JP3022962B2 - 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法 - Google Patents

新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法

Info

Publication number
JP3022962B2
JP3022962B2 JP10077398A JP7739898A JP3022962B2 JP 3022962 B2 JP3022962 B2 JP 3022962B2 JP 10077398 A JP10077398 A JP 10077398A JP 7739898 A JP7739898 A JP 7739898A JP 3022962 B2 JP3022962 B2 JP 3022962B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pulp
xylanase
producing
xylan
treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP10077398A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10215866A (ja
Inventor
能孝 埜口
和子 植木
詠子 正辻
雅彦 世古
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Novo Nordisk AS
Original Assignee
Novo Nordisk AS
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Novo Nordisk AS filed Critical Novo Nordisk AS
Priority to JP10077398A priority Critical patent/JP3022962B2/ja
Publication of JPH10215866A publication Critical patent/JPH10215866A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3022962B2 publication Critical patent/JP3022962B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Paper (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規キシラナー
ゼ、その製造法、該キシラナーゼを産生する微生物、該
キシラナーゼによるパルプ処理方法、及び該キシラナー
ゼによるキシロースあるいはキシロオリゴ糖の製法に関
する。
【0002】
【従来の技術】キシラナーゼは主としてβ−1,4結合
キシロースからなるキシランやキシラン系多糖を加水分
解してその構成成分であるキシロースやキシロオリゴ糖
を生成する作用を有する酵素で、動植物中に広く存在し
ている。微生物にもキシラナーゼを生成するものがあ
り、これまでに細菌、放線菌、酵母、カビなどの酵素に
ついて研究がなされてきた。
【0003】近年、バイオマス処理における酵素の利用
という観点からキシラナーゼの有用性が注目されてい
る。たとえば、アルコール燃料用農業廃棄物の酵素分
解、動物飼料中の糖を遊離させるための酵素処理、セル
ロース製造時にパルプを溶解させるための酵素処理、木
材パルプ漂白における酵素処理などにおいてキシラナー
ゼの使用が挙げられる。とりわけ、紙パルプ工業では、
パルプの白色度向上あるいは品質の向上、パルプ漂白工
程で使われる塩素系漂白剤等の化学漂白剤使用量の削
減、故紙再生工程におけるパルプフリーネスの向上など
へのキシラナーゼの応用に期待が高まっている。
【0004】一方、キシランのキシラナーゼ分解による
生成物であるキシロースは食品、医薬品の原料として広
く使われるとともに、キシロオリゴ糖は甘味料、保湿剤
などの用途が期待されている。
【0005】上述の目的に使用し得るキシラナーゼとし
て、安価な原料から大量に生産でき、且つ酸、アルカリ
あるいは熱に対して安定なキシラナーゼが望まれてい
る。しかしながら、現在までこれらの条件を満たすキシ
ラナーゼは見い出されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、熱に
安定でかつ広いpH範囲で安定に作用する優れた新規キシ
ラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼを産生する微生
物、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及び該キシラ
ナーゼによるキシロースあるいはキシロオリゴ糖の製造
法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者はこれらの条件
を満たすキシラナーゼを得ることを目的に、酵素及び該
酵素生産微生物の探索を広く行なった。その結果、バチ
ルス属に属する新規微生物が、従来知られていない理化
学的性質を有する新規キシラナーゼを産生することを見
い出し本発明を完成するに至った。
【0008】本発明は、バチルス属に属し25〜60℃
の温度において生育し得る好熱性細菌、該バチルス属細
菌を培養してその培養物より得られる、pH4.0より高
く且つ10.0より低いpH範囲で作用し、至適温度が7
5℃付近の耐熱性キシラナーゼであるキシラナーゼ1、
及びpH2.6より高く且つ9.6より低いpH範囲で作用
し、至適温度が65〜70℃付近の耐熱性キシラナーゼ
であるキシラナーゼ2に関するものであり、また、該キ
シラナーゼの製造方法、該キシラナーゼを産生する微生
物、該キシラナーゼによるパルプ処理方法、及び該キシ
ラナーゼによるキシロースあるいはキシロオリゴ糖の製
造法に関するものである。
【0009】本発明に用いる微生物は、キシラナーゼ1
及びキシラナーゼ2の生産能を有するバチルス属細菌で
あり、例えば、次のようにして分離された菌株を用いる
ことができる。
【0010】すなわち、まず日本国内各地より採取され
た土壌試料から表1に示す組成からなる寒天培地を用
い、55℃の恒温器内にて2〜3日間培養して透明帯
(ハロー)が出現した細菌コロニーを分離した。次に、
分離した各細菌コロニーから得た菌株を、夫々表2に示
す組成からなる液体培地を用い55℃の恒温振盪機にて
2日間培養し、その培養物について下記の方法によりキ
シラナーゼ活性を測定し、活性値の大きい菌株を選択し
た。このような方法により分離し、純化した菌株の一つ
としては後述の通り同定されたバチルスsp.SD90
2が挙げられる。
【0011】キシラナーゼ活性は、基質として1.25
%バーチキシラン(カバ由来キシラン)を含む0.1M
リン酸緩衝液(pH7.0)0.8mlに酵素溶液0.2ml
を混合し、50℃にて10分間反応させ、生成した還元
糖を公知の方法である3,5−ジニトロサリチル酸法で
測定した。これ以後のキシラナーゼ活性測定方法も同様
の方法で行なった。この条件下で、1分間に1μmol の
キシロースを生成する酵素量を1単位(U)とした。
【0012】このようにして分離、選択、純化された菌
株は後述のような菌学的性質をもつことからバチルス属
細菌と同定され、工業技術院微生物工業技術研究所へ寄
託された(FERM BP−4508)。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】上記のようにして得られた菌株であるバチ
ルスsp.SD902の菌学的性質は、55℃で該菌株
を生育させ、ザ・ジーナス・バチルス(The Genus Baci
llus(1973))及びバージーズ・マニュアル・オブ・シス
テマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of
Systematic Bacteriology (1984)) に記載された方法に
基づいて調べた。
【0016】(1)形態 (ア)細胞の形及び大きさ:桿菌で大きさは約(0.4
〜0.8)μm×約(1.5〜3.0)μm (イ)細胞の多形性:なし (ウ)運動性:有り (エ)胞子形成能:有り。胞子の形状は楕円形で、位置
は中立から亜端立。胞子の大きさは約(0.5〜0.
