JP3028072B2 - 磁場検出素子 - Google Patents

磁場検出素子

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JP3028072B2
JP3028072B2 JP9122300A JP12230097A JP3028072B2 JP 3028072 B2 JP3028072 B2 JP 3028072B2 JP 9122300 A JP9122300 A JP 9122300A JP 12230097 A JP12230097 A JP 12230097A JP 3028072 B2 JP3028072 B2 JP 3028072B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は単一電子トンネル機能を
有する磁気検出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】微細加工技術の急速な進歩により超微小
な静電容量を持つトンネル接合素子が作製可能となって
いる。このような素子においては、1個の電子が接合を
トンネルするか否かによりe2/2Cの充電エネルギー
の差が生じる。
【0003】ここでCは接合の静電容量である。電子の
熱エネルギーkT(kはボルツマン定数、Tは絶対温
度)がこの充電エネルギーがに比べて充分に小さく、し
たがって、熱雑音を無視できる場合には、電子は、0<
V<e/2Cの接合電圧領域では接合容量を充電するた
めに充分な電圧が与えられないので、この素子のトンネ
ル電流は抑制されてほとんど0になり、接合電圧がVTH
=e/2Cに達すると、トンネル電流が急に流れ出す。
この現象はクーロンブロッケードと呼ばれ、現在でも活
発な研究が行われている。このトンネル接合素子の顕著
な特性を用いてデジタルスイッチやメモリー素子などに
応用することが提案されている。しかしこの提案は主に
電子の持つ電荷に注目したものであり、接合面の単位面
積当りの接合容量や素子のサイズが定まれば、接合電圧
の閾値VTHが定まるので、このようなトンネル接合素子
を用いたデジタルスイッチのスイッチイング特性なども
接合容量や素子のサイズに強く制約され、その結果、応
用範囲が限定されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
のトンネル接合素子がもつ上記の欠点を補うために、ト
ンネル接合素子のトンネル電流特性に影響を与える変数
として新たな物理量を導入し、それによって、トンネル
接合素子の広い応用範囲を創生することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明のトンネル接合素子にはトンネル電流特性
に影響する変数(自由度)として新たに電子のスピン量
子数を導入する。以下の記述において、「アップスピ
ン」、「ダウンスピン」とは、電子スピンの2つの量子
数、すなわち電子スピンの2つの量子状態に対応する。
以下の記述において、任意に磁場の基準方向を定義し、
該基準方向を向く磁場に平行な電子スピンをダウンスピ
ン(↓)と記し、逆向きの電子スピンをアップスピン
(↑)と記す。したがって、磁場が基準方向を向いてい
るときには、ダウンスピン電子の状態密度関数の位置
(エネルギー軸上の位置)はアップスピン電子の状態密
度関数の位置よりも低く、逆に、磁場が基準方向に対し
て逆向きであるときには、アップスピン電子の状態密度
関数の位置がダウンスピン電子の状態密度関数の位置よ
りも低いことになる。以下の記述では、状態密度関数を
便宜的にエネルギー帯と記す。
【0006】一般に、トンネル効果が起こる1つの条件
は、ポテンシアル障壁のポテンシアルUを位置xの関数と
して書き表わしたとき、ポテンシアルU(x)の値が電子の
エネルギーEよりも大きいU曲線の部分をxで積分して得
られる面積が小さいことである。この面積が増すと、電
子が該ポテンシアル障壁をトンネルする確率は指数関数
的に減少する。本発明で用いられるトンネル障壁は電子
のトンネル確率が余り減少しない程度に薄い誘電体膜で
ある。
【0007】トンネル効果が起こるために必要なもう1
つの条件は、トンネル障壁の両側において、同一の量子
数によって指定される電子の確率振幅が零でない(同一
の量子数によって指定される零でない電子波動関数が存
在する)ことである。本発明においては、この量子数と
してエネルギー量子数とスピン量子数に着目する。した
がって、ソース電極とドレイン電極とにおいて同一のエ
ネルギー値をもつ電子波動関数が存在しても(ソース電
極のエネルギー帯の位置とドレイン電極のエネルギー帯
の位置が少なくとも1部分において重なっていても)、
スピン量子数が異なれば、電子はソース電極とドレイン
電極との間のどちらかのトンネル障壁で散乱を受けて、
ドレインを流れることができない。このように、トンネ
ル障壁の両側において許容されるスピン量子状態が異な
ることによって生じる散乱を、以下の記述ではスピン散
乱と記す。
【0008】本発明においては、トンネル電流を構成す
るアップスピン電子または、ダウンスピン電子は、1)
ソース電極を構成する超伝導体、2)ソース電極を構成
する強磁性体または反強磁性体から供給される。本発明
の第1および第2の磁場検出素子として開示されている
トンネル接合素子は1)に属し、第3乃至第7の磁場検
出素子として開示されているトンネル接合素子は2)に
属する。
【0009】本発明の第1の磁場検出素子は、基板上に
形成された、第1の超伝導体のソース電極と、導体の中
央電極と、第2の超伝導体のドレイン電極と、前記ソー
ス電極と中央電極との間に形成された第1のトンネル障
壁と、前記中央電極と前記ドレイン電極との間に形成さ
れた第2のトンネル障壁とを有するトンネル接合素子で
ある。
【0010】第1、第2のトンネル障壁は、その合成容
量Cが不等式C<<e2/2kTを満たすように形成さ
れている。ここで、Tは電子の絶対温度、eは電子の電
荷、kはボルツマン定数を表わす。
【0011】磁場検出時には、少なくとも第1、第2の
超伝導体を超伝導・常伝導相転移温度以下に保ち、か
つ、中央電極の電位を所定値に保ち、ソース・ドレイン
間に、所定の電圧ne/2C+Δ/eの近傍で変動する
電圧を印加し、ソース・ドレイン電流が急激に変化し、
または、ソース・ドレイン間電圧に対するソース・ドレ
イン電流のコンダクタンスが急激に変化するソース・ド
レイン間電圧の閾値を測定して該閾値に対応する磁場を
求める。ここで、nは合成容量Cを充電している電子数
を表わす正整数、Δは超伝導エネルギーギャップを表わ
す。
【0012】不等式C<<e2/2kTはトンネル電流
が熱雑音に遮蔽されないための条件である。前記したよ
うに、単一電子が容量Cを充電することができるために
は電子に印加される電圧Vは少なくともe/(2C)で
なければならない。一方、この単一電子による電流が熱
雑音に遮蔽されないためには、電子のエネルギーeVが
電子の熱的なランダム運動のエネルギーkTに較べて充
分に大きくなければならない。不等式C<<e2/2k
Tで表わされるCの値は、この2つの条件を満たすため
に設定されなければならない容量値である。
【0013】本発明の第1の磁場検出素子においては、
超伝導状態において結合エネルギーΔで結合している、
相互に反平行のスピンをもつ電子対を電気的エネルギー
で引き離す(eV=Δ)。そのために必要な電圧はΔ/e
である。また、電子に磁場が印加されるとき、ゼーマン
効果によって電子のエネルギー準位は+μHの準位(ア
ップスピン準位)とーμHの準位(ダウンスピン準位)
に分裂する。もし、電子が、磁場が印加されていない状
態(0準位)から+μHの準位に遷移するときにその遷
移エネルギーが電源から供給されるとすると、そのため
には、μH/eの電圧を必要とする。また、もし、電子
が、磁場が印加されていない状態(0準位)からーμH
の準位に遷移するとき、その遷移エネルギーが電源へ供
給されるとするならば、電源はその電子を駆動するため
に、μH/eだけ少ない電圧ですむことになる。
【0014】したがって、超伝導状態で電子対をなして
結合しているアップスピン電子とダウンスピン電子を結
合から切り離してそれぞれアップスピン準位およびダウ
ンスピン準位に遷移させ、それぞれの電子を1個づつソ
ース電極からドレイン電極に移動させるために必要な電
圧は、(ne/(2C)+Δ/e)+μH/e、(ne/(2C)+Δ/e)-μH/eに
なる。ここで、ne/(2C)はn-1個の電子が充電されている
