JP3006751B2 - 厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フイルム及びその製造方法 - Google Patents

厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フイルム及びその製造方法

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JP3006751B2
JP3006751B2 JP8050949A JP5094996A JP3006751B2 JP 3006751 B2 JP3006751 B2 JP 3006751B2 JP 8050949 A JP8050949 A JP 8050949A JP 5094996 A JP5094996 A JP 5094996A JP 3006751 B2 JP3006751 B2 JP 3006751B2
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克俊 宮川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂フイ
ルム及びその製造方法に関するものである。更に詳しく
は、フイルムの厚みむらを、その発生原因により分離し
て防止することにより、特有の周期を持った厚みむらの
存在しない、非常に厚み均一性の高い熱可塑性樹脂フイ
ルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂フイルムを製造するにあた
り、厚み均一性は重要な基本品質の一つである。例えば
熱可塑性樹脂としてポリエステルを例にとると、ポリエ
ステルフイルムはその優れた特性のため、磁気記録媒体
用ベースフイルム、コンデンサなどの電気絶縁用途、プ
リンタリボンなどのOA用途、熱により穿孔して印刷す
る感熱孔版原紙など、様々な用途で用いられているが、
これらの用途では年々フイルムの厚みについて高度な寸
法精度が要求されてきつつある。厚みむらが悪化する
と、フイルム厚みに起因する物性のむらとなり、製品の
品質の悪化につながる。また、直接製品の品質に関わら
ない場合でも、フイルムを製品に加工する際のトラブル
や、ロール状に巻き取る際の巻姿の悪化、ひいてはその
ため加工製品の品質を悪化に招くことになり、好ましく
ない。
【0003】ところで、熱可塑性樹脂フイルムに成形す
る方法は、一般に、押出機により樹脂を溶融し、フイル
タなどを経由して異物を除去してから、成形するフイル
ムの形態に合わせたスリットを持ったダイ(口金)より
吐出し、内部に冷却媒体を通した回転ロール(キャステ
イングドラム)上に連続的に成形する。この際に、樹脂
膜をキャステイングドラムに密着させるために、静電気
力を付加することもしばしば行われている。さらに、フ
イルムの強度を増すために、得られたキャストフイルム
をフイルムの長手方向や幅方向に延伸することも一般に
行われている。
【0004】ここで、フイルムに厚みむらが生じる原因
としては、溶融押出してキャステイングドラム上にシー
ト状に押出す際の吐出量の変動、ダイとキャステイング
ドラム間(L−D間)のまだ溶融状態にある樹脂膜の膜
振動、キャステイングドラムの回転むらなどが挙げられ
る。また配向フイルムとする場合には、さらに、縦延伸
(長手方向の延伸)の際のロールの温度むらや回転む
ら、また、横延伸(幅方向の延伸)の際のテンター内の
温度むらや風速むらなどがある。
【0005】そこで従来から厚みむら改善のために種々
の方法が提案されている。例えば、溶融樹脂を冷却固化
するキャステイングドラムの回転むらを抑える方法(特
開昭55−93420号公報)や溶融樹脂をキャステイ
ングドラム上に静電気力で密着させる際に、静電気力を
受け易いように樹脂を改質する方法(特開昭59−91
121号公報)が提案されているが、いまだ、効果が十
分でない。
【0006】また、L−D間における膜振動を抑えるた
めに、熱可塑性樹脂の押出温度を下げて、樹脂の溶融粘
度を高める方法(特願平6−70789号)も提案され
ているが、未だ実用化されていない。厚みむらを低減す
る目的以外でも、一般に熱可塑性樹脂を融点以下で押出
す方法としては、例えば、特公昭53−11980号公
報、特公昭53−19625号公報、特公平1−550
87号公報を挙げることができる。しかしこれらの方法
は、サーキュラダイを用いるものであり、サーキュラダ
イの場合、円筒状に吐出されるため、端が無く融点以下
に冷却しても流れを乱しにくいが、フラットダイを用い
た場合、端の方が先に固化しやすく、流れを乱しやすい
という問題がある。また、これらの公報はダイのランド
部以前に樹脂を融点以下に冷却し、冷却の済んだ樹脂を
ランド部に供給する構成をとっており、さらに言えば、
ダイ内部で融点以下に冷却して、樹脂を固化させてか
ら、ランド部に供給して剪断をかけながら押し出すもの
である。そのために、非常に高い押出圧力を必要とし、
通常の押出機では押出が困難であり、高圧力用の特殊な
押出機を必要とするものであり、押出安定性に劣るもの
である。さらに、ダイ本体、口金への負荷が大きく、変
形、耐久性低下の原因になる。また、このように固化し
た樹脂を広幅に拡幅することは困難を極め、拡幅できた
としても、流れのむらから厚みむらの悪いものとなって
しまう。
【0007】また、縦延伸工程では、特開昭60−18
9422号公報で、延伸ロール上にフイルムを静電気力
で密着させる方法が提案されている。また、特開昭54
−56674号公報、特開平2−130125号公報な
どでは、縦延伸を多段階で行う方法が提案されている。
しかし、未だ十分な解決に至っていないのが現状であ
る。
【0008】一方、特開平2−256003号公報や特
開平6−175282号公報に、特有の形態を持った厚
みむらを有しないフイルムについて記載があるが、その
製造方法については明確でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このようにフイルムの
厚みむらを改善する要求は強く、そのために種々の改善
方法が提案されてきたが、その効果はまだ十分ではな
く、(1)フイルムの厚い部分と薄い部分の厚みの差に
起因するトラブル、(2)ある特有の周期を持つ厚みの
変動に起因するトラブルが依然絶えることがない。
【0010】本発明は、このような問題点を解決するた
めに、フイルムの製造工程の各工程を見直し、また、フ
イルムの厚みむらの生じる原因を解析することにより完
成されたものであり、特有の周期を持った厚みむらの存
在しない、非常に厚み均一性の高い熱可塑性樹脂フイル
ム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的に沿う本発明の
厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フイルムは、厚み20
μm以下のフイルムの長手方向の厚みむらが5(%)以
下であり、その厚みむらの波形をフーリエ解析した際
の、0.15(1/m)以上0.45(1/m)以下の
波数におけるスペクトル強度和Pw1の、全波数帯域に
おけるスペクトル強度和PwTに対する比Pw1/Pw
Tが0.2以下であることを特徴とするものからなる。
【0012】この厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フイ
ルムにおいては、Pw1/PwTが0.2以下であり、
かつ、フイルムの厚みむらの波形をフーリエ解析した際
の、1.00(1/m)以上2.00(1/m)以下の
