JP3002476B2 - 電磁波を用いた危険物検査装置 - Google Patents

電磁波を用いた危険物検査装置

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JP3002476B2
JP3002476B2 JP1-160751A JP16075189A JP3002476B2 JP 3002476 B2 JP3002476 B2 JP 3002476B2 JP 16075189 A JP16075189 A JP 16075189A JP 3002476 B2 JP3002476 B2 JP 3002476B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、被検査物中に他の物質と混在している特定
の物質を、非破壊で検知するための方法に係り、特に荷
物の中に隠されたプラスチック爆弾などの、従来のX線
検査装置だけでは検知困難であった一定の形状を持たな
い非金属性危険物の検知に好適な検知方法及び装置に関
する。
〔従来の技術〕
航空機の持込み手荷物の検査や輸送貨物等の危険物検
査装置であるX線検査システムは、従来、X線発生装
置、X線透過スリット、被検査物移動用のベルトコンベ
ア、そして上記被検査物を透過したX線を検知するライ
ンセンサ、および透過像を表示するモニタテレビジョン
などにより構成されていた。このため、X線散乱強度が
強い金属性の刀剣や銃器などを、明瞭な影としてテレビ
ジョンモニタ上で検知することができ、航空機ハイジャ
ックの未然防止に役立てられている。
この種の従来技術に関しては例えば特開昭61−189447
に記載がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術では、金属を構成要素として持たない武
器、危険物の検知が困難であり、さらに、例えば、プラ
スチック爆弾などのような、一定の形状を持たない、非
金属危険物については、全く見逃してしまうという問題
があった。
また、上記従来技術はX線の透過像を利用するため、
被検査物中の深さ方向の情報を得ることが難しく、不明
瞭ではあるが危険物と疑われる嫌疑物の開封検査や除去
等が、短時間に行えず、また、上記作業そのものが危険
を伴うという問題があった。
本発明の目的は、被検査物中に他の物質と混在してい
る特定の物質を非破壊で検知できる方法を提供すること
である。
本発明の他の目的は、従来のX線透過検査装置では検
知で困難であった液状、粉末状、軟柔な粘土状(以下、
プラスチック状という)の有機物または無機物からな
る、爆発性危険物の有無を検知する新規装置を得て、安
全な航空機等の輸送を確保するとともに、被検査物中に
おける危険物除去作業を、迅速かつ安全に行う手段を得
ることである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的は、プラスチック爆弾などの危険物を、その
形状ではなく、構成物質の分子構造に固有な核四重極共
鳴の検出から検知することにより達成される。
また、本発明の上記他の目的は、従来の透視型X線検
査装置に、ラジオ波発生装置、ラジオ波照射検知用コイ
ル、ラジオ波吸収測定装置をそれぞれ新たに併設して、
危険物の形状情報および物性情報により総合的な検知を
行なうことにより達成される。
〔作用〕
核四重極共鳴は、核スピンが1以上で核四重極能率が
ゼロでない原子核に、ラジオ波を照射した場合に起こ
る。また、共鳴周波数はその原子核の化学結合状態に固
有の値であるため、同一原子核種であっても、その原子
核を含む分子が異なれば、共鳴周波数も異なる。殆ど
の、爆発性物質は窒素14(核スピン:1、核四重極能率:
+0.016barn)、塩素35(核スピン:3/2、核四重極能
率:−0.079barn)等を含んでおり、これらの原子核は
核四重極共鳴を起こす。従って、これらの原子核の共鳴
吸収を観測することにより、被検査物中の爆発性物質の
有無の判定、さらには爆発性物質の種類の同定が可能で
ある。
共鳴吸収を観測するための装置は基本的にラジオ波発
生装置、ラジオ波照射検知用コイル、ラジオ波吸収測定
装置で構成される。
すなわち、上記ラジオ波発生装置は有機物もしくは無
機物からなる爆発性危険物に固有な吸収帯ラジオ波を発
生し、ラジオ波照射検知用コイルは上記ラジオ発生装置
により発生したラジオ波を、高効率に被検査物に照射す
る。つぎに、上記照射したラジオ波が、被検査物により
吸収されたか否かをラジオ波照射検知用コイルとラジオ
波吸収測定装置によって検査し、吸収があった場合には
該当するラジオ波吸収帯に対応する爆発性危険物が検知
されたことになる。有機物、無機物からなる液状や粉末
状、またはプラスチック状の爆発性危険物は、それらに
それぞれ固有なラジオ波吸収帯をもつため、ラジオ波発
生装置から発生するラジオ波の周波数を変えながら、上
記ラジオ波発生装置、ラジオ波照射検知用コイル、ラジ
オ波吸収測定装置のそれぞれの動作を繰返して行えば、
被検査物中に含まれている爆発性危険物が、単一ではな
く多種多様な混合物であったとしても、それぞれの危険
物に固有なラジオ波吸収が検知できるため、見落しがな
く全べての危険物を検知することができる。一方、有機
物または無機物からなる液状、粉末状、あるいはプラス
チック状の爆発性危険物が、ラジオ波反射材料でシール
されている場合には、ラジオ波の吸収によるこれら危険
物の検知が困難になる。しかし、ラジオ波反射材料はす
べて金属性材料であるため、従来の透視型X線検査装置
によって容易に検知できる。
従って、核四重極共鳴観測装置と透視型X線検査装置
を組み合わせることにより、危険物検査能力を高めるこ
とができる。すなわち、本発明による危険物検査装置で
は、金属性危険物をX線検査装置で検知し、非金属性危
険物をラジオ波発生装置、ラジオ波照射検知コイル、ラ
ジオ波吸収測定装置からなるラジオ波検査装置により相
補的に検知するため、危険物の材質、形状、組成にかか
わらず、あらゆる危険物をもれなく検知することができ
る。
〔実施例〕
実施例1 以下、本発明の一実施例を第1図により説明する。
第1図において検知装置は全体の動作を制御するコン
トローラ5、電磁波照射装置3、スピン遷移検出器2な
どにより構成される。電磁波照射装置3は被検査物1中
の検知物スピン遷移相当の電磁波を照射する。照射周波
数の設定、掃引などは周波数設定器4により行なう。照
射装置3は照射電磁波範囲は数KHzより数百GHzにわたり
可能である。例えば被検査物中1中に窒素14核含有の爆
発物を検知しようとなる場合、窒素14核スピン遷移相当
のラジオ波領域(およそ300KHzより8MHzの範囲)にわた
り照射電磁波をコントローラ5、周波数設定器4を用い
て掃引照射し、スピン遷移検出器2を用い窒素14核のス
ピン遷移を検出することにより爆発物を検知できる。
実施例2 次に第2図を用いて本発明の実施例をさらに詳しく説
明する。
第2図において、プローブコイル6はラジオ波発振・
検波器7につながっている。プローブコイル6で外部に
放出されるラジオ波磁場の周波数は、周波数調整器8に
より所望の値に設定できる。また、上記ラジオ波発振・
検波器7において検出される発振電圧は、増幅器9によ
り増幅され、信号表示装置10に表示される。上記周波数
調整合8における設定周波数を、爆発物に特有な化学構
造下での、窒素14の核四重極共鳴振動数に一致させてお
く。そして、被検査物1の周囲でプローブコイル6を移
動させると、爆発物11の付近にプローブコイルが来た時
に、ラジオ波発振・検波器7の同調回路のコンダクタン
スが、爆発物11中の窒素14の磁化率の実数成分(吸収成
分)に応じて変化する。この変化を、発振電圧の変化と
して信号表示装置10により検出すれば、爆発物11の存在
を検知できる。
実施例3 次に、第3図により本発明の別の実施例を説明する。
第3図において、プローブコイル6、ラジオ波発振・検
波器7内のラジオ波は、周波数調整器8により設定され
た中心周波数の付近で、FM変調器12により周波数変調さ
れている。そして、ラジオ波発振・検波器7において検
出される発振電圧のうちの、上記周波数をロックイン増
幅器13で検出・増幅し、その信号を信号表示装置10によ
って読みとる。本実施例によれば、第2図により説明し
た実施例に比べて、高感度な検出が可能である。
変調による高感度化は、第3図により説明した実施例
のような周波数変調だけでなく、ラジオ波の振幅(強
度)の変調によっても可能であることは言うまでもな
い。さらに、数G〜数+Gの交番磁場を印加するゼーマ
ン(Zeeman)変調を利用し高感度化をはかる事も可能で
ある。この場合には第3図に示した装置構成に交番磁場
印加コイルを追加するだけで容易に達成できる。交番磁
場の周波数は数+Hzから数KHzの範囲であれば良い。
また、ラジオ波回路のリアクタンス変化を検出する機
構を設けることにより、窒素14の磁化率の虚数成分(分
散成分)に起因する、上記リアクタンス変化が検知で
き、これから、爆発物11の存在を予測することも可能で
ある。この検出法は、窒素14によるラジオ波エネルギー
の吸収が容易に飽和してしまう場合には特に有効であ
る。
実施例4 さらに、プローブコイルに、パルスラジオ波発生器
と、ラジオ波領域の現象に追従し得る高速検出器を接続
した構成の装置も用いることができる。この場合の装置
構成の実施例を第4図を用いて説明する。基準発振器14
により発生したラジオ波のパルスゲート15により単一パ
ルス、又は時間的、位相的に制御された複数パルスより
なるパルス列に変調される。これらの制御はコントロー
ラ5によりあらかじめ設定しておく。この高周波パル
ス、又はパルス列は電力増幅器16により被検査物1中の
爆発物11のスピン遷移を誘起できる電力レベルまで増幅
され、照射コイル17により効率的に被検査物1に照射さ
れる。
単一パルスの場合には、パルスラジオ波しゃ断後の窒
素14に起因する自由誘導減衰を検出することにより、爆
発物11を検知できる。
しかし爆発物11中に含まれる窒素14核の自由誘導減衰
信号は強度で数μVから数+μVと微弱であり、かつ数
μ秒から数+μ秒程度の寿命しか持たない。このため、
プリアンプ18、位相検波器19など検出系は不感時間が短
かく、かつ低雑音である必要がある。一方、複数高周波
パルスを用いた場合には検出系に対する不感時間の要請
は幾分ゆるめることが出来る。例えば90゜パルス(核ス
ピンの向きを90゜回転させるパルス)に引き続きτ秒の
時間経過後に再度90゜パルスを照射するとτ秒後に自由
誘導減衰信号が再結像誘起されるため、パルス照射後直
後の自由誘導減衰信号を測定することが必要となる。今
の例では〔90゜−τ−80゜〕という2パルスを利用する
場合を示したが、これ以外にも種々のパルス列を用いて
爆発物11中の窒素14核の四重極共鳴を検出することが可
能である。パルスラジオ波を用いることの利点は、高強
度の、すなわち、振幅の大きなラジオ波を被検査物1に
照射できることにある。つまり、ラジオ波強度が高いた
め、高感度化が図れると同時に、プローブコイル6から
離れた、被検査物1中の深い位置にある爆発物11まで検
知することが可能である。
実施例5 これまでに述べた例においては、爆発物11中の窒素14
の核四重極共鳴を、この共鳴に伴う窒素14の核スピン磁
化率の変化を検出することによって確認している。しか
し、上記共鳴の起こったことを確認できるものであれ
ば、他の検出法も利用できる。この中で有用なもののひ
とつとして、準位交叉法を利用した、核四重極−核磁気
二重共鳴法がある。この方法では、核四重極共鳴により
高エネルギー状態へ遷移した窒素14から、その遷移エネ
ルギーに相当する幅にゼーマン分裂した近接する他の原
子核へのエネルギー移動に伴う、上記近接原子核の核磁
気共鳴信号の変化を検出する。この近接原子核は多くの
場合プロトンであり、その核磁気共鳴周波数は、窒素14
の核四重極共鳴周波数より高いのが普通である。したが
って、検出光子エネルギーが高くなるため、検出感度が
向上する。もちろん、上記近接原子核としてプロトン以
外の原子核を用いることも可能である。
二重共鳴法の装置構成の一実施例を第5図を用いて幾
分詳しく説明する。本実施例では準位交叉法を被検査物
1の周囲に配置したヘルムホルツコイル26による直流磁
場の励磁、消磁により行なっている。被検査物1中の爆
発物11の検知は以下のような手順で行なうことが出来
る。この例では被検査物1中の爆発物11が窒素14核を含
み、近接原子核にプロトンを含む場合についてその手順
を説明するが、核四重極共鳴を検知する核として塩素35
核を選び塩素酸系の爆発物を検知する場合にも全く同じ
手順で行う事が出来る。また核磁気共鳴信号を検出する
核としてはプロトン以外の核、例えばフッ素19核なども
可能である。
さて、まず被検査物1をヘルムホルツコイル26の中心
部分に配置する。次に励消磁電源24によりヘルムホルツ
コイル26に直流電流を印加し被検査物1中に含まれる爆
発物11を励磁、これに含まれるプロトンにゼーマン分裂
を生じさせる。これにより爆発物11はプロトンによる磁
化を有することとなる。磁化を充分に発生させるため
に、プロトンのスピン格子緩和時間T1の数倍の時間にわ
たり、この状態を保持する必要がある。次に励消電源24
より印加していた直流電流を短時間(爆発物11中のプロ
トンのスピン格子緩和時間T1に比べて充分に短かい時間
以内)にゼロとする。このため、励消磁電源24にはコン
デンサなどにより構成される磁気エネルギ吸収回路が内
蔵されている必要がある。被検査物1中爆発物11の有す
るプロトン磁化は外部磁場がゼロとなったためゼロ磁場
緩和時間T1dの時定数をもって減衰する。このため直流
磁場の消磁後、T1dよりも短かい時間以内に照射コイル2
5を用いて被検査物1中の窒素14核核四重極遷移相当の
電磁波を広帯域電力アンプ23より供給、照射する。次い
て励消磁電源24により直流磁場をヘルムホルツコイル26
により再度発生、被検査物1中、爆発物に含まれるプロ
トンにゼーマン分裂を行わせる。昇磁過程において生じ
るプロトンのゼーマン分裂幅は印加直流磁場の大きさに
比例して変化する。このため、ゼロ直流磁場状態で爆発
物11中窒素14核に照射、吸収された核四重極遷移電磁波
の光子エネルギがプロトンのゼーマン分裂幅に一致、準
位交叉を生じる時間がある。準位交叉が生じると窒素14
核よりプロトン系にエネルギ移動が生じ、磁化の減少と
なる。このプロトン磁化の減少は、送信器28、プリアン
プ18、レシーバ29、積分器30よりなるスペクトロメータ
で測定検出することが可能であり、爆発物11中の窒素14
核の核四重極共鳴をプロトン磁化の減少として窒素14核
の核四重共鳴をプロトン磁化の減少として検出できる。
第5図に示した実施例の場合には直流磁場の昇消磁を
ヘルムホルツコイル26のスイッチングにより行ったが、
これに代わり、被検査物1を直流磁場内外に出し入れさ
せて昇消磁を行わせても準位交叉にはなんらの支障も生
じない。用いる直流磁場として、永久磁石、電磁石いず
れにしても良い。ただし、被検査物1が占める空間領域
にわたってプロトンの核磁気共鳴信号を検出出来るだけ
の直流磁場の均一性が必要である。
実際の爆発物の検知では以上の手順を窒素14核照射電
磁波の周波数をコントローラ5、周波数合成器22を用い
て掃引しながら繰り返えしてゆくこととなる。
実施例6 次に、第6図により、さらに別の実施例を説明する。
第2図、第3図で説明した実施例においては、プローブ
コイル6と、それに付帯するラジオ波回路部分が一体と
なっており、この全体を被検査物1に対して移動させて
爆発物11の検知を行う。一方、第6図に示した実施例で
は、プローブコイルの一部分(プローブ31と称する)と
他のラジオ波回路部分(本体32と称する)とが分離して
おり、両者を折り曲げ可能なケーブル33で接続してい
る。本体32は、固定、または半固定とし、爆発物11の検
知作業では、プローブ31のみを被検査物1付近で移動さ
せる。本実施例では、プローブ31の取り扱いが容易なた
め、被検査物1について詳しい検知作業を簡便な行え
る。さらに、必要に応じてプローブ31を被検査物1中に
挿入することも可能である。また、大型のラジオ波発振
器を用いても作業能率が低下しないという利点もある。
実施例7 第7図には、さらに別の実施例を示した。この実施例
では、プローブコイル6が被検査物1と同程度の大きさ
となっており、被検査物1のほぼ全体にラジオ波を一度
に与えられる。この実施例では、被検査物1中の爆発物
11の位置を決めることはできないが、爆発物11を含む被
検査物1の摘出は短時間で容易に行える。
以上述べた実施例で用いているラジオ波は、被検査物
1を破壊することなく内部にまで侵入することができ
る。したがって、被検査物1の内部に隠されている爆発
物11についても検知で可能である。また、本発明になる
検知方法は、爆発物11の形状ではなく、その化学構造そ
のものから爆発物11の存在を検知するものであるため、
プラスチック爆弾のように、任意の形状をとり得る爆発
物11であっても見逃すことがない。さらに、被検査物1
を破壊したり、一部を採取して分析したりする手続きも
不要である。そして、X線などを用いる他の検知方法に
比べて、人体、生体に対する危険度は著しく少ないとい
う利点もある。
このような方法によれば、窒素14を含む爆発物11でな
くても、核四重極共鳴を起こす原子核を含む物質であれ
ば、非破壊で検知することが可能である。
実施例8 以上の実施例1〜7においてはラジオ波照射、検出用
コイル形状は特に限定していない。すなわち、第2図、
第3図、第7図におけるプローブコイル6、第4図にお
ける照射コイル17、第5図における照射コイル25、ヘル
ムホルツコイル26、第6図におけるプローブコイル31で
ある。これらのコイル形状はどのような形状でも良い
が、第2図から第7図では例としてシレノイドコイルま
たはヘルムホルツコイルで示されている。
しかし、危険物を高感度検出する場合、ラジオ波を効
率良く照射し、またラジオ波吸収を効率良く検知するコ
イル形状が必要となる。
第8図は高能率照射検出用コイルとしての2個のうず
巻形状コイル34を対向させて設置した場合を示してい
る。この対向うず巻形状コイル34とヘルムホルツコイル
で各々被検査物の核四重極共鳴吸収を検知した結果を第
9図に示す。第9図に示されるように、対向うず巻形状
コイルで検出された信号強度36はヘルムホルツコイルで
検出された信号強度よりも値が大きく、うず巻形状コイ
ル34はヘルムホルツコイルより感度が高いことがわか
る。しかも、第9図から明らかなようにコイル間距離を
増加させても信号減衰が少ない。この結果から、うず巻
形状コイル34は大型荷物内やコイルから離れた場所に位
置する危険物を検知するのに有効であることがわかる。
うず巻形状コイル34は第2図におけるように単一コイ
ルで危険物を検知する場合にも有効である。
さらに第8図では単層のうず巻形状コイルを示してい
るが、多層のうず巻形状コイルであっても良い。
つぎに本発明による核四重極共鳴検知装置とX線検知
装置とを組み合わせた危険物検査装置を説明する。
第10図は本発明による危険物検査装置の第9実施例を
説明する図、第11図は照射コイルを多数配置した第10実
施例を説明する図、第12図は可撓性絶縁フイルム上に照
射コイルを配置した本発明の第11実施例を説明する図、
第13図は核四重極共鳴ラジオ波吸収を利用する本発明の
第12実施例の説明図、第14図は上記第12実施例に示す装
置を用いて、スーツケース中の塩素酸カリウム模疑危険
物の塩素35核四重極共鳴吸収の自由誘導減衰信号を測定
した結果を示す図、第15図は核磁気共鳴ラジオ波吸収を
利用する本発明の第13実施例の説明図である。
実施例9 第10図に示す第9実施例においては、X線発生装置10
4、X線透過用スリット105、被検査物移動用治具106、
X線検知用センサ107、およびモニタ108からなるX線透
視型検査装置に、ラジオ波発生装置101、ラジオ波照射
検知用コイル102、ラジオ波吸収測定装置103を併設した
構成になっている。被検査物109中に金属性危険物、例
えば銃火器や鉄パイプ等に密封された爆発性危険物は、
X線散乱強度が著しく高いため、モニタ108上でこれら
の危険物をその形状から容易に検知することが可能であ
る。一方、上記被検査物109中にX線散乱強度が低い液
状、粉末状、あるいはプラスチック状の有機物もしくは
無機物よりなる爆発性危険物が含まれている場合には、
上記X線透視型検査装置では、これらの爆発性危険物を
モニタ108上の明瞭な影として検知することは困難であ
る。この場合には、上記危険物に固有な特定のラジオ波
吸収の有無ならびにその強弱を、ラジオ波発生装置10
1、ラジオ波照射検出用コイル102、ラジオ波吸収測定装
置103によって検知すればよい。すなわち、被検査物109
中の検知対象物質、例えばヘキソーゲンを主成分とする
プラスチック爆弾に固有なラジオ波を発生装置101で発
生させ、照射検知コイル102を用いて被検査物109に照射
したときのラジオ波吸収の有無により、被検査物109中
にヘキソーゲンが含まているか否かが検知でき、さらに
その吸収強度の強弱から含有量が推測できる。ラジオ波
発生装置101で発生するラジオ波の周波数をTNT、塩素酸
カリウムなどの爆発性危険物に固有なラジオ波周波数に
設定し、上記動作を繰返して行えば、ヘキソーゲン、TN
T、塩素酸カリウムなどの存在と含有量とを検知するこ
とができる。上記の説明から明らかなように、本実施例
によれば、被検査物中に含まれる危険物の形状だけでな
くその物性、組成までも総合的に検知できるため、従来
のX線透過型検査装置では見落しやすかった液状、粉末
状あるいはプラスチック状の有機物もしくは無機物から
なる爆発性危険物をもれなく検知できるという効果があ
る。
本実施例では、ラジオ波照射用コイル102を、X線透
過スリット105とX線検知用センサ107とで挾まれた空間
内にある、被検査物109の上に配置した構成になってい
るが、上記被検査物109が照射検知用コイル102内にあっ
ても、全く同様の効果が得られることはいうまでもな
い。
また、X線透過検出装置において、X線発生装置10
4、X線透過スリット105、X線検知用センサ107を被検
査物109に対して、上下方向に配置した構成となってい
るが、上記被検査物109がX線透過スリット105とX線検
知用センサ107とを、任意の方向に配置してもよいこと
はいうまでもない。
さらに、上記ラジオ波照射検査が上記X線透過検出装
置に組込まれることなく、それぞれ全く別個に独立して
設置された場合であっても、本実施例と同様な効果を得
りことができるのはもちろんである。
さらにまた、本実施例では、X線情報として被検査物
109のX線透過像を、X線検知用センサ107およびモニタ
108を用いて取得し、利用する構成になっているが、上
記X線透過像に代って被検査物109のX線照射時に発生
する蛍光X線情報を、X線情報として利用することもで
きる。この場合には、上記被検査物109の中に含まれる
物質の元素情報を利用することになる。
上記のように本実施例の基本動作について説明した
が、つぎに、本実施例における危険物の実際の検知手順
について述べる。まず、被検査物109が被検査物移動用
治具106により、待機場所よりX線透過スリット105およ
びX線検知用センサ107で挾まれる検査空間に運ばれ
る。上記移動用治具106としてはベルトコンベアなどが
よい。X線検知用センサ107の視野は有限であるため、
移動用治具106によって被検査物109の各部が、くまなく
X線検知用センサ107の視野に入るように逐次移動させ
る。X線とラジオ波は非干渉性であるため、X線透視検
査とラジオ波吸収有無の検知を同時に行う。すなわち、
被検査物109のある部分をX線透視検査している時に、
同時に危険物に固有な特定ラジオ波を照射する。モニタ
108に金属性危険物が映し出されたら直ちに検査を中止
し、移動治具106により被検査物109を開封検査場所に移
動する。金属性危険物による明瞭なX線透視像がモニタ
108上に現われない場合には、前もって設定したヘキソ
ーゲン、TNT、塩素酸などの爆発性危険物に固有な吸収
ラジオ波を、ラジオ波発生装置101により逐次発生さ
せ、ラジオ波照射用コイル102により照射し、その吸収
の有無をラジオ波吸収検知装置103により検知する。特
に有機化電物粉末などによると思われる、不明瞭な像が
モニタ108上に映し出された場合には、照射ラジオ波強
度を強常の検査に較べて倍増させるのでの工夫を行うこ
とが望ましい。前もって設定した爆発性危険物に固有な
吸収ラジオ吸収帯の全べてを掃引し、これらのラジオ波
吸収がラジオ波吸収検知装置103により全く検知されな
い場合には、移動用治具106により被検外物109を移動
し、検査部位を更新したのち上記操作を繰返す。X線透
視型検外装置モニタ108の映像観察等は目視で行った
が、自動化することも容易である。自動化はつぎのよう
にして行える。X線透視型検査装置モニタ108の濃淡
に、金属対応の閾値濃度1、有機化合物対応閾値濃度2
を設定し、被検査物109のモニタ108上の検査部位X線透
過濃度が閾値濃度1を越えれば金属性危険物が存在し、
閾値濃度2以上、閾値濃度1以下の場合には有機化合物
粉末が存在すると判定すればよい。また、ラジオ波吸収
に関しては、ラジオ波吸収測定装置103の出力がオンオ
フ的であるから、ヘキソーゲン、TNT、塩素酸などの存
在を判断することは全く容易である。すなわち、自動化
には、モニタ上映像濃度判定器、ラジオ波吸収測定装置
103の出力判定器、そしてこれら両判別器の判定結果を
総合判定し、移動用治具106の移動機構ドライブをコン
トロールする自動化制御回路を、第10図に示す第9実施
例に付け加えるだけでよい。
実施例10 つぎに本発明の第10実施例を第11図により説明する。
第10実施例では最大直径寸法が異なる単層うず巻状のラ
ジオ波照射用コイル121,122,123,124をそれぞれ被検査
物109の上方に配置した構成になっている。ラジオ波発
生装置101により発生したラジオ波は、電力切換回路110
により照射コイル121,122,123,124に分配供給され、そ
れぞれのコイルのラジオ波吸収の有無ならびにその強弱
が、信号切換え回路111を通し、ラジオ波吸収測定装置1
03により検出・検知される。うず巻状照射コイルから照
射されるラジオ波の実効的な到達距離は、照射コイルの
半径程度の距離である。本実施例では最大直径が異なる
ラジオ波照射用コイル121,122,123,124を被検査物109上
に配置しているため、被検査物9の中でどの深さの位置
に危険物が存在しているかを検知できる。例えば、コイ
ル半径r1が小さなコイル121でヘキソーゲンのラジオ波
吸収がなく、コイル半径r2が大きなコイル124でヘキソ
ーゲンのラジオ波吸収があった場合、被検査物109中
で、上方から深さ方向距離r(r1<r<r2)の位置にヘ
キソーゲンよりなる爆発性危険物が存在していることが
判る。上記のようにして被検査物109中の危険物の位置
が特定できるため、被検査物109の開封検査や危険物除
去を短時間のうちに行うことができ、検査の高効率化が
はかれるという効果がある。本実施例ではラジオ波照射
用コイルを被検査物109の上方に配置した構成をとった
が、上記の他に被検査物109の側面方向、あるいは底面
方向に配置したとしても、得られる効果には何らの差も
生じない。また、単層うず巻状照射コイルに代わり、多
層コイルを用いても全く同様の効果が得られる。
実施例11 つぎに、本発明の第11実施例を第12図を用いて説明す
る。本実施例では、可撓性絶縁フィルタ136上にうず巻
状コイルパタン131,132,133を設け、これらをラジオ波
照射検知用コイルとして用いる構成になっている。ま
た、可撓性絶縁フィルム136はフィルム保持変形アーム1
34により三次元空間内に保持させ、任意の形状に変形さ
れる。実際の動作はアーム移動制御装置135によりフィ
ルム保持変形アーム134が制御され、フィルムの移動、
変形が行われる。上記可撓性絶縁フィルム136の具体的
な移動、変形は、被検査物109の形状寸法に従い、被検
査物109内の全ての部分におけるラジオ波吸収の有無が
検知できるように、アーム移動制御装置135により制御
する。このため、うず巻状コイルパタン131,132,133の
寸法には上記実施例と同様に大小をつけ、ラジオ波発生
装置101と電力切換え回路110よりなる入力系と、信号切
換え回路111とラジオ波吸収測定装置103とからなる出力
系とを、可撓性絶縁フィルム136に結びつける配線137
は、極細同軸ケーブルなどの変形可能な配線ケーブルを
使用している。本実施例によれば、ラジオ波照射検知用
うず巻状コイルパタン131,132,133を被検査物109の任意
表面に密着保持できるため、被検査物109が特殊な形状
を持つ場合の検査を容易に行えるという効果がある。ま
た、上記コイルを被検査物に密着させることが出来るた
め、照射ラジオ波電力が少なくてすみ、ラジオ波発生装
置101の寸法を小さくできる副次的な効果もある。
上記各実施例において、被検査物109内に含まれる爆
発性危険物に固有なラジオ波吸収として、これら爆発性
危険物の核四重極共鳴吸収を利用することができる。例
えば、塩素酸KClO3からなる粉末爆弾に対しては周波数2
8.1MHzの塩素35核共鳴吸収を、また、TNT(トリニトロ
トルエン)に対しては、周波数0.8MHz、0.9MHz,1.1MHz
近傍の窒素14核共鳴吸収を検知すればよい。また、ヘキ
ソーゲンを主成分とするプラスチック爆弾に対しては、
TNTと同様にニトロ基に起因する窒素14核の共鳴吸収を
観測すればよい。ただし、プラスチック爆弾の場合は、
ヘキソーゲンがゴム状バインダと混練されており、ニト
ロ基由来の核四重極共鳴吸収は広幅化されているため、
0.5MHzから2MHzにわたる広範囲な周波数帯でのラジオ波
吸収の有無を見なければならない。
実施例12 つぎにラジオ波吸収として核四重極共鳴を選定したと
きのラジオ波発生部、ラジオ波照射部、ラジオ波吸収検
知部の一実施例を、第13図を用いて説明する。第13図に
示す第12実施例では、周波数シンセサイザ141、パルス
ゲート142、電力増幅器143、マッチング回路144から構
成される部分が、第9〜第11実施例のラジオ波発生装置
101に対応する。照射検知コイル102に付随するトリマコ
ンデンサ145およびコンデンサ145は、照射検知コイル10
2と同調回路を形成して、ラジオ波電力を効率よく被検
査物109に注入する役目を持っている。このため、上記
トリマコンデンサ145、コンデンサ146は、照射検知コイ
ル102の一部とみなすことができる。つぎに、ダンパ回
路147、プリアンプ148、位相検波器149、ビデオアンプ1
50、積分加算器151から構成される部分が、上記第9〜
第11実施例のラジオ波吸収測定装置103に対応する。さ
て、周波数シンセサイザ141で設定した特定危険物の核
四重極共鳴吸収に相当するラジオ波は、パルスゲート14
2によりパルス変調される。パルス幅、パルス生成繰返
し時間などは、コントローラ140により任意に設定でき
る。つぎに、このパルス状になったラジオ波は電力増幅
器143により増幅され、マッチング回路144を経たのち、
照射検知コイル102により被検査物109に照射される。ダ
ンパ回路147は大電力からラジオ波吸収測定装置部分を
保護し、微弱な核四重極共鳴信号を減衰なく通過させる
動作をする。上記被検査物109中に特定危険物が含まれ
ている時には、その核四重極共鳴が生じ、共鳴吸収信号
が照射検知コイル102に発生する。上記共鳴吸収信号を
プリアンプ148、位相検波器149により低周波信号に変換
したのち、ビデオアンプ150で最終的な増幅を行う。さ
らにS/N比を向上させるために、本実施例では積分加算
器151を用いてノイズ成分の除去を行っている。上記手
続きにより、核四重極共鳴信号は低周波の振動減衰型の
信号に変換される。このため、上記信号は自由誘導減衰
と呼ばれている。
核四重極共鳴吸収の有無およびその強弱はCRT152を用
いて観測する。本実施例においては大電力ラジオ波パル
スを用いて核四重極共鳴吸収を観測するため、例えば連
続ラジオ波の周波数掃引、周波数変調、位相検波などよ
りなる連続検出法に較べて、周波数掃引による無駄時間
がないため、短時間に被検査物109を検査できるという
効果がある。本実施例では単一ラジオ波照射検知コイル
102を被検査物109上に配置した構成、すなわち、第9実
施例で示した構成をとっているが、第10および第11実施
例で示した多数コイルを配置する構成においても、全く
同様に本実施例で説明したラジオ波発生装置、ラジオ波
吸収測定装置を用いることができ、同様の効果が得られ
る。つぎに、本実施例の構成で、スーツケース内の塩素
酸カリウムの塩素35核の核四重極共鳴を検知した結果を
第14図に示す。ラジオ波照射検知コイル102は半径15cm
の3重うず巻単一コイルとした。他の設定条件はつぎに
示す通りである。周波数シンセサイザ141による設定周
波数f:f=28.110MHz。パルスゲート142オン時間幅τ:
τ=10μsec。電力増幅後ラジオ波出力P:P=3kW。ラジ
オ波パルス照射繰返し周期K:K=0.5sec/回。積分加算器
151による加算回数S:S=10回。スーツケース寸法:縦1
m、数50cm、厚さ25cm。塩素酸カリウムは粉末であるた
め内容積250cm3(5cm×5cm×10cm)の紙箱に封入したも
のを爆発性危険物に想定した。照射検知コイル102と想
定爆発性危険物との距離は約15cmに離した。この距離は
うず巻状照射検知コイル102の半径に相当する長さであ
るため、検出限界距離に相当している。第14図に示す自
由誘導減衰信号160はS/N比約150で観測されており、ま
た、これに要した検査時間は5秒と短時間であった。上
記結果から、本発明による危険物検査装置が十分に実用
性を有することが判る。
実施例13 本発明の第13実施例を第15図により説明する第15図で
は第12実施例として示した第13図に同様に、X線発生装
置104、X線透過スリット105、X線検知用センサ107、
モニタ108からなるX線検査装置部分は、図面の簡略化
のために省略し記載していない。第15図に示す実施例で
は第13図に示した実施例の構成に、さらに静磁場発生コ
イル170、傾斜磁場発生コイル171、傾斜磁場電源172、
静磁場電源173をそれぞれ付加した構成になっている。
本実施例では、被検査物109中に含まれる危険物の核磁
気共鳴ラジオ波吸収の有無により、特定な危険物の有無
を検知する構成になっている。本実施例の説明を判りや
すくするため、危険物として箱詰めされたTNT爆弾が被
検査物109中に隠されているとし、TNT爆弾の水素1核核
磁気共鳴ラジオ波吸収を観測すると設定して以下の説明
を行う。まず、静磁場発生コイル170、静磁場電源173に
より被検査物109全体にわたる均一静磁場HOを発生させ
る。TNT爆弾の水素1核核磁気共鳴吸収ラジオ波周波数f
Hは静磁場HOにより一義的に決まる。周波数fHのラジオ
波を周波数シンセサイザ141で発生させ、第13図に示し
た第12実施例と同様に、照射検知コイル102を用いてfH
のラジオ波を被検査物109に照射し、発生するTNT爆弾水
素1核の核磁気共鳴吸収信号の有無をCRT152上で判断す
れば、TNT爆弾の存在を検知できる。しかし、この場合
被検査物109の中にTNTが存在していることしか判らず、
位置を知ることはできない。上記問題は、傾斜磁場発生
コイル171、傾斜磁場電源172により空間的に増加もしく
は減少する傾斜磁場Hg(Z)をHoに重畳することにより
解決できる。ここでZは例えば実験室に固定したZ軸座
標を示す。いま、Z=Z1、Z=Z2の位置にそれぞれTNT
爆弾があるとすると、それぞれのTNT爆弾位置の磁場は
傾斜磁場Hg(Z)の重畳のために異なり、したがって、
それぞれのTNT爆弾に由来する水素1核核磁気共鳴信号
の周波数はf1、f2と異なる。f1、f2の周波数の違いから
位置を逆に算出することができる。具体的にはシンセサ
イザ141で発生するラジオ波を、そのスペクトル分布がf
1、f2をカバーするようにパルスゲート142でパルス変調
し、電力増幅したのち照射検知コイル102で被検査物109
に照射する。誘起された周波数f1、f2の核磁気共鳴信号
はそれぞれ増幅され、最終的にはフーリエ変換器174に
よりフーリエ変換され、CRT152上に表示される。f1、f2
の周波数からそれぞれの位置の磁場強度、すなわち位置
そのものを検出することができる。本実施例によれば照
射検知コイル102を被検査物109に対して移動させなくて
も、上記被検査物109内の危険物をくまなく検査できる
という効果がある。
さらに重要な効果として、液体・固体の区別なく、爆
発性危険物を検知できるという点があげられる。これは
第13図に示した第12実施例に用いた核四重極共鳴ラジオ
波吸収にはない点である。すなわち、核四重極共鳴で
は、液体のように規則性が全くない物質の共鳴吸収を検
知できないためである。一方、爆発性危険物が金属性の
容器に保持されている場合、上記金属容器によってラジ
オ波がシールドされるため、核磁気共鳴吸収の有無によ
る危険物検知は困難である。これは核四重極共鳴吸収を
利用する第12実施例の場合と同様である。この場合には
X線透視型検査装置によって容易に金属容器が検知でき
るため、本発明による危険物検査装置の有効性を何ら損
うものではない。
以上、本発明の実施例を説明したが、ラジオ波吸収と
して危険物に固有な核磁気共鳴吸収と核四重極共鳴吸収
を利用したが、この他に、ラジオ波領域の誘導緩和損失
現象も利用できる。すなわち、危険物が双極子モーメン
トを持つ場合は誘電損失があり、周波数に対する損失プ
ロファイルは危険物に特有のものである。誘電緩和損失
現象を利用する場合としては、危険物が核磁気共鳴吸収
や核四重極共鳴吸収を持たない場合に特に有効である。
検査装置としては第9実施例ないし第11実施例に示した
装置を利用することができる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、爆発性危険物に含まれる核四重極共
鳴を起こす原子核を検知し、しかも爆発性物質の種類に
よって異なる共鳴周波数で検知するので、従来のX線検
査装置では不可能であった被検査物中に爆発性危険物が
含まれているか否かの検知を行なうことができ、さらに
爆発性危険物の種類を同様することにおいて極めて大き
な効果がある。
特にプラスチック爆薬はあらゆる形状に変形できるた
め、形状認識では検知困難であったが、本発明では形状
によらず爆薬が検知できるため、プラスチック爆薬検知
に極めて有効である。
また、ラジオ波は多くの場合、バッグや衣服を透過す
るのでわざわざバッグを開けたり、衣服を脱着させる必
要が無く、迅速に危険物を検査できる効果がある。
さらに、本発明による危険物検査装置は、X線発生装
置とX線透過スリットと、X線検知用センサおよびモニ
タを有するX線検査装置を設けた危険物検査装置におい
て、ラジオ波発生装置、ラジオ波照射検知用コイル、ラ
ジオ波吸収測定装置を備え、上記X線検査装置から得ら
れる被検査物のX線情報、ならびに特定ラジオ波吸収の
有無および強弱により被検査物中の特定危険情報を得
て、危険物の形状、物性、組成等を総合的に検知するこ
とにより、液状、粉末状、プラスチック状の有機物、無
機物からなる爆発性危険物、さらに金属性銃火器を含む
被検査物の内部を、形状、物性、そして組成に至るまで
非破壊で総合的に検査できるため、危険物を見落しなく
検知できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第7図は本発明のラジオ波照射による検知装置
のそれぞれ異なる実施例の構成図、第8図は実施例1〜
7において有効な形状のコイルの模式図、第9図は第8
図に示されたコイルとヘルムホルツコイルで測定した核
四重極共鳴吸収の信号強度を示す曲線図、第10図は本発
明によるラジオ波照射検知とX線検知とを組み合わせた
危険物検査装置の一実施例を説明する図、第11図は照射
コイルを多数配置した実施例を説明する図、第12図は可
撓性絶縁フィルム上に照射検知コイルを配置した実施例
を説明する図、第13図は核四重極共鳴ラジオ波吸収を利
用する実施例の説明図、第14図は上記第13図示の実施例
の装置を用いて、スーツケース中の塩素酸カリウム模疑
危険物の塩素35核四重極共鳴吸収の自由誘導減衰信号を
測定した結果を示す曲線図、第15図は核磁気共鳴ラジオ
波吸収を利用する実施例の説明図、である。 1……被検査物、2……スピン遷移検出器、3……電磁
波照射装置、4……周波数設定器、5……コントロー
ラ、6……プローブコイル、7……ラジオ波発振検波
器、8……周波数調整器、9……増幅器、10……信号表
示装置、11……爆発物、12……FM変調器、13……ロック
イン増幅器、14……基準発振器、15……パルスゲート、
16……電力増幅器、17……照射コイル、18……プリアン
プ、19……位相検波器、20……高速A/Dコンバータ、21
……CRT、22……周波数合成器、23……広帯域電力アン
プ、24……励消磁電源、25……照射コイル2、26……ヘ
ルムホルツコイル、27……検出コイル、28……送信器、
29……レシーバ、30……積分器、31……プローブ、32…
…本体、33……ケーブル、34……うず巻形状コイル、35
……ヘルムホルツコイルで検出された信号強度、36……
対向うず巻形状コイルで検出された信号強度、101……
ラジオ波発生装置、102……ラジオ波照射検知コイル、1
03……ラジオ波吸収測定装置、104……X線発生装置、1
05……X線透過スリット、106……被検査物移動用治
具、107……X線検知用センサ、108……モニタ、109…
…被検査物、110……電力切換回路、111……信号切換回
路、121,122,123,124……ラジオ波照射用コイル、131,1
32,133……うず巻状コイルパタン、134……フィルム保
持変形アーム、135……アーム移動制御装置、136……可
撓性絶縁フィルム、137……配線、140……コントロー
ラ、141……周波数シンセサイザ、142……パルスゲー
ト、143……電力増幅器、144……マッチング回路、145
……トリマコンデンサ、146……コンデンサ、147……ダ
ンパ回路、148……プリアンプ、149……位相検波器、15
0……ビデオアンプ、151……積分加算器、152……CRT、
160……自由誘導減衰信号、170……静磁場発生コイル、
171……傾斜磁場発生コイル、172……傾斜磁場電源、17
3……静磁場電源、174……フーリエ変換器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三井 泰裕 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−36076(JP,A) 特開 昭61−189447(JP,A) 特開 昭59−183735(JP,A) 特開 昭60−165945(JP,A)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】検査物を移動させる手段と、周波数を設定
    する周波数設定部と、大きさが異なる形状の複数のコイ
    ルを有するプローブと、設定された周波数の電磁波を前
    記複数のコイルに切り換えて供給し、前記複数のコイル
    から第1の電磁波の照射により検査物から核四重極共鳴
    を生じさせる電力切換手段と、前記核四重極共鳴に基づ
    いて発生する検査物からの第2の電磁波を複数のコイル
    から取り出すための信号切換手段と、を具備したことを
    特徴とする電磁波を用いた危険物検査装置。
  2. 【請求項2】前記信号切換手段として、深さが異なる位
    置からの第2の電磁波を取り出すことを特徴とする請求
    項1記載の電磁波を用いた危険物検査装置。
  3. 【請求項3】前記プローブは前記複数のコイルが一体化
    され移動可能に構成されていることを特徴とする請求項
    1または2記載の電磁波を用いた危険物検査装置。
  4. 【請求項4】前記プローブは折り曲げ可能な絶縁フィル
    ムで構成されていることを特徴とする請求項1から3の
    いずれか記載の電磁波を用いた危険物検知装置。
  5. 【請求項5】前記検査物を載置した前記検査物を移動さ
    せる手段を挟んでX線透過検出装置を配置し、前記移動
    させる手段を移動させながら検出することを特徴とする
    請求項1から4のいずれか記載の電磁波を用いた危険物
    検知装置。
  6. 【請求項6】前記検査物を移動させる手段として、ベル
    トコンベアを用いたことを特徴とする請求項1から6の
    いずれか記載の電磁波を用いた危険物検知装置。
JP1-160751A 1988-10-07 1989-06-26 電磁波を用いた危険物検査装置 Expired - Lifetime JP3002476B2 (ja)

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