JP3014872B2 - 探針−試料間距離制御機構およびその使用装置 - Google Patents

探針−試料間距離制御機構およびその使用装置

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JP3014872B2
JP3014872B2 JP4290033A JP29003392A JP3014872B2 JP 3014872 B2 JP3014872 B2 JP 3014872B2 JP 4290033 A JP4290033 A JP 4290033A JP 29003392 A JP29003392 A JP 29003392A JP 3014872 B2 JP3014872 B2 JP 3014872B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は探針と試料間に流れるト
ンネル電流を利用して試料表面を観察する装置(Sca
nning Tunneling Microscop
y,以下STM)、またはこれを利用して試料表面に情
報を記録再生する装置の探針−試料間距離制御機構に関
する。
【0002】
【従来の技術】STMは電子のトンネル現象を利用して
試料表面の形状及び電子状態の混在情報を原子オーダー
の分解能で検出可能な装置であり、顕微鏡としての用途
のほかに情報記録再生装置等の類似装置への応用が可能
である。
【0003】STMでは先端の尖った探針で試料面上を
走査しながら、探針と試料間の距離が数nm以下で発生
するトンネル電流をサーボ信号として距離を制御するこ
とによって測定信号を検出している[G.Binnig
et al.Phys.Rev.Lett.49,5
7(1982)]。
【0004】図7を用いてSTMの従来技術について、
更に詳しく説明する。
【0005】1は、先端が尖った探針、2は、探針1と
対峙して配置された試料(又は記録媒体)で、不図示の
XY走査信号発生回路およびXY走査駆動機構によって
XY軸方向に走査される。3は、探針制御用アクチュエ
ータで探針1をZ軸方向に移動させる。4は、探針と試
料との間に電圧を印加するバイアス回路、5は、バイア
ス印加状態で探針1と試料2とを接近させると発生する
トンネル電流を検出し電圧に変換する電流電圧変換回
路、6は、変換された電圧をさらに対数変換して出力す
る対数変換回路、7は、所望のトンネル電流値を設定値
とし、入力との差分信号を検出する差分回路、9は差分
信号の高周波分を除去し、トポ信号を出力するローパス
フィルター、8は、探針Z制御信号発生回路で、LPF
9の出力よりサーボ信号を形成し、探針制御用アクチュ
エータ3に出力して、探針試料間の距離制御を行なわせ
る。10は、記録ビット形成用電圧発生回路で、STM
を応用した記録再生装置に必要な信号の発生を行ない、
11はローパスフィルター9から出力されるトポ信号、
12は対数変換回路6から出力されるカレント信号で、
画面情報、記録・再生情報信号として用いられる。バイ
アス回路4によって先端の尖った探針1と試料2間にバ
イアスを印加した状態で、探針1を試料面に対して1n
m付近まで接近させるとトンネル電流が発生し始める。
このトンネル電流を電流電圧変換回路5によって電圧に
変換し、対数変換回路6を経て差分回路7によって所望
の設定トンネル電流値との差分信号を検出し、ローパス
フィルター9、探針Z制御信号発生回路8を通してサー
ボ信号を形成する。このサーボ信号を圧電素子などで構
成される探針制御用アクチュエータ3に入力し距離制御
すると同時に、不図示のXY走査信号発生回路によって
XY走査信号を入力し、試料面内方向に沿って走査しな
がら差分回路7、ローパスフィルター9を介して形成さ
れるトポ信号11、又は対数変換回路6の出力信号であ
るカレント信号12をモニターし、画像処理を施すこと
によって試料表面の形状、及び電子状態を反映する観察
像を得ることができる。
【0006】又以上述べた技術によって探針と試料(記
録媒体)との間の距離を制御しつつ、表面を走査しなが
ら記録ビット形成用電圧発生回路10によって電圧パル
スを印加し、トンネル電流、電界放射電流、又は接触電
流等によって表面の形状又は電子状態に変調を引き起こ
し記録ビットを形成することによって、記録再生装置へ
の応用も可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、トンネル電流を探針試料間距離制御の