8)μm×(0.8〜1.3)μm (オ)グラム染色性:陽性。
【0017】(2)培地における生育状況 (ア)肉汁寒天平板培養:集落は黄白色半透明の円形、
表面は扁平状。 (イ)肉汁寒天斜面培養:拡布状に生育。 (ウ)肉汁液体培養:混濁。 (エ)肉汁ゼラチン穿刺培養:液化しない。 (オ)リトマスミルク:凝固もペプトン化もしない。
【0018】(3)生理学的性質 (ア)硝酸塩の還元:− (イ)VPテスト:− (ウ)VPブロスpH:5.9 (エ)インドールの生成:− (オ)硫化水素の生成:− (カ)澱粉の加水分解:+ (キ)色素の生成:色素を生成しない。 (ク)カタラーゼの生成:+ (ケ)オキシダーゼの生成:+ (コ)生育範囲:pH中性(pH6〜8)付近で生育。温度
25〜60℃で生育し、65℃では生育しない。 (サ)酸素に対する態度:絶対好気性。 (シ)脱窒反応:− (ス)無機窒素の利用:アンモニウム塩を利用できる
が、硝酸塩は利用できない。 (セ)ウレアーゼ:−(ソ)クエン酸の利用:− (タ)OFテスト:グルコースを用いたとき嫌気的に酸
を生成する。 (チ)耐塩性:NaCl濃度2.0%で生育する。
【0019】(ツ)下記の糖からの酸の生成の有無 1)L−アラビノース ± 2)D−キシロース + 3)D−グルコース + 4)D−マンノース + 5)D−フラクトース + 6)D−ガラクトース − 7)マルトース + 8)ショ糖 ± 9)乳糖 + 10)トレハロース ± 11)D−ソルビトール + 12)D−マンニトール + 13)イノシトール + 14)グリセリン + 15)澱粉 −
【0020】以上の菌学的性質から、本菌株SD902
の分類学的地位をバージーズ・マニュアル・オブ・シス
テマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of
Systematic Bacteriology (1984))に従い検索し、好気
性、グラム陽性桿菌、胞子を形成する等の観点からバチ
ルス(Bacillus)属に属する細菌と同定した。
【0021】さらに55℃以上でも生育することから本
菌株はバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearot
hermophilus)、バチルス・シュレゲリイ(B. schlegeli
i) 、バチルス・アシドカルダリウス(B. acidocaldariu
s)、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformi
s)、バチルス・コアギュランス(B. coagulans)、バ
チルス・ブレビス(B. brevis)らに近縁であることが考
えられたが、表3に示すように嫌気的生育、VPテス
ト、VPブロスのpH及び生育温度範囲等の性質から、本
菌株SD902はこれらバチルス属のどの公知の菌種の
標準株とも異なる菌学的性質を有していることが明らか
となった。従って、本菌株SD902は現在の分類学的
地位では、バチルス属の新菌種として分類するのが適当
であるとの結論に達した。
【0022】
【表3】
【0023】本菌株バチルスsp.SD902は新規な
キシラナーゼであるキシラナーゼ1及びキシラナーゼ2
を産生する。例えば、主成分としてキシラン及び酵母エ
キス、ポリペプトンを含有する液体培地にバチルスs
p.SD902菌株を接種し、55℃で1〜3日間培養
する。培養液から遠心分離により菌体及び不溶物質をと
り除き培養上澄液を得、次いで、この培養上澄液から硫
安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロ
マトグラフィー等の公知の方法によりキシラナーゼ1及
びキシラナーゼ2を分離もしくは精製することができ
る。例えば、硫安塩析による沈殿物を透析し、次いで陰
イオン交換クロマトグラフィー、陽イオンクロマトグラ
フィーにより精製し、更にゲル濾過クロマトグラフィー
により分離精製することによりキシラナーゼ1及びキシ
ラナーゼ2を分離して取得することができる。
【0024】本発明のキシラナーゼ1の理化学的性質は
次の通りである。 (1)作用及び基質特異性 キシランまたはキシラン系多糖に作用し、そのβ−1,
4−キシロシド結合を加水分解してキシロース及びキシ
ロビオースを多量に生成し、キシロトリオース以上の重
合度を有するキシロオリゴ糖を少量しか生成しない。ま
た、結晶性セルロースを分解するアビセラーゼ活性やカ
ルボキシメチルセルロースを分解するシーエムシーアー
ゼ(CMCase)活性等のセルラーゼ活性を実質的に
示さない。 (2)作用pH及び至適pH pH2.5から10.0の範囲の種々のpHの酢酸緩衝液ま
たは硼酸緩衝液を用いて60℃でのキシラナーゼ活性測
定を行なった場合、4.0より高く且つ10.0より低
いpH範囲で作用し、至適pHが6.0付近である。また、
約pH4.7〜8.0の範囲で最大活性の70%以上の活
性を示す。
【0025】(3)作用温度及び至適温度 リン酸緩衝液(pH7.0)を用いて30℃から90℃ま
での種々の温度でキシラナーゼ活性を測定した場合、9
