JP3027822B2 - 荷電粒子ビームのマイクロバンチング方法及びそのための装置 - Google Patents

荷電粒子ビームのマイクロバンチング方法及びそのための装置

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JP3027822B2 JP6037315A JP3731594A JP3027822B2 JP 3027822 B2 JP3027822 B2 JP 3027822B2 JP 6037315 A JP6037315 A JP 6037315A JP 3731594 A JP3731594 A JP 3731594A JP 3027822 B2 JP3027822 B2 JP 3027822B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、荷電粒子加速器や荷電
粒子蓄積リングにおける荷電粒子ビームのマイクロバン
チング方法とその装置に関する。また、本発明はマイク
ロバンチした電子ビームからのコヒーレント放射光発生
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】直線加速器やシンクロトロン放射光装置
に使われる高周波加速装置は、荷電粒子ビームをその周
波数に対応した波長である数10cm程度にバンチさせ
る。バンチした荷電粒子ビームを偏向磁石で曲げるとき
に、波長数cm程度のコヒーレント放射光が放出される
ことが既に知られているが、その強度は実用レベルより
もはるかに低いものである。
【0003】周回する電子ビームを光学領域、すなわ
ち、数μm以下の波長でバンチさせるには、アンジュレ
ータと呼ばれる数mに及ぶ周期磁場をシンクロトロン放
射光装置の直線部分に挿入する方法がある。また、既
に、発明者らによって、光蓄積リングと名付けられた新
しいタイプの自由電子レーザーが提案されている(例え
ば、特開平2−170590号公報、特開平2−239
600号公報参照)。この光蓄積リングでは、電子は電
子軌道上を周回している。この光蓄積リングは、図6に
全体構成を示すように、外見は電子蓄積リングである。
【0004】すなわち、図6において、1は完全円形の
電子軌道、3はRF加速空洞、4は円筒型光共振器、6
は円筒型ヨークである。このように、電子蓄積リング
は、完全円形の電子軌道1をもち、電子軌道1の周囲に
は同心の円筒型(またはバレル型)光共振器が取り付け
られている。光蓄積リングは、常導電で構成され、電子
エネルギーは、50Mev程度が適当とされており、電
子の軌道半径は、約15cm、シンクロトロン放射光装
置の直径は1mとなり、世界最小の電子蓄積リングとな
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た高周波加速装置は、周波数数10GHz程度が限界で
あり、数100μm以下のマイクロバンチを生成するこ
とは困難である。アンジュレータは、直線部のないシン
クロトロン放射光装置には適用することができないため
に、小型化が困難であるとともに、アンジュレータ部以
外のベンディングセクションからコヒーレント放射光の
発生を期待することはできない。
【0006】光蓄積リングは電子軌道の外側にとりつけ
た反射手段により蓄積された放射光と、電子ビームを相
互作用させて電子ビームから光の強制誘導放出を行う、
いわゆる自由電子レーザーであるが、波長10μm以下
の発振が困難である。本発明は、上記問題点を除去し、
荷電粒子ビームにマイクロバンチを生成させ、荷電粒子
ビームの輝度を上げるとともに、短波長のコヒーレント
放射光を生成可能な荷電粒子ビームのマイクロバンチン
グ方法及びそのための装置を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、電子、陽電
子、あるいはイオン等の荷電粒子に対して同様に作動す
るため、特に断らない限り、以下では電子の場合を記述
する。本発明は、上記目的を達成するために、電子ビー
ムをマイクロバンチングさせる方法において、電子ビー
ム輸送系のベンディングセクションにおいて、電子ビー