波数におけるスペクトル強度和Pw2の、全波数帯域に
おけるスペクトル強度和PwTに対する比Pw2/Pw
Tが0.15以下であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本
発明においては、フイルムの長手方向の厚みむらが5
(%)以下である必要がある。好ましくは、4(%)以
下であり、さらに好ましくは、2(%)以下である。厚
みむらが5(%)を越えると、フイルムの厚い部分と薄
い部分の厚みの差が大きくなりすぎるため、物性の差が
大きく使用に耐えない。例えば、感熱孔版原紙やプリン
タリボンなどの用途では、この厚みむらにより、印刷後
の印字濃度のむらとなり、仕上がりが不鮮明になる。ま
た、電気絶縁やコンデンサの用途では、フイルムの薄い
部分で絶縁破壊を起こし、装置の故障の原因になること
がある。最近の用途においては、ハードウェアの高性能
化により、特に高度な厚みむらが要求されつつある。
【0014】本発明においては、その厚みむらの波形を
フーリエ解析した際の、0.15(1/m)以上0.4
5(1/m)以下の波数におけるスペクトル強度和Pw
1の、全波数帯域におけるスペクトル強度和PwTに対
する比Pw1/PwTが、0.2以下であることが必要
である。好ましくは、0.15以下、さらに好ましく
は、0.1以下である。本発明者らは、鋭意検討の結
果、厚みむらの周期に、発生するトラブルが対応するこ
とを突き止めた。すなわち、厚みむらの波形を周波数解
析すると、ある周期の厚みむら成分が多い場合に、ある
種のトラブルが発生するといった対応関係が存在する。
ここで、フーリエ変換により厚みむらの波形を解析した
際、波数が0.15(1/m)以上0.45(1/m)
以下のスペクトル強度は、フイルムを二次加工する際
の、蛇行や巻乱れなどに影響していることがわかった。
すなわち、0.15(1/m)以上0.45(1/m)
以下の波数におけるスペクトル強度和Pw1の、全波数
帯域におけるスペクトル強度和PwTに対する比Pw1
/PwTが0.2を越えると、フイルムにコーテイング
などの加工処理、あるいは、一定幅へのスリット処理な
ど二次加工をする際に、蛇行や巻乱れなどのトラブルを
引き起こす。
【0015】さらに本発明においては、1.00(1/
m)以上2.00(1/m)以下の波数におけるスペク
トル強度和Pw2の、全波数帯域におけるスペクトル強
度和PwTに対する比Pw2/PwTが、0.15以下
であることが好ましい。より好ましくは、0.1以下で
ある。波数が1.00(1/m)以上2.00(1/
m)以下の厚みむらは、二次加工時のしわの発生に寄与
することがわかった。すなわち、1.00(1/m)以
上2.00(1/m)以下の波数におけるスペクトル強
度和Pw2の、全波数帯域におけるスペクトル強度和P
wTに対する比Pw2/PwTが0.15を越えると、
フイルムを二次加工する際に、しわの発生といったトラ
ブルが多くなる。
【0016】本発明における熱可塑性樹脂としては、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど
のポリオレフイン樹脂、ナイロン6、ナイロン66など
のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフ
タレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテ
レフタレートなどのポリエステル樹脂、その他、ポリア
セタール樹脂、ポリフェニレンスルフイド樹脂などを用
いることができる。特に、本発明においては、ポリエス
テルを用いた場合にその効果が高く、好ましい。すなわ
ち、本発明で述べているような二次加工時のトラブル
は、高温で搬送される場合に生じやすく、また1〜2μ
mといった非常に薄いフイルムを加工する際に発生しや
すく、耐熱性も高く、また、極薄製膜を行うことのでき
るポリエステルにおいて、その効果が高いものである。
中でも、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリエ
チレンテレフタレートが好ましく、特にポリエチレンテ
レフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる
用途で用いられ、効果が高い。また、これらの樹脂はホ
モ樹脂であってもよく、共重合またはブレンドであって
もよい。また、これらの樹脂の中に、公知の各種添加
剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機
粒子が添加されていてもよい。
【0017】本発明における二軸配向したフイルムと
は、縦方向および/または横方向に延伸し、二軸方向に
分子配向を与えたフイルムを言う。また、加えて再び縦
および/または横に延伸をかけて、さらに強度な配向を
付与してもよい。
【0018】また、本発明における縦延伸とは、フイル
ムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通
常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段
階で行ってもよく、また、複数本のロール対で多段階で
行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異
なるが、通常、2〜15倍程度である。特にポリエチレ
ンテレフタレートを用いた場合、2〜7倍程度である。
【0019】また、本発明における横延伸とは、フイル
ムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、
テンタを用いて、フイルムの両端をクリップで把持しな
がら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率として
は、樹脂の種類により異なるが、通常2〜10倍程度で
ある。
【0020】なお、延伸の後に、その歪みを除去するた
めに、熱処理(熱固定)を行うこともしばしば行われ
る。熱処理の温度としては、延伸温度から樹脂の融点近
傍までの様々な温度が採られる。また、本発明において
は、フイルムの厚みが20μm以下の場合に、その効果
が高い。さらに好ましくは、10μm以下である。前述
した加工上のトラブルなどは、フイルムが薄いほど、ト
ラブルが多くなり、本発明における効果がより明確に現
れる。一方、後述する、押出時の樹脂の膜振動、縦延伸
の延伸むらなども、フイルムが薄いほど発生しやすく、
薄いフイルムにおけるほど、本発明の効果が顕著にな
る。
【0021】次に、本発明のフイルムの製造方法につい
て説明するが、必ずしもこれに限定されるものではな
い。まず、熱可塑性樹脂の原料をペレットなどの形態で
用意し、必要に応じて、事前乾燥を熱風中、あるいは真
空下で行い、押出機に供給する。押出機内において、融
点以上に加熱溶融された樹脂は、溶融状態でフイルタ、
ギアポンプ等を連結する加熱されたパイプ中を通り異物
を除去される。この際、ギアポンプを連結することで樹
脂の押出量の均一性が向上し、厚みむらの低減に効果が
高い。しかし、ギアポンプにより改善される厚みむら成
分は、波数0.10(1/m)以下といった長周期の成
分であり、ギアポンプの導入だけでは、本発明の目的と
するような厚みむら成分の低減は達成できない。
【0022】押出機よりダイに送られた樹脂はダイで目
的の形状に成形された後、吐出される。この吐出の際の
樹脂温度は、通常、融解終了温度(Tme)以上であ
る。ここで、本発明者らは鋭意研究の結果、波数が0.
