JP3006796B2 - アルミニウム合金の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はアルミニウム合金の製造方法に関し、さらに
詳しくは、アルミニウム合金製缶の再利用を有効に行な
うことができるアルミニウム合金の製造方法に関するも
のである。
[従来技術] 通常、缶用アルミニウム合金板製品は、原料→溶解→
鋳造→圧延→表面処理→検査の工程により生産されてい
るのが一般的である。
そして、この場合、原料としてはアルミニウム地金は
全部海外からの輸入に依存しているものであり、従っ
て、安定した供給を図ることが重要である。そのため
に、アルミニウムスクラップの利用が広く行なわれてき
ている。
最近、アルミニウム板材の生産量の約20%を占めるア
ルミニウム合金製飲料缶屑は、その回収率が50%以下で
あり、用途も限定されており、今後、使用済アルミニウ
ム合金製飲料缶の回収および再利用技術の開発が必要と
なってくる。
このアルミニウム合金製飲料缶屑は、元のアルミニウ
ム原料として再利用するのが最も経済的、かつ、効果的
であり、一定の品質、量の安定性、回転サイクル
の早さ等の長所があるが、アルミニウム合金溶湯の成分
不良および溶解工程における酸化ロスが生成し易いとい
う問題がある。
従来からも、アルミニウム合金製飲料缶屑は、スクラ
ップとしてアルミニウム地金と混合溶解されているが、
このスクラップの利用は、上記したようにアルミニウム
合金溶湯の成分不良或いは溶湯汚染等の生じ易いことお
よび溶解ロスの発生による溶解歩留りの低下が最大の問
題であり、従って、アルミニウム合金製飲料缶屑の利用
率はアルミニウム地金の最大50%以下に止どまっている
のが現状である。
さらに、近年、アルミニウム合金製飲料缶の塗装は非
常にカラフルになり、特に、白色系の塗料が多く使用さ
れるようになってきている。この白色系塗料の主成分は
樹脂と共に添加されるチタン酸化物であり、このチタン
の使用量は一缶一缶で極めて僅かであっても、大量にス
クラップとして再利用、再溶解を行なう際には無視する
ことができない量になり、3004系アルミニウム合金の場
合にはチタンは不純物であって0.04wt%以上含まれる場
合には直接的に製品不良となるものである。
また、上記(1)(2)の問題を解決したとしても、
溶解そのものの問題として異種のアルミニウム合金同士
の混合によるアルミニウム溶湯が成分不良となる問題が
ある。
従来より良く知られているように、アルミニウム合金
製飲料缶には、ボデイ材としては3004系アルミニウム合
金(Al−Mn−Mg系合金)、エンド材としては5052系合金
(Al−Mg系合金)、タブ材としては1100系合金や1200系
合金(純アルミニウム)等の多種類のアルミニウム合金
が使用されており、そのため、アルミニウム合金製飲料
缶の各部材すべてを同時に溶解すれば成分不良が生じる
ということ、および再溶解する場合でも、特に、ボデイ
材とエンド材とは分離するということ、および、Mgを含
有すると溶湯酸化が生じ易く、金属分が酸化ロスとな
り、溶解歩留りが低下することは当業者の常識的な事項
となっている。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は上記に説明したように、従来における使用済
アルミニウム合金製飲料缶の再利用、再溶解における種
々の問題点に鑑み、本発明者が鋭意研究を行ない、検討
を重ねた結果、アルミニウム合金溶湯の成分不良或いは
溶湯汚染および溶解ロスが発生する原因は、(1)アル
ミニウム合金製缶の表面を被覆する塗料、(2)スクラ
ップ中の異物等にあることを知見し、従って、使用済ア
ルミニウム合金製飲料缶の再溶解に際して、予め、アル
ミニウム合金製飲料缶表面の塗料を除去したスクラップ
であれば、アルミニウム合金製飲料缶の各部材(各種の
アルミニウム合金)を共に溶解しても、溶解温度を制御
することにより製造されたアルミニウム合金溶湯の成分
不良或いは溶湯汚染および溶解ロスを生じることなく、
3004系アルミニウム合金を鋳造することができるアルミ
ニウム合金の製造方法を開発したものである。
[問題点を解決するための手段] 本発明に係るアルミニウム合金の製造方法は、 (1)使用済アルミニウム合金製缶の塗料を除去した
後、缶の各構成部材を合わせて溶解すると共に、溶湯温
度を800℃以下としてチタンおよび鉄がアルミニウム合
金溶湯に溶解するのを防止しながら、JIS3004系アルミ
ニウム合金を鋳造することを特徴とするアルミニウム合
