JP3052001B2 - 電解研磨面を有する容器およびその洗浄方法と装置 - Google Patents

電解研磨面を有する容器およびその洗浄方法と装置

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JP3052001B2
JP3052001B2 JP3052471A JP5247191A JP3052001B2 JP 3052001 B2 JP3052001 B2 JP 3052001B2 JP 3052471 A JP3052471 A JP 3052471A JP 5247191 A JP5247191 A JP 5247191A JP 3052001 B2 JP3052001 B2 JP 3052001B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内面に電解研磨面を形
成してなる容器および電解研磨面の洗浄方法並びに洗浄
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、分子線エピタキシーは、10-6
Pa以下の超高真空を形成した容器内で行われる。この
ような分子線エピタキーに使用される容器では、近時
は、容器の内面、即ち真空に接する表面に電解研磨処理
を行うようになってきている。
【0003】電解研磨処理とは、例えば容器の胴部、容
器の上下を形成する鏡部、あるいは、容器に連設する配
管等の部品を、電圧を印加した状態で塩酸、燐酸等の酸
に浸漬して表面の凹凸を溶解し、表面平滑化と表面不動
態化を図るもので、単に酸に浸漬して行う他、酸に浸漬
しつつ機械的な研磨を行うこともある。
【0004】電解研磨処理後は、酸洗浄した洗浄面に水
酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を流して中和した後、
純水で洗浄し、この後、洗浄面を乾燥させて終了する。
なお、上記中和後の水洗で一般的な水道水を用いると、
水道水に含まれる塩素等の不純物が電解研磨面に付着す
るので、前記のように純水を用いて洗浄する。
【0005】前記分子線エピタキシーでは、電解研磨を
終えた前記部品を用いて容器等を組み立てた後、容器等
に400℃以上の高温ベーキングを行いながら真空排気
を行い、所定の真空度にした後、分子線エピタキシャル
成長を行う。なお、電解研磨した容器内で分子線エピタ
キシーを200〜300回程度行うと、容器の内面に毒
性の強い未反応生成物が固着し、清掃に手間がかかると
ともに、清掃時の危険もあることから、このような場合
には容器の内面を洗浄することなく、新しく電解研磨し
た容器を製造する。普通は、2年に1回程度新品と交換
する。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
に、分子線エピタキシーでは、電解研磨した容器に40
0℃以上の高温ベーキングを行い、金属内面からの脱ガ
スを促進して迅速な真空排気を行っているが、近時の分
子線エピタキシー用容器は、成長時の状態を観察して効
果的な成長を行わせるために容器の形状が複雑になって
いる。このため、容器各部の温度を均一に昇温すること
は困難であり、高温部から離脱したガスが低温部に付着
して真空排気に長時間を要し、生産性の低下、実験を行
う際の実験期間の長期化等を招く不都合があった。
【0007】また、近時の分子線エピタキシー用容器
は、容器に各種の電子機器を設けることが増えたため、
前記400℃のベーキングに耐えられず、200℃程度
の低温ベーキングを行うか、若しくはベーキングなしで
真空排気する必要が生じ、前記同様に真空排気に長時間
を要する不都合があった。
【0008】そこで本発明者は、前記不都合を解決すべ
く種々考究した。この結果、従来の容器では、内面に施
した電解研磨面の表面が親水性になっており、この状態
では、肉眼では目視できないが、電解研磨面に金属塩、
無機塩等が残留しており、これら金属塩等から水分が脱
離し、このため、容易に高真空にできないことを確認し
た。また、従来の純水による洗浄方法では、常温(10
℃〜30℃)の純水を、水道水程度の圧力(3kg/cm2
以下)で噴霧する方法だったため、大部分の金属塩等は
電解研磨面に残留し、親水性表面のままになっているこ
とを確認した。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記事実に対し、本発明
者は、電解研磨面を親水性表面から疎水性表面になるよ
うに洗浄すると、電解研磨面に残留していた金属塩等が
除去されてベーキングなし、あるいは、低温ベーキング
でも従来より遥かに短時間で所定の真空度に真空排気で
きることを知見した。
【0010】また、電解研磨面に、所定の圧力範囲の純
水で加圧洗浄を行った後、洗浄面がウェットな(湿潤状
態の)内に、所定の温度範囲の純水で洗浄を行うか、ま
たは、所定の圧力範囲及び所定の温度範囲の純水で洗浄
を行うと電解研磨面を容易に疎水性表面にできることを
知見した。
【0011】本発明は前記知見に基づいてなされたもの
で、第1の構成は電解研磨面を有する容器に係り、内面
に電解研磨面を形成してなる容器において、前記電解研
磨面を疎水性表面にしたことを特徴とする。また、第