ムとレーザービームを相互作用させて、前記電子ビーム
にマイクロバンチを生成させて、その輝度を上げ、コヒ
ーレント放射光を放出するようにしたものである。な
お、前述の荷電粒子がイオン等の核子や重粒子である場
合には、マイクロバンチが生成しても、コヒーレント放
射光及び放射光の発生を伴わない。
【0008】その場合、電子ビームのマイクロバンチ
を、適切なベータトロン振動の振動数、ベンディングセ
クションにおける電子の曲率半径、レーザービームの波
長、レーザービームの強度に基づいて生成するようにし
たことを特徴としている。次に、電子ビームのマイクロ
バンチング装置において、電子ビームを加速する手段
と、電子ビームを輸送する手段と、電子ビームを偏向す
るベンディングセクションと、このベンディングセクシ
ョンにおいて電子ビームとレーザービームを相互作用さ
せる手段と、ベンディングセクションにおいてコヒーレ
ント放射光を放出する手段を設けるようにしたものであ
る。
【0009】その場合、ベータトロン振動の振動数を設
定する手段、電子の曲率半径を設定する手段、レーザー
ビームの波長を設定する手段、レーザービームの強度を
設定する手段を具備する。更に、電子ビームとレーザー
ビームを相互作用させる電子ビームのベンディングセク
ションには、電子ビームの高周波加速装置を併設するよ
うにし、該高周波加速と該相互作用を同期するようにし
たものである。
【0010】また、電子ビームとレーザービームを相互
作用させるベンディングセクション内の相互作用点を、
レーザー発生装置の光共振器の中に組み込み、レーザー
の内部ビームを使用して、電子ビームとレーザービーム
の強い相互作用を可能にしたものである。更にまた、電
子ビームのマイクロバンチング装置が、電子を繰り返し
利用する電子蓄積リングの場合、電子ブームとレーザー
ビームの位相を合わせるために、電子一周の平均軌道長
をレーザービームの波長の整数倍にしたものである。
【0011】更にまた、電子ビームのマイクロバンチン
グ装置が、電子を繰り返し利用する電子蓄積リングの場
合、電子一周の平均軌道長と、レーザー発生装置の光共
振器長の比を、1にするかまたは整数にしたものであ
る。また、電子ビームのマイクロバンチング装置が、電
子ビームを繰り返し利用する電子蓄積リングの場合に、
ベンディングセクションで電子ブームとレーザービーム
を相互作用させてマイクロバンチを生成し、他のベンデ
ィングセクションで発生するコヒーレント放射光を、電
子軌道の外周を取り巻く反射手段で反射させ、その反射
手段内に蓄積して利用する手段を設けるようにしたもの
である。
【0012】
【作用】本発明によれば、上記した方法と装置により、
電子加速器や、電子蓄積リングの電子輸送系のベンディ
ングセクションで電子ビームとレーザービームを相互作
用させることにより、電子とレーザーの間に共鳴的なエ
ネルギーの授受を起こさせ、電子ビームにレーザー波長
のオーダーでマイクロバンチを生成させる。そして、こ
のマイクロバンチから放出されるシンクロトロン放射光
は、マイクロバンチの長さより長波長の光でコヒーレン
ト光となる。
【0013】電子ビームとレーザービームを共鳴させる
条件としては、ベンディングセクションの相互作用を行
わせる領域で、電子ビームのレーザー方向の速度とレー
ザーの位相を殆ど同じにし、更にレーザービームの強度
を適切な値に設定する。また、電子のベータトロンの振
動数、電子の軌道半径、レーザービームの波長を調整す
るようにしてもよい。
【0014】作用として、電子加速器や電子蓄積リング
では、電子ビームサイズが絞られ、輝度が上がることに
なり、コヒーレント放射光の放出が起こり、シンクロト
ロン放射光装置の利用効率が上がる。更にまた、電子ビ
ームのマイクロバンチングをX線の波長領域とすれば、
シンクロトロン放射光のX線成分の強度が増加する。こ
うして小型の電子蓄積リングでX線の発生が可能にな
る。
【0015】本発明は、イオン等の荷電粒子ビームの加
速装置にも適用することができ、イオンビームの輝度を
上げることになる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について図を参照しな