15(1/m)以上0.45(1/m)以下の成分の厚
みむらは、樹脂をシート状に押出す際のダイとキャステ
イングドラム間(L−D間)の膜振動に多く起因してい
ることを見いだした。さらに、この膜振動を抑えるため
に、L−D間の樹脂を低温化することで高剛性化する手
法が有効であることを見いだした。この低温化のための
冷却はダイの出口であるランド部で行われることが好ま
しい。もし、冷却が樹脂がダイに入る以前に行なわれる
と、粘度が上昇し、流動性の悪化が生じてしまい、場合
によっては固化するため、押出異常や流れ異常が生じた
り、または、押出が不能になることもあり、押出機、フ
イルタ、ギアポンプに負荷をかけ、変形または寿命の低
下を引き起こすので好ましくない。また、ダイ中で冷却
する場合でもランド部以前(ダイホッパ部)で冷却を行
うことは、樹脂が目的の形に成形される過程であり、温
度むら、流れ異常を生じる原因となり、厚みむらの悪化
を引き起こすため、好ましくない。特にフラットダイは
樹脂の流路長が幅方向で異なるため、冷却時間の違いか
ら熱履歴が均一でなくなり、幅方向の温度むらが生じた
りするため、成形性が悪化したり、十分な厚みむら改善
効果が得られないばかりか、逆に厚みむらが悪くなる場
合もあるため好ましくない。これに対し、冷却をダイの
ランド部で行うことは、樹脂が幅方向に拡大され、押出
される形状に成形された後での冷却となり、均一な冷却
が可能となる。ランド部はダイ中の最も間隙の狭い部分
であり、熱交換効率が高く好適である。また樹脂は、冷
却後、すぐに押し出されるため、粘度上昇に伴う濾圧上
昇、押出異常や固化による流れ異常も最小限に抑えるこ
とができる。
【0023】ここでダイとしては、特に限定はされない
が、例えば、澤田慶司著「プラスチックの押出成形とそ
の応用」(株式会社誠文堂新光社)に説明されているよ
うな、内部に円筒状の溝(マニホルド)を有するマニホ
ルドダイ(Tダイともいう)、魚の尾のような形状をし
たフィッシュテールダイ、その中間の形状をしたコート
ハンガダイのいずれでもよい。フラットダイは、通常、
溶融樹脂を幅方向に広げるダイホッパと呼ばれる部分
と、樹脂を幅方向に広げた後、目的の形状に成形する最
終部分であり、一定のスリット間隙を有する平行部分で
あるランド部と呼ばれる部分から構成される。樹脂はこ
のランド部を通過した直後に大気に解放され、キャステ
イングドラム上に押出される。
【0024】ダイより吐出される樹脂の温度は、樹脂が
結晶性の場合、融解終了温度(Tme)未満、降温結晶
化開始温度(Tcb)を越える温度で行うことが好まし
い。高分子樹脂の場合、融解状態にある樹脂をTme未
満に冷却しても短時間では固化しない、いわゆる過冷却
の液相状態を保つことができる。しかも、この状態の樹
脂は粘度が高く、ランド部から押出された後のダイと冷
却ドラム間の膜振動や外乱に対して安定であり、厚みむ
らの小さなフイルムを得ることができる。ダイのランド
部の冷却手段としては、特に限定はしないが、例えば、
ランド部に冷却のための孔を設け、その中に冷媒を通す
方法がある。冷媒としては、空気、または水など各種液
体状の冷媒を用いることができ、冷媒の温度、流量をコ
ントロールすることによって、所望の温度に設定するこ
とができる。このようなダイを用いれば、現行のフイル
ムの製造に用いている樹脂、装置がそのまま使え、しか
も本発明におけるような成分の厚みむらの小さいフイル
ムが得られるという点で優れている。また、冷却は樹脂
のTcbを越える温度までに止めることが好ましい。T
cbよりも低い温度になると樹脂は結晶化し始め、押出
されたフイルムの表面荒れ、押出異常、流れむらを生じ
たり、経時で固化し、もはや通常の押出機では押出困難
となるため好ましくない。ダイのランド部で樹脂を融点
以下まで冷却するわけであるが、その際に重要なこと
は、樹脂を決して固化させないということである。高分
子の過冷却状態を利用して、融点以下であるが、液相状
態で押出すことが重要である。
【0025】また、樹脂をランド部で冷却するわけであ
るが、その際に、冷却の過渡状態で押出されることが好
ましい。過渡状態であることにより、厚みの厚いエッジ
近傍が、比較的温度が高い状態に残され、エッジ部から
の固化を抑えることが可能になる。一方、ランド部で冷
却される樹脂は、その樹脂の熱伝導度により、ランド部
壁面の温度と厚み方向の中央部の温度の間で温度勾配が
生じる。すなわち、ランド部壁面近傍の温度は下がって
も、厚み方向の中央付近の温度が冷却されずに高いまま
になることがある。特に、吐出量が多い時、ランド部の
リップ間隔が広い時に起こりやすい。このような場合、
樹脂をダイ内部で厚み方向に複数に分割し、すなわち、
ダイ内部に複数のランド部およびマニホールドを設け、
それぞれにおいて冷却してから合流し、吐出させる方法
をとることができる。この方法により厚み方向の温度勾
配を大きく低下することが可能となる。また、このよう
なダイは、公知の積層共押出口金を小改造することで実
現可能である。