ためのサーボ信号とする従来のSTM測定では、図8
(a)に示すように試料22が絶縁性の材料である場
合、トンネル電流のほとんどは試料表面と探針間ではな
く、試料が形成された導電性基板21の表面と探針との
間に発生する場合が多く、絶縁性試料と導電性基板界面
での吸着構造により導電性基板表面の電子状態が絶縁性
試料の電子状態を反映した変調を受ける場合、或いは絶
縁性試料中の界面準位、不純物準位が介在する場合等の
例外を除いて、探針は主に導電性基板の形状、電子状態
を反映した軌跡23を描き、従って試料の表面状態を反
映する情報はほとんど得られない。
【0008】また従来法では、探針が試料表面からど
れだけ離れているか、つまり探針と試料表面との絶対的
な距離に関する情報は全く得られないため、試料22が
導電性基板21上におかれた絶縁性材料である場合に
は、図8(b)に示すように、探針が絶縁性試料表面に
接触、もしくは試料内部に潜り込んだ状態で走査が行わ
れることによって、試料を破壊し同時に探針側も汚染さ
れることがしばしばであり、非接触状態での測定が可能
であることが大きな魅力の一つであるSTM測定におい
て大きな障害となっている。そこで走査中の試料表面と
探針との絶対的な距離を明確にし、面走査における探針
と試料の接触、及びそれに引き続いて起こる試料表面の
破壊、探針の汚染を回避する必要がある。
【0009】更にトンネル電流を利用する像観察、又
は探針試料間距離制御の観点からトンネル電流に含まれ
る形状情報と電子状態情報を分離して検出することが望
ましい。しかしながら従来法で得られる情報は試料表面
の形状と電子状態に関する混合情報であり、それぞれを
分離して検出することができない。例えば探針と試料表
面を一定距離に保ちつつ試料面上を走査したい場合で
も、図8(c)に示すように半導体試料22表面の一部
が不純物によりn型又はp型化されて電子状態が異なっ
ている場合には、探針の軌跡23はこの部分でのトンネ
ル障壁の変化に対応して変調され、一定距離から外れて
しまう。
【0010】これに対して、試料表面の電子状態に関す
る情報であるトンネル障壁を独立に試料表面の形状から
分離して検出する方法がG.Binnig等によって提
案されている[IBM、J.Res.Develop.
30,355(1986),Phys.Rev.Let
t.60(12),1166(1988)]。STMに
おけるトンネル電流Iは、試料表面の局所的な状態密度
ρとトンネル確率Tとの積をエネルギーEに関して積分
し、
【0011】
【数1】 I 〜∫ρ(E)・T(E,eV)dE、但しT(E,eV)=exp{-2s[2m/h2(φ-E+eV/2)1/2]} Vバイアス電圧、φトンネル障壁、s探針試料間距離 と表される。トンネル電流Iの対数を距離sで微分する
ことによって、φ1/2 〜d(lnI)/dsを得る。
【0012】従って探針試料間距離sを微少振動させ、
トンネル電流の対数値に発生するその変調成分をロック
インアンプ等を用いて検出することによって表面ポテン
シャルを反映するトンネル障壁φの平方根に比例する信
号を得ることができる。
【0013】しかしながら、トンネル障壁は後述するよ
うに探針と試料間の距離によって変化するため、表面か
らの距離を一定に保つことが不可能である混成情報によ
る距離制御では、この方法によっても厳密には形状情報
と電子状態情報を分離できているとは言えない。
【0014】更に絶縁性、半導体性、導電性、何れの
材料においても、探針が試料表面に適度に接触した状態
又はその極近傍での接触電流測定、容量測定、及びそれ
に基づく記録、再生を行う必要がある場合には、探針と
試料表面との接触点を検知する必要がある。
【0015】本発明の目的は、このような従来技術の問
題点を解決することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、本発明においては、トンネル電流自体を探針試料
間距離制御のためのサーボ信号とする代わりに、探針試
料間距離に一定の変調を加え、その距離変調に対するト
ンネル電流の応答成分によって得られるトンネル障壁信
号を探針試料間距離制御のためのサーボ信号として用い
ることによって、上述課題を解決することができる。即
ち本発明は、トンネル障壁が導体、半導体、絶縁体を問
わず探針と試料表面との接触点近傍で急激に減少する点