がら詳細に説明する。図1は本発明の実施例を示す電子
ビームのマイクロバンチング装置の断面図である。図1
において、11は電子軌道を示すが、ここでは単体のダ
イボール磁石を用いた、完全円形の電子蓄積リングを採
用しており、したがって、完全円形の軌道を有する。軌
道半径は例えば150mmである。本発明は、複数の偏
向磁石を用いた直線部分のある環状の電子蓄積リングに
も適用可能であるし、電子を周回させないビーム輸送系
にも適用できるが、ここでは最も典型的な実施例を説明
する。
【0017】電子は、真空槽12内で周回し、真空度は
10-8Pa以上の高真空に保たれる。電子を周回させる
ために、紙面に垂直な方向に磁場を発生するための磁石
があり、詳細は図5で説明するが、ここでは省略されて
いて、外径約1mのシリンダー状の鉄のヨーク10のみ
を示している。電子が放射光として損失したエネルギー
を補うのがRF加速空洞25である。電子軌道の周長に
応じて、例えば、2.54GHzの高周波電場が加速ギ
ャップ26に印加されている。その最大電場は10〜1
00keVである。直線部のある通常の電子蓄積リング
では、RF加速空洞を直線部に設置することができる。
その他、電子蓄積リングに電子ビームを入射するための
磁気チャンネルやキッカーマグネットなどが図1には省
略されている。
【0018】電子のエネルギーは、例えば50MeV程
度である。13は電子ビームのマクロバンチを示してい
る。このサイズの電子蓄積リングでは、マクロバンチの
長さは1mm程度となる。マクロバンチは加速周波数に
応じて、ここでは4個が等間隔に周回している。次に、
14はレーザービームが通るパスを示している。15は
レーザーの本体であり、例えばCO2 レーザーを使用す
るならば、そのガスセルを示している。16及び17は
レーザー発振のための一対の光共振器である。18は平
面反射ミラーであるが、X線を透過するためにミラーコ
ーティングをした薄膜を使用することもある。光学系に
よっては、平面反射ミラー18に放物面鏡などの収束ミ
ラーを使用しても良い。
【0019】本電子ビームのマイロバンチング装置は、
前記した内部レーザービームを使用した構成例である。
すなわち、ベンディングセクション内の電子ビームとレ
ーザービームの相互作用点19が、一対の光共振器16
と17の内部に組み込まれている。レーザーには、CW
(連続)レーザー、パルスレーザーのどちらも採用可能
である。レーザーの光共振器長は、相互作用点19で電
子ビームとレーザービームがいつも同じ位相で相互作用
するように、基本として電子軌道の周長の半分に設定す
る。しかし、その整数倍であっても良いし、整数分の1
でも良い。CWレーザーで、その光共振器長を波長の整
数倍にして、スタンディングウェーブにするときには、
電子軌道の周長も波長の整数倍にするのが望ましい。パ
ルスレーザーの場合には、電子ビームのマクロバンチ1
3とレーザーパルスが相互作用点19でいつも交わるよ
うに、同期をとらなくてはならない。例えば、RF加速
のための高周波をピックアップしてレーザーにトリガー
をかける。
【0020】このような装置を用いて、電子ビームとレ
ーザービーム14を相互作用点19で繰り返し共鳴的に
相互作用させることにより、電子ビームのマイクロバン
チ21が生成する。マイクロバンチから放射されるシン
クロトロン放射光は、コヒーレントになり、真空窓22
より放出される。これをコヒーレント放射光と呼ぶが、
CO2 レーザーを使用するとき、数μmより長波長でコ
ヒーレント光となる。このとき強度は、マイクロバンチ
内の電子数の自乗に比例する。
【0021】電子ビームとレーザービームの相互作用
は、電子ビームが弧を描くときにエネルギーの授受が起
こり、電子ビームのレーザーの進行方向の速度成分がレ
ーザービームの位相速度とほぼ同じであるときに、相互
作用は共鳴的となる。レーザービームと電子ビームの相
互作用は、相互作用点を中心にした相互作用長の長さに
より異なるので、電子ビームとレーザービームの交わら
せ方により、授受するエネルギーを変えることができ
る。
【0022】共鳴条件の設定には、(1)電子のベータ
トロン振動の振動数を調整する。(2)電子の軌道半径