【0026】ところで、融解終了温度(Tme)、降温
結晶化開始温度(Tcb)は示差走査熱量計(DSC)
によって決定することができる。DSCとは熱分析で通
常用いられており、物質の融解、結晶化、相転移、熱分
解等の状態変化に伴う吸熱、発熱を測定する方法であ
る。DSCにて熱可塑性樹脂の昇温時の融解温度、降温
時の結晶化温度を測定する場合、公知の方法を用いるこ
とができる。
【0027】ダイから吐出されたシート状の溶融樹脂
は、キャステイングドラム上で冷却固化され、フイルム
に成形される。この際、シート状の融解樹脂に静電気を
印加してドラム上に密着させ、急冷固化する方法が好ま
しく用いられる。
【0028】さて、延伸を行う場合には、このようにし
て得られた未延伸フイルムを加熱されたロール群に導
き、縦延伸を行う。ここで、本発明者らは鋭意研究の結
果、波数が1.00(1/m)以上2.00(1/m)
以下の成分の厚みむらは、縦延伸における延伸のむらに
多く起因していることを見いだした。さらに、この延伸
むらを抑えるために、縦延伸時の応力−歪曲線を改質す
ることが有効であることを見出した。ここで、応力−歪
曲線を改質する方法として、一つは、縦延伸前に若干の
結晶化を付与する方法が有効であり、また、もう一つの
手法として、前述したように樹脂を過冷却の状態でダイ
より吐出し、キャストすることにより、未延伸のフイル
ム内に微細な核構造を作る方法が有効であることを見出
した。すなわち、前者の方法は、縦延伸前に、結晶化度
0.5〜25(%)の結晶化、さらに好ましくは、1〜
10(%)の結晶化を施し、得られた結晶化フイルムを
縦方向に一段もしくは多段階で縦延伸するものである。
後者の方法は、樹脂の融解終了温度(Tme)未満、降
温結晶化開始温度(Tcb)を越える温度でダイより吐
出し、キャストにおける引取倍率(ドラフト比)を5〜
50の範囲としてキャストすることにより、未延伸フイ
ルムながら、内部に微細な核構造を有するフイルムを得
て、得られたフイルムを縦方向に一段階もしくは多段階
で縦延伸するものである。
【0029】通常、非晶未延伸の、例えばポリエチレン
テレフタレートの延伸温度における応力−歪曲線は、図
1に示すように、歪に対して応力が増大しない平坦区間
が存在する。図1は、ポリエチレンテレフタレート(P
ET)の未延伸フイルム(厚み200μm)の90℃〜
110℃の応力−歪曲線を示したものであり、1は、9
0℃における非晶未延伸PETの応力−歪曲線、2は、
100℃における非晶未延伸PETの応力−歪曲線、3
は、110℃における非晶未延伸PETの応力−歪曲線
を、それぞれ示している。ところが、この平坦な区間で
延伸を行うと、応力に対し歪が一点に定まらないため、
延伸倍率が場所によりばらつき、厚みむらの悪化を引き
起こす。
【0030】ところが、本発明者らの鋭意検討の結果、
若干の結晶化を施したフイルムの応力−歪曲線は図2に
示すように立ち上がるようになり、応力と歪が一対一に
対応するようになる。すなわち、このように若干の結晶
化を施したフイルムを延伸した場合、厚みむらの悪化の
ないフイルムを得ることができることになる。ここで、
結晶化度が小さい場合、応力−歪曲線の立ち上がりの効
果が小さく、また、結晶化度が高すぎる場合、逆に延伸
性の悪化により厚みむらが悪化する。図2はポリエチレ
ンテレフタレート(PET)の未延伸フイルムを熱処理
により各種結晶化度へ結晶化したフイルムの100℃に
おける応力−歪曲線を示したものであり、11は、結晶
化度0%のPETの100℃における応力−歪曲線、1
2は、結晶化度3%のPETの100℃における応力−
歪曲線、13は、結晶化度12%のPETの100℃に
おける応力−歪曲線を、それぞれ示している。
【0031】ここで、上述の様な結晶化度を得るため
に、縦延伸される前に、非晶未延伸フイルムを熱処理、
結晶化させることが好ましく行われる。この際に、熱処
理の温度としては、該樹脂のガラス転移点(Tg)、融
点(Tm)より、(Tg+10℃)以上、(Tm−50
℃)以下が好ましい。さらに好ましくは(Tg+20
℃)以上、(Tm−100℃)以下である。熱処理温度
が(Tg+10℃)以下であると、熱処理による結晶化
の効果が小さく、あるいは、目的の結晶化度を得るため
に多大な時間を要する。また、(Tm−50℃)以上で
あると、結晶化度の制御が困難であり、また、フイルム
が軟化しすぎて、熱処理中にフイルムの取扱いに支障を
きたす。また、上記の熱処理は加熱ロールを用いて好ま
しく行われる。加熱ロールとしては、表面がテフロン加
工やシリコーンゴム加工、あるいは、テフロンを分散さ
せた金属メッキなどの非粘着加工を施したものが好まし
い。また、熱処理をオーブン内にて行うことも好ましく
行われる。オーブンとしては、無風状態で加熱するもの
でもよいが、熱風をフイルムへ吹き付けるタイプのもの
が、加熱効率の点から好ましく用いられる。また、オー
ブン内でのフイルムの把持手段として、特に限定される
ものではないが、ロール内に通水して表面への粘着を防