2,第3の構成は電解研磨面の洗浄方法に係り、第2の
構成は、電解研磨面を、圧力10〜30kg/cm
純水で洗浄した後、該洗浄面がウェットな内に、温度7
0〜100℃の純水による洗浄を行うことを特徴とし、
第3の構成は、電解研磨面に、圧力10〜30kg/c
で、かつ温度70〜100℃の純水によるスプレー
洗浄を行い、加圧洗浄と温水洗浄とを一度に行うことを
特徴とする。更に、第4の構成は、電解研磨面の洗浄装
置に係り、圧力10〜30kg/cm の純水を噴霧す
る装置に、前記純水を温度70〜100℃に加熱する加
熱装置を設けたことを特徴とする。
【0012】
【作 用】第1の構成の容器によれば、電解研磨面を疎
水性表面にしたので、電解研磨面に金属塩等がなく、水
分が発生しないので、従来の容器より排気特性を向上さ
せることができる。
【0013】第2の構成の洗浄方法によれば、純水の加
圧洗浄により、電解研磨面に付着している粒径1μm以
上の金属塩等が運動エネルギーにより物理的に除去され
る。粒径1μm未満の金属塩等については電解研磨面に
対する吸着性が強いため前記加圧洗浄では完全には除去
されないが、加圧洗浄による洗浄面が濡れている内に行
われる温水洗浄により、1μm未満の金属塩等は凝集す
ることなくそのままの大きさで保持されて温水の濃度差
による化学平衡力で化学的に効率良く除去される。な
お、加圧洗浄面が乾燥すると微小な金属塩等は凝集して
塊になり、温水洗浄では除去できなくなるので前記のよ
うにウェットな状態で温水洗浄を行うことが重要であ
る。
【0014】なお、本発明による洗浄方法における洗浄
終了は、電解研磨面が親水性から疎水性に変化すること
で確認することができる。また、加圧洗浄終了は確認で
きないので試行錯誤により最適時間を決定する。
【0015】なお、純水の圧力は、少なくとも10kg/
cm以上である。電解研磨面に付着している1μm以
上の粒径の金属塩等は少なくとも10kg/cm以上で
ないと物理洗浄することはできない。
【0016】圧力は高いほど物理洗浄の効率が高まると
共に純水の量を節約でき経済性が向上するが、圧力を高
くすると、高圧にするためのポンプ等の加圧手段が高価
になり、また、高圧に耐えるように耐圧性能を向上する
必要があり、経済性が悪化してくる、また、人が洗浄を
行う場合、あまりに高圧であると危険なので、実用的に
は、15〜30kg/cm2 程度の圧力で洗浄することが望
ましい。例えば、同程度の除去を行う場合、15kg/cm
2 で噴霧したときは、20kg/cm2 で噴霧したときの
1.5倍以上の噴霧時間を要する。
【0017】一方、純水の温度は、高いほど短時間で微
小な金属塩等を溶解でき,化学洗浄の効率が高まると共
に純水の量を節約でき経済性が向上するが、100℃を
超えると純水が沸騰し、高温蒸気が発生して人が作業す
る場合、危険なので実用的には70℃以上、望ましくは
80℃以上とする。例えば、同程度の金属塩等を溶解す
る場合、80℃の純水を用いたときは、85℃の純水を
用いたときに比べ流水時間が2倍になり、純水使用量も
2倍必要となる。
【0018】第3の構成の洗浄方法によれば、加圧洗浄
による物理洗浄と温水洗浄による化学洗浄が同時に行わ
れる。加圧洗浄では除去困難な吸着力の高い微小な金属
塩等も化学洗浄により一部溶け出す間に吸着力が低下し
て物理洗浄されるので効果的に洗浄することができる。
【0019】第4の構成の洗浄装置によれば、加圧洗浄
の後に加熱器を作動させれば前記第2の構成の洗浄方法
を、また、加熱器を最初から作動させた状態で洗浄すれ
ば前記第3の構成の洗浄方法を行うことができる。
【0020】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明す
る。
【0021】図1は、本発明に係る洗浄装置の一例で、
純水装置1内の純水は、第1ポンプ2で2kg/cm2 程度
の圧力まで加圧された後、一方は弁3を介して更に第2
ポンプ4で15kg/cm2 以上の圧力に昇圧されてスプレ
ー5から噴射するよう構成され、他方は弁6を介して加
熱器7に導入されて80℃以上の温度に加温された後、
スプレー8から噴射するよう構成されている。なお、純
水装置1に代えて純水のタンクを用いることも可能であ
る。
【0022】上記構成において、弁3を開、弁6を閉と
してスプレー5から容器Bの電解研磨面Cに高圧の純水
を噴射した後、弁3を閉、弁6を開として加熱器7を作
動させ、容器Bの電解研磨面Cに高温の純水を噴射する
ことにより、電解研磨面Cの表面を疎水性にすることが
できる。なお、上記洗浄装置では2個のスプレーを用い
ているが、第2ポンプ4の二次側と加熱器7の二次側を
連結して同一のスプレーから噴射させることもできる。
【0023】図2は他の実施例で、純水装置1に加圧ポ
ンプ9、加熱部7、スプレー10を直列に接続したもの
で、純水装置1内の純水は、加圧ポンプ9で所定の圧力
に加圧された後、スプレー10から噴射される。このと
き、加熱器7を作動して加圧ポンプ3から供給される純
水を所望の温度にすれば、スプレー10から所望の温
度、圧力の純水を噴射して洗浄を行うことができる。
【0024】次に、本発明の洗浄方法と従来の洗浄方法
とを比較した結果を説明する。
【0025】まず、蓋を有する円筒容器を2組製作し、
