JP3033811B2 - 溶射膜密着向上方法 - Google Patents

溶射膜密着向上方法

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JP3033811B2 JP6170268A JP17026894A JP3033811B2 JP 3033811 B2 JP3033811 B2 JP 3033811B2 JP 6170268 A JP6170268 A JP 6170268A JP 17026894 A JP17026894 A JP 17026894A JP 3033811 B2 JP3033811 B2 JP 3033811B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶射膜密着向上方法に関
する。本発明は例えば内燃機関のピストンのリング溝、
シリンダのボア摺動面に適用できる
【0002】
【従来の技術】従来より基材に溶射膜を積層することが
行われている。溶射膜と基材との密着は一般に機械的な
結合が主体であり、溶射処理前にショットブラストによ
り基材を粗面化させ、表面積を増加したり、新生面を出
したりすることにより、溶射膜の密着力を増加させてい
る。
【0003】溶射膜の密着力を向上させるための他の方
法としては、溶射処理前の状態の基材を予熱する方法も
提案されている。また特公昭54−42855号公報に
は、ショットブラスト処理した表出面を備えた基材に、
白銑化した鋳鉄からなる粉末を基材の表出面に溶射し、
密着力を向上させた硬化層を積層する技術が開示されて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ショットブラストによ
る表出面の粗面化の程度は、その清浄度、ブラスト粒子
の大きさ、形態、材質等により大きく影響を受ける。そ
のため溶射膜の密着力はかなりバラツキ傾向にあり、信
頼性に関しては必ずしも充分ではなく、工程管理にて対
応しているのが現状である。このため、溶射膜のはがれ
等が発生し易く、不良の発生もしばしばである。従っ
て、ショットブラストした表出面への溶射膜の積層は、
比較的重要性が低い部品へは適用されているものの、重
要性が高い部品への適用は進んでいないのが実情であ
る。
【0005】前記した溶射処理前に基材を予熱する形態
においても、ショットブラスト処理による密着力向上を
前提としたものであり、溶射膜の密着力を大幅に向上で
きるものではない。更に、前記した公報に係る技術にお
いても、ショットブラスト処理による密着力向上を前提
としたものであり、溶射膜の密着力を大幅に向上できる
ものではなく、しかも基材はアルミ合金系ではなく鉄系
を対象とするものである。
【0006】本発明は上記した実情に鑑みなされたもの
であり、アルミ合金からなる基材と溶射膜との界面にお
いて界面溶融凝固層を形成することにより、溶射膜の冶
金的接合性を高め、溶射膜の密着力を向上させた溶射膜
密着向上方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、アルミ合金
からなる基材に溶射膜を積層する形態について鋭意開発
を進めた結果、基材を構成するアルミ合金よりも低い融
点をもつ溶融液層を生成可能な合金元素を含む溶射材料
を用い、その溶射材料を基材に溶射処理して溶射膜を形
成した後に、溶融液層を生成し得る温度領域(共晶温度
より僅かに上方の温度領域)に加熱した後に冷却すれ
ば、溶射膜と基材との界面において薄厚状の界面溶融凝
固層(共晶組織または共晶を含む組織と推定される)が
形成され、これの冶金的結合により、基材に対する溶射
膜の密着力が大幅に向上することを知見し、試験で確認
し、本発明を完成したものである。
【0008】例えば、図1に示すアルミと他の元素
(X)との二元系の状態図において、共晶温度Teより
僅かに上方の温度Taに加熱すれば溶融液層が局部的に
生成するものの、合金濃度が高まるとすぐに固化してし
まい、結局、溶融液層が界面領域でしか生じない。従っ
てこれを冷却すれば、溶射膜と基材との界面において局
部的に薄い肉厚の界面溶融凝固層(共晶組織または共晶
を含む組織と推定される)が形成され、これの冶金的結
