JP3033632U - 内燃機関の伝動装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】在来のクランクシャフト方式の内燃機関は、ク
ランクの上支点及び下支点付近ではピストンの力がクラ
ンクシャフトの回転力に殆ど貢献せず、またクランクが
連結杆と直角となる時点では回転力の効率は最大となる
がこのときでも連結杆とピストンの力の方向とは大きな
傾斜角となり力率が低くなり、ピストンに大きな側圧を
発生させ動力損失を生ずるとともに、ボールベアリング
が使用できずその他構造も複雑である等の問題点があっ
た。 【解決手段】本考案の内燃機関のピストン伝動装置は、
図２（正面図）に示すようにピストン１の運動を伝える
連結杆２に連係させた揺動アーム３に、歯車機構を付し
てピストンのストロークでエンジン主軸９を１８０゜回
転できるようにし、また該揺動軸の途中にエンジン主軸
９に対して動力を伝える方向にはロックし反対方向には
空転するワンウエイクラッチ３ａを設けるとともに、主
軸に、該エンジンにより駆動され同一回転数で回転して
ピストンを運動させるカム機構を設けて成るものであ
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】 本考案は内燃機関のピストン伝動装置に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】

内燃機関のピストン伝動方式としては、一般にクランクシャフト方式が採られ ているが、この方式には次のような問題がある。

【０００３】 １、クランクの上支点及び下支点付近では、ピストンの力はクランクシャフト の回転力に殆ど貢献しない。 ２、クランクが連結杆と直角となる時点で回転力の効率は最大となるが、この ときでも連結杆とピストンの力の方向とは大きな傾斜角となるので、力率はその 分低くなる。 ３、上記２の時点では、連結杆の傾斜角はピストンに大きな側圧を発生させる ので、動力が損失する。 ４、上記３の側圧はシリンダーに偏摩耗を起しエンジンの性能を害する。 ５、爆発工程の初期即ちクランクシャフトの上支点付近では、爆発力は回転力 とはならず、クランクシャフトを軸受方向に強力に押しつける。 ６、クランクシャフトはその剛性保持の必要上、軸径が大きく且つ軸受けは割 型となり、ボールベアリングが使用できないので軸受の摩擦損失が少なくない。 ７、クランクシャフト方式は回転運動が複雑であるため、発生する振動を抑え る対策に困難を伴なう。 ８、特に舶用大型エンジン等では、クランクシャフトの製造に大きな困難があ る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は前記の諸欠点をなくす目的で、クランクシャフトを用いない内燃機関 のピストン動力伝達方式を提供しようとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

前記の目的を達成するため、本考案の内燃機関のピストン伝動装置は、図１（ 平面図）図２（正面図）に示すようにピストン１の運動を伝える連結杆２に連係 させた揺動アーム３に、歯車機構を付してピストンのストロークでエンジン主軸 ９を１８０゜回転できるようにし、また該揺動軸の途中にエンジン主軸９に対し て動力を伝える方向にはロックし反対方向には空転するワンウエイクラッチ３ａ を設けるとともに、主軸に、該エンジンにより駆動され同一回転数で回転してピ ストンを運動させるカム機構を設けて成るものである。

【０００６】

【作用】

本考案の内燃機関のピストン伝動装置の動力伝達方式は、在来のクランクシャ フト方式に較べて、特に爆発工程において異質の作用が行なわれるもので、其他 の排気、吸気、圧縮各工程では在来方式と殆ど同じである。以下各工程に於ける 各部の作用を説明すると、

【０００７】 １、爆発工程 図２は点火時点における各部の状態を示す。エンジンは回転中で爆発力発生は 点火より少し遅れるので、爆発力発動初期には、上げカム５とレバー７との係合 が外れ、爆発力はカムに伝わることなく揺動アーム３に伝達され、更に歯車群を 経てエンジン主軸に伝達される。爆発の終点では各部は図２より１８０゜回転し た図４の状態となり揺動アーム３のワンウエイクラッチ３ａは空転しはじめる。

【０００８】 ２、排気工程 排気がはじまると図４に示す位置より上げカム５によりピストン１が上昇する 。このとき揺動アーム３のワンウエイクラッチ３ａは空転しカム運動に影響しな い。引統き本図の位置より１８０゜回転して図２位置に戻り排気を終る。

【０００９】 ３、吸気工程 図２位置より下げカム６がレバー７を押し上げピストン１を下降させて吸気が 始まり、これより１８０゜回転し図４位置に戻り吸気を終る。

【００１０】 ４、圧縮工程 図４位置より圧縮工程が始まり、これより１８０゜回転して図２の状態となり 圧縮を完了する。（排気工程と全く同じ運動） なお四サイクルエンジンの吸気工程において、圧縮空気を吹き込んでピストを 押し下げる方式を採る場合或は二サイクルエンジンの場合には下げカムは不要と なる。

【００１１】

【実施例】

図１は直列２気筒４サイクルエンジンに実施した本考案伝動装置の平面図、図 ２は正面図である。図において、１はピストン、２は連結杆、３は揺動アームで そのボス部分３ａにワンウエイクラッチが内蔵されている。３ｂはカウンタウエ イト、４は揺動軸、５は上げカム、６は下げカム、７は支点８を有するレバーで 、前記両カムと係合しピストンを上下させる。