容量Cに第n番目の1個の電子が充電するために必要な
電圧である。その結果、トンネル電流は、ソース・ドレ
イン間電圧が(ne/(2C)+Δ/e)+μH/e、(ne/(2C)+Δ/e)-
μH/eに達したとき、単一電子による電流分だけトンネ
ル電流が増加する。
【0015】このことを利用して、ソース・ドレイン間
電圧を(ne/(2C)+Δ/e)の近傍で変動させ、その変動分が
ある値に達したときにトンネル電流が急激に変化した場
合には、そのときの電圧変動分はμH/eに等しいと考え
ることができる。このようにして、その電圧変動分から
磁場Hを求めることができる。中央電極はトンネル電流
の強さを制御するために用いられる。
【0016】本発明の第2の磁場検出素子は、基板上に
形成された、超伝導体のソース電極と、導体の中央電極
と、強磁性体のドレイン電極と、前記ソース電極と中央
電極との間に形成された第1のトンネル障壁と、前記中
央電極と前記ドレイン電極との間に形成された第2のト
ンネル障壁とを有し、第1、第2のトンネル障壁の合成
容量Cが次の不等式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成され
ている。
【0017】磁場検出時には、少なくともソース電極を
超伝導・常伝導相転移温度以下に保持し、かつ、中央電
極の電位を所定値に保ち、ソース・ドレイン間に、所定
の電圧ne/2C+Δ/eの近傍で変動する電圧を印加
し、ソース・ドレイン電流のコンダクタンスが急激に変
化する、ソース・ドレイン間電圧の閾値に対応する磁場
を求める。
【0018】上記の第2の磁場検出素子は、超伝導体で
構成されているソース電極がアップスピン電子とダウン
スピン電子とをドレイン電極に供給する機構は、第1の
磁場検出素子と同様である。
【0019】しかし、第2の磁場検出素子においては、
ドレイン電極が強磁性体で構成されているので、その動
作が第1の磁場検出素子とは基本的に異なる。第1の磁
場検出素子においてはソース電極とドレイン電極とがい
ずれも超伝導体で構成されているので、これらのどちら
の電極においても、磁場が印加されたときには、電子対
の縮退したエネルギー帯がゼーマン効果によってアップ
スピンエネルギー帯とダウンスピンエネルギー帯とに分
裂する。したがって、ソース電極とドレイン電極との電
子エネルギー帯構造は、ほぼ、同一である。その結果、
ソース電極から発射された電子は、ほとんど、スピン散
乱を受けることなくドレイン電極を通過することができ
る。しかし、第2の磁場検出素子においては、ドレイン
電極が強磁性体であるので、例えば、次のことが起こり
得る。素子に飽和磁場以上の強磁場が印加されたとき、
ダウンスピンエネルギー帯が充満して、しかも、そのエ
ネルギー帯の位置が素子のフェルミレベルよりかなり下
方に位置することがある。そのようなときには、ソース
電極から発射されたダウンスピン電子はトンネル効果に
よってドレイン電極中に浸透することができないで、中
央電極とドレイン電極との界面で散乱される。その結
果、ダウンスピン電子に対しては、この磁場検出素子の
磁気抵抗は非常に大きくなる。また、このようなときに
は、アップスピンエネルギー帯は、フェルミレベルと同
程度であるから、アップスピン電子に対しては磁気抵抗
は非常に小さくなる。
【0020】さらに、強磁性体の特徴として磁気履歴特
性がある。この特性のために、強磁性体のスピンの向き
は、前回印加された磁場の向きや強度に左右される。こ
の点が第1の磁場検出素子とは非常に異なる点である
が、この磁気履歴特性を利用して、第2の磁場検出素子
にはメモリへの応用という新たな応用範囲が創生され
る。
【0021】本発明の第3の磁場検出素子は、基板上に
形成された、第1の強磁性体のソース電極と、反強磁性
体の中央電極と、第2の強磁性体のドレイン電極と、前
記ソース電極と中央電極との間に形成された第1のトン
ネル障壁と、前記中央電極と前記ドレイン電極との間に
形成された第2のトンネル障壁とを有し、前記第1、第
2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成され
ている。
【0022】磁場測定のために、予め、ソース・ドレイ
ン間電圧と中央電極の電位とをパラメータとして、磁場
に対するトンネル電流の磁気抵抗曲線を理論値および実
測値から定めておき、磁場検出時には、与えられたソー
ス・ドレイン間電圧と与えられた中央電極の電位とに対
する実測された磁気抵抗値に対応する磁場を前記磁気抵
抗曲線から求める。
【0023】第3の磁場検出素子は、超伝導体を全く用
いていないという点で(したがって、ゼーマン効果によ
って、2つのスピン量子状態を分離しないという意味
で)、第1、第2の磁場検出素子とは異なるカテゴリー
の磁場検出素子である。この素子においては、ソース電
極とドレイン電極の双方に強磁性体を用いているので、
ソース電極とドレイン電極とが逆向きに磁化している場
合には、ソース電極からどのようにスピン偏極した電子
が発射されても、ソース電極と中央電極との界面か、中
央電極とドレイン電極との界面かのどちらかで、必ずス
ピン散乱をうける。その結果、高い磁気抵抗を示す。逆
に、ソース電極とドレイン電極との磁化の方向が平行し
ているときには、中央電極のフェルミレベルに近い位置
(エネルギー軸上の位置)にある、ソース電極のエネル
ギー帯に属する電子に対して磁気抵抗は小さくなる。
【0024】例えば、残留磁化が少ない場合において、
ソース電極とドレイン電極に弱い磁場が印加されたと
き、これらの電極は逆向きに磁化される。このような場
合には磁気抵抗は非常に大きくなる。一方、磁場が飽和
磁場以上になると、ソース電極とドレイン電極とは同方
向に磁化される。このときには、磁気抵抗は小さくな
る。したがって、予め、磁場に対する磁気抵抗曲線を作
成しておくことによって、磁気抵抗を測定して磁場を求
めることができる。
【0025】第3の磁場検出素子において、ソース電極
とドレイン電極に保磁力が異なる強磁性体を用いた場合
には、両方の保磁力によって限定される磁場領域(小さ
い方の保磁力よりは大きく、大きい方の保磁力よりは小
さい磁場領域)においては、ソース電極の磁化の向きと
ドレイン電極の磁化の向きとが逆向きになるので、この
領域の磁場に対する磁気抵抗は非常に大きくなる。特
に、その磁場領域の幅が狭い場合には、この領域の磁場
に対する磁気抵抗曲線は鋭いピークを示す。このことを
利用して、この領域の磁場を高感度で検出することがで
きる。
【0026】本発明の第4の磁気検出素子は、基板上に
形成された、第1の反強磁性体のソース電極と、強磁性
体の中央電極と、第2の反強磁性体のドレイン電極と、
前記ソース電極と中央電極との間に形成された第1のト
ンネル障壁と、前記中央電極と前記ドレイン電極との間
に形成された第2のトンネル障壁とを有し、前記第1、
第2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成さ
れ、予め、ソース・ドレイン間電圧と中央電極の電位と
をパラメータとして、磁場に対するトンネル電流の磁気
抵抗曲線を理論値および実測値から定めておき、磁場検
出時には、与えられたソース・ドレイン間電圧と与えら
れた中央電極の電位とに対する実測された磁気抵抗値に
対応する磁場を前記磁気抵抗曲線から求める。
【0027】この磁気検出素子においては、磁場を変化
させて、中央電極のアップスピンエネルギー帯の位置、
および、ダウンスピンエネルギー帯の位置を変化させ、
それによって、磁気抵抗を変化させる。
【0028】前記したように、トンネル効果を実現する
ための1つの条件として、トンネル障壁の両側におい
て、同一エネルギー、同一スピンによって指定される零
でない電子波動関数が存在しなければならない。反強磁
性体のエネルギー帯の位置は磁場変化に対して殆ど変化
しないから、強磁性体によって構成される中央電極のエ
ネルギー軸上の位置を変化させることによって、ソース
電極と中央電極、中央電極とドレイン電極のエネルギー
帯が同一のエネルギーをもつ確率を変化させ、それによ
って、磁気抵抗を変化させることができる。
【0029】以上の磁場検出素子においては、ゲート電
極を取り付けることができるように、中央電極が設けら
れている。しかし、ゲート電極によって、トンネル電流
の強さを制御する必要がない場合には、例えば、強磁性
体のソース電極と強磁性体のドレイン電極とをトンネル
障壁を介して接合するだけで、第3の磁場検出素子と同
様な動作をさせることができる。
【0030】このように、ソース、ドレイン電極の1方