いだロールや、フイルム両端部を把持するテンタタイプ
のものなどが好ましく用いられる。さらに、フイルム下
面より熱風を吹き付けて、フイルムを浮上させながら熱
処理を行う、加熱浮上処理装置も好ましく用いられる。
加熱浮上処理装置の場合、フイルムの粘着の問題もな
く、また、空気圧により面で把持されるため、加熱時の
軟化したフイルムでも走行性に問題なく熱処理できるも
のである。
【0032】ところで、非晶未延伸フイルムを熱処理す
る方法では、目的の結晶化度を得るために、高温を必要
としたり、結晶化度の制御が難しいなどの問題がある。
ここで、本発明者らは、フイルムに予備配向を与えてか
ら熱処理することで、比較的低温で、しかも、予備配向
の条件と熱処理の温度で容易に結晶化度を制御でき、し
かも熱処理の時間を大幅に短縮できることを見いだし
た。ここで、予備配向は、例えばポリエチレンテレフタ
レートフイルムの場合、フイルム温度にして80℃以上
100℃以下、より好ましくは85℃以上95℃未満
で、1.5倍以上2.5倍以下、より好ましくは1.8
倍以上2.3倍以下で延伸することで施すことができ
る。このようにすることにより、フイルムの複屈折Δn
にして0.010〜0.040の範囲となる。ここで、
延伸温度が80℃未満では、延伸むらが生じ、好ましく
ない、100℃を越える場合、予備配向による結晶化制
御の効果が小さい。また、延伸倍率が1.5倍未満で
は、同様に予備配向による結晶化制御の効果が小さく、
2.5倍を越えると、予備配向のための延伸で、波数が
1.00(1/m)以上2.00(1/m)以下の成分
の厚みむらを生じてしまうため好ましくない。
【0033】このような予備配向を与えることで、その
後の熱処理は、熱処理の温度としては、ポリエチレンテ
レフタレートの場合、90〜120℃といった比較的低
温で、0.5〜5秒といった短時間で目的の結晶化度を
得ることができる。しかも、予備配向の条件により、瞬
間的に所定の結晶化度に達し、熱処理の時間が変化して
も結晶化度がほとんど変化しないため、結晶化度の制御
が非常に容易となる。このように予備配向を施した後の
熱処理は、比較的低温、短時間で行えるため、加熱ロー
ルを用いて行うことが好ましい。もちろん、赤外線ヒー
タなどの補助加熱手段を用いてもよい。
【0034】このようにして、予備配向のための延伸を
施す方法は、厚みむら改善の効果ばかりでなく、延伸倍
率増加による製膜速度の上昇にもつながり、生産性の向
上の面からも好ましいものである。
【0035】このようにして得られた結晶化フイルム
は、80〜120℃の加熱ロールで加熱し、予備配向を
施した場合、縦方向に1.5〜10倍、予備配向を施さ
ない場合、2〜15倍、一段もしくは多段階で縦延伸
し、総合的に縦延伸の倍率は、2〜15倍となり、20
〜50℃のロール群で冷却する。なお、この縦延伸は、
前段の結晶化のための熱処理の直後に行ってもよく、こ
の場合、延伸のための加熱が熱処理と併用できるため、
設備が簡素化でき、好ましい。また、熱処理温度よりも
延伸温度の方が低い場合、結晶化のための熱処理に引き
続いて、冷却しながら延伸すると、縦延伸前の厚みむら
により厚い部分が高温のまま延伸されるため、より延伸
されやすく、縦延伸後の厚みが薄く矯正されるために、
縦延伸後の厚みむらを、より小さくすることが可能とな
り、好ましい。
【0036】ところで、さらに、本発明者らの鋭意検討
の結果、驚くべきことに、前述したような結晶化を施さ
ずとも、樹脂を過冷却の状態でダイより吐出し、適当な
引取倍率(ドラフト比)でキャストすることにより、応
力−歪曲線が図2に示すように立ち上がるようになり、
応力と歪が一対一に対応するようになることを見出し
た。この理由は定かではないが、結晶とは呼べないもの
の、非常に微細な結晶に近い核構造がフイルム中に発現
し、この核が架橋点的な効果を発揮して、応力−歪曲線
を立ち上げるものと考えている。図2における21はポ
リエチレンテレフタレート(PET)を240℃でダイ
より吐出し、引取倍率(ドラフト比)20でキャストし
たフイルムの100℃における応力−歪曲線を示してい
る。ここで、ダイより吐出する樹脂の温度を、融解終了
温度(Tme)以上とした場合、このような応力−歪曲
線を立ち上げる効果が小さく、また、降温結晶化開始温
度(Tcb)以下とした場合は、前述のように、樹脂が
結晶化を開始し、フイルムの表面荒れ、押出異常、流れ
むらを生じたり、経時で固化するなどの不具合が生じ
る。キャストにおける引取倍率が5未満であると、微細
な核構造が生じにくいためか、応力−歪曲線の立ち上げ
効果が小さい。一方、引取倍率が50を越えるような場
合、キャストが安定せず、逆に厚みむらを悪化させてし
まいやすい。このようにして得られた微細な核構造を有
するフイルムは、80〜120℃の加熱ロールで加熱
し、縦方向に2〜15倍、一段もしくは多段階で縦延伸
し、20〜50℃のロール群で冷却する。
【0037】二軸に配向させる場合は、続いて、フイル
ムの両端をクリップで把持しながらテンタに導き、Tg