合性が向上すると考えられる。
【0009】求項に係る溶射膜密着向上方法は、上
記した溶射膜密着構造を容易に製造できる方法であり、
表出面を備えたアルミ合金からなる基材と、基材を構成
するアルミ合金よりも低い融点をもつ溶融液層を生成可
能な合金元素を含む溶射材料とを用い、溶射材料を基材
の表出面に溶射処理して溶射膜を直に積層する溶射工程
と、溶射処理後において溶融液層を生成し得る温度領域
に少なくとも溶射膜を加熱し、溶射膜と基材との界面領
域において、基材を構成するアルミ合金よりも低い融点
をもつ局部的な溶融液層を形成し、その後に冷却するこ
とにより、溶射膜と基材との界面領域に溶融凝固した界
面溶融凝固層を形成し、界面領域における冶金的結合性
を高める冶金接合工程とを順に実施することを特徴とす
るものである。
【0010】
【作用】アルミ合金からなる基材と、基材の表出面に積
層された溶射膜は、界面溶融凝固層を介して冶金的結合
をしている。従って溶射膜は高い密着強度が得られる。
請求項1においては、界面溶融凝固層は共晶組織または
共晶を含む組織であると考えられる。共晶の組成は、一
般的には、溶射粉末の組成や基材を構成するアルミ合金
等に応じる。二元系の場合には二元系共晶、三元系の場
合には三元系共晶、多元系の場合には多元系共晶とな
る。界面溶融凝固層の平均厚みは5〜500μm程度、
特に10〜200μmにできる。溶射膜の接合強度確保
を考慮すると、界面溶融凝固層は、基材と溶射膜の界面
の略全面に介在する形態が好ましいが、界面領域に部分
的に介在する形態でも良い。
【0011】界面溶融凝固層は、基材と溶射膜の界面領
域に生成した溶融液層が凝固して形成されるので、界面
溶融凝固層を凝固させる冷却速度を比較的大きくでき、
従って界面溶融凝固層における組織は微細化され易い。
図2に模式的に例示した様に基材1の表出面1aに溶射
膜2を一層積層する形態でも、あるいは、図3に模式的
に例示した様に基材1の表出面1aに第1溶射層3aを
積層し、その上に第2溶射層3bを積層する形態でも良
い。
【0012】溶射処理の際には、表面が部分的に溶融し
た粒状の溶射材料、あるいは、全体が液滴状となった粒
状の溶射材料が基材の表出面に衝突する。そのため溶射
膜の内部構造は、図4に模式的に示す様に、やや偏平な
粒子4が積層される形態となる。なお粒子4間は粒子4
の種類にもよるが一般的には微小気孔となり易い。請求
においては、基材を構成するアルミ合金よりも低い
融点をもつ溶融液層を生成可能な合金元素を含む溶射材
料を用いる。溶射材料が粉粒状である場合には、粒径は
1〜100μm、特に5〜70μm程度にできる。この
様な元素としては銅、シリコン、銀、スズ、亜鉛が挙げ
られる。この場合にはその合金元素を合金化した粉末を
溶射材料として用いたり、その合金元素の粉末と溶射材
料であるアルミ粉末との混合粉末を用いることができ
る。
【0013】そして、溶射材料を基材の表出面に溶射処
理して溶射膜を積層する。溶射処理に先立ち、従来と同
様に基材の表出面はブラスト処理により粗面化しておく
ことが好ましい。界面溶融凝固層による冶金的結合に加
えて、従来同様に機械的結合をも期待でき、溶射膜の一
層の密着力の増加を期待できるからである。請求項
おいては、溶射処理の後に、前記した溶融液層を生成し
得る温度領域に少なくとも溶射膜を加熱することによ
り、溶射膜と基材との界面領域において溶融液層を形成
する。加熱温度は溶融液層の融点よりも数10°C(例
えば2〜50°C程度なかでも10〜30°C程度)上
方に設定することが好ましい。従って共晶を意図する場
合には、共晶温度よりも例えば2〜50°C程度なかで
も10〜30°C程度上方に設定することが好ましい。
【0014】冶金接合工程を実施する前における溶射膜
の気孔率は、基材の形状や種類等に応じて適宜選択でき
るが、一般的には2体積%以下(なかでも1体積%以
下、特に0.8体積%以下、0.6体積%以下)が好ま
しい。気孔率が小さい方が界面における溶融液層の流出
回避に有利であり、ひいては界面溶融凝固層の生成に有
利と考えられる。
【0015】加熱は、基材全体を加熱炉に装入して基材
全体を加熱する形態でも良く、あるいは、誘導加熱等を