を調整する。(3)レーザービームの波長を調整する。
(4)レーザービームの強度を調整する。などの手段が
ある。ここで、共鳴に必要な、レーザービームと電子ビ
ームの1回の相互作用で授受するエネルギーは、1次の
オーダーの議論で、次の式で与えられる。
【0023】 γres /γ0 =[2λνψ/ρ〔2π−sin(2πν)/ν〕]×sin (ωt) …(1) ここで、γres は1回の相互作用のエネルギー、γ0
電子の中心エネルギー、λがレーザービームの波長、ν
がベータトロン振動の振動数、ωはレーザーの周波数、
ρは電子の軌道半径である。ψは無次元の量であるが、
レーザービームの強度により変更できる。前記(1)式
は完全円筒の電子蓄積リングに適用されるが、直線部分
を有する蓄積リングに対しても同様の式を導くことがで
きる。
【0024】また、前記(1)式は、図1の平面内のベ
ータトロン振動のみを考慮しており、紙面に垂直な方向
のベータトロン振動を考慮していない。但し、垂直方向
のベータトロン振動の影響は僅かである。ここで、電子
ビームのマイクロバンチングを最も効果的に行うには、
通常ψ=0.25に設定するが、これは電子のレーザー
光に対する相対的な位相を、一周後に最大λ/4変更す
ることを意味している。このことにより、電子は光の波
の節の位置に集積する結果となる。集積した電子は、も
はや光の電場より力を受けないために、その位相に滞在
する。ψは0.1〜0.5で効果が顕著であるが、レー
ザービームの強度を大きくして、ψを0.5よりも大き
くした場合、マイクロバンチングは起こらない。
【0025】前記(1)式からも明らかなように、本発
明においては、レーザービームの波長λ、ベータトロン
振動の振動数ν、電子の軌道半径ρによって共鳴に必要
なエネルギーが異なる。したがって、ψに対応した適切
なレーザーパワーを与えた後に、共鳴条件を調整する手
段としてν、ρを変更する手段がある。λを変更する手
段は原理的に成り立つが、連続的な変更が困難であり、
非現実的である。
【0026】前述のマイクロバンチングの過程を図示し
たのが図2である。図2は、縦軸にレーザービームの電
場の大きさを示している。横軸はレーザービームと電子
ビームの相互作用点における電子軌道に沿った座標を示
している。図2(a)は光と電子が相互作用する前の状
態を示したもので、初めに電子はA,B,C…で示すよ
うに電子軌道方向に均一に分布している。図2(b)は
電子が軌道を一周した後に同じ場所に戻った状態を示し
ている。相互作用の結果、図2(a)のA、Fの位置の
電子は光より最大の電場の力を受けて後に最大の変位を
行って、一周後にA′、F′の位置に変位する。E,
C,Iに有った電子は力を受けず、したがって変位をせ
ず、同じ位相であるE′,C′,I′に留まる。B,
D,H,Gの電子はA,Fの約半分の力を受けて、B,
Hは節の位置に集まる。これを2度繰り返せば、ほとん
どの電子が節の位置に集まる結果となる。即ち、電子ビ
ームのマイクロバンチング化が進行する。
【0027】相対論的な電子は、エネルギーに多少の違
いがあっても殆ど光速で進むにもかかわらず、位相が前
後するような変位を行う理由は、エネルギーにより曲率
半径が異なるからである。すなわち、エネルギーの高い
電子はより外側を走り、低い電子はより内側を走るため
である。更に、電子は電子蓄積リングの中を動径方向及
び軸方向にベータトロン振動を行いながら走っているた
めに、このベータトロン振動の振動数や振幅の大きさに
より変位の大きさが異なってくる。前記(1)式は動径
方向のベータトロン振動を考慮して得られた共鳴条件で
ある。垂直方向の振動は僅かであるが、大きな場合には
補正が必要である。
【0028】更にまた、実際に電子蓄積リングを周回す
る電子は、中心エネルギーの周りに分布を持っている。
そして、エミッタンスと言われる電子蓄積リングの固有
値に従って、ベータトロン振動の振幅を持つ。そこで、
実際の電子蓄積リングのパラメーターからエネルギーの
広がりや、電子軌道の広がりを考慮してシュミレーショ
ンを行った結果が図3である。
【0029】図3は本発明によるレーザービームの強度
