JP3028869B2 - 金属−ハロゲン電池の正極電極 - Google Patents

金属−ハロゲン電池の正極電極

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属−ハロゲン電池、例
えば亜鉛−臭素電池の正極電極に係り、特に活性炭素繊
維を用いた正極活性層に関する。
【0002】
【従来の技術】金属−ハロゲン電池、例えば亜鉛−臭素
電池の正極は、カーボンプラスチックから成る電極基板
とその表面に形成した活性層とからなる。活性層には従
来から活性炭素繊維が電極基板に熱圧着して用いられて
いる。これら活性炭素繊維は、形態としてはクロス、フ
ェルト、ペーパー等があり、いずれのものも使用可能で
ある。活性炭素繊維自体の比表面積はその賦活のされ方
で大小が決まり、賦活が多いほど比表面積は大きくなっ
ている。電池の正極特性としては、正極活性層となる活
性炭素繊維の比表面積が大きいほど優れた特性を示すの
が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら比表面積
が大きく、賦活の度合いが大きい活性炭素繊維は、機械
強度が低下したり繊維径が細くなるため繊維が破壊して
脱落することがある。また電解液により繊維同士が密着
して活性点が少なくなるというデメリットも認められて
いる。すなわち比表面積の大きい活性炭素繊維のみで構
成される正極活性層はそれ本来の特徴を十分発揮されず
に用いられているケースが多かった。
【0004】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
その目的は、電解液の浸透が良く且つ電池の反応に関し
て有効な活性点を生かすことができる金属−ハロゲン電
池の正極電極を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、カーボンプラ
スチックから成る電極基板と、前記電極基板に重置され
るとともに熱圧着により前記基板と一体成形される複数
の活性炭素繊維の正極活性層であって、該複数の活性炭
素繊維の繊維径および比表面積を、前記基板側からn番
目の層の繊維径がn+1番目の層の繊維径よりも小さ
く、且つ前記基板側からn番目の層の比表面積がn+1
番目の層の比表面積よりも大きくなるように構成した正
極活性層とを備えたことを特徴としている。
【0006】
【作用】前記正極活性層のうち、電極基板から最も離れ
た最上段の活性層は、比表面積が最も小さい反面、活性
炭素繊維の径は最も大きい。このため繊維間隙が大きい
ため電解液が浸透しやすくぬれ性が高い。また前記最上
段の活性層から電極基板に近ずくにつれて各層の比表面
積は段階的に大きく、活性炭素繊維の径は段階的に小さ
くなる。このため電解液が浸入しやすく充放電時の反応
性が高い。
【0007】このように正極活性層は、従来のように比
表面積の大きい活性炭素繊維のみの単層構造ではなく、
繊維径および比表面積の異なる数種類の活性炭素繊維を
段階的に積層しているので、従来のように活性炭素繊維
が破壊したり、繊維同志が密着して活性点が少なくなる
ようなことはない。
【0008】
【実施例】以下図面を参照しながら本発明の一実施例を
説明する。本発明では従来のような同程度の賦活による
単一繊維のみではなく、異なった賦活状態の繊維を組み
合わせることによってそれぞれの特徴を生かした構成に
する方法を講じた。
【0009】即ち理論的には図1に示すような構造にす
ることであり、正極活性層1を2層以上の多層構造とし
電極基板2に最も近接する層(図1では第3層)に比表
面積の大きい活性炭素繊維を配し、電解液と接する方向
に従って比表面積の小さい、且つ繊維径としては大きい
活性炭素繊維で構成される層を配するものである。図1
の例では第1層の活性炭素繊維は繊維径が13〜15μ
mで比表面積が700〜1000m2/gのもの、第2
層の活性炭素繊維は繊維径が11〜13μmで比表面積
が1500〜1800m2/gのもの、そして電極基板
2に最も密着した第3層は繊維径が10〜11μm程度
の活性炭素繊維を使用している。この構造の正極活性層
1は、第1層の比表面積は小さいが繊維径が大きいため
繊維間隙が大きく電解液が浸透し易いためにぬれ性が高
く、第2層から第3層へと電極基板2に近づくに従って
繊維間隙が小さくなるが、従来の1層構造のものに比べ
ると段階的であるため、比表面積が大きくなっていく割