利用して溶射膜を局部的に加熱する様にしても良い。そ
の後に溶射膜を冷却することにより、溶融液層を凝固さ
せ、界面溶融凝固層を形成する。この場合には溶融液層
自体の体積は基材体積に比較して大幅に小さく、かつ、
基材は熱伝導性の高いアルミ合金製であるため、溶融液
層の熱は基材側に迅速に伝熱され、凝固冷却速度を大き
くでき、従って界面溶融凝固層における組織の微細化を
図り得る。
【0016】
【実施例】
(実施例1)溶射工程では、鉄系粉末(アトマイズ粉
末,−280メッシュ,鉄−1.0wt%炭素)と銅−
アルミ粉末(アトマイズ粉末,−200メッシュ,銅−
9wt%アルミ)とを用い、両者を混合して混合粉末と
し、これを溶射材料とする。ここで混合粉末全体を10
0wt%としたとき、銅−アルミ粉末を30wt%の配
合割合とした。
【0017】基材として、アルミ−シリコン−マグネシ
ウム系であるJIS−AC8Aのアルミ合金を用いる。
基材の表出面はブラスト処理により粗面化(Rz50〜
150μm程度)されている。そして、上記した溶射材
料を溶射装置により基材の表出面に溶射した。これによ
り溶射膜(平均厚み400〜600μm程度)を表出面
に積層した。この溶射膜の気孔率は一般的には0.5〜
1体積%である。溶射条件はHVOF溶射法で、O2
40リットル/min、プロピレン=39リットル/m
in、エア=56リットル/min、粉末供給量=90
グラム/minである。
【0018】次に冶金接合工程を実施する。即ち、溶射
膜を積層した基材を均熱式の加熱炉に装入し、大気雰囲
気において530℃×2hr加熱保持し、これにより熱
処理した。この熱処理の温度は、基材を構成するアルミ
合金のT6処理やT7処理に対応するものであり、従っ
て、基材を構成するアルミ合金はT6処理やT7処理と
しての溶体化処理が実施されることになる。
【0019】なお熱処理の際には溶射膜が上に基材が下
になる様に配置した。これにより溶射膜の気孔率が比較
的高い場合であっても、界面に生成した溶融液層の流出
回避に有利であると考えられる。熱処理の後、常温領域
に空冷した。その後、大気雰囲気において170°Cで
10時間加熱保持して時効処理を行ない、その後空冷し
た。
【0020】この実施例では溶射材料は前記の様に銅−
アルミ粉末を含むものであり、基材はアルミ−シリコン
系である。ここでアルミ−銅−シリコンの三元系状態図
を考慮すると、アルミ−銅−シリコン系の三元系共晶の
共晶温度は524°Cと判断される。従って上記した様
に溶射膜を備えた基材を530℃×2hr加熱保持した
後に冷却すれば、その共晶組成または共晶に近い組成の
溶融液が界面に生成し、凝固により、共晶組織または共
晶を含む組織が界面に生成したものと推察される。
【0021】この実施例において、熱処理(530℃×
2hr)した後の溶射膜と基材との界面領域を光学顕微
鏡(倍率:200倍)で観察し、これを図6に示す。更
に比較例として、熱処理する前の状態において、溶射膜
と基材との界面領域を光学顕微鏡(倍率:200倍)で
観察し、これを図5に示す。図5及び図6において右側
の部分は基材をそれぞれ示し、左側の部分は粉末状の溶
射材料が積層した溶射膜をそれぞれ示す。
【0022】更に実施例において、前記した熱処理した
後の溶射膜と基材との界面領域を走査型電子顕微鏡(S
EM)で観察した。その写真を図7(倍率:400倍)
及び図8(倍率:1000倍)にそれぞれ示す。図7及
び図8において、下部の略半円形状あるいは略1/4円
形状の黒色部分はアルミ合金製の基材の表出面の部分を
示し、上部は溶射膜を示す。更に図7及び図8におい
て、基材と溶射膜との界面領域には、溶射膜及び基材と
は異なる組織の界面溶融凝固層が形成されていることが
わかる。これは上記した理由からアルミ−銅−シリコン
系の共晶組織または共晶を含む組織と推定される。この
界面溶融凝固層の平均厚みは20〜100μm程度であ
った。
【0023】図7及び図8においてアルミ合金製の基材
を構成する黒色部分の間の微小隙間にも界面溶融凝固層
が進入してその微小隙間を埋めていることからしても、
一旦溶融した後に凝固して界面溶融凝固層が生成された
ものと推定される。更に図6においても、基材の表出面