〜Tmに加熱された熱風雰囲気中で横方向に2〜10倍
に横延伸する。こうして二軸延伸されたフイルムは平面
性、寸法安定性を付与するために、テンタ内で延伸温度
以上Tm以下の熱固定を行ない、均一に徐冷後室温まで
冷やして巻き取る。
【0038】[物性値の評価方法] (1)熱特性 示差走査熱量計として、セイコー電子工業株式会社製ロ
ボットDSC「RDC220」を用い、データ解析装置
として、同社製デイスクステーション「SSC/520
0」を用いて、サンプル約10mgをアルミニウム製の
受皿上300℃で5分間溶融保持し、液体窒素で急冷固
化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。こ
の時観測されるガラス転移点のピーク温度をTg、融解
吸熱ピークの開始温度をTmb、ピーク温度をTm、ピ
ーク終了温度をTmeとした。その後、300℃まで昇
温されたら、そのまま300℃で5分間溶融保持した
後、降温速度20℃/分で降温した。この際観測される
降温結晶化発熱ピークの開始温度をTcb、ピーク温度
をTc、ピーク終了温度をTceとした。
【0039】(2)フイルムの長手方向厚みむら アンリツ株式会社製フイルムシックネステスタ「KG6
01A」および電子マイクロメータ「K306C」を用
い、フイルムの縦方向に30mm幅、10m長にサンプ
リングしたフイルムを連続的に厚みを測定する。フイル
ムの搬送速度は3m/分とした。10m長での厚み最大
値Tmax(μm)、最小値Tmin(μm)から、 R=Tmax−Tmin を求め、Rと10m長の平均厚みTave(μm)から 厚みむら(%)=R/Tave×100 として求めた。
【0040】(3)フイルムの長手方向厚みむらのフー
リエ解析 上述の長手方向厚みむら測定時に、電子マイクロメータ
からの出力をアナログ/デジタルコンバータ(A/Dコ
ンバータ)を介して、数値化処理し、コンピュータに取
り込んだ。この際、電子マイクロメータの出力電圧と、
A/Dコンバータの入力電圧の適正化のため、必要に応
じて、電子マイクロメータとA/Dコンバータの間にプ
リアンプを設けてもよい。本発明においては、電子マイ
クロメータの出力を、自作のプリアンプを介して、カノ
ープス電子株式会社製A/Dコンバータ「ADX−98
E」および専用トリガユニット「ADT−98E」に接
続し、日本電気株式会社製パーソナルコンピュータ「P
C−9801VM」にデータを取り込んだ。データの取
り込みソフトウェアは自作したものを用いた。データの
取り込みは、10m長の厚みむら測定中に、0.195
秒の間隔で1024点サンプリングした(3m/分で搬
送測定しているため、0.195秒×1024×3m/
分÷60秒/分=9.98mで、9.98mの厚みむら
データを取り込み)。もちろん、これらの機器に限定さ
れる必要はなく、同様の機能を持つ公知の機器は多数存
在する。このように取り込んだデータを上述のコンピュ
ータにおいて、自作のソフトウェアを用い、高速フーリ
エ変換(FFT)処理を施した。この際、流れ方向の変
数に、フイルムの製膜速度と測定時の搬送速度から換算
した、製膜時間(秒)を取ると、FFT処理により、周
波数(Hz)に対する強度分布が得られ、また、流れ方
向の変数に、フイルムの長さ(m)を取ると、FFT処
理により、波数(1/m)に対する強度分布が得られ
る。FFT処理については、例えば、「技術者の数学
1」初版(共立出版株式会社 共立全書516)などに
フーリエ変換の理論について、「光工学」初版(共立出
版株式会社)などにFFT処理の手法について記載があ
るなど公知の処理である。ここで、取り込んだデータに
下式数1のようにフーリエ変換処理を施し、スペクトル
強度和を求めた。
【0041】
【数1】
【0042】ここで、Xnの実数部をan 、虚数部をb
n として、スペクトル強度Pwn は、下記数2で表わせ
る。
【0043】
【数2】
【0044】一方、nに対する波数は、測定長が10m
から、n/10(1/m)であり、波数αからβまでの
スペクトル強度和は、α、βに対応するnをnα,nβ
として、下記数3のようになる。
【0045】
【数3】
【0046】そして、全スペクトル強度和は、1≦n≦
(N/2−1)における和となり、全スペクトル強度和
は、下記数4で表わされる。
【0047】
【数4】
【0048】(4)複屈折 ベレックコンペンセータを装備した偏光顕微鏡により、
フイルムのリターデーションRdを求めた。Rdをフイ
ルムの厚みで割り、複屈折とした。
【0049】(5)樹脂温度 ダイ内の樹脂温度は、測定したい個所に棒状の熱電対を
挿入する孔を開けて、熱電対を挿入し、樹脂の漏れを防
ぐシールを施して測定した。また、ダイのランド部出口
の温度は、吐出される樹脂の温度をダイ直下で熱電対に
より測定した。
【0050】(6)フイルム温度 ミノルタカメラ株式会社製の非接触放射温度計「温度計
505」を用いて、フイルム温度を測定したい部分にス
ポットを合わせて測定した。この際、放射率εは、0.
