JP3028713B2 - 高疲労強度快削非調質鋼 - Google Patents

高疲労強度快削非調質鋼

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JP3028713B2
JP3028713B2 JP5213448A JP21344893A JP3028713B2 JP 3028713 B2 JP3028713 B2 JP 3028713B2 JP 5213448 A JP5213448 A JP 5213448A JP 21344893 A JP21344893 A JP 21344893A JP 3028713 B2 JP3028713 B2 JP 3028713B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非調質のままで高
い引張強度と優れた疲労強度を有する鋼に関し、特に、
非調質のままで疲労強度と引張強度の比(耐久比)が高
く、かつ被削性にも優れた鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、コネクティングロッド、クランク
軸、ナックル等の自動車用鍛造部品は、機械構造用炭素
鋼あるいは合金鋼を用い、熱間鍛造により部品形状に成
形後、高い疲労強度を付与するため調質処理(焼入焼も
どし処理)が行われていた。しかしながら、コスト、省
力化、熱処理変形等の問題から調質処理を省略し、鍛造
まま(非調質)で高い疲労強度と引張強度が得られる鋼
の開発が望まれてきた。
【0003】また、自動車用鍛造部品は鍛造後に機械加
工を施されるので、被削性が優れていることも要求され
る。このような背景から、「疲労強度の優れた熱間鍛造
品」と題する特開平4−202741号公報および特開
平4−193931号公報では、非調質のままで優れた
疲労強度を有する熱間鍛造品の化学成分、熱処理条件を
開示している。これらの非調質鋼では、強化元素として
Vを0.15〜0.60wt%添加する一方で、Siの添加
を0.30wt%以下と低くしている。
【0004】ところで、析出強化元素の添加による強化
は一定量以上でその効果が飽和するが、固溶元素の添加
による強化は固溶強化として上乗せできるため、両者を
併用すると効果が大きい。例えば固溶元素Siまたは
P,析出元素Vの複合添加によって引張強度、疲労強度
を効果的に上昇せしめることができる。しかしながら、
上記の従来技術の非調質鋼では、高価なVによる析出強
化のみを利用し、安価なSiによる固溶強化は全く利用
していない。さらに、上記の従来の非調質鋼では、そも
そも、黒皮鍛造肌のまま使用する場合が多いため、必要
に応じてS,Pb,Ca等の被削性に有効な元素を添加
して、被削性の改善を行うに止まり、鋼自体の組織を切
削加工の容易なフェライト+パーライト組織にしようと
する意図は全くなかった。
【0005】また、松原らは、「コネクテイングロッド
用高疲労強度快削非調質鋼」(Honda R&D Technical Re
view)を開発した。これは、非調質のままで優れた疲労
強度および被削性を有する熱間鍛造品の組成、熱処理条
件について記載したものである。
【0006】しかし、上記の非調質鋼では、快削性付与
成分の添加により疲労強度は大幅に低下している。すな
わち、最適な介在物制御ができていない。また、被削
性、疲労強度向上への寄与が大きいPも積極的に添加さ
れておらず、化学成分の改良の余地があると思われる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は化学成分を適
宜選択することにより、鍛造のままで必要な引張強度
(900MPa以上)と、0.5%以上の高い耐久比(疲労強度
/引張強度)を有し、しかも被削性にも優れた鋼を提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上記課題解決のために検討を重ね、3段階に分けて解決
手段を考えることにした。すなわち (1)被削性に優れたフェライト−パーライト組織の形
成、 (2)フェライト−パーライト組織をもつ鋼の耐久比の
向上、 (3)快削性付与元素の添加による被削性の向上、であ
る。
【0009】(1)上述のように、一般に自動車用鍛造
部品には、引張強度、疲労強度のみならず被削性も優れ
ていることが要求される。被削性は金属組織に強く依存
し、フェライト−パーライト組織では被削性がよく、フ
ェライト−ベイナイトあるいはベイナイト単相組織は被
削性が悪いことが知られている。そこで最初に、快削性
