JP3015108B2 - ポリケトンポリマー組成物 - Google Patents

ポリケトンポリマー組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、一酸化炭素と少なくとも一種の
エチレン性不飽和化合物との鎖状交互ポリマーを主とし
て含むポリケトンポリマー組成物および該組成物の製造
方法に関する。
【0002】一酸化炭素とオレフィンとのポリマーが知
られてからしばらく経つが、最近になって、この種の鎖
状交互ポリマーが量的により入手し易くなったことか
ら、かなり関心を持たれるようになってきた。これらの
ポリマーは、ポリケトンまたはポリケトンポリマーと呼
ばれることが多いが、繰り返し式−CO−(A)−[式
中、Aはエチレン性不飽和により重合した不飽和炭化水
素部分であり、そのエチレン性不飽和炭化水素がエチレ
ンのとき、該ポリマーの繰り返し式は、−CO−(CH
2 −CH2 )−で表わされる。そのようなポリケトンポ
リマーの最近の一般的な製造方法は、多くの欧州特許公
開、例えば、No .121,965 、No .181,014 、No .213,67
1 およびNo .257,663 に示されている。典型的な方法で
は、パラジウム、コバルトまたはニッケルから選択され
るVIII族金属化合物、ハロゲン化水素酸以外の強酸のア
ニオンおよびリン、ヒ素またはアンチモンの二座配位子
から生成する触媒組成物を使用する。
【0003】得られるポリマーは、比較的高分子量の熱
可塑性プラスチックであり、飲食品産業用容器および自
動車工業用内外部品などの成形品の製造において有用性
が確立しており、その成形品は、公知の方法によってそ
のポリマーを加工することにより製造される。いくつか
の特定の用途に対しては、ポリケトンポリマーとは幾分
異なる特性を有するポリマー組成物が好ましいことがわ
かっている。ポリケトンポリマーのより好ましい特性は
保持し、かつ他の特性は改善するのが望ましい。このた
めには、ポリマーブレンドを作ると有益であることが多
いが、どのポリマーを互いにブレンドすると所望の効果
が得られるかは予測できないし、また多くのポリマーが
互いに負の相互作用する可能性もある。
【0004】ポリケトンポリマーなどの半結晶性ポリマ
ーは、成形収縮率が大きく、熱膨張率が高いという欠点
をもつものが多く、寸法安定性が重要な用途での有用性
が制限される。この問題は、熱膨張係数が非常に低い鉱
物フィラーを加えると解決できることが現在わかってい
る。しかし、鉱物フィラーを加えると、衝撃強度が犠牲
になることがわかった。この衝撃強度の低下は、第2の
ポリマー、すなわちポリエーテルエステルアミドポリマ
ーを組成物中に含めることにより補償し得ることが見出
された。更に、α−オレフィン部分およびα,β−エチ
レン性不飽和カルボン酸部分を含む酸性ポリマーを包含
させると加工性が向上することが見い出された。
【0005】従って、本発明は、下記成分(1)〜
(3): (1)一酸化炭素と少なくとも1種のエチレン性不飽和
化合物との鎖状交互ポリマー、 (2)鉱物フィラー、および (3)ポリエーテルエステルアミドポリマー ならびに、所望により下記成分(4): (4)α−オレフィン部分、α,β−エチレン性不飽和
カルボン酸部分、および所望により酸性でない低分子量
の重合可能なモノマー部分を付与する(incorporating)
酸性ポリマーであって、そのカルボン酸基の一部が所望
により非アルカリ金属で中和されている酸性ポリマー の非混和性ブレンドを含むことを特徴とするポリケトン
ポリマー組成物に関する。
【0006】そのようなブレンドは、改善された寸法安
定性を示す一方、鉱物フィラーのみを有する鎖状交互ポ
リマーと比較して、良好な強度および耐衝撃性も示す。
【0007】本発明は更に、鉱物フィラーをポリエーテ
ルエステルアミドポリマーと混合して、予備混合された
ポリマーブレンドを生成する工程:およびその予備混合
されたポリマーブレンドを一酸化炭素と少なくとも1種
のエチレン性不飽和化合物との鎖状交互ポリマーとブレ
ンドして本発明に係る非混和性ポリマーブレンドを生成
する工程を含むことを特徴とするポリケトンポリマー組
成物の製造方法に関する。
【0008】そのような方法は、単一工程から成る混合
方法よりも有利であることが判った。
【0009】本発明のブレンドの第1成分として用いる
ポリケトンポリマーは、一酸化炭素と少なくとも1種の
エチレン性不飽和化合物との鎖状交互コポリマーであ
る。ポリケトンポリマーの前駆体として有用な好ましい
エチレン性不飽和炭化水素化合物は、炭素数が20個
(を含む)まで、好ましくは10個(を含む)までであ