0℃までの温度範囲で作用し、至適温度が75℃付近で
ある。 (4)pH安定性 pH3.2から9.9の範囲の種々のpHの酢酸緩衝液、リ
ン酸緩衝液または硼酸緩衝液を用いて40℃で48時間
保持した後の残存キシラナーゼ活性を測定した場合、pH
5.0〜9.9の範囲で95%以上の活性を保持してい
る。
【0026】(5)熱安定性 リン酸緩衝液(pH7.0)を用いて60℃で24時間保
持した後の残存キシラナーゼ活性を測定した場合、90
%以上の活性を保持している。 (6)分子量 SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した
分子量が約34,000である。 (7)等電点 pH9.4付近である。
【0027】本発明のキシラナーゼ2の理化学的性質は
次の通りである。 (1)作用及び基質特異性 キシランまたはキシラン系多糖に作用し、そのβ−1,
4−キシロシド結合を加水分解してキシロースを生成し
且つキシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラ
オース等のキシロオリゴ糖を多量に生成する。また、結
晶性セルロースを分解するアビセラーゼ活性やカルボキ
シメチルセルロースを分解するシーエムシーアーゼ(C
MCase)活性等のセルラーゼ活性を実質的に示さな
い。 (2)作用pH及び至適pH pH2.6から9.6の範囲の種々のpHの酢酸緩衝液また
は硼酸緩衝液を用いて60℃でのキシラナーゼ活性測定
を行なった場合、2.6より高く且つ9.6より低いpH
範囲で作用し、至適pHが6.0付近である。また、約pH
5.0〜7.7の範囲で最大活性の70%以上の活性を
示す。
【0028】(3)作用温度及び至適温度 リン酸緩衝液(pH7.0)を用いて30℃から90℃ま
での種々の温度でキシラナーゼ活性を測定した場合、9
0℃までの温度範囲で作用し、至適温度が65〜70℃
付近である。 (4)pH安定性 pH3.2から9.9の範囲の種々のpHの酢酸緩衝液、リ
ン酸緩衝液または硼酸緩衝液を用いて40℃で48時間
保持した後の残存キシラナーゼ活性を測定した場合、pH
4.0〜9.0の範囲で95%以上の活性を保持してい
る。
【0029】(5)熱安定性 リン酸緩衝液(pH7.0)を用いて60℃で24時間保
持した後の残存キシラナーゼ活性を測定した場合、70
%以上の活性を保持している。 (6)分子量 SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した
分子量が約21,000である。 (7)等電点 pH9.8付近である。
【0030】尚、キシラナーゼ1及びキシラナーゼ2の
作用pHを図1、作用温度を図2、pH安定性を図3、及び
熱安定性を図4に例示した。
【0031】キシラナーゼ1あるいはキシラナーゼ2
は、バチルスsp.SD902、その亜種、それらの突
然変異株及び遺伝子工学的手法による改良株から選んだ
菌株を培養し、培養物からキシラナーゼ1あるいはキシ
ラナーゼ2を回収することにより製造される。
【0032】その際の培養方法としては、液体培養、固
体培養等の通常の細菌の培養方法を用いることができ
る。とりわけ、経済性の見地から、好気的に液体培養す
る方法が好ましく、その例としては、好気的条件下での
通気撹拌培養法や振盪培養法が挙げられる。
【0033】本発明のキシラナーゼ製造法において用い
られる培地は、用いる菌株が増殖し得るものであれば任
意のものでよく、例えば、炭素源としては、同化できる
炭素化合物またはこれを含有するものであればよく、例
えば各種キシラン、小麦ふすま、パルプ廃液、穀物糖化
粕あるいは稲藁等のキシランあるいはキシラン系多糖を
含む各種原料あるいはグルコース、澱粉もしくは液化澱
粉等の澱粉水解物、糖蜜等の糖類を単独あるいは組み合
わせて用いることが出来る。
【0034】また、例えば、窒素源としては、同化でき
る窒素化合物またはこれを含有するものであればよく、
例えば、有機窒素含有物として各種アミノ酸、コーンス
ティープリカー、麦芽エキス、ペプトン、大豆粉、脱脂
大豆粉等が、また無機窒素化合物としては、塩化アンモ
ニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩を単独あ
るいは組み合わせて用いることが出来る。
【0035】その他、菌の生育及び酵素生産に必要な各
種の有機物や無機物またはこれを含有するもの、例えば
リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩
等の塩類、ビタミン類、酵母エキス等を適宜添加するこ
ともできる。
【0036】培養温度は10〜70℃の範囲であればよ
いが、sp.SD902の場合には25〜60℃の範囲
が好ましく、更により好ましくは35〜55℃の範囲が
よい。培養pHは培養全期を通してpH4〜10の範囲であ
ればよいが、sp.SD902の場合にはpH6〜8が好
ましい。培養時間は通常10〜120時間の範囲であれ
ばよく、キシラナーゼ蓄積量が最高に達した時に培養を
終了すればよい。特に経済性の見地から、例えばsp.