または双方を超伝導体で構成し、素子に磁場を印加して
ゼーマン分裂によって、縮退したエネルギー帯を、スピ
ン量子数によって指定される2つのエネルギー帯に分離
し、それぞれのエネルギー帯に属する単一電子のトンネ
ル電流によって引き起こされる現象を利用することによ
って、スピン量子数を1つの自由度として現象の制御に
使用することができる。例えば、それぞれのスピン量子
数で指定される電子によって作られる電流を重ね合わせ
て閾値特性や電流ステップの高さや該ステップが生じる
周期を自由に調節することが可能になる。
【0031】また、強磁性体と非磁性体、強磁性体と反
強磁性体を適宜配列することによって、スピンを介して
生ずる異磁性体間相互作用を利用して高感度の磁気セン
サー及び磁気メモリーを提供することができる。
【0032】
【作用】従来の単一電子素子においては、1個ずつの電
子のトンネルによる充電エネルギーだけを素子の電気特
性に取り入れようとしていた。しかし、超伝導体また
は、磁性体をトンネル接合素子の電極に用いることによ
って、電子のスピン量子数を1つの自由度として電気的
磁気的特性の構成に積極的に取り入れることが可能にな
る。例えば、上記の第2の磁場検出素子のように、超伝
導体をソース電極(例えばアルミ)に使用し、強磁性体
をドレイン電極に使用した場合には、該ソース電極の電
子エネルギー帯は磁場によってアップスピン電子エネル
ギー帯とダウンスピン電子エネルギー帯との2通りに分
裂する。これらのエネルギー帯に属する電子は1電子ず
つトンネル障壁を通過し中央電極に到達しさらにもう一
方のトンネル障壁を通過した後に強磁性電極(ドレイン
電極)に到着する。一般に強磁性体のフェルミエネルギ
ー近傍の電子は非磁性体とは異なりアップスピン電子の
エネルギー帯とダウンスピン電子のエネルギー帯を電子
が占める割合が異なっており、それが電気伝導度に反映
される。このことが電気伝導度のピークの非対称性とな
って現れ、複数個のコンダクタンスのピーク(通常は4
つ)の値からスピン偏極率が求められる。この現象は、
超伝導体または強磁性体を電極として用いたことによっ
て、現象がスピン方位(スピン量子数)に依存して発生
した典型的な例である。
【0033】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。図1は、本発明の磁場検出素子の
第1の実施形態の断面図である。本実施形態の磁場検出
素子は、次のようにして形成される。まず、シリコン基
板1上にシリコン酸化膜2を形成し、次に、ソース電
極、中央電極、ドレイン電極の位置のほぼ上方に開口を
もつPMMAレジスト膜3をマスクとして、例えば第1
種超伝導材料Alをソース電極4として約100オング
ストロームの厚さに斜め蒸着する。そのAlの表面約2
0オングストロームを酸化(自然酸化)して酸化アルミ
ニウム絶縁膜5を形成する。さらに異なる角度から中央
電極6としてAlを約100オングストローム蒸着しこ
れも同様に約20オングストロームの厚さに表面酸化し
て酸化アルミニューム絶縁膜7を形成する。次にこの酸
化アルミニューム絶縁膜7上にゲート電極(金)8をメ
タルで蒸着する。最後にPMMAレジストのもう一つの
開口から同様に第1種超伝導材料であるAlのドレイン
電極9を約100オングストロームの厚さに蒸着する。
【0034】酸化アルミニューム絶縁膜5、7がトンネ
ル障壁として働くために、酸化アルミニューム絶縁膜
5、7の厚さは、ソース電極のフェルミレベル近傍のエ
ネルギーをもつ電子がトンネルすることができるための
量子力学的条件(以下、トンネル条件と記す)を満たす
ように薄く定められる。酸化アルミニューム絶縁膜5、
7は、さらに、単一電子が熱雑音に遮蔽されないで電流
として観測されるために、次の不等式を満足するように
形成される。
【0035】C<<e2/2kT (1) ここでCは、酸化アルミニューム絶縁膜5、7の容量C
1、C2の直列合成容量(C1C2/(C1+C2)である。以下、式
(1)の条件を容量条件と記す。
【0036】前記の酸化アルミニューム絶縁膜5、7の
20オングストロームの厚さは、上記の2条件を満たす
厚さである。以下の記述において、トンネル条件と容量
条件を満たすように厚さが定められた絶縁膜の、ソース
電極と中央電極との間、および中央電極とドレイン電極
との間に介在する部分をトンネル障壁と記す。
【0037】図2は、本実施形態の磁場検出素子のクー
ロンブロッケード特性を示す。図1の素子を冷却してソ
ースとドレインを超伝導相に保ち、ゲート電圧を一定に
保った状態でソース・ドレイン間電圧(以下、ドレイン
電圧と記す)Vを変化させたとき、図2の電流Iで示さ
れているように、磁場Hが印加されていない場合には、
ドレイン電圧の特定の値V1、V2、V3・・・を閾値と
してトンネル電流が急激に変化する。また,磁場Hが印
加されている場合には、それぞれのドレイン電圧V1
2、V3・・・の正側及び負側の電圧V1ー、V1+(図2
にはV2、V3に対応する(V2ー、V2+)、(V3ー、V3+)は
記載されていない)を閾値としてトンネル電流が急激に
変化する。本実施形態においては、これらの閾値は、各
々の整数値nに対して次式で表される。
【0038】 Vn-=(ne/2C)+(Δ/e)-μH/e (2) Vn(ne/2C)+(Δ/e) (3) Vn+=(ne/2C)+(Δ/e)+μH/e (4) ここで、μは電子スピンに対するボーアマグネトン、Δ
は超伝導エネルギーギャップである。式(2)、式
(4)の-μH、+μH は電子スピンと磁場Hとの相互作
用によってシフトしたゼーマンエネルギーを表す。した
がって、±μH/eは、電子のゼーマンシフトエネルギー
を当該電子に印加される電圧に換算したした値である。
また、Δ/eは、超伝導状態において相互に反平行のスピ
ンによって結合している2つの電子を電気的に引き離す
ために必要な電圧である。nは電子の数を表す整数であ
って、ne/2Cはn個の電子が容量Cを充電するために必要
な電圧である。図2において、V1ー、V1、V1+はそれぞれ
n=1の場合のVn-、Vn、Vn+に対応する。すなわち、 V1ー=(e/2C)+(Δ/e)-μH/e (5) V1=(e/2C)+(Δ/e) (6) V1+=(e/2C)+(Δ/e)+μH/e (7) である。
【0039】H=0のときにドレイン電圧Vを0から上昇さ
せると、図2中の電流曲線I0で表されているように、電
流I0は、V=V1で急激に立ち上り、V=V2=(e/C)+(Δ/e)
まで一定に保たれる。この期間においては、合成容量C
は常に1個の電子によって充電されている。VがV2に達
すると、さらに1個の電子が、合成容量Cに充電されて
いる1個の電子のクーロン斥力に打ち勝って充電され
る。したがって、V=V3=(3e/2C)+(Δ/e)まで、合成容
量Cには常に2個の電子が充電された状態で、トンネル
電流I0は合成容量Cを通過してソ−スからドレインに流
れる。このようにして、H=0のときには、ドレイン電流I
0は、Vn=(ne/2C)+(Δ/e)、(n=1,2,3....)を閾値とし
てドレイン電圧Vの増加と共に階段状に増加する。
【0040】磁場Hが印加されると、前記したようにゼ
ーマン分裂によって、ドレイン電圧の閾値は、式
(2)、(4)および(5)、(7)で表されているよ
うに、磁場Hに比例して2つの電圧レベルに分裂する。
磁場Hが印加されている状態でドレイン電圧Vを0から上
昇させると、ドレイン電流IHはV=V1ーで急激に立ち上が
る。この電流は、磁場に平行に向くスピン(ここではダ
ウンスピンと呼ぶことにする)をもつ電子によるトンネ
ル電流Iによるものである。この電流値Iはドレイン電
圧VがV1+に達するまで維持される。この期間において
は、合成容量Cには、常に1個のダウンスピン電子が充
電されている状態で、ダウンスピン電子によるトンネル
電流がソース電極からドレイン電極へ流れる。ドレイン
電圧VがV1+に達すると、ダウンスピン電子に対して反平
行のスピンをもつ電子(ここでは、アップスピン電子と
呼ぶ)によるトンネル電流I+が急激に立ち上がる。その
結果、ドレイン電流IH(ダウンスピン電子によるトンネ
ル電流I-とアップスピン電子によるトンネル電流I+との
和)は、V1+を閾値として急激に立ち上がる。ダウンス
ピン電子とアップスピン電子とは、スピン量子数以外の
量子数は同一である(縮退している)がスピンが異なる
ので、アップスピン電子は、既に合成容量Cを充電して
いるダウンスピン電子のクーロン斥力を受けることなく
合成容量Cを充電することができる。ドレイン電圧が次