に関係したパラメータψを変数として、電子の挙動を示
した図である。図3(a)〜(f)はそれぞれ横軸に軌
道方向の変位を、縦軸に動径方向の変位をとって表示し
ている。ここでは、電子の初期条件として高周波加速の
位相がゼロのものだけを取り扱っている。すなわち、は
じめに電子は全くばらけていないものとして扱ってい
る。
【0030】図3(a)に示すように、レーザービーム
の強度がψ=0.01の場合には、電子はばらけてい
る。また、図3(e)、(f)に示すように、レーザー
ビームの強度が、ψ=0.5を越えるときにも電子はば
らけている。これに対して、図3(b)、(c)及び
(d)に示すように、レーザービームの強度のパラメー
タψが0.125〜0.5の場合、電子は軌道方向の特
定の場所にレーザー波長の長さで、すなわち、この例で
は10μmで集積することが分かる。一箇所のみに強く
集結しているのは、電子の初期条件のためである。
【0031】図4はRF加速電圧を印加した例である。
電子ビームも初期値として動径方向に一様に分布してい
る実際の電子ビームに近い状況を取り扱っている。図
は、縦軸に電子エネルギーの平均からの変位を示し、横
軸は、図3と同じく軌道方向の変位を示している。図は
いずれも10回転後の電子ビームの状態を示している。
図4(a)は、レーザーを切り、RF加速だけを行った
例で、電子ビームはばらけて広がっている。但し、mm
のオーダーで観測した場合、RF加速によるマクロバン
チは形成されている。図4(b)は、RF加速とともに
ψ=0.25に対応するレーザー強度を適用している。
横軸にレーザー波長の周期でマイクロバンチングが形成
されているのがよく分かる。図4(c)では、レーザー
強度を増して、ψ=1にしたところ、図3の結果と同様
に、マイクロバンチは形成されない。そして、縦軸の分
布から分かるように、電子エネルギーのヒーティングが
起きていることが観測される。図4(d)は、RF加速
を切った場合であるが、この場合にもマイクロバンチン
グが観測される。但し、この場合は、電子が数100回
転するとばらけてしまうのが明らかになっている。
【0032】図4の例は、RF加速を1.3keVとし
ているが、100keV程度でもマイクロバンチが形成
されることがシュミレーションから明らかになってい
る。なお、この例では、RF加速空洞の加速ギャップの
中心と、レーザービームと電子ビームの相互作用点を同
一にしているが、これが異なる場合には、RF加速の位
相と電子=レーザー相互作用点の位相の差を調整するの
が良い。
【0033】本発明の電子ビームのマイクロバンチング
装置で使用されるRF加速空洞は、以上のようにベンデ
ィングセクションに挿入されることが多いが、ここで注
意すべきことは、ベンディングセクションでは電子軌道
の平面内でシンクロトロン放射光やコヒーレント放射光
が放出されるために、これをRF空洞の外へ放出するた
めのスリットを設ける必要があることである。更にま
た、RF空洞の中心とレーザー=電子ビーム相互作用の
中心を同じにするとき、RF空洞へ外からレーザービー
ムを投入するためにスリットが必要なことである。
【0034】次に、本発明の共鳴条件(1)を調整する
手段について具体的に述べる。 (A)まず、軌道半径ρを調整するには、具体的にはR
F加速空洞の共振周波数を変更する。例えば、機械的に
RF空洞の静電容量を変更する。加速器技術ではよく知
られている。 (B)ベータトロン振動数を調整するには、具体的には
トリムコイルの電流値を変えて、磁場の動径方向の分布
を変える、すなわち、n- 値と呼ばれるフィールドイン
デックスを変更する。完全円形電子蓄積リングの場合、
トリムコイルは、図5の33に示すような、主電磁石コ
イル32の磁極と同心円をなす、いくつかの組のコイル
である。また、図5において、31は円筒型ヨーク、3
4はRF加速空洞、35は円筒型光共振器である。
【0035】(C)レーザービームの強度の変更は、レ
ーザー本体で調整するが、レーザーの種類により異な
り、CO2 レーザーの場合には、CO2 ガスの圧力と放
電電圧を変更して行われる。本実施例の電子エネルギー
50MeV、軌道半径15cm、レーザー波長10μm