に着目し、トンネル障壁値をサーボ信号にすることによ
って、トンネル電流を探針試料間距離制御のためのサー
ボ信号とする従来のSTM測定では不可能であった接触
点近傍での距離制御を厳密に行うことを可能にするもの
である。
【0017】
【作用】トンネル障壁値が導電体、絶縁体を問わず試料
表面で急激に減少する原因について図を用いて説明す
る。原因は大きく二つに大別される。
【0018】第一の原因は、探針と試料表面間に形成さ
れるトンネル障壁に反映される表面ポテンシャル自体が
金属等の導体、半導体の場合、表面近傍で急激に小さく
なることによる。図5は探針、試料ともに金属の場合に
両者の間に形成されるトンネル障壁φを図5−(a)探
針と試料表面が十分に離れている場合(A領域)、図5
−(b)非常に接近しほぼ接触状態にある場合(B領
域)についてそれぞれ示し、図5−(c)では横軸を探
針試料間の距離Zts、縦軸をトンネル障壁φにとって
示している。探針の表面ポテンシャルΨt、試料の表面
ポテンシャルΨsは、ともに表面から十分に離れている
場合には仕事関数に一致する一定の値を示すが、表面の
極近傍に近づくにつれて表面効果である鏡映ポテンシャ
ル、電気二重層、及びバルク内での電子間相互作用に基
づく交換相関ポテンシャルの影響を受けて急激に減少し
始める。従って探針試料間が十分に離れているときに
は、トンネル障壁は両者の仕事関数の平均値になるが
(A領域)、両者の表面ポテンシャルの減少領域が重な
りあうほどに接近するにつれてトンネル障壁は急激に減
少する(B領域)。
【0019】第二の原因は測定誤差に由来するもので、
接触点近傍で見かけ上、トンネル障壁値が急激に減少す
る。図6(a)において、探針と試料表面が十分に離れ
ているA状態においては、トンネル障壁測定のために探
針駆動用アクチュエーターに加える距離変調量dzと探
針最先端部の距離変調量dz’は一致し、k{d(lnI)/dz}
2 (k定数)によって求まるトンネル障壁値は正しい値
を示すが、探針と試料表面が接触する近傍であるB状態
になると、探針のトンネルに関わる最先端部が弾性変形
を引き起し、探針駆動用アクチュエーターによる距離変
調量dzに対して探針最先端部の実際の距離変調量d
z’が小さくなりk{d(lnI)/dz}2 (k定数)によって求
まるトンネル障壁値が見かけ上小さくなる。図6−
(b)に、横軸を探針試料間の距離Zts、縦軸をトン
ネル障壁φにとって、STMによる見かけ上のトンネル
障壁の接触点近傍での急激な減少を示す。第一の原因と
は全く異なる原因によるものであるが、第一の原因によ
る図5−(c)の結果と似通っている。但しこの場合の
原因は機械的、弾性的なファクターによるものであり導
体、絶縁体を問わない。
【0020】本発明の要点は、以上第一又は第二の原因
によって導体、絶縁体を問わず、表面近傍で急激に減少
し始めるトンネル障壁値をSTMによって検出すること
によって、接触点近傍の位置を知ることが可能である点
を利用することにより、トンネル障壁値の減少が始まり
接触するまでの任意の特定のトンネル障壁値を設定値と
して、測定されるトンネル障壁値と設定値との差分信号
を基に形成されるサーボ信号によって探針試料間距離を
制御することによって、接触点近傍での厳密な距離制御
を導体、絶縁体を問わず可能ならしめるものである。以
下実施例を用いて本発明に付いて更に詳しく説明する。
【0021】
【実施例】
実施例1 図1は本発明実施例の基本的なシステム構成を示すブロ
ック図である。本実施例の構成は、従来例(図7)の構
成にさらに、Z変調信号発生回路13、変調振幅検出回
路14およびローパスフィルター15とを備える点にあ
る。Z変調信号発生回路13は探針Z制御信号発生回路
8に出力するとともに、対数変換回路6と差分回路との
間に設けた変調振幅検出回路14にも信号を送る。ロー
パスフィルター15は対数変換回路に接続されてカレン
ト信号を出力する。バイアス回路4によって先端の尖っ
た探針1と試料2間にバイアスを印加した状態で、探針
1を試料面に対して1nm付近まで接近させるとトンネ
ル電流が発生し始める。この状態でZ変調信号発生回路
13よりZ変調信号を探針Z制御信号発生回路8に入力
し、探針制御用アクチュエータ3によって探針1をZ方
向に微小量強制的に振動させる。この微小量の強制振動
に応答する変調成分を含むトンネル電流を電流電圧変換