SD902の場合には20〜80時間の範囲とすること
が好ましい。
【0037】培養終了後、培養液から公知の方法により
キシラナーゼ1またはキシラナーゼ2を得ることができ
る。すなわち、培養後、フィルタープレス濾過等の精密
濾過、膜濾過、遠心分離、硫酸アンモニウム等による沈
澱、膜濃縮等の濃縮、乾燥等の操作を適宜選択して用い
ることにより、培養液から不要物を分離除去し、キシラ
ナーゼ1またはキシラナーゼ2を酵素液あるいは酵素粉
末の状態で得ることができる。例えば、まず培養液中の
菌体等を遠心分離により除去し、培養上澄液を得る。こ
の上澄液を、そのままあるいは適宜希釈あるいは濃縮
し、あるいは安定化剤等を加えて、酵素液として利用す
ることも可能である。あるいは、この上澄液から、例え
ば60%硫酸アンモニウム沈澱により酵素を沈澱させ、
沈澱物を濾過等の公知の方法により分離して酵素を得る
ことができる。また、得られた酵素を一夜透析後、各種
イオン交換クロマトグラフィーあるいはゲル濾過クロマ
トグラフィー等公知の方法を用いてキシラナーゼ1及び
キシラナーゼ2を取得することができる。
【0038】本発明のキシラナーゼ1及びキシラナーゼ
2はパルプ中の主要構成成分であるセルロースを加水分
解するセルラーゼ活性を実質的に有していないため、パ
ルプ中のセルロースの損傷を誘起することなしに、パル
プの白色度向上、品質の向上、パルプ漂白工程で使われ
る塩素系漂白剤等化学漂白剤使用量の削減、その他前述
の応用を目的とするパルプ処理を行なうのに適してい
る。キシラナーゼ1あるいはキシラナーゼ2をかかるパ
ルプ処理に用いる場合、0.01〜1000U/g乾燥
パルプ、好ましくは0.05〜10U/g乾燥パルプの
範囲で使用することができる。
【0039】本発明によるパルプ処理方法において、温
度、pH、圧力、時間等の、酵素をパルプに作用させる処
理条件は、所望の酵素作用が発現され、それによりパル
プの白色度向上などの所望の効果を生じる条件であれば
よい。すなわち、処理温度は10〜80℃の範囲であれ
ばよく、好ましくは40〜70℃の範囲がよい。処理pH
は3〜10の範囲であればよく、好ましくは4〜9、よ
り好ましくは5〜8の範囲がよい。
【0040】また、処理圧力は、パルプ漂白その他の通
常のパルプ処理工程において用いられる圧力であればよ
く、特に制限はないが、経済性の見地から常圧で行なう
ことが好ましい。処理時間としては、10分〜50時間
の範囲であればよく、好ましくは1〜24時間の範囲が
よく、更により好ましくは1〜5時間の範囲がよい。
【0041】例えば、実施例に示したようにバチルスs
p.SD902由来のキシラナーゼ500U/kg乾燥パ
ルプを用いて広葉樹未漂白クラフトパルプの酵素処理を
行なうと、比較的短時間の酵素処理で、多量の含有リグ
ニンが除去される効果が得られ、また、更に白色度を上
げたい場合に酵素処理の後に用いる化学漂白剤の使用量
が大幅に削減される。このような効果を有する本発明に
よるパルプ処理方法は、現在行なわれている塩素系化学
漂白剤を用いた漂白工程の少なくとも一部を代替する工
程として十分に利用可能なものと考えられる。
【0042】本発明によるパルプの処理方法は、クラフ
トパルプ、サルファイトパルプ、セミケミカルパルプ、
砕木パルプ、リファイナ砕木パルプ、サーモメカニカル
パルプ等のような、広葉樹、針葉樹あるいは非木材由来
の広範囲のパルプに適用でき、パルプ中の残留リグニン
量を減少する効果が得られ、パルプの白色度の向上、品
質の向上、あるいは化学漂白剤使用量の削減などの効果
が得られる。また、これらのパルプを酸素等により漂白
処理する工程において、あるいはその前もしくは後にお
いて本発明による処理方法を適用できる。
【0043】本発明によるキシラナーゼを用いたパルプ
の処理に続いて、パルプから溶解されたあるいは溶解し
易くなったリグニンを効果的に除去するために抽出操作
を行なうこともできる。例えば、水酸化ナトリウム抽出
を行なうことができ、その場合の典型的な抽出条件とし
ては、パルプ濃度を0.3〜20%の範囲とし、水酸化
ナトリウムを0.5〜5%濃度(対乾燥パルプ重量)の
範囲で用い、40〜80℃の温度で、30分〜3時間、
好ましくは1〜2時間処理することを例示できる。
【0044】本発明の方法によるパルプ処理の後、更に
化学漂白剤等を使用することによりパルプの白色度を向
上させることができる。この場合、パルプを化学漂白剤
のみで漂白する場合に比べて化学漂白剤の使用量を大幅
に減じても、同等以上の白色度を得ることができる。例
えば、二酸化塩素を化学漂白剤として使用した場合、そ
の使用量を少なくとも23%から43%以上減じること
ができる。
【0045】本発明によるパルプの処理方法により処理
されたパルプから製造された紙は、例えば、塩素化フェ
ノール性化合物の含量が低い等、従来の漂白パルプから
製造された紙よりも優れた品質を有することも見い出さ
れた。これは、パルプ中のヘミセルロース成分の一つで
あるキシランがセルラーゼ活性を有さないキシラナーゼ
処理により効果的に除去されたためと考えられるが、詳
細はよくわからない。
【0046】本発明によれば、キシランまたはキシラン
系多糖にキシラナーゼ1あるいはキシラナーゼ2を作用
させてキシロースあるいはキシロビオース、キシロトリ
オース、キシロテトラオース等のキシロオリゴ糖を製造
する方法が提供される。
【0047】本発明において、キシラナーゼ1あるいは
キシラナーゼ2を用い、キシロースあるいはキシロオリ
ゴ糖を製造するための製造条件は、酵素がキシラナーゼ
活性を保持している条件下であればよい。例えば、処理
温度は約10〜80℃の範囲であればよく、好ましくは
40〜70℃で行なわれる。処理pHは3〜10の範囲で
あればよく、好ましくは4〜9、より好ましくは5〜8
の範囲である。また反応時間は、キシランまたはキシラ
ン系多糖に酵素が作用する時間であればよく、例えば1
0分〜24時間の範囲であればよく、好ましくは1〜1
0時間、より好ましくは1〜3時間の範囲である。
【0048】本発明によりキシロースあるいはキシロオ
リゴ糖を製造するために用いられるキシランまたはキシ
ラン系多糖としては、例えば稲藁、バガス、小麦フス
マ、コーンコブ等の農業廃棄物あるいは木材等またはそ
れらから予め分離したキシラン類が挙げられる。かかる
キシランまたはキシラン系多糖の濃度は0.1〜50%
の範囲であればよく、好ましくは0.5〜30%の範囲
で行なうことができる。
【0049】本発明によるキシラナーゼ1およびキシラ
ナーゼ2は実質的にセルロースを加水分解するセルラー
ゼ活性を有していないため、キシロースあるいはキシロ
オリゴ糖の製造に用いる場合、例えば0.01〜100
0U/g乾燥キシラン、好ましくは0.05〜10U/
g乾燥キシランの範囲で使用することができる。
【0050】
【実施例】次に本発明について実施例で更に詳しく説明
するが、これらは単なる例示であり、本発明を限定する
ものではない。 実施例1 1.0%バーチキシラン、0.1%酵母エキス、1.0
%ポリペプトン、0.5%リン酸水素二カリウム、0.
05%硫酸マグネシウム、0.002%硫酸鉄、0.0
5%塩化ナトリウムからなる液体培地(pH7.0)2リ