り、エチレンおよび他のα−オレフィン(例えば、プロ
ピレン、ブチレン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−
オクテンおよび1−ドデセン)などの脂肪族、あるい
は、他の脂肪族分子上、特にエチレン性不飽和の炭素原
子上にアリール置換基を有するアリール脂肪族である。
後者のエチレン性不飽和炭化水素の例としては、スチレ
ン、p−メチルスチレン、m−プロピルスチレンおよび
p−エチルスチレンが挙げられる。好ましいポリケトン
ポリマーは、一酸化炭素とエチレとのコポリマー、また
は一酸化炭素、エチレンおよび少なくとも3個の炭素原
子を有する第2の炭化水素、特にプロピレンなどのα−
オレフィンとの三元ポリマーである。
【0010】ポリケトンポリマーは鎖状交互ポリマーの
構造を有し、エチレン性不飽和炭化水素の各分子に対し
て実質的に1分子の一酸化炭素を含む。本発明の組成物
中のブレンド成分として、一酸化炭素、エチレンおよび
第2の炭化水素の三元ポリマーを用いるときは、三元ポ
リマー内に、第2の炭化水素部分を付与する各単位に対
してエチレン部分を付与する単位が少なくとも2個ある
のが好ましい。好ましくは、第2の炭化水素を付与する
各単位に対してエチレン部分を付与する単位が10〜1
00個である。従って、ポリマー鎖は繰り返し式:
【0011】
【化3】
【0012】[式中、Gは第2の炭化水素のエチレン性
不飽和で重合することにより得られる部分であり、y:
xの比は 0.5以下である]で表わされる。ブレンド成分
として一酸化炭素とエチレンとのコポリマーを用いる態
様においては、第2の炭化水素が存在しないので、ポリ
ケトンポリマーは、上記式でy=0として表わされる。
yが0以外、すなわち三元ポリマーを使用する場合は、
−CO−(CH2 −CH2 )単位と−CO−(G)−単
位がポリマー鎖中にランダムに存在し、y:xの比は
0.01〜0.1であるのが好ましい。ポリマー鎖の末
端基、すなわち「キャップ」は、ポリケトン製造中にど
の物質が存在しているか、またポリマーが精製されてい
るかどうか、どのように精製したかに依存する。ポリマ
ーの正確な特性はあ特定の末端基にほとんど存在しない
ので、ポリマーは、ポリマー鎖に対する上記式によって
正しく表わされる。
【0013】特に興味深いのは、ゲルパーミエーション
クロマトグラフィーで測定した数平均分子量が 1,000〜
200,000 、特に20,000〜90,000のポリケトンである。そ
のようなポリマーの物理的性質は、分子量、ポリマーが
コポリマーまたは三元ポリマーのどちらであるか、およ
び三元ポリマーの場合は第2の炭化水素の存在割合に一
部依存する。そのようなポリマーの典型的融点は175
℃〜300℃、好ましくは210℃〜270℃である。
ポリマーの極限粘度数(LVN)(標準的毛細管粘度測
定装置で、m−クレゾール中、60℃で測定)は0.5
〜8、好ましくは0.8〜4である。
【0014】現在普通になっているポリケトンポリマー
の製造方法は、一酸化炭素と不飽和炭化水素とを、パラ
ジウム化合物、pKaが約6以下のハロゲン化水素酸で
ない酸のアニオンおよびリン二座配位子から生成する触
媒組成物の存在下で接触させるものである。ポリケトン
製造の範囲は広く、限定されないが、好ましいパラジウ
ム化合物はパラジウムカルボキシレート、特に酢酸パラ
ジウムであり、好ましいアニオンはトリフルオロ酢酸ま
たはp−トルエンスルホン酸のアニオンであり、好まし
い二座配位子は1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)
プロパンまたは1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニ
ル)ホスフィノ]プロパンである。
【0015】重合は、実質的に反応希釈剤を含まない気
相中、またはアルカノール(例えばメタノールまたはエ
タノール)などの反応希釈剤を含む液相中で行う。反応
剤は、重合条件下において、触媒組成物の存在下、反応
容器中で振盪または攪拌するなどの常法により触媒させ
る。好適な反応温度は20〜150 ℃、好ましくは50〜
135℃である。典型的な反応圧力は1〜100 バールで
あり、10〜100バールであることが多い。反応後、
ポリマーをデカンテーションまたは濾過により回収す
る。ポリマー生成物は触媒組成物残渣を含んでいてもよ
いが、所望ならば、溶媒または残渣に対して選択的な錯
化剤によって処理することにより除去する。
【0016】本発明の三成分から成る非混和性ブレンド
の第2成分は鉱物フィラーであり、好ましくは、タル