付与元素(Pb,Ca,Se,Te,Bi)を含まない
フェライト−パーライト組織の非調質鋼を形成し、その
鋼において疲労強度の改善を試みた。
【0010】まず、フェライト−パーライト組織を得る
に当たって、焼入性に及ぼす影響が大きいと思われる
C,Mn,Crの各元素の添加量と組織の関係を把握す
るために、表1に示す9種類の材料を溶解、試作し、得
られた鋼の組織を調査した。
【0011】
【表1】
【0012】鋳片を900℃以上で鍛伸後放冷するとい
う熱間鍛造の工程をシミュレートし、1100℃に15
分間保持後放冷する焼ならし処理を以て熱間鍛造工程に
置き換えた。熱処理の結果を併せて表1に示す。Mn,
Crの焼入性倍数(JIS−G0561)はほぼ等しい
から、組織をCの重量%、Mn+Crの重量%の関数と
して整理し、その結果を図1に示した。
【0013】図1より、
【0014】
【数7】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92 ならば、フェライト−パーライト組織になることがわか
る。
【0015】(2)フェライト−パーライト組織鋼の疲
労強度は、軟質相であるフェライト相の疲労強度により
決まるので、フェライト相の疲労強度を高めるには、強
化元素を添加する必要がある。強化元素の添加によって
引張強度が向上することも当然である。
【0016】そこで本発明の完成に先立ち、疲労強度お
よび引張強度に及ぼす快削性付与元素以外の添加元素の
影響を調査した。C 0.35%,Si 0.30%,M
n1.20%,P 0.010%,S 0.050%,C
r 0.2%,V 0.01%、Cu 0.00%残部が
Feおよび不可避的不純物から成るNo.1鋼をベースと
し、この鋼に対してC,Si,P,Cr,V,Cuの添
加量を変化させた鋼No.2〜13を製造した。これらの
各鋼を熱間鍛造工程をシミュレートする1100℃、1
5分焼ならし処理を行い、試験片(引張試験片(JIS 14
号) および小野式回転曲げ疲労試験片(平行部8φ))に
加工し試験に供した。表2に各供試材の化学成分、引張
強度、小野式回転曲げ疲労限度を、図2に引張強度と疲
労限度の関係を示す。
【0017】
【表2】
【0018】以上の結果から、C,Si,Mn,P,C
r,V,Cuのいずれの添加によっても、鋼の引張強
度、疲労限度がともに向上するが、引張強度上昇量に対
する疲労限度上昇量の比(図2におけるグラフの勾配)
は異なることが分かる。この比の数値を表3に示す。
【0019】
【表3】
【0020】一般に引張強度の上昇は被削性及び熱間鍛
造性の低下にもつながるから、引張強度上昇量を抑えつ
つ、疲労強度をできるだけ高める強化元素の添加が効果
的である。図2および表3の結果より、Cに比べ他の添
加元素、特にSi,V,Pが疲労強度向上に効果的であ
ることがわかる。
【0021】従来Siは表面の脱炭を促進するため、積
極的に添加は避けられていた。しかし適当な量の添加に
より疲労強度に及ぼすマイナス面(脱炭による表面の硬
度低下)よりもプラス面(Si添加による固溶強化)が
大きくなると考えられる。
【0022】さらに表2の結果より、多重回帰により非
調質鋼の各元素添加量と引張強度の関係式を得た。
【0023】
【数8】 TS(MPa)=785×[C%]+78×[Si%]
+145×[Mn%]+540×[P%]+175×
[Cr%]+1295×[V%]+30×[Cu%]+
200 ただし[ %]は、各添加元素の重量%である。TS>
900MPa とすると、係数を約して、
【0024】
【数9】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
+3×[Cu% ]>70 が得られる。
【0025】(3)次に快削性付与元素の添加による鋼
の被削性の向上について検討する。快削性付与元素
(S,Pb,Ca,Se,Te,Bi)の添加により被
削性は良くなるものの、疲労強度は低下することが知ら
れている。そこで疲労強度に及ぼす快削性付与元素添加
量の影響を調査した。すなわち、表2のNo.10の成分
に対し、S,Pb,Ca,Se,Te,Biをそれぞれ
単独で添加したときの疲労限度の変化を調査した。添加
量と疲労限度の関係を図3に示す。
【0026】図3(c),(d)から分かるように、Sおよ
びPbは添加量が増加するにつれて、鋼の疲労限度は大
きく低下する。しかし、図3(a),(b),(d)から分かる
ように、他の元素では添加量を増加させても鋼の疲労強
度はほとんど変わらない。添加量の上限値を耐久比0.