ットルを5リットル容のジャーファーメンターに入れ、
121℃で20分滅菌した。これに同じ培地で培養した
バチルスsp.SD902の菌体を接種し、55℃で4
8時間好気的に通気撹拌培養を行なった(撹拌速度10
00rpm 、通気量1リットル/分)。培養後、培養液を
6000rpm で遠心分離して菌体を除去した。
【0051】次に、上記の方法で得た上澄液のうち70
0mlに硫酸アンモニウムを60%飽和となるように添加
し、塩析を行なった。塩析により得た酵素沈澱物を50
mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解して一夜透析し
た。透析後の酵素液を陰イオン交換クロマトグラフィー
(DEAE−セルロファイン、生化学工業(株)製)に
かけ、素通り画分を陽イオン交換クロマトグラフィー
(CM−セルロファイン、生化学工業(株)製)にか
け、0〜0.6Mの塩化ナトリウム1000mlの直線濃
度勾配で溶出を行ない、7mlずつ分画した。キシラナー
ゼ活性が認められる画分を分取し、限外濾過による濃縮
を行なった後、濃縮液のうち10mlを、5mMリン酸緩衝
液(pH7.0)を展開液としてゲル濾過クロマトグラフ
ィー(トヨパールHW55s(東ソー(株)製)/カラ
ム径2.5cm、カラム長70cm)による分離精製を行な
い、先に溶出する画分としてキシラナーゼ1(810
U)及び後に溶出する画分としてキシラナーゼ2(11
50U)を得た。
【0052】実施例2 バーチキシラン(シグマ社製、X−0502)0.5重
量%溶液に、実施例1と同様の方法により得られたキシ
ラナーゼ1を、キシラン1グラム当り200U添加し
た。この混合液のpHを6.0に調整し、次いで60℃に
加温して反応させ、24時間までの反応の経時変化を追
跡した。反応終了後、処理液を100℃、5分間処理し
た後、遠心分離により酵素沈澱物を反応液中から除去し
た。反応生成物を薄層クロマトグラフィー及び高速液体
クロマトグラフィーを用いて分析した。
【0053】薄層クロマトグラフィーによる生成物の分
析は次のようにして行なった。反応生成物を、薄層(キ
ーゼルグール 60F254、メルク社製)上でブタノ
ール:ピリジン:水=8:1:1で展開した。発色液
は、0.2%ジフェニルアミン及び0.2%アニリン含
有アセトン溶液と85%リン酸を容量比で5:1に混合
して用いた。分析の結果、反応初期からキシロース、キ
シロビオースの生成が認められ、反応後期ではそれらの
生成量の顕著な増加が認められた。
【0054】一方、高速液体クロマトグラフィーによる
反応生成物の分析は次のようにして行なった。反応成分
を糖類用ゲル濾過カラムであるShodex Ionp
akS−801(昭和電工(株)製)を用い、水での溶
出によりクロマトグラフィー処理を行なった。溶出した
成分を示差屈折率検出器で検出した。反応24時間後の
生成物を分析したところ、原料バーチキシランに対しキ
シロースが22%(w/w)、キシロビオースが40%
(w/w)生成していた。
【0055】実施例3 バーチキシラン(シグマ社製、X−0502)0.5重
量%溶液に、実施例1と同様の方法により得られたキシ
ラナーゼ2を、キシランの1グラム当り200U添加し
た以外は実施例2と同様の方法で反応及び分析を行なっ
た。分析の結果、反応初期からキシロース、キシロビオ
ースの生成が認められ、反応後期ではそれらの生成量の
顕著な増加が認められた。また、反応24時間後の生成
物を分析したところ、原料バーチキシランに対しキシロ
ースが8%(w/w)、キシロビオースが34%(w/
w)、キシロトリオース以上の重合度を有するキシロオ
リゴ糖が7%(w/w)生成していた。
【0056】実施例4 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に実施例1と同様
の方法により得られたバチルスsp.SD902の培養
液から調製された酵素含有上澄液をキシラナーゼ活性と
して100、500、または1000U/kg乾燥パルプ
となるように添加した。なお酵素処理を行なう際のpHは
6に調整した。このパルプスラリーを60℃で1時間ま
たは3時間加温し、次いでパルプを濾過後、2〜3倍量
の水で洗浄した。つづいてこのパルプに水を加えてパル
プ濃度が10重量%及び乾燥パルプ重量当り1.3重量
%相当の水酸化ナトリウムを含む液とし、60℃で1時
間抽出処理し、その後パルプを水で洗浄した。
【0057】酵素を添加しない場合以外は上記と同様の
処理により酵素無添加サンプルを調製し、酵素処理の効
果を比較した。リグニン含有量の指標であるカッパー価
の測定は日本工業規格JISP8211の方法に従って
行なった。各処理により得られたパルプのカッパー価を
表4に示した。また、3時間酵素処理後の乾燥パルプ重
量は49gであった。
【0058】
【表4】
【0059】実施例5 パルプ濃度10重量%の針葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)を用いた以外は実
施例4と同様にして、酵素処理及び水酸化ナトリウムに
よる抽出処理を行なった。酵素無添加処理サンプルも同
様にして調製した。これらの処理により得られたパルプ
のカッパー価を表5に示した。また、24時間酵素処理
後の乾燥パルプ重量は49gであった。
【0060】
【表5】
【0061】比較例1 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリーに二酸化塩素を12.5kg/t乾燥パルプとなる
ように添加し、70℃で1時間漂白処理した。処理後2
〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこのパルプに水を加
えてパルプ濃度が10重量%及び乾燥パルプ重量当り
1.3重量%相当の水酸化ナトリウムを含む液とし、6
0℃で1時間抽出処理し、その後パルプを水で洗浄し
た。このパルプのカッパー価は3.5となった。
【0062】このようにして得た水酸化ナトリウム抽出
処理パルプ(カッパー価3.5)に水を加えてパルプ濃
度が10重量%及び二酸化塩素が18.9kg/t乾燥パ
ルプを含む液とし、70℃で3時間漂白処理した。処理
後2〜3倍量の水で洗浄した後乾燥してハンター白色度
90%の漂白パルプを得た。尚、ハンター白色度は日本
工業規格JISP8123の方法に従って測定した。こ
の二段漂白で使用した二酸化塩素の総使用量は31.4
kg/t乾燥パルプであった。
【0063】実施例6 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に、実施例1と同
様の方法により得られたバチルスsp.SD902の培
養液から調製された酵素含有上澄液をキシラナーゼ活性
として500U/kg乾燥パルプとなるように添加した。
なお酵素処理を行なう際のpHは6に調整した。このパル
プスラリーを60℃で3時間加温し、次いでパルプを濾
過後、2〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこのパルプ
に水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化塩素が
10.2kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃で1時
間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄した。更
に、このパルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及
び乾燥パルプ重量当たり1.3重量%相当の水酸化ナト
リウムを含む液とし、60℃で1時間抽出処理した後、
パルプを水で洗浄した。このパルプのカッパー価は3.
5となった。
【0064】このようにして得た酵素処理、二酸化塩素
処理及び水酸化ナトリウム抽出処理を行なったパルプ
(カッパー価3.5)に水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び二酸化塩素が7.7kg/t乾燥パルプを含む液
とし、70℃で3時間漂白処理した。処理後2〜3倍量
の水で洗浄した後乾燥してハンター白色度90%の漂白
パルプを得た。この二段漂白で使用した二酸化塩素の総
使用量は17.9kg/tパルプであり、酵素を使用しな
い場合(比較例1)に比べて二酸化塩素の使用量は43
%少なかった。
【0065】実施例7 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に実施例1と同様
の方法により得られたキシラナーゼ1をキシラナーゼ活
性として500U/kgパルプとなるように添加した。こ
のパルプスラリーを60℃で3時間加温し、ついでパル
プを濾過後、2〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこの
パルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化
塩素が10.1kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃
で1時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄し
た。更に、このパルプに水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び乾燥パルプ重量当たり1.3重量%相当の水酸
化ナトリウムを含む液とし、60℃で1時間抽出処理し
た後、パルプを水で洗浄した。このパルプのカッパー価
は3.5となった。
【0066】このようにして得た酵素処理、二酸化塩素
処理及び水酸化ナトリウム抽出処理を行なったパルプ
(カッパー価3.5)に水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び二酸化塩素が7.7kg/t乾燥パルプを含む液
とし、70℃で3時間漂白処理した。処理後2〜3倍量
の水で洗浄した後乾燥してハンター白色度90%の漂白
パルプを得た。この二段漂白で使用した二酸化塩素の総
使用量は17.8kg/tパルプであり、酵素を使用しな
い場合(比較例1)に比べて二酸化塩素の使用量は43
%少なかった。
【0067】実施例8 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に実施例1と同様
の方法により得られたキシラナーゼ2をキシラナーゼ活
性として500U/kgパルプとなるように添加した。こ
のパルプスラリーを60℃で3時間加温し、ついでパル
プを濾過後、2〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこの
パルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化
塩素が11.3kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃
で1時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄し
た。更に、このパルプに水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び乾燥パルプ重量当たり1.3重量%相当の水酸
化ナトリウムを含む液とし、60℃で1時間抽出処理し
た後、パルプを水で洗浄した。このパルプのカッパー価
は3.5となった。
【0068】このようにして得た酵素処理、二酸化塩素
処理及び水酸化ナトリウム抽出処理を行なったパルプ
(カッパー価3.5)に水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び二酸化塩素が12.9kg/t乾燥パルプを含む
液とし、70℃で3時間漂白処理した。処理後2〜3倍
量の水で洗浄した後乾燥してハンター白色度90%の漂
白パルプを得た。この二段漂白で使用した二酸化塩素の
総使用量は24.2kg/tパルプであり、酵素を使用し
ない場合(比較例1)に比べて二酸化塩素の使用量は2
3%少なかった。
【0069】実施例9 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に、実施例1と同
様の方法により得られたバチルスsp.SD902の培
養液から調製された酵素含有上澄液をキシラナーゼ活性
として500U/kg乾燥パルプとなるように添加した。
なお酵素処理を行なう際のpHは6に調整した。このパル
プスラリーを60℃で3時間加温し、次いでパルプを濾
過後、2〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこのパルプ
に水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化塩素が
10.2kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃で1時
間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄した。更
に、このパルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及
び乾燥パルプ重量当たり1.3重量%相当の水酸化ナト
リウムを含む液とし、60℃で1時間抽出処理した後、
パルプを水で洗浄した。このパルプのカッパー価は3.
5となった。一方、比較例1と同様の方法に従ってカッ
パー価3.5の酵素未使用パルプを得た。
【0070】このようにして得たカッパー価3.5のパ
ルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化塩
素が8.0kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃で3
時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄した後
乾燥してハンター白色度を測定した。その結果、酵素処
理パルプのハンター白色度は90.2%であったのに対
し、酵素未処理パルプのハンター白色度は88.5%で
あった。