の閾値V2ー=(e/C)+(Δ/e)-μH/eに達するまで合成容量C
に1個のダウンスピン電子と1個のアップスピン電子と
が充電されている状態で、ソース電極からドレイン電極
にダウンスピン電子とアップスピン電子とによるドレイ
ン電流IHが流れる。このような動作を繰り返して、ドレ
イン電流IHはVn-、Vn+ (n=1,2,3...)を閾値として階段
状に変化する。
【0041】なお、図2では、図面を見易くするため
に、同じドレイン電圧範囲の同じ大きさの電流を重ねな
いで分離して記述してある。例えば、曲線IHとI-とは同
一電圧V1ーで立ち上り、立ち上り後、電圧V1+まで同一電
流値をとる。同様に、電流曲線I、I0、I+は、電圧V1+
から電圧V2ー(= V2-μH/e)まで同一の電流値をとる。
【0042】最近の測定技術を考慮すれば超伝導エネル
ギーギャップΔの数百分の1以下のゼーマンシフトエネ
ルギー(μH<(Δ/100))に対応する電圧変化μH/eをも
観測可能である。このゼーマンシフトに相当する磁場は
数十ガウス以下のオーダーである。したがって、本実施
態様の磁場検出素子は、ドレイン電流が急激に変化をす
る閾値電圧の変化の観測値から数十ガウス以下の磁場を
検出することができるので、高感度の磁気センサーとし
ての機能を有する。
【0043】図3は本発明の磁場検出素子の第2の実施
形態の構成図である。本実施形態の素子の構造は、ドレ
イン電極29を強磁性金属で構成したこと以外には、図
1の磁場検出素子と同様である。すなわち、シリコン基
板1上にシリコン酸化膜A2を形成する。次にPMMA
レジスト膜3をマスクとしてアルミニューム(Al、第
1種超伝導材料)のソース電極4を約100オングスト
ローム斜め蒸着する。そのA1の表面を約20オングス
トロームだけ酸化し、酸化アルミニウム膜5を形成す
る。さらに異なる角度から中央電極6としてAlを約1
00オングストローム蒸着し、これも同様に約20オン
グストロームだけ表面酸化して酸化アルミニューム膜7
を形成する。次にこの酸化Al膜上に金のゲート電極8
をメタルで蒸着する。最後にPMMAレジスト3のもう
一つの開口からドレイン電極29として鉄を約100オ
ングストローム蒸着する。ソース電極4と中央電極6と
の間の酸化Al膜5、および中央電極6とドレイン電極
29との間の酸化Al膜7はそれぞれトンネル障壁とし
て働く。また、ソース電極4は超伝導材料であるから、
図1の素子と同様に、本実施形態の素子も超伝導相転移
温度以下で使用されることは勿論である。
【0044】図4は第2の実施形態の磁場検出素子のコ
ンダクタンス特性を示す。同図から分かるように、コン
ダクタンス曲線は、ドレイン電圧の正側と負側のそれぞ
れについて、2つのピークに分裂している。このこと
は、超伝導体中の電子のエネルギー帯が磁場により、ア
ップスピンエネルギー帯とダウンスピンエネルギー帯と
の2つの成分に分かれていることを示している。このピ
ークの位置は磁場Hの僅かの変化に対応して変化し、そ
の挙動は理論的に予測可能である。従って任意の磁場が
印加されている場合の実験値を理論曲線に合わせること
により磁場の値を正確に予知することが可能である。
【0045】またコンダクタンスは微小なゲート電圧に
よっても変調される。コンダクタンスのゲート電圧依存
性は理論計算によって容易に予測することができるの
で、コンダクタンスの実験値を理論値と比較することに
よって、ゲート電圧を定めることができる。特に、ゲー
ト電圧の変化に対するコンダクタンスの変化率はコンダ
クタンス曲線のピーク位置において大きい。したがっ
て、一定の磁場を印加した状態でドレイン電圧をコンダ
クタンス曲線のピークに対応する位置に設定し、コンダ
クタンスの変化率から理論計算によってゲート電圧の微
小変化を定めることができる。
【0046】次に、本発明の磁場検出素子の第3の実施
態様について説明する。図5は本実施形態の素子の構成
を示す図である。前記の第1、第2の実施形態は超伝導
相において電子対を形成して相互に結合している互いに
反平行のスピンをもつ2つの電子の縮退したエネルギー
がゼーマン効果によって分裂するときそのそのエネルギ
ーシフト幅が印加された磁場に比例することを利用して
当該電子が作る電流の立ち上りエッジの変化を測定して
磁場を求める素子である。それに対して、本実施形態に
おいては、磁場はソース・ドレイン間の磁気抵抗変化か
ら求られる。
【0047】そのために、本実施形態の磁場検出素子は
ソース電極とドレイン電極が強磁性体で構成され、中央
電極が反強磁性体で構成されている。まず、シリコン基
板1上にシリコン酸化膜2を形成する。次にPMMAレ
ジスト膜3をマスクとして鉄のソース電極34を約10
0オングストローム斜め蒸着する。その鉄の表面を約2
0オングストロームだけ酸化し、3・2酸化鉄膜(Fe
23)35を形成する。さらに異なる角度から中央電極
36としてクロム(反強磁性体)を約100オングスト
ローム蒸着し、その表面を約20オングストロームだけ
表面酸化して酸化クロム膜(Cr23)37を形成す
る。次にこの酸化クロム膜上に金のゲート電極8をメタ
ルで蒸着する。最後にPMMAレジスト3のもう一つの
開口からドレイン電極39として鉄を約100オングス
トローム蒸着する。ソース電極34と中央電極36との
間の酸化鉄膜35、および中央電極36とドレイン電極
39との間の酸化クロム膜37はそれぞれトンネル障壁
として働く。この素子には、第1、第2の実施態様のよ
うに、超伝導相のソース電極またはドレイン電極中の電
子対を利用するのではないので常温で使用する。
【0048】この構造では、素子に印加される磁場が弱
い場合には、ソース電極の磁化の向きとドレイン電極の
磁化の向きが相互に逆向きになる(このことは磁石を非
磁性体で隔てた場合を想像すれば容易に理解される)。
その結果、磁場が弱いときには、ソース電極とドレイン
電極の強磁性体の、フェルミレベル近傍の電子スピンは
互いに反対方向を向く。
【0049】周知のように、電子がトンネル障壁をトン
ネルして流れるためには、そのトンネル障壁の両側にお
いて同一の量子数によって指定される電子の零でない波
動関数が存在しなければならない。この条件を本実施態
様に適用すると、トンネル障壁35の両側にあるソース
電極34と中央電極36とについて、それらの電極34
のアップスピン帯と電極36のアップスピン帯にエネル
ギー値が等しい領域(エネルギー値が重なる領域)、す
なわち、スピン量子数もエネルギー量子数も等しいエネ
ルギー帯領域が存在しなければならない。または、電極
34のダウンスピンエネルギー帯と電極36のダウンス
ピンエネルギー帯にエネルギー値が等しい領域が存在し
なければならない。したがって、もし、ソース電極34
の電子エネルギー帯と中央電極36の電子エネルギー帯
に同一エネルギー値をもつエネルギー領域があっても、
それらの電子エネルギー帯に関連する電子スピンの向き
が異なれば、トンネル障壁をトンネルして通過する電子
の波動関数(確率)は急激に減衰する。すなわち、ソー
ス電極34から中央電極36へ向かって流れる電子はト
ンネル障壁をトンネルすることができない。したがっ
て、この場合には、両電極の境界でスピン散乱を受け
る。同様なことが、中央電極36とドレイン電極39に
ついても成り立つ。すなわち、中央電極36の電子のス
ピンの向きとドレイン電極39の電子のスピンの向きが
異なるときには、中央電極36とドレイン電極39との
境界において、電子はスピン散乱される。
【0050】前記したように、磁場が弱いときには、ソ
ース電極34とドレイン電極39の鉄の電子スピンが互
いに逆方向を向いており、かつ、鉄のアップスピン帯と
ダウンスピン帯との間にはエネルギー差があるので、例
えば、もし、ソース電極を構成する鉄のアップスピンエ
ネルギー帯のエネルギー準位が、中央電極36を構成す
るクロムのフェルミレベルとほぼ等しい場合には、ソー
ス電極34のアップスピン電子は、ソース電極24と中
央電極36との境界において、散乱を受けずに中央電極
36にトンネルすることができる。しかし、ドレイン電
極39を構成する鉄の電子のスピンの向きは逆方向(ダ
ウン方向)を向いているので、ソース電極34から中央
電極36に流れ込んだアップスピン電子は、中央電極3
6とドレイン電極39との境界でスピン散乱されること
になる。このように、磁場が弱いときには、ソース電極
34とドレイン電極39とは、逆向きに磁化されるの
で、ソース電極の鉄からドレイン電極の鉄へ電子が移動
するときには、その電子は必ずソース電極とドレイン電
極のどちらかと中央電極との界面でスピン散乱される。