95を用いた。
【0051】(7)結晶化度 臭化ナトリウム水溶液による密度勾配管を作成し、25
℃におけるフイルムの密度を測定する。この密度dか
ら、 結晶化度(%)=(d−da)/(dc−da)×100 とした。ここで、daは非晶密度、dcは完全結晶密度
ある。
【0052】(8)応力−歪曲線 株式会社東洋精機製作所製二軸延伸装置を用いて、サン
プルを90mm×90mmに調整し、所定温度雰囲気下
で20秒予熱を行った後、延伸速度2000%/分で、
横方向拘束のもと、縦方向に延伸し、クリップに取り付
けた歪計により応力を測定した。
【0053】(9)フイルムの加工適性 500mm幅に巻取られたフイルムを、アンワインダか
ら巻出しながら、搬送速度20m/分で、井上金属工業
株式会社製のオーブン処理装置に供給し、180℃の熱
処理を施して、100mの長さで巻取った。その際に、
蛇行などにより、巻取ったフイルムの端部が10mmを
越えて突出して不揃いとなったものを「×」、端部の突
出が5mm以上、10mm以下のもの、また、5mm未
満であるが加工中にしわが観測されたものを「△」、端
部の突出が5mm未満であり、かつ、加工中にしわが観
測されなかったものを「○」とした。
【0054】(10)キャストの引取倍率(ドラフト
比) 口金の断面積をS(m2 )、樹脂の吐出量をQ(kg/
時)、キャストの引取速度をV(m/分)、押出時の樹
脂の密度をd(g/cm3 )として、引取倍率(ドラフ
ト比)=V/{Q/(60000×d×S)}とした。
ここで、樹脂にポリエチレンテレフタレートを用いた場
合、押出時の樹脂温度が220〜290℃でd=1.2
0(g/cm3 )を用いた。
【0055】
【実施例】
実施例1 熱可塑性樹脂として、極限粘度0.65のポリエチレン
テレフタレートを用いた。DSCを用いて熱特性を測定
したところ、Tg:69℃、Tmb:240℃、Tm:
255℃、Tme:268℃、Tcb:203℃、T
c:188℃、Tce:174℃であった。このポリエ
チレンテレフタレートのペレットを180℃で3時間真
空乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融状態とし、
成形用ダイに供給した。ダイは、リップ間隙1mm、ラ
ンド長25mmのマニホルドダイを用いた。本ダイのラ
ンド部には、幅方向に直径7mmの空孔を複数あけ、こ
こに水を通すことにより冷却可能な構造としてある。ダ
イホッパ部の温度は290℃とし、ランド部には、25
℃の冷却水を流量30000cm3 /分通して冷却し
た。この状態で樹脂を押出し、ダイから押し出されたフ
イルムを、静電気を印加しながら表面温度25℃に保た
れたキャステイングドラム上で急冷固化した。この際の
引取倍率は4とした。ダイ入口での樹脂の温度は290
℃、ランド部入口の樹脂温度286℃、ランド部出口で
の樹脂温度247℃であった。このフイルムを引き続
き、縦延伸機へ供給し、複数の加熱ロールで、フイルム
温度93℃に加熱し、2.0倍の予備延伸を施した。予
備延伸後の複屈折は0.022であった。その後、複数
の加熱ロールで、フイルム温度115℃で4秒間の熱処
理を施し、結晶化度を5.4%とした。その後、フイル
ム温度100℃まで冷却して、2.0倍の延伸を行っ
た。引き続き、得られたフイルムをテンタに導き、95
℃の熱風雰囲気下で予熱し、100℃の熱風雰囲気下で
3.6倍横延伸を行い、220℃の熱風雰囲気下で5秒
間熱固定を行い、均一にフイルムを徐冷しながら、テン
タから導き出し、フイルムの両端部をトリミングして巻
取り、厚み12μmの二軸配向フイルムを得た。
【0056】得られたフイルムの製膜各工程の条件は表
1に、測定された厚みむら、加工適性などの物性を、表
2に示す。厚みむらが小さく、各波数域における厚みむ
ら成分とも小さく、厚み均質性の高い、二次加工におけ
る蛇行、しわなどのないフイルムを得ることができた。
【0057】実施例2 実施例1において、ランド部の冷却水流量を52000
cm3 /分に変えて、二軸延伸フイルムを得た。ダイ入
口、ランド部入口、ランド部出口での樹脂温度は、それ
ぞれ290℃、284℃、226℃であった。得られた
フイルムの製膜各工程の条件は、表1に、測定された厚
みむら、加工適性などの物性を、表2に示す。0.15
〜0.45(1/m)の波数域における厚みむら成分が
さらに小さく、厚み均質性の高い、二次加工における蛇
行、しわなどのないフイルムを得ることができた。
【0058】比較例4 実施例1において、ランド部に冷却水を通さずに、二軸
延伸フイルムを得た。ダイ入口、ランド部入口、出口で
の樹脂温度はそれぞれ290℃、288℃、278℃で
あった。得られたフイルムの製膜各工程の条件は、表1
に、測定された厚みむら、加工適性などの物性を、表2
に示す。0.15〜0.45(1/m)の波数域におけ
る厚みむら成分が大きく、全体の厚みむらも若干大きな
フイルムとなり、二次加工において若干の蛇行が見られ
た。
【0059】実施例 実施例1において、ランド部に冷却水を通さずに、二軸
延伸フイルムを得た。ダイ入口、ランド部入口、出口で
の樹脂温度はそれぞれ290℃、288℃、278℃で
あった。さらに、縦延伸を、複数の加熱ロールでフイル
ム温度90℃に加熱し、2.2倍延伸し、複屈折を0.
032とし、すぐに複数の加熱ロールでフイルム温度1
05℃に加熱して3秒間の熱処理を施し、結晶化度を
8.4%とした。その後、フイルム温度を100℃まで
冷却して、1.7倍延伸した。他の条件は同じ条件で、
二軸延伸フイルムを得た。得られたフイルムの製膜各工
程の条件は、表1に、測定された厚みむら、加工適性な
どの物性を、表2に示す。縦延伸における厚みむら改善
により、0.15〜0.45(1/m)の波数域におけ
る厚みむら成分も引きずられて小さくなり、二次加工に
おける蛇行、しわなどのないフイルムを得ることができ
た。
【0060】比較例1 実施例1において、ランド部の冷却水流量を80000
cm3 /分に変えて、二軸延伸フイルムを得た。ダイ入
口、ランド部入口、出口の温度はそれぞれ、290℃、
282℃、195℃であった。経時で樹脂は固化を始
め、フイルムを得ることができなかった。
【0061】実施例 実施例1において、縦延伸を、複数の加熱ロールでフイ
ルム温度90℃に加熱し、3.3倍、一段階で延伸し
た。他の条件は同じ条件で、二軸延伸フイルムを得た。
得られたフイルムの製膜各工程の条件は、表1に、測定
された厚みむら、加工適性などの物性を、表2に示す。
0.15〜0.45(1/m)の波数域における厚みむ
ら成分は小さいが、1.00〜2.00(1/m)の波
数域における厚みむら成分が大きく、実用範囲であるも
のの、二次加工において、しわの発生が見られた。
【0062】実施例 実施例において、キャストの引取倍率を20として、
他の条件は同じ条件で厚み2.5μmの二軸配向フイル
ムを得た。得られたフイルムの製膜各工程の条件は、表
1に、測定された厚みむら、加工適性などの物性を表2
に示す。実施例に比較し1.00〜2.00(1/
m)の波数域における厚みむら成分も小さくなり、加工
適性も向上している。
【0063】比較例2 実施例1において、ランド部に冷却水を通さずに、二軸
延伸フイルムを得た。ダイ入口、ランド部入口、出口で
の樹脂温度はそれぞれ290℃、288℃、278℃で
あった。さらに、縦延伸を、複数の加熱ロールでフイル
ム温度95℃に加熱し、2.0倍延伸し、複屈折を0.