回路5によって電圧に変換し、さらに対数変換回路6に
よって対数値に変換する。この対数値出力をロックイン
アンプなどによって構成される変調振幅検出回路14に
入力し、Z変調信号発生回路13によって出力される基
準信号に基づいて同期検波を行うことによってトンネル
電流対数値の中で、トンネル障壁に比例する、探針強制
振動の応答変調成分を検出する。本発明の特徴は、トン
ネル電流ではなく、この変調成分を距離の負帰還制御の
ためのサーボ入力信号にすることにある。具体的には、
この変調成分の検出信号を差分回路7に入力し、図5
(c)又は図6(b)の接触点近傍におけるトンネル障
壁が急激に減少するB領域の任意のトンネル障壁値を設
定値とし、この設定値と測定トンネル障壁値との差分信
号を検出した後、ローパスフィルター9、探針Z制御信
号発生回路8を通してサーボ信号を形成し、測定される
トンネル障壁値が常に所望の設定値に保たれるように探
針−試料間距離を負帰還制御することにある。このサー
ボ信号を圧電素子などで構成される探針制御用アクチュ
エータ3に入力し、探針試料間の距離を制御すると同時
に、不図示のXY走査信号発生回路によってXY走査信
号を入力し、試料面内方向に沿って走査しながら差分回
路7、ローパスフィルター9を介して形成されるトポ信
号11、又は対数変換回路6の出力信号であるカレント
信号12をローパスフィルター15を介して変調成分を
除去した後にモニターし、画像処理を施すことによって
試料表面の形状、及び電子状態を反映する観察像を得る
ことができる。
【0022】図2は、以上述べた本発明による装置によ
る測定例を示す。探針1はPt−Rh機械切断針、導電
性基板はエピタキシャルに成長させたAu(111)、
試料2は有機材料、生体材料のような絶縁性の材料であ
る。この場合、トンネル電流は試料表面と探針間ではな
く試料が形成された導電性基板の表面と探針との間に発
生するため、従来例においては探針は導電性基板の形
状、電子状態のみを反映した軌跡を描き、場合によって
は試料表面に潜り込み破壊することが多かった。ところ
で本測定例では、バイアス電圧を試料側に+0.1V印
加した状態で、探針を0.01nmp−pの振幅及び1
kHzの周波数で強制振動させながら試料表面に対して
徐々に近づけていくと、トンネル電流が発生し始める。
トンネル電流が3pAの距離における変調成分測定値か
らのトンネル障壁算出値は3.5eVであった。更に探
針に近づけていくとトンネル電流が100pA程度から
トンネル障壁の急激な減少が認められた。そこで差分回
路7の基準設定値をトンネル障壁値で0.5eV相当の
変調振幅値に定め、距離サーボ制御を行いながら試料表
面を走査したところ、図2に示すように、探針は試料表
面に沿った軌跡を示し、絶縁性試料の表面形状を反映す
る信号を取得することができた。数回表面を走査し同様
の測定を行ったが再現性は高く、試料面走査によって試
料表面を破壊している様子はみられなかった。この状態
で同時にカレント信号をモニターすることにより絶縁性
試料の膜厚、電子物性のバラツキを反映する信号を形状
信号とは独立に得ることができ、またトポ信号と比較す
ることによって形状と電子物性との相関についての情報
が得られることがわかった。
【0023】図3に他の測定例を示す。探針1はPt−
Rh機械切断針、試料22はn型Si基板21上に低圧
CVDによりポリシリコンを0.25μm形成した後、
ドナーとしてAsイオン、アクセプターとしてAlイオ
ンをマスキングにより選択的にライン状に交互にイオン
注入したもので、これらの不純物によってn型又はp型
のライン状に領域222,223が交互に分布してい
る。
【0024】さてバイアス電圧を試料側に−3.0V印
加した状態で、探針を0.01nmp−pの振幅及び1
kHzの周波数で強制振動させながら試料表面に対して
徐々に近づけていくと、トンネル電流が発生し始める。
図3−(b)に探針−試料間距離によるトンネル障壁の
変化の様子を非注入領域(i型)221、As注入領域
(n型)222、Al注入領域(p型)223について
それぞれ示している。A領域に相当する十分に大きい距
離における変調成分の測定値からのトンネル障壁算出値
は非注入領域で3.0eV、n型注入領域で3.5e
V、p型注入領域で2.5eVであった。更に探針を近
づけていくとある同一の距離から各領域においてトンネ
ル障壁の急激な減少が認められ、トンネル障壁値が0.