その結果、ゼロ磁場近傍では、非常に大きな磁気抵抗効
果が発生する。
【0051】一方、磁場が強くなって飽和磁場に近付く
と、両電極のスピンの方向が揃いはじめる。ソース電極
34とドレイン電極39が鉄で中央電極36がクロムの
場合において飽和磁場が印加されたときには、ソース電
極とドレイン電極の鉄の電子はダウンスピン状態にあ
り、このダウンスピンエネルギー帯とクロムのフェルミ
エネルギーはほぼ一致している。その結果、伝導電子は
鉄とクロムとの界面で散乱を受けずにトンネルするので
トンネル電流に対する電気抵抗は低い。また、磁場を飽
和磁場程度の強磁場下で反転すると、アップスピンエネ
ルギー帯がクロムのフェルミエネルギーと一致する。そ
の結果、アップスピンの電子は界面でスピン散乱を受け
ずに移動することができるので、この場合もトンネル電
流に対する電気抵抗は低い。
【0052】このように、磁場が小さいときには磁気抵
抗が大きくなり、磁場が大きくなると磁気抵抗は小さく
なる。この最大磁気抵抗と最小磁気抵抗(飽和磁場にお
ける磁気抵抗)の差の絶対値を最小磁気抵抗で割ったも
のをMR比と呼びFe/Cr人工格子の場合には200
パーセント近い値が実験で観測されている。したがっ
て、この磁気抵抗の磁場依存性を利用して磁場を測定す
ることができる。
【0053】図6は、上記の磁気抵抗が発生する理由を
模式的に説明する図である。図において、網掛けで表現
された部分は強磁性体の部分で、白い部分は反強磁性体
の部分を表し、太い矢印は強磁性体の磁化の向きを表
す。また、小円と、その中に描かれた小さい矢印は電子
とそのスピンの向きを示す。(a)は磁場が弱く、強磁
性体が交互に逆向きに磁化されていて(反強磁性配
列)、電子は、そのスピンの方向に対して逆向きに磁化
されている強磁性体と反強磁性体との界面で散乱されて
いる様子が示されている。この散乱により磁気抵抗が大
きくなる。(b)は磁場が強く、強磁性体が同じ向きに
磁化されていて(強磁性配列)、電子が強磁性体と反強
磁性体との界面で散乱されないでトンネルする様子が示
されている。この場合には磁気抵抗は小さい。
【0054】本実施形態の1実施例として、ソース電極
とドレイン電極を保磁力の異なる強磁性体で構成し、中
央電極を反強磁性体で構成することによって、その異な
る2つの保磁力値によって限定される磁場領域(小さい
方の保磁力よりも大きく、大きい方の保磁力よりも小さ
い磁場範囲)で鋭い磁気抵抗特性をもつ磁場検出素子を
作ることができる。
【0055】図7は、この実施例を説明するっための、
保磁力が異なる2つの強磁性体の磁気履歴曲線の1例を
示す図である。図8は、図7の磁気履歴特性をもつ強磁
性材料をソース電極、ドレイン電極に用いた場合の磁場
検出素子の磁気抵抗特性図である。
【0056】図7において、2つの磁気履歴曲線のう
ち、内側の磁気履歴曲線は強磁性材料1の曲線であり、
外側の磁気履歴曲線は強磁性材料2の曲線である。い
ま、これらの強磁性材料1、2に磁場Hを印加し、その
磁場Hを図7の負側から正側に変化させるとする。初め
(Hが負方向を向き、絶対値が大きいとき)は、どちら
の材料の磁化F1、F2の方向も負方向↓↓に向いてい
る。磁場Hが強磁性材料2の保磁力に該当する値H2ー
達すると、材料2の磁化の方向は反転し、強磁性材料
1、2の磁化F1、F2の方向はそれぞれ↓↑になる。磁
場がさらに変化して材料1の保磁力に該当する値H1ー
達すると、材料1の磁化の方向が反転し、強磁性材料の
磁化F1、F2の方向は↑↑になる。さらに、磁場Hを正
方向に変化させても、磁化の方向はそのまま維持され
る。
【0057】同様に、磁場を図7の正方向から負方向に
変化させる場合には、初めは、強磁性材料1、2のの磁
化の向きF1、F2は↑↑である。次に、磁場Hが弱くな
って、材料2の保磁力に該当する値H2+に達すると、材
料2の磁化の方向が反転して強磁性材料1、2の磁化F
1、F2の方向はそれぞれ↑↓になる。さらに、磁場Hが
変化して材料1の保磁力に該当する値H1+に達すると、
材料1の磁化の方向が反転する。その結果、強磁性材料
1、2の磁化F1、F2の方向は↓↓になる。
【0058】以上に記載は、磁気履歴曲線に基づく説明
であるので、磁化の方向という巨視的な量で議論した
が、巨視的な磁化の方向は、フェルミレベル近傍の電子
スピンの方向と考えることができるので、上記の磁化の
方向は電気伝導に寄与する電子のスピンの方向に置き換
えて考えることができる。
【0059】このような強磁性材料1、2を本実施例の
磁場検出素子のソース電極およびドレイン電極に用いる
と、磁界HがH1 とH2 との間、およびH1+とH2+との
間の磁界領域(図7の斜線部分)にある場合には、ソー
ス電極とドレイン電極の電子のスピンが逆向きになる。
したがって、図8に示されているように、磁気抵抗Rは
この磁界領域においてピークを生じる。この理由によっ
て、保持力の差が可能な限り小さい強磁性材料を用いて
ソース電極とドレイン電極を構成することにより、磁気
抵抗のピーク値が鋭くなり、さらに高感度の磁気センサ
ーを作ることができる。磁場測定のために、予め、ソー
ス・ドレイン間電圧と中央電極の電位とをパラメータと
して、磁場に対する単一電子トンネル電流の磁気抵抗曲
線を定めておき、磁場検出時には、与えられたソース・
ドレイン間電圧と与えられた中央電極の電位とに対する
実測された磁気抵抗値に対応する磁場を前記磁気抵抗曲
線から求める。
【0060】上記の実施例の磁場検出素子は、ソース電
極およびドレイン電極を構成する強磁性体の磁気履歴特
性を用いているので、素子の磁気抵抗及び磁化は磁場の
関数として不可逆的に変化する。この特性を利用して、
この素子をメモリー素子として使用することができる。
例えば、図8の磁気抵抗曲線のピーク近傍の磁気抵抗値
から磁場を検出する場合に、図8の磁気抵抗曲線から明
らかなように、同一の磁気抵抗に対応する磁場値は、磁
場の正側と負側に対称に2個存在するので、それだけで
は磁場を一義的に決定することはできない。しかし、磁
気抵抗を測定後、磁場Hを零にしたとき、もし、残留磁
化が負(図7のM)である場合には、その磁気抵抗測
定は正の磁場領域で行われたことになる。逆に、残留磁
化が正(図7のM+)である場合には、その磁気抵抗測
定は負の磁場領域で行われたことになる。このように、
ソース電極およびドレイン電極の残留磁化は、その直前
に印加された磁場の方向を記憶する。
【0061】本実施形態において、中央電極6は、トン
ネル電流に対する抵抗体として働く。したがって、中央
電極の厚さを適宜に変更することによって、磁気抵抗値
(図8の磁気抵抗曲線の高さ)を変更することができ
る。
【0062】図9は本発明の磁場検出素子の第4の実施
態様の構成を示す図である。第3の実施形態において
は、ソース電極とドレイン電極とを強磁性材料で構成
し、該ソース電極とドレイン電極のスピンの向きが、磁
場強度に応じて平行または反平行になることによって生
ずる磁気抵抗変化を測定して逆に磁場を求めたのに対し
て、本実施態様においては、ソース電極とドレイン電極
とを反強磁性材料で構成し、中央電極を強磁性材料によ
って構成し、中央電極のアップスピン伝導電子のエネル
ギー帯の位置およびダウンスピン伝導電子のエネルギー
帯の位置が、磁場とスピン磁気モーメントとの相互作用
によって磁場に依存して変化することを利用して磁場を
検出する。
【0063】そのために、まず、シリコン基板1上にシ
リコン酸化膜2を形成する。次にPMMAレジスト膜3
をマスクとしてクロム(反強磁性体)のソース電極44
を約100オングストローム斜め蒸着する。そのクロム
の表面を約20オングストロームだけ酸化し、酸化クロ
ム膜(Cr23)45を形成する。さらに異なる角度か
ら中央電極46として鉄を約100オングストローム蒸
着し、その表面を約20オングストロームだけ表面酸化
して3・2酸化鉄膜(Fe23)47を形成する。次に
この3・2酸化鉄膜上に金のゲート電極8をメタルで蒸
着する。最後にPMMAレジスト3のもう一つの開口か
らドレイン電極49としてクロムを約100オングスト
ローム蒸着する。ソース電極44と中央電極46との間
の酸化クロム膜37および中央電極36とドレイン電極
39との間の酸化鉄膜45はそれぞれトンネル障壁とし
て働く。
【0064】本実施形態の磁場検出素子において、磁場
Hが弱いときには、中央電極のダウンスピンエネルギー
帯はソース電極およびドレイン電極のフェルミレベルよ
り下に位置するけれど、中央電極のアップスピンエネル
ギー帯はほぼ前記フェルミレベルとほぼ同じ位置にあ