の場合に必要な相互作用エネルギーγres は、約130
eVである。このような相互作用エネルギーを与えるレ
ーザーは、平均パワーとして100W程度のものが必要
とされる。
【0036】さて、このようにして、図1に示した電子
ビームのマイクロバンチング装置に、所定のマイクロバ
ンチが生成するが、このマイクロバンチから電子軌道全
周にわたってコヒーレント放射光が放出される。図1に
は、円筒型もしくはバレル型の反射手段27が、電子軌
道と同心円になるように設置されている。この反射手段
により、コヒーレント放射光は、反射手段の内部に蓄積
され、真空窓22を持つ光取り出し口より放出される。
こうして非常に輝度の高いコヒーレント放射光を提供す
ることが可能となる。もちろん、この反射手段を用いず
に、複数の光取り出し口を設けて複数のユーザーが同時
に利用することも可能である。
【0037】さて、上記実施例では、完全円形の電子蓄
積リングに電子ビームのマイクロバンチング装置を適用
したが、直線部分を有する電子蓄積リングに適用するこ
とも可能であることは、既に述べたとおりである。更
に、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本
発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これら
を本発明の範囲から排除するものではない。
【0038】
【発明の効果】以下、詳細に説明したように、本発明に
よれば、荷電粒子加速器や荷電粒子蓄積リングのビーム
輸送系の中のベンディングセクションにおいて荷電粒子
ビームとレーザービームを相互作用させるようにして、
荷電粒子ビームのマイクロバンチを生成させて、荷電粒
子ビームの輝度を上げることができる。
【0039】電子ビームや陽電子ビームがマイクロバン
チングしているとき、シンクロトロン放射光はマイクロ
バンチの長さ程度の波長領域でコヒーレント光となり、
シンクロトロン放射光の利用効率が著しく高まる。電子
ビームのマイクロバンチ長を短くしてX線の波長領域と
すれば、シンクロトロン放射光のX線成分の強度が増加
する。このため、比較的低エネルギーの小型の電子蓄積
リングでX線の発生が可能となる。そして、超小型のX
線発生装置はX線リソグラフィーや微細加工あるいは分
析に必要な光源の設備負担を大幅に軽減することができ
る。
【0040】また、電子ビームのマイクロバンチを自由
電子レーザーに適用すれば、レーザー発振を効率的に行
うことができるなどの利点がある。更に、イオン等の荷
電粒子ビームの加速装置に適用すれば、ビームの輝度を
上げることができ、ビームを効率的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す電子ビームのマイクロバ
ンチング装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例を示す電子ビームのマイクロバ
ンチング過程を示す図である。
【図3】本発明によるレーザービームの強度をパラメー
タとした電子の挙動を示す図である。
【図4】本発明によるレーザービームの強度と、RF加
速電圧の大きさをパラメータとした電子の挙動を示す図
である。
【図5】本発明が適用される完全円形電子蓄積リングの
断面図である。
【図6】従来の光蓄積リング概略構成図である。
【符号の説明】
10 ヨーク 11 電子軌道 12 真空槽 13 電子ビームのマクロバンチ 14 レーザービーム 15 レーザーの本体 16,17 光共振器 18 反射ミラー 21 マイクロバンチ 22 真空窓 23 短波長のコヒーレント放射光 25 RF加速空洞 26 加速ギャップ 27 反射手段 31 円筒型ヨーク 32 主電磁石コイル 33 トリムコイル 34 RF加速空洞 35 円筒型光共振器

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 荷電粒子ビームのマイクロバンチング方
    法において、(a)荷電粒子ビーム輸送系のベンディン
    グセクションにおいて荷電粒子ビームとレーザービーム
    を相互作用させ、(b)前記荷電粒子ビームにマイクロ