ク、粘土、雲母、シリカ、炭酸カルシウム、珪灰石、フ
ランクリン鉱(franklinite )および/またはそれらの
混合物から選択される。この中で特にタルクが好まし
い。
【0017】本発明の非混和性ブレンドに使用すべき鉱
物フィラーは、通常、製造業者によって、サイジング材
料またはカップリング剤(これら2つの用語は、しばし
ば同じ意味で使用される。)でコーティングされて供給
される。例えば、炭酸カルシウムはステアリン酸などの
酸性物質でコーティングすることができる。サイジング
剤またはカップリング剤の性質は、鉱物フィラーおよび
ポリマーマトリックスの界面剪断強さ、すなわちポリマ
ーとフィラーとの接着程度に影響を及ぼす。ポリマーブ
レンドに強度を与えるために、界面剪断強度を少なくと
もポリマーの剪断強度に匹敵する大きさにするとポリマ
ーと鉱物フィラーとの間に良好な接着が得られる。界面
剪断強度はポリマーの極性によって影響されるので、い
くつかのポリマーに対してはある種のサイジング剤また
はカップリング剤がより良好に作用する。ポリケトンポ
リマー含有ブレンドの場合は、種々のサイジング剤が好
適であるが、特に、極性ポリマーと共に使用するよう設
計され、備えられたサイジング剤が好ましい。サイジン
グ剤は、一般に、鉱物フィラー製造業者の管轄範囲であ
ることが多い特定の化学構造よりもむしろサイズの一般
的性質によって特徴づけられる。好適なサイジング剤と
しては、でん粉と潤滑油の水性エマルジョン;界面活性
剤と潤滑剤の水性分散液;ビニルシラン、アルキルトリ
メトキシシラン、アミノシランおよびトリメトキシシラ
ン(ウレタン、アクリレートまたはエポキシ官能性を含
んでいてもよい)などのシラン含有材料及び非極性炭化
水素が挙げられる。
【0018】鉱物フィラーは、得られるポリケトンポリ
マー組成物の成形収縮率を低下および/または調節する
ことを助けることができる。物理的および熱的特性は、
鉱物フィラーの特徴、例えば、フィラーの形、フィラー
粒子の大きさ、フィラー粒子の大きさの分布、フィラー
粒子の表面積およびフィラー粒子の表面の調製法(すな
わちサイジング)によって影響を受ける。タルクはポリ
ケトンポリマーの寸法安定性を著しく改善し、一方、耐
衝撃性の低下は、他の鉱物フィラーと比較して最も小さ
い。
【0019】本発明の三成分ブレンドの第3成分はポリ
エーテルエステルアミドポリマー、例えば、ポリエーテ
ル部分およびエステル結合またはアミド結合またはその
両者を含む少なくとも1つの他の部分を付与するポリマ
ーである。ポリエーテルエステルアミドは、ポリマー分
子内にポリエーテル、エステルおよび/またはアミド部
分が含まれている限り、ランダムコポリマーでもブロッ
クコポリマーでもよい。ポリエーテルエステルアミドポ
リマーの特定構造は、ポリエーテルエステルアミドポリ
マーの特定の製造方法により変化し、それに大きく依存
する。
【0020】一態様においては、ポリエーテルエステル
アミドを、好ましくは、(a)ω−アミノカルボン酸ま
たはラクタムから選択され、炭素数が10以上である1
種以上の化合物、(b)平均分子量が160〜3000
のα,ω−ジヒドロキシ(ポリオキシアルキレンオキシ
ド)、特にα,ω−ジヒドロキシ(ポリテトラヒドロフ
ラン)、および(c)有機ジカルボン酸を反応させるこ
とにより製造する。成分(a):成分(b)+(c)の
重量比は、ポリマー全体に対して30:70〜98:2
にすべきである。
【0021】成分(a)のω−アミノカルボン酸および
/またはラクタムの例としては、カプロラクタム、ラウ
リルラクタム、12−アミノドデカン酸および11−ア
ミノウンデカン酸が挙げられる。ラウリルラクタムおよ
び12−アミノドデカン酸が好ましい。成分(b)のジ
オールは、ジヒドロキシ(ポリオキシアルキレンオキシ
ド)、特に分子量500〜1200のα,ω−ジヒドロ
キシ(ポリテトラヒドロフラン)である。成分(c)の
ジカルボン酸は、炭素数6〜13の直鎖ジカルボン酸で
ある。そのようなジカルボン酸としては、アジピン酸、
スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が挙げられ
る。ドデカン二酸が好ましい。
【0022】ポリエーテルエステルアミドは、成分
(a)に対して2〜30重量%の水の存在下、密閉反応
器中、内部圧力下、反応剤を230〜300℃に加熱す
ることにより製造する。水を水蒸気として除去した後、
標準圧または減圧下、酸素の不存在下で混合物を250
〜280℃に維持する。得られたポリマーは、出発化合
物の単位がポリマー鎖に沿ってランダムに分布している
ランダムポリマーである。