る。したがって、ソース電極のアップスピン電子は、ソ
ース電極と中央電極との間の界面、および中央電極とド
レイン電極との間の界面で散乱されないでトンネルする
ことができる。それであるから、磁場Hが弱いときに
は、トンネル電流に対する電気抵抗は低い。
【0065】磁場Hが強いときには、中央電極46のダ
ウンスピンエネルギー帯の位置は磁場が弱いときに比べ
てさらに下がり、また、アップスピンエネルギー帯の位
置はフェルミレベルよりも上昇する。その結果、ソース
電極44の伝導電子が中央電極46内に存在する確率
(波動関数)はほぼ零になる。また、中央電極46の伝
導電子がドレイン電極内に存在する確率もほぼ零にな
る。その結果、伝導電子は、ソース電極と中央電極との
間の界面、および中央電極とドレイン電極との間の界面
で散乱され、トンネルすることができない。したがっ
て、磁場Hが強いときにはトンネル電流に対する電気抵
抗は高くなる。本実施形態の磁場検出素子の上記の磁気
抵抗の磁場依存性を利用して単一電子のトンネル電流に
対する磁気抵抗を測定して磁場を検出することができ
る。磁場測定のために、予め、ソース・ドレイン間電圧
と中央電極の電位とをパラメータとして、磁場に対する
トンネル電流の磁気抵抗曲線を実測値から定めておき、
磁場検出時には、与えられたソース・ドレイン間電圧と
与えられた中央電極の電位とに対する実測された磁気抵
抗値に対応する磁場を前記磁気抵抗曲線から求める。
【0066】次に、本発明の第5の実施形態について説
明する。本実施形態の磁場検出素子は、ソース電極−中
央電極−ドレイン電極からなる構造をもち、ソ―ス電
極、ドレイン電極を強磁性体、中央電極を反強磁性体で
構成し、素子に印加する磁場を変調することによる単一
電子のトンネル電流の変化を利用して該印加磁場を検出
する素子である。
【0067】ソース電極とドレイン電極をトンネル障壁
なしで構成した場合、強磁性と反強磁性体の境界で電子
スピンに依存する散乱が起こる。ソースとドレインの強
磁性体のスピンが互いに反対方向を向いている弱磁場領
域では、高い電気抵抗が起こり、スピンが同じの場合電
子は境界で散乱されずにトンネルするために電気抵抗は
低い。この場合通常の反強磁性体ならばトンネル障壁が
ないために電子の1電子レベルのトンネルは困難であ
る。しかしMnOなどの絶縁性の反強磁性体を中央電極
に構成する事により強磁性−反強磁性界面でスピン散乱
と絶縁バリアーでの散乱が共存し効率的な磁気抵抗素子
が実現する。この場合は、トンネル障壁がなくとも1電
子制御のトンネルが可能となり高感度の磁気センサーが
実現する。
【0068】ソース電極とドレイン電極に保持力の異な
る強磁性体を構成した場合は、磁気抵抗曲線は2つのピ
ークを持つ不可逆的なループを描きメモリー効果を有す
る素子となる。
【0069】次に、本発明の磁場検出素子の第6の実施
態様を説明する。本実施形態の磁場検出素子は、ソース
電極−中央電極−ドレィン電極からなる構造をもち、ソ
ース電極、ドレイン電極を反強磁性体、中央電極を強磁
性体で構成し、素子に印加する磁場を変調することによ
る単一電子トンネル電流の変化を利用して、当該印加さ
れた磁場を検出する素子である。
【0070】中央電極の強磁性体のスピンを磁場で変調
することにより素子の電流のスピンの偏極率を制御する
事が可能となる。例えば中央電極が強磁性体の場合ほぼ
100パーセント近くスピンが片寄っておりスピン偏極
した電子をドレインに送り込むことができる。
【0071】次に、本発明の磁場検出素子の第7の実施
形態について説明する。本実施形態の磁場検出素子は、
ソース電極−トンネル障壁−ドレイン電極のみから構成
される構造をもち、ソース電極とドレイン電極を保
が異なる強磁性体で構成し素子に印加する磁場を変調す
ることによる単一電子トンネル電流の変化を利用する磁
場検出素子である。
【0072】図10は、本実施形態の磁場検出素子の構
成図である。シリコン基板1上にシリコン酸化膜2を形
成する。次にPMMAレジスト膜3をマスクとして鉄の
ソース電極74を約100オングストローム斜め蒸着す
る。その鉄の表面を約20オングストロームだけ酸化
し、3・2酸化鉄膜(Fe23)75を形成する。さら
に異なる角度からドレイン電極79として鉄を約100
オングストローム蒸着する。ソース電極74とドレイン
電極79として、保磁力の異なる鉄が使用される。ま
た、ソース電極74とドレイン電極79との間の酸化鉄
膜75はトンネル障壁として働く。
【0073】本実施形態においても、トンネル障壁75
は、ソース電極74とドレイン電極79との間の通常の
(伝導帯による)電気伝導を遮断し、トンネル電流を通
過させる。本実施形態の磁場検出素子のソース電極とド
レイン電極とは異なる保磁力をもつ強磁性体であるか
ら、それらの磁化Mは磁場に対して、基本的に図7の磁
気履歴曲線に従って変化する。したがって、磁場Hの大
きさが2つの強磁性体の保磁力によって限定される範囲
内(図7の斜線部、すなわち、H1+より大きくH2+より
小さい範囲、およびH2 より大きくH1 より小さい範
囲、)にあるときには、ソース電極74とドレイン電極
79とのスピンは逆方向を向く。したがって、図8に示
されているように、図7の斜線部分に対応する磁場Hで
磁気抵抗が急激に増加し、斜線部分の境界の少し外で
は、双方の強磁性体のスピンは揃って磁気抵抗が急激に
減少する磁気抵抗特性が得られる。磁場測定のために、
予め、ソース・ドレイン間電圧をパラメータとして、磁
場に対するトンネル電流の磁気抵抗曲線を理論値および
実測値から定めておき、磁場検出時には、与えられたソ
ース・ドレイン間電圧に対する実測された磁気抵抗値に
対応する磁場を前記磁気抵抗曲線から求める
【0074】本実施形態においては、保磁力が異なる2
つの強磁性体をトンネル障壁を隔てて接続されているの
で、強磁性体間のスピンースピン相互作用が緩和され、
その結果、磁場が図7の斜線部分の外から内に入って今
まで平行であったソース電極とドレイン電極のスピンの
一方が反転して相互に反平行になるとき、双方の強磁性
体のスピンは、互いに他方に影響されずに、ほぼ独立に
反転することができる。また、第3の実施形態に関連し
て述べたように、2つの強磁性体の磁気履歴曲線は磁場
の変動に対して不可逆的な挙動を示すので、メモリーと
しての機能をもたせることができる。
【0075】本実施形態の素子が、その磁場検出効果を
顕著に現すためには、2つの強磁性体の保磁力の絶対値
の差が少ない方が好ましい。それは、図7の斜線で示さ
れた領域の幅が狭い程、その磁場領域の磁気抵抗が急激
に増加するためである。
【0076】次に、本発明の第8の実施形態について説
明する。本実施形態は、第2乃至第4の実施形態の素子
を用いて強磁性体のスピンの偏極率を測定するスピン偏
極率測定素子である。素子の構造およびその製法は第2
乃至第4の実施形態と同様であるので、ここではその記
述を省略し、第2の実施形態の素子を用いた例のみを説
明する。
【0077】スピン偏極率とは素子のアップスピン電子
の数とダウンスピン電子の数との割合である。具体的に
は素子に磁場を印加しコンダクタンスをソースとドレイ
ン間の電圧の関数として測定し、コンダクタンスのピー
ク値を利用して磁性体のスピン偏極率を定める。
【0078】第2の実施形態の磁場検出素子のコンダク
タンスードレイン電圧特性曲線は図4のようになる。図
4においては、ドレイン電圧Vが正の領域では、ソース
電極は超伝導体で構成されているので、2つのピークの
比P3/P4は、当該超伝導体中のダウンスピン電子数と
アップスピン電子数との比を表す。P3がP4よりも大き
い理由は、フェルミディラック分布曲線から明らかなよ
うに、フェルミレベル付近では電子が低いエネルギー準
位を占める確率は高いエネルギー準位を占める確率より
も高いことに対応する。
【0079】同様に、図4の電圧Vの負側領域ににおい
ては、ソース電極は強磁性体によって構成されることに
なる。したがって、電圧Vの負側領域におけるコンダク
タンスの比P2/P1は、磁場が印加されたとき、強磁性
体中のダウンスピンとアップスピンとの比に対応する。
強磁性体には磁気履歴があるので、比P2/P1 の値の
みからさらに推論を進めることはできない。
【0080】図4の曲線から、磁場検出素子全体のスピ
ン偏極率は次式で決定される。 スピン偏極率=[(P3-P2)-(P4-P1)]/[(P3-P2)+(P4-P1)] (8) ここで、素子の第1の電極をソース電極とし、第2の電
極をドレイン電極としてソース電極に対してドレイン電