5となる添加量とすると、Sは0.15%、Pbは0.5
0%を上限値とする必要がある。
【0027】他の元素については添加量の上限を疲労強
度の点からは決められない。添加量の下限値およびS、
Pb以外の添加量の上限値を被削性の点から検討する。
被削性を評価するため切削試験を行った。切削条件は、
速度200m/min.、送り0.35mm/rev.、切り込み
2.0mm、工具は三菱マテリアル製CNMG-433MA-CSI、供
試材の切削範囲は50φである。
【0028】試験結果から工具摩耗曲線を作製し、フラ
ンク摩耗量が0.2mmとなる切削時間を求め、これを工
具寿命とした。各快削性付与元素の添加量と工具寿命の
関係を図4に示す。
【0029】ここで、添加量の下限値として工具寿命1
0min.となる添加量とする。Pb,Ca,Se,Te,
Biの下限値はそれぞれ0.05%、0.001%、0.
10% 、0.005%、0.10%である。また、C
a,Se,Te,Biはそれぞれ0.01%、0.5%、
0.05%、0.4%の添加でその効果が飽和しているた
め、この値を添加量の上限値とする。なお、快削性付与
元素の添加量の限定理由については、各元素毎に作用の
項の[0040]ないし[0042]においても説明を
加えた。
【0030】以上の種々の知見に基づいて、本発明者ら
は上記の課題を解決する手段として、以下の構成をもつ
発明を完成した。すなわち、 1.重量%で、C:0.30〜0.50%,Si:0.3
〜1.5%,Mn:0.5〜2.0%,P:0.035
0.10%,S:0.15%以下,Cr:0.7%以下,
V:0.05〜0.30%、残部がFeおよび不可避的不
純物から成り、かつ下記の式を満足する高疲労強度快削
非調質鋼。
【0031】
【数10】[C%]+0.28×([Mn%]+[Cr
%])<0.92
【0032】
【数11】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
>70 2.さらに、重量%で、Pb:0.05〜0.50%,C
a:0.001〜0.010%,Se:0.10〜0.50
%,Te:0.005〜0.050%,Bi:0.10〜
0.40%のうち1種または2種以上を含有し、かつ下
記の式を満足することを特徴とする上記1記載の高疲労
強度快削非調質鋼。
【0033】
【数12】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92
【0034】
【数13】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
>70 3.さらに、重量%で、Cu:0.5〜1.0%を含有
し、かつ下記の式を満足する上記1または2記載の高疲
労強度快削非調質鋼。
【0035】
【数14】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92
【0036】
【数15】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
+3×[Cu%]>70
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の鋼の化学成分について説
明する。
【0038】Cは必要な引張強度を確保するため最も基
本的な元素であり、高い引張強度を得るためには0.3
0%以上は必要である。しかしながら表3に示すよう
に、添加により耐久比向上への寄与は小さく、むしろ低
下することもある。そのため0.30〜0.50%とし
た。なお、好ましくは0.30〜0.40%である。
【0039】Siは固溶強化元素であり、耐久比を向上
するのには効果的な合金元素である。かかる効果を得る
ためには少なくとも0.3%は必要である。しかしなが
ら過剰な添加はその効果が飽和するとともに鍛造時に表
面の脱炭を促すため、0.3〜1.5%とした。
【0040】Mnは製鋼時の脱酸のため、また鍛造時の
脱炭を低減するため少なくとも0.5%は必要である。
しかしながら過剰な添加は焼入れ性が向上し、ベイナイ
トが生成する。ベイナイト生成により被削性は低下す
る。このため、0.5〜2.0%とした。
【0041】Pは固溶強化元素であり、耐久比を向上す
るのには効果的な合金元素である。その効果を得るため
には少なくとも0.035%以上必要である。しかしな
がら過剰な添加はその効果が飽和するとともに、加工性
