示す。インク ジェット記録特性の評価は以下の方法によった。インクジェットプリンタ（商品 名：ＭＪ−６０００Ｃ、セイコーエプソン株式会社製）を用い、インク吸収性、 発色の鮮やかさ、耐水性について評価した。評価は、優れたものを○とし、以下 △、×の順とした。インク吸収性は、プリント部分のインクに紙をあて、写らな くなるまでの時間（秒数）を測定し、比較した。１０秒以下を○、１０〜２０秒 を△、２１秒以上を×とした。発色の鮮やかさは目視により評価した。耐水性は 印字後、各実施例及び比較例を直ちに水に浸け、インクが滲み出す程度を目視に より評価した。

【表１】

【００２３】 以上本考案の実施例について説明したが、本考案は上記実施例に限定されるも のではなく、本考案の要旨の範囲内において適宜変形実施可能であることは言う までもない。

【００２４】

【考案の効果】

以上のように本考案によると、インクの吸収性、発色性に優れているだけでな く、画像の耐水性にも優れたインクジェット記録用紙を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本考案に係るインクジェット記録用紙
の１つの実施の形態の断面の構成を示す断面図である。

【図２】図２は、本考案に係るインクジェット記録用紙
のタック加工された他の実施の形態の断面の構成を示す
断面図である。

【符号の説明】

１ インク受容層 ２ 印刷層 ３ 基紙 ４ 粘着剤層 ５ 剥離紙

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 基紙の少なくとも片面に印刷を施したイ
   ンクジェット記録用紙において、前記印刷を構成する印
   刷層の上面にインク受容層を形成したことを特徴とする
   インクジェット記録用紙。
2. 【請求項２】 前記インク受容層は、顔料とバインダー
   を主成分とする塗被組成物からなる請求項１に記載のイ
   ンクジェット記録用紙。
3. 【請求項３】 前記顔料は、多孔質の合成非晶質シリ
   カ、多孔性アルミナ又は多孔性擬ベーマイト等の無機顔
   料であり、前記バインダーは水溶性である請求項２に記
   載のインクジェット記録用紙。
4. 【請求項４】 前記基紙の一面に前記印刷層及び前記イ
   ンク受理層が設けられ、前記基紙の他面に粘着剤層を介
   して剥離紙層が設けられている請求項１ないし３に記載
   のインクジェット記録用紙。