【0071】実施例10 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に実施例1と同様
の方法により得られたキシラナーゼ1をキシラナーゼ活
性として500U/kgパルプとなるように添加した。こ
のパルプスラリーを60℃で3時間加温し、ついでパル
プを濾過後、2〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこの
パルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化
塩素が10.1kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃
で1時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄し
た。更に、このパルプに水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び乾燥パルプ重量当たり1.3重量%相当の水酸
化ナトリウムを含む液とし、60℃で1時間抽出処理し
た後、パルプを水で洗浄した。このパルプのカッパー価
は3.5となった。一方、比較例1と同様の方法に従っ
てカッパー価3.5の酵素未使用パルプを得た。
【0072】このようにして得たカッパー価3.5のパ
ルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化塩
素が8.0kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃で3
時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄した後
乾燥してハンター白色度を測定した。その結果、酵素処
理パルプのハンター白色度は90.2%であったのに対
し、酵素未処理パルプのハンター白色度は88.0%で
あった。
【0073】実施例11 パルプ濃度10重量%の広葉樹未漂白クラフトパルプス
ラリー500g(乾燥パルプ50g)に実施例1と同様
の方法により得られたキシラナーゼ2をキシラナーゼ活
性として500U/kgパルプとなるように添加した。こ
のパルプスラリーを60℃で3時間加温し、ついでパル
プを濾過後、2〜3倍量の水で洗浄した。つづいてこの
パルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化
塩素が11.3kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃
で1時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄し
た。更に、このパルプに水を加えてパルプ濃度が10重
量%及び乾燥パルプ重量当たり1.3重量%相当の水酸
化ナトリウムを含む液とし、60℃で1時間抽出処理し
た後、パルプを水で洗浄した。このパルプのカッパー価
は3.5となった。一方、比較例1と同様の方法に従っ
てカッパー価3.5の酵素未使用パルプを得た。
【0074】このようにして得たカッパー価3.5のパ
ルプに水を加えてパルプ濃度が10重量%及び二酸化塩
素が12.0kg/t乾燥パルプを含む液とし、70℃で
3時間漂白処理した。処理後2〜3倍量の水で洗浄した
後乾燥してハンター白色度を測定した。その結果、酵素
処理パルプのハンター白色度は89.8%であったのに
対し、酵素未処理パルプのハンター白色度は89.0%
であった。
【0075】
【発明の効果】本発明によれば、新規なキシラナーゼで
あるキシラナーゼ1及びキシラナーゼ2及びその製造法
が提供される。これらの新規なキシラナーゼはパルプの
白色度の向上、品質の向上、パルプ漂白工程で使われる
化学漂白剤の削減、パルプフリーネスの向上等のための
パルプ処理等のバイオマス処理に有効に使用され、また
本発明によりかかるパルプ処理方法が提供される。例え
ば本発明のパルプ処理方法によりかかるパルプの処理を
行なうと、比較的短時間の酵素処理で、多量のリグニン
が除去される効果が得られ、パルプの白色度向上、品質
向上あるいは化学漂白剤使用量の削減等の効果が得られ
る。また、本発明によるこれらの新規キシラナーゼは、
甘味料、保湿剤、飼料等の用途面で食品工業、化粧品工
業、飼料工業等において有効に利用されるキシロースあ
るいはキシロオリゴ糖の製造に有効に使用され、本発明
によりかかるキシロースあるいはキシロオリゴ糖の製造
方法が提供される。また、本発明によれば、これらの新
規なキシラナーゼを産生するバチルス属細菌が提供され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】キシラナーゼ1及びキシラナーゼ2の作用pHを
例示するグラフである。
【図2】キシラナーゼ1及びキシラナーゼ2の作用温度
を例示するグラフである。
【図3】キシラナーゼ1及びキシラナーゼ2のpH安定性
を例示するグラフである。
【図4】キシラナーゼ1及びキシラナーゼ2の熱安定性
を例示するグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI //(C12N 9/24 C12R 1:07) (72)発明者 正辻 詠子 東京都大田区多摩川2丁目24番25号 昭 和電工株式会社 生化学研究所内 (72)発明者 世古 雅彦 東京都大田区多摩川2丁目24番25号 昭 和電工株式会社 生化学研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キシラナーゼであって、下記の理化学的
    性質を有するキシラナーゼ2: (1)キシランまたはキシラン系多糖に作用し、そのβ
    −1,4−キシロシド結合を加水分解してキシロースを
    生成し且つキシロビオース、キシロトリオース、キシロ
    テトラオース等のキシロオリゴ糖を多量に生成する。 (2)2.6より高く且つ9.6より低いpH範囲で作用
    し、至適pHが6.0付近である。 (3)90℃までの温度範囲で作用し、至適温度が65
    〜70℃付近である。 (4)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測
    定した分子量が約21,000である。 (5)等電点がpH9.8付近である。
  2. 【請求項2】 バチルス属細菌を培養し、培養物から請
    求項1記載のキシラナーゼを回収することを特徴とする
    キシラナーゼの製造法。
  3. 【請求項3】 バチルス属細菌がバチルスsp.SD9
    02(FERM BP−4508)である請求項2記載
    のキシラナーゼの製造法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のキシラナーゼをパルプに
    作用させるパルプの処理方法。
  5. 【請求項5】 キシランまたはキシラン系多糖に請求項
    1記載のキシラナーゼを作用させてキシロースあるいは
    キシロオリゴ糖を製造する方法。