(延性)の低下となるため、0.10%以下とした。
【0042】Crは固溶強化元素であり、耐久比を向上
するのには効果的な合金元素である。しかしながら過剰
な添加は焼入れ性が向上しベイナイトが生成する。この
ため0.7%以下とした。
【0043】また、なお空冷処理にてベイナイトが生成
しない条件は図1に示すように下記式で示される。
【0044】
【数16】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92 したがって上記各添加量条件に加えてこの式を満たすこ
とが必要である。
【0045】Vは析出強化元素であり、耐久比を向上す
るのに効果的な合金元素である。かかる効果を得るため
少なくとも0.05%は必要である。しかしながら過剰
に添加しても、例えば図2に示すように析出強化量は飽
和する。このため0.05〜0.30%とした。
【0046】Cuは固溶強化元素であり、耐久比を向上
するのに効果的な合金元素である。しかしながら他の元
素と比べ非常に高価であるため目的を考慮した上で添加
すべきである。かかる効果を得るためには少なくとも
0.5%は必要である。また過剰に添加してもその効果
は飽和するため0.5〜1.0%とした。
【0047】Sは被削性の改善に有効な元素であるの
で、本来、下記のPb,Ca,Se,Te,Biと同じ
群に入れて論ずるべきであるが、Sは鋼の不可避的不純
物という性格をもち、通常の溶解条件では無添加の場合
がないため、一応Sのみを別個に考えることとした。S
による鋼の被削性改善の効果は含有量が微量でも現われ
るが、Sのみによって被削性改善効果を得るためには図
4(c)の結果から0.04%以上の添加が必要である。
しかし、図3(c)に示すように過剰な添加は疲労限度を
大きく低下させる。図3(c)の結果を考慮し、過剰に添
加してもその効果は飽和するため、その上限は0.15
%とした。すなわち、S含有量は0.15%以下の範囲
とするが、好ましい範囲は0.04〜0.15%である。
なお、被削性の改善がSのみでは不十分の場合は、以下
に示すPb,Ca,Se,Te,Biのうち1種または
2種以上の添加が必要である。
【0048】Pbは被削性を高めるのに非常に効果的な
元素であり、かかる効果を得るためには0.05%以上
の添加は必要である。しかし、過剰な添加は疲労限度を
大きく低下させるので、図3(d)の結果を考慮し0.5
0%までとした。
【0049】Ca,Se,Te,Biはいずれも被削性
を高めるのに非常に効果的な元素であり、かかる効果を
得るためには、図4(a),(b)の結果から、Caでは0.
001%以上、Teでは0.005%以上、また図4
(d)の結果からSeでは0.1%以上、Biでは0.10
%以上の添加は必要である。しかし、過剰な添加はその
効果が飽和するので、図4(a),(b),(d)の結果
からCaでは0.01%以下、Teでは0.050%以
下、Seでは0.50%以下、Biでは0.40%以下と
した。
【0050】なお、本発明の鋼の適用先は熱間鍛造部品
であり、加工性を考慮し鍛造のままで高い引張強度(90
0MPa以上) となるように成分を限定する。既に表2に示
した調査の結果、非調質鋼の引張強度に及ぼす添加元素
の影響を基礎的に調査し、以下の回帰式を得ている。
【0051】
【数17】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
+3×[Cu%]>70
【0052】
【実施例】[実施例1] 表4に示す化学組成の鋼を50kg大気中溶解炉で溶製
後、900℃以上でφ30mm丸棒に鍛伸した。熱間鍛造
の加熱・空冷処理をシミュレートした1100℃で15
分の焼きならしを行った。得られた丸棒中心から JIS14
号引張試験片を採取し、機械的性質を調べた。また疲労
試験は平行部φ8mmの小野式回転曲げ試験片を採取し、
空温・大気中、繰返し速度50Hzにて疲労試験を行っ
た。なお疲労限度は破断繰返し数107となる応力振幅
と定義した。
【0053】
【表4】
【0054】表4において、特に試験番号(以後No.と
略)1〜4はCの、No.5〜11はSiの、No.14〜1
6はCrの、No.17〜18はVの、No.19〜20はC
uの、No.23はS上限値近傍の添加量の影響を調査し
たものである。またNo.21,22は個々の化学成分は
特許請求範囲を満たしているものの、No.21は式(Eq.