には電解液が浸入し易く、反応性が高いという特徴を持
つものである。
【0010】次に具体的な実施例を述べる。図1におい
て電極基板2にカーボンプラスチック電極(ポリエチレ
ン/カーボンブラック/グラファイト=45/10/4
5重量比)を用いる。そして正極活性層1にはユニチカ
(株)製繊維状活性炭(FAC)の次の3タイプを用い
る。即ちタイプA−10(繊維径14μm、比表面積1
000m2/g)を第1層に、タイプA−15(繊維径
12μm、比表面積1500m2/g)を第2層に、タ
イプA−20(繊維径11μm、比表面積2000m2
/g)を第3層に各々用いる。これら第1〜第3層の繊
維状活性炭を少量のカーボンペースト(繊維が浸る程
度)とともに前記カーボンプラスチック電極基板2に載
せ、1時間程度常温で乾燥させてカーボンペーストの溶
媒が蒸発した後、プレス成形機により約130℃で熱圧
着させ一体成形した。
【0011】このように成形された電極を(A)とし、
比較のため前記3タイプの繊維状活性炭A−10、A−
15およびA−20をそれぞれ単層で、前記電極(A)
と同じ厚みでカーボンプラスチック電極基板と各々一体
成形して順に電極(B),(C),(D)を得た。これ
ら4種類の電極(A),(B),(C),(D)を正極
とし、純度99.9%の亜鉛板を負極とし、これら正
極、負極間に微細多孔質膜より成るセパレータを挟んで
それぞれ単セル(A),(B),(C),(D)を構成
する。そして3mol/lのZnBr2溶液を電解液と
して用い前記単セル(A),(B),(C),(D)
を、電流密度20mA/cm2で3時間充電し、同電流
密度で放電し0Vカットオフした場合の正極電位曲線
を、銀−塩化銀参照電極基準で求めた。
【0012】その結果は図2のように示される。図2
(a)から判るように電極(B)(正極活性層に単層の
活性炭A−10を用いたもの)は充、放電ともに過電圧
が高く効率が低い。電極(C)(正極活性層に単層の活
性炭A−15を用いたもの)および電極(D)(正極活
性層に単層の活性炭A−20を用いたもの)は、電極
(B)に比べると過電圧は小さくなっているが、充電初
期および放電初期にエージングが悪く過電圧が大きくな
っており反応の立ち上がりが悪くなっている。一方電極
(A)(本発明による電極)は全般的に安定した電位曲
線を示しており、反応がスムーズに行われている様子が
認められた。また正極活性層と電極基板の一体化時点で
の成形性は、電極(B),(C),(D)の順に悪くな
り、炭素粉の発生が多くなった。電極(A)は電極
(B)と同程度の成形性となった。
【0013】尚前記実施例では正極活性層1をタイプA
−10、タイプA−15、タイプA−20の3層構造に
しているが、これに限らず異なる繊維径および比表面積
を有する他の活性炭素繊維を用いて多層構造にしても良
い。
【0014】
【発明の効果】以上のように本発明によれば電極基板と
一体成形される正極活性層を、繊維径および比表面積の
異なる種類の活性炭素繊維で2層以上段階的に配置して
構成したので、電解液の浸透が良くなり、反応に関して
有効な活性点をより生かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す正極電極の断面図。
【図2】電池の充放電特性を示し、図2(a)は正極活
性層を従来のように単層で構成した電池の正極電位の推
移を現す充放電特性図、図2(b)は正極活性層を本発
明を適用して複数層で構成した電池の正極電位の推移を
現す充放電特性図。
【符号の説明】
1…正極活性層、2…電極基板。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カーボンプラスチックから成る電極基板
    と、前記電極基板に重置されるとともに熱圧着により前
    記基板と一体成形される複数の活性炭素繊維の正極活性
    層であって、該複数の活性炭素繊維の繊維径および比表
    面積を、前記基板側からn番目の層の繊維径がn+1番
    目の層の繊維径よりも小さく、且つ前記基板側からn番
    目の層の比表面積がn+1番目の層の比表面積よりも大
    きくなるように構成した正極活性層とを備えたことを特
    徴とする金属−ハロゲン電池の正極電極。
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