JP3032245B2 - シャドウマスク及びその製造方法 - Google Patents

シャドウマスク及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明はカラーテレビ用受像管に使用されるシャドウ
マスク及びその製造方法に関する。
(従来の技術) カラーテレビ用受像管に使用されるシャドウマスク
は、三色蛍光面に正確な電子ビームスポットを投影する
機能を有する。このため、電子ビーム通過孔の相対位
置、孔径及び孔形状が画質に直接的な影響を及ぼし、電
子ビーム通過孔の高い加工精度が要求される。また、散
乱電子の発生防止のため、電子ビーム通過孔の蛍光面と
対向する面を半球状の面取り加工するという特殊な加工
も必要である。これらの加工精度が低いと、ドーミング
により画質低下を招く。
従来、このようなシャドウマスクの加工はシャドウマ
スクの原板にエッチングによって細長状の電子通過孔を
形成していた。
一方、近年、テレビ画面の“きめの細かさ”に対する
一般的要求が高まり、通信方式でも高品位テレビ方式の
開発が進められている。従って、受像管においても解像
度の向上の観点から、シャドウマスクに更に微細な電子
ビーム通過孔を形成することが要求される。また、高精
細になるシャドウマスクの熱膨張による電子ビーム通過
孔の位置ずれの問題が生じ、これを解決するためにFe−
Ni系アンバー合金の使用が検討されている。
アンバー合金に電子ビーム通過孔を開孔する場合、通
常フォトエッチングを行っているが、アンバー合金のエ
ッチング速度は異方性が強く、{100}結晶面のエッチ
ング速度が早いが、{100}は遅い。特許1379343号及び
特許1339269号では、エッチング前のシャドウマスク原
板の結晶方位を{100}面に揃えることが記述されてい
る。ところで、シャドウマスクの電子ビーム通過孔の形
状は丸形と細長型があるが、エッチングで開孔した時に
細長型の短径の寸法を精度良く均一にすることが困難で
あった。
前述の特許1379343,133269号の従って結晶面を{10
0}に揃えた度合が高い場合には短径が均一な細長型電
子ビーム通過孔を得ることが出来るが、{100}面でな
い結晶面を含む度合が大きくなると細長型電子ビームの
短径がばらつく。その度合は長径0.600μm×短径0.155
μmの電子ビーム通過孔において、長径で±0.0003μ
m、短径で±0.003μm。程度であるが、これらのわず
かな変動が画像の明暗に影響する。
また米国特許4846747号公報には、エッチングで形成
した細長型の電子ビーム通過孔が、その後のシャドウマ
スクとしての成型の為の冷間加工によるプレス成形時に
変形するのを防止する為に、電子ビーム通過孔の長手方
向を圧延方向と直角とする技術が記載されている。これ
は一般に行われているシャドウマスクとしての冷間加工
によるプレス成型時に事前に設けられた細長型の電子ビ
ーム通過孔の変形を防止する為にアンバー合金の圧延方
向と圧延方向の直角方向とでの耐力の相異に着目したも
のである。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は電子ビーム通過孔を形成する為のエッチング
工程の制御が容易であり、精細で均一な電子ビーム通過
孔を容易に得ることができ、かつ効率よくシャドウマス
クを得る事のできるシャドウマスク及びその製造方法を
提供するものである。
[発明の構成] (課題を解決するための手段及び作用) 本発明はアンバー合金からなるシャドウマスク材を冷
間圧延を施し、圧延方向と圧延方向の直角方向とにおい
て異なる結晶配向性を付与する工程と、 前記冷間圧延を施したシャドウマスク材を650℃〜120
0℃の焼鈍を施し、シャドウマスク材表面の{100}結晶
面の集合度合いを高める工程と、 前記シャドウマスク材に長手方向を有する細長型の電
子ビーム通過孔をエッチングによって形成する工程と、 前記電子ビーム通過孔を形成したシャドウマスク材を
所定形状に切断した後、温間プレスによりシャドウマス
クの形状にプレス成型する工程とを具備するシャドウマ
スクの製造方法であって、 前記長手方向の前記シャドウマスク材表面の{100}
結晶面の集合の度合いが前記長手方向の直角方向の前記
シャドウマスク材表面の{100}結晶面の集合の度合い
よりも小さい方向に前記長手方向を設定することを特徴
とするシャドウマスクの製造方法である。
また、別の発明は、細長型の電子ビーム通過孔を有
し、所定の方向での{100}結晶面の集合度合いが、所
定の方向に直角な方向での{100}結晶面の集合度合い
よりも少ないアンバ合金からなるシャドウマスクにおい
て、 細長型の電子ビーム通過孔の長手方向と前記所定の方
向とを同一としたことを特徴とするシャドウマスクであ
る。
つまり本発明は、アンバー合金にロール圧延を施した
場合に圧延方向と、直角方向とで結晶配向性が異なる点
に着目してなされたものである。
まずこの結晶配向性の異方性について説明する。第1