【0023】第2の一般的に好ましい態様においては、
ポリエーテルエステルアミドが、ポリマー成分のブロッ
ク、例えば、エステルアミド成分かおよびポリエーテル
成分のブロックを含むブロックコポリマーである。その
ようなブロックポリエーテルエステルアミドポリマー
は、繰り返し式:
【0024】
【化4】
【0025】[式中、Rはジカルボン酸ポリアミドから
末端の2つのカルボキシル基を取ったポリアミド部分で
あり、R′はポリオキシアルキレングリコールから末端
の2つの水酸基を取ったポリオキシアルキレン部分であ
る]で表わされる。
【0026】ジカルボン酸ポリアミドは、1種以上のラ
クタムおよび/またはω−アミノ酸の重縮合などの公知
方法または、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合によっ
て製造される。ポリアミド部分がラクタムまたはアミノ
酸から作られる場合は、ラクタムまたはアミノ酸が炭素
数4〜11の直鎖アルキレン部分を含むのが好ましく、
例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタム、12−ア
ミノドデカン酸および11−アミノウンデカン酸が挙げ
られる。ラウリルラクタムおよび12−アミノドデカン
酸が好ましい。ポリアミド部分がジアミンおよびジカル
ボン酸から作られるとき、好ましいジアミンは、炭素数
4〜12の直鎖ジアミン、特にヘキサメチレンジアミン
およびノナメチレンジアミンであり、好ましいジカルボ
ン酸は、4〜12個の炭素原子を有し、例えば、アジピ
ン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が
挙げられる。ポリアミド部分は、反応剤の接触により作
られるが、しばしば過剰のジカルボン酸の存在下で接触
させてポリアミド部分の鎖長を制限する。ジカルボン酸
ポリアミドの平均分子量が 300〜15,000、好ましくは 8
00〜5,000 の場合に、良好な結果が得られる。
【0027】ポリオキシアルキレングリコール部分は、
アルキレン部分が少なくとも2個の炭素原子を有する鎖
状または分岐状ポリオキシアルキレングリコールから成
り、グリコールとしては例えば、ポリオキシエチレング
リコール、、ポリオキシプロピレングリコールまたはポ
リオキシテトラメチレングリコールおよびそれらのグリ
コールのコポリマーが挙げられる。ポリオキシテトラメ
チレングリコールが好ましい。ポリオキシアルキレング
リコールの平均分子量は100〜6000が適当である
が、好ましくは200〜3000である。
【0028】ポリオキシアルキレングリコールとジカル
ボン酸ポリアミドとの全ポリマーに対する重量比は5:
95〜85:15が適当であるが、好ましくは10:9
0〜50:50である。ポリオキシアルキレングリコー
ル部分とジカルボン酸ポリアミド部分との反応は、例え
ば100〜400℃の溶融状態で、アルコキシド触媒の
存在下に行う。該触媒は、各アルキル基が独立して24
個までの炭素原子を有するジルコニウム、チタニウム、
またはハフニウムのテトラアルコキシドが好ましい。反
応剤の接触維持は、0.05〜5mmHgの減圧下、攪拌
などによって激しく混合することにより行う。
【0029】ポリエーテルエステルアミドの製造は当業
者間でよく知られており、ランダムコポリマーの場合は
米国特許第4,207,410 号に、ブロックコポリマーの場合
は米国特許第4,252,920 号に詳細に記載されている。ポ
リエーテルエステルアミドのいくつかは市販されてい
る。
【0030】更に、所望により、第4成分をこれらの必
須三成分ブレンドに加えることができる。本発明のブレ
ンドの任意的な第4成分は、少しでも存在するならば少
量成分として存在し、α−オレフィン部分およびα,β
−エチレン性不飽和カルボン酸部分を含み、所望により
第3のモノマーと重合し、また、所望により、カルボン
酸基部分が非アルカリ金属で中和されている。この任意
のブレンド成分のα−オレフィンモノマーは、エチレ
ン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オク
テンおよび1−デセンなどの炭素数10(を含む)まで
のα−オレフィンである。好ましいα−オレフィンは、
炭素数4(を含む)までの直鎖のα−オレフィンであ
り、最も好ましいのはエチレンである。この任意のブレ
ンド成分のα−オレフィンモノマーは、成分全体に対し
て少なくとも65モル%存在し、好ましくは少なくとも
80モル%存在する。
【0031】エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、