3eV程度の値を示す距離で各領域ともほぼ同一の値に
収束し、以降同一の値を示しながら緩やかな減少を示し
た。そこで差分回路6の基準設定値をトンネル障壁値で
0.3eV相当の変調振幅値に定め、距離サーボ制御を
行いながら試料表面を走査したところ、図3(a)に示
すように探針は試料表面に沿った軌跡23を示し試料の
表面形状を反映する信号を取得することができた。従来
例においては、n型領域ではトンネル障壁の増加にとも
ない探針−試料間距離が減少、逆にp型領域ではトンネ
ル障壁の減少にともない探針−試料間距離が増大した
が、本装置においては注入の有無に関わらずほぼ一定の
距離を維持した。
【0025】この状態で同時にカレント信号をモニター
することにより半導体試料22の表面形状によらない電
子物性の変化のみを反映する信号を抽出することがで
き、形状情報や電子状態情報を良好に分離できることが
わかった。
【0026】実施例2 実施例1においては、表面観察装置について述べてきた
が、以上述べた技術によって、探針と試料間の距離を制
御しつつ、表面を走査しながら記録ビット形成用電圧発
生回路10によって電圧パルスを印加し、トンネル電
流、電界放射電流、又は接触電流等によって表面の形状
又は電子状態に変調を引き起こし記録ビットを形成する
ことによって、記録再生装置への応用も可能である。本
発明による距離制御機構によれば、接触点又はその極近
傍での探針位置制御が可能であるため、記録再生時の分
解能及び再現性を飛躍的に高めることができる。例えば
接触電流、電界放射電流、又はコロナ放電などによって
行う電荷蓄積型の記録ビット形成の場合、得られる記録
ビットサイズは距離に大きく依存し、接触又はその極近
傍状態の方が遥かにビットサイズが小さく且つ再現性に
優れた記録が行える。探針としてPt−Rh機械切断
針、記録媒体としてボロンドープのp型Si基板にHC
l処理により酸化層を1〜2nm形成した後、更に低圧
CVDにより窒化層を20nm蒸着した試料を用い、本
発明によるトンネル障壁サーボ機構によってトンネル障
壁が0.1eV相当の距離で探針をホールドし、試料側
に100μsec、+40Vのパルスを加えたところ記
録ビット径50nmのビットが再現性よく形成されるこ
とが確認された。
【0027】実施例3 以上の実施例では、トンネル障壁の減少領域でのスロー
プを利用して探針−試料間距離を制御しているが、トン
ネル障壁の距離微分値を利用することもできる。図4に
示すように、トンネル障壁の距離微分値は接触点近傍で
比較的鋭いピークを示すため、ピークからのズレを検出
しトンネル障壁の微分値がこのピーク付近に保持される
ように探針と試料間の距離を制御する。トンネル障壁の
距離微分値の取得のためには、強制振動の上側微小変
位、下側微小変位の応答成分を独立に時分割処理した
後、両者の差分を検出するようにすればよい。
【0028】
【発明の効果】以上述べてきたように本発明によれば、
導体、絶縁体を問わず表面近傍で急激に減少し始めるト
ンネル障壁をSTMによって検出することによって接触
点近傍の位置を知ることが可能である点に着目し、トン
ネル障壁の減少が始まり接触するまでの任意の特定のト
ンネル障壁値を設定基準値とし、この設定基準値と測定
トンネル障壁値との差分信号に基づいて形成されるサー
ボ信号により探針試料間距離を制御することによって、
トンネル電流を探針試料間距離制御のためのサーボ信号
とする従来のSTM測定では不可能であった接触点近傍
での厳密な距離制御を導体、絶縁体を問わず可能にす
る。このため、従来、問題であった探針接触又は潜り込
み状態での表面走査による試料破壊、探針汚染を防ぐこ
とができる。また原子間力顕微鏡のように、導体、絶縁
体を問わずその表面形状を検出できると同時に、形状情
報と電子状態情報をそれぞれ独立に分離して検出できる
ようになる。更に、探針が試料表面に適宜に接触した状