    バンチを生成させ、荷電粒子ビームの輝度を上げるとと
    もに、短波長のコヒーレント放射光を生成することを特
    徴とする荷電粒子ビームのマイクロバンチング方法。
  2. 【請求項2】 前記荷電粒子ビームのマイクロバンチ
    を、ベータトロン振動の振動数に基づいて生成させる請
    求項1記載の荷電粒子ビームのマイクロバンチング方
    法。
  3. 【請求項3】 前記荷電粒子ビームのマイクロバンチ
    を、レーザービームの周波数に基づいて生成させる請求
    項1記載の荷電粒子ビームのマイクロバンチング方法。
  4. 【請求項4】 前記荷電粒子ビームのマイクロバンチ
    を、レーザービームの強度に基づいて生成させる請求項
    1記載の荷電粒子ビームのマイクロバンチング方法。
  5. 【請求項5】 前記荷電粒子ビームのマイクロバンチ
    を、荷電粒子ビームの曲率半径に基づいて生成させる請
    求項1記載の荷電粒子ビームのマイクロバンチング方
    法。
  6. 【請求項6】 荷電粒子ビームのマイクロバンチング装
    置において、(a)荷電粒子ビームを加速する手段と
    (b)荷電粒子ビーム輸送系のベンディングセクション
    において、レーザービームを相互作用させる手段と、
    (c)前記荷電粒子ビームとレーザービームの相互作用
    により、マイクロバンチを生成させ、荷電粒子ビームの
    輝度を上げるとともに、コヒーレント放射光を放出する
    手段とを具備することを特徴とする荷電粒子ビームのマ
    イクロバンチング装置。
  7. 【請求項7】 ベータトロン振動の振動数を設定する手
    段を具備する請求項6記載の荷電粒子ビームのマイクロ
    バンチング装置。
  8. 【請求項8】 レーザービームの波長を設定する手段を
    具備する請求項6記載の荷電粒子ビームのマイクロバン
    チング装置。
  9. 【請求項9】 レーザービームの強度を設定する手段を
    具備する請求項6記載の荷電粒子ビームのマイクロバン
    チング装置。
  10. 【請求項10】 荷電粒子ビームの曲率半径を設定する
    手段を具備する請求項6記載の荷電粒子ビームのマイク
    ロバンチング装置。
  11. 【請求項11】 荷電粒子ビームとレーザービームを相
    互作用させるベンディングセクションに、荷電粒子ビー
    ムを高周波加速する手段を具備したことを特徴とする請
    求項6記載の荷電粒子ビームのマイクロバンチング装
    置。
  12. 【請求項12】 荷電粒子ビームとレーザービームを相
    互作用させているベンディングセクション内の相互作用
    点を、レーザー発生装置の光共振器の内部に組み込んだ
    ことを特徴とする請求項6記載の荷電粒子ビームのマイ
    クロバンチング装置。
  13. 【請求項13】 荷電粒子ビームのマイクロバンチング
    装置が、荷電粒子ビームを繰り返し利用する、荷電粒子
    蓄積リングであるとき、マイクロバンチを生成するため
    に、一周の平均軌道長をレーザービームの波長の整数倍
    にしたことを特徴とする請求項6記載の荷電粒子ビーム
    のマイクロバンチング装置。
  14. 【請求項14】 荷電粒子ビームのマイクロバンチング
    装置において、(a)荷電粒子蓄積リングのベンディン
    グセクションで、該荷電粒子ビームとレーザービームを
    相互作用させて、荷電粒子ビームにマイクロバンチを生
    成し、輝度を上げるとともに、コヒーレント放射光を生
    成する手段を備え、(b)荷電粒子蓄積リングの他のベ
    ンディングセクションで、荷電粒子軌道の接線方向に発
    生するコヒーレント放射光を、前記荷電粒子軌道の外周
    を取り巻く反射手段で反射させ、該反射手段内にコヒー
    レント放射光を蓄積する手段を具備することを特徴とす
    る荷電粒子ビームのマイクロバンチング装置。
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