炭素数10(を含む)までのα,β−エチレン性不飽和
カルボン酸であり、例えば、アクリル酸、2−ヘキセン
酸および2−オクテン酸が挙げられる。好ましいα,β
−エチレン性不飽和カルボン酸は、4個(を含む)まで
の炭素原子を有する。これらの酸としては、アクリル
酸、メタクリル酸およびクロトン酸があり、そのうち、
アクリル酸およびメタクリル酸が特に好ましい。任意的
な第4ブレンド成分の不飽和酸モノマーは、ブレンド成
分全体に対して1〜35重量%の量で存在するが、5〜
20モル%の量が好ましい。
【0032】任意的な酸性ポリマーブレンド成分は、α
−オレフィンと不飽和カルボン酸とのコポリマーである
のが適当であり、一般にそのようなコポリマーが好まし
い。しかし、場合によっては、任意的な第3モノマーと
して、低分子量の重合可能な炭素数8(を含む)までの
非酸性モノマーを付加すると有用である。そのような任
意的なモノマーは、主要なα−オレフィンモノマーが、
エチレン;酢酸ビニル、メチルアクリレートまたはエチ
ルメタクリレートなどの不飽和エステル;フッ化ビニル
または塩化ビニルなどの不飽和ハロゲン化炭化水素;ま
たはアクリロニトリルなどの不飽和ニトリルである場
合、プロピレンまたはスチレンなどの別のα−オレフィ
ンでもよい。前述したように、この第3モノマーの存在
は任意であり、必要ではない。第3モノマーの量は、任
意的なブレンド成分がポリマー全体に対して5モル%ま
でで十分であり、好ましいのは、3モル%までの量であ
る。
【0033】任意的な第4ブレンド成分のポリマーがコ
ポリマーまたは三元ポリマーのどちらであるかとは無関
係に、第4ポリマーブレンド成分の任意の態様において
は、カルボン酸基部分が非アルカリ金属で中和されてい
る。部分的に中和されている場合、この任意のブレンド
成分はポリマー状であるがイオン特性を示し、通常、金
属アイオノマーと言う。任意的なポリマーブレンド成分
が部分的に中和された態様において、任意的な第3モノ
マーを有する、または有しないα−オレフィン/不飽和
カルボン酸ポリマーは、ポリマー中に存在するカルボン
酸基の10〜90%、好ましくは20〜80%を中和す
るのに十分なイオン化し得る亜鉛、アルミニウム、また
はマグネシウム化合物源と反応させる。そのような中
和、特に、好ましい金属である亜鉛による中和を行う
と、金属がポリマー中に均一に分布する。その中和に使
用するイオン化可能な金属化合物は、錯体化されたまた
はされていない亜鉛、アルミニウムまたはマグネシウム
イオンなどの非アルカリ金属イオン源であり、それは、
金属塩として知られている型の化合物として与えられ
る。該金属塩としては、例えば、酢酸亜鉛、塩化亜鉛も
しくはギ酸亜鉛などの錯体化されていない金属イオン
塩、または、金属が2種類の基に結合し、少なくともそ
の一方は容易にイオン化でき、他方は容易にイオン化で
きない錯体化された金属イオン塩がある。そのような錯
体化された金属イオン塩の例としては、オレイン酸また
はステアリン酸などの1種の弱酸および酢酸またはギ酸
などの1種以上のよりイオン化しやすい酸との混合亜鉛
塩がある。一般に、錯体化された非アルカリ金属イオン
との中和が好ましい。
【0034】任意的なポリマーブレンド成分として使用
される所望により部分的に中和されたポリマーは広く一
般に使われており、多くが市販されている。
【0035】本発明の組成物は、好ましくは、大部分を
ポリケトンポリマーが占め、鉱物フィラーおよびポリエ
ーテルエステルアミドを少量含む。ポリエーテルエステ
ルアミドポリマーの正確な割合は重要ではなく、全ブレ
ンド(成分1,2,3および4)に対して0.5〜45
重量%の量のポリエーテルエステルアミドポリマーであ
れば十分である。好ましくは1〜20重量%である。鉱
物フィラーの量は全ブレンドに対して0.1〜45重量
%であり、好ましくは10〜40重量%である。任意的
な第4ポリマーの量は、全ポリマーブレンドに対して1
0重量%以下が適当であり、5重量%以下が好ましい。
従って、好ましい組成物は、ブレンドの全重量に対して
50〜99.4重量%の成分(1)、0.1〜45重量
%の成分(2)、0.5〜45重量%の成分(3)およ
び0〜10重量%の成分(4)を含む。
【0036】特に、該組成物は、ブレンドの全重量に対
して50〜89重量%の成分(1)、10〜40重量%
の成分(2)、1〜20重量%の成分(3)および0〜
5重量%の成分(4)を含む。
【0037】ポリケトンポリマー、鉱物フィラーおよび
ポリエーテルエステルアミドポリマーの非混和性ブレン
ドの製造方法は、ポリケトン中に鉱物フィラーおよびポ
リエーテルエステルアミドが比較的均一に分布したもの