図〜第2図に第3図のシャドウマスク工程図のエッチン
グの直前の調整圧延による冷間加工の圧延率を20%,40
%とした場合のアンバー合金の(002)極点図を揚げ
る。RDは圧延方向で、紙面内のRDに直角方向が圧延方向
と直角方向、紙面に垂直方向が厚板の垂直方向となる。
図中の等価線は集合度を表わしており、冷間圧延率が増
加するにつれて、原板面に{100}の集合の度合が少く
なっている。({100}の集合の度合はX線(002)回折
強度で表わしてある。)ところで第1図,第2図とも圧
延方向の方が{100}面の集合の度合が少く、圧延方向
と垂直な方向によく{100}面が揃っている。例えば20
%圧延の第1図では、圧延方向に板面から15度傾いた方
向の{100}面濃度は、圧延方向に直角な方向に板面か
ら30度傾いた方向の{100}面濃度と同じである。40%
圧延材では(第2図)、板面から圧延方向10度傾いた方
向の{100}面濃度は、圧延方向に直角な方向に板面か
ら15度傾いた方向の{100}面濃度と同じである。つま
り圧延方向より圧延方向と直角な方向の方が{100}結
晶面が揃っている。前述の様にエッチング速度の速い結
晶面は{100}面でありエッチングで電子ビーム孔を形
成する時に{100}面と揃っている様、孔の精度が良く
なるので、細長型の電子ビーム通過孔の長手方向を圧延
方向と実質的に一致させることにより、短径が精度よく
均一に得られることがわかった。
なお本発明においては前述の如く、ロール圧延,エッ
チング工程の後、温間プレスによりシャドウマスク形状
に成形する為、この温間プレスでの細長型の電子ビーム
通過孔の変形は生じない。この結果本発明においては後
工程での電子ビーム通過孔の変形を考慮することなくエ
ッチンゲ工程で高精度に電子ビーム通過孔を形成するこ
とができる。
次に本発明に係るシャドウマスクの製造方法を第3図
を用いて説明する。
まず本発明に用いるアンバー合金のインゴットを900
℃以上の温度で熱間圧延(1)を施し、2〜3mm厚の板
体を得る。
なお本発明に用いるアンバー合金としては重量で34〜
42%Ni,0.8%以下Mn,0.8%以下Cr,0.5%以下Si,0.02%
以下C,0.02%以下S,残部Fe等を用いることができる。こ
の板体を70%〜95%の圧延等でロール圧延(2)により
冷間加工を施し、0.1〜0.3mm厚のシャドウマスク原板を
得た。
次に必要に応じ650゜〜1200℃程度の焼鈍(3)及び
調整圧延(4)を行う。なおこの際の焼鈍(3)は板面
の結晶方向を{100}を揃える為であり、又調整圧延は
高温の焼鈍で曲がった板を平坦に直す為であり、実用上
はこれらの工程を行う事が望ましい。
なお次のエッチング(5)工程の前段階のシャドウマ
スク原板は第1図乃至第2図で示した結晶配向性の異方
性を有した状態となっている。
次のエッチング(5)工程においては、前記のシャド
ウマスク原板の両面をエッチング用マスク材で覆い、所
定のエッチング液を吹付けることにより、20インチ管で
例えば0.45〜0.75mmピッチで配列された細長型の電子ビ
ーム通過孔を20〜30万個形成する。この際の細長型の電
子ビーム通過孔は第4図に示す如く電子ビーム通過孔の
長手方向が、圧延方向と実質的に同一方向となる様にエ
ッチング用マスク材を配置する。なお実質的に同一の方
向とは本発明を逸脱しない範囲のズレを示し、実用上は
圧延方向と電子ビーム通過孔の長手方向のズレが±5゜
程度を意味する。
シャドウマスク原板の切出し(6)は第4図の如く面
取りする事が好ましい。
次に必要に応じ焼鈍を行う。一般にアンバー合金は耐
力が大きくプレス成形する時の抵抗が大きく、プレス成
形後もスプリングバックが起こることがある。そこで耐
力を低下させる為に真空中あるいは水空中あるいは不治
性ガス中600℃〜1200℃焼鈍を施す。
次いて所定のプレス型を用いて温間プレス(8)によ
りシャドウマスク形状に成形する。この際の温間プレス
は約100〜400℃の温度で行う。
成形されたシャドウマスクは例えば水蒸気を含む雰囲
気中で熱処理し、その表面に0.01〜3μm程度の黒化膜
を設ける(9)。
以上の如く製造されたシャドウマスクは第5図に示す
如く、カラーテレビ用受像管に組み込まれる。つまり第
5図に断面的に示すように、カラー受像管2は電子ビー
ムを射出する電子銃3と、射出された電子ビームを変更
させるヨーク4と、電子ビーム通過用の多数の長孔6が
形成されたシャドウマスク5と、電子ビームが照射され
る三色蛍光面7と、を備えている。シャドウマスク5
は、電子銃3と蛍光面7との間に配設されている。電子
銃3から射出された3本の電子ビームは、ヨーク4の磁
力で変更され、その進路を制御され、シャドウマスク5
の孔6を通過して三色蛍光面7に到達し、各ビームが蛍
光面7の赤色、青色及び緑色の蛍光体を発光させるよう
になっている。
(実施例) 36%Ni−Feアンバー合金を溶解した後熱間圧延で2mm
厚の板を得た。これを冷間圧延ロールの加工率90%で0.