蓋と、容器本体とにそれぞれ電解研磨処理を行なった。
なお、容器の材質はSUS304、内容積は2.3×1
-22 、内表面積は0.6m3 である。
【0026】電解研磨処理後、アルカリ溶液で中和し、
一方の容器には、電解研磨面に20℃の純水を3kg/cm
2 の圧力で10分噴射し、従来方法による洗浄を行っ
た。このとき、洗浄面には水分が一面に付着していた。
尚、洗浄時間を30分程度まで延長しても略同じような
状態だった。次いで前記洗浄面に乾燥空気を吹き付けて
乾燥した後、容器本体に蓋を気密に装着し、容器の蓋
に、容器内の真空度を測定するための電離真空計(I
G)と、容器内のガス成分を分析するための四重極形分
圧真空計(QMS)を取り付け、さらに、容器本体の胴
部に形成した排気管に、ターボ分子ポンプ、真空弁を介
してロータリーポンプを接続し、ベーキングを行わずに
真空排気を行い排気特性を測定した。この結果を図3の
Pで示す。
【0027】また、他方の容器は、電解研磨処理後、ア
ルカリ溶液で中和し、電解研磨面に20kg/cm2 の圧力
の純水を10分噴霧した後、89℃の温純水を5分程度
流した。このとき、温純水を流した後の洗浄面は、とこ
ろどころに微小の水滴が付着した状態であり、疎水性の
表面になっていることを確認した。その後、前記同様に
乾燥して容器を組み立て、同様に排気特性を測定した。
この結果を図3のMで示す。
【0028】図から明らかなように、10-6Pa台の高
真空を得るための時間は、従来の洗浄方法を行った場合
は約20時間であるのに対し、本発明の洗浄方法を行っ
た場合は約1時間となった。この時間は、従来に比べて
2桁以上短いものである。さらに、最小自乗法により排
気特性を求めた傾きは、従来法で−1.1、本発明で−
0.5となった。これは、真空容器内壁からのガス放出
機構が異なることを示しており、従来法では表面脱離放
出(電解研磨面に残留した金属塩等からの脱ガス)が支
配的であるのに対し、本発明の洗浄方法では固体内拡散
放出(金属内部からの脱ガス)が支配的であることを示
している。なお、この時のガス成分のほとんどは水分で
あり、本発明の洗浄装置使用有無における違いは、金属
表面に残存した金属塩、あるいは無機塩による影響が大
きいことを示している。
【0029】排気後1000分経過した後の排気特性が
同一であったとすると、本発明法により1000分で到
達した真空度を従来法で達しようとすると、さらに1万
分程の排気時間を要する。このことから、本発明による
洗浄方法が極めて効果的であることが判る。
【0030】
【発明の効果】以上のように、本発明の容器によれば、
容器内面の電解研磨面に疎水性表面を形成し、金属塩等
の残留を排除したので、低温ベーキングまたはベーキン
グなしでも、従来より排気特性を向上させることがで
き、短時間で所定の真空度に到達させることができるの
で、生産性の向上、実験時間の短縮化を図ることができ
る。
【0031】また、本発明方法によれば、電解研磨面に
効果的に疎水性表面を形成でき、排気特性を向上するこ
とができる。さらに本発明の洗浄装置によれば、本発明
の洗浄方法を効果的に実施することができる。
【0032】なお、本発明は、真空を形成する容器だけ
でなく、電解研磨面からの水分の発生が極めて少ないの
で、標準ガス、高純ガス等の高品位のガスを充填するた
めの容器、および該容器の洗浄方法としても利用でき、
一般に内部に電解研磨処理を行う任意の容器、管、弁等
の部品にも適用でき、応用範囲が広いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置の一実施例を示す系統図である。
【図2】 本発明装置の他の実施例を示す系統図であ
る。
【図3】 排気特性を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1…純水装置 2…第1ポンプ 3,6…弁
4…第2ポンプ5,8,10…スプレー 7…
加熱器 9…加圧ポンプB…容器 C…電解研磨

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内面に電解研磨面を形成してなる容器に
    おいて、前記電解研磨面を疎水性表面にしたことを特徴
    とする電解研磨面を有する容器。
  2. 【請求項2】 電解研磨面を、圧力10〜30kg/c
    の純水で加圧洗浄した後、洗浄面がウェットな内
    に、温度70〜100℃の純水で温水洗浄を行うことを
    特徴とする電解研磨面の洗浄方法。
  3. 【請求項3】 圧力10〜30kg/cm 、かつ、温
    度70〜100℃の純水で、電解研磨面を加圧温水洗浄
    することを特徴とする電解研磨面の洗浄方法。
  4. 【請求項4】 圧力10〜30kg/cm の純水を噴
    射する装置に、前記純水を温度70〜100℃に加温す
    る加熱装置を設けたことを特徴とする電解研磨面の洗浄
    装置。
JP3052471A 1991-03-18 1991-03-18 電解研磨面を有する容器およびその洗浄方法と装置 Expired - Lifetime JP3052001B2 (ja)

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