金の製造方法を第1の発明とし、 (2)使用済アルミニウム合金製缶の塗料を除去した
後、缶の各構成部材を合わせて溶解すると共に、溶湯温
度を800℃以下としてチタンおよび鉄がアルミニウム合
金溶湯に溶解するのを防止しながら、JIS3004系アルミ
ニウム合金を鋳造する際に、チタンおよび鉄を含む滓を
連続的に排出することを特徴とするアルミニウム合金の
製造方法を第2の発明とする2つの発明よりなるもので
ある。
次に本発明に係るアルミニウム合金の製造方法につい
て、以下詳細に説明する。
即ち、本発明に係るアルミニウム合金の製造方法にお
いては、アルミニウム合金製飲料缶表面に塗布されてい
る印刷塗料から混入するチタンおよび異物として混入す
る鉄を、アルミニウム合金製飲料缶の各構成部材を溶解
する際に、溶湯中に溶解することを防止し、さらに、滓
として積極的に炉外に除去することにより溶湯中にチタ
ンおよび鉄が含まれて、これらの含有量が増加すること
を防止するものである。さらに、これらMgを含む原料よ
り溶製された溶湯は、酸化が著しく、金属分が酸化物、
例えば、MgAl2O3、MgO等に変化して溶解ロスを形成する
ことを防止するものである。
現在使用されているアルミニウム合金製飲料缶には、
その表面に識別や販売促進のために、また、内面には耐
蝕性向上のために塗料が塗布されており、これらの塗料
をそれぞれ分析したところ、アルミニウム合金において
は巨大初晶等の原因となるチタンおよび不純物元素とし
て制限されている鉄等の存在が認められる。さらに、ス
クラップ中には磁力選別等で漏れた鉄が不可避的に混入
している。
このようなチタンおよび鉄を不可避的にふくむアルミ
ニウム合金製飲料缶を、後述する実施例1と同じ条件で
溶湯温度を変えて各温度において溶解した結果を第1図
に示す。
この第1図より、チタンおよび鉄のアルミニウム合金
溶湯中への溶解量は、溶解温度に依存していることは興
味深いことである。
即ち、第1図はアルミニウム合金製飲料缶を100%配
合・溶解における溶湯成分と溶湯温度との関係を示す図
であり、この第1図において、チタンおよび鉄は共に75
0〜800℃の溶解温度領域においては、アルミニウム合金
溶湯中における溶解は殆ど認められないが、しかし、溶
解温度が800℃以上になるとチタンおよび鉄は共にアル
ミニウム合金溶湯中に溶解を開始し、溶解温度900℃に
おいては750〜800℃の溶解温度におけるチタンおよび鉄
の溶解の1.5倍にも達するようになり、アルミニウム合
金溶湯は成分不良となることがわかる。第1図におい
て、○は鉄を示し、バラツキは±0.030wt%、△はチタ
ンを示し、バラツキは±0.001wt%である。
しかして、通常はアルミニウム合金製飲料缶等の蒿比
重の小さい原料は、酸化防止を目的として溶湯溶解され
るのであるが、この時、操業性を向上させるために900
℃以上の高温溶湯が使用されることが多いが、使用済ア
ルミニウム合金製飲料缶を溶解する場合には、この温度
においては上記第1図からも明らかなようにチタンおよ
び鉄が溶湯中に溶解するため不都合であることがわか
る。
また、後述する実施例1と同じ条件で、溶湯温度を変
えて各溶湯温度において、チタンおよび鉄を不可避的に
含むアルミニウム合金製飲料缶を溶解する際の、溶解歩
留りを第2図に示す。
この第2図より第1図に示したチタンおよび鉄の溶湯
中への溶解量と共に、溶解歩留りも溶湯温度に依存して
いることがわかり、特に、溶湯温度が800℃をこえる場
合の溶解歩留りの低下が著しい。
従って、逆に、アルミニウム合金溶湯温度が800℃以
下であれば、チタンおよび鉄はアルミニウム合金溶湯中
には溶解し難く、アルミニウム合金溶湯表面の滓中に凝
集されるので、この滓を溶解中もしくは溶解終了後に連
続的に除去することにより溶湯の汚染を防止することが
できる。
これは、例えば、TiO2について説明すると、TiO2がア
ルミニウムの溶湯中に入る原因としては、TiO2がアルミ
ニウム溶湯で還元され、TiO2として溶湯中に入るか、も
しくは、TiO2のまま残存するかである。しかして、上記
した本発明者の知見の通り、TiO2の溶湯中への溶解量が
溶湯温度の依存性を示すことから、前者の原因が支配的
であると考えられる。
従って、溶湯温度を下げてより溶湯へ混入し易いTiの
形にTiO2を還元せず、TiO2の状態のまま保持して溶湯表
面に浮上させて、直ちに炉外に排出し、続いて溶湯との
反応によるTiの還元が生じることを防止することが有効
となる。
また、アルミニウム合金製飲料缶に塗布されている塗
料は、予め除去することが必須であるが、その手段とし