018とし、すぐに複数の加熱ロールでフイルム温度1
05℃に加熱して2.5倍延伸した。延伸前の結晶化度
は、ほぼ0%であった。他の条件は同じ条件で、二軸延
伸フイルムを得た。得られたフイルムの製膜各工程の条
件は、表1に、測定された厚みむら、加工適性などの物
性を、表2に示す。L−D間の樹脂温度が高いため0.
15〜0.45(1/m)の波数域における厚みむら成
分が大きく、また、縦延伸において多段延伸であるもの
の、結晶化の工程がないために1.00〜2.00(1
/m)における厚みむら成分も大きく、全体の厚みむら
も大きなフイルムとなり、二次加工において蛇行が大き
く、さらにしわの発生も見られ、加工適性の悪いフイル
ムとなった。
【0064】比較例3 実施例2において、ランド部に冷却水を通さずに、二軸
延伸フイルムを得た。ダイ入口、ランド部入口、出口で
の樹脂温度はそれぞれ290℃、288℃、278℃で
あった。さらに、縦延伸を、複数の加熱ロールでフイル
ム温度90℃に加熱し、3.3倍、一段階で延伸した。
得られたフイルムの製膜各工程の条件は、表1に、測定
された厚みむら、加工適性などの物性を、表2に示す。
L−D間の樹脂温度が高いため0.15〜0.45(1
/m)の波数域における厚みむら成分が大きく、また、
縦延伸が従来の一段階の延伸であるために1.00〜
2.00(1/m)における厚みむら成分も大きく、全
体の厚みむらも大きくフイルムとなり、二次加工におい
て蛇行が大きく、さらにしわの発生も見られ、加工適性
の悪いフイルムをとなった。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の熱可塑性樹脂フイルムは、厚み均一性が顕著に改善さ
れており、二次加工時の蛇行やしわなどのトラブルを回
避することができる。しかも、製造方法は、必ずしも本
発明に記載の方法に限定されるわけではないが、既存設
備の小改造で済み、条件の制御が容易な方法である。さ
らに、ダイのランド部の冷却により、口金すじ、オリゴ
マが発生しにくいという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエチレンテレフタレートの未延伸フイルム
(厚み200μm)の90℃〜110℃の応力−歪曲線
である。
【図2】ポリエチレンテレフタレートの未延伸フイルム
を熱処理により各種結晶化度へ結晶化したフイルムおよ
び過冷却状態で吐出、引き取ったフイルムの100℃に
おける応力−歪曲線である。
【符号の説明】
1 90℃における非晶未延伸PETの応力−歪曲線 2 100℃における非晶未延伸PETの応力−歪曲線 3 110℃における非晶未延伸PETの応力−歪曲線 11 結晶化度0%のPETの100℃における応力−
歪曲線 12 結晶化度3%のPETの100℃における応力−
歪曲線 13 結晶化度12%のPETの100℃における応力
−歪曲線 21 樹脂温度240℃で吐出、引取倍率20でキャス
トしたPETの100℃における応力−歪曲線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 67:02 (56)参考文献 特開 平5−197950(JP,A) 特開 平5−282657(JP,A) 特開 昭63−60730(JP,A) 特開 平7−44856(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 55/02 - 55/28 C08J 5/18 CFD

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 厚み20μm以下のフイルムの長手方向
    の厚みむらが5(%)以下であり、その厚みむらの波形
    をフーリエ解析した際の、0.15(1/m)以上0.
    45(1/m)以下の波数におけるスペクトル強度和P
    w1の、全波数帯域におけるスペクトル強度和PwTに
    対する比Pw1/PwTが0.2以下であることを特徴
    とする、厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フイルム。
  2. 【請求項2】 Pw1/PwTが0.2以下であり、か
    つ、フイルムの厚みむらの波形をフーリエ解析した際
    の、1.00(1/m)以上2.00(1/m)以下の
    波数におけるスペクトル強度和Pw2の、全波数帯域に
    おけるスペクトル強度和PwTに対する比Pw2/Pw
    Tが0.15以下である、請求項1に記載の厚み均一性
    の優れた熱可塑性樹脂フイルム。
  3. 【請求項3】 熱可塑性樹脂がポリエステルである、
    求項1又は2に記載の厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂
    フイルム。
  4. 【請求項4】 二軸配向されている、請求項1ないし3
    のいずれかに記載の厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フ
    イルム。
  5. 【請求項5】 ダイより吐出される樹脂の温度が、融解
    終了温度(Tme)未満で、かつ、降温結晶化開始温度
    (Tcb)よりも高いことを特徴とする、請求項1ない
    し4のいずれかに記載の厚み均一性の優れた熱可塑性樹
    脂フイルムの製造方法。
  6. 【請求項6】 縦延伸工程において、熱処理によりフイ
    ルムの結晶化度を0.5%以上、25%以下とする工程
    を有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれ
    かに記載の厚み均一性の優れた熱可塑性樹脂フイルムの
    製造方法。
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