【００１２】 ９はエンジン主軸で、歯車（１１）（１０）によって揺動アーム３に連係させ るとともに、歯車（１３）（１４）（１５）（１６）によってカム軸（１２）に 連係させて成るものである。

【００１３】 また前記の揺動アーム３に代り図３（Ａ）に示すように連結杆２にラック１７ を設け、これに結合するピニオン１８に揺動軸４を設けるようにした実施例もあ る。

【００１４】 図３（Ｂ）はワンウエイスイッチ３ａの一例を示し、ローラーが楔状部に食込 んでロックするようになっている。

【００１５】 図５及図６はカムの形状説明図である。 図５は点火点（図２）より少しく（８゜）進角した位置の上げカム５の各位置 の寸法を示す。（このときレバー７の支点８は中央に在って両端の運動は同様に なっている。） 頂点Ａのカム半径＝Ｒ１とし、 最低点Ｂ（Ａより１８０゜進角位置）の半径＝Ｒ２とすると、 Ｒ１−Ｒ２＝ピストンのストロークである。 Ａ点より８゜進角した位置Ｃ点の半径Ｒ３は急に小さくなり、このときカムと レバーの係合が外れる。

【００１６】 図６は、吸気工程においてピストンが頂上位置（図２）よりストロークの半分 下降した位置の下げカム６各部の寸法を示す。 頂点Ｄの半径＝Ｒ４ 最低点Ｅ（Ｄ点より１８０゜進角した位置）の半径＝Ｒ５とすると、 Ｒ４−Ｒ５＝ピストンのストローク 中間点Ｆ（Ｅ点より９０゜進角した位置）の半径をＲ６とすると、 Ｒ６＝（Ｒ４＋Ｒ５）／２ のときは、下げカムがピストンを下げる速度と、

【００１７】 ワンウエイクラッチ３ａがロックしたと仮定した場合にエンジンが揺動アーム ３を動かす速度とは同じになり、これよりカムの速度が早いとワンウエイクラッ チはロックされてカムがエンジンを廻そうとして無理がかかる。両者の速度は等 しいことが必要である。（或はカムの方向が僅かに遅い方が無難である。） 同じ考え方でピストンが更に１／４ストローク下降した場合にカムはＦ点より ４５゜進角した位置Ｇ点においてその半径Ｒ７は、 Ｒ７＝（Ｒ６＋Ｒ４）／２ である。この考え方でカムのカーブは決定される。

【００１８】

【考案の効果】

本考案内燃機関のピストン伝動装置は、爆発工程の全ストロークで効率のよい 回転力が得られ、機械的損失が少なく、更に細部構造において、 １、連結杆は全工程に亘り傾斜角が極めて少ないので伝達効率がよく、シリン ダーへの側圧が僅少である。 ２、爆発力が揺動アームにだけ伝達されカムには及ばないので機械的損失が少 なく、機構が簡単となる。 ３、振動の原因になる往復運動各部の質量が軽く、その運動も単純であるから 、振動対策が容易で揺動アームにカウンターウエイト３ｂを設けるだけで済む。 ４、在来のクランクシャフト伝動方式に較べてトルクむらが少なく、平均トル クは向上し、出力が大きく、またトルクむらが少ないので気筒数を少なくできる 。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案内燃機関のピストン伝動装置の平面図。

【図２】同正面図

【図３】（Ａ）はピストン連結杆昇降装置一実施例の説
明図。（Ｂ）はワンウエイクラッチの一例を示す図。

【図４】図２の吸気終了時の図。（或は爆発工程終了の
図）

【図５】上げカムの各位置寸法を示す図。

【図６】下げカムの各位置寸法を示す図。

【符号の説明】

１ ピストン ２ 連結杆 ３ 揺動アーム ３ａワンウエイクラッチ ３ｂカウンタウエイト ４ 揺動軸 ５ 上げカム ６ 下げカム ７ レバー ８ 支点 ９ エンジン主軸 １０、１１、１２、１３、１４、１５、１６、 歯車 １２ カム軸 １７ ラック １８ ピニオン

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ピストン１に運動を伝える連結杆２に揺動
   アーム３を係合させ、その揺動軸４に設けた歯車により
   エンジン主軸９に動力を伝えるとともにピストンの一ス
   トロークでエンジン主軸を１８０゜回転させるように
   し、揺動軸の途中にエンジン主軸に動力を伝える方向に
   はロックし反対方向には空転するワンウエイクラッチ３
   ａを設け、一方エンジンにこれと同一回転数で回転して
   ピストンを運動させるカム機構を設けて成る内燃機関の
   伝動装置。
2. 【請求項２】連結杆２に設けたラック１７とこれに係合
   するピニオン１８とにより揺動軸４を揺動させるように
   した請求項１に記載の内燃機関の伝動装置。
3. 【請求項３】カム機構としてエンジンにより駆動され、
   エンジン主軸９と同一回転数で回転してピストン１を上
   下させる上げカム５と下げカム６とを設けた請求項１に
   記載の内燃機関の伝動装置。