2) を、No.22は式(Eq.1) を満たしていない。
【0055】表4において、Eq.1の数値が本願特許請求
の範囲である0.92未満を満たしていないNo.16およ
びNo.23は、金属組織がフェライト−ベイナイトにな
る。したがって、No.16およびNo.22の被削性は悪
い。
【0056】一方、表4において、Eq.1の数値が本願特
許請求の範囲である0.92未満を満たしているNo.1〜
No.15、およびNo.17〜No.22は、金属組織がフェ
ライト−パーライトになる。したがって、それらの被削
性は良好である。
【0057】本願特許請求の範囲の請求項1の鋼のうち
表4における本発明を表示したものは、いずれも引張強
度は900MPa 以上であり、疲労強度は高く耐久比は
0.5以上である。しかるに本願特許請求範囲からはず
れたもの(表における比較例)については、No.1,
21は引張強度が低く、No.4,5,10,11,1
6,17,22,23は耐久比が低く0.5未満であ
る。
【0058】以上より請求項1において過不足なく、非
調質鋼の疲労強度・耐久比向上が可能であることが判明
した。
【0059】[実施例2] 表5に示す化学組成をもつ鋼を、[実施例1]における
と同様に、その50kgを大気中溶解炉で溶製後、900
℃以上でφ30mm丸棒に鍛伸した。熱間鍛造の加熱・空
冷処理をシミュレートした1100℃、15分の焼きな
らしを行った。得られた丸棒中心からJIS14号引張試験
を採取し、機械的性質を調べた。また平行部φ8mmの小
野式回転曲げ試験片を採取し、室温・大気中、繰返し速
度50Hzにて疲労試験を行った。なお、疲労限度は破断
繰返し数107となる応力振幅と定義した。
【0060】
【表5】
【0061】表5において、No.31は上記[実施例
1]の鋼に相当する快削性付与元素を含まない鋼であっ
て、この鋼を所定の基準にしたがって、切削加工したと
きの工具寿命を1.0とし、同じ条件で他の鋼種32〜
46を切削加工したときの工具寿命比を他の機械的諸性
質と共に表5に掲載した。上記快削性付与元素の影響が
明瞭に現われるように、それ自体快削性付与作用をもつ
Sの含有量を比較的に低いほぼ0.04%近傍に押さえ
た。
【0062】本発明の請求項2または3の範囲内の組成
をもつNo.32〜40鋼は、いずれもNo.31鋼に比較し
て格段に優れた被削性すなわち高い工具寿命比をもち、
しかも他の諸性質も優れていることが分かる。
【0063】これに対して、快削性付与元素(Pb)含
有量が、請求項2の範囲を超えて添加されたNo.42鋼
は、被削性は著しく改善されたが、耐久比が所定の値に
達していない。
【0064】また、快削性付与元素の含有量が低く請求
項2または3の下限値まで達していないNo.43〜46
鋼は、いずれも被削性が殆ど改善されず、請求項1の鋼
の被削性と同程度の水準に止まっていることがわかる。
【0065】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明により製造
された鋼は、非調質鋼として高い耐久比と被削性を有す
るため、クランク軸、コネクティングロッド、ナックル
などの熱間鍛造部品に最適で、かかる効果を有する本発
明の意義は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼中の[C%]と([Mn%]+[Cr%])
との関係において、フェライト−パーライト組織または
フェライト−ベイナイト(マルテンサイト)組織を生ず
る範囲を示すダイアグラムである。
【図2】種々の添加元素が鋼の疲労強度および引張強度
に及ぼす影響を比較対照して示すグラフである。
【図3】種々の快削性付与元素の添加量と鋼の耐久比と
の関係を示すグラフである。
【図4】種々の快削性付与元素の添加量と鋼を切削した
工具の寿命との関係を示すグラフである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.30〜0.50%,S
    i:0.3〜1.5%,Mn:0.5〜2.0%,P:0.
    035〜0.10%,S:0.15%以下,Cr:0.7
    %以下,V:0.05〜0.30%、残部がFeおよび不
    可避的不純物から成り、かつ下記の式を満足する高疲労
    強度快削非調質鋼。 【数1】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92 【数2】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
    55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
    >70
  2. 【請求項2】 さらに、重量%で、Pb:0.05〜0.
    50%,Ca:0.001〜0.010%,Se:0.1
    0〜0.50%,Te:0.005〜0.050%,B
    i:0.10〜0.40%のうち1種または2種以上を含
    有し、かつ下記の式を満足することを特徴とする請求項
    1記載の高疲労強度快削非調質鋼。 【数3】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92 【数4】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
    55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
    >70
  3. 【請求項3】 さらに、重量%で、Cu:0.5〜1.0
    %を含有し、かつ下記の式を満足する請求項1または2
    記載の高疲労強度快削非調質鋼。 【数5】 [C%]+0.28×([Mn%]+[Cr%])<0.92 【数6】 80×[C%]+8×[Si%]+15×[Mn%]+
    55×[P%]+18×[Cr%]+132×[V%]
    +3×[Cu%]>70
JP5213448A 1993-06-30 1993-08-05 高疲労強度快削非調質鋼 Expired - Lifetime JP3028713B2 (ja)

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