における凹部にも界面溶融凝固層が確実に進入している
ため、一旦溶融した後に凝固して界面溶融凝固層が生成
されたものと推定される。
【0024】上記した熱処理後の溶射膜の密着力を調べ
る試験を行い、その試験結果を図9に示す。試験片の個
数は10個とした。図9に示す様に実施例では溶射膜の
密着力は8kg/cm2 程度であった。熱処理前の比較
例では溶射膜の密着力は5kg/cm2 程度と小さかっ
た。この様に実施例では比較例に比較して溶射膜の密着
力が大幅に向上していた。しかも溶射膜の密着力のバラ
ツキα1も、比較例におけるバラツキα2に比較して大
幅に減少した(3分の1程度)。このことから、界面溶
融凝固層の形成は、溶射膜の密着力向上および密着力の
バラツキ低減に大いに有利であることがわかる。
【0025】この密着力を調べる試験では、図10に示
すアルミ合金からなる四角形状の試験片W(L1=8m
m、L2=5〜8mm、L3=1mm)を用い、試験片
Wに溶射膜W10を積層した。図11は試験装置を示
す。試験装置は基台10と保持部11と負荷12とボル
ト13とを備えている。そしてボルト13を締結して試
験片Wを保持部11に保持した状態で、負荷12を矢印
Y1方向に移動させ、負荷12を溶射膜W10に押し当
て、これにより溶射膜W10に剪断力を与えて行った。
【0026】(実施例2)この例では、基材としてアル
ミ−シリコン−マグネシウム系合金であるJIS−AC
4C合金を用いる。また溶射材料としての銅−ニッケル
−シリコン粉末(アトマイズ粉末,−150メッシュ,
銅−10wt%ニッケル−3%wtシリコン)を用い
る。そしてショットブラスト処理した基材の表出面に銅
−ニッケル−シリコン粉末を溶射し、第1溶射膜(厚み
100μm)を積層する。第1溶射膜の溶射条件はO2
=42リットル/min、プロピレン=40リットル/
min、エア=60リットル/min、粉末供給量=8
0グラム/minである。
【0027】次に、溶射材料としての鉄系粉末(アトマ
イズ粉末,−280メッシュ,鉄−1.0wt%炭素)
を第1溶射膜の上に溶射し、第2溶射層(平均厚み50
0μm)を積層した。第2溶射膜の溶射条件はO2 =4
0リットル/min、プロピレン=38リットル/mi
n、エア=50リットル/min、粉末供給量=90リ
ットル/minである。この様な第1溶射膜及び第2溶
射膜を形成した基材を均熱式の加熱炉に装入し、530
℃×2hr加熱した。その後に溶射膜と基材との界面の
断面を調べた結果、20〜100μmの界面溶融凝固層
が界面において形成されているのが確認された。この界
面溶融凝固層は実施例1の場合の様にアルミ−銅−シリ
コン系の共晶組織または共晶を含む組織と考えられる。
【0028】更にこの例においても実施例1の場合と同
様に密着力を測定する試験をしたところ、溶射膜の密着
力の向上、密着力のバラツキの低下が確認された。 (実施例3)この例では、基材としてAC8P合金を用
いる。そして基材のショットブラスト処理した表出面に
スズ粉末(アトマイズ粉末,−350メッシュ、純度9
9%)を基材の表出面に溶射し、第1溶射膜(平均厚み
50μm)を積層する。第1溶射膜の溶射条件はO2
38リットル/min、プロピレン=36リットル/m
in、エア=50リットル/min、粉末供給量=80
グラム/minである。次に、実施例2で用いた鉄系粉
末を溶射し第2溶射膜(平均厚み500μm)を積層す
る。この様な第1溶射膜及び第2溶射膜を形成した基材
を上記した均熱式の加熱炉に装入し、240℃×2hr
加熱した。溶射膜と基材との界面の断面を調査した結
果、平均厚み10〜50μmの界面溶融凝固層(アルミ
−スズ合金層)が界面において形成されているのが確認
された。更にこの例においても実施例1の場合と同様
に、溶射膜の密着力の向上、密着力のバラツキの低下が
確認された。
【0029】殊に溶射膜を銅系とした場合には、基材を
構成するアルミ合金におけるT6、T7処理時の溶体化
処理温度付近(一般的には510〜525℃)に銅−ア
ルミ合金系の融点(共晶温度)が対応するため、溶体化
処理における加熱と、溶射膜の密着力を向上するための
熱処理における加熱とを兼用することもできる。また溶