て燃焼等の熱的、研摩剤等の機械的、或いは、化学薬品
を使用した化学的な除去手段等を採用することができ
る。
しかし、このような除去手段をおこなっても完全に10
0%の塗料を除去することは不可能であり、ある程度の
残存塗料の中からチタンおよび鉄が混入することは避け
ることができない。
例えば、塗料の除去手段として最も優れている薬剤に
よる化学的処理でさえ、現状は60〜70%の除去水準であ
り、このことからも、必然的に混入するこれら不純物の
汚染を防止する本発明に懸かるアルミニウム合金の製造
方法の重要性は明らかである。
また、使用するアルミニウム合金製飲料缶は、缶のボ
デイ材、エンド材、タブ材等の各部材をすべて同時に溶
解することが好ましいが、勿論、これらはスクラップの
状況による。ただ、少なくとも、ボデイ材とエンド材と
を共に溶解しなければスクラップりようの意味は半減す
る。
これらアルミニウム合金製飲料缶の部材等にボデイ
材、エンド材のようにアルミニウム合金が相違している
にも拘わらず、即ち、3004系合金と5052系合金とアルミ
ニウム合金の混合にも拘わらず、上記したチタンおよび
鉄によるアルミニウム合金の汚染の問題を除いて、溶湯
が3004系合金の成分範囲に入る理由は、特にMgについて
は、両者の成分系で異なり、5052系合金の量が3004系合
金の量よりも圧倒的に多いマグネシウム等が溶解中に蒸
発する等の理由による。
[実 施 例] 本発明に係るアルミニウム合金の製造方法の実施例を
説明する。
実施例 1 1.原料 塗料を化学薬品により除去し、シュレッダーした使用
済アルミニウム合金製飲料缶 100%配合 (塗料残存率30〜40%) 2.溶解条件 溶解炉 低周波誘導炉 1t 溶解方法 アルミニウム合金製飲料缶を順次添加 溶解雰囲気 大気 3.精錬条件 精錬無し 実施例 2 1.原料 実施例1と同じ使用済アルミニウム飲料缶70%
と99.7%Al30%とを配合 2.溶解条件 溶解炉 反射炉 15t 溶解方法 99.7%アルミニウムにより下湯を作成後、
アルミニウム合金製飲料缶を順次溶解 溶解雰囲気 大気 3.精錬条件 塩化物を主体とするフラックスを吹込み精
上記実施例1および実施例2において説明した第1表
および第2表から明らかな通り、溶解法の相違にも拘わ
らず溶湯温度が高い程、特に、Fe、Tiの量が増加して、
850℃の溶湯温度の比較例では成分規格よりはずれると
共に、歩留りも悪くなっている。
しかし、これに対して、溶湯温度が700℃、740℃の実
施例ではFe、Ti共に規格内に制限され、歩留りも高いこ
とがわかる。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明に係るアルミニウム合金
の製造方法は上記の構成であるから、アルミニウム合金
製飲料缶の塗料を除去してから、このアルミニウム合金
製飲料缶を形成する各部材の各種アルミニウム合金を同
時に溶解しても、溶湯温度を制御することにより、アル
ミニウム合金溶湯には成分不良や溶湯汚染および溶解歩
留り低下等が生じることがなく、3004系アルミニウム合
金を製造することができるという優れた効果を有してい
るものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はアルミニウム合金製飲料缶100%配合・溶解に
おける溶湯成分と溶湯温度との関係を示す図、第2図は
アルミニウム合金製飲料缶を100%配合・溶解における
溶解歩留りと溶湯温度との関係を示す図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】使用済アルミニウム合金製缶の塗料を除去
    した後、缶の各構成部材を合わせて溶解すると共に、溶
    湯温度を800℃以下としてチタンおよび鉄がアルミニウ
    ム合金溶湯に溶解するのを防止しながら、JIS3004系ア
    ルミニウム合金を鋳造することを特徴とするアルミニウ
    ム合金の製造方法。
  2. 【請求項2】使用済アルミニウム合金製缶の塗料を除去
    した後、缶の各構成部材を合わせて溶解すると共に、溶
    湯温度を800℃以下としてチタンおよび鉄がアルミニウ
    ム合金溶湯に溶解するのを防止しながら、JIS3004系ア
    ルミニウム合金を鋳造する際に、チタンおよび鉄を含む
    滓を連続的に排出することを特徴とするアルミニウム合
    金の製造方法。
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