が得られる限り、問題ではない。三成分ブレンドは非混
和性ブレンドであり、鉱物フィラーおよびポリエーテル
エステルアミドがポリケトンマトリックス中に不連続相
として存在する。従って、ブレンドは均一ではないが、
添加成分の分布が実質的に均一の場合に良好な結果が得
られる。
【0038】成分のブレンド方法は、非混和性ポリマー
材料について慣用の方法による。一態様では、粒子状の
ブレンド成分を混合して押出機を通し、ブレンドを押出
物として製造する。別の態様では、高剪断を示す混合装
置中で成分をブレンドする。好ましい態様においては、
鉱物フィラーとポリエーテルエステルアミドポリマーを
押出機またはバッチ混合装置中で予備混合した後、その
予備混合されたブレンドを別の押出機または混合装置中
でポリケトンポリマーと混合するか、あるいは、同じ押
出機の下流にポリケトンポリマーを添加することにより
混合する。鉱物フィラーとポリエーテルエステルアミド
との予備混合により衝撃特性が改善されるが、これは、
ポリエーテルエステルアミドにより、ポリケトンマトリ
ックスとフィラー粒子との間に強靭で良好に接着する界
面相が生じるという仮説と一致する。このためには、フ
ィラー表面をポリエーテルエステルアミドで完全に湿ら
す必要があり、それは、上述した予備混合の方法により
促進される。
【0039】本発明のブレンドは、酸化防止剤、安定
剤、難燃材料、離型剤および、ポリマー成分の加工性ま
たは得られるブレンドの特性を改善する他の物質などの
慣用的な添加剤を含んでいてもよい。それらを添加する
ことにより、そのような添加剤は、ポリケトンポリマ
ー、鉱物フィラーおよびポリエーテルエステルアミドポ
リマーをブレンドする前、もしくは同時にまたはブレン
ドした後に加えることができる。
【0040】本発明のブレンドは、ポリケトンポリマー
そのものと比較して寸法安定性が改善され(熱膨張率お
よび成形収縮率が比較的小さい)。ポリエーテルエステ
ルアミドポリマーを含まない充填ポリケトンと比較して
衝撃強度が良好であることを特徴とする。従って、本ブ
レンドは、広い温度範囲にわたって良好な寸法安定性お
よび耐衝撃性を必要とする製品を作る場合に特に有用で
ある。該ブレンドは、射出成形および押出成形などの常
法により加工して、シート、フィルム、プレート、ファ
イバーおよび成形品とする。その成形ポリマー製品は、
包装産業、飲食物用などの成形容器の製造および車体パ
ネルなどの自動車用内外部品の製造に有用である。
【0041】以下の実施例により本発明を更に説明する
が、本発明は以下の実施例によって制限されるものでは
ない。
【0042】
【実施例】実施例1 A. 一酸化炭素、エチレンおよびプロピレンの三元ポ
リマーを、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸および
1,3−ピス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィ
ノ]プロパンから作った触媒組成物の存在下で製造し
た。この三元ポリマーの融点は220℃であり、m−ク
レゾール中、60℃で測定したLVNは1.7dl/gで
あった。該ポリケトンポリマーは、溶融加工助剤とし
て、エチレンとメタクリル酸との市販のコポリマーを1
重量%含んでいた。
【0043】B. A記載のポリケトン三元ポリマー
に、10〜30重量%のタルクフィラーおよび0〜16
重量%のPEBAX(商標)2533エラストマー(市
販のポリエーテルエステルアミド)を加えて種々のブレ
ンドを調製した。その組成を表1に示す。ブレンドの調
製は、30mmの二軸スクリュー押出機中で、200RP
Mおよび溶融温度約255〜265℃にて行った。成形
は、25トンの射出成形機中で、温度約265℃にて行
った。生成したサンプルの厚さは3.2mmであり、テス
トを行うまで乾燥剤上で保管した。サンプルHは加工で
きないことがわかった。
【0044】
【表1】
【0045】C. 「成形状態で乾燥した」サンプルの
衝撃特性を表2に示す。23℃におけるノッチ付アイゾ
ット値はポリエーテルエステルアミド含量の増加ととも
に着実に増加し、タルク20重量%およびポリエーテル
エステルアミド12重量%で2400gcm/cmを超え、
タルク10重量%およびポリエーテルエステルアミド9
重量%では3200gcm/cmより大きい値になる。−2
9℃におけるノッチ付アイゾット値は、タルク20重量
%およびポリエーテルエステルアミド8重量%の場合と
タルク10重量%およびポリエーテルエルテルアミド9
重量%の場合の両方で約900gcm/cmの最大値を示
す。23℃および−30℃の両方におけるガードナー衝