射膜をアルミ系とした場合には、冶金接合工程における
加熱温度は500°Cを越えるため、界面溶融凝固層に
よる冶金的接合効果ばかりか、溶射膜に生成している残
留応力の緩和効果も期待できる。よって、溶射膜を機械
加工する場合、溶射膜を使用する場合において、溶射膜
の耐剥離性を一層高める効果を期待できる。
【0030】(適用例)図12及び図13は内燃機関の
ピストン100のリング溝110に適用した適用例を示
す。図12は製造過程を模式的に示し、図13はリング
溝110に積層した溶射膜200を機械加工した状態の
ピストン100を示す。この例では図12に示す様に、
リング溝110を備えたアルミ合金(AC8A)製のピ
ストン100を用いる。リング溝110は外周に向かう
につれて拡開している形状であり、拡開面110a、1
10bを備えている。そして溶射ガン150で粉末状の
溶射材料140をピストン100のリング溝110の全
周に溶射処理する。その後、前記した熱処理を経た後に
溶射膜200を機械加工で所定の形状及び寸法に設定す
る。この様にピストン100のリング溝110に溶射膜
200を積層した場合においても、溶射膜200の寿命
を長くでき、内燃機関の出力確保に有利である。この適
用例ではピストン100に適用したが、内燃機関のシリ
ンダボアの摺動面に適用しても良いものである。
【0031】
【発明の効果】請求項1によれば、アルミ合金からなる
基材と溶射膜との界面領域において形成した界面溶融凝
固層により、基材に対する溶射膜の冶金的接合性を高め
得、これにより溶射膜の密着力を向上させ得る。従って
溶射膜の剥離を軽減または回避できる。
【0032】請求項によれば、基材を構成するアルミ
合金よりも低い融点をもつ溶融液層を生成可能な合金元
素を含む溶射材料を用い、溶射処理後において溶融液層
を生成し得る温度領域に加熱し、界面領域において局部
的な溶融液層を形成した後に、これを冷却凝固すること
により界面溶融凝固層を形成するので、溶射膜と基材と
の界面における冶金的結合性が高まり、溶射膜の密着力
が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】共晶反応を呈するアルミと他の元素との二元系
状態図である。
【図2】基材に溶射膜を積層した形態を模式的に示す構
成図である。
【図3】基材に溶射膜を積層した他の形態を模式的に示
す構成図である。
【図4】溶射膜の内部構造を模式的に示す構成図であ
る。
【図5】比較例に係る光学顕微鏡写真である。
【図6】実施例に係る光学顕微鏡写真である。
【図7】実施例に係る電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例に係る電子顕微鏡写真である。
【図9】溶射膜の密着力を示すグラフである。
【図10】密着力を調べる試験で用いた試験片の概略斜
視図である。
【図11】密着力を調べる試験で用いた試験装置の構成
図である。
【図12】溶射過程を示す構成図である。
【図13】リング溝に溶射膜を形成したピストンの側面
図である。
【符号の説明】
図中、100はピストン、110はリング溝、2、3
a、3b、200は溶射膜を示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表出面を備えたアルミ合金からなる基材
    と、該基材を構成するアルミ合金よりも低い融点をもつ
    溶融液層を生成可能な合金元素を含む溶射材料とを用
    い、 該溶射材料を該基材の表出面に溶射処理して溶射膜を
    積層する溶射工程と、 溶射処理後において該溶融液層を生成し得る温度領域に
    少なくとも該溶射膜を加熱し、該溶射膜と該基材との界
    面領域において、該基材を構成するアルミ合金よりも低
    い融点をもつ局部的な溶融液層を形成し、その後に冷却
    することにより、該溶射膜と該基材との界面領域に溶融
    凝固した界面溶融凝固層を形成し、該界面領域における
    冶金的結合性を高める冶金接合工程とを順に実施するこ
    とを特徴とする溶射膜密着向上方法。
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