2mm厚の薄板とし、900℃で焼鈍を行なった。更に5%の
調整圧延によりシャドウマス厚板とした。これを圧延方
向となる様にフォトエッチングをほどこし長径0.6000±
0.0003μm,短径0.155±0.0005μmの電子ビーム通過孔
を得た。次にシャドウマスクを所定寸法毎に第4図の如
く切り出した。この時シャドウマスクの板面は良く{10
0}に結晶方位が揃っており且つ、圧延方向より{100}
の集合の度合が強かった。これら切り離された電子孔を
開孔したシャドウマスク厚板は、950℃の水素焼鈍を施
し、200℃で温間プレスを行ない、シャドウマスクの形
状に成型した。更にその後650℃の水蒸気中で黒化処理
を行ないシャドウマスクを完成した。
又、比較例として上記実施例において厚板圧延方向に
垂直な方向に電子ビーム孔の長手方向になる様にフォト
エッチングした。その結果、長径0.6000±0.0002μm、
短径0.155±0.003μmの電子ビーム通過孔を得た。これ
らのシャドウマスクを用いてC−CRTを行なう。両者を
比較したところ、本発明のシャドウマスクを用いたC−
CRTは画像が鮮明で、比較例のシャドウマスクを用いた
C−CRTと比較して明るさが1.5倍であった。
[発明の効果] 本発明に係るシャドウマスクでは、電子ビーム通過孔
の精度は良く均一であり、鮮明で明るい画像のカラー受
像管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】 第1図乃至第2図はそれぞれ圧延率が20%,40%,のシ
ャドウマスク原板の結晶集合組織を示す(002)極点
図。第3図は本発明方法を説明する工程図。第4図は本
発明方法におけるシャドウマスク原板の切出し例を示す
図。第5図はカラー受像管の断面図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−101743(JP,A) 特開 昭59−149638(JP,A) 特開 昭59−200721(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 29/07 H01J 9/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アンバー合金からなるシャドウマスク材を
    冷間圧延を施し、圧延方向と圧延方向の直角方向とにお
    いて異なる結晶配向性を付与する工程と、 前記冷間圧延を施したシャドウマスク材を650℃〜1200
    ℃の焼鈍を施し、シャドウマスク材表面の{100}結晶
    面の集合度合いを高める工程と、 前記シャドウマスク材に長手方向を有する細長型の電子
    ビーム通過孔をエッチングによって形成する工程と、 前記電子ビーム通過孔を形成したシャドウマスク材を所
    定形状に切断した後、温間プレスによりシャドウマスク
    の形状にプレス成型する工程とを具備するシャドウマス
    クの製造方法であって、 前記長手方向の前記シャドウマスク材表面の{100}結
    晶面の集合の度合いが前記長手方向の直角方向の前記シ
    ャドウマスク材表面の{100}結晶面の集合の度合いよ
    りも小さい方向に前記長手方向を設定することを特徴と
    するシャドウマスクの製造方法。
  2. 【請求項2】細長型の電子ビーム通過孔を有し、所定の
    方向での{100}結晶面の集合度合いが、所定の方向に
    直角な方向での{100}結晶面の集合度合いよりも少な
    いアンバ合金からなるシャドウマスクにおいて、 細長型の電子ビーム通過孔の長手方向と前記所定の方向
    とを同一としたことを特徴とするシャドウマスク。
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