撃測定値は、20重量%のタルクを含むサンプルの中で
ポリエーテルエステルアミドを8重量%含むサンプルが
最大値を示し、これが特に好ましい組成である。8重量
%のポリエーテルエステルアミドおよび20重量%のタ
ルクを含むガードナー衝撃試験片は、好ましい特性であ
る延性、すなわち局部破損も示した。タルクを10重量
%含み、ポリエーテルエステルアミドは含む場合と含ま
ない場合の2つのサンプルも23℃において高いガード
ナー衝撃値を示した。
【0046】
【表2】
【0047】D. サンプルの引張特性を表3に示す。
曲げ弾性は、1%のひずみにおける正割モジュラスとし
て定義される。ポリエーテルエステルアミド含量が0重
量%から16重量%の増大するにつれて、曲げ弾性は約
3000GPaから約1700GPaへ減少する。引張
降伏応力もポリエーテルエステルアミド含量の増加とと
もに着実に減少する。ポリエーテルエステルアミド含量
の増加とともに強度および剛性において若干の低下が生
じるが、その影響はそれ程大きくはない。最終的な伸び
は、ポリエーテルエステルアミド含量の影響を比較的受
けないままである。
【0048】
【表3】
【0049】実施例2 実施例1−Aのポリケトン三元ポリマーのブレンドを実
施例1−Bと同様の方法で調製し、タルクフィラーは2
0重量%含み、ポリエーテルエステルアミドエラストマ
ーは8重量%含むものと含まないものを得た。500ト
ンの射出成形機を用いて17.8cm×76.2cmパネルのブレン
ドサンプルを作った。溶融温度は270℃とし、成形温
度は132℃とした。生成パネルの厚さは2.5mmと
3.8mmであった。
【0050】ガードナー衝撃測定値を表4に示す。その
結果から、タルク充填ポリケトンパネル中に8重量%の
ポリエーテルエステルアミドが含まれている場合に、ガ
ードナー衝撃強度が有意に増加することがわかる。
【0051】
【表4】
【0052】実施例3 実施例1−Aのポリケトン三元ポリマーの2つの同一ブ
レンドを実施例1−Bと同様の方法で作り、タルクフィ
ラー20重量%およびポリエーテルエステルアミドエラ
ストマー12重量%を含むものを得た。第1ブレンドで
は、成分を全て一緒に乾燥ブレンドし、押出機により単
一工程で混合した。第2ブレンドでは、最初にタルクと
ポリエーテルエステルアミドとを適当な割合で混合し、
次いでこの予備混合したブレンドを更にポリケトンポリ
マーと混合させた。2つのブレンドの特性を表5で比較
する。アイゾット値はあまり違わないが、室温および低
温におけるガードナー衝撃強度は、予備混合の結果、約
2倍改善されている。破断時の伸びもわずかに増加して
いる。このように、この予備混合による有利性は、明ら
かに実証されている。
【0053】
【表5】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 23:08) (72)発明者 エリツク・リチヤード・ジヨージ アメリカ合衆国、テキサス・77077、ヒ ユーストン、オーバーブルツク・レー ン・13703 (56)参考文献 特開 平2−51544(JP,A) 特開 平1−135861(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/14

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記成分(1)〜(3): (1)一酸化炭素と少なくとも1種のエチレン性不飽和
    化合物との鎖状交互ポリマー、 (2)鉱物フィラー、および (3)ポリエーテルエステルアミドポリマー ならびに、所望により下記成分(4): (4)α−オレフイン部分、α,β−エチレン性不飽和
    カルボン酸部分、および所望により酸性でない低分子量
    の重合可能なモノマー部分を含む酸性ポリマーであっ
    て、そのカルボン酸基の一部が所望により非アルカリ金
    属で中和されている酸性ポリマー の非混和性ブレンドを含むことを特徴とするポリケトン
    ポリマー組成物。
  2. 【請求項2】 成分(1)が下記繰り返し式: 【化1】 [式中、Gはエチレン性不飽和で重合している少なくと
    も3個の炭素原子を有するエチレン性不飽和炭化水素部
    分であり、y:xの比は0.5以下である]で表わされ
    ることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
  3. 【請求項3】 Gがプロピレン部分であり、y:xの比
    が0.01〜0.1であることを特徴とする請求項2に
    記載のポリマー組成物。