JP10077398A 1998-03-25 1998-03-25 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法 Expired - Fee Related JP3022962B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10077398A JP3022962B2 (ja) 1998-03-25 1998-03-25 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10077398A JP3022962B2 (ja) 1998-03-25 1998-03-25 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5052515A Division JP2807612B2 (ja) 1993-03-12 1993-03-12 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10215866A JPH10215866A (ja) 1998-08-18
JP3022962B2 true JP3022962B2 (ja) 2000-03-21

Family

ID=13632800

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10077398A Expired - Fee Related JP3022962B2 (ja) 1998-03-25 1998-03-25 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3022962B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2784161B1 (en) 2011-11-25 2018-06-20 Mitsui Chemicals, Inc. Mutant xylanase, manufacturing method and use therefor, and method for manufacturing saccharified lignocellulose

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10215866A (ja) 1998-08-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2807612B2 (ja) 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法
Kluepfel et al. Characterization of cellulase and xylanase activities of Streptomyces lividans
US5318905A (en) Composition containing celluase from Bacillus Ferm BP-3431 or a mutant strain thereof, and paper pulp and method of using celluase to treat paper pulp slurry
Alam et al. Production and characterization of thermostable xylanases by Thermomyces lanuginosus and Thermoascus aurantiacus grown on lignocelluloses
Gomes et al. Production of a high level of cellulase-free xylanase by the thermophilic fungus Thermomyces lanuginosus in laboratory and pilot scales using lignocellulosic materials
Palma et al. Influence of aeration and agitation rate on the xylanase activity from Penicillium janthinellum
JPH08507221A (ja) アルカリ耐性キシラナーゼ
US4106989A (en) Thermostable cellulase and a method for producing the same
US6548283B1 (en) Bacterial protein with xylanase activity
US5183753A (en) Preparation of xylanase by cultivating thermomyces lanuginosus dsm 5826 in a medium containing corn cobs
JP3022962B2 (ja) 新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼによるパルプ処理方法及びキシロオリゴ糖の製造法
Sakka et al. Cloning and expression in Escherichia coli of Clostridium stercorarium strain F-9 genes related to xylan hydrolysis
Manelius et al. Some properties of a thermostable β-xylosidase from Rhodothermus marinus
Bastawde et al. Optimization of cellulase-free xylanase production by a novel yeast strain
JP4556344B2 (ja) 新規ヘキセンウロニダーゼ、それをコードする遺伝子、およびそれらの使用
JP2894293B2 (ja) ガラクタナーゼs−39及びこれを産生するバチルスエスピーs−39
JP3070290B2 (ja) 耐熱性アルカリキシラナーゼを生産する微生物及びその利用法
JP3642095B2 (ja) 新規中性キシラナーゼおよびその製造法
JP4392488B2 (ja) 新規キシラナーゼ、該キシラナーゼを産生するフリゴリバクテリウム属細菌、及び該キシラナーゼの産生方法
GB2102428A (en) Enzymatic hydrolysis of cellulosic material
JP5733711B2 (ja) ヘキセンウロン酸特異的遊離酵素およびこの酵素を産生する微生物
JPH0248231B2 (ja) Shinkikishiranaazeoyobisonoseizoho
JP3262646B2 (ja) パルプの漂白方法
JPS63112981A (ja) アルカリセルラ−ゼ製造法
JPH08173148A (ja) アルカリ性領域で活性を有するキシラナーゼを産生するバチルス属菌、該キシラナーゼの製造方法、及びその利用方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees