JP3003495B2 - 加工性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた鋼材およびその製造方法

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    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
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    • Y02P10/20Recycling

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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、加工性に優れた引張
強さが50kgf/mm2 以下の鋼材およびその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、廃棄された食缶および自動車など
の鉄スクラップの量が増加し、製鉄業においては環境問
題対策上、鉄源としてこのような鉄スクラップを使用す
る必要性が高まりつつある。しかしながら、鉄スクラッ
プ中に含有されているCu、Sn、As、NiおよびCrなどの所
謂トランプエレメントは、Feよりも酸化され難いため、
現在の製鉄プロセスにおいては殆ど除去されず鋼中に残
存し、鋼材の製造性や材質または表面品質特性に悪影響
を及ぼすことが、例えば、特開平4-162943号公報および
特開平4-371528号公報において指摘されている。
【0003】従って、例えば、特開平4-325657号公報お
よび特開平4-365813号公報に開示されているような、耐
食性、強度および表面品質特性の改善を目的として、意
識的にCu、CrおよびNi等の元素を添加する(以下、先行
技術という)場合を除けば、本来トランプエレメントは
一般的には鋼中に含有されておらず、また添加しないも
のであるので、鉄スクラップの使用には種々の制約を伴
っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、上述したよう
な環境問題の対策上から、スクラップとしての食缶およ
び自動車などから発生する、トランプエレメントを含有
した鉄スクラップを原料として鉄鋼製品を製造する場
合、それによって品質が劣化しないようにすることが重
要な課題となった。
【0005】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、成分中にCuおよびSn等のトランプエレメント
を含有した鋼を使用した場合でも、その加工性に優れ
た、引張り強さが50Kgf/mm2 以下の鋼材およびその製造
方法を提供することにある。
【0006】
【0007】
【課題を解決するための手段】の発明の加工性に優れ
た鋼材の製造方法は、 炭素(C) :0.01〜0.15wt.%、 シリコン(Si) : 0.2wt.% 以下、 マンガン(Mn):0.1〜0.8wt.%、 燐(P) :0.04 wt.% 以下、 硫黄(S) :0.015wt.% 以下、 可溶性アルミニウム(sol.Al):0.01〜0.07wt.%、 窒素(N) :0.012wt.%以下、 銅(Cu) :1.0wt.% 以下、 錫(Sn) :0.10wt.% 以下、 ニッケル(Ni) :0.10wt.% 以下、 クロム(Cr) :0.10wt.% 以下、および、 モリブデン(Mo):0.10wt.% 以下、 を含有し、更に、必要に応じ下記からなる群から選んだ
少なくとも1つの元素、 チタン(Ti) :0.01〜0.10wt.%、 ジルコニウム(Zr) :0.01〜0.10wt.%、 カルシウム(Ca) :0.001〜0.010wt.%、および、 REM :0.001〜0.010wt.%、 を含有し、且つ、Cu+10×Sn≦1.0wt.% を満足する化学
成分組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造によってス
ラブを鋳造し、次いで、前記連続鋳造によって鋳造され
たスラブを、Ar3変態点−100℃〜Ar3変態点+100
℃の範囲内の仕上げ温度で直接熱間圧延し、このよう
にして得られた鋼帯を、500 〜700 ℃の範囲内の温度で
巻き取ることに特徴を有するものである。
【0008】
【作用】この発明の鋼材の化学成分組成を、上述した範
囲内に限定した理由について、以下に述べる。 (1) C 、Si、Mn :C 、SiおよびMnは、鋼の強度を高める
基本的な元素である。C 含有量が0.01wt.%未満、Mn含有
量が 0.1wt.%未満では所望の強度が得られず、更に、C
含有量が0.01wt.%未満では2次加工脆性が生じやすくな
り、そして、Mn含有量が0.1 wt.%未満では、鋼材表面に
疵が発生しやすくなる。一方、C 含有量が0.15wt.%超、
Si含有量が0.2 wt.%超、Mn含有量が0.8 wt.%超では、引
張強さを50kgf/mm2 以下にすることができない。従っ
て、C 含有量は0.01〜0.15wt.%、Si含有量は0.2 wt.%以
下、そして、Mn含有量は0.1 〜0.8 wt.%の範囲内に限定
すべきである。
【0009】(2) S :S の含有量は、鋼材の曲げ加工性
および伸びフランジ性等の加工性を高めるために、少な
い方が望ましい。図1は、鋼板の伸びフランジ性を示す
穴拡げ率とS 含有量との関係を示すグラフである。同図
から明らかなように、S 含有量が0.015 wt.%以下の領域
において高い値の穴拡げ率が得られる。その理由は、S
含有量が0.015 wt.%超になると、鋼中におけるMnS 等の
硫化物系介在物の含有量が多くなり、それが鋼板を加工
した時の亀裂発生点になるためであると考えられる。ま
た、溶接性を確保するためにも、S 含有量は0.015 wt.%
以下とすることが重要である。従って、S 含有量は0.01
5wt.%以下に限定すべきである。また、トランプエレメ
ントを多量に含有する鋼においても、低硫化は、加工性
を向上させるために極めて有効である。
【0010】(3) P :P は、鋼板のプレス成形後に2 次
加工割れと呼ばれる粒界脆性破壊を生じさせる元素であ
る。従って、その含有量は少ない方が望ましく、0.04w
t.%以下に限定すべきである。
【0011】(4) N :N の含有量は、加工性を高めるた
めに少ない方が望ましく、従って、0.012 wt.%以下に限
定すべきである。
【0012】(5) Al :Alは、鋼の脱酸のために有効な元
素である。しかしながら、sol.Alの含有量が0.01wt.%未
満ではその効果が不十分であり、一方、sol.Alの含有量
が0.07wt.%超では脱酸生成物である介在物の量が増加し
て、加工性が劣化する。従って、sol.Alの含有量は、0.
01〜0.07wt.%の範囲内に限定すべきである。
【0013】(6) Cu :Cuは、トランプエレメントとして
含有される元素である。Cu含有量が多いとCu疵と呼ばれ
る表面疵が発生し、表面品質が劣化する。連続鋳造され
たスラブを再加熱した後熱間圧延するプロセスでは、Cu
を含有するスラブを酸化性雰囲気で熱間圧延する際に、
Cuは酸化されないためスケール直下に濃化して、Cu富化
相が形成される。Cu富化相の融点は比較的低いので、一
般的なスラブ加熱温度である1100℃以上においてCu富化
相が融液になり、この融液がオーステナイト粒界に浸透
して、熱間圧延時に表面割れが発生し、表面欠陥となる
ことが知られている。
【0014】これに対して、本発明の方法にように、連
続鋳造されたスラブを直接熱間圧延する場合には、スラ
ブの再加熱工程が省略されるため、Cu融液の粒界浸透が
殆ど生じない。従って、スラブを再加熱する場合に比
べ、Cu疵に関するCu含有量の限界値を大幅に高くするこ
とが可能となり、Cu単独添加の場合のCu量の上限値を、
1.0wt.% にすることができる。
【0015】しかしながら、本発明のように、CuとSnと
が複合添加されている場合には、Cu富化相にSnが濃化
し、この相の融点を下げるため、Cu単独添加の鋼板に比
較して、Cu疵が発生しやすくなり、表面品質が劣化す
る。従って、本発明のように、CuとSnとが複合添加され
ている場合には、その表面品質を改善するために、Cu含
有量が 1.0wt.%以下で、且つ、Cu+10×Sn≦1.0 wt.%
の関係を満たしていることが必要である。
【0016】(7) Sn :Snは、トランプエレメントとして
含有される元素であり、その含有量が0.10wt.%超では加
工性が劣化する。更に、Snと共にCuを含有する場合に
は、上述したと同様に、Cu富化相にSnが濃化しそのCu富
化相の融点が低下して、Cu疵が発生し易くなり、表面品
質が劣化する。従って、Sn含有量は0.10wt.%以下で、且
つ、Cu+10×Sn≦1.0 wt.%の関係を満たしていることが
必要である。
【0017】(8) Ni :Niは、トランプエレメントとして
含有される元素であるが、Cu疵の発生防止および焼入性
の向上に有効である。しかしながら、Ni含有量が0.10w
t.%超では強度が増加し加工性が劣化する。従って、Ni
含有量は0.10wt.%以下に限定すべきである。
【0018】(9) Cr、Mo :CrおよびMoも、トランプエレ
メントとして含有される元素である。いずれもその含有
量が0.10wt.%超では、強度上昇のため加工性が劣化す
る。従って、CrおよびMoの含有量は、いずれも0.10wt.%
以下に限定すべきである。
【0019】(10) Ti 、Zr、Ca、REM :Ti、Zr、Caおよ
びREM(希土類元素) は、いずれも硫化物形態制御のため
に有効な元素であり、トランプエレメントを多量に含有
する鋼板においても硫化物形態制御作用によって、伸び
フランジ性および曲げ性の改善に著しい効果を発揮す
る。従って、必要に応じて、上記元素のうちの少なくと
も1つを付加的に含有させる。しかしながら、Tiおよび
Zrの各含有量が0.01wt.%未満、CaおよびREM の各含有量
が0.001 wt.%未満では、その効果が不十分であり、一
方、TiおよびZrの各含有量が0.10wt.%を超え、そして、
CaおよびREM の各含有量が0.010 wt.%を超えると、その
効果が飽和するのみならず、コストの上昇および鋼の清
浄性の劣化を招く。従って、 Ti 、Zr、CaおよびREM の
うちの少なくとも1つを含有させる場合には、Tiおよび
Zrの含有量はいずれも0.01〜0.10wt.%の範囲内に、ま
た、CaおよびREM の含有量はいずれも0.001 〜0.010 w
t.%の範囲内に限定すべきである。
【0020】次に、この発明の鋼材の製造方法を上述し
た条件の範囲内に限定した理由について述べる。鋼の溶
解および精錬については、転炉法または電気炉法のいず
れの製法によって行ってもよく、また、鋳造は、その品
質上、歩留上および生産能率上等の有利性から連続鋳造
法によって行い、約50mm位の厚さのスラブを鋳造する。
【0021】上記スラブを、Ar3変態点±100 ℃の仕上
げ温度で直接熱間圧延する。熱間圧延の仕上温度が、A
r3変態点−100 ℃未満の温度では、鋼板のフェライト粒
に歪みが加わり、混粒組織となって延性が劣化する。一
方、仕上温度がAr3変態点+100 ℃超では、設備能力上
圧延することが困難となり、また、熱間圧延過程で生成
するスケ−ルにより鋼板表面の品質が劣化する。従っ
て、熱間圧延の仕上温度は、Ar3変態点−100 〜Ar3
態点+100 ℃の範囲内に限定すべきである。巻取温度は
常法の500 〜700 ℃の温度範囲内に限定すべきである。
【0022】
【実施例】次に、この発明を実施例により、比較例と対
比しながら説明する。表1に示した、この発明の範囲内
の化学成分組成を有する本発明鋼No.1〜12および比較鋼
No.2、並びに、少なくとも1 つの元素がこの発明の範囲
外の化学成分組成を有する比較鋼No.1およびNo.3〜7 を
電気炉にて溶製し、次いで連続鋳造法によって50mmの厚
さのスラブに鋳造した。得られた連続鋳造スラブを直接
熱間圧延し、次いで、1%の調質圧延を施すことによって
熱延鋼板を製造した。
【0023】
【表1】
【0024】上記のようにして製造された熱延鋼板か
ら、引張試験片(JIS5号試験片) 、穴拡げ試験片および
曲げ試験片を採取し、これらの試験片に対して、引張試
験、穴拡げ試験および曲げ試験を施し、且つ、表面品質
を評価して、それらの試験結果を表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】曲げ試験については180 度密着曲げを行な
った。穴拡げ試験については試験前後の穴径を測定し、
穴拡げ率を下記(2) 式によって求めた。なお、試験前の
穴径設定値は10mmとした。 穴拡げ率(λ),(%)={(試験後穴径−試験前穴径)/試験前穴径}×100 ──(2) 表面品質については、熱延鋼板の表面疵発生の有無を目
視によって調べ、下記によって評価した。 ○印:表面疵発生なし ×印:表面疵発生あり
【0027】表1および2から明らかなように、比較鋼
No.1および2においては、仕上圧延温度が本発明の範囲
外の低い温度であったため、ミクロ組織がフェライト混
粒組織となり延性が大幅に劣化した。比較鋼No.1、3 、
4 、6 および7 においては、S 含有量が本発明の範囲外
の高い値であったために穴拡げ率が低く、また、曲げ試
験において割れが発生した。一方、比較鋼No.2において
は、S 含有量が低いので穴拡げ率は高かったにもかかわ
らず、全伸びが低いために、曲げ試験において肌荒れが
発生した。
【0028】比較鋼No.3、4 、6 および7 においては、
Cu+10×Snが本発明の範囲を外れて過多であったため
に、熱延鋼板に表面疵が発生し、表面品質が劣化した。
また、比較鋼No.5はMn含有量が、そして、比較鋼No.7は
C 含有量がそれぞれ本発明の範囲を超えて多かったため
に、引張強さが50kgf/mm2 超となり、本発明の目標範囲
を外れた。
【0029】これに対して、鋼の化学成分組成および製
造条件がこの発明の範囲内である本発明鋼No.1から12に
おいては、いずれも、伸び、穴拡げ率、曲げ試験結果が
優れ、且つ、表面品質が良好であり、その引張強さも50
kgf/mm2 以下であった。
【0030】上述したように、鋼の化学成分組成および
製造条件について、そのうちの1つでも本発明の範囲外
である比較鋼板は、加工性または表面品質において劣化
したのに対し、そのすべての条件が本発明の範囲内であ
る本発明鋼板は、加工性および表面品質のいずれにおい
ても優れていた。
【0031】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
成分中にCuおよびSn等のトランプエレメントを含有した
鋼を使用した場合でも、製品の品質を損なうことなく、
引張強さが50kgf/mm2 以下であって加工性に優れ、かつ
表面品質に優れた鋼材を製造することができる、工業上
有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板の伸びフランジ性を示す穴拡げ率とS 含有
量との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/02 C22C 38/00 301 C22C 38/44

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素(C) : 0.01〜0.15wt.%、 シリコン(Si) : 0.2wt.% 以下、 マンガン(Mn) : 0.1〜0.8wt.%、 燐(P) :0.04wt.% 以下、 硫黄(S) :0.015wt.% 以下、 可溶性アルミニウム(sol. Al):0.01〜0.07wt.%、 窒素(N) :0.012wt.% 以下、 銅(Cu) :1.0wt.% 以下、 錫(Sn) :0.10wt.% 以下、 ニッケル(Ni) :0.10wt.% 以下、 クロム(Cr) :0.10wt.% 以下、および、 モリブデン(Mo):0.10wt.% 以下、 を含有し、且つ、Cu+10×Sn≦1.0wt.% を満足する化学
    成分組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造によってス
    ラブを鋳造し、 次いで、前記連続鋳造により鋳造されたスラブを、Ar
    3変態点−100℃〜Ar3変態点+100 ℃の範囲内の仕
    上げ温度で直接熱間圧延し、このようにして得られた鋼
    帯を500 〜700 ℃の範囲内の温度で巻き取ることを特徴
    とする、加工性に優れた鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭素(C) :0.01〜0.15wt.%、 シリコン(Si) :0.2wt.% 以下、 マンガン(Mn):0.1〜0.8wt.%、 燐(P) :0.04wt.% 以下、 硫黄(S) :0.015wt.% 以下、 可溶性アルミニウム(sol. Al):0.01〜0.07wt.%、 窒素(N) :0.012wt.% 以下、 銅(Cu) :1.0wt.% 以下、 錫(Sn) :0.10wt.% 以下、 ニッケル(Ni) :0.10wt.% 以下、 クロム(Cr) :0.10wt.% 以下、 モリブデン(Mo):0.10wt.% 以下、および、 下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素、 チタン(Ti) :0.01〜0.10wt.%、 ジルコニウム(Zr) :0.01〜0.10wt.%、 カルシウム(Ca) :0.001〜0.010wt.%、および、 REM :0.001〜0.010wt.%、 を含有し、且つ、Cu+10×Sn≦1.0wt.% を満足する化学
    成分組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造によってス
    ラブを鋳造し、次いで、前記連続鋳造により鋳造された
    スラブを、Ar3変態点−100℃〜Ar3変態点+100
    ℃の範囲内の仕上げ温度で直接熱間圧延し、このように
    して得られた鋼帯を、500 〜700 ℃の範囲内の温度で巻
    き取ることを特徴とする、加工性に優れた鋼材の製造方
    法。
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