  4. 【請求項4】 成分(2)がタルク、雲母、粘土、シリ
    カ、炭酸カルシウム、珪灰石、フランクリン鉱およびそ
    れらの混合物から成る群から選択されることを特徴とす
    る請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー組成
    物。
  5. 【請求項5】 成分(2)がタルクであることを特徴とす
    る請求項4に記載のポリマー組成物。
  6. 【請求項6】 成分(3)が、(a)炭素数10以上のω−
    アミノカルボン酸またはラクタムから選択される1種以
    上の化合物、(b)平均分子量160から3000のα,
    ω−ジヒドロキシ(ポリオキシアルキレンオキシド)およ
    び(c)炭素数6〜13のジカルボン酸からなるランダム
    コポリマーであり、(a):(b)+(c)の比がポリエーテ
    ルエステルアミドポリマー全体に対して30:70〜9
    8:2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか
    一項に記載のポリマー組成物。
  7. 【請求項7】 ω−アミノカルボン酸またはラクタムか
    ら選択される化合物がラウリルラクタムであり、ジヒド
    ロキシ(ポリオキシアルキレンオキシド)がα,ω−ジヒ
    ドロキシ(ポリテトラヒドロフラン)であり、ジカルボン
    酸がドデカン二酸であることを特徴とする請求項6に記
    載のポリマー組成物。
  8. 【請求項8】 成分(3)が下記繰り返し式: 【化2】 [式中、Rは平均分子量300〜15000のジカルボ
    ン酸ポリアミドから末端の2個のカルボキシル基が失わ
    れたポリアミド部分であり、R′は分子量100〜60
    00のポリオキシアルキレングリコールから末端の2個
    の水酸基が失われたポリオキシアルキレン部分である]
    のブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1
    〜5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
  9. 【請求項9】 ポリアミドが炭素数4から2の直鎖状ジ
    アミンと過剰量の炭素数4〜12の直鎖状ジカルボン酸
    との生成物であることを特徴とする請求項8に記載のポ
    リマー組成物。
  10. 【請求項10】 ポリオキシアルキレングリコールがポ
    リオ記してトラメチレングリコールであることを特徴と
    する請求項9に記載のポリマー組成物。
  11. 【請求項11】 成分(4)がエチレンとアクリル酸もし
    くはメタクリル酸とからなる中和されていないコポリマ
    ーであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一
    項に記載のポリマー組成物。
  12. 【請求項12】 成分(4)のカルボン酸基の酸基の10
    〜90%が亜鉛、アルミニウムまたはマグネシウムで中
    和されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれ
    か一項に記載のポリマー組成物。
  13. 【請求項13】 ブレンドの全重量に対して、成分(1)
    を50〜99.4重量%、成分(2)を0.1〜45重量
    %、成分(3)を0.5〜45重量%、および成分(4)を
    0〜10重量%の量で含むことを特徴とする請求項1〜
    12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
  14. 【請求項14】 ブレンドの全重量に対して、成分(1)
    を50〜89重量%、成分(2)を10〜40重量%、成
    分(3)を1〜20重量%、および成分(4)を0〜5重量
    %の量で含むことを特徴とする請求項13に記載のポリ
    マー組成物。
  15. 【請求項15】 鉱物フィラーをポリエーテルエステル
    アミドポリマーと混合して、予備混合されたポリマーブ
    レンドを生成する工程;およびその予備混合されたポリ
    マーブレンドを一酸化炭素と少なくとも1種のエチレン
    性不飽和化合物とからなる鎖状交互ポリマーとブレンド
    して請求項1に記載された非混和性ポリマーブレンドを
    生成する工程を含むことを特徴とするポリケドンポリマ
    ー組成物の製造方法。
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