態又はその極近傍での接触電流測定、容量測定、及びそ
れに基づく記録、再生が可能となり、記録再生の解像度
及び再現性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシステムの構成を示すブロック図。
【図2】本発明による測定例(絶縁性材料)を示す図。
【図3】本発明による測定例(半導体材料)を示す図
で、(a)試料面上の探針の軌跡を示す図、(b)注入
領域、非注入領域でのトンネル障壁とZtsとの関係を
示すグラフ。
【図4】トンネル障壁の距離微分値とZtsとの関係を
示すグラフ。
【図5】接触領域におけるトンネル障壁に対する表面ポ
テンシャルの影響を示す説明図で、(a)A領域(Zt
s大)でのトンネル障壁を示す図、(b)B領域(Zt
s小)でのトンネル障壁を示す図、(c)トンネル障壁
とZtsとの関係を示すグラフ。
【図6】接触領域におけるトンネル障壁に対する探針先
端の弾性変形の影響を示す説明図で、(a)接触領域近
傍での探針先端の強制振動振幅の変化に伴う様子を示す
図、(b)トンネル障壁とZtsとの関係を示すグラ
フ。
【図7】従来例のシステムの構成を示すブロック図。
【図8】従来例による測定例を示す図で、(a)絶縁性
材料、非接触の例を示す図、(b)絶縁性材料、接触の
例を示す図、(c)半導体材料、非接触の例を示す図。
【符号の説明】
1 探針 2,22 試料 3 探針制御用アクチュエータ 4 バイアス回路 5 電流電圧変換回路 6 対数変換回路 7 差分回路 8 探針Z制御信号発生回路 9,15 ローパスフィルター(LPF) 10 記録ビット形成用電圧発生回路 11 トポ(形状)信号 12 カレント信号 13 Z変調信号発生回路 14 変調振幅検出回路 21 基板 23 探針軌跡 221 i型領域 222 n型領域 223 p型領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 亨治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−12503(JP,A) 特開 平4−184201(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01B 7/00 - 7/34

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 探針−試料間に流れるトンネル電流に基
    づいてトンネル障壁値を検出する手段と、探針が試料表
    面に近づいたときのトンネル障壁値の急激な減少領域の
    任意の値を設定値として上記検出されるトンネル障壁値
    を一定に保持するように、探針−試料間の距離を負帰還
    制御する手段とを具備する探針−試料間距離制御機構。
  2. 【請求項2】 探針−試料間に流れるトンネル電流に基
    づいてトンネル障壁の距離微分値を検出する手段と、探
    針が試料表面に近づいたときのトンネル障壁の急激な減
    少領域における距離微分値の最大値を設定値として上記
    検出されるトンネル障壁の距離微分値を一定に保持する
    ように、探針−試料間の距離を負帰還制御する手段とを
    具備する探針−試料間距離制御機構。
  3. 【請求項3】 探針−試料間に流れるトンネル電流を用
    いて試料表面を観察する装置において、請求項1又は2
    の探針−試料間距離制御機構を備える試料表面観察装
    置。
  4. 【請求項4】 探針−試料間に流れるトンネル電流を用
    いて試料表面に情報を記録し再生する装置において、請
    求項1又は2の探針−試料間距離制御機構を備える記録
    再生装置。
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