極に正電圧を印加した場合にその電圧を図の原点から右
側にとるものとすると、原点から左側の電圧、すなわ
ち、負の電圧は、第2の電極をソース電極とし、第1の
電極をドレイン電極としたとき、ソース電極に対してド
レイン電極に印加された正の電圧を表す。したがって、
図4において電圧Vの負領域において電圧の正方向の変
化δVは、実際には、ドレイン電圧の減少(ーδV)を
意味する。図中、記号P1、P2で表されているコンダクタ
ンスは、ドレイン電圧を図の負方向に変化させて測定さ
れたG=δI/δVであるから、電圧Vの正領域と同様
に、図の左から右に電圧を増加させながら(電圧Vの負
領域においては、ドレイン電圧を減少させながら)コン
ダクタンスを測定した場合には、負電圧領域のコンダク
タンスは-P1、-P2で表される。
【0081】それであるから、式(8)の(P3-P2)は、
磁場Hが加わったとき、ドレイン電極およびソース電極
におけるダウンスピン電子数の和に比例する。また、(P
4-P1)は、磁場Hが加わったとき、ドレイン電極および
ソース電極におけるアップスピン電子数の和に比例す
る。式(8)の分子の-(P4-P1)の負号は、ダウンスピン
に対するアップスピンの方向を表す。したがって、式
(8)の分子は、スピンの負号を考慮した場合の、正味
のダウンスピン数を表す。分母は、アップスピン伝導電
子とダウンスピン伝導電子の総数に比例する。それであ
るから、式(8)が正のときは素子は全体としてスピン
ダウン偏極し、式(8)が負のときには、スピンアップ
偏極していることになる。
【0082】このスピン偏極測定素子としては、第2の
実施形態の素子以外に、超伝導体−トンネル障壁−強磁
性体素子、または、超伝導体−トンネル障壁−導体−ト
ンネル障壁−強磁性体素子などを使用することもでき
る。
【0083】次に、本発明の第9の実施形態について説
明する。前掲の第1乃至第4の実施形態の素子において
は、一定の磁場を印加したとき、ドレイン電圧の変化に
対して、コンダクタンスが急激に変化する領域が存在す
る(図4参照、第1の実施形態においては、ドレイン電
流が急激に立ち上がる電圧閾値付近の領域)。したがっ
て、このこの領域における電圧の変動に対するドレイン
電流の変化を予め定めておくことによって、ドレイン電
流変化から微小な電圧変化を検出することができる。
【0084】次に、本発明の第10の実施形態について
説明する。本実施形態においては、前掲の第2乃至第8
の実施形態の素子ように、強磁性体を使用する構造にお
いて各磁性電極のサイズを微小化し各磁性体電極が単一
磁区を形成するように構成する。このように、強磁性体
の電極を単一磁区に形成する理由は、多磁区が共在して
いる場合には磁場を印加した状態においても、図11a
に示されているように、ランダムな磁化方位をもつ磁区
が存在するため、例えば、図4や図8に示されているよ
うな特性曲線が理論と対比できるような再現性のある形
状にならないからである。
【0085】強磁性層を単一磁区に形成することによ
り、磁化方位が一様になるので、磁化の反転が従来より
も弱磁場領域で実現可能となり(特に鉄の量子細線の場
合はそうである)高感度な磁気センサーが実現する。こ
のように磁性電極を微小加工して電極を単一磁区構造に
することにりょり、明確に限定された、従来よりも弱い
磁場領域で磁区の反転が可能となり磁気センサーの感度
が向上する。次に、本発明の第11の実施形態について
説明する。図12は本実施形態の磁場検出素子の構成図
である。本実施形態の素子は、第1乃至第8の実施形態
の素子構造を、複数個、周期的に連結して構成されてい
る。
【0086】本実施形態においては、第1乃至第8の実
施形態の素子を直列接合することによって素子の全電気
容量が単一接合に比べて減少するので、より安定なクー
ロンブロッケード特性が得られる。また、第3、第4の
実施形態の素子を複数個、周期配列した場合には、強磁
性体と反強磁性体との界面における電子の散乱または通
過の確率が周期配列された素子数だけ倍増するので磁気
抵抗曲線の山と谷との差が増大する。このことは磁気セ
ンサーの感度が向上することを意味している。
【0087】
【発明の効果】本発明によれば、トンネル効果によって
トンネル障壁を通る単一電子に働くクーロンブロッケー
ド効果および超伝導体に磁場を印加したときに生じるス
ピン分極効果や磁性体のスピン偏極効果を用いることに
よって、単一電子のレベルで動作する、高感度で多様な
機能をもった磁気センサーを提供することができる。
【0088】本発明のトンネル接合素子は電荷とサイズ
の自由度のみならず、スピン自由度をも具備しているの
で、それだけ応用範囲が広く、多目的に機能することが
できる。
【0089】保磁力が異なる第1の強磁性体と第2の強
磁性体とをトンネル障壁を介して接合することにより、
このトンネル接合素子に、磁場に対して鋭いピークをも
つ磁気抵抗特性をもたせることができる。この特性か
ら、磁気抵抗の当該ピーク値に対応する磁場を高感度に
検出することができる。
【0090】強磁性体の第1の電極と反強磁性体とをト
ンネル障壁を介して接合し、該反強磁性体と強磁性体の
第2の電極とをトンネル障壁を介して接合し、磁場を印
加した状態で第1、第2の電極間に電圧を印加すること
により、第1の電極と反強磁性体との間、および該反強
磁性体と第2の電極との間の境界面において電子が受け
るスピン散乱によって、トンネル電流を1電子レベルで
制御することができ、磁場に対するトンネル電流の磁気
抵抗曲線から、磁場強度を高感度で検出することができ
る。さらに、磁場一定の条件下で測定された、第1、第
2の電極間の電圧に対するコンダクタンス曲線から当該
磁場によって磁化された強磁性体における電子のスピン
偏極情報を求めることができる。さらに、また、この構
造のトンネル接合素子においては、反強磁性体にゲート
電極を設けることができる程度の表面積をもたせること
ができるので、ゲート電極に電圧を印加することによっ
て、トンネル電流を高感度に制御することができる。
【0091】反強磁性体の第1の電極と強磁性体とをト
ンネル障壁を介して接合し、該強磁性体と反強磁性体の
第2の電極とをトンネル障壁を介して接合し、第1、第
2の電極間に電圧を印加した状態で磁場を変化させるこ
とにより、第1の電極と反強磁性体との間、および該反
強磁性体と第2の電極との間の境界面において電子が受
けるスピン散乱を変化させることができ、それによっ
て、トンネル電流を1電子レベルで制御することがで
き、強磁性体電極のサイズを単一磁区を形成する程度に
微少加工することにより、弱い磁場の下でも、上記のト
ンネル接合素子の多様な機能を実現することができる。
【0092】さらに、この上記の素子を複数個直列に接
合することによって、その個数だけ増倍された磁気抵抗
をもつ磁場検出素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁場検出素子の第1の実施形態の断面
図である。
【図2】第1の実施形態の磁場検出素子のクーロンブロ
ッケード特性を示す図である。
【図3】本発明の磁場検出素子の第2の実施形態の構成
図である。
【図4】第2の実施形態のコンダクタンス特性を示す図
である。
【図5】第2の実施形態の磁場検出素子の構成を示す図
である。
【図6】強磁性体と反強磁性体とがトンネル障壁を介し
て交互に配列されたトンネル接合素子に磁気抵抗が発生
する理由を模式的に説明する図である。
【図7】保磁力が異なる2つの強磁性体の磁気履歴曲線
の1例を示す図である。
【図8】図7の磁気履歴特性をもつ強磁性材料をソース
電極、ドレイン電極に用いた場合の磁場検出素子の磁気
抵抗特性図である。
【図9】図9は本発明の磁場検出素子の第4の実施態様
の構成を示す図である。
【図10】本発明の第7の実施形態の磁場検出素子の構
成図である。
【図11】強磁性体の磁区構造を説明する図で、aは多
磁区共在構造を示し、bは単一磁区を示す図である。
【図12】本発明の第11の実施形態の、複数周期構造
の磁場検出素子の構成図である。
【符号の説明】
1 シリコン基板 2 シリコン酸化膜 3 レジスト膜 4、34、44、74 ソース電極 5、7、35、37、45、47、75 トンネル障壁 6、36、46 中央電極 8 ゲート電極 9、29、39、49 ドレイン電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−107337(JP,A) 特開 平10−209526(JP,A) 特開 平9−128719(JP,A) 特開 平9−205235(JP,A) Journal of Physic al Society of Japa n,vol.66,no.5,p.1261− 1264(1997) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 39/00 - 39/02 H01L 39/22 - 39/24 H01L 29/66 H01L 29/82 JICSTファイル(JOIS)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成された、第1の超伝導体の
    ソース電極と、導体の中央電極と、第2の超伝導体のド
    レイン電極と、前記ソース電極と中央電極との間に形成
    された第1のトンネル障壁と、前記中央電極と前記ドレ
    イン電極との間に形成された第2のトンネル障壁とを有
    し、 電子の電荷をe、電子の熱エネルギーをkTとし、nを
    正整数、Δを超伝導エネルギーギャップとするとき、 前記第1、第2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等
    式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成さ
    れ、 磁場検出時には、少なくとも第1、第2の超伝導体を超
    伝導・常伝導相転移温度以下に保ち、かつ、中央電極の
    電位を所定値に保ち、ソース・ドレイン間に、所定の電
    圧ne/2C+Δ/eの近傍で変動する電圧を印加し、
    ソース・ドレイン電流が急激に変化し、または、ソース
    ・ドレイン間電圧に対するソース・ドレイン電流のコン
    ダクタンスが急激に変化するソース・ドレイン間電圧の
    閾値に対応する磁場を求める、 磁場検出素子。
  2. 【請求項2】 基板上に形成された、超伝導体のソース
    電極と、導体の中央電極と、強磁性体のドレイン電極
    と、前記ソース電極と中央電極との間に形成された第1
    のトンネル障壁と、前記中央電極と前記ドレイン電極と
    の間に形成された第2のトンネル障壁とを有し、 電子の電荷をe、電子の熱エネルギーをkTとし、nを
    正整数、Δを超伝導エネルギーギャップとするとき、前
    記第1、第2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成さ
    れ、 磁場検出時には、少なくともソース電極を超伝導・常伝
    導相転移温度以下に保持し、かつ、中央電極の電位を所
    定値に保ち、ソース・ドレイン間に、所定の電圧ne/
    2C+Δ/eの近傍で変動する電圧を印加し、ソース・
    ドレイン電流のコンダクタンスが急激に変化する、ソー
    ス・ドレイン間電圧の閾値に対応する磁場を求める、 磁場検出素子。
  3. 【請求項3】 基板上に形成された、第1の強磁性体の
    ソース電極と、反強磁性体の中央電極と、第1の強磁性
    体と異なる保磁力を有する第2の強磁性体のドレイン電
    極と、前記ソース電極と中央電極との間に形成された第
    1のトンネル障壁と、前記中央電極と前記ドレイン電極
    との間に形成された第2のトンネル障壁とを有し、 電子の電荷をe、電子の熱エネルギーをkTとすると
    き、 前記第1、第2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等
    式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成さ
    れ、 予め、ソース・ドレイン間電圧と中央電極の電位とをパ
    ラメータとして、磁場に対する単一電子のトンネル電流
    の、ピークを有する磁気抵抗曲線を実測値から定めてお
    き、 磁場検出時には、所定のソース・ドレイン間電圧と所定
    中央電極の電位とを印加して磁気抵抗を測定し、前記
    磁気抵抗曲線の、当該実測された磁気抵抗値に対応する
    磁場を、磁場の検出値とする、 磁場検出素子。
  4. 【請求項4】 基板上に形成された、第1の反強磁性体
    のソース電極と、強磁性体の中央電極と、第2の反強磁
    性体のドレイン電極と、前記ソース電極と中央電極との
    間に形成された第1のトンネル障壁と、前記中央電極と
    前記ドレイン電極との間に形成された第2のトンネル障
    壁とを有し、 電子の電荷をe、電子の熱エネルギーをkTとすると
    き、 前記第1、第2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等
    式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成さ
    れ、 予め、ソース・ドレイン間電圧と中央電極の電位とをパ
    ラメータとして、磁場が強くなると単一電子のトンネル
    電流に対する電気抵抗が増加する、磁気抵抗曲線を実測
    値から定めておき、 磁場検出時には、所定のソース・ドレイン間電圧と所定
    の中央電極の電位とを印加して磁気抵抗を測定し、前記
    磁気抵抗曲線の、実測された磁気抵抗値に対応する磁場
    、磁場検出値とする、磁場検出素子。
  5. 【請求項5】 基板上に形成された、第1の強磁性体の
    ソース電極と、第1の強磁性体と保磁力が異なる第2の
    強磁性体のドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレ
    イン電極との間に形成されたトンネル障壁とを有し、 電子の電荷をe、電子の熱エネルギーをkTとすると
    き、 前記第トンネル障壁の容量Cが次の不等式 C<<e2/2kT を満たすようにトンネル障壁は形成され、 予め、ソース・ドレイン間電圧をパラメータとして、磁
    場に対する単一電子のトンネル電流の、ピークを有する
    磁気抵抗曲線を実測値から定めておき、 磁場検出時には、所定のソース・ドレイン間電圧を印加
    して磁気抵抗を測定し、前記磁気抵抗曲線の、当該測定
    された磁気抵抗値に対応する磁場を磁場の検出値とす
    、磁場検出素子。
  6. 【請求項6】 基板上に形成された、第1の超伝導体の
    第1の電極と、導体の中央電極と、第2の超伝導体また
    は強磁性体の第2の電極と、前記第1の電極と中央電極
    との間に形成された第1のトンネル障壁と、前記中央電
    極と前記第2の電極との間に形成された第2のトンネル
    障壁とを有し、 電子の電荷をe、電子の熱エネルギーをkTとすると
    き、 前記第1、第2のトンネル障壁の合成容量Cが次の不等
    式 C<<e2/2kT を満たすように、第1、第2のトンネル障壁は形成され
    たトンネル接合素子であって、 少なくとも第1電極を超伝導・常伝導相転移温度以下に
    保ち、かつ、中央電極の電位および磁場を所定値に保
    ち、第1・第2の電極間に印加される電圧に対する第1
    ・第2の電極間を流れるトンネル電流のコンダクタンス
    を測定し、そのコンダクタンス曲線のピーク値から当該
    磁場によって誘起されている第1の電極におけるスピン
    の偏極の割合、および第1・第2の電極におけるスピン
    の偏極の割合を定めるスピン偏極率測定装置。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至4に記載の磁場検出素子と
    同一の構成を有し、かつ、同一の動作を行うトンネル接
    合素子であって、ソース電極とドレイン電極との間に印
    加される電圧、および磁場をパラメータとして中央電極
    に印加されるゲート電圧に対する、ソース電極とドレイ
    ン電極間を流れるトンネル電流の特性曲線を予め定めて
    おき、当該特性曲線に基づいてトンネル電流の実測値か
    ら対応するゲート電圧を定める電圧測定装置。
  8. 【請求項8】 各強磁性体によって構成される電極が、
    サイズが微小化されて単一磁区を形成する請求項2乃至
    4に記載の磁場検出素子。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至4に記載の磁場検出素子が
    直列に複数個接合されて